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相続の効力(総則、相続分、遺産の分割) - 解答モード
第896条
条文
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
過去問・解説
(H21 司法 第35問 5)
被相続人が買主の詐欺により不動産を売り渡したが、その売買契約を取り消さずに死亡したときは、相続人は、これを取り消すことができない。
第897条
条文
① 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
② 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
過去問・解説
(H21 司法 第35問 4)
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、氏を同じくする者のうち慣習に従い祖先の祭祀を主宰すべき者が相続する。
(H22 司法 第35問 エ)
Aには妻Bとの間に子としてCとDがいて、Cには妻Eとの間に子としてFとGがいる場合において、Aが死亡した。Aが死亡する前にEを祖先の祭祀を主宰すべき者に指定し、Eがこれを承諾していた場合には、Aの相続人はBCDEである。
(H25 司法 第34問 イ)
AB夫婦の間に子CDがいる場合において、Aが死亡した場合、Aが所有していた墳墓の所有権は、Aの指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がCであるときは、Cが承継する。
(R1 司法 第34問 ア)
相続人が数人ある場合において、被相続人が祖先の祭祀を主宰すべき者を指定していなかったとしても、被相続人が所有していた墳墓は、遺産分割の対象とならない。
第899条の2
条文
① 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
② 前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
過去問・解説
(H19 司法 第8問 イ)
被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXが、遺産分割によって甲の所有権全部を取得したとしても、Bの債権者YがBに代位して甲につきB及びXの共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合、Xは、自己の権利の取得をYに対抗することができない。
(H19 司法 第8問 オ)
「甲不動産はXに相続させる」旨の被相続人Aの遺言により、Aの死亡時にⅩが所有権を取得した甲につき、共同相続人Bの債権者YがBに代位してB及びXの法定相続分により共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合、Xは、甲の所有権取得をYに対抗することができる。
(H21 司法 第11問 ア)
AとBを共同相続人とする相続において、Aは相続財産に属する甲不動産を遺産分割協議により取得したが、当該遺産分割後その旨の登記をする前に、Bの債権者Cの代位によって法定相続分に従った相続の登記がされ、CがBの法定相続分に係る持分に対し仮差押えをし、その旨の登記がされた。この場合、Aは、Cに対し法定相続分を超える権利の取得を対抗することができない。
(H23 司法 第7問 5)
A所有の土地について、その妻B及び子Cが相続を原因として所有権移転登記をしていたが、遺産分割によりBが単独で所有するとの遺産分割協議が成立した後、子Cが不動産登記簿上、自己名義の所有権移転登記があることを奇貨として、遺産分割前の法定相続分をDに売却した場合において、遺産分割が相続時に遡って効力を生じるから、Bは、遺産分割によって取得した持分について登記なくしてDに主張することができる。
(H25 予備 第5問 ウ)
被相続人Aが、その所有する不動産を相続人Bに相続させる旨の遺言をし、相続が開始した後に、他の相続人Cの債権者Dが、その不動産につき代位による共同相続登記をして持分を差し押さえた場合、Bは、Dに対し、登記をしなくても上記遺言による所有権の取得を対抗することができる。
(H26 司法 第9問 オ)
AとBは、被相続人Cが所有していた甲土地を共同相続し、Aが甲土地を単独で相続する旨の遺産分割を成立させた。その後、Bが、甲土地について相続を原因としてABの共有とする登記をし、さらにBの持分をDへ譲渡した場合、Bの持分について、AがDに対して自己の権利を主張するためには登記が必要である。
(H26 共通 第34問 3)
被相続人が所有し、その名義で所有権の登記がされている甲土地を相続人の1人であるAに相続させる旨の遺言が遺産分割の方法の指定と解される場合、Aは、登記をしなくても甲土地の所有権の取得を第三者に対抗することができる。
(H28 司法 第8問 エ)
Aが「甲土地はCに相続させる」旨の遺言をしていた場合において、Bが、甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で、甲土地の2分の1の持分をEに売却し、BからEへの持分移転登記を経由したときには、Cは、Eに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができない。
(R4 司法 第6問 イ)
甲土地を所有するAが死亡して子B及びCが相続し、BとCの遺産分割協議により甲土地はBの単独所有とされた。その後、Cが、甲土地につきCの単独所有とする登記をした上で、これをDに売却したときは、Bは、Dに対し、甲土地の単独所有権の取得を対抗することができない。
第902条
条文
① 被相続人は、前2条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
② 被相続人が、共同相続人中の1人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前2条の規定により定める。
第902条の2
条文
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の1人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
過去問・解説
(H26 司法 第33問 オ)
遺言により相続分の指定がされている場合であっても、被相続人の債権者は、法定相続人に対し、法定相続分に従った相続債務の履行を求めることができる。
(R3 司法 第33問 オ)
遺言によって相続分の指定がされた場合であっても、相続債権者は、指定された相続分に応じた債務の承継を承認しない限り、法定相続分に応じて権利を行使することができる。
(正答) 〇
(解説)
902条の2は、本文において「被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、その債権者が共同相続人の1人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。」と規定している。
したがって、遺言によって相続分の指定がされた場合であっても、相続債権者は、指定された相続分に応じた債務の承継を承認しない限り(これは、同条但書の適用がないことを意味する。)、法定相続分に応じて権利を行使することができる。
第903条
条文
① 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
② 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
③ 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
④ 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
過去問・解説
(R2 共通 第35問 ア)
特別受益に当たる贈与の価額がその受贈者である相続人の具体的相続分の価額を超える場合、その相続人は、超過した価額に相当する財産を他の共同相続人に返還しなければならない。
(R2 共通 第35問 イ)
Aが、婚姻後21年が経過した時点で、Aとその配偶者Bが居住するA所有のマンション甲をBに贈与し、その後に死亡した場合、当該贈与については、その財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(持戻し免除の意思表示)がされたものと推定される。
第904条
条文
前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。
過去問・解説
(R2 共通 第35問 ウ)
特別受益に当たる贈与は、地震により目的物が滅失した場合であっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてその価額を定める。
第904条の2
条文
① 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
② 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
③ 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
④ 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。
第905条
条文
① 共同相続人の1人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
② 前項の権利は、1箇月以内に行使しなければならない。
第907条
条文
① 共同相続人は、次条第1項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
② 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
過去問・解説
(R1 司法 第34問 イ)
遺産分割は、相続の承認又は放棄をすべき期間内には、することができない。
(R3 司法 第33問 ア)
共同相続人は、遺言によって相続分の指定がされた場合には、協議によって、指定された相続分と異なる相続分の割合による遺産分割をすることができない。
第908条
条文
① 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
② 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
③ 前項の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
④ 前条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
⑤ 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
過去問・解説
(H23 共通 第34問 ア)
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定めることを第三者に委託することができる。
(H28 司法 第34問 ウ)
被相続人は、遺言により、遺産分割の方法を定めることを第三者に委託することができる。
(R1 共通 第35問 ウ)
被相続人は、禁止期間を限定したとしても、遺言で遺産の分割を禁ずることはできない。
第909条
条文
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
過去問・解説
(R2 司法 第7問 オ)
甲土地を所有していたAが遺言を残さずに死亡し、BとCがAを共同相続し、Cが甲土地をBCの共有とする共同相続登記をしてCの持分にDのために抵当権を設定し、その旨の登記がされた場合において、その後、BCの遺産分割協議により甲土地がBの単独所有とされたときは、Bは、Dに対し、抵当権設定登記の抹消を請求することができない。
(正答) 〇
(解説)
909条は、本文において「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と規定する一方で、但書において「ただし、第三者の権利を害することはできない。」として第三者保護規定を設けている。同条但書でいう「第三者」は、相続開始後、遺産分割前に、遺産分割の目的物について利害関係を有するに至った者を意味する。また、この「第三者」として保護されるためには、善意・悪意は問われないが、対抗要件を備えることが必要であると解されている。
本肢の事例において、Dは、相続開始後、BC間の遺産分割前に、遺産分割の目的物である甲土地について抵当権を設定することで利害関係を有するに至った者であるから「第三者」に当たる。として、Dは、抵当権設定登記を備えているから、「第三者」として保護される。したがって、Bは、Dに対して、抵当権設定登記の抹消を請求することができない。
第910条
条文
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
過去問・解説
(H23 共通 第34問 ウ)
共同相続人間における遺産分割の審判が確定した後に、被相続人を父とする認知の判決が確定し被認知者が相続人となった場合、遺産分割の審判はその効力を失う。
(R1 共通 第35問 オ)
共同相続人である子A及びBが被相続人である父Cの唯一の相続財産である甲不動産について遺産分割をした後、認知の訴えにより、DがCの子であるとされた場合において、Dが遺産分割を請求しようとするときは、Dは、価額のみによる支払の請求権を有する。
(R4 司法 第34問 イ)
相続開始後にAの子と認知されたBが遺産分割を請求した場合において、他の共同相続人が既に遺産分割をしていたときは、その遺産分割は、効力を失う。
第911条
条文
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
過去問・解説
(H26 共通 第34問 オ)
遺産分割後、遺産である建物に合意の内容と適合しない部分があることが判明した場合であっても、その建物を遺産分割により取得した相続人は、他の相続人に対し、担保責任を追及することができない。