現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

地上権、永小作権、地役権

第265条

条文
第265条(地上権の内容)
 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
過去問・解説
(H18 司法 第9問 1)
用益物権は、不動産にのみ成立する。

(正答)  

(解説)
地上権(265条以下)、永小作権(270条以下)、地役権(280条以下)及び入会権(294条)は、土地についてのみ認められている。

(R2 司法 第10問 ウ)
地上権は、工作物又は竹木を所有する目的で土地を使用する権利である。

(正答)  

(解説)
265条は、「地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。」と規定している。
総合メモ

第266条

条文
第266条(地代)
① 第274条から第276条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。
② 地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。
過去問・解説
(H25 司法 第11問 オ)
定期の地代を支払うべき地上権者が引き続き2年以上地代の支払を怠ったときは、土地の所有者は、地上権の消滅を請求することができる。

(正答)  

(解説)
276条は、「永小作人が引き続き2年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる。」と規定しており、同条は、「地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合」について準用される(266条1項)。
したがって、定期の地代を支払うべき地上権者が引き続き2年以上地代の支払を怠ったときは、土地の所有者は、地上権の消滅を請求することができる。

(H30 司法 第9問 ア)
無償の地上権を設定することはできない。

(正答)  

(解説)
266条1項は、「地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について…」と規定している。ここから、地代の支払を要しない無償の地上権も認められていることが分かる。
なお、270条が「永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。」と規定していることから、無償の永小作権は認められていない。
総合メモ

第268条

条文
第268条(地上権の存続期間)
① 設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは、地上権者は、いつでもその権利を放棄することができる。ただし、地代を支払うべきときは、1年前に予告をし、又は期限の到来していない1年分の地代を支払わなければならない。
② 地上権者が前項の規定によりその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により、20年以上50年以下の範囲内において、工作物又は竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮して、その存続期間を定める。
過去問・解説
(H30 司法 第9問 イ)
地上権は、存続期間を定めないで、設定することができる。

(正答)  

(解説)
268条1項本文は、「設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において…」と規定している。したがって、地上権は、存続期間を定めないで設定することもできる。

(R4 予備 第5問 エ)
地上権は、存続期間を定めずに設定することができる。

(正答)  

(解説)
268条1項本文は、「設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において…」と規定している。したがって、地上権は、存続期間を定めないで設定することもできる。
総合メモ

第269条の2

条文
第269条の2(地下又は空間を目的とする地上権)
① 地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。
② 前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない。
過去問・解説
(R2 司法 第10問 エ)
地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。

(正答)  

(解説)
269条の2第1項前段は、「地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。」と規定している。

(R4 予備 第5問 ウ)
建物を所有する目的で地上権が設定されている土地には、地下又は空間を目的とする地上権は、設定することができない。

(正答)  

(解説)
269条の2は、第1項前段において「地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる」と規定し、2第2項前段において「前項の地上権は、第三者がその土地の使用…する権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる」と規定している。
したがって、建物を所有する目的で地上権が設定されている土地であっても、地下又は空間を目的とする地上権を設定することができる。
総合メモ

第270条

条文
第270条(永小作権の内容)
 永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。
過去問・解説
(H30 司法 第9問 ウ)
無償の永小作権を設定することはできない。

(正答)  

(解説)
270条は、「永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する」と規定しており、また、無償の永小作権を設定できる旨の規定も存在しない。したがって、無償の永小作権を設定することはできない。

(R5 共通 第12問 ウ)
無償の永小作権は、設定することができない。

(正答)  

(解説)
270条は、「永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する」と規定しており、また、無償の永小作権を設定できる旨の規定も存在しない。したがって、無償の永小作権を設定することはできない。
総合メモ

第278条

条文
第278条(永小作権の存続期間)
① 永小作権の存続期間は、20年以上50年以下とする。設定行為で50年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。
② 永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から50年を超えることができない。
③ 設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、30年とする。
過去問・解説
(R2 司法 第10問 イ)
約定による地上権の存続期間は、20年以上50年以下の範囲内で定めなければならない。

(正答)  

(解説)
278条1項は、永小作権の存続期間について、「永小作権の存続期間は、20年以上50年以下とする。設定行為で50年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。」と規定している。
これに対し、約定による地上権については、存続期間に関する規定は存在しない。
総合メモ

第280条

条文
第280条(地役権の内容)
 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第3章第1節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
過去問・解説
(H25 司法 第11問 ウ)
地役権者は、承役地の所有者に対し、必ず便益の対価を支払わなければならない。

(正答)  

(解説)
280条本文は、「地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。」と規定するにとどまり、永小作権のように「小作料を支払って」(270条)といった文言は用いられていない。また、その他に、地役権において対価の支払いを必須とする旨の規定は存在しない。したがって、地役権における対価の支払いの要否は設定行為によって定まるものであり、対価の支払いを要しない地役権も認められる。

(H30 司法 第9問 エ)
無償の地役権を設定することはできない。

(正答)  

(解説)
280条本文は、「地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。」と規定するにとどまり、永小作権のように「小作料を支払って」(270条)といった文言は用いられていない。また、その他に、地役権において対価の支払いを必須とする旨の規定は存在しない。したがって、地役権における対価の支払いの要否は設定行為によって定まるものであり、対価の支払いを要しない地役権も認められる。

(H30 司法 第9問 オ)
地役権は、存続期間を定めないで、設定することができる。

(正答)  

(解説)
278条1項は、永小作権の存続期間について、「永小作権の存続期間は、20年以上50年以下とする。設定行為で50年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。」と規定している。
これに対し、地役権については、存続期間に関する規定は存在しない。
したがって、地役権は、存続期間を定めないで、設定することができる。
総合メモ

第281条

条文
第281条(地役権の付従性)
① 地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
② 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
過去問・解説
(R3 司法 第7問 オ)
地役権の要役地の所有権を単独で相続した者は、地役権設定行為に別段の定めがないときは、その土地の地役権も相続する。

(正答)  

(解説)
281条1項は、「地役権は、要役地…の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。」と規定している。
したがって、地役権の要役地の所有権を単独で相続した者は、地役権設定行為に別段の定めがないときは、その土地の地役権も相続する。

(R3 予備 第4問 エ)
Aは、自己の所有する甲土地を利用するため、B所有の乙土地の一部に通路を開設し、その通路を通行していた。AがBから通行地役権の設定を受けていた場合、Aは、乙土地の通行を必要とするCに対し、甲土地の所有権を譲渡することなく、その通行地役権のみを譲渡することができる。

(正答)  

(解説)
281条2項は「地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。」と規定している。したがって、要役地の所有者は、要役地の所有権を譲渡することなく、その土地の通行地役権のみを譲渡することはできない。

(R6 司法 第12問 イ)
地役権は、設定行為に別段の定めがあるときを除き、要役地について存する地上権の目的となる。

(正答)  

(解説)
281条1項は、「地役権は、要役地…の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。」と規定している。
したがって、地役権は、設定行為に別段の定めがあるときを除き、要役地について存する地上権の目的となる。
総合メモ

第283条

条文
第283条(地役権の時効取得)
 地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
過去問・解説
(R5 司法 第7問 オ)
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

(正答)  

(解説)
283条は、「地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。」と規定している。

(R6 司法 第12問 オ)
通行地役権は、承役地となる土地の所有者によってその土地の上に通路が開設されたときでなければ、時効によって取得することができない。

(正答)  

(解説)
283条は、「地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。」と規定している。
判例(最判昭30.12.26)は、「継続」について、「承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によってなされることを要する」と解している。
総合メモ

第284条

条文
第284条(地役権の時効取得)
① 土地の共有者の1人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。
② 共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない。
③ 地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その1人について時効の完成猶予の事由があっても、時効は、各共有者のために進行する。
過去問・解説
(H25 共通 第8問 4)
土地の共有者の1人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者もこれを取得する。

(正答)  

(解説)
284条1項は、「土地の共有者の1人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。」と規定している。

(H28 司法 第10問 オ)
甲土地をAとBが共有する場合において、Bが、甲土地を要役地、C所有の乙土地を承役地とする通行地役権を時効により取得したときは、Aも、甲土地を要役地、乙土地を承役地とする通行地役権を取得する。

(正答)  

(解説)
284条1項は、「土地の共有者の1人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。」と規定している。
したがって、甲土地をAとBが共有する場合において、Bが、甲土地を要役地、C所有の乙土地を承役地とする通行地役権を時効により取得したときは、Aも、甲土地を要役地、乙土地を承役地とする通行地役権を取得する。

(R3 予備 第4問 オ)
Aは、自己の所有する甲土地を利用するため、B所有の乙土地の一部に通路を開設し、その通路を通行していた。Aが甲土地の2分の1の持分をCに譲渡して、A及びCが甲土地を共有するに至った場合において、Aが通行地役権を時効により取得したときは、Cも通行地役権を取得する。

(正答)  

(解説)
284条1項は、「土地の共有者の1人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。」と規定している。
したがって、A及びCが甲土地を共有している場合において、Aが通行地役権を時効により取得したときは、Cも通行地役権を取得する。
総合メモ

第286条

条文
第286条(承役地の所有者の工作物の設置義務等)
 設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。
過去問・解説
(R6 司法 第12問 ウ)
承役地の所有者が設定行為により自己の費用で地役権の行使のために工作物を設ける義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。

(正答)  

(解説)
286条は、「設定行為…により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け…る義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。」と規定している。
総合メモ

第291条

条文
第291条(地役権の消滅時効)
 第166条第2項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。
過去問・解説
(H24 司法 第9問 1)
債権は時効により消滅することがあるが、物権は時効により消滅することはない。

(正答)  

(解説)
確かに、所有権のように消滅時効の対象とならない物権も存在する。
しかし、291条は、「第166条第2項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。」と規定している。
したがって、物権の中には、時効により消滅するものもある。

(R3 予備 第4問 イ)
Aは、自己の所有する甲土地を利用するため、B所有の乙土地の一部に通路を開設し、その通路を通行していた。AがBから通行地役権の設定を受けていた場合において、その後、Aがこの通路を全く通行しなくなったときは、Aの地役権は、Aが通路を通行した最後の時を起算点として消滅時効にかかる。

(正答)  

(解説)
291条は、「第166条第2項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。」と規定している。
本肢の事例のように、通路が開設されている通行地役権は、「継続的に行使される地役権」に当たるから、その消滅時効の起算点は、「その行使を妨げる事実が生じた時」である。
総合メモ

第292条

条文
第292条(地役権の消滅時効)
 要役地が数人の共有に属する場合において、その1人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。
過去問・解説
(H22 司法 第10問 オ)
要役地の共有者の1人のために時効の完成猶予又は更新がある場合であっても、他の共有者との関係では、消滅時効は進行する。

(正答)  

(解説)
292条は、「要役地が数人の共有に属する場合において、その1人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。」と規定している。

(R6 司法 第12問 エ)
要役地が数人の共有に属するときは、共有者全員について消滅時効の更新事由がなければ、時効の更新は、その効力を生じない。

(正答)  

(解説)
292条は、「要役地が数人の共有に属する場合において、その1人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。」と規定している。
総合メモ