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債権の譲渡、債務の引受け - 解答モード
第466条
条文
① 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
② 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
③ 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
④ 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。
過去問・解説
(H19 司法 第21問 ア)
債権の譲渡制限特約の存在を知ってその債権を譲り受けた者は当該債権を取得しないから、その者からの債権譲受人も当該債権を取得し得ない。
(H19 司法 第21問 イ)
譲渡質入制限特約のある債権(預貯金債権を除く。)について、質権者がその特約の存在を知っているときは、質権は有効に成立しない。
(正答) ✕
(解説)
466条2項は、債権の譲渡自由の原則を重視し、「当事者が…譲渡制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」として、譲受人の悪意・重過失の有無にかかわらず、譲渡禁止特約付き債権の譲渡は有効である旨を定めている(相対的効力説)。したがって、譲渡質入制限特約のある債権(預貯金債権を除く。)について、質権者がその特約の存在を知っているときであっても、質権は有効に成立する。
なお、466条の5第1項は、「預貯金債権…について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。」として、譲渡制限特約付き債権が預貯金債権である場合には、悪意・重過失の譲受人との関係では債権譲渡が無効である旨を定めている(物権的効力説)。
(H19 司法 第21問 ウ)
債権の譲渡制限特約の存在を知ってその債権を譲り受けた者だけでなく、同特約の存在を知らないことにつき重大な過失のある譲受人も、譲渡によってその債権を取得し得ない。
(H19 司法 第21問 オ)
AのBに対する債権につき譲渡制限特約が存在することを知って、CがAからその債権を譲り受けた後、Bが承諾をすれば、AC間の債権譲渡は、Bの承諾の時から有効になる。
(H20 司法 第30問 エ)
債権の譲渡制限特約がある場合、債権の譲受人が、その特約の存在を知らなかったとしても、これについて重大な過失があるときは、その債権を取得することができない。
(H21 司法 第20問 1)
譲渡制限特約のある債権について債権譲渡がされた場合であっても、債務者が譲渡を承諾すれば、債権譲渡は有効になる。
(H23 司法 第13問 ウ)
譲渡禁止特約のある債権(預貯金債権を除く。)を質権の目的とする場合には、その特約につき質権者が悪意であっても、質権設定の効力は妨げられない。
(H23 司法 第20問 3)
譲渡制限の特約の存在を知りながら債権を譲り受けた者から、更に当該債権を譲り受けた転得者については、この者が譲渡制限の特約の存在を知らない場合でも、債務者は、譲渡制限の特約を対抗することができる。
(正答) ✕
(解説)
466条は、2項において「当事者が…譲渡制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」と規定する(相対的効力説)一方で、3項において「前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。」と規定している(履行拒絶構成)。
したがって、譲渡制限特約付き債権の譲渡は有効であるが、債務者は、悪意の譲渡人に対しては譲渡制限特約を対抗してその債務の履行を拒むことができる。しかし、債務者は、善意・無重過失の転得者に対しては、譲渡制限特約を対抗してその債務の履行を拒むことができない。
(H23 司法 第28問 1)
譲渡制限の意思表示がなされた債権がその意思表示につき悪意の者に譲渡され、当該債権の債務者がそれを承諾した場合には、その債権譲渡は遡って有効となるが、その承諾前に譲渡人の債権者である第三者が当該債権を差し押さえていたときは、その第三者の権利を害することができない。
(正答) ✕
(解説)
466条2項は、債権の譲渡自由の原則を重視し、「当事者が…譲渡制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」として、譲受人の悪意・重過失の有無にかかわらず、譲渡禁止特約付き債権の譲渡は有効である旨を定めている(相対的効力説)。したがって、譲渡制限特約付き債権の譲渡は、譲受人が悪意であっても、有効である。
債務者の承諾は、債務者の履行拒絶の抗弁(466条3項)を妨げる効果を有するが、承諾前に現れた差押債権者の権利を害することはできない(平成29年改正前民法下における最判平成9.6.5参照)。
判例(最判平成9.6.5)は、譲渡制限特約付き債権の譲渡の効力について絶対的効力説が採用されていた平成29年改正前民法下の事案において、「譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が右特約の存在を知り、又は重大な過失により右特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が右債権の譲渡について承諾を与えたときは、右債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法116条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできないと解するのが相当である…。」と判示している。
(H24 司法 第21問 1)
譲渡制限特約のある債権について、譲受人が特約の存在を知り、又は重大な過失により特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が債権の譲渡について承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、第三者の権利を害することはできない。
(正答) ✕
(解説)
466条2項は、債権の譲渡自由の原則を重視し、「当事者が…譲渡制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」として、譲受人の悪意・重過失の有無にかかわらず、譲渡禁止特約付き債権の譲渡は有効である旨を定めている(相対的効力説)。したがって、譲渡制限特約付き債権の譲渡は、当初から有効であり、債務者の承諾により有効になるのではない。
債務者の承諾は、債務者の履行拒絶の抗弁(466条3項)を妨げる効果を有するが、承諾前に現れた第三者の権利を害することはできない(平成29年改正前民法下における最判平成9.6.5参照)。
判例(最判平成9.6.5)は、譲渡制限特約付き債権の譲渡の効力について絶対的効力説が採用されていた平成29年改正前民法下の事案において、「譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が右特約の存在を知り、又は重大な過失により右特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が右債権の譲渡について承諾を与えたときは、右債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法116条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできないと解するのが相当である…。」と判示している。
(H29 共通 第19問 ア)
債権譲渡制限の特約に反して債権を譲渡した債権者は、債務者が譲渡を承諾した場合を除き、同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張することができる。
(R2 予備 第9問 ウ)
譲渡制限の意思表示がされていることを知りながら債権を譲り受けた譲受人は、債務者が譲受人に対して任意に弁済をしようとしても、これを直接受けることができない。
(正答) ✕
(解説)
466条は、2項において「当事者が…譲渡制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」と規定する(相対的効力説)一方で、3項において「前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。」と規定している(履行拒絶構成)。
債務者は、譲渡制限特約付き債権の譲渡がなされた場合において、悪意又は重過失の譲渡人からの履行請求を拒むことができるが、履行を拒絶するか否かは債務者の自由に委ねられているから、譲受人に任意に弁済することも可能であり、その場合は、譲受人は債務者から弁済を直接受けることができる。
(R4 共通 第20問 イ)
AのBに対する売買代金債権甲に譲渡禁止の特約がある場合に、Cが譲渡禁止の特約の存在を知りながら債権甲を譲り受けた場合において、CがBに対して相当の期間を定めてCへの履行の催告をしたが、その期間内に履行がないときは、Bは、Cに対し、譲渡禁止を理由として債務の履行を拒むことができない。
(正答) ✕
(解説)
466条は、3項において「前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。」と規定する一方で、4項において、「前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。」と規定している。後者の規定は、債務者が履行をしないと譲渡人も譲受人も履行を受けることができないという閉塞状況(デッドロック状態)を解消することを趣旨とする(潮見佳男「民法(債権関係)改正法の概要」149頁)。
同条4項の「履行の催告」は、「譲渡人への履行の催告」を意味するところ、譲受人Cが債務者Bに対して催告したのは、譲受人Cへの履行の催告にすぎないから、「譲渡人への履行の催告」に当たらない。したがって、同条4項は適用されないから、債務者Bは、悪意の譲受人Cに対し、譲渡禁止を理由として債務の履行を拒むことができる(446条3項)。
(R6 司法 第15問 イ)
AはBに対して貸金債権甲を有するとする。
AとBが甲の質入れを禁止する旨を合意していた場合において、悪意のCがAから甲を目的とする質権の設定を受けたときは、質権の設定は、その効力を生じない。
第466条の2
条文
① 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。
② 前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。
③ 第1項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。
過去問・解説
(R2 予備 第9問 エ)
譲渡制限の意思表示がされた債権が譲渡された場合、譲受人が譲渡制限の意思表示がされたことを過失なく知らなかったときであっても、債務者は、弁済の責任を免れるために、その債権の全額に相当する金銭を供託することができる。
第466条の3
条文
前条第1項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。この場合においては、同条第2項及び第3項の規定を準用する。
過去問・解説
(R2 予備 第9問 オ)
譲渡制限の意思表示がされた債権の全額が譲渡された場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、債権譲渡について第三者対抗要件を備えた譲受人は、債務者にその債権の全額に相当する金銭の供託をするよう請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
466条の3前段は、譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託(446条の2第1項)がなされた場合について、「前条第1項に規定する場合…において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。」と規定している。
したがって、譲渡制限の意思表示がされた債権の全額が譲渡された場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、債権譲渡について第三者対抗要件を備えた譲受人は、債務者にその債権の全額に相当する金銭の供託をするよう請求することができる。
第466条の4
条文
① 第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
② 前項の規定にかかわらず、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。
過去問・解説
(H19 司法 第21問 エ)
譲渡制限特約のある債権を差し押さえて、その転付命令を得た債権者が、差し押さえ前に同特約が存在することを知っていたとしても、転付命令の効力は否定されない。
(正答) 〇
(解説)
446条3項は、「前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。」として履行拒絶の抗弁を定めているが、446条の4第1項は、その例外として、「第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。」と規定している。したがって、譲渡制限特約のある債権を差し押さえて、その転付命令を得た債権者が、差し押さえ前に同特約が存在することを知っていたとしても、当該債権の債務者は、差押権者に対し、譲渡制限の意思表示がされたことを理由としてその債務の履行を拒むことはできない。
なお、466条2項は、債権の譲渡自由の原則を重視し、「当事者が…譲渡制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」として、譲受人の悪意・重過失の有無にかかわらず、譲渡禁止特約付き債権の譲渡は有効である旨を定めている(相対的効力説)から、譲渡制限特約付き債権に係る転付命令の効力は否定されない。
(H24 司法 第21問 5)
譲渡制限特約が付された債権であっても差押えをすることはできるが、その差押債権者が譲渡制限特約につき悪意であるときは、当該債権の債務者は差押債権者に対して譲渡制限特約をもって対抗することができる。
(正答) ✕
(解説)
446条3項は、「前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。」として履行拒絶の抗弁を定めているが、446条の4第1項は、その例外として、「第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。」と規定している。
したがって、譲渡制限特約付き債権であっても差押えをすることができ、かつ、その差押債権者が譲渡制限特約につき悪意であるときでも、当該債権の債務者は差押債権者に対して譲渡制限特約をもって対抗することができない。
(R2 予備 第9問 イ)
譲渡制限の意思表示がされた債権の差押えがされた場合、当該債権の債務者は、差押権者に対し、譲渡制限の意思表示がされたことを理由としてその債務の履行を拒むことはできない。
(正答) 〇
(解説)
446条3項は、「前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。」として履行拒絶の抗弁を定めているが、446条の4第1項は、その例外として、「第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。」と規定している。したがって、譲渡制限の意思表示がされた債権の差押えがされた場合、当該債権の債務者は、差押権者に対し、譲渡制限の意思表示がされたことを理由としてその債務の履行を拒むことはできない。
(R4 共通 第20問 オ)
AのBに対する売買代金債権甲に譲渡禁止の特約がある場合に、Cが、譲渡禁止の特約の存在を知りながら債権甲を譲り受けた場合において、Cの債権者Dが債権甲に対する強制執行をしたときは、Bは、Dに対し、譲渡禁止を理由として債務の履行を拒むことができない。
(正答) ✕
(解説)
466条の4は、第1項において「第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。」と規定する一方で、第2項において「前項の規定にかかわらず、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。」と規定している。
したがって、Cの債権者Dが債権甲に対する強制執行をしたときは、Bは、Dに対し、譲渡禁止を理由として債務の履行を拒むことができる(446条の4第2項)。
第466条の5
条文
① 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。
② 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
過去問・解説
(R2 司法 第18問 ウ)
AはB銀行に預金口座を開設し、金銭を預け入れた。AがB銀行に対して有する預金債権について、譲渡はできない旨の特約がされていた場合、AがGとの間で、その預金債権をGに譲渡する契約をしても、Gが特約について悪意又は重過失であったときは、その譲渡は効力を生じない。
(正答) 〇
(解説)
466条2項は、債権の譲渡自由の原則を重視し、「当事者が…譲渡制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」として、譲受人の悪意・重過失の有無にかかわらず、譲渡禁止特約付き債権の譲渡は有効である旨を定めているが(相対的効力説)、466条の5第1項は、その例外として、譲渡制限特約付き債権が預貯金債権である場合には、悪意・重過失の譲受人との関係では債権譲渡が無効である旨を定めている(物権的効力説)。
本肢の事例では、譲渡制限特約付き預金債権が譲渡されているため、Gが特約について悪意又は重過失であったときは、その譲渡は効力を生じない。
(R5 司法 第36問 イ)
預貯金債権について当事者がした譲渡制限の特約は、その債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、その者がその特約の存在を知り、又は重大な過失によって知らなかったとしても、対抗することができない。
(正答) 〇
(解説)
466条2項は、債権の譲渡自由の原則を重視し、「当事者が…譲渡制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」として、譲受人の悪意・重過失の有無にかかわらず、譲渡禁止特約付き債権の譲渡は有効である旨を定めているが(相対的効力説)、466条の5第1項は、その例外として、譲渡制限特約付き債権が預貯金債権である場合には、悪意・重過失の譲受人との関係では債権譲渡が無効である旨を定めている(物権的効力説)。その上で、466条の5第2項は、「前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。」と規定している。
したがって、預貯金債権について当事者がした譲渡制限の特約は、その債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、その者がその特約の存在を知り、又は重大な過失によって知らなかったとしても、対抗することができない。
第466条の6
条文
① 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
② 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。
③ 前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第466条第3項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第1項)の規定を適用する。
過去問・解説
(R4 共通 第20問 ア)
AのBに対する売買代金債権甲に譲渡禁止の特約がある場合に、Aが将来発生すべき債権甲をCに譲渡し、Bに対してその通知をした後、AB間で債権甲につき譲渡禁止の特約をし、その後債権甲が発生した。この場合には、Bは、Cに対し、Cがその特約の存在を知っていたものとみなして、債務の履行を拒むことができる。
(正答) ✕
(解説)
466条は、2項において「当事者が…譲渡制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」と規定する(相対的効力説)一方で、3項において「前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。」と規定している(履行拒絶構成)。その上で、466条の6第3項は、譲渡制限特約付き将来債権の譲渡について、「債務者…対抗要件具備時…までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第466条第3項…の規定を適用する。」と規定している。
本肢の事例では、債務者対抗要件が具備された後にAB間で債権甲につき譲渡禁止の特約がなされているから、「債務者…対抗要件具備時…までに譲渡制限の意思表示がされたとき」(466条の6第2項)には当たらない。したがって、Bは、Cの譲受人Cの主観的態様の如何を問わず、債務の履行を拒むことができない。
第467条
条文
① 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
② 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
過去問・解説
(H19 司法 第7問 5)
判例によれば、物の売買契約を結ぶ以前の段階において、将来の売買代金債権を売却し、対抗要件を備えることは可能である。
(H22 司法 第13問 5)
Aが、Bに対し有する甲債権をGに譲渡し、その旨をBに通知した場合において、Gから保証債務の履行を請求する訴訟を提起されたCは、Cに対する債権譲渡の通知がされるまで保証債務を弁済しない旨の抗弁を提出して請求棄却の判決を得ることができる。
(正答) ✕
(解説)
被保証債権について債権譲渡がされた場合、主債務者について債権譲渡の対抗要件が具備されれば、保証人についても当然に保証債権移転の対抗要件が具備される(大判明治39.3.3)。これは、保証債務の随伴性を根拠とするものである。
本肢の事例では、Aが、Bに対し有する甲債権をGに譲渡し、その旨をBに通知したことにより、AG間の債権譲渡は、債務者Bのみならず、保証人Cとの関係でも、債務者対抗要件(467条1項)を具備することとなる。したがって、Gから保証債務の履行を請求する訴訟を提起されたCは、Cに対する債権譲渡の通知がされるまで保証債務を弁済しない旨の抗弁を提出して請求棄却の判決を得ることはできない。
(H25 共通 第19問 ア)
債権者Aが債務者Bに対して有する甲債権をCとDに二重譲渡した場合について、Aが第1譲渡については確定日付のある証書によらずに通知をしてこれがBに到達し、第2譲渡については通知をしていない場合に、BがCに対して弁済をすれば、甲債権はこれによって消滅する。
(正答) 〇
(解説)
債権の二重譲渡がなされ、譲受人がいずれも第三者対抗要件を具備しておらず、いずれか一方の譲受人が債務者対抗要件を具備している場合には、債務者が債務者対抗要件を備えていない譲受人に対して弁済をすれば、それは有効な弁済となる。第三者対抗要件が備わっていない以上、債務者対抗要件を備えた譲受人に対する債権の帰属は確定しておらず、また、債務者の弁済のなかには債権譲渡について承諾する意思が現れておりこれにより債務者対抗要件も備わるからである(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂524頁)。
したがって、BがCに対して弁済をすれば、甲債権はこれによって消滅する。
(H25 共通 第19問 イ)
債権者Aが債務者Bに対して有する甲債権をCとDに二重譲渡した場合について、第1譲渡及び第2譲渡のいずれについても、Aが確定日付のある証書によらずに通知をしてこれらがAに到達した場合には、これらの通知の到達後に、BがCに対して弁済をしても甲債権は消滅しない。
第468条
条文
① 債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
② 第466条第4項の場合における前項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条第4項の相当の期間を経過した時」とし、第466条の3の場合における同項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条の3の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。
過去問・解説
(H27 司法 第21問 イ)
双務契約における一方の債権が第三者に譲渡され、譲渡人が債務者に譲渡の通知をした後その債務者が遅滞なく異議を述べなかった場合、その債務者は、その債権の譲受人からの債務の履行の請求に対し、同時履行の抗弁を主張することができない。
(H27 予備 第11問 イ)
AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意された。AがBに対する宝石の代金債権を第三者Dに譲渡してBにその旨を通知した場合、Bは、Dからの宝石代金の支払請求に対し、同時履行の抗弁権を行使することができない。
(正答) ✕
(解説)
468条1項は、「債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる」と規定している。533条が定める同時履行の抗弁権は「対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由」に当たる。本問において、A・Bは、当該売買契約において双方が負う債務の履行期を同一とする合意をしている。したがって、Bは、Aに対して主張することができる同時履行の抗弁を、譲受人Dに対しても主張することができる。
468条1項は、「債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。」と規定している(抗弁の承継原則)。
本肢の事例では、債務者Bが譲渡人Aに対して有する同時履行の抗弁権(533条本文)は、「債務者…対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由」に当たる。したがって、債務者Bは、譲受人Dからの宝石代金の支払請求に対し、同時履行の抗弁権を行使することができる。
(R5 共通 第24問 エ)
AB間で締結された契約に基づき発生したAのBに対する債権甲をAがCに譲渡し、債務者対抗要件が具備された場合において、その後、BがAの債務不履行により当該契約を解除したときは、Cは、Bに対し、甲の履行を請求することができる。
(正答) ✕
(解説)
468条1項は、「債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる」と規定している。ここでいう「債務者…対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由」といえるためには、債務者対抗要件具備時までに抗弁事由の主たる発生原因ないし法的基礎が存在していれば足り、抗弁それ自体が存在している必要はないと解する。判例(最判昭和42.1.27)も同じ立場である。
本肢の事例では、BのAに対する債務不履行に基づく解除権が発生したのは、債務者対抗要件が具備された後であるが、解除権の主たる発生原因又は法的基礎であるAB間の売買契約締結の事実は、債務者対抗要件が具備されるよりも前から存在している。したがって、BのAに対する債務不履行に基づく解除権は、「債務者…対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由」に当たる。したがって、債務者対抗要件が具備された後に、BがAの債務不履行により当該契約を解除したときであっても、Bは、AB間の売買契約の解除を対抗することにより、Cからの履行の請求を拒むことができる。
第469条
条文
① 債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。
② 債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
一 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
二 前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
③ 第466条第4項の場合における前2項の規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条第4項の相当の期間を経過した時」とし、第466条の3の場合におけるこれらの規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条の3の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。
過去問・解説
(H21 司法 第22問 3)
相殺適状が生じてから相殺の意思表示がされるまでの間に一方の債権が譲渡されたとき、他方の債権の債権者は、譲渡された債権を受働債権として相殺をすることができない。
(正答) ✕
(解説)
469条1項は、「債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。」と規定しており、債務者が譲渡通知到達前に譲渡人に対して反対債権を取得していた場合、譲渡債権と反対債権の弁済期の先後を問うことなく、両者の弁済期が到来すれば、当該債権を自働債権・譲渡債権を受働債権とする相殺の抗弁を対抗できるとする無制限説(最判昭和50.12.8)を明文化している。
相殺適状が生じてから相殺の意思表示がされるまでの間に一方の債権が譲渡されたときであっても、債務者の譲渡人に対する債権が「債務者…対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権」であるならば、他方の債権の債権者は、譲渡された債権を受働債権として相殺をすることができる。
(R3 共通 第21問 オ)
AのBに対する金銭債権(甲債権)とBのAに対する金銭債権(乙債権)との相殺について、Aが甲債権をGに譲渡し、その対抗要件が具備された後、Bが乙債権を取得した。この場合において、Bは、乙債権が対抗要件具備時より前の原因に基づいてAB間で生じた債権であっても、乙債権と甲債権との相殺をもってGに対抗することができない。
(正答) ✕
(解説)
469条1項は、「債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。」と規定している。本肢の事例では、Bが乙債権を取得したのは、債務者対抗要件が具備された後であるから、乙債権は「債務者…対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権」に当たらない。したがって、469条1項は適用されない。
他方で、469条2項は、柱書において「債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。」と規定した上で、1号において、「次に掲げるもの」の一つとして、「対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権」と規定している。本肢の事例では、乙債権は、「債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権」であり、かつ、「対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権」に当たる。したがって、Bは、469条2項1号に基づいて、乙債権と甲債権との相殺をもってGに対抗することができる。
第470条
条文
① 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
② 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
③ 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
④ 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。
過去問・解説
(H22 司法 第20問 3)
債権者と引受人との間の合意による併存的債務引受は、債務者の意思に反してすることはできない。
(H22 司法 第20問 4)
債務者と引受人との間の合意により併存的債務引受がされた場合には、債権者が受益の意思を表示した時に、債権者の引受人に対する債権が発生する。
(正答) 〇
(解説)
470条3項は、「併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる」と規定している。債務者・引受人間の併存的債務引受は、債権者を第三者とする「第三者のためにする契約」(537条)であるから、効力発生要件として、受益の意思表示(537条3項)に相当する債権者の引受人に対する承諾が必要とされているのである。
したがって、債務者と引受人との間の合意により併存的債務引受がされた場合には、債権者が受益の意思を表示した時に、債権者の引受人に対する債権が発生する。
(H25 司法 第18問 イ)
債務引受がされた場合には、原債務者及び引受人は分割債務を負う。
(H29 司法 第20問 ア)
債権者Aが、債務者Bの意思に反して、引受人Cとの間で併存的債務引受の契約をした場合、その効力は生じない。
(H29 共通 第37問 イ)
債務者と引受人との間の契約でする併存的債務引受は、債権者が引受けによる利益を享受する意思を表示しなくても、その効力が生ずる。
(正答) ✕
(解説)
470条3項は、「併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる」と規定している。債務者・引受人間の併存的債務引受は、債権者を第三者とする「第三者のためにする契約」(537条)であるから、効力発生要件として、受益の意思表示(537条3項)に相当する債権者の引受人に対する承諾が必要とされているのである。
したがって、債務者と引受人との間の契約でする併存的債務引受は、債権者が引受けによる利益を享受する意思を表示した時に、その効力が生ずる。
(R3 司法 第20問 イ)
併存的債務引受は、債務者の意思に反する場合であっても、債権者と引受人となる者との契約により有効に成立する。
(R3 司法 第20問 エ)
併存的債務引受において、引受人は、引き受けた債務を弁済した場合、債務者に対し、弁済額のうち債務者の負担部分に応じた額を求償することができる。
(正答) 〇
(解説)
470条1項は、「併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。」と規定している。したがって、併存的債務引受における債務者の債務と引受人の債務は、連帯債務の関係にあるものとして扱われるから、特別の合意がなければ、連帯債務の規定の適用を受ける。そして、442条1項は、「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額…のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。」と規定している。
したがって、併存的債務引受において、引受人は、引き受けた債務を弁済した場合、債務者に対し、弁済額のうち債務者の負担部分に応じた額を求償することができる。
(R4 司法 第36問 ウ)
債務者と引受人となる者との契約でされた併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
(正答) 〇
(解説)
470条3項は、「併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる」と規定している。債務者・引受人間の併存的債務引受は、債権者を第三者とする「第三者のためにする契約」(537条)であるから、効力発生要件として、受益の意思表示(537条3項)に相当する債権者の引受人に対する承諾が必要とされているのである。
したがって、債務者と引受人となる者との契約でされた併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
(R6 司法 第22問 ア)
債権者Aに対する債務者Bのα債務についてCを引受人とする債務の引受けがされた。
本件債務の引受けが併存的債務引受である場合において、AとCとの間に更改があったときは、α債務は、消滅する。
第471条
条文
① 引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
② 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
過去問・解説
(H22 司法 第20問 5)
併存的債務引受がされた場合には、引受人は、引受けに係る債務の消滅時効期間が債務引受までに満了したとしても、その時効を援用することができない。
(R3 司法 第20問 ア)
債務者が負担する債務の発生原因行為を債務者が詐欺を理由に取り消すことができる場合でも、引受人は、債権者に対して債務の履行を拒むことはできない。
(正答) ✕
(解説)
471条2項は、併存的債務引受における引受人の抗弁等について、「債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。」と規定しており、472条2項は、免責的債務引受における引受人の抗弁等について、「債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。」と規定している。
したがって、債務者が負担する債務の発生原因行為を債務者が詐欺を理由に取り消すことができる場合、引受人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
第472条
条文
① 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
② 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
③ 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
過去問・解説
(H29 司法 第20問 ウ)
債権者Aは、債務者Bの意思に反しない場合に限り、引受人Cとの2者間の契約により、免責的債務引受の効力を生じさせることができる。
第472条の2
条文
① 引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
② 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
過去問・解説
(H29 司法 第20問 オ)
中古自動車の売買契約における売主Aに対する買主Bの代金債務について、Cを引受人とする免責的債務引受の効力が生じた場合において、その自動車に契約不適合があり契約の目的を達成することができないときは、Cはその売買契約を解除することができる。
(R6 司法 第22問 エ)
債権者Aに対する債務者Bのα債務についてCを引受人とする債務の引受けがされた。
本件債務の引受けが免責的債務引受である場合において、BがAに対して有するβ債権を自働債権とし、α債務に係る債権を受働債権とする相殺をすることができたときは、Cは、Aに対し、相殺によってα債務が消滅すべき限度において債務の履行を拒むことができる。
(正答) ✕
(解説)
472条1項は、「引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。」と規定している。もっとも、引受人は、債務者が債権者に対して有している債権を自働債権とし、自己の引き受けた債務を受働債権とする相殺を主張することはできない。免責的債務引受けによって債務者が完全に免責される以上、債務者の有する相殺権引受人の債務の帰趨に影響しないし、相殺を認めると他人の権利の処分となってしまうためである(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂546頁)。また、472条2項は、「債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有する」場合における履行拒絶について規定しているが、相殺権は含まれていない。
したがって、Cは、Aに対し、相殺によってα債務が消滅すべき限度において債務の履行を拒むことができない。
第472条の3
条文
免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。
第472条の4
条文
① 債権者は、第472条第1項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
② 前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。
③ 前2項の規定は、第472条第1項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。
④ 前項の場合において、同項において準用する第1項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。
⑤ 前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
過去問・解説
(H29 司法 第20問 エ)
債権者Aに対する債務者Bの債務について、Cを引受人とする免責的債務引受の効力が生じた場合には、Bの債務を担保するために第三者Dが設定していた抵当権は、Cの債務を担保することについてDの同意がない限り、消滅する。
(正答) 〇
(解説)
472条の4第1項は、免責的債務引受による担保の移転について、本文において「債権者は、第472条第1項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。」と規定している。
したがって、債権者Aに対する債務者Bの債務について、Cを引受人とする免責的債務引受の効力が生じた場合には、Bの債務を担保するために第三者Dが設定していた抵当権は、Cの債務を担保することについてDの同意がない限り、消滅する。
(R3 司法 第20問 オ)
免責的債務引受において、債権者は、債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を、引受人が負担する債務に移すことはできない。
(R6 司法 第22問 オ)
債権者Aに対する債務者Bのα債務についてCを引受人とする債務の引受けがされた。
本件債務の引受けが免責的債務引受であるときは、Aは、α債務の担保としてCにより設定された抵当権をCが負担する債務に移すことができない。