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民法 第196条

条文
第196条(占有者による費用の償還請求)
① 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
② 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
過去問・解説
(H23 司法 第11問 ア)
占有者が占有物から生ずる果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

(正答)  

(解説)
196条1項は、本文において「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と規定している。

(H23 共通 第27問 ウ)
Aを貸主、Bを借主とするA所有の甲建物の使用貸借契約に関して、甲建物についてBが有益費を支出し、使用貸借契約の終了時に、Bがその支出した金額の支払をAに対して求めた場合、Aは、Bが支出した金額ではなく、Bが有益費を支出したことによる甲建物の増価額をBに支払うことができる。

(正答)  

(解説)
595条は、1項において「借主は、借用物の通常の必要費を負担する。」と規定する一方で、2項において、「第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。」と規定している。後者の規定により、使用借主が目的物について有益費を支出した場合、583条2項が準用される。
583条2項は、本文において、「買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第196条の規定に従い、その償還をしなければならない。」と規定しており、196条は、2項本文において、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定している。
したがって、Aは、「回復者」である自己の選択に従い、Bが支出した金額ではなく、Bが有益費を支出したことによる甲建物の増価額をBに支払うことができる。

(H26 共通 第36問 イ)
占有者は、占有物について通常の必要費を支出した場合であっても、果実を取得したときには、回復者にその償還をさせることはできない。

(正答)  

(解説)
196条1項は、本文において「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と規定している。

(H26 共通 第36問 オ)
抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について通常の必要費を支出した場合には、果実を取得したときであっても、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。

(正答)  

(解説)
391条は、「抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第196条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。」と規定している。
196条1項は、本文において「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と規定している。したがって、抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について通常の必要費を支出した場合において、果実を取得したときは、抵当不動産の代価から他の債権者より先にその償還を受けることができない。

(H28 司法 第35問 オ)
土地について有益費を支出し、その価格の増加が現存する場合において、地上権者と賃借人は、いずれも、その選択に従い、支出した金額又は増価額の償還を土地所有者に請求することができる。

(正答)  

(解説)
608条2項本文は、「賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還を請求しなければならない。」と規定している。
196条2項本文は、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定している。
したがって、賃借人は、「回復者」である賃貸人の選択に従い、その支出した金額又は増価額の償還を請求することができる。これらの規定の類推適用を受ける地上権者についても、同様である。
本肢は、地上権者と賃借人が、自らの選択により、その支出した金額又は増価額の償還を請求することができる、としている点において、誤っている。選択権を有するのは、「回復者」である土地の所有者である。

(H30 司法 第24問 エ)
借主が有益費を支出した場合において、その価格の増加が現存するときは、貸主は、その選択に従い、借主が支出した金額又は増価額のいずれかを償還すれば足りる。

(正答)  

(解説)
使用貸借契約と賃貸借契約のいずれにおいても、借主が有益費を支出した場合については、196条2項が準用される(595条2項、608条2項)。
196条2項は、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費」について、「その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる」と規定している。
借主が有益費を支出した場合において、その価格の増加が現存するときは、貸主は、その選択に従い、借主が支出した金額又は増価額のいずれかを償還すれば足りる。

(R3 司法 第36問 エ)
Aの所有する甲土地を悪意で占有していたBは、甲土地をAに返還する場合には、甲土地に関して支出した通常の必要費の償還をAに請求することはできない。

(正答)  

(解説)
196条1項本文は、「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。」と規定しているにとどまるから、同条1項に基づく必要費償還請求権の成否において占有者の善意・悪意は問われない。

(R4 司法 第37問 ア)
占有者が所有者に占有物を返還する際に所有者に有益費の償還を請求する場合には、その占有者が善意であったときでも、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

(正答)  

(解説)
196条2項は、本文において「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」と規定している。
総合メモ
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