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民法 第192条

条文
第192条(即時取得)
 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
過去問・解説
(H18 司法 第14問 エ)
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。この事例について、Cが未成年者で、Cの親権者がCD間の売買契約を取り消せば、たとえDが甲を買い受けてから2年が過ぎていても、Dは、甲の所有権を取得することができない。

(正答)  

(解説)
善意の占有取得者よりも制限行為能力者を保護することで、制限行為能力制度の枠組みを維持するべきであるとの理由から、制限行為能力者の相手方には192条は適用されないと解されている。
したがって、Cの親権者が5条2項に基づいてCD間の売買契約を取り消した場合、Dは、甲の所有権を即時取得することはできない。

(H18 司法 第32問 5)
強迫を受けてした動産売買契約を取り消した売主は、取消し前に買主から当該動産を善意かつ無過失で買い受けた者に対して、所有権に基づいて、当該動産の返還を求めることができる。

(正答)  

(解説)
確かに、強迫を理由とする意思表示の取消しについては、96条3項のような第三者保護規定がない。
しかし、強迫を理由とする取消し前に登場した第三者については、192条が類推適用され、この場合における善意・無過失の対象は取消原因たる強迫の存否であると解されている。
したがって、取消し前に買主から当該動産を善意かつ無過失で買い受けた者が192条類推適用により動産の所有権を即時取得している場合には、売主の所有権に基づく返還請求は認められない。

(H23 司法 第9問 2)
即時取得の規定は、他人の動産を占有していた被相続人の財産を相続により承継する場合には、適用がない。

(正答)  

(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、相続は「取引行為」に当たらない。
したがって、相続により動産の所有権を即時取得することはできない。

(H24 共通 第10問 2)
Aは、Bから動産甲を買い受け、占有改定の方法で引渡しを受けたが、その後、Bは、動産甲をCにも売却し、現実に引き渡した。この場合、Cは、BのAに対する動産甲の売却について善意無過失でなくても、動産甲の所有権取得をAに対抗することができる。

(正答)  

(解説)
Bを起点とするA及びCに対する動産甲の二重譲渡においては、先にAが占有改定(183条)による「引渡し」(178条)という対抗要件を具備しているから、Aが動産甲の所有権を確定的に取得する一方で、Cによる動産甲の所有権の取得が否定される。この場合、Aが占有改定の方法で「引渡し」を受けた時点で、Aが動産甲の所有権を確定的に取得することになるのだから、Cは、無権利者からの譲受人と変わらないことになる。
そうすると、Cは、Bとの売買契約において、動産甲の所有権を即時取得(192条)する余地があるが、「善意無過失」でない場合は、即時取得の要件を満たさないから、動産甲の所有権取得をAに対抗することができない。

(H28 司法 第9問 エ)
A所有の土地上にある立木を、Bが、B所有の土地上にあるものと過失なく信じて伐採した場合には、Bは、即時取得により当該伐木の所有権を取得する。

(正答)  

(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、立木の伐採は「取引行為」に当たらない。
したがって、Bは、即時取得により当該伐木の所有権を取得することができない。

(R1 司法 第7問 イ)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。そして、Bが死亡し、その唯一の相続人Dは、甲がBの相続財産に属すると過失なく信じて、現実に占有を開始した。甲が宝石であった場合、Dは、即時取得により甲の所有権を取得する。

(正答)  

(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、相続は「取引行為」に当たらない。
したがって、相続により動産の所有権を即時取得することはできない。

(R1 司法 第7問 ウ)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。そして、Bは、甲をEに贈与し、Eは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Eは、即時取得により甲の所有権を取得する。

(正答)  

(解説)
即時取得(192条)における「取引行為」には、贈与などの無償・片務契約も含まれる。
したがって、Eは、他の要件も満たせば、甲の所有権を即時取得できる。

(R1 司法 第7問 オ)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。そして、Bは、甲をGに質入れし、Gは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Gは、即時取得により甲を目的とする質権を取得する。

(正答)  

(解説)
即時取得(192条)における「取引行為」には、質権設定契約も含まれる。
したがって、Gは、他の要件も満たせば、甲を目的とする質権を即時取得できる。

(R2 共通 第8問 ア)
Aは、自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後、Bは、宝石をCに売却して現実の引渡しをした。さらに、その後、Aは、AB間の売買契約をBの強迫を理由として取り消した。この場合、Cは、即時取得により宝石の所有権を取得することはない。

(正答)  

(解説)
96条3項では、強迫を理由とする意思表示の取消しは適用対象とされていないから、Cが96条3項により宝石の所有権を取得する余地はない。問題は、即時取得(192条)の成立余地である。
即時取得の成立要件(実体法上の要件)の1つとして、無権利者からの占有取得であること(取引行為の相手方に処分権限がないこと)が必要であり、取消原因のある取引の相手方については、「無権利者からの占有取得であること」という要件を満たさない。また、善意の占有取得者よりも表意者を保護することで、意思表示の瑕疵に関する制度の枠組みを維持するべきである。こうした理由から、取消原因のある取引の相手方については、192条は適用されないと解されている。
もっとも、強迫の場合、第三者保護規定がないことから、取消し前に登場した第三者については192条が類推適用され、この場合における善意・無過失の対象は取消原因たる強迫の存否であると解されている。
したがって、Cは、即時取得により宝石の所有権を取得する余地がある。

(R2 共通 第8問 イ)
未成年者Aは、自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後、Aは、AB間の売買契約を未成年であることを理由として取り消した。この場合、Bが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。

(正答)  

(解説)
善意の占有取得者よりも制限行為能力者を保護することで、制限行為能力制度の枠組みを維持するべきであるとの理由から、制限行為能力者の相手方には192条は適用されないと解されている。
したがって、Aが5条2項に基づいてAB間の売買契約を未成年であることを取り消した場合、Bは即時取得により宝石の所有権を取得することはない。

(R2 共通 第8問 エ)
Aは、Bが置き忘れた宝石を、自己所有物であると過失なく信じて持ち帰った。この場合、Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。

(正答)  

(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されている。
したがって、本肢の事例では、「取引行為」を欠くから、Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。

(R6 司法 第9問 ア)
AがBから預かっているB所有の種子甲を自らの所有物であると偽って、Cに対し、消費貸借の目的として貸し、現実の引渡しをした場合には、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じたときであっても、Cは、甲の所有権を即時取得しない。

(正答)  

(解説)
消費貸借契約は、借主が目的物を消費することを前提としているから、所有権の取得を伴う「取引行為」に当たる。
したがって、本肢の事例では、消費貸借契約における借主であるCは、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないとき」(192条)として、甲の所有権を即時取得する。

(R6 司法 第9問 イ)
Aは、代理権を有していないにもかかわらず、Bの代理人と称して、B所有のパソコン甲を、Bが甲の所有者であることを知るとともに、AがBの代理人であると過失なく信じたCに売り、 甲を現実に引き渡した。この場合は、Cは、甲の所有権を即時取得しない。

(正答)  

(解説)
即時取得の成立要件(実体法上の要件)の1つとして、無権利者からの占有取得であること(取引行為の相手方に処分権限がないこと)が必要であり、無権代理行為の相手方については、「無権利者からの占有取得であること」という要件を満たさない。また、善意の占有取得者よりも無権代理行為の本人を保護することで、無権代理に関する制度の枠組みを維持するべきである。こうした理由から、無権代理行為の相手方については、192条は適用されないと解されている。
したがって、無権代理行為の相手方であるCは、甲の所有権を即時取得しない。

(R6 司法 第9問 ウ)
Aは、A所有のパソコン甲をBに売り、現実の引渡しをした後、錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消した。Bが甲の現実の引渡しを受けた時に、Aの意思表示に錯誤がないと過失なく信じていたときであっても、Bは、甲の所有権を即時取得しない。

(正答)  

(解説)
即時取得の成立要件(実体法上の要件)の1つとして、無権利者からの占有取得であること(取引行為の相手方に処分権限がないこと)が必要であり、取消原因のある取引の相手方については、「無権利者からの占有取得であること」という要件を満たさない。また、善意の占有取得者よりも表意者を保護することで、意思表示の瑕疵に関する制度の枠組みを維持するべきである。こうした理由から、取消原因のある取引の相手方については、192条は適用されないと解されている。
したがって、錯誤による意思表示の相手方であるBは、甲の所有権を即時取得しない。

(R6 司法 第9問 オ)
Aは、BからB所有のパソコン甲を預かっていた。Aが死亡し、Aの唯一の相続人Cが甲の占有を始めた場合には、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じていたときであっても、Cは、甲の所有権を即時取得しない。

(正答)  

(解説)
即時取得(192条)における占有取得の原因は「取引行為」に限定されているところ、相続は「取引行為」に当たらない。
したがって、相続により動産の所有権を即時取得することはできない。
総合メモ
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