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相殺、更改、免除、混同 - 解答モード

条文
第505条(相殺の要件等)
① 2人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
② 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
過去問・解説

(R3 共通 第21問 エ)
AのBに対する金銭債権(甲債権)とBのAに対する金銭債権(乙債権)との相殺について、甲債権の弁済期が到来した後に、Aの債権者であるFが甲債権を差し押さえた場合には、Bは、差押え前に取得していた乙債権の弁済期到来前であっても、乙債権と甲債権との相殺をもってFに対抗することができる。

(正答)  

(解説)
511条1項は、「差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。」として、自働債権が受働債権の差押え前に取得されたものである場合には、自働債権の弁済期が受働債権の弁済期よりも後に到来するときであっても相殺は禁止されないとする無制限説(最大判昭45.6.24)を明文化している。本肢の事例では、Bは、Aの債権者であるFが甲債権を差し押さえる前に、Aに対する乙債権を取得しているから、乙債権は「差押え前に取得した債権」に当たる。
しかし、505条1項本文は、相殺適状の一つとして、「双方の債務が弁済期にある」ことを必要としている。したがって、Bは、差押え前に取得していた乙債権の弁済期到来前であれば、「双方の債務が弁済期にある」という要件を満たさないため、乙債権と甲債権との相殺をもってFに対抗することができない。相殺の対抗可能性という問題以前に、相殺適状を満たさないとの理由から相殺が認められないのである。


(R4 司法 第22問 イ)
弁済期が到来していない債権の債務者は、その債権を受働債権とする相殺をすることができない。

(正答)  

(解説)
505条1項は、相殺について、「双方の債務が弁済期にある」ことを必要としている。もっとも、受働債権については、その債権者が期限の利益を放棄(136条2項)することにより、弁済期を到来させることができる。したがって、弁済期が到来していない債権の債務者は、期限の利益を放棄して弁済期を到来させることにより、その債権を受働債権とする相殺をすることができる。なお、判例(最判平25.2.28)は、「既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、受働債権につき、期限の利益を放棄することができるというだけではなく、期限の利益の放棄又は喪失等により、その弁済期が現実に到来していることを要するというべきである。」としている。


(R5 共通 第21問 オ)
AのBに対する金銭債権(甲債権)とBのAに対する金銭債権(乙債権)との相殺について、甲債権について弁済期が到来していなくても、乙債権について弁済期が到来していれば、Aは、相殺をもってBに対抗することができる。

(正答)  

(解説)
505条1項は、相殺について、「双方の債務が弁済期にある」ことを必要としている。そして、自働債権については、相殺を主張するものにおいて、期限の利益を放棄(136条2項)して弁済期を到来させることができない。したがって、甲債権について弁済期が到来していない場合、Aは、甲債権を自働債権、乙債権を受働債権とする相殺をもってBに対抗することはできない。


(R5 司法 第36問 ウ)
債権について当事者がした相殺を禁止する旨の特約は、その債権の譲受人がその特約の存在を知り、又は重大な過失によって知らなかった場合には、その譲受人に対抗することができる。

(正答)  

(解説)
505条2項は、相殺禁止特約について、「当事者が相殺を禁止し…た場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。」と規定している。

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条文
第506条(相殺の方法及び効力)
① 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
② 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
過去問・解説

(H22 司法 第5問 イ)
相殺の意思表示には、期限を付することはできるが、条件を付することはできない。

(正答)  

(解説)
506条1項後段は、相殺の意思表示について、「条件又は期限を付することができない。」と規定している。


(H25 共通 第23問 ウ)
相殺の意思表示には、条件を付することができる。

(正答)  

(解説)
506条1項後段は、相殺の意思表示について、「条件…を付することができない。」と規定している。


(H29 予備 第9問 ア)
相殺の意思表示に条件を付することはできないが、期限を付することはできる。

(正答)  

(解説)
506条1項後段は、相殺の意思表示について、「条件又は期限を付することができない。」と規定している。

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条文
第508条(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
 時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
過去問・解説

(H21 司法 第22問 5)
自働債権が時効によって消滅している場合には相殺をすることができないが、相手方は時効利益を放棄して相殺をすることができる。

(正答)  

(解説)
508条は、「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」と規定している。
したがって、自働債権が時効によって消滅している場合であっても、相手方は、時効の利益を放棄(146条)することなく、相殺をすることができる。


(H23 共通 第23問 ア)
消滅時効期間の経過した債権が、その期間経過以前に債務者の有する反対債権と相殺適状にあった場合には、消滅時効期間の経過した債権を有する債権者は、債務者による消滅時効の援用の前後を問わず、相殺をすることができる。

(正答)  

(解説)
508条は、「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる」と規定している。ここでいう「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合」というためには、自働債権について時効期間が満了する以前に自働債権と受働債権とが相殺適状にあれば足り、自働債権の債務者が既に消滅時効を援用していている場合も含まれる(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂429頁)。
したがって、消滅時効期間の経過した債権が、その期間経過以前に債務者の有する反対債権と相殺適状にあった場合には、消滅時効期間の経過した債権を有する債権者は、債務者による消滅時効の援用の前後を問わず、相殺をすることができる。


(H25 司法 第3問 3)
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、消滅時効が完成した後であっても、相殺をすることができる。

(正答)  

(解説)
508条は、「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」と規定している。


(R5 共通 第21問 エ)
AのBに対する金銭債権(甲債権)とBのAに対する金銭債権(乙債権)との相殺について、甲債権と乙債権とが相殺適状となった後に甲債権が時効によって消滅した場合において、その後、BがAに対して乙債権の履行を請求したときは、Aは、相殺をもってBに対抗することができる。

(正答)  

(解説)
508条は、「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」と規定している。
したがって、甲債権と乙債権とが相殺適状となった後に甲債権が時効によって消滅した場合において、その後、BがAに対して乙債権の履行を請求したときは、Aは、相殺をもってBに対抗することができる。

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条文
第509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
 次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。 
 一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
 二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
過去問・解説

(H19 司法 第29問 ウ)
双方の過失に起因する同一の交通事故によって生じた物的損害についての損害賠償債権相互間において、いずれの側からも相殺することは許されない。

(正答)  

(解説)
509条柱書本文は、相殺が禁止される受働債権に係る債務として、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」(1号)及び「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」(2号)を挙げているところ、過失に起因する交通事故によって生じた物的損害の損害賠償債務は、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」と「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」のいずれにも当たらない。したがって、509条は適用されないから、双方の過失に起因する同一の交通事故によって生じた物的損害についての損害賠償債権相互間において、いずれの側からも相殺することが許される。なお、交叉的不法行為の場合(自働債権と受働債権が同一不法行為から生じた損害賠償請求権である場合)について、平成29年改正前民法下の判例(最判昭49.6.28)は、「民法509条の趣旨は、不法行為の被害者に現実の弁済によって損害の填補を受けさせること等にあるから、およそ不法行為による損害賠償債務を負担している者は、被害者に対する不法行為による損害賠償債権を有している場合であつても、被害者に対しその債権をもつて対当額につき相殺により右債務を免れることは許されないものと解するのが、相当である…。したがつて、本件のように双方の被用者の過失に基因する同一交通事故によって生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、民法509条の規定により相殺が許されないというべきである。」として、被害者に現実の給付を得させるという趣旨が妥当することを理由に相殺を否定している。これに対し、多くの学説は、不法行為誘発防止という趣旨が妥当しないとの理由から、相殺を肯定すべきとする(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂435~436頁)。


(H21 司法 第30問 ウ)
Aが所有し運転するタクシーに、Bが所有し運転する自家用車が衝突する交通事故が発生し、AB所有の各車両が損傷するとともに歩行者Cが負傷した。当該交通事故により、Aには50万円の損害が、Bには80万円の損害が、Cには100万円の損害が、それぞれ生じ、当該交通事故及びCの負傷についての過失割合はAが2割で、Bが8割であり、また、Cの負傷にはCの過失が認められなかった。Bは、その損害額である80万円のうち16万円の損害賠償請求権を自働債権として、BのAに対する損害賠償債務と相殺することができる。

(正答)  

(解説)
509条柱書本文は、相殺が禁止される受働債権に係る債務として、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」(1号)及び「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」(2号)を挙げているところ、BのAに対する損害賠償債務は、過失に起因する交通事故によって生じた物的損害の損害賠償債務であり、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」と「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」のいずれにも当たらない。
したがって、509条は適用されないから、Bは、その損害額である80万円のうち16万円の損害賠償請求権を自働債権として、BのAに対する損害賠償債務と相殺することができる。


(H23 共通 第23問 ウ)
不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為に基づく損害賠償債権以外の債権を受働債権とする相殺は、必ず許される。

(正答)  

(解説)
509条柱書本文は、相殺が禁止される受働債権に係る債務として、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」(1号)及び「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」(2号)を挙げているところ、「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」(2号)には、不法行為に基づく損害賠償債務のみならず、債務不履行に基づく損害賠償債務も含まれる。したがって、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為に基づく損害賠償債権以外の債権を受働債権とする相殺であっても、受働債権が「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」に当たる場合があるから、その限りにおいて、許されない。


(H29 予備 第9問 オ)
不法行為に基づく損害賠償債務を負う債務者であっても、自働債権と受働債権のいずれもが不法行為に基づく損害賠償債権である場合には、相殺をすることができる。

(正答)  

(解説)
509条柱書本文は、相殺が禁止される受働債権に係る債務として、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」(1号)及び「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」(2号)を挙げているところ、自働債権と受働債権のいずれもが不法行為に基づく損害賠償債権である場合における相殺は、受働債権が「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」又は「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」のいずれかに当たるときは、許されない。
なお、この結論は、交叉的不法行為の場合(自働債権と受働債権が同一不法行為から生じた損害賠償請求権である場合)においても同じです。平成29年改正前民法下の判例(最判昭49.6.28)は、交叉的不法行為の場合について、「民法509条の趣旨は、不法行為の被害者に現実の弁済によって損害の填補を受けさせること等にあるから、およそ不法行為による損害賠償債務を負担している者は、被害者に対する不法行為による損害賠償債権を有している場合であつても、被害者に対しその債権をもつて対当額につき相殺により右債務を免れることは許されないものと解するのが、相当である…。したがつて、本件のように双方の被用者の過失に基因する同一交通事故によって生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、民法509条の規定により相殺が許されないというべきである。」として、被害者に現実の給付を得させるという趣旨が妥当することを理由に相殺を否定している。これに対し、多くの学説は、不法行為誘発防止という趣旨が妥当しないとの理由から、相殺を肯定すべきとする(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂435~436頁)。


(H30 司法 第21問 エ)
車両同士の交通事故が双方の運転者の過失に基因して発生し、双方に物的損害のみが生じた場合、一方の運転者は、双方の損害賠償債権を対当額において相殺することができる。

(正答)  

(解説)
509条柱書本文は、相殺が禁止される受働債権に係る債務として、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」(1号)及び「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」(2号)を挙げているところ、過失に基因する交通事故によって生じた物的損害の損害賠償債務は、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」と「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」のいずれにも当たらない。したがって、509条は適用されないから、車両同士の交通事故が双方の運転者の過失に基因して発生し、双方に物的損害のみが生じた場合、一方の運転者は、双方の損害賠償債権を対当額において相殺することができる。


(R2 司法 第29問 ア)
金銭債権を有する者が、その債務者を負傷させたことにより不法行為に基づく損害賠償債務を負った場合、当該金銭債権を自働債権、損害賠償債権を受働債権とする相殺をもって債務者に対抗することはできない。

(正答)  

(解説)
509条柱書本文2号は、相殺が禁止される受働債権に係る債務として、「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」(2号)を挙げている。
したがって、金銭債権を有する者が、その債務者を負傷させたことにより不法行為に基づく損害賠償債務を負った場合、当該金銭債権を自働債権、損害賠償債権を受働債権とする相殺は、「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」を受働債権とする相殺として、禁止される。


(R3 共通 第21問 ウ)
AのBに対する金銭債権(甲債権)とBのAに対する金銭債権(乙債権)との相殺について、甲債権は、Bの悪意による不法行為に基づいて生じたEのBに対する損害賠償債権を、AがEから譲り受けたものであった。この場合、Bは、乙債権と甲債権との相殺をもってAに対抗することができる。

(正答)  

(解説)
509条柱書は、本文において「次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。」とする一方で、但書において「ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。」と規定している。
Bの悪意による不法行為に基づいて生じたEのBに対する損害賠償債権は、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」(1号)に当たるが、これはAがEから譲り受けたものであるから、「その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたとき」に当たる。したがって、Bは、乙債権と甲債権との相殺をもってAに対抗することができる。


(R4 司法 第22問 ア)
不法行為によって傷害を受けた被害者Aは、加害者Bに対する損害賠償債権を自働債権とし、BがAに対して有する貸金債権を受働債権とする相殺をすることができない。

(正答)  

(解説)
509条柱書本文2号は、債務者が相殺をもって対抗することができない債務として、「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」を挙げており、被害者Aの加害者Bに対する損害賠償債権に係る債務はこれに当たる。
もっとも、同条が禁止しているのは、債務者(加害者)が不法行為等によって生じた損害賠償請求権を受働債権とする相殺であって、債権者(被害者)が不法行為等によって生じた損害賠償請求権を自働債権とする相殺は禁止されない(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂434頁)。したがって、不法行為によって傷害を受けた被害者Aは、加害者Bに対する損害賠償債権を自働債権とし、BがAに対して有する貸金債権を受働債権とする相殺をすることができる。


(R5 共通 第21問 ア)
AのBに対する金銭債権(甲債権)とBのAに対する金銭債権(乙債権)との相殺について、甲債権が売買代金債権であり、乙債権がBの所有するパソコンをAが過失によって損傷したことによる不法行為に基づく損害賠償債権であったときは、Aは、相殺をもってBに対抗することができる。

(正答)  

(解説)
509条柱書本文は、相殺が禁止される受働債権に係る債務として、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」(1号)及び「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」(2号)を挙げているところ、過失によって生じた物的損害の損害賠償債務は、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」と「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」のいずれにも当たらない。したがって、509条は適用されないから、Aは、Bの所有するパソコンをAが過失によって損傷したことによる不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権とする相殺をもってBに対抗することができる。

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条文
第511条(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
① 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
② 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第3債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
過去問・解説

(H21 司法 第22問 4)
判例によれば、受働債権が差し押さえられても、差押え前から自働債権となる債権を第三債務者が有していた場合、第三債務者は、それらの債権の弁済期の先後を問わず、相殺適状に達すれば、相殺をすることができる。

(正答)  

(解説)
511条1項は、「差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。」として、自働債権が受働債権の差押え前に取得されたものである場合には、自働債権の弁済期が受働債権の弁済期よりも後に到来するときであっても相殺は禁止されないとする無制限説(最大判昭45.6.24)を明文化している。
したがって、受働債権が差し押さえられても、差押え前から自働債権となる債権を第三債務者が有していた場合、第三債務者は、それらの債権の弁済期の先後を問わず、相殺適状に達すれば、「差押え前に取得した債権による相殺」として、相殺をすることができる。


(H27 共通 第20問 ア)
AのBに対する甲債権が差し押さえられた後、BがAに対する乙債権を取得した場合、Bは、乙債権を自働債権として甲債権と相殺することができる。

(正答)  

(解説)
511条1項前段は、「差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできない」と規定している。AのBに対する甲債権が差し押さえられた後、BがAに対する乙債権を取得した場合、Bが乙債権を自働債権として甲債権と相殺することは、「差押え後に取得した債権による相殺」に当たるから、511条1項前段の適用上は許されない。
511条2項本文は、「前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。」と規定している。しかし、甲債権の差押え後に取得された乙債権が「差押え前の原因に基づいて生じたものである」といえる事情は見当たらないから、Bが乙債権を自働債権として甲債権と相殺することは、511条2項本文の適用上も許されない。


(H29 予備 第9問 イ)
債権者Aの債務者Bに対する甲債権がAの債権者Cに差し押さえられても、差押え前からBがAに対する乙債権を有していた場合、Bは、甲債権と乙債権の弁済期の先後を問わず、相殺適状にあれば、相殺をすることができる。

(正答)  

(解説)
511条1項は、「差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。」として、自働債権が受働債権の差押え前に取得されたものである場合には、自働債権の弁済期が受働債権の弁済期よりも後に到来するときであっても相殺は禁止されないとする無制限説(最大判昭45.6.24)を明文化している。
したがって、債権者Aの債務者Bに対する甲債権がAの債権者Cに差し押さえられても、差押え前からBがAに対する乙債権を有していた場合、Bは、甲債権と乙債権の弁済期の先後を問わず、相殺適状にあれば、「差押え前に取得した債権による相殺」として、相殺をすることができる。


(R3 共通 第21問 イ)
AのBに対する金銭債権(甲債権)とBのAに対する金銭債権(乙債権)との相殺について、乙債権は、Aの債権者であるDが甲債権を差し押さえた後に、Bが他人から譲り受けたものであった。この場合、乙債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるとしても、Bは、乙債権と甲債権との相殺をもってDに対抗することができない。

(正答)  

(解説)
511条2項は、本文において「前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。」と規定している。
本肢の事例では、甲債権の「差押え後に取得された債権」である乙債権は、「差押え前の原因に基づいて生じたの」であるが、Bが他人から譲り受けたものであり「第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したとき」に当たるから、Bは、乙債権と甲債権との相殺をもってDに対抗することができない。


(R4 司法 第22問 オ)
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前から有していた差押債務者に対する債権を自働債権とする相殺をもって差押債権者に対抗することができる。

(正答)  

(解説)
511条1項は、「差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。」として、自働債権が受働債権の差押え前に取得されたものである場合には、自働債権の弁済期が受働債権の弁済期よりも後に到来するときであっても相殺は禁止されないとする無制限説(最大判昭45.6.24)を明文化している。
したがって、差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前から有していた差押債務者に対する債権を自働債権とする相殺をもって差押債権者に対抗することができる。


(R5 共通 第21問 イ)
AのBに対する金銭債権(甲債権)とBのAに対する金銭債権(乙債権)との相殺について、AがBのCに対する債務をBの委託を受けて保証していた場合において、Bの債権者Dが売買代金債権である乙債権を差し押さえた後、AがCに対する保証債務を履行し、求償権である甲債権を取得したときは、Aは、相殺をもってDに対抗することができる。

(正答)  

(解説)
511条2項は、本文において「前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。」と規定している。
本肢の事例では、甲債権の「差押え後に取得された債権」である甲債権(受託保証人の求償権)は、差押え前にAB間の保証契約が成立しているために、「差押え前の原因に基づいて生じたもの」に当たるから、Aは、相殺をもってDに対抗することができる。

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条文
第514条(債務者の交替による更改)
① 債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
② 債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない。
過去問・解説

(R1 共通 第19問 4)
債務者Aが債権者Bに対して金銭債務を負っている。Bと第三者Cとは、Aの意思に反しては、Cに債務者を交替する更改をすることができない。

(正答)  

(解説)
514条1項前段は、「債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる」と規定するにとどまり、債務者の意思に反してはならない旨の制限は設けられていない。
したがって、債権者Bと第三者Cとは、債務者Aの意思に反してでも、Cに債務者を交替する更改をすることができる。


(R5 司法 第22問 ア)
債務者の交替による更改は、更改前の債務者の意思に反しても、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。

(正答)  

(解説)
514条1項前段は、「債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる」と規定するにとどまり、債務者の意思に反してはならない旨の制限は設けられていない。
したがって、債務者の交替による更改は、更改前の債務者の意思に反しても、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。


(R5 司法 第22問 イ)
債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない。

(正答)  

(解説)
514条2項は、「債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない。」と規定している。

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条文
第515条(債権者の交替による更改)
① 債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができる。
② 債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。
過去問・解説

(R1 司法 第21問 イ)
債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。

(正答)  

(解説)
515条2項は、「債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。」と規定している。

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条文
第518条(更改後の債務への担保の移転)
① 債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
② 前項の質権又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならない。
過去問・解説

(R1 司法 第21問 エ)
更改の当事者は、更改前の債務の目的の限度であれば、その債務の担保として第三者が設定した抵当権を、その第三者の承諾を得ずに更改後の債務に移すことができる。

(正答)  

(解説)
518条1項は、本文において「債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。」と規定している。


(R5 司法 第22問 ウ)
債権者の交替による更改をする場合、更改前の債権者は、債務者の承諾を得なければ、更改前に債務者がその債務の担保として設定していた質権を更改後の債務に移すことができない。

(正答)  

(解説)
518条1項は、本文において「債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。」と規定している。
本肢は、更改後の債務へ第三者が設定した担保を移すことについて、「第三者の承諾」ではなく、債務者の承諾が必要であるとしている点において、誤っている。

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条文
第519条(免除)
 債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
過去問・解説

(H24 司法 第22問 5)
債権者が債務者に対して債務の免除をする場合には、債務者の同意がなければ、免除の効果は発生しない。

(正答)  

(解説)
519条は、「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。」と規定している。このように、債務免除は、債権者が債務者に対する意思表示によって一方的に行うことができる単独行為であるから、債務者の同意は不要である。


(H25 共通 第23問 オ)
債権者は、債務者の承諾がなければ、その債務を免除することができない。

(正答)  

(解説)
519条は、「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。」と規定している。このように、債務免除は、債権者が債務者に対する意思表示によって一方的に行うことができる単独行為であるから、債務者の承諾は不要である。


(H30 司法 第22問 ア)
債権者が債務者に免除の意思を表示した場合、免除の効果は、債務者が債権者に対して免除の利益を享受する意思を表示した時に発生する。

(正答)  

(解説)
519条は、「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。」と規定している。このように、債務免除は、債権者が債務者に対する意思表示によって一方的に行うことができる単独行為であり、第三者のためにする契約(537条)ではないから、受益の意思表示(同条3項)に相当する債務者の債権者に対する免除の利益を享受する意思表示は不要である。


(R1 共通 第19問 1)
債務者Aが債権者Bに対して金銭債務(以下「本件債務」という。)を負っている。Bは、Aの意思に反しては、本件債務を免除することができない。

(正答)  

(解説)
519条は、「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。」と規定しており、債務者の意思に反してはならない旨の制限は設けられていない。
したがって、Bは、Aの意思に反しては、本件債務を免除することができる。


(R6 司法 第23問 ア)
債務の免除の意思表示には、条件を付することができない。

(正答)  

(解説)
債務免除は単独行為であるところ、単独行為については、相手方の地位を著しく不安定にしかねないとの理由から、原則として条件を付すことができないと解されている。
もっとも、債務免除については、条件を付しても債務者に不利益を及ぼさないとの理由から、条件を付すことができると解されている(内田貴「民法Ⅲ 債権総論・担保物権」第4版120頁)。

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条文
第520条(混同)
 債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
過去問・解説

(H24 司法 第22問 3)
AのBに対する債権を担保するため、B所有の土地に抵当権が設定された後、CのBに対する債権を担保するためにその土地に後順位抵当権が設定された場合において、AがBを単独で相続したときは、Aの抵当権は消滅する。

(正答)  

(解説)
520条は、本文において「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。」と規定する一方で、但書において「ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」と規定している。本肢の事例では、債権者Aが債務者Bを単独で相続したことにより、「債権及び債務が同一人に帰属したとき」に当たる。また、B所有の土地には、AのBに対する債権を担保するための1番抵当権のほかに、CのBに対する債権を担保するための2番抵当権も設定されているが、「その債権が第三者の権利の目的であるとき」には当たらないから、混同の例外は認められない。
したがって、AがBを単独で相続したときは、混同により、Aの抵当権は消滅する。


(H25 司法 第35問 イ)
唯一の相続人が単純承認をした場合、相続人が被相続人に対して有していた貸金債権は、その債権が第三者の権利の目的である場合を除き、混同により消滅する。

(正答)  

(解説)
520条は、本文において「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。」と規定する一方で、但書において「ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」と規定している。本肢の事例では、唯一の相続人が単純承認(920条)をした場合、相続人が被相続人に対して有していた貸金債権について、「債権及び債務が同一人に帰属したとき」に当たるから、「その債権が第三者の権利の目的であるとき」を除き、当該貸金債権は混同により消滅する。


(H29 司法 第8問 エ)
AとBは、建物所有目的で、CからC所有の甲土地を賃借した。その後、Cが死亡してAが単独で甲土地を相続した場合、Aの賃借権は消滅しない。

(正答)  

(解説)
520条は、本文において「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。」と規定する一方で、但書において「ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」と規定している。本肢の事例では、賃借人Aが賃貸人C所有の甲土地を単独で相続したことにより、甲土地の賃貸借契約に基づく「債権及び債務が同一人に帰属したとき」に当たる。もっとも、Aの借地権は、「第三者」Bの権利の目的になっているから、混同により消滅することにはならない。


(H30 司法 第36問 ア)
債権質に供されている債権を債務者が相続したときは、当該債権は消滅する。

(正答)  

(解説)
520条は、本文において「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。」と規定する一方で、但書において「ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」と規定している。権利質に供されている債権と債務者が相続したときは、「債権及び債務が同一人に帰属したとき」に当たる一方で、「その債権が第三者の権利の目的であるとき」にも当たるから、混同の例外として、当該債権は消滅しない。


(H30 司法 第36問 オ)
保証人が債権者を相続したときは、保証債務は消滅する。

(正答)  

(解説)
520条本文は、「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。」と規定している。
保証人が債権者を相続したときは、保証債務に係る「債権及び債務が同一人に帰属したとき」に当たるから、混同により保証債務は消滅する。


(R3 予備 第8問 エ)
AのBに対する1000万円の貸金債権につき、Cが保証した。CがAを単独相続した場合には、Cの保証債務は消滅する。

(正答)  

(解説)
520条本文は、「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。」と規定している。
保証人Cが債権者Aを単独相続した場合には、Cの保証債務に係る「債権及び債務が同一人に帰属したとき」に当たるから、混同によりCの保証債務は消滅する。

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