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分割債権及び分割債務、不可分債権及び不可分債務、連帯債権、連帯債務 - 解答モード
第428条
条文
次款(連帯債権)の規定(第433条及び第435条の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。
過去問・解説
(H28 共通 第17問 1)
金銭債権は、当事者の意思表示によって、不可分債権とすることはできない。
(R6 司法 第20問 イ)
A及びBがCに対し甲土地の引渡しを目的とする不可分債権を有する場合において、Cが死亡し、BがCを単独で相続したときは、Aは、Bに対し、甲土地の引渡しを請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
428条は、「次款(連帯債権)の規定(第433条及び第435条の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。」と規定しており、連帯債権における混同の絶対的効力を定めた435条を不可分債権に準用していないから(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂603頁)、不可分債権における混同は、相対効効力事由にとどまる(相対的効力の原則を定めた435条2の準用)。
本肢の事例では、A及びBがCに対し甲土地の引渡しを目的とする不可分債権を有する場合において、Cが死亡し、BがCを単独で相続したときは、連帯債権者の1人であるBと債務者Cとの間で混同が生じるところ、これは他の連帯債権者であるAに対してその効力を生じないから、Aは、Bに対し、甲土地の引渡しを請求することができる。
第429条
条文
不可分債権者の1人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その1人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない。
第430条
条文
第4款(連帯債務)の規定(第440条の規定を除く。)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。
第432条
条文
債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
過去問・解説
(R3 司法 第18問 ア)
A、B及びCの3人がDに対して連帯して600万円の金銭債権を有している(A、B及びCの分与されるべき利益は等しいものとする。)。Aは、Dに対して600万円全額の請求をするに当たり、B及びCの同意を得ることを要しない。
(正答) 〇
(解説)
432条は、連帯債権者による履行の請求について、「債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部…の履行を請求することができ…る。」と規定している。
本肢の事例では、A、B及びCの3人がDに対して連帯して600万円の金銭債権を有しており、「債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するとき」に当たるから、Aは、B及びCの同意を得ることなしに、Dに対して600万円全額の請求をすることができる。
(R6 司法 第20問 ア)
A及びBがCに対し100万円の連帯債権を有する場合において、AがCに履行の催告をしたときは、Bの債権についても、その時から6か月を経過するまでの間、時効の完成が猶予される。
(正答) 〇
(解説)
432条は、連帯債権者による履行の請求について、「債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部…の履行を請求することができ…る。」と規定している。また、150条1項は、「催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」と規定している。
本肢の事例では、A及びBがCに対し100万円の連帯債権を有するため、「債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するとき」に当たるから、Aは、Bの同意を得ることなしに、「全ての債権者のために全部…の履行を請求することができ…る」こととなる。したがって、AがCに履行の催告をしたときは、Bの債権についても、、「催告があったとき」という時効の完成猶予事由が認められるから、「その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」こととなる。
第433条
条文
連帯債権者の1人と債務者との間に更改又は免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない。
過去問・解説
(R3 司法 第18問 イ)
A、B及びCの3人がDに対して連帯して600万円の金銭債権を有している(A、B及びCの分与されるべき利益は等しいものとする。)。AがDに対して債権の全部を免除した場合であっても、BはDに対して400万円の限度で支払を請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
433条は、「連帯債権者の1人と債務者との間に…免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない。」と規定している。
本肢の事例では、「連帯債権者の1人」であるAと「債務者」Dの間で債権の全部の「免除」があったのだから、Aが「その権利を失わなければ分与されるべき利益」である200万円については、「他の連帯債権者」であるB及びCは、「履行を請求することができない」こととなる。したがって、残りの400万円の限度において、BはDに対して支払を請求することができる。
(R6 司法 第23問 イ)
A及びBがCに対し60万円の連帯債権を有し、その内部関係の割合が平等である場合において、AがCに対し債務を免除したときは、Bは、30万円の限度でのみ支払を請求することができる。
第434条
条文
債務者が連帯債権者の1人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対しても、その効力を生ずる。
過去問・解説
(R3 司法 第18問 エ)
A、B及びCの3人がDに対して連帯して600万円の金銭債権を有している。(A、B及びCの分与されるべき利益は等しいものとする。)DがAに対して300万円の金銭債権を有している場合において、DがAに対して相殺を援用したときは、その相殺は200万円の限度で効力を生ずる。
第435条
条文
連帯債権者の1人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなす。
過去問・解説
(R3 司法 第18問 オ)
A、B及びCの3人がDに対して連帯して600万円の金銭債権を有している。(A、B及びCの分与されるべき利益は等しいものとする。)CがDを単独で相続した場合には、Aは、Cに対して400万円の支払を請求することができる。
(正答) ✕
(解説)
435条は、「連帯債権者の1人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなす」として、混同の絶対的効力を定めている。
本肢の事例では、A、B及びCの3人がDに対して連帯して600万円の金銭債権を有している場合において、CがDを単独で相続したことにより、「連帯債権者の1人」であるCと「債務者」Dとの間で混同が生じ、「債務者」Dは、「連帯債権者の1人」であるCに対して、その持分である200万円について「弁済をしたものとみな」される。この場合、AがCに対して支払を請求することができるのは、Cの持分に相当する額である200万円に限られる(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂601頁)。
第435条の2
条文
第432条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の1人の行為又は1人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。ただし、他の連帯債権者の1人及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。
過去問・解説
(R3 司法 第18問 ウ)
A、B及びCの3人がDに対して連帯して600万円の金銭債権を有している(A、B及びCの分与されるべき利益は等しいものとする)。AのDに対する権利が時効により消滅したが、BのDに対する権利については消滅時効が完成していない場合、Bは、Dに対して600万円の支払を請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
435条の2本文は、「第432条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の1人の行為又は1人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。」として、連帯債権における相対的効力の原則を定めている。そして、432条から435条の規定では、連帯債権における絶対的効力事由として、時効による債権の消滅が挙げられていないから、これは相対的効力事由にとどまる。
したがって、AのDに対する権利が時効により消滅しても、これはBに対してはその効力を生じないから、BのDに対する権利は消滅していない。よって、Bは、Dに対して600万円の支払を請求することができる。
第437条
条文
連帯債務者の1人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。
過去問・解説
(H23 共通 第19問 5)
2人が貸金業者から連帯して100万円を借り入れた後、当該連帯債務者のうちの1人が成年被後見人であることを理由に当該契約を取り消した場合、他の連帯債務者は、成年被後見人の負担部分の債務を免れる。
第438条
条文
連帯債務者の1人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
過去問・解説
(H29 司法 第18問 イ)
連帯債務者の1人と債権者との間に更改があったときは、他の連帯債務者は従来の債務を免れ、更改によって新たに発生した債務について責任を負わない。
(R6 司法 第22問 ア)
債権者Aに対する債務者Bのα債務についてCを引受人とする債務の引受けがされた。
本件債務の引受けが併存的債務引受である場合において、AとCとの間に更改があったときは、α債務は、消滅する。
第439条
条文
① 連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
② 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
過去問・解説
(H26 司法 第18問 2)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている。BがAに対して有する金銭債権を自働債権として相殺をしても、C及びDに相殺の効力は及ばない。
(R2 共通 第17問 ウ)
ABCは、Dに対して、60万円の借入金債務(以下「甲債務」という。)を連帯して負担し、負担部分は均等とする合意をしていた。甲債務と相殺適状にある30万円の乙債務をDがCに対して負担している場合において、Cが乙債務につき相殺を援用しない間に、DがAに60万円の支払を請求したときは、Aは、20万円についてその支払を拒むことができる。
(R6 司法 第20問 ウ)
A及びBがCに対し100万円の連帯債務を負い、負担部分は平等であり、AがCに80万円の債権を有している。この場合において、CがBに100万円を請求したときは、Bは、50万円の限度で、AのCに対する債権を自働債権とし、CのAに対する債権を受働債権とする相殺をすることができる。
第440条
条文
連帯債務者の1人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。
過去問・解説
(H23 共通 第19問 2)
連帯債務者の1人が債権者の地位を単独で相続した場合、他の連帯債務者は、依然として連帯債務を負担する。
(H25 予備 第10問 3)
連帯債務者の1人がその連帯債務に係る債権を相続により取得し、当該債権が混同によって消滅した場合、その者は、他の連帯債務者に対して有する求償権の範囲内で、代位により連帯債務に係る債権を取得する。
(正答) 〇
(解説)
440条は、「連帯債務者の1人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。」として、連帯債務における混同の絶対的効力を定めている。したがって、連帯債務者の1人がその連帯債務に係る債権を相続により取得し、当該債権が混同によって消滅した場合、他の連帯債務者の債権も消滅することになる。
この場合、その連帯債務者は、「弁済をしたものとみな」されるため、「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たとき」として、「その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。」こととなる(442条1項)(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂576頁)。したがって、連帯債務者の1人がその連帯債務に係る債権を相続により取得し、当該債権が混同によって消滅した場合、その者は、他の連帯債務者に対して有する求償権の範囲内で、代位により連帯債務に係る債権を取得する(499条、501条1項)。
(H30 司法 第36問 ウ)
連帯債務者の1人と債権者との間に混同があったときは、当該連帯債務者は弁済をしたものとみなされ、他の連帯債務者に対して負担部分の割合に応じて求償することができる。
(正答) 〇
(解説)
440条は、「連帯債務者の1人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。」として、連帯債務における混同の絶対的効力を定めている。したがって、連帯債務者の1人と債権者との間に混同があったときは、当該連帯債務者は弁済をしたものとみなされる。この場合、その連帯債務者は、「弁済をしたものとみな」されるため、「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たとき」として、「その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。」こととなる(442条1項)(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂576頁)。
第441条
条文
第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の1人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
過去問・解説
(H21 司法 第30問 イ)
Aが所有し運転するタクシーに、Bが所有し運転する自家用車が衝突する交通事故が発生し、AB所有の各車両が損傷するとともに歩行者Cが負傷した。当該交通事故により、Aには50万円の損害が、Bには80万円の損害が、Cには100万円の損害が、それぞれ生じ、当該交通事故及びCの負傷についての過失割合はAが2割で、Bが8割であり、また、Cの負傷にはCの過失が認められなかった。CがAに対して事故後5年以内に損害賠償を請求する訴訟を提起した場合、同訴訟の提起は、BのCに対する損害賠償債務についても消滅時効の完成が猶予される。
(正答) ✕
(解説)
AとBは、共同不法行為者として、Cに対して損害賠償責任を負う(719条1項)。
平成29年改正前民法下では、連帯債務が真正連帯債務と不真正連帯債務に分類され、真正連帯債務についてのみ民法上の連帯債務の規定(436条以下)が適用されると理解されていたため、不真正連帯債務である共同不法行為者の損害賠償責任については民法上の連帯債務の規定は適用されず、その結果、弁済による債務消滅以外の事由については、共同不法行為者の一人に生じた事由は他の共同不法行為者に対してその効力を生じないとされていた。
しかし、平成29年改正民法下では、連帯債務が真正連帯債務に一本化されたため、改正前民法下において不真正連帯債務と理解されていた連帯債務関係についても、民法上の連帯債務の規定が適用されることとなった。その一環として、共同不法行為者の損害賠償債務についても、連帯債務の規定が適用される。その結果、共同不法行為者の損害賠償債務について、弁済による債務消滅以外の事由についても、絶対的効力が認められる余地がある。
441条本文は、「第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の1人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。」として相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予(147条1項1号)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、CがAに対して訴訟を提起した場合であっても、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予の効力は、Bには生じない。よって、BのCに対する損害賠償債務については、消滅時効の完成は猶予されない。
(H24 司法 第7問 エ)
AとBが連帯債務を負う場合において、Aが全部の負担部分を有するときは、Bが債権者に対して債務を承認しても、Aの債務について消滅時効は更新せず、その消滅時効が完成しても、Bは債務を免れることができない。
(H24 司法 第7問 オ)
AとBが夫婦の場合、Aが自己の単独名義でCと日常の家事に関して契約を締結して債務を負ったとき、CのAに対する債権の裁判上の請求により、CのBに対する債権の消滅時効も完成が猶予される。
(正答) ✕
(解説)
761条本文は、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。」と規定している。したがって、Aが自己の単独名義でCと「日常の家事に関して」契約を締結して債務を負ったとき、その債務についてA及びBは連帯債務者となる。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予(147条1項1号)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、CのAに対する債権の裁判上の請求により、CのAに対する債権の消滅時効は完成を猶予されるが、CのBに対する債権の消滅時効は完成を猶予されない。
(H24 予備 第9問 2)
主たる債務者の意思に反して連帯保証人となった者が、債権者から保証債務の履行を裁判上請求されたときは、主たる債務についての消滅時効の完成が猶予される。
(H24 予備 第9問 3)
主たる債務者から委託を受けて連帯保証人となった者が、債権者に対して保証債務を承認したときは、主たる債務についての消滅時効が更新される。
(正答) ✕
(解説)
普通保証では、弁済その他債権者に満足を与える事由(付従性により債権者に影響を及ぼす事由)を除いては、保証人について生じた事由は、主たる債務者に影響を及ぼさない。これに対し、連帯保証では、連帯保証人の一人について生じた事由について、相対的効力の原則(441条)を採用した上で、更改(438条)、相殺(439条)及び混同(440条)については主たる債務者に影響を及ぼすとされている(458条)。
連帯保証人の「権利の承認」(152条1項)による時効の更新は、相対効効力を有するにとどまるから、連帯保証人が債権者に対して保証債務を承認しても、保証債務の消滅時効が更新されるにとどまり、主たる債務についての消滅時効は更新されない。
(H25 司法 第18問 ウ)
共同不法行為者の1人に対してした債務免除の意思表示は、被害者が他の共同不法行為者に対する債務免除の意思を有していなくても、他の共同不法行為者の利益のためにその効力を生ずる。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正民法下では、連帯債務が真正連帯債務に一本化されたため、共同不法行為者の損害賠償債務も連帯債務として扱われ、連帯債務の規定の適用を受ける。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られている。したがって、債務免除(519条)は、本来は相対的効力を有するにとどまる。
他方で、441条1項但書は、「ただし、債権者及び他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。」と規定している。これは、債権者と他の連帯債務者の1人とが絶対的効力を持たせる旨の合意をすることにより、当該事由について絶対的効力を認めることができるとするものである(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂577頁)。本肢の事例では、債務免除について絶対的効力を持たせる旨の合意は認められないから、共同不法行為者の1人に対してした債務免除の意思表示は、他の共同不法行為者の利益のためにその効力を生ずることにはならない。
(H25 司法 第18問 オ)
被害者が共同不法行為者の1人に対して損害賠償債務の履行を請求しても、他の共同不法行為者の損害賠償債務の消滅時効は完成が猶予されない。
(正答) 〇
(解説)
平成29年改正民法下では、連帯債務が真正連帯債務に一本化されたため、共同不法行為者の損害賠償債務も連帯債務として扱われ、連帯債務の規定の適用を受ける。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予(147条1項1号)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、被害者が共同不法行為者の1人に対して損害賠償債務の履行を請求しても、他の共同不法行為者の損害賠償債務の消滅時効は完成が猶予されない。
(H26 司法 第18問 1)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている。AがBに対して履行の請求をしても、そのことを知らないC及びDについては、消滅時効の完成は猶予されない。
(H26 司法 第18問 3)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている。AがBに対して300万円の連帯債務の全額について免除をした場合には、C及びDは、Aに対し、200万円の連帯債務を負う。
(H26 司法 第18問 4)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている。Bのために消滅時効が完成しても、C及びDは、Aに対し、300万円の連帯債務を負う。
(H29 司法 第20問 イ)
債権者Aに対する債務者Bの債務について、Cを引受人とする併存的債務引受の効力が生じた場合において、Bの債務が時効により消滅したとしても、AはCに対して債務の全額を請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
470条1項は、「併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。」と規定しているから、併存的債務引受の引受人Cと債務者Bは、連帯債務者の関係にある。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、消滅時効(166条以下)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、Bの債務が時効により消滅したとしても、その効力はCには及ばないから、AはCに対して債務の全額を請求することができる。
(H29 共通 第30問 ア)
Aが運転するタクシーとBが運転するタクシーが衝突する交通事故(以下「本件事故」という。)が発生し、Aが運転するタクシーの乗客Cが負傷し、Cに300万円の損害が生じた。本件事故についての過失割合は、Aが4割で、Bが6割であり、Cに過失はなかった。CがAに対して、本件事故後20年以内に損害賠償を請求する訴訟を提起すれば、CのBに対する損害賠償請求権の消滅時効は完成しない。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正民法下では、連帯債務が真正連帯債務に一本化されたため、共同不法行為者の損害賠償債務も連帯債務として扱われ、連帯債務の規定の適用を受ける。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予(147条1項1号)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、被害者が共同不法行為者の1人に対して損害賠償債務の履行を請求しても、他の共同不法行為者の損害賠償債務の消滅時効は完成が猶予されない。よって、CがAに対して、本件事故後20年以内に損害賠償を請求する訴訟を提起しても、Bの損害賠償債務の消滅時効は完成を猶予されないから、CのBに対する損害賠償請求権の消滅時効(724条2号)が完成する。
(H29 司法 第18問 エ)
連帯債務者の1人が債務を承認したことによる時効の更新の効力は、他の連帯債務者には及ばない。
(H30 司法 第22問 エ)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている場合において、AがCに対して300万円の連帯債務全額について免除をしたときでも、B及びDは、Aに対し、300万円の連帯債務を負う。
(R2 共通 第17問 ア)
ABCは、Dに対して、60万円の借入金債務(以下「甲債務」という。)を連帯して負担し、負担部分は均等とする合意をしていた。DがAに対して甲債務の支払請求訴訟を提起し、請求を認容する判決が確定した場合において、D及びBが別段の意思を表示していないときは、甲債務の消滅時効は、Bについても判決確定の時から新たにその進行を始める。
(正答) ✕
(解説)
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、確定判決等による権利確定による消滅時効の更新(147条2項)は相対的効力を有するにとどまる。
D及びBが別段の意思を表示していないため、絶対的効力を持たせる旨の合意も認められないから、「債権者及び他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したとき」(441条但書)にも当たらない。したがって、原則通り、Dについて生じた確定判決による権利確定による消滅時効の更新の効力は、Bには及ばない。よって、甲債務の消滅時効は、Bについては、判決確定の時から新たにその進行を始めることにはならない。
(R2 共通 第17問 イ)
ABCは、Dに対して、60万円の借入金債務(以下「甲債務」という。)を連帯して負担し、負担部分は均等とする合意をしていた。DがCに対して甲債務を免除する意思表示をした場合において、D及びAが別段の意思を表示していないときは、DがAの債務を免除する意思を有していなかったとしても、Dは、Aに対して60万円の支払を請求することはできない。
(R6 司法 第23問 ウ)
A及びBがCに対し60万円の連帯債務を負担する場合において、CがAに対し債務を免除したときは、B及びCが別段の意思を表示していない限り、Cは、Bに60万円の支払を請求することができない。
第442条
条文
① 連帯債務者の1人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
② 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
過去問・解説
(H24 司法 第23問 4)
連帯債務者A、B及びCのうち、Aが債権者から債務の全額につき免除を受けた場合、Aは、B及びCに対し、各自の負担部分について求償権を取得する。
(H26 司法 第18問 5)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている。Bが60万円を弁済しても、Bの負担部分の範囲内であるから、C及びDに対して求償することはできない。
(R2 共通 第17問 エ)
ABCは、Dに対して、60万円の借入金債務(以下「甲債務」という。)を連帯して負担し、負担部分は均等とする合意をしていた。Bが、甲債務の履行期にDに対して18万円を支払った場合、A及びCに求償することはできない。
第443条
条文
① 他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の1人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
② 弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。
過去問・解説
(H24 司法 第23問 3)
連帯債務者であるAが債権者Bに対する自己の債権をもってする相殺が可能であった場合において、他の連帯債務者CがAに通知しないで債権者Bに弁済をしたとき、Aは、Cからの求償を拒むことができる。
(正答) 〇
(解説)
443条1項前段は、「他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の1人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。」と規定している。
本肢の事例では、「連帯債務者の1人」であるCが、「他の連帯債務者があることを知りながら」、「連帯債務者の1人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし…た場合」であり、かつ、「他の連帯債務者」であるAが債権者Bに対する自己の債権をもってする相殺が可能であったために「債権者に対抗することができる事由を有していた」のであるから、「他の連帯債務者」であるAは、「その負担部分について」、債権者Bに対する相殺をもって「共同の免責…を得た連帯債務者」であるCからの求償を拒むことができる。
(R2 共通 第17問 オ)
ABCは、Dに対して、60万円の借入金債務(以下「甲債務」という。)を連帯して負担し、負担部分は均等とする合意をしていた。甲債務と相殺適状にある20万円の乙債務をDがCに対して負担している場合において、Aが、Cが甲債務の連帯債務者であることを知りながら、Cに通知せずにDに60万円を支払ってCに求償し、Cが乙債務との相殺をもってAに対抗したときは、Aは、Dに対し、相殺によって消滅すべきであった乙債務20万円の支払を請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
443条1項前段は、「他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の1人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。」と規定している。本肢の事例では、「連帯債務者の1人」であるAが、「他の連帯債務者があることを知りながら」、「連帯債務者の1人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし…た場合」であり、かつ、「他の連帯債務者」であるCが債権者Dに対する乙債権をもってする相殺が可能であったために「債権者に対抗することができる事由を有していた」のであるから、「他の連帯債務者」であるCは、「その負担部分について」、債権者Dに対する相殺をもって「共同の免責…を得た連帯債務者」であるAからの求償を拒むことができる。
443条1項後段は、「この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。」と規定している。本肢の事例では、「その連帯債務者」であるAは、「債権者」Dに対し、「相殺によって消滅すべきであった債務の履行」として、乙債務20万円の支払を請求することができる。