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詐害行為取消権 - 解答モード

条文
第424条(詐害行為取消請求)
① 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
② 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
③ 債権者は、その債権が第1項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
④ 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。
過去問・解説

(H19 司法 第19問 ウ)
債務者と受益者との間の不動産売買契約が債権者の債権の発生原因より前にされた場合であっても、その所有権移転登記が債権者の債権発生後になされたときは、当該売買契約は、詐害行為取消権行使の対象となり得る。

(正答)  

(解説)
424条3項は、「債権者は、その債権が第1項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、…詐害行為取消請求…をすることができる。」と規定している。
本肢の事例では、債務者と受益者との間の不動産売買契約が債権者の債権の発生原因より前にされており、被保全「債権が第1項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合」に当たらないから、当該売買契約は、詐害行為取消権行使の対象となり得ない。


(H20 司法 第16問 ア)
債権者代位権を行使するためには、代位行使する権利よりも前に被保全債権が成立している必要はないが、詐害行為取消権を行使するためには、取消しの対象となる詐害行為は、被保全債権発生の原因が生じた後になされたものであることが必要である。

(正答)  

(解説)
424条2項は、詐害行為取消権について、「債権者は、その債権が第1項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、…詐害行為取消請求…をすることができる。」と規定しているため、取消しの対象となる詐害行為は、被保全債権発生の原因が生じた後になされたものであることが必要である。
これに対し、債権者代位権については、このような規定は存在しないから、代位行使する権利よりも前に被保全債権が成立している必要はない。


(H20 司法 第16問 エ)
詐害行為取消権は、訴訟において、抗弁としても行使することができる。

(正答)  

(解説)
424条1項本文は、「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。」と規定しており、詐害行為取消権は抗弁として主張することもできないと理解されている。


(H23 司法 第5問 3)
詐害行為の取消しは、債権者の請求に基づき、裁判所が行う。

(正答)  

(解説)
424条1項本文は、「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。」と規定している。したがって、詐害行為取消権は、債権者代位権(423条)と異なり、必ず裁判上で行使しなければならない。


(H26 共通 第17問 5)
詐害行為取消権は、訴訟において行使しなければならないが、訴えによる必要はなく、抗弁によって行使することもできる。

(正答)  

(解説)
424条1項本文は、「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。」と規定しており、詐害行為取消権は抗弁として主張することもできないと理解されている。


(H27 共通 第17問 エ)
AがBに対して融資をしていたところ、Bがその所有する建物をBの妻Cに贈与し、その旨の所有権移転登記手続をしたことから、Aが詐害行為取消訴訟を提起した。Aは、BC間の贈与契約が債権者であるAを害すること及びそのことをB及びCが知っていたことを主張・立証しなければならない。

(正答)  

(解説)
424条1項但書は、「ただし、…受益者…がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。」として、受益者の詐害行為時における悪意を要求しているが、要件事実では、受益者の悪意が請求原因なのではなく、受益者の善意が抗弁となる。
したがって、Aは、請求原因として、BC間の贈与契約が債権者Aを害すること及びそのことを債務者Bが知っていたことを主張・立証しなければならない一方で、そのことをCが知っていたことまで主張・立証する必要はなく、被告である受益者Cにおいて、BC間の贈与契約が債権者Aを害することをCが知らなかったことを抗弁として主張・立証しなければならない。

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第424条の3

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条文
第424条の3(特定の債権者に対する担保の供与等の特則)
① 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。 
 一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第1号において同じ。)の時に行われたものであること。
 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
② 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。 
 一 その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものであること。
 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
過去問・解説

(R5 司法 第18問 ア)
AがBとの間の売買契約に基づきBに対して2000万円の売買代金債権を有している。支払不能の状態にあるBは、Cに対する債務を弁済した。この場合、Aを害する意図がCにあったとしても、Bとの通謀がなければ、Aは、当該弁済について詐害行為取消請求をすることができない。

(正答)  

(解説)
424条の3第1項は、「債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為」を詐害行為として取り消すための要件として、①「その行為が、債務者が支払不能…の時に行われたものであること」(1号)と、②「その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること」(2号)を要求している。
本肢の事例では、債務の弁済という「債務者がした…債務の消滅に関する行為」を対象とする詐害行為取消請求が問題となっているため、424条の3第1項が適用されるところ、支払不能の状態にあるBがCに対する債務を弁済したことにより①を満たし、Aを害する意図がCにあったことにより②も満たすから、AB間の通謀がなくても、Aは、当該弁済について詐害行為取消請求をすることができる。

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第424条の4

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条文
第424条の4(過大な代物弁済等の特則)
 債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第424条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第1項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。
過去問・解説

(R5 司法 第18問 イ)
AがBとの間の売買契約に基づきBに対して2000万円の売買代金債権を有している。Bは、Dに対する500万円の借入金債務について、Bが所有する2000万円相当の土地をもってDに代物弁済した。この場合において、当該代物弁済が債権者を害することをDが知っていたときは、Aは、Dに対し、当該代物弁済のうち500万円に相当する部分以外の部分について詐害行為取消請求をすることができる。

(正答)  

(解説)
過大な代物弁済等は、債務消滅行為である一方で、消滅する債務額を超える部分においては、純粋に財産を減少させる行為(財産減少行為)としての側面を有する。そこで、424条の4は、「債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるもの」については、424条の3の特則として、424条の一般的な要件を満たす場合には、「消滅した債務の額に相当する部分以外の部分」(=消滅する債務額を超える部分)を超える部分について詐害行為取消請求ができる旨を定めている(潮見佳男「詳解 改正民法」初版210頁)。本肢の事例では、Bは、Dに対する500万円の借入金債務について、Bが所有する2000万円相当の土地をもってDに代物弁済しているため、「債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるもの」という要件を満たすから、424条の3ではなく424条の4が適用される。また、当該代物弁済が債権者を害することをDが知っていたことなどから、「第424条に規定する要件に該当するとき」にも当たる。したがって、Aは、Dに対し、当該代物弁済のうち500万円に相当する部分以外の部分について詐害行為取消請求をすることができる。

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第424条の5

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条文
第424条の5(転得者に対する詐害行為取消請求)
 債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。 
 一 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
 二 その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
過去問・解説

(H23 共通 第18問 3)
受益者が債権者を害すべき事実を知らない場合には、転得者がこれを知っていたとしても、債権者は、転得者に対し詐害行為取消権を行使することはできない。

(正答)  

(解説)
受益者からの転得者を被告とする場合、①受益者の受益当時の悪意(424条1項但書)に加え、②受益者からの「転得者」の「転得…当時」の悪意も必要である(424条の5第1号)。
したがって、転得者を被告とする場合、受益者が債権者を害すべき事実を知らない場合には、転得者がこれを知っていたとしても、①を満たさない以上、債権者は、転得者に対し詐害行為取消権を行使することはできない。


(H24 司法 第8問 5)
Aに対する債権者Bが、AからCへの不動産の贈与を詐害行為を理由に転得者Dを被告として取り消す場合、その請求が認められるためには、その贈与がBを害することを、AC間の贈与の当時、Dが知っていたことが必要である。

(正答)  

(解説)
受益者からの転得者を被告とする場合、①受益者の受益当時の悪意(424条1項但書)に加え、②受益者からの「転得者」の「転得…当時」の悪意も必要である(424条の5第1号)。
したがって、Aに対する債権者Bが、AからCへの不動産の贈与を詐害行為を理由に転得者Dを被告として取り消す場合、その請求が認められるためには、①AC間の贈与がBを害することを、AC間の贈与の当時、受益者Cが知っていたことと、②AC間の贈与がBを害することを、「転得…当時」、Dが知っていたことが必要である。
本肢は、②Dの悪意の基準時を、「転得…当時」ではなく、AC間の贈与の当時としている点において、誤っている。


(R6 司法 第19問 エ)
AがBとの売買契約に基づきBに対して1000万円の代金債権を有している。
BがGにB所有の動産乙を贈与し、GがHに乙を贈与し、HがIに乙を贈与し、それぞれ引渡しがされた。この場合において、BG間の贈与の取消しとAへの乙の返還を内容とするAのIに対する請求が認められるためには、BG間の贈与が債権者を害することについて、G、H 及びIの全員がそれぞれ贈与を受けた時に悪意でなければならない。

(正答)  

(解説)
転得者からの他の転得者を被告とする場合、①受益者の受益当時の悪意(424条1項但書)に加え、②被告たる転得者の転得当時の悪意と③全ての中間転得者のそれぞれの転得の時の悪意が必要である(424条の5第2号)。これにより、受益者から被告たる転得者に至るすべての者の悪意が要求されることになる。
本肢の事例では、①「受益者」であるGが贈与を受けた時における悪意、②「その転得者」であるIが贈与を受けた時における悪意、③「その前に転得した…転得者」であるHが贈与を受けた時における悪意、全てが必要である。

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第424条の6

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条文
第424条の6(財産の返還又は価額の償還の請求)
① 債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
② 債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
過去問・解説

(H19 司法 第19問 オ)
不動産が債務者から受益者へ、受益者から転得者へと順次譲渡された場合において、債権者が、債務者の一般財産を回復させるため、受益者を被告として、債務者と受益者との間の譲渡行為を詐害行為として取り消すときは、価格賠償を請求しなければならない。

(正答)  

(解説)
424条の6第1項は、前段において「債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。」と規定する一方で、後段において「受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。」と規定している。前者は現物返還、後者は価額償還と呼ばれる。
不動産が債務者から受益者へ、受益者から転得者へと順次譲渡された場合において、債権者が、受益者を被告として、債務者と受益者との間の譲渡行為を詐害行為として取り消すときは、被告である受益者は当該不動産の所有権を有しておらず、「受益者がその財産の返還をすることが困難であるとき」に当たるから、現物返還ではなく価額償還を請求しなければならない。


(H27 共通 第17問 イ)
AがBに対して融資をしていたところ、Bがその所有する建物をBの妻Cに贈与し、その旨の所有権移転登記手続をしたことから、Aが詐害行為取消訴訟を提起した。Aは、BからCへの所有権移転登記の抹消登記手続を請求することなく、BC間の贈与契約の取消しを請求することができる。

(正答)  

(解説)
424条の6第1項前段は、「債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。」と規定しているから、現物返還や価額償還を請求することなく、詐害行為の取消しのみを請求することも可能である。
したがって、Aは、BからCへの所有権移転登記の抹消登記手続を請求することなく、BC間の贈与契約の取消しを請求することができる。


(R2 共通 第16問 イ)
Aは、その債権者Cを害することを知りながら、所有する骨董品甲をBに贈与し、その際、Bも甲の贈与がAの債権者Cを害することを知っていた。Bが、甲の贈与がAの債権者Cを害することを知っていたDに甲を売却し、引き渡した場合、Aの債権者Cは、Dに対し、BD間の甲の売買の取消しを請求することができる。

(正答)  

(解説)
424条の6第2項前段は、「債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。」と規定している。したがって、転得者を被告とする詐害行為取消請求において、取消しの対象となるのは、「債務者がした行為」であって、転得者がした行為ではない。
よって、Aの債権者Cは、転得者Dを被告として、AB間の贈与の取消しを請求することはできるが、BD間の甲の売買の取消しを請求することはできない。


(R2 共通 第16問 ウ)
Aは、その債権者Cを害することを知りながら、所有する骨董品甲をBに贈与し、その際、Bも甲の贈与がAの債権者Cを害することを知っていた。Bが、甲の贈与がAの債権者Cを害することを知っていたDに甲を売却し、引き渡した場合、Aの債権者Cは、Bに対し、AB間の甲の贈与の取消しを請求することができる。

(正答)  

(解説)
424条の6第1項は、「債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消し…を請求することができる」と規定している。
したがって、Aの債権者Cは、受益者Bを被告として、「債務者がした行為」としてAB間の贈与の取消しを請求することができる。

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第424条の7

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条文
第424条の7(被告及び訴訟告知)
① 詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。 
 一 受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え 受益者
 二 転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え その詐害行為取消請求の相手方である転得者
② 債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。 
過去問・解説

(H18 司法 第5問 エ)
詐害行為取消訴訟では、詐害行為をした債務者を被告にすることはできない。

(正答)  

(解説)
424条の7第1項は、「詐害行為取消請求に係る訴え」の「被告」として、「受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え」については「受益者」を(同項1号)、「転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え」については「転得者」を(同項2号)を挙げている。したがって、詐害行為取消訴訟では、詐害行為をした債務者を被告にすることはできない。


(H23 共通 第18問 4)
詐害行為取消権を行使するためには、受益者又は転得者を相手方として訴えを提起すれば足り、債務者を相手方とする必要はない。

(正答)  

(解説)
424条の7第1項は、「詐害行為取消請求に係る訴え」の「被告」として、「受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え」については「受益者」を(同項1号)、「転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え」については「転得者」を(同項2号)を挙げている。したがって、詐害行為取消権を行使するためには、受益者又は転得者を相手方として訴えを提起すれば足り、債務者を相手方とする必要はない。
なお、債務者は被告として挙げられていないから、厳密には、債務者を相手方とする必要はないのではなく、債務者を相手方とすることはできないのである。


(H27 共通 第17問 ウ)
AがBに対して融資をしていたところ、Bがその所有する建物をBの妻Cに贈与し、その旨の所有権移転登記手続をしたことから、Aが詐害行為取消訴訟を提起した。Aは、詐害行為の取消しを請求するに際しては、B及びCの両方を被告として訴えを提起しなければならない。

(正答)  

(解説)
424条の7第1項は、「詐害行為取消請求に係る訴え」の「被告」として、「受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え」については「受益者」を(同項1号)、「転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え」については「転得者」を(同項2号)を挙げている。したがって、詐害行為取消訴訟では、詐害行為をした債務者を被告にすることはできない。よって、本肢の事例では、債務者B及び受益者Cの両方を被告として訴えを提起するのではなく、受益者Cのみを被告として訴えを提起しなければならない。


(R2 共通 第16問 ア)
Aは、その債権者を害することを知りながら、所有する骨董品甲をBに贈与し、その際、Bも甲の贈与がAの債権者を害することを知っていた。Cが詐害行為取消訴訟を提起する場合、Aを被告としなければならない。

(正答)  

(解説)
424条の7第1項は、「詐害行為取消請求に係る訴え」の「被告」として、「受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え」については「受益者」を(同項1号)、「転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え」については「転得者」を(同項2号)を挙げている。したがって、詐害行為取消訴訟では、詐害行為をした債務者を被告にすることはできない。よって、本肢の事例では、債務者Aではなく、受益者Bを被告として訴えを提起しなければならない。

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条文
第425条(債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利)
 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。
過去問・解説

(H25 司法 第9問 3)
詐害行為取消権に基づき不動産の贈与契約を取り消す旨の判決が確定したときは、贈与契約による所有権移転の効果は、取消債権者と受益者である受贈者の間でのみ消滅する。

(正答)  

(解説)
改正前民法下における詐害行為取消しの効果は、債権者と被告とされた受益者又は転得者との間で相対的に生じるにとどまり、債務者には及ばないと解されていた(相対効説)。しかし、平成29年改正民法下では、「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。」(425条)として、絶対効説が採用されている。なお、受益者を被告とする場合、受益者に対しては、「当事者」(民事訴訟法115条1項1号)として取消判決の効力が及ぶ。
したがって、詐害行為取消権に基づき不動産の贈与契約を取り消す旨の判決が確定したときは、贈与契約による所有権移転の効果は、取消債権者と受益者である受贈者の間(民事訴訟法115条1項1号)だけでなく、取消債権者と債務者の間(民法425条)においても消滅する。


(R2 共通 第16問 エ)
Aは、その債権者Cを害することを知りながら、所有する骨董品甲をBに贈与し、その際、Bも甲の贈与がAの債権者Cを害することを知っていた。Aの債権者Cによる詐害行為取消請求を認容する確定判決の効力は、Aの全ての債権者に対してもその効力を有する。

(正答)  

(解説)
425条は、「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。」と規定している。したがって、Aの債権者Cによる詐害行為取消請求を認容する確定判決の効力は、Aの全ての債権者に対してもその効力を有する。


(R6 司法 第19問 ウ)
AがBとの売買契約に基づきBに対して1000万円の代金債権を有している。
BがEにB所有の動産甲を贈与し、EがFに甲を贈与し、それぞれ引渡しがされた。この場合において、AがFを被告として、BE間の贈与の取消しとAへの甲の返還を求める訴えを提起し、この請求が認容されたときは、確定判決の効力は、Eに及ぶ。

(正答)  

(解説)
425条は、「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。」として、絶対効説を採用している。そして、転得者を被告とする場合、取消判決の効力は、転得者に対しては「当事者」(民事訴訟法115条1項1号)として及ぶが、「債務者」でも「当事者」でもない受益者には及ばない。
本肢の事例では、確定判決の効力は、「債務者」であるBと、被告という「当事者」である転得者Fに及ぶのであり、被告となっていない受益者Eには及ばない。

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第425条の3

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条文
第425条の3(受益者の債権の回復)
 債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。
過去問・解説

(R6 司法 第19問 ア)
AがBとの売買契約に基づきBに対して1000万円の代金債権を有している。
BがCに対する500万円の貸金債務を弁済した。この場合において、AがCを被告として、弁済の取消しとAへの500万円の支払を求める訴えを提起し、この請求が認容されたときは、CのBに対する債権は、判決が確定した時に、原状に復する。

(正答)  

(解説)
425条の3は「債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。」と規定しているから、受益者の給付返還・価額償還義務が先履行であり、これが履行されるまでは受益者の債権は復活しない。
本肢は、原状に復する時点が、請求認容判決が確定した時であるとしている点において、誤っている。

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第425条の4

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条文
第425条の4(詐害行為取消請求を受けた転得者の権利)
 債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。 
 一 第425条の2に規定する行為が取り消された場合 その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権
 二 前条に規定する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。) その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権
過去問・解説

(R6 司法 第19問 オ)
AがBとの売買契約に基づきBに対して1000万円の代金債権を有している。
BがJにB所有の丙土地を代金200万円で売却し、JがKに丙土地を代金220万円で売却し、それぞれ所有権移転登記がされた。この場合において、AがKを被告として、BJ間の売買の取消しとKからBへの所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、この請求が認容され、KからBへの所有権移転登記がされたときは、Kは、Bに対し、200万円の限度で支払を求 めることができる。

(正答)  

(解説)
425条の4は、被告たる転得者の保護を図るため、転得者の権利を定めている。転得者の権利とは、転得者が受益者の債務者に対する「反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権」を代位行使するという形で、債務者に対する権利として認められるものである。本肢の事例では、AがKを被告として、BJ間の売買の取消しを求めているから、「債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたとき」(425条2の)として、「第425条の2に規定する行為が取り消された場合」(425条4第1号)に当たる。したがって、被告K(転得者)は、債務者Bに対し、被告Kの受益者Jに対する220万円の代金返還請求権を被保全債権として、受益者Jの債務者Bに対する200万円の代金返還請求権について、200万円も限度で代位行使する形で、「反対給付の返還請求権」を行使することができる。

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