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弁済総則、供託、弁済による代位 - 解答モード
第474条
条文
① 債務の弁済は、第三者もすることができる。
② 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
③ 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
④ 前3項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
過去問・解説
(H21 司法 第25問 4)
正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して、その債務の弁済をすることができない。
(H30 共通 第19問 ア)
委託を受けない保証人は、主たる債務者の意思に反して弁済することができない。
(正答) ✕
(解説)
474条2項本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定している。もっとも、保証人による弁済は、自らの保証債務の履行であり、第三者弁済に当たらない。
462条2項本文は、無委託保証人の求償権について、「主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。」と規定しており、ここでは、無委託保証人が主たる債務者の意思に反して弁済することができることが前提とされている。
したがって、委託を受けない保証人は、主たる債務者の意思に反して弁済することができる。
(H30 共通 第19問 ウ)
第三者は、当事者が合意により禁止したときは、弁済をすることができない。
第475条
条文
弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
過去問・解説
(R6 司法 第21問 ア)
種類債務の債務者が他人の物を弁済として引き渡し、債権者がその物の所有権を取得することができない場合であっても、債権者がその物を善意で消費したときは、その弁済は、有効である。
第476条
条文
前条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない。
過去問・解説
(H23 司法 第21問 2)
債権者が債務の弁済として、債務者からその所有に属しない物の交付を受けた場合には、その弁済が有効となることはない。
(H29 司法 第21問 オ)
動産の引渡債務を負うAが、債権者Bに対し、他人の所有する動産を弁済として引き渡し、その動産が他人の物であることを知らずにBがその動産を消費した場合、その弁済は有効となる。
(R6 司法 第21問 ア)
種類債務の債務者が他人の物を弁済として引き渡し、債権者がその物の所有権を取得することができない場合であっても、債権者がその物を善意で消費したときは、その弁済は、有効である。
第477条
条文
債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。
過去問・解説
(R2 司法 第18問 オ)
AはB銀行に預金口座を開設し、金銭を預け入れた。HがAに対する代金債務の全額をAH間の合意によりB銀行のAの預金口座への振込みによって支払った場合、その債務は、Hの振込みによってAがB銀行に対して同額の預金の払戻しを請求する権利を取得した時に、弁済により消滅する。
(正答) 〇
(解説)
477条は、「債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。」と規定している。このように、477条は、①当事者間の合意がない限り、預貯金口座への払込みによって弁済をすることができないことを前提とした上で、②「債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時」に弁済の効力が生じるとしている(潮見佳男「民法(債権関係)改正法の概要177~178頁)。
本肢の事例では、HがAに対する代金債務は、Hの振込みによってAがB銀行に対して同額の預金の払戻しを請求する権利を取得した時に、弁済により消滅する。
第478条
条文
受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
過去問・解説
(H20 司法 第30問 オ)
受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対する弁済がその効力を有するのは、弁済者が善意であり、かつ、重大な過失がなかった場合である。
(H23 司法 第21問 3)
受領権者としての外観を有する者に対する弁済は、弁済者が善意であり、かつ、重過失がなかった場合には、有効となる。
(H23 司法 第21問 4)
受取証書の持参人は、その者の権限についての弁済者の主観的事情にかかわらず、弁済を受領する権限があるものとみなされる。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正前民法下では、旧480条が「受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。 ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。」と規定していた。
これに対し、平成29年改正民法下では、旧480条が削除されたことに伴い、偽造受取証書の持参人のみならず、真正な受取証書の持参人も、表見受領権者(478条)として扱われる。受取証書の持参が受領権限を有することの認証方法として重要であるという点は、真正な受取証書の持参人に対する弁済であるという事実により弁済者の善意・無過失を事実上推定するという形で考慮される。
第479条
条文
前条の場合を除き、受領権者以外の者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。
過去問・解説
(H21 司法 第21問 1)
受領権者以外の者に対する弁済は、受領権者としての外観を有するものに対する弁済として有効になる場合を除き、債権者に対し効力を有しない。
(H29 司法 第21問 エ)
AのBに対する債権についてBが弁済を受領する権限がないCに対して弁済をした場合において、Aがこれによって利益を受けたときは、Cに弁済を受領する権限がないことをBが知っていたとしても、Aが利益を受けた限度で、その弁済は効力を有する。
第481条
条文
① 差押えを受けた債権の第3債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第3債務者に請求することができる。
② 前項の規定は、第3債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。
第482条
条文
弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
過去問・解説
(R1 共通 第19問 5)
債務者Aが債権者Bに対して金銭債務(以下「本件債務」という。)を負っている。Bは、Aの意思に反しては、Bが第三者に対して負う金銭債務について、本件債務に係る債権をもって代物弁済をすることができない。
(R6 司法 第21問 エ)
債務者が、債権者との間で、その負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をしたときであっても、債務者は、当初負担した給付をして債務を消滅させることができる。
(正答) 〇
(解説)
473条は、「債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。」と規定しており、482条は、「その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。」と規定している。
そして、代物弁済契約を締結した後であっても、代物の給付を完了するまでの間は既存債務は消滅していないため、債務者は当初負担した給付をして債務を消滅させることができる。判例(最判昭和43.12.24)も、「既存債務の弁済が、代物弁済による所有権移転の意思表示の後にされても、その所有権移転登記手続の完了前にされたときは、右意思表示は右弁済による既存債務の消滅によって、その効力を失うものと解するのを相当とする。」としている。なお、この場合、代物弁済契約は履行不能となる(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂315頁)。
したがって、債務者が、債権者との間で、その負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をしたときであっても、債務者は、当初負担した給付をして債務を消滅させることができる。
第484条
条文
① 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
② 法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。
過去問・解説
(H18 司法 第27問 オ)
特定物の引渡しを目的とする債務が履行不能によって損害賠償債務に変わった場合、債権者の現在の住所において弁済しなければならない。
(H27 司法 第19問 イ)
弁済をすべき場所について別段の意思表示がない場合には、特定物の引渡しは、債権発生の時にその物が存在した場所においてしなければならないが、その他の弁済は債権者の現在の住所においてしなければならない。
(H30 共通 第23問 オ)
金銭消費貸借において、返還場所に関する合意をしなかった場合には、借主は貸主の現在の住所に弁済金を持参して返還をしなければならない。
(R1 司法 第20問 ア)
売買代金債権が譲渡され、債務者対抗要件が具備された場合であっても、債務者によるその代金の弁済の提供は、売買代金債権の譲渡人の現在の住所においてすれば足りる。
(R1 司法 第20問 イ)
特定物の売主は、その特定物を売買契約の締結当時から自己の住所に保管している場合、その引渡債務について弁済の提供をするに当たり、買主に対し、引渡しの準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
(正答) 〇
(解説)
484条1項は、「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において…しなければならない。」と規定している。そして、493条は、弁済の提供について、本文において「弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。」と規定する一方で、但書において「ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。」と規定している。
したがって、特定物の売主は、その特定物を売買契約の締結当時から自己の住所に保管している場合、その引渡債務について弁済の提供をするに当たり、買主に対し、引渡しの準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
(R2 司法 第23問 イ)
AB間においてAの所有する中古の時計甲の売買契約が締結された。売買契約の締結時に甲がDの住所に存在していたときであっても、引渡しをすべき場所について別段の意思表示がない限り、甲の引渡場所はBの現在の住所である。
第485条
条文
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
過去問・解説
(H18 司法 第27問 ウ)
持参債務の債権者が履行期前に遠方に転居した場合、目的物の運送費は債務者の負担となる。
(H21 司法 第21問 5)
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は債権者の負担となるが、債務者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債務者の負担となる。
第486条
条文
① 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
② 弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。
第487条
条文
債権に関する証書がある場合において、弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求することができる。
過去問・解説
(H21 司法 第21問 3)
貸金債権について債権に関する証書がある場合において、借主は、債務の全部を弁済しようとするときに、その証書の返還と引換えに弁済をするべき旨を主張することができる。
第488条
条文
① 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第1項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
② 弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
③ 前2項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。
④ 弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも第1項又は第2項の規定による指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
一 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
二 全ての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
三 債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
四 前2号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
過去問・解説
(H18 司法 第22問 2)
AがBに対して100万円の甲借入金債務と200万円の乙借入金債務を負っている場合における弁済充当に関して、AがBに100万円を支払ったが、弁済の充当指定をしなかったから、Bが受領の時にこれを甲債務の弁済に充当する旨をAに告げた場合、Aは、直ちに異議を述べて、乙債務の弁済に充当することを指定することができる。
(正答) ✕
(解説)
488条2項は、本文において「弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。」と規定している。このように、弁済受領者による指定充当に対して「弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたとき」は、弁済受領者による指定充当は認められず、「弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも第1項又は第2項の規定による指定をしないとき」として、法定充当(488条4項)になる。
したがって、本肢の事例では、Aは、直ちに異議を述べて、乙債務の弁済に充当することを指定することができるのではなく、AがBによる指定充当に対して直ちに異議を述べたことにより、法定充当になる。
(H18 司法 第22問 3)
AがBに対して100万円の甲借入金債務と200万円の乙借入金債務を負っている場合における弁済充当に関して、両債務とも無利息であり、甲債務の弁済期が到来しており、乙債務の弁済期が未到来の場合、Aは、Bに100万円を支払うと同時に、これを乙債務の弁済に充当することを指定することができる。
(H18 司法 第22問 4)
AがBに対して100万円の甲借入金債務と200万円の乙借入金債務を負っている場合における弁済充当に関して、甲債務の弁済期が到来し、乙債務の弁済期が未到来の場合、AがBに150万円を支払ったが、ABともに弁済の充当指定をしなかったときは、甲債務が無利息、乙債務が利息付きであれば、150万円全額が乙債務の弁済に充当される。
(正答) ✕
(解説)
488条4項は、柱書において「弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも第1項又は第2項の規定による指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。」と規定した上で、1号において「債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。」と規定している。したがって、150万円については、まずは弁済期が到来している甲債務(100万円)の弁済に充当され、残り50万円が弁済期が未到来の乙債務(200万円)の弁済にされることになる。
なお、同条4項2号は、「全ての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。」と規定しており、これに従えば、先に利息付の乙債務の弁済に充当されることになるが、「全ての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないとき」に当たらないから、同号は適用されない。
(R1 予備 第8問 1)
法定充当において、債務者のした給付が数個の債務の全てを消滅させるのに足りず、かつ、全ての債務が弁済期にあるときは、その給付は、債務者のために弁済の利益が多い債務に先に充当される。
(R1 予備 第8問 2)
債務者のした給付が元本だけを支払うべき数個の債務の全てを消滅させるに足りない場合に、債務者は給付の時に充当の指定をせず、債権者が給付の受領の時に特定の債務に充当する旨を指定したところ、債務者が直ちに異議を述べたときは、債権者のした指定は効力を有しない。
第489条
条文
① 債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
② 前条の規定は、前項の場合において、費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。
過去問・解説
(H18 司法 第22問 1)
AがBに対して100万円の甲借入金債務と200万円の乙借入金債務を負っている場合における弁済充当に関して、両債務とも利息付きの場合、Aは、Bに対して50万円を支払うと同時に、これを乙債務の元本の弁済に充当することを指定することができる。
(正答) ✕
(解説)
488条1項は、「債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第1項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。」と規定しており、括弧書において、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合」(489条1項)における弁済をするものによる指定充当を否定している。その上で、489条1項は、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合…において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。」と規定している。
したがって、本肢の事例では、488条1項は適用されず、489条1項が適用されるため、Aは、Bに対して50万円を支払うと同時に、これを乙債務の元本の弁済に充当することを指定することができず、AがBに支払った50万円は、「費用」、「利息」、「元本」の順に充当される。
(H24 司法 第22問 4)
債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、順次に費用、利息及び元本に充当される。
(正答) 〇
(解説)
488条1項は、「債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第1項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。」と規定しており、括弧書において、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合」(489条1項)における弁済をするものによる指定充当を否定している。その上で、489条1項は、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合…において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。」と規定している。
したがって、本肢の事例では、488条1項は適用されず、489条1項が適用されるため、その給付は、「費用」、「利息」、「元本」の順に充当される。
(H27 司法 第19問 オ)
金銭消費貸借の借主が、元本、利息及び費用の総額に足りない金銭を貸主に弁済する場合には、それをまず元本に充当することを指定することができ、貸主が直ちに異議を述べない限り、その充当の指定は効力を有する。
(正答) ✕
(解説)
488条1項は、「債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第1項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。」と規定しており、括弧書において、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合」(489条1項)における弁済をするものによる指定充当を否定している。その上で、489条1項は、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合…において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。」と規定している。
したがって、本肢の事例では、488条1項は適用されず、489条1項が適用されるから、借主による指定充当は認められない。
(R1 予備 第8問 3)
債務者が1個の債務について費用、利息及び元本を支払うべき場合において、債務者のした給付がそれらの全部を消滅させるのに足りないときは、債務者が給付の時にその給付を元本に充当する旨を指定すれば、その給付は元本に充当される。
(正答) ✕
(解説)
488条1項は、「債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第1項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。」と規定しており、括弧書において、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合」(489条1項)における弁済をするものによる指定充当を否定している。その上で、489条1項は、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合…において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。」と規定している。
したがって、本肢の事例では、488条1項は適用されず、489条1項が適用されるため、債務者が給付の時にその給付を元本に充当する旨を指定することはできず、その給付は、「費用」、「利息」、「元本」の順に充当される。
(R6 司法 第21問 イ)
債務者が1個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、債務者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、当事者間の別段の合意がない限り、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
(正答) 〇
(解説)
488条1項は、「債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第1項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。」と規定しており、括弧書において、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合」(489条1項)における弁済をするものによる指定充当を否定している。その上で、489条1項は、「債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合…において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。」と規定している。
第490条
条文
前2条の規定にかかわらず、弁済をする者と弁済を受領する者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従い、その弁済を充当する。
過去問・解説
(R1 予備 第8問 4)
債務者が1個の債務について費用、利息及び元本を支払うべき場合において、債務者のした給付がそれらの全部を消滅させるのに足りないときは、債権者と債務者がその給付を利息に充当する旨を合意すれば、その給付は利息に充当される。
第492条
条文
債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。
過去問・解説
(H22 司法 第21問 4)
金銭債務の債務者が債務の弁済期に現実の提供をしたが、債権者がその受領を拒絶した場合には、債務者は、提供後の遅延損害金の支払義務を負わない。
第493条
条文
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
過去問・解説
(H26 司法 第16問 オ)
売買契約においてその目的物であるワインを種類のみで指定し、買主の住所で引き渡すこととされていたが、買主があらかじめワインの受領を拒んでいる場合、売主が弁済の準備をしたことを買主に通知してその受領を催告したときは、売主は、約定の期日に買主の住所にワインを持参しなくても、ワインの引渡債務の不履行を理由とする損害賠償責任を負わない。
(正答) 〇
(解説)
493条は、本文において「弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。」と規定する一方で、但書において「ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。」と規定している。前者は現実の提供といい、後者は口頭の提供という。本肢の事例では、買主の住所で引き渡すこととされていたが、買主があらかじめワインの受領を拒んでいるため、「債権者があらかじめその受領を拒み」に当たるから、口頭の提供で足りる。したがって、売主が弁済の準備をしたことを買主に通知してその受領を催告したときは、「弁済の提供」が認められるから、売主は、約定の期日に買主の住所にワインを持参しなくても、ワインの引渡債務の不履行を理由とする損害賠償責任を負わない。
第494条
条文
① 弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
二 債権者が弁済を受領することができないとき。
② 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。
過去問・解説
(H20 司法 第19問 ア)
弁済供託は、債権者が弁済の受領を拒むとき、債権者が弁済を受領することができないとき、又は債務者が過失なく債権者を確知することができないときに、することができる。
(H20 司法 第19問 イ)
弁済供託がされた債務は、債権者が供託物を受領した時に消滅する。
(H20 司法 第19問 オ)
債務者以外の者は、弁済供託をすることができない。
(H22 司法 第2問 イ)
Aから動産甲を購入する旨の契約を締結したBが、契約締結時に代金のうち一部を支払い、その後、残代金の弁済を提供して動産甲の引渡しを求めたにもかかわらずAがこれに応ぜず、それから相当期間が経過した後にAがその住所を去って行方が分からなくなった。Bは、債権者を確知することができないとの理由により、残代金を供託してその債務を免れることができる。
(正答) ✕
(解説)
494条2項は、弁済供託ができる場合について、「弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。」と規定している。ここでいう「弁済者が債権者を確知することができないとき」(債権者不確知)とは、誰が債権者であるのかが分からないときを意味し、債権者の住所が分からないにとどまるときは、これに当たらない。
本肢の事例では、Bは、債権者がAであることは確知で来ており、単にAの行方が分からなくなっているにすぎないから、「弁済者が債権者を確知することができないとき」に当たらない。したがって、Bは、債権者を確知することができないとの理由により、残代金を供託してその債務を免れることができない。
(H24 司法 第22問 1)
建物賃貸借契約の終了について争いがあり、賃貸人が賃料の受領を拒んでいるときは、賃借人は、賃借人の住所地の供託所又は賃貸人の住所地の供託所に賃料を供託することができる。
(H26 司法 第20問 1)
債務の弁済について正当な利益を有する第三者が弁済の提供をしたのに、債権者がその受領を拒む場合には、当該第三者は、債務者の意思に反するときであっても、供託をすることができる。
(正答) 〇
(解説)
まず、494条1項柱書は、弁済供託の主体について、「債務者」ではなく「弁済者」と規定しているところ、「弁済者」とは、「弁済をすることができる者」を意味し(482条)、第三者弁済も認められている(474条)ため、「弁済者」には、第三者弁済の要件を満たす第三者も含まれる。したがって、債務者以外の者であっても、第三者弁済の要件を満たせば、弁済供託をすることができる。次に、474条2項本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定しており、この規定の反対解釈により、弁済をするについて正当な利益を有する第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができると解されている。したがって、債務の弁済について正当な利益を有する第三者は、債務者の意思に反するときであっても、弁済供託をすることができる「弁済者」に当たる。
そして、債務の弁済について正当な利益を有する第三者が弁済の提供をしたのに、債権者がその受領を拒む場合は、「弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき」(494条1項1号)として弁済供託ができる場合に当たる。
したがって、債務の弁済について正当な利益を有する第三者が弁済の提供をしたのに、債権者がその受領を拒む場合には、当該第三者は、債務者の意思に反するときであっても、供託をすることができる。
(H26 司法 第20問 2)
債務者が債権者を確知することができない場合には、確知することができないことについての過失の有無を問わず、供託をすることができる。
(H26 司法 第20問 4)
債務者が供託をした場合であっても、債権者が供託物を受け取らない限り、債務は消滅しない。
(H30 司法 第20問 ア)
債務の弁済について正当な利益を有する第三者が債権者に弁済の提供をしたのに債権者がその受領を拒んだ場合、当該第三者は、債務者の意思に反するときは、供託することができない。
(正答) ✕
(解説)
まず、494条1項柱書は、弁済供託の主体について、「債務者」ではなく「弁済者」と規定しているところ、「弁済者」とは、「弁済をすることができる者」を意味し(482条)、第三者弁済も認められている(474条)ため、「弁済者」には、第三者弁済の要件を満たす第三者も含まれる。したがって、債務者以外の者であっても、第三者弁済の要件を満たせば、弁済供託をすることができる。次に、474条2項本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定しており、この規定の反対解釈により、弁済をするについて正当な利益を有する第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができると解されている。したがって、債務の弁済について正当な利益を有する第三者は、債務者の意思に反するときであっても、弁済供託をすることができる「弁済者」に当たる。
そして、債務の弁済について正当な利益を有する第三者が弁済の提供をしたのに、債権者がその受領を拒む場合は、「弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき」(494条1項1号)として弁済供託ができる場合に当たる。
したがって、債務の弁済について正当な利益を有する第三者が弁済の提供をしたのに、債権者がその受領を拒む場合には、当該第三者は、債務者の意思に反するときであっても、供託をすることができる。
(H30 司法 第20問 ウ)
債権が二重に譲渡され、確定日付のある2つの譲渡通知が債務者に到達したが、その先後関係が不明である場合、債務者は供託することができる。
(正答) 〇
(解説)
494条2項は、弁済供託ができる場合について、「弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。」と規定している。
債権が二重に譲渡され、確定日付のある2つの譲渡通知が債務者に到達したが、その先後関係が不明である場合、「弁済者が債権者を確知することができないとき」に当たると解されている(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂306頁)。したがって、債権が二重に譲渡され、確定日付のある2つの譲渡通知が債務者に到達したが、その先後関係が不明である場合、債務者は供託することができる。
(H30 司法 第20問 エ)
金銭債務について弁済供託がされた場合、債権者が供託金を受け取った時に債務は消滅する。
(R4 司法 第21問 イ)
弁済者は、債権者を確知することができず、それについて過失がないときは、弁済の目的物を供託することができる。
第495条
条文
① 前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
② 供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。
③ 前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。
第496条
条文
① 債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。
② 前項の規定は、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には、適用しない。
過去問・解説
(H20 司法 第19問 ウ)
債務者は、弁済供託をした後は、債権者の同意がなければ供託物を取り戻すことができない。
(H25 共通 第23問 イ)
弁済の目的物が供託されたことによって抵当権が消滅した場合には、その供託をした者は、債権者が供託を受諾する前であっても、供託物を取り戻すことができない。
第497条
条文
弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。
一 その物が供託に適しないとき。
二 その物について滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。
三 その物の保存について過分の費用を要するとき。
四 前3号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。
過去問・解説
(R4 司法 第37問 ウ)
債権者が弁済の目的物の受領を拒んだ場合において、その物の保存について過分の費用を要するときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、その物を競売に付し、その代金を供託することができる。
第498条
条文
① 弁済の目的物又は前条の代金が供託された場合には、債権者は、供託物の還付を請求することができる。
② 債務者が債権者の給付に対して弁済をすべき場合には、債権者は、その給付をしなければ、供託物を受け取ることができない。
第499条
条文
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
過去問・解説
(H25 共通 第15問 4)
債務者が所有する同一の不動産について、第1順位の抵当権と第2順位の抵当権が設定され、それぞれその旨の登記がされている場合、第1順位の抵当権の被担保債権に係る債務を債務者が弁済したときは、債務者は、弁済による代位によって第1順位の抵当権を取得する。
(H25 司法 第21問 ウ)
物上保証人所有の甲土地と債務者所有の乙土地に第1順位の共同抵当権が設定されている場合、甲土地の代価のみが先に配当され、その被担保債権に係る債務が消滅したときは、物上保証人は、当該債務者に対して有する求償権の範囲内で、乙土地に設定された第1順位の抵当権を行使することができる。
第500条
条文
第467条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。
過去問・解説
(H25 予備 第10問 4)
物上保証人が抵当権の実行を受けた場合、債権者の承諾がなければ債権者に代位することはできない。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正前民法下では、旧499条1項は、任意代位について、「債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。」として、「債権者の承諾」を必要としていた。
これに対し、平成29年改正民法下では、任意代位について、旧499条1項を削除して「債権者の承諾」を不要とする一方で、「第467条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。」(500条)として、原債権への代位の効果を債務者や第三者に対抗するための要件として、債権譲渡の債務者対抗要件・第三者対抗要件の具備が必要であるとしている。
なお、物上保証人は、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるため、同人による代位は任意代位ではなく法定代位であるから、平成29年改正前民法下であっても、「債権者の承諾」は不要である。
(R2 司法 第19問 ア)
物上保証人は、被担保債権を弁済した場合、代位により取得した被担保債権につき、対抗要件を備えなくても、これを行使することができる。
(正答) 〇
(解説)
500条は、「第467条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。」として、任意代位について、原債権への代位の効果を債務者や第三者に対抗するための要件として、債権譲渡の債務者対抗要件・第三者対抗要件の具備が必要であるとしている。
もっとも、物上保証人は、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるため、同人による代位は任意代位ではなく法定代位であるから、債権譲渡の対抗要件を具備することは不要である。
したがって、物上保証人は、被担保債権を弁済した場合、代位により取得した被担保債権につき、対抗要件を備えなくても、これを行使することができる。
第501条
条文
① 前2条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
② 前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内(保証人の1人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。
③ 第1項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。
一 第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ。)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。
二 第三取得者の1人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
三 前号の規定は、物上保証人の1人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。
四 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
五 第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第1号及び第2号の規定を適用し、物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第1号、第3号及び前号の規定を適用する。
過去問・解説
(H19 司法 第15問 オ)
Xが所有する甲不動産について、Yに対して抵当権を設定して金銭を借り入れるとともに、Aが、XのYに対する借入れ債務を担保するため、Yとの間で連帯保証契約を結んだ場合、Aが借入れ債務を全額弁済したとしても、Xは、Yに対して、抵当権設定登記の抹消を求めることはできない。
(H19 司法 第20問 イ)
債務者が設定した抵当権の目的である不動産の第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
(H22 司法 第13問 4)
AがBに対し有する甲債権を担保するため、Bが所有する乙土地を目的とする第1順位の抵当権が設定されてその旨が登記され、また、Cが保証人となった。CがAに対し保証債務の全額を弁済して乙土地のAの抵当権に代位の登記をしたときには、その後、Bが乙土地をFに譲渡してその旨の登記がされても、Cは、乙土地にAが有していた抵当権を行使することができる。
(正答) 〇
(解説)
Cは、Bの保証人であり、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるから、Aに対し保証債務の全額を弁済した場合、債権譲渡の対抗要件の具備の有無にかかわらず、債権者Aに代位し、求償権の範囲内で、甲債権及び乙土地に設定されたAの抵当権を行使することができる(500条括弧書、501条1項・2項)。そして、「保証人」は、抵当不動産の「第三取得者」に対して、債権者に代位する。これは501条1項からの当然の帰結であるから、同条3項各号では規定が設けられていない。したがって、Cは、債権者Aに代位して、乙土地にAが有していた抵当権を行使することができる。
なお、平成29年改正前民法下では、501条1号が「保証人は、あらかじめ…抵当権の登記にその代位を付記しなければ、…抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。」と規定していたが、平成29年改正民法下では、同号は削除されているから、代位の登記は不要である。
(H23 司法 第22問 ア)
保証人が債権者に弁済をする前に債務者所有の抵当不動産が第三者に譲渡された場合には、保証人は、その後に弁済をしても、その第三者に対して債権者に代位することはできない。
(正答) ✕
(解説)
保証人は、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるから、保証債務を弁済した場合、債権譲渡の対抗要件の具備の有無にかかわらず、債権者に代位し、求償権の範囲内で、原債権及び抵当権を行使することができる(500条括弧書、501条1項・2項)。そして、「保証人」は、抵当不動産の「第三取得者」に対して、債権者に代位する。これは501条1項からの当然の帰結であるから、同条3項各号では規定が設けられていない。したがって、Cは、保証人が債権者に弁済をする前に債務者所有の抵当不動産が第三者に譲渡された場合には、保証人は、その後に弁済をしたときは、その第三者に対して債権者に代位することができる。
(H25 司法 第21問 エ)
同一の債務につき、保証人がいるとともに、物上保証人所有の甲土地に抵当権が設定されている場合、保証人が保証債務を履行し、債務を消滅させたときは、保証人は、当該債務者に対する求償権の全額について、甲土地に設定された抵当権を行使することができる。
第502条
条文
① 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。
② 前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。
③ 前2項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。
④ 第1項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。
過去問・解説
(H19 司法 第20問 オ)
1つの債権の一部につき代位弁済がされた場合、その債権を被担保債権とする抵当権の実行による競売代金の配当については、代位弁済者は債権者に劣後する。
(H23 司法 第22問 エ)
債務者が所有する不動産と物上保証人が所有する不動産に共同抵当権が設定された場合において、後者の不動産が競売されて債権者が被担保債権の一部の満足を受けたときは、物上保証人は、一部代位者として債権者の同意を得て債権者と共に前者の不動産に設定された抵当権を実行することができるが、競落代金の配当においては債権者に劣後する。
(H25 司法 第21問 ア)
抵当権の被担保債権の一部を弁済した第三者は、その弁済をした価額に応じて抵当権者とともにその抵当権を行使することができ、その抵当権が実行されたときは、当該抵当権者と当該第三者は、当該抵当権者が有する残債権の額と当該第三者が代位によって取得した債権の額に応じ、按分して配当を受ける。
(正答) ✕
(解説)
502条は、1項において「債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。」と規定しており、2項において「前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。」と規定している。このように、平成29年改正民法下では、一部弁済による代位について、代位弁済者が単独で原債権及びその担保権を行使することを否定し、一部弁済をした保証人の単独での抵当権の実行を肯定した平成29年改正前民法下の判例法理を変更されている(潮見佳男「民法(債権関係)」改正法の概要」初版194頁)。
502条3項は、「前2項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。」と規定している。これは、平成29年改正前民法下の判例法理(原債権者優先主義、最判昭60.5.23、最判昭62.4.23)を、抵当権の実行の場面を越えて一般化した上で、明文化したものである(潮見佳男「民法(債権関係)」改正法の概要」初版194頁)。 したがって、抵当権の被担保債権の一部を弁済した第三者は、その弁済をした価額に応じて抵当権者とともにその抵当権を行使することができるが(501条1項)、その抵当権が実行されたときは、当該抵当権者と当該第三者は、当該抵当権者が有する残債権の額と当該第三者が代位によって取得した債権の額に応じ、按分して配当を受けるのではなく、売却代金の配当において、原債権者である抵当権者が当該第三者に優先する。
(R2 司法 第19問 イ)
保証人は、被担保債権の一部を弁済したが残債務がある場合、その弁済をした価額の限度において、代位により取得した被担保債権及びその担保権を単独で行使することができる。
(正答) ✕
(解説)
502条は、1項において「債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。」と規定しており、2項において「前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。」と規定している。このように、平成29年改正民法下では、一部弁済による代位について、代位弁済者が単独で原債権及びその担保権を行使することを否定し、一部弁済をした保証人の単独での抵当権の実行を肯定した平成29年改正前民法下の判例法理を変更されている(潮見佳男「民法(債権関係)」改正法の概要」初版194頁)。
したがって、保証人は、被担保債権の一部を弁済したが残債務がある場合、その弁済をした価額の限度において、代位により取得した被担保債権及びその担保権を単独で行使することができず、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができるにとどまる。
第503条
条文
① 代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
② 債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。
第504条
条文
① 弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。その代位権者が物上保証人である場合において、その代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者及びその特定承継人についても、同様とする。
② 前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない。
過去問・解説
(H25 司法 第21問 オ)
同一の債務につき、保証人がいるとともに、債務者所有の甲土地に抵当権が設定されている場合、債権者が甲土地に設定された抵当権を放棄した後に保証人が保証債務を履行し、債務を消滅させたときは、保証人は、甲土地に設定された抵当権が放棄されていないものとして、その抵当権を行使することができる。
(R2 司法 第19問 エ)
債権者が故意に担保を減少させたとしても、そのことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由がある場合、保証人は、その担保の減少に基づく免責を主張することはできない。
(正答) 〇
(解説)
504条は、1項前段において「弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。」と規定する一方で、その例外として、第2項において「前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない。」と規定している。
したがって、債権者が故意に担保を減少させたとしても、そのことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由がある場合、保証人は、その担保の減少に基づく免責を主張することはできない。