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占有権
第181条
条文
第181条(代理占有)
占有権は、代理人によって取得することができる。
占有権は、代理人によって取得することができる。
過去問・解説
(H26 司法 第10問 4)
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bは、助手Gに対し、甲の一部について複写するよう指示して甲を預けたところ、Gが目を離した隙にHが甲を盗み出して現に所持している場合、Bは、Hに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bは、助手Gに対し、甲の一部について複写するよう指示して甲を預けたところ、Gが目を離した隙にHが甲を盗み出して現に所持している場合、Bは、Hに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
(正答) ✕
(解説)
200条1項は、「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還…を請求することができる。」として、占有回収の訴えについて定めている。
181条は、「占有権は、代理人によって取得することができる。」として、代理占有について定めている。Bは、助手Gに対し、甲の一部について複写するよう指示して甲を預けており、代理人Gによって甲の「占有」を有している。
したがって、Bは、「占有者がその占有を奪われたとき」として、Hに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることができる。
200条1項は、「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還…を請求することができる。」として、占有回収の訴えについて定めている。
181条は、「占有権は、代理人によって取得することができる。」として、代理占有について定めている。Bは、助手Gに対し、甲の一部について複写するよう指示して甲を預けており、代理人Gによって甲の「占有」を有している。
したがって、Bは、「占有者がその占有を奪われたとき」として、Hに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることができる。
総合メモ
第182条
条文
第182条(現実の引渡し及び簡易の引渡し)
① 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
② 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
① 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
② 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
過去問・解説
(H21 司法 第9問 2)
動産の所有者であって賃貸人であるAが、その賃借人として引渡しを受けているBとの間で売買契約を締結した場合、占有権を譲渡する旨のAとBの意思表示によって、Aは動産の占有権を失う。
動産の所有者であって賃貸人であるAが、その賃借人として引渡しを受けているBとの間で売買契約を締結した場合、占有権を譲渡する旨のAとBの意思表示によって、Aは動産の占有権を失う。
(正答) 〇
(解説)
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。」として、簡易の引渡しについて定めている。
動産の所有者であって賃貸人であるAが、その賃借人として引渡しを受けているBとの間で売買契約を締結した場合、占有権を譲渡する旨のAとBの意思表示がなされたときは、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」において、「当事者の意思表示のみによってする」「占有権の譲渡」であるから、これにより、Aは動産の占有を失う。
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。」として、簡易の引渡しについて定めている。
動産の所有者であって賃貸人であるAが、その賃借人として引渡しを受けているBとの間で売買契約を締結した場合、占有権を譲渡する旨のAとBの意思表示がなされたときは、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」において、「当事者の意思表示のみによってする」「占有権の譲渡」であるから、これにより、Aは動産の占有を失う。
(H21 司法 第9問 5)
動産の所有者であって賃貸人であるAの承諾を得て、賃借人であるBが、その賃借権を第三者Cに譲渡し、動産を引き渡した場合、Bは動産の占有権を失う。
動産の所有者であって賃貸人であるAの承諾を得て、賃借人であるBが、その賃借権を第三者Cに譲渡し、動産を引き渡した場合、Bは動産の占有権を失う。
(正答) 〇
(解説)
動産の所有者であって賃貸人であるAの承諾を得て、賃借人であるBが、その賃借権を第三者Cに譲渡し、動産を引き渡した場合、「占有物の引渡し」(182条1項)という現実の引渡しがなされている。
したがって、Bは動産の占有権を失う。
動産の所有者であって賃貸人であるAの承諾を得て、賃借人であるBが、その賃借権を第三者Cに譲渡し、動産を引き渡した場合、「占有物の引渡し」(182条1項)という現実の引渡しがなされている。
したがって、Bは動産の占有権を失う。
(H24 共通 第10問 3)
Aは、Bから借用して占有していた動産甲をBから買い受けた。この場合、Aは、Bに動産甲をいったん返還した上でBから改めて動産甲の現実の引渡しを受けない限り、その所有権の取得を第三者に対抗することはできない。
Aは、Bから借用して占有していた動産甲をBから買い受けた。この場合、Aは、Bに動産甲をいったん返還した上でBから改めて動産甲の現実の引渡しを受けない限り、その所有権の取得を第三者に対抗することはできない。
(正答) ✕
(解説)
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。」として、簡易の引渡しについて定めている。
Aは、Bから動産甲を借用していたのだから、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」に当たる。
したがって、A及びBという「当事者の意思表示」のみによって「占有権の譲渡」をすることができる
よって、Aは、意思表示による簡易の「引渡し」によって対抗要件(178条)を具備できるから、Bに動産甲をいったん返還した上でBから改めて動産甲の現実の引渡しを受けていなくても、その所有権の取得を「第三者」に対抗することができる。
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。」として、簡易の引渡しについて定めている。
Aは、Bから動産甲を借用していたのだから、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」に当たる。
したがって、A及びBという「当事者の意思表示」のみによって「占有権の譲渡」をすることができる
よって、Aは、意思表示による簡易の「引渡し」によって対抗要件(178条)を具備できるから、Bに動産甲をいったん返還した上でBから改めて動産甲の現実の引渡しを受けていなくても、その所有権の取得を「第三者」に対抗することができる。
(R3 司法 第8問 オ)
動産甲をその所有者Aから賃借して占有していたBが、Aとの間で、Aから甲を買い受けてAの占有権を譲り受ける旨の合意をしたときは、Bの占有は、自主占有となる。
動産甲をその所有者Aから賃借して占有していたBが、Aとの間で、Aから甲を買い受けてAの占有権を譲り受ける旨の合意をしたときは、Bの占有は、自主占有となる。
(正答) 〇
(解説)
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。」として、簡易の引渡しについて定めている。
Bは、Aから動産甲を賃借して占有していたため、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」に当たるから、Bが、Aとの間で、Aから甲を買い受けてAの占有権を譲り受ける旨の合意をしたときは、「当事者の意思表示」のみによって「占有権の譲渡」がなされたことになる。
そして、Bの占有取得の原因は売買契約であるから、Bの占有は、他主占有から自主占有に切り替わる。
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。」として、簡易の引渡しについて定めている。
Bは、Aから動産甲を賃借して占有していたため、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」に当たるから、Bが、Aとの間で、Aから甲を買い受けてAの占有権を譲り受ける旨の合意をしたときは、「当事者の意思表示」のみによって「占有権の譲渡」がなされたことになる。
そして、Bの占有取得の原因は売買契約であるから、Bの占有は、他主占有から自主占有に切り替わる。
(R4 共通 第8問 オ)
Aからその所有する絵画甲を預かり占有していたBが、Aから甲を購入した場合において、占有をBに移転する旨の意思表示がAB間でされたときは、Bは、甲の所有権の取得を第三者に対抗することができる。
Aからその所有する絵画甲を預かり占有していたBが、Aから甲を購入した場合において、占有をBに移転する旨の意思表示がAB間でされたときは、Bは、甲の所有権の取得を第三者に対抗することができる。
(正答) 〇
(解説)
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」において、「占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができることを規定している(簡易の引渡し)。
本問においても、AB間で意思表示による簡易の引渡しがなされたと言えるから、設問の記述は正しい。
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。」として、簡易の引渡しについて定めている。
Bは、Aから絵画甲を預かり占有していたのだから、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」に当たる。
したがって、占有をBに移転する旨の意思表示がAB間でされたときは、「当事者の意思表示」のみによって「占有権の譲渡」がなされたことになる。
よって、Bは、意思表示による簡易の「引渡し」によって対抗要件(178条)を具備できるから、甲の所有権の取得を「第三者」に対抗することができる。
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」において、「占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができることを規定している(簡易の引渡し)。
本問においても、AB間で意思表示による簡易の引渡しがなされたと言えるから、設問の記述は正しい。
182条2項は、「譲受人…が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。」として、簡易の引渡しについて定めている。
Bは、Aから絵画甲を預かり占有していたのだから、「譲受人…が現に占有物を所持する場合」に当たる。
したがって、占有をBに移転する旨の意思表示がAB間でされたときは、「当事者の意思表示」のみによって「占有権の譲渡」がなされたことになる。
よって、Bは、意思表示による簡易の「引渡し」によって対抗要件(178条)を具備できるから、甲の所有権の取得を「第三者」に対抗することができる。
総合メモ
第183条
条文
第183条(占有改定)
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
過去問・解説
(H21 司法 第9問 4)
動産の所有者であって自ら動産を占有するAが、Bとの間で売買契約を締結し、同時にBを使用貸主、Aを使用借主とする使用貸借契約を締結した場合、以後Bのために占有する旨のAの意思表示によって、Bは動産の占有権を取得する。
動産の所有者であって自ら動産を占有するAが、Bとの間で売買契約を締結し、同時にBを使用貸主、Aを使用借主とする使用貸借契約を締結した場合、以後Bのために占有する旨のAの意思表示によって、Bは動産の占有権を取得する。
(正答) 〇
(解説)
183条は、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」として、占有改定について定めている。
本肢の事例では、AB間で占有改定により動産の引渡しが行われているから、Bは動産の占有を取得する。
183条は、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」として、占有改定について定めている。
本肢の事例では、AB間で占有改定により動産の引渡しが行われているから、Bは動産の占有を取得する。
(R3 司法 第8問 エ)
Aが、自己が占有する動産甲をBに売却し、甲を以後Bのために占有する旨の意思を表示したときは、Bは、甲の占有権を取得する。
Aが、自己が占有する動産甲をBに売却し、甲を以後Bのために占有する旨の意思を表示したときは、Bは、甲の占有権を取得する。
(正答) 〇
(解説)
183条は、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」として、占有改定について定めている。
本肢の事例では、AB間で占有改定により動産甲の引渡しが行われているから、Bは動産甲の占有を取得する。
183条は、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」として、占有改定について定めている。
本肢の事例では、AB間で占有改定により動産甲の引渡しが行われているから、Bは動産甲の占有を取得する。
総合メモ
第184条
条文
第184条(指図による占有移転)
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
過去問・解説
(H21 司法 第9問 1)
動産の所有者であって寄託者であるAが、その受寄者であるBに対して、以後第三者Cのために動産を占有することを命じ、Cがそれを承諾したときは、Cは動産の占有権を取得する。
動産の所有者であって寄託者であるAが、その受寄者であるBに対して、以後第三者Cのために動産を占有することを命じ、Cがそれを承諾したときは、Cは動産の占有権を取得する。
(正答) 〇
(解説)
本肢の事例では、AのBに対する指図によって、動産の占有がCに移転している(184条)。
本肢の事例では、AのBに対する指図によって、動産の占有がCに移転している(184条)。
(H24 共通 第10問 5)
Aは、Bが第三者に寄託している動産甲をBから買い受け、自ら受寄者に対し、以後Aのために動産甲を占有することを命じ、受寄者がこれを承諾したときは、Aは、動産甲の占有権を取得する。
Aは、Bが第三者に寄託している動産甲をBから買い受け、自ら受寄者に対し、以後Aのために動産甲を占有することを命じ、受寄者がこれを承諾したときは、Aは、動産甲の占有権を取得する。
(正答) ✕
(解説)
指図による占有移転では、「本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ…る」ことが必要であるが(184条)、本肢の事例では、「第三者」であるAが、「代理人」である受寄者に対し、「以後第三者のためにその物を占有することを命じ」ているにとどまる。
したがって、指図による占有移転は認められないから、Aは、動産甲の占有権を取得しない。
指図による占有移転では、「本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ…る」ことが必要であるが(184条)、本肢の事例では、「第三者」であるAが、「代理人」である受寄者に対し、「以後第三者のためにその物を占有することを命じ」ているにとどまる。
したがって、指図による占有移転は認められないから、Aは、動産甲の占有権を取得しない。
(R4 共通 第8問 ア)
Aがその所有する絵画甲をBに預けたままCに売却した場合において、AがBに対して以後Cのために甲を占有すべきことを命じ、Bがこれを承諾したときは、Cは、甲の所有権の取得を第三者に対抗することができる。
Aがその所有する絵画甲をBに預けたままCに売却した場合において、AがBに対して以後Cのために甲を占有すべきことを命じ、Bがこれを承諾したときは、Cは、甲の所有権の取得を第三者に対抗することができる。
(正答) ✕
(解説)
184条は、「代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する」と規定している(指図による占有移転)。
すなわち、本問において、指図による占有移転が行われるためにAの指図を承諾するのは「代理人」のBではなく、「第三者」のCであるから、指図による占有移転が行われたとは言えない。
したがって、Cは甲の占有を取得することはなく、よって所有権の取得を第三者に対抗することはできない。
指図による占有移転では、「本人」の「代理人」に対する指図について、「第三者」が承諾をする必要があるが(184条)、本肢の事例では、「本人」であるAが「代理人」であるBに対して指示をして、「代理人」であるBが承諾をしているにとどまる。
したがって、指図による占有移転は認められないから、Cは、絵画甲の「引渡し」(178条)を受けることで動産物権変動の対抗要件を具備したとはいえない。
よって、Cは、甲の所有権の取得を「第三者」に対抗することができない。
184条は、「代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する」と規定している(指図による占有移転)。
すなわち、本問において、指図による占有移転が行われるためにAの指図を承諾するのは「代理人」のBではなく、「第三者」のCであるから、指図による占有移転が行われたとは言えない。
したがって、Cは甲の占有を取得することはなく、よって所有権の取得を第三者に対抗することはできない。
指図による占有移転では、「本人」の「代理人」に対する指図について、「第三者」が承諾をする必要があるが(184条)、本肢の事例では、「本人」であるAが「代理人」であるBに対して指示をして、「代理人」であるBが承諾をしているにとどまる。
したがって、指図による占有移転は認められないから、Cは、絵画甲の「引渡し」(178条)を受けることで動産物権変動の対抗要件を具備したとはいえない。
よって、Cは、甲の所有権の取得を「第三者」に対抗することができない。
総合メモ
第185条
条文
第185条(占有の性質の変更)
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
総合メモ
第186条
条文
第186条(占有の態様等に関する推定)
① 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
② 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
① 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
② 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
過去問・解説
(H18 司法 第17問 ア)
甲土地の所有権を主張するAに対し、pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが、訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合、時効の援用の意思表示のほかに、Bは、p時点においてBが甲土地を占有していたことを主張立証しなければならない。
甲土地の所有権を主張するAに対し、pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが、訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合、時効の援用の意思表示のほかに、Bは、p時点においてBが甲土地を占有していたことを主張立証しなければならない。
(正答) 〇
(解説)
訴訟において長期取得時効(162条1項)による所有権の取得を主張する者は、①物の占有を開始したこと、②①の時から20年間が経過した時点での占有及び③時効援用権の意思表示について主張立証する必要がある。
本肢は、①に関する主張立証責任について問う問題である。
訴訟において長期取得時効(162条1項)による所有権の取得を主張する者は、①物の占有を開始したこと、②①の時から20年間が経過した時点での占有及び③時効援用権の意思表示について主張立証する必要がある。
本肢は、①に関する主張立証責任について問う問題である。
(H18 司法 第17問 イ)
甲土地の所有権を主張するAに対し、pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが、訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合、時効の援用の意思表示のほかに、Bは、p時点から20年後のq時点においてBが甲土地を占有していたことを主張立証しなければならない。
甲土地の所有権を主張するAに対し、pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが、訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合、時効の援用の意思表示のほかに、Bは、p時点から20年後のq時点においてBが甲土地を占有していたことを主張立証しなければならない。
(正答) 〇
(解説)
訴訟において長期取得時効(162条1項)による所有権の取得を主張する者は、①物の占有を開始したこと、②①の時から20年間が経過した時点での占有及び③時効援用権の意思表示について主張立証する必要がある。
本肢は、②に関する主張立証責任について問う問題である。
なお、①及び②の主張立証で足りるのは、①と②の時点における占有の事実があれば、その間の占有継続が推定される(186条2項)からである。
訴訟において長期取得時効(162条1項)による所有権の取得を主張する者は、①物の占有を開始したこと、②①の時から20年間が経過した時点での占有及び③時効援用権の意思表示について主張立証する必要がある。
本肢は、②に関する主張立証責任について問う問題である。
なお、①及び②の主張立証で足りるのは、①と②の時点における占有の事実があれば、その間の占有継続が推定される(186条2項)からである。
(H18 司法 第17問 ウ)
甲土地の所有権を主張するAに対し、pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが、訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合、時効の援用の意思表示のほかに、Bは、p時点から、その20年後のq時点まで、Bが甲土地を継続して占有したことを主張立証しなければならない。
甲土地の所有権を主張するAに対し、pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが、訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合、時効の援用の意思表示のほかに、Bは、p時点から、その20年後のq時点まで、Bが甲土地を継続して占有したことを主張立証しなければならない。
(正答) ✕
(解説)
訴訟において長期取得時効(162条1項)による所有権の取得を主張する者は、①物の占有を開始したこと、②①の時から20年間が経過した時点での占有及び③時効援用権の意思表示について主張立証する必要がある。
本肢は、②に関する主張立証責任について問う問題である。
なお、①及び②の主張立証で足りるのは、①と②の時点における占有の事実があれば、その間の占有継続が推定される(186条2項)からである。
訴訟において長期取得時効(162条1項)による所有権の取得を主張する者は、①物の占有を開始したこと、②①の時から20年間が経過した時点での占有及び③時効援用権の意思表示について主張立証する必要がある。
本肢は、②に関する主張立証責任について問う問題である。
なお、①及び②の主張立証で足りるのは、①と②の時点における占有の事実があれば、その間の占有継続が推定される(186条2項)からである。
(H18 司法 第17問 カ)
甲土地の所有権を主張するAに対し、pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが、訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合、時効の援用の意思表示のほかに、Bは、p時点におけるBの占有が平穏かつ公然のものであったことを主張立証しなければならない。
甲土地の所有権を主張するAに対し、pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが、訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合、時効の援用の意思表示のほかに、Bは、p時点におけるBの占有が平穏かつ公然のものであったことを主張立証しなければならない。
(正答) ✕
(解説)
訴訟において長期取得時効(162条1項)による所有権の取得を主張する者は、①物の占有を開始したこと、②①の時から20年間が経過した時点での占有及び③時効援用権の意思表示について主張立証すれば足り、④占有が「平穏」かつ「公然」のものであったことを主張立証する必要はない。
④は、186条1項により推定されるからである。
訴訟において長期取得時効(162条1項)による所有権の取得を主張する者は、①物の占有を開始したこと、②①の時から20年間が経過した時点での占有及び③時効援用権の意思表示について主張立証すれば足り、④占有が「平穏」かつ「公然」のものであったことを主張立証する必要はない。
④は、186条1項により推定されるからである。
(H23 司法 第10問 3)
占有者は、善意で、平穏に、かつ、公然と占有するものと推定されるが、所有の意思は推定されない。
占有者は、善意で、平穏に、かつ、公然と占有するものと推定されるが、所有の意思は推定されない。
(正答) ✕
(解説)
占有における「所有の意思」も、186条1項による推定される。
占有における「所有の意思」も、186条1項による推定される。
総合メモ
第187条
条文
第187条(占有の承継)
① 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
② 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
① 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
② 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
過去問・解説
(H25 司法 第9問 1)
A所有の不動産を占有するBが自己の占有に前の占有者Cの占有を併せて主張することによってその不動産の所有権を時効により取得したときは、Aは、Cの占有の開始日にさかのぼってその所有権を喪失する。
A所有の不動産を占有するBが自己の占有に前の占有者Cの占有を併せて主張することによってその不動産の所有権を時効により取得したときは、Aは、Cの占有の開始日にさかのぼってその所有権を喪失する。
(正答) 〇
(解説)
Bは、「占有の承継人」として、「自己の占有」に、「前の占有者」であるCの「占有」も併せて主張することができる(187条1項)。
この場合、取得時効の起算点は、Cの占有の開始時となるから、取得時効の遡及効(144条)により、Aは、Cの占有の開始日にさかのぼってその所有権を喪失する。
Bは、「占有の承継人」として、「自己の占有」に、「前の占有者」であるCの「占有」も併せて主張することができる(187条1項)。
この場合、取得時効の起算点は、Cの占有の開始時となるから、取得時効の遡及効(144条)により、Aは、Cの占有の開始日にさかのぼってその所有権を喪失する。
(R2 司法 第36問 ウ)
占有者の包括承継人は、取得時効に関して、自己の占有のみを主張することもできる。
占有者の包括承継人は、取得時効に関して、自己の占有のみを主張することもできる。
(正答) 〇
(解説)
187条1項は、「占有者の承継人」がは、「その選択に従い」、「自己の占有のみを主張」することと、「自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張すること」の双方を認めている。
187条1項は、「占有者の承継人」がは、「その選択に従い」、「自己の占有のみを主張」することと、「自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張すること」の双方を認めている。
総合メモ
第189条
条文
第189条(善意の占有者による果実の取得等)
① 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
② 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
① 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
② 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
総合メモ
第190条
条文
第190条(悪意の占有者による果実の返還等)
① 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
② 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
① 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
② 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
総合メモ
第192条
条文
第192条(即時取得)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
過去問・解説
(H18 司法 第14問 エ)
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。この事例について、Cが未成年者で、Cの親権者がCD間の売買契約を取り消せば、たとえDが甲を買い受けてから2年が過ぎていても、Dは、甲の所有権を取得することができない。
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。この事例について、Cが未成年者で、Cの親権者がCD間の売買契約を取り消せば、たとえDが甲を買い受けてから2年が過ぎていても、Dは、甲の所有権を取得することができない。
(正答) 〇
(解説)
善意の占有取得者よりも制限行為能力者を保護することで、制限行為能力制度の枠組みを維持するべきであるとの理由から、制限行為能力者の相手方には192条は適用されないと解されている。
したがって、Cの親権者が5条2項に基づいてCD間の売買契約を取り消した場合、Dは、甲の所有権を即時取得することはできない。
善意の占有取得者よりも制限行為能力者を保護することで、制限行為能力制度の枠組みを維持するべきであるとの理由から、制限行為能力者の相手方には192条は適用されないと解されている。
したがって、Cの親権者が5条2項に基づいてCD間の売買契約を取り消した場合、Dは、甲の所有権を即時取得することはできない。
(H18 司法 第32問 5)
強迫を受けてした動産売買契約を取り消した売主は、取消し前に買主から当該動産を善意かつ無過失で買い受けた者に対して、所有権に基づいて、当該動産の返還を求めることができる。
強迫を受けてした動産売買契約を取り消した売主は、取消し前に買主から当該動産を善意かつ無過失で買い受けた者に対して、所有権に基づいて、当該動産の返還を求めることができる。
(正答) ✕
(解説)
確かに、強迫を理由とする意思表示の取消しについては、96条3項のような第三者保護規定がない。
しかし、強迫を理由とする取消し前に登場した第三者については、192条が類推適用され、この場合における善意・無過失の対象は取消原因たる強迫の存否であると解されている。
したがって、取消し前に買主から当該動産を善意かつ無過失で買い受けた者が192条類推適用により動産の所有権を即時取得している場合には、売主の所有権に基づく返還請求は認められない。
確かに、強迫を理由とする意思表示の取消しについては、96条3項のような第三者保護規定がない。
しかし、強迫を理由とする取消し前に登場した第三者については、192条が類推適用され、この場合における善意・無過失の対象は取消原因たる強迫の存否であると解されている。
したがって、取消し前に買主から当該動産を善意かつ無過失で買い受けた者が192条類推適用により動産の所有権を即時取得している場合には、売主の所有権に基づく返還請求は認められない。
(H23 司法 第9問 2)
即時取得の規定は、他人の動産を占有していた被相続人の財産を相続により承継する場合には、適用がない。
即時取得の規定は、他人の動産を占有していた被相続人の財産を相続により承継する場合には、適用がない。
(正答) 〇
(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、相続は「取引行為」に当たらない。
したがって、相続により動産の所有権を即時取得することはできない。
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、相続は「取引行為」に当たらない。
したがって、相続により動産の所有権を即時取得することはできない。
(H24 共通 第10問 2)
Aは、Bから動産甲を買い受け、占有改定の方法で引渡しを受けたが、その後、Bは、動産甲をCにも売却し、現実に引き渡した。この場合、Cは、BのAに対する動産甲の売却について善意無過失でなくても、動産甲の所有権取得をAに対抗することができる。
Aは、Bから動産甲を買い受け、占有改定の方法で引渡しを受けたが、その後、Bは、動産甲をCにも売却し、現実に引き渡した。この場合、Cは、BのAに対する動産甲の売却について善意無過失でなくても、動産甲の所有権取得をAに対抗することができる。
(正答) ✕
(解説)
Bを起点とするA及びCに対する動産甲の二重譲渡においては、先にAが占有改定(183条)による「引渡し」(178条)という対抗要件を具備しているから、Aが動産甲の所有権を確定的に取得する一方で、Cによる動産甲の所有権の取得が否定される。この場合、Aが占有改定の方法で「引渡し」を受けた時点で、Aが動産甲の所有権を確定的に取得することになるのだから、Cは、無権利者からの譲受人と変わらないことになる。
そうすると、Cは、Bとの売買契約において、動産甲の所有権を即時取得(192条)する余地があるが、「善意無過失」でない場合は、即時取得の要件を満たさないから、動産甲の所有権取得をAに対抗することができない。
Bを起点とするA及びCに対する動産甲の二重譲渡においては、先にAが占有改定(183条)による「引渡し」(178条)という対抗要件を具備しているから、Aが動産甲の所有権を確定的に取得する一方で、Cによる動産甲の所有権の取得が否定される。この場合、Aが占有改定の方法で「引渡し」を受けた時点で、Aが動産甲の所有権を確定的に取得することになるのだから、Cは、無権利者からの譲受人と変わらないことになる。
そうすると、Cは、Bとの売買契約において、動産甲の所有権を即時取得(192条)する余地があるが、「善意無過失」でない場合は、即時取得の要件を満たさないから、動産甲の所有権取得をAに対抗することができない。
(H28 司法 第9問 エ)
A所有の土地上にある立木を、Bが、B所有の土地上にあるものと過失なく信じて伐採した場合には、Bは、即時取得により当該伐木の所有権を取得する。
A所有の土地上にある立木を、Bが、B所有の土地上にあるものと過失なく信じて伐採した場合には、Bは、即時取得により当該伐木の所有権を取得する。
(正答) ✕
(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、立木の伐採は「取引行為」に当たらない。
したがって、Bは、即時取得により当該伐木の所有権を取得することができない。
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、立木の伐採は「取引行為」に当たらない。
したがって、Bは、即時取得により当該伐木の所有権を取得することができない。
(R1 司法 第7問 イ)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。そして、Bが死亡し、その唯一の相続人Dは、甲がBの相続財産に属すると過失なく信じて、現実に占有を開始した。甲が宝石であった場合、Dは、即時取得により甲の所有権を取得する。
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。そして、Bが死亡し、その唯一の相続人Dは、甲がBの相続財産に属すると過失なく信じて、現実に占有を開始した。甲が宝石であった場合、Dは、即時取得により甲の所有権を取得する。
(正答) ✕
(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、相続は「取引行為」に当たらない。
したがって、相続により動産の所有権を即時取得することはできない。
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、相続は「取引行為」に当たらない。
したがって、相続により動産の所有権を即時取得することはできない。
(R1 司法 第7問 ウ)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。そして、Bは、甲をEに贈与し、Eは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Eは、即時取得により甲の所有権を取得する。
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。そして、Bは、甲をEに贈与し、Eは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Eは、即時取得により甲の所有権を取得する。
(正答) 〇
(解説)
即時取得(192条)における「取引行為」には、贈与などの無償・片務契約も含まれる。
したがって、Eは、他の要件も満たせば、甲の所有権を即時取得できる。
即時取得(192条)における「取引行為」には、贈与などの無償・片務契約も含まれる。
したがって、Eは、他の要件も満たせば、甲の所有権を即時取得できる。
(R1 司法 第7問 オ)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。そして、Bは、甲をGに質入れし、Gは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Gは、即時取得により甲を目的とする質権を取得する。
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。そして、Bは、甲をGに質入れし、Gは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Gは、即時取得により甲を目的とする質権を取得する。
(正答) 〇
(解説)
即時取得(192条)における「取引行為」には、質権設定契約も含まれる。
したがって、Gは、他の要件も満たせば、甲を目的とする質権を即時取得できる。
即時取得(192条)における「取引行為」には、質権設定契約も含まれる。
したがって、Gは、他の要件も満たせば、甲を目的とする質権を即時取得できる。
(R2 共通 第8問 ア)
Aは、自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後、Bは、宝石をCに売却して現実の引渡しをした。さらに、その後、Aは、AB間の売買契約をBの強迫を理由として取り消した。この場合、Cは、即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
Aは、自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後、Bは、宝石をCに売却して現実の引渡しをした。さらに、その後、Aは、AB間の売買契約をBの強迫を理由として取り消した。この場合、Cは、即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
(正答) ✕
(解説)
96条3項では、強迫を理由とする意思表示の取消しは適用対象とされていないから、Cが96条3項により宝石の所有権を取得する余地はない。問題は、即時取得(192条)の成立余地である。
即時取得の成立要件(実体法上の要件)の1つとして、無権利者からの占有取得であること(取引行為の相手方に処分権限がないこと)が必要であり、取消原因のある取引の相手方については、「無権利者からの占有取得であること」という要件を満たさない。また、善意の占有取得者よりも表意者を保護することで、意思表示の瑕疵に関する制度の枠組みを維持するべきである。こうした理由から、取消原因のある取引の相手方については、192条は適用されないと解されている。
もっとも、強迫の場合、第三者保護規定がないことから、取消し前に登場した第三者については192条が類推適用され、この場合における善意・無過失の対象は取消原因たる強迫の存否であると解されている。
したがって、Cは、即時取得により宝石の所有権を取得する余地がある。
96条3項では、強迫を理由とする意思表示の取消しは適用対象とされていないから、Cが96条3項により宝石の所有権を取得する余地はない。問題は、即時取得(192条)の成立余地である。
即時取得の成立要件(実体法上の要件)の1つとして、無権利者からの占有取得であること(取引行為の相手方に処分権限がないこと)が必要であり、取消原因のある取引の相手方については、「無権利者からの占有取得であること」という要件を満たさない。また、善意の占有取得者よりも表意者を保護することで、意思表示の瑕疵に関する制度の枠組みを維持するべきである。こうした理由から、取消原因のある取引の相手方については、192条は適用されないと解されている。
もっとも、強迫の場合、第三者保護規定がないことから、取消し前に登場した第三者については192条が類推適用され、この場合における善意・無過失の対象は取消原因たる強迫の存否であると解されている。
したがって、Cは、即時取得により宝石の所有権を取得する余地がある。
(R2 共通 第8問 イ)
未成年者Aは、自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後、Aは、AB間の売買契約を未成年であることを理由として取り消した。この場合、Bが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
未成年者Aは、自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後、Aは、AB間の売買契約を未成年であることを理由として取り消した。この場合、Bが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
(正答) 〇
(解説)
善意の占有取得者よりも制限行為能力者を保護することで、制限行為能力制度の枠組みを維持するべきであるとの理由から、制限行為能力者の相手方には192条は適用されないと解されている。
したがって、Aが5条2項に基づいてAB間の売買契約を未成年であることを取り消した場合、Bは即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
善意の占有取得者よりも制限行為能力者を保護することで、制限行為能力制度の枠組みを維持するべきであるとの理由から、制限行為能力者の相手方には192条は適用されないと解されている。
したがって、Aが5条2項に基づいてAB間の売買契約を未成年であることを取り消した場合、Bは即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
(R2 共通 第8問 エ)
Aは、Bが置き忘れた宝石を、自己所有物であると過失なく信じて持ち帰った。この場合、Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
Aは、Bが置き忘れた宝石を、自己所有物であると過失なく信じて持ち帰った。この場合、Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
(正答) 〇
(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されている。
したがって、本肢の事例では、「取引行為」を欠くから、Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されている。
したがって、本肢の事例では、「取引行為」を欠くから、Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
(R6 司法 第9問 ア)
AがBから預かっているB所有の種子甲を自らの所有物であると偽って、Cに対し、消費貸借の目的として貸し、現実の引渡しをした場合には、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じたときであっても、Cは、甲の所有権を即時取得しない。
AがBから預かっているB所有の種子甲を自らの所有物であると偽って、Cに対し、消費貸借の目的として貸し、現実の引渡しをした場合には、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じたときであっても、Cは、甲の所有権を即時取得しない。
(正答) ✕
(解説)
消費貸借契約は、借主が目的物を消費することを前提としているから、所有権の取得を伴う「取引行為」に当たる。
したがって、本肢の事例では、消費貸借契約における借主であるCは、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないとき」(192条)として、甲の所有権を即時取得する。
消費貸借契約は、借主が目的物を消費することを前提としているから、所有権の取得を伴う「取引行為」に当たる。
したがって、本肢の事例では、消費貸借契約における借主であるCは、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないとき」(192条)として、甲の所有権を即時取得する。
(R6 司法 第9問 イ)
Aは、代理権を有していないにもかかわらず、Bの代理人と称して、B所有のパソコン甲を、Bが甲の所有者であることを知るとともに、AがBの代理人であると過失なく信じたCに売り、 甲を現実に引き渡した。この場合は、Cは、甲の所有権を即時取得しない。
Aは、代理権を有していないにもかかわらず、Bの代理人と称して、B所有のパソコン甲を、Bが甲の所有者であることを知るとともに、AがBの代理人であると過失なく信じたCに売り、 甲を現実に引き渡した。この場合は、Cは、甲の所有権を即時取得しない。
(正答) 〇
(解説)
即時取得の成立要件(実体法上の要件)の1つとして、無権利者からの占有取得であること(取引行為の相手方に処分権限がないこと)が必要であり、無権代理行為の相手方については、「無権利者からの占有取得であること」という要件を満たさない。また、善意の占有取得者よりも無権代理行為の本人を保護することで、無権代理に関する制度の枠組みを維持するべきである。こうした理由から、無権代理行為の相手方については、192条は適用されないと解されている。
したがって、無権代理行為の相手方であるCは、甲の所有権を即時取得しない。
即時取得の成立要件(実体法上の要件)の1つとして、無権利者からの占有取得であること(取引行為の相手方に処分権限がないこと)が必要であり、無権代理行為の相手方については、「無権利者からの占有取得であること」という要件を満たさない。また、善意の占有取得者よりも無権代理行為の本人を保護することで、無権代理に関する制度の枠組みを維持するべきである。こうした理由から、無権代理行為の相手方については、192条は適用されないと解されている。
したがって、無権代理行為の相手方であるCは、甲の所有権を即時取得しない。
(R6 司法 第9問 ウ)
Aは、A所有のパソコン甲をBに売り、現実の引渡しをした後、錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消した。Bが甲の現実の引渡しを受けた時に、Aの意思表示に錯誤がないと過失なく信じていたときであっても、Bは、甲の所有権を即時取得しない。
Aは、A所有のパソコン甲をBに売り、現実の引渡しをした後、錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消した。Bが甲の現実の引渡しを受けた時に、Aの意思表示に錯誤がないと過失なく信じていたときであっても、Bは、甲の所有権を即時取得しない。
(正答) 〇
(解説)
即時取得の成立要件(実体法上の要件)の1つとして、無権利者からの占有取得であること(取引行為の相手方に処分権限がないこと)が必要であり、取消原因のある取引の相手方については、「無権利者からの占有取得であること」という要件を満たさない。また、善意の占有取得者よりも表意者を保護することで、意思表示の瑕疵に関する制度の枠組みを維持するべきである。こうした理由から、取消原因のある取引の相手方については、192条は適用されないと解されている。
したがって、錯誤による意思表示の相手方であるBは、甲の所有権を即時取得しない。
即時取得の成立要件(実体法上の要件)の1つとして、無権利者からの占有取得であること(取引行為の相手方に処分権限がないこと)が必要であり、取消原因のある取引の相手方については、「無権利者からの占有取得であること」という要件を満たさない。また、善意の占有取得者よりも表意者を保護することで、意思表示の瑕疵に関する制度の枠組みを維持するべきである。こうした理由から、取消原因のある取引の相手方については、192条は適用されないと解されている。
したがって、錯誤による意思表示の相手方であるBは、甲の所有権を即時取得しない。
(R6 司法 第9問 オ)
Aは、BからB所有のパソコン甲を預かっていた。Aが死亡し、Aの唯一の相続人Cが甲の占有を始めた場合には、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じていたときであっても、Cは、甲の所有権を即時取得しない。
Aは、BからB所有のパソコン甲を預かっていた。Aが死亡し、Aの唯一の相続人Cが甲の占有を始めた場合には、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じていたときであっても、Cは、甲の所有権を即時取得しない。
(正答) 〇
(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、相続は「取引行為」に当たらない。
したがって、相続により動産の所有権を即時取得することはできない。
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、相続は「取引行為」に当たらない。
したがって、相続により動産の所有権を即時取得することはできない。
総合メモ
第193条
条文
第193条(盗品又は遺失物の回復)
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
過去問・解説
(H18 司法 第14問 ウ)
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。この事例について、Bは、盗まれた時から2年以内であれば、Dに甲を無償で返還するよう請求することができる。
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。この事例について、Bは、盗まれた時から2年以内であれば、Dに甲を無償で返還するよう請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
Dは、即時取得(192条)の要件を満たしているが、甲が「盗品」であるため、「被害者…は、盗難…の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。」(193条)という意味において、BにはDに対する動産回復請求権が認められる。
Dは、即時取得(192条)の要件を満たしているが、甲が「盗品」であるため、「被害者…は、盗難…の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。」(193条)という意味において、BにはDに対する動産回復請求権が認められる。
(H28 予備 第5問 エ)
Aは、その家でAの所有するカメラ(以下「甲」という。)を保管していたところ、BがAの家から甲を盗み、Cに売却した。その後、Cは、甲をDに転売し、Dは、甲がCの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。この場合、Aは、甲を盗まれた時から2年以内であっても、Dに対し、甲の返還を求めることができない。
Aは、その家でAの所有するカメラ(以下「甲」という。)を保管していたところ、BがAの家から甲を盗み、Cに売却した。その後、Cは、甲をDに転売し、Dは、甲がCの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。この場合、Aは、甲を盗まれた時から2年以内であっても、Dに対し、甲の返還を求めることができない。
(正答) ✕
(解説)
Dは、即時取得(192条)の要件を満たしているが、甲が「盗品」であるため、「被害者…は、盗難…の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。」(193条)という意味において、AにはDに対する動産回復請求権が認められる。
Dは、即時取得(192条)の要件を満たしているが、甲が「盗品」であるため、「被害者…は、盗難…の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。」(193条)という意味において、AにはDに対する動産回復請求権が認められる。
総合メモ
第194条
条文
第194条(盗品又は遺失物の回復)
占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
過去問・解説
(H28 予備 第5問 ウ)
Aは、その家でAの所有するカメラ(以下「甲」という。)を保管していたところ、カメラを販売する商人のBがAの家から甲を盗み、Cに売却した。Cは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。この場合、Aは、甲を盗まれた時から2年以内であっても、CがBに支払った代価を弁償しなければ、Cに対し、甲の返還を求めることができない。
Aは、その家でAの所有するカメラ(以下「甲」という。)を保管していたところ、カメラを販売する商人のBがAの家から甲を盗み、Cに売却した。Cは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。この場合、Aは、甲を盗まれた時から2年以内であっても、CがBに支払った代価を弁償しなければ、Cに対し、甲の返還を求めることができない。
(正答) 〇
(解説)
Dは、即時取得(192条)の要件を満たしているが、甲が「盗品」であるため、「被害者…は、盗難…の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。」(193条)という意味において、BにはCに対する動産回復請求権が認められる。
もっとも、「占有者」であるCは、「盗品…その物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けた」のだから、「被害者」であるAは、「占有者」であるCが支払った代価を弁償しなければ、甲を回復することができない(194条)。
Dは、即時取得(192条)の要件を満たしているが、甲が「盗品」であるため、「被害者…は、盗難…の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。」(193条)という意味において、BにはCに対する動産回復請求権が認められる。
もっとも、「占有者」であるCは、「盗品…その物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けた」のだから、「被害者」であるAは、「占有者」であるCが支払った代価を弁償しなければ、甲を回復することができない(194条)。
総合メモ
第196条
条文
第196条(占有者による費用の償還請求)
① 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
② 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
① 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
② 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
過去問・解説
(H23 司法 第11問 ア)
占有者が占有物から生ずる果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
占有者が占有物から生ずる果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
(正答) 〇
(解説)
196条1項は、本文において「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と規定している。
196条1項は、本文において「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と規定している。
(H23 共通 第27問 ウ)
Aを貸主、Bを借主とするA所有の甲建物の使用貸借契約に関して、甲建物についてBが有益費を支出し、使用貸借契約の終了時に、Bがその支出した金額の支払をAに対して求めた場合、Aは、Bが支出した金額ではなく、Bが有益費を支出したことによる甲建物の増価額をBに支払うことができる。
Aを貸主、Bを借主とするA所有の甲建物の使用貸借契約に関して、甲建物についてBが有益費を支出し、使用貸借契約の終了時に、Bがその支出した金額の支払をAに対して求めた場合、Aは、Bが支出した金額ではなく、Bが有益費を支出したことによる甲建物の増価額をBに支払うことができる。
(正答) 〇
(解説)
595条は、1項において「借主は、借用物の通常の必要費を負担する。」と規定する一方で、2項において、「第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。」と規定している。後者の規定により、使用借主が目的物について有益費を支出した場合、583条2項が準用される。
583条2項は、本文において、「買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第196条の規定に従い、その償還をしなければならない。」と規定しており、196条は、2項本文において、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定している。
したがって、Aは、「回復者」である自己の選択に従い、Bが支出した金額ではなく、Bが有益費を支出したことによる甲建物の増価額をBに支払うことができる。
595条は、1項において「借主は、借用物の通常の必要費を負担する。」と規定する一方で、2項において、「第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。」と規定している。後者の規定により、使用借主が目的物について有益費を支出した場合、583条2項が準用される。
583条2項は、本文において、「買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第196条の規定に従い、その償還をしなければならない。」と規定しており、196条は、2項本文において、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定している。
したがって、Aは、「回復者」である自己の選択に従い、Bが支出した金額ではなく、Bが有益費を支出したことによる甲建物の増価額をBに支払うことができる。
(H26 共通 第36問 イ)
占有者は、占有物について通常の必要費を支出した場合であっても、果実を取得したときには、回復者にその償還をさせることはできない。
占有者は、占有物について通常の必要費を支出した場合であっても、果実を取得したときには、回復者にその償還をさせることはできない。
(正答) 〇
(解説)
196条1項は、本文において「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と規定している。
196条1項は、本文において「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と規定している。
(H26 共通 第36問 オ)
抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について通常の必要費を支出した場合には、果実を取得したときであっても、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。
抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について通常の必要費を支出した場合には、果実を取得したときであっても、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。
(正答) ✕
(解説)
391条は、「抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第196条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。」と規定している。
196条1項は、本文において「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と規定している。したがって、抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について通常の必要費を支出した場合において、果実を取得したときは、抵当不動産の代価から他の債権者より先にその償還を受けることができない。
391条は、「抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第196条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。」と規定している。
196条1項は、本文において「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と規定している。したがって、抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について通常の必要費を支出した場合において、果実を取得したときは、抵当不動産の代価から他の債権者より先にその償還を受けることができない。
(H28 司法 第35問 オ)
土地について有益費を支出し、その価格の増加が現存する場合において、地上権者と賃借人は、いずれも、その選択に従い、支出した金額又は増価額の償還を土地所有者に請求することができる。
土地について有益費を支出し、その価格の増加が現存する場合において、地上権者と賃借人は、いずれも、その選択に従い、支出した金額又は増価額の償還を土地所有者に請求することができる。
(正答) ✕
(解説)
608条2項本文は、「賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還を請求しなければならない。」と規定している。
196条2項本文は、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定している。
したがって、賃借人は、「回復者」である賃貸人の選択に従い、その支出した金額又は増価額の償還を請求することができる。これらの規定の類推適用を受ける地上権者についても、同様である。
本肢は、地上権者と賃借人が、自らの選択により、その支出した金額又は増価額の償還を請求することができる、としている点において、誤っている。選択権を有するのは、「回復者」である土地の所有者である。
608条2項本文は、「賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還を請求しなければならない。」と規定している。
196条2項本文は、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定している。
したがって、賃借人は、「回復者」である賃貸人の選択に従い、その支出した金額又は増価額の償還を請求することができる。これらの規定の類推適用を受ける地上権者についても、同様である。
本肢は、地上権者と賃借人が、自らの選択により、その支出した金額又は増価額の償還を請求することができる、としている点において、誤っている。選択権を有するのは、「回復者」である土地の所有者である。
(H30 司法 第24問 エ)
借主が有益費を支出した場合において、その価格の増加が現存するときは、貸主は、その選択に従い、借主が支出した金額又は増価額のいずれかを償還すれば足りる。
借主が有益費を支出した場合において、その価格の増加が現存するときは、貸主は、その選択に従い、借主が支出した金額又は増価額のいずれかを償還すれば足りる。
(正答) 〇
(解説)
使用貸借契約と賃貸借契約のいずれにおいても、借主が有益費を支出した場合については、196条2項が準用される(595条2項、608条2項)。
196条2項は、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費」について、「その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる」と規定している。
借主が有益費を支出した場合において、その価格の増加が現存するときは、貸主は、その選択に従い、借主が支出した金額又は増価額のいずれかを償還すれば足りる。
使用貸借契約と賃貸借契約のいずれにおいても、借主が有益費を支出した場合については、196条2項が準用される(595条2項、608条2項)。
196条2項は、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費」について、「その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる」と規定している。
借主が有益費を支出した場合において、その価格の増加が現存するときは、貸主は、その選択に従い、借主が支出した金額又は増価額のいずれかを償還すれば足りる。
(R3 司法 第36問 エ)
Aの所有する甲土地を悪意で占有していたBは、甲土地をAに返還する場合には、甲土地に関して支出した通常の必要費の償還をAに請求することはできない。
Aの所有する甲土地を悪意で占有していたBは、甲土地をAに返還する場合には、甲土地に関して支出した通常の必要費の償還をAに請求することはできない。
(正答) ✕
(解説)
196条1項本文は、「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定しているにとどまるから、同条1項に基づく必要費償還請求権の成否において占有者の善意・悪意は問われない。
196条1項本文は、「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定しているにとどまるから、同条1項に基づく必要費償還請求権の成否において占有者の善意・悪意は問われない。
(R4 司法 第37問 ア)
占有者が所有者に占有物を返還する際に所有者に有益費の償還を請求する場合には、その占有者が善意であったときでも、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
占有者が所有者に占有物を返還する際に所有者に有益費の償還を請求する場合には、その占有者が善意であったときでも、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
(正答) ✕
(解説)
196条2項は、本文において「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」と規定している。
196条2項は、本文において「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」と規定している。
総合メモ
第197条
条文
第197条(占有の訴え)
占有者は、次条から第202条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。
占有者は、次条から第202条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。
過去問・解説
(H23 司法 第10問 2)
占有者が物の占有を奪われたときは、奪われる前のその占有が所有の意思をもってする場合であっても所有の意思をもってする場合でなくても、占有回収の訴えによりその物の返還を請求することができる。
占有者が物の占有を奪われたときは、奪われる前のその占有が所有の意思をもってする場合であっても所有の意思をもってする場合でなくても、占有回収の訴えによりその物の返還を請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
197条後段は、「他人のために占有をする者」(他主占有者)も「占有の訴えを提起することができる」と規定している。したがって、所有の意思をもって占有をする場合でなくても、占有回収の訴え(200条1項)によりその物の返還を請求することができる。
197条後段は、「他人のために占有をする者」(他主占有者)も「占有の訴えを提起することができる」と規定している。したがって、所有の意思をもって占有をする場合でなくても、占有回収の訴え(200条1項)によりその物の返還を請求することができる。
(H26 司法 第10問 1)
A所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが海外出張のため1週間大学を留守にしていた間に、Cが甲を盗み出して現に所持している場合、Bは、Cに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることができる。
A所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが海外出張のため1週間大学を留守にしていた間に、Cが甲を盗み出して現に所持している場合、Bは、Cに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることができる。
(正答) 〇
(解説)
197条後段は、「他人のために占有をする者」(他主占有者)も「占有の訴えを提起することができる」と規定している。したがって、他主占有者であるBも、Cに対し、占有回収の訴え(200条1項)により甲の返還を求めることができる。
197条後段は、「他人のために占有をする者」(他主占有者)も「占有の訴えを提起することができる」と規定している。したがって、他主占有者であるBも、Cに対し、占有回収の訴え(200条1項)により甲の返還を求めることができる。
(R2 司法 第9問 ウ)
Aは自己の所有する工作機械をBに賃貸していたが、Bは、工作機械の賃貸借契約継続中に工作機械をCに窃取された。この場合、Bは、Aから独立して、Cに対して占有回収の訴えを提起することができる。
Aは自己の所有する工作機械をBに賃貸していたが、Bは、工作機械の賃貸借契約継続中に工作機械をCに窃取された。この場合、Bは、Aから独立して、Cに対して占有回収の訴えを提起することができる。
(正答) 〇
(解説)
197条後段は、「他人のために占有をする者」(他主占有者)も「占有の訴えを提起することができる」と規定している。したがって、他主占有者であるBも、Aから独立して、Cに対し、占有回収の訴え(200条1項)を提起することができる。
197条後段は、「他人のために占有をする者」(他主占有者)も「占有の訴えを提起することができる」と規定している。したがって、他主占有者であるBも、Aから独立して、Cに対し、占有回収の訴え(200条1項)を提起することができる。
(R5 司法 第10問 ウ)
Aが所有する動産甲についてBが留置権を行使している場合において、CがBのもとから甲を窃取したときは、Bは、Cに対して、占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができない。
Aが所有する動産甲についてBが留置権を行使している場合において、CがBのもとから甲を窃取したときは、Bは、Cに対して、占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができない。
(正答) ✕
(解説)
197条後段は、「他人のために占有をする者」(他主占有者)も「占有の訴えを提起することができる」と規定している。したがって、他主占有者であるBも、Cに対し、占有回収の訴え(200条1項)によって甲の返還を求めることができる。
197条後段は、「他人のために占有をする者」(他主占有者)も「占有の訴えを提起することができる」と規定している。したがって、他主占有者であるBも、Cに対し、占有回収の訴え(200条1項)によって甲の返還を求めることができる。
総合メモ
第200条
条文
第200条(占有回収の訴え)
① 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
② 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
① 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
② 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
過去問・解説
(H24 共通 第10問 1)
Aは、Bから動産甲を買い受け、占有改定の方法で引渡しを受けたが、その後、Bは、動産甲をCに奪われてしまった。この場合、Aは、所有権に基づいてCに対して動産甲の返還を請求することができるのみでなく、Cに対して占有回収の訴えを起こすことができる。
Aは、Bから動産甲を買い受け、占有改定の方法で引渡しを受けたが、その後、Bは、動産甲をCに奪われてしまった。この場合、Aは、所有権に基づいてCに対して動産甲の返還を請求することができるのみでなく、Cに対して占有回収の訴えを起こすことができる。
(正答) 〇
(解説)
Aは、占有改定の方法(183条)により動産甲の引渡しを受けたのだから、動産甲の「占有者」に当たる。
したがって、Aは、Cにより動産甲の「占有を奪われた」として、Cに対して占有回収の訴え(200条1項)を起こすことができる。
Aは、占有改定の方法(183条)により動産甲の引渡しを受けたのだから、動産甲の「占有者」に当たる。
したがって、Aは、Cにより動産甲の「占有を奪われた」として、Cに対して占有回収の訴え(200条1項)を起こすことができる。
(H26 司法 第10問 3)
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが研究室から自宅に甲を持ち帰る途中、電車内に甲を置き忘れたところ、Fがこれを拾得して現に所持している場合、Bは、Fに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることができる。
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが研究室から自宅に甲を持ち帰る途中、電車内に甲を置き忘れたところ、Fがこれを拾得して現に所持している場合、Bは、Fに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることができる。
(正答) ✕
(解説)
占有回収の訴え(200条1項)は、「占有を奪われたとき」に限り認められるものである。ここでいう「占有を奪われたとき」とは、占有者がその意思に反して占有を奪われることを意味し、詐取や遺失はこれに当たらない(大判大11.11.28)。
他主占有者であるBは、電車内に甲を置き忘れただけであり、FがBの意思に反して甲を奪ったわけではないから、「占有を奪われたとき」には該当しない。
したがって、Bは、Fに対し、占有回収の訴え(200条1項)により甲の返還を求めることはできない。
占有回収の訴え(200条1項)は、「占有を奪われたとき」に限り認められるものである。ここでいう「占有を奪われたとき」とは、占有者がその意思に反して占有を奪われることを意味し、詐取や遺失はこれに当たらない(大判大11.11.28)。
他主占有者であるBは、電車内に甲を置き忘れただけであり、FがBの意思に反して甲を奪ったわけではないから、「占有を奪われたとき」には該当しない。
したがって、Bは、Fに対し、占有回収の訴え(200条1項)により甲の返還を求めることはできない。
(H26 予備 第5問 1)
Aが所有して占有する動産を奪ったBが、この動産をCに売って引き渡した場合について、Cが、Bによる占有侵奪の事実を知っていたときは、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる。
Aが所有して占有する動産を奪ったBが、この動産をCに売って引き渡した場合について、Cが、Bによる占有侵奪の事実を知っていたときは、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる。
(正答) 〇
(解説)
200条2項は、本文において「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。」と規定する一方で、但書において「ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。」と規定している。Cが、Bによる占有侵害の事実を知っていたときは、「その承継人が侵奪の事実を知っていたとき」に当たるから、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる。
200条2項は、本文において「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。」と規定する一方で、但書において「ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。」と規定している。Cが、Bによる占有侵害の事実を知っていたときは、「その承継人が侵奪の事実を知っていたとき」に当たるから、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる。
(R2 司法 第9問 ア)
Aは自己の所有するコピー機をBに賃貸していたが、Bはコピー機の賃貸借契約が終了した後もコピー機を使用し続け、Aに返還しなかった。この場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えによりコピー機の返還を請求することができる。
Aは自己の所有するコピー機をBに賃貸していたが、Bはコピー機の賃貸借契約が終了した後もコピー機を使用し続け、Aに返還しなかった。この場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えによりコピー機の返還を請求することができる。
(正答) ✕
(解説)
占有回収の訴え(200条1項)は、「占有を奪われたとき」に限り認められるものである。ここでいう「占有を奪われたとき」とは、占有者がその意思に反して占有を奪われることを意味し、詐取や遺失はこれに当たらない(大判大11.11.28)。
Aはコピー機をBに賃貸したところ、Bがコピー機の賃貸借契約が終了した後もコピー機をAに返還しなかっただけであり、BがAの意思に反してその占有を奪ったわけではないから、「占有を奪われたとき」に当たらない。
したがって、Aは、Bに対し、占有回収の訴え(200条1項)によりコピー機の返還を請求することができる。
占有回収の訴え(200条1項)は、「占有を奪われたとき」に限り認められるものである。ここでいう「占有を奪われたとき」とは、占有者がその意思に反して占有を奪われることを意味し、詐取や遺失はこれに当たらない(大判大11.11.28)。
Aはコピー機をBに賃貸したところ、Bがコピー機の賃貸借契約が終了した後もコピー機をAに返還しなかっただけであり、BがAの意思に反してその占有を奪ったわけではないから、「占有を奪われたとき」に当たらない。
したがって、Aは、Bに対し、占有回収の訴え(200条1項)によりコピー機の返還を請求することができる。
(R5 司法 第10問 エ)
Aが所有し占有する動産甲を窃取したBが、その事実につき善意であるCに甲を売却し引き渡した場合、Aは、Cに対して、占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができない。
Aが所有し占有する動産甲を窃取したBが、その事実につき善意であるCに甲を売却し引き渡した場合、Aは、Cに対して、占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができない。
(正答) 〇
(解説)
200条2項は、本文において「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。」と規定する一方で、但書において「ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。」と規定している。Cは、Bによる「侵奪の事実」につき善意であるから、「その承継人が侵奪の事実を知っていたとき」には当たらない。
したがって、Aは、Cに対して、占有回収の訴え(200条1項)によって甲の返還を求めることができない。
200条2項は、本文において「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。」と規定する一方で、但書において「ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。」と規定している。Cは、Bによる「侵奪の事実」につき善意であるから、「その承継人が侵奪の事実を知っていたとき」には当たらない。
したがって、Aは、Cに対して、占有回収の訴え(200条1項)によって甲の返還を求めることができない。
総合メモ
第201条
条文
第201条(占有の訴えの提起期間)
① 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。
② 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
③ 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。
① 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。
② 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
③ 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。
過去問・解説
(H21 司法 第8問 オ)
占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。
占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。
(正答) 〇
(解説)
201条3項は、占有回収の訴えの提訴期間について、「占有を奪われた時から1年以内」と規定している。
201条3項は、占有回収の訴えの提訴期間について、「占有を奪われた時から1年以内」と規定している。
(H30 共通 第8問 ア)
占有保持の訴えは、妨害の存する間のみ提起することができる。
占有保持の訴えは、妨害の存する間のみ提起することができる。
(正答) ✕
(解説)
201条1項本文は、占有保持の訴えの提訴期間について、「妨害の存する間又はその消滅した後1年以内」と規定している。
201条1項本文は、占有保持の訴えの提訴期間について、「妨害の存する間又はその消滅した後1年以内」と規定している。
(R2 司法 第9問 オ)
Aは、別荘地に土地を所有していた。その隣地の所有者であったBは、Aに無断で境界を越えてA所有の土地に塀を作り始め、2年後にその塀が完成した。Aは、この時点において、Bに対し、占有保持の訴えによりその塀の撤去を請求することはできない。
Aは、別荘地に土地を所有していた。その隣地の所有者であったBは、Aに無断で境界を越えてA所有の土地に塀を作り始め、2年後にその塀が完成した。Aは、この時点において、Bに対し、占有保持の訴えによりその塀の撤去を請求することはできない。
(正答) 〇
(解説)
201条1項は、占有保持の訴えの提訴期間について、本文において「妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。」と規定する一方で、但書において「ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。」と規定している。
201条1項は、占有保持の訴えの提訴期間について、本文において「妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。」と規定する一方で、但書において「ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。」と規定している。
(R3 司法 第8問 ア)
Aが自己所有の甲土地につき宅地造成工事を開始したために、隣接する乙土地に危険が生じている場合、乙土地に居住するBは、工事開始時から1年が経過したときであっても、工事が完成する前であれば、Aに対して占有保全の訴えを提起することができる。
Aが自己所有の甲土地につき宅地造成工事を開始したために、隣接する乙土地に危険が生じている場合、乙土地に居住するBは、工事開始時から1年が経過したときであっても、工事が完成する前であれば、Aに対して占有保全の訴えを提起することができる。
(正答) ✕
(解説)
201条2項は、「占有保全の訴え」の提訴期間について、本文において「妨害の危険の存する間は、提起することができる。」と規定する一方で、但書において「この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。」として、「ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。」と規定する201条1項後段を準用している。
Bは、「工事に着手した時から1年を経過」している以上、工事が完成する前であっても、Aに対して占有保全の訴え(199条)を提起することができない。
201条2項は、「占有保全の訴え」の提訴期間について、本文において「妨害の危険の存する間は、提起することができる。」と規定する一方で、但書において「この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。」として、「ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。」と規定する201条1項後段を準用している。
Bは、「工事に着手した時から1年を経過」している以上、工事が完成する前であっても、Aに対して占有保全の訴え(199条)を提起することができない。
総合メモ
第202条
条文
第202条(本権の訴えとの関係)
① 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
② 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。
① 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
② 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。
過去問・解説
(R3 司法 第8問 イ)
Aが占有していた動産甲をBが奪取した場合において、Bが甲の所有者であることが明らかになったときは、Aによる占有回収の訴えは認められない。
Aが占有していた動産甲をBが奪取した場合において、Bが甲の所有者であることが明らかになったときは、Aによる占有回収の訴えは認められない。
(正答) ✕
(解説)
202条2項は、「占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。」と規定している。したがって、Aによる占有回収の訴え(200条1項)において、Bが甲の所有者であることが明らかになったとしても、その事実は請求棄却をもたらす理由にはならない。
202条2項は、「占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。」と規定している。したがって、Aによる占有回収の訴え(200条1項)において、Bが甲の所有者であることが明らかになったとしても、その事実は請求棄却をもたらす理由にはならない。
(R5 司法 第10問 ア)
Aが所有し占有する動産甲をBが窃取した場合、Aは、Bに対して、所有権に基づく甲の返還請求と、占有回収の訴えによる甲の返還請求とを同時にすることができる。
Aが所有し占有する動産甲をBが窃取した場合、Aは、Bに対して、所有権に基づく甲の返還請求と、占有回収の訴えによる甲の返還請求とを同時にすることができる。
(正答) 〇
(解説)
202条1項は、「占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。」と規定している。したがって、Aは、Bに対して、本権の訴えである所有権に基づく甲の返還請求と、占有の訴えである占有回収の訴え(200条1項)による甲の返還請求を同時にすることができる。
202条1項は、「占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。」と規定している。したがって、Aは、Bに対して、本権の訴えである所有権に基づく甲の返還請求と、占有の訴えである占有回収の訴え(200条1項)による甲の返還請求を同時にすることができる。
総合メモ
第203条
条文
第203条(占有権の消滅事由)
占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。
占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。
過去問・解説
(H19 司法 第5問 2)
取得時効が成立するためには、占有が時効期間中継続していることが必要であり、侵奪行為によって目的物の占有が失われた場合には、その後、占有回収の訴えによってその占有を回復しても、取得時効は中断する。
取得時効が成立するためには、占有が時効期間中継続していることが必要であり、侵奪行為によって目的物の占有が失われた場合には、その後、占有回収の訴えによってその占有を回復しても、取得時効は中断する。
(正答) ✕
(解説)
203条本文は、「占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。」と規定し、164条は、「第162条の規定による時効は、…占有者が…他人によってその占有を奪われたときは、中断する。」と規定している。
しかし、203条但書は、上記の例外として、「占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りではない。」として、占有権の消滅を否定している。
本肢の事例では、侵奪行為によって目的物の占有が失われた後に、占有回収の訴えによってその占有を回復しているから、203条但書により、占有権は消滅しない。
したがって、「占有者が…他人によってその占有を奪われたとき」にも当たらないから、取得時効は中断しない。
なお、判例(最判昭44.12.2)は、203条本文及び但書について、「民法203条本文によれば、占有権は占有者が占有物の所持を失うことによつて消滅するのであり、ただ、占有者は、同条但書により、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と解している。
203条本文は、「占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。」と規定し、164条は、「第162条の規定による時効は、…占有者が…他人によってその占有を奪われたときは、中断する。」と規定している。
しかし、203条但書は、上記の例外として、「占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りではない。」として、占有権の消滅を否定している。
本肢の事例では、侵奪行為によって目的物の占有が失われた後に、占有回収の訴えによってその占有を回復しているから、203条但書により、占有権は消滅しない。
したがって、「占有者が…他人によってその占有を奪われたとき」にも当たらないから、取得時効は中断しない。
なお、判例(最判昭44.12.2)は、203条本文及び但書について、「民法203条本文によれば、占有権は占有者が占有物の所持を失うことによつて消滅するのであり、ただ、占有者は、同条但書により、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と解している。
(R6 司法 第6問 エ)
所有権の取得時効は、占有者が他人によって物の占有を奪われたときであっても、占有回収の訴えにより現実にその物の占有を回復したときは、中断しない。
所有権の取得時効は、占有者が他人によって物の占有を奪われたときであっても、占有回収の訴えにより現実にその物の占有を回復したときは、中断しない。
(正答) 〇
(解説)
203条本文は、「占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。」と規定し、164条は、「第162条の規定による時効は、…占有者が…他人によってその占有を奪われたときは、中断する。」と規定している。
しかし、203条但書は、上記の例外として、「占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りではない。」として、占有権の消滅を否定している。
したがって、占有者が他人によって物の占有を奪われたときであっても、占有回収の訴えにより現実にその物の占有を回復したときは、203条但書により占有権は消滅せず、それゆえに「占有者が…他人によってその占有を奪われたとき」にも当たらないから、取得時効は中断しない。なお、判例(最判昭44.12.2)は、203条本文及び但書について、「民法203条本文によれば、占有権は占有者が占有物の所持を失うことによつて消滅するのであり、ただ、占有者は、同条但書により、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と解している。
203条本文は、「占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。」と規定し、164条は、「第162条の規定による時効は、…占有者が…他人によってその占有を奪われたときは、中断する。」と規定している。
しかし、203条但書は、上記の例外として、「占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りではない。」として、占有権の消滅を否定している。
したがって、占有者が他人によって物の占有を奪われたときであっても、占有回収の訴えにより現実にその物の占有を回復したときは、203条但書により占有権は消滅せず、それゆえに「占有者が…他人によってその占有を奪われたとき」にも当たらないから、取得時効は中断しない。なお、判例(最判昭44.12.2)は、203条本文及び但書について、「民法203条本文によれば、占有権は占有者が占有物の所持を失うことによつて消滅するのであり、ただ、占有者は、同条但書により、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と解している。