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毀棄及び隠匿の罪 - 解答モード

公用文書毀棄罪における「公務所の用に供する文書」 最三小判昭和32年1月29日

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概要
司法警察員が被疑者に対し被疑事実の要旨および弁護人を選任し得る旨を告げ、被疑者がこれに対する供述をしたので、その旨を記載した弁解録取書原本を執筆し、これを読み聞かせ誤の有無を問うたところ被疑者が黙秘したため、司法警察員がその旨の文言の一部を末尾に記載した場合、司法警察員の署名押印がなくても当該弁解録取書は、258条にいわゆる公務所の用に供する文書というべきである。右の文書を被疑者がほしいままに両手で丸めしわくちゃにした上床に投げ棄てる行為は同条の毀棄に当たる。
判例
事案:被疑事件につき逮捕状により逮捕された被疑者に対し、被疑事実の要旨及び弁護人を選任し得る旨を告げ被疑者がこれに対する供述をしたのでその旨を記載した弁解録収書原本を執筆し、これを読み聞かせ誤の有無を問うたところ被疑者は黙秘したため、その旨の文言の一部を末尾に記載したところ、被疑者が文書を両手で丸めしわくちゃにした上床上に投げ棄てたという事案において、「公務所の用に供する文書」に当たるかが問題となった。

判旨:「被疑事件につき逮捕状により逮捕せられた被疑者に対し、市警察局公安部において所属警察員が、刑訴203条に基き、被疑事実の要旨及び弁護人を選任し得る旨を告げ被疑者がこれに対する供述をしたのでその旨を記載した弁解録収書原本を執筆しこれを読み聞かせ誤の有無を問うたところ被疑者は黙秘したため、司法警察員はその旨の文言の一部を末尾に記載した場合においては、右弁解録取書は未だ被疑者及び右司法警察員の作成者としての署名捺印がなくても刑法258条にいわゆる公務所の用に供する文書というを妨げない。そして、かような文書を他人がほしいままに両手で丸めしわくちゃにした上床上に投げ棄てる行為は同条にいわゆる毀棄に当るものと解するを相当とする。…被告人がこれを取って両手で丸めしわくちゃにした際においては、右文書は刑法258条にいわゆる公務所たる福岡市警察局の用に供する文書であり、そして、被告人がこれを取って両手で丸めしわくちゃにした上床上に投げ棄てた判示所為は同条にいわゆる毀棄に当るものというべきである。」
過去問・解説

(H27 共通 第18問 3)
甲は、A方から高価な壺を盗み出した。Aは、これに気付いて甲を追い掛けたが、甲は、逃げ切って帰宅し、盗んだ上記壺を自宅のテーブルに置いていた。警察官は、甲の本件窃盗事件の捜査を開始した。
 甲は、本件窃盗事件で通常逮捕され、警察署において弁解録取の手続を受けた際、警察官が甲の供述を記載した弁解録取書を手に取って破った。甲に公用文書毀棄罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.1.29)は、本肢と同種の事案において、「弁解録取書は未だ被疑者及び右司法警察員の作成者としての署名捺印がなくても刑法258条にいわゆる公務所の用に供する文書というを妨げない。そして、かような文書を他人がほしいままに両手で丸めしわくちゃにした上床上に投げ棄てる行為は同条にいわゆる毀棄に当る…。」としている。
警察官が甲の供述を記載した弁解録取書は、「公務所の用に供する文書」に当たるから、甲が弁解録取書を手に取って破った行為に、公用文書毀棄罪が成立する。


(H29 共通 第20問 4)
甲は、本件覚せい剤を所持しているのを警察官に現認され、覚せい剤取締法違反の現行犯人として逮捕され、A警察署に連行された。警察官丙は、A警察署の取調室において、甲の弁解録取手続を行い、甲の供述内容を弁解録取書に記載した上、同弁解録取書を甲に手渡して内容の確認を求めたところ、甲は、署名押印する前に同弁解録取書を両手で破った。
丙が作成した弁解録取書には、甲の署名押印がないが、甲の供述内容が記載されていることから、甲には公用文書等毀棄罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.1.29)は、本肢と同種の事案において、「弁解録取書は未だ被疑者及び右司法警察員の作成者としての署名捺印がなくても刑法258条にいわゆる公務所の用に供する文書というを妨げない。そして、かような文書を他人がほしいままに両手で丸めしわくちゃにした上床上に投げ棄てる行為は同条にいわゆる毀棄に当る…。」としている。
警察官丙が作成した弁解録取書は、甲の署名押印がなくとも、「公務所の用に供する文書」に当たるから、甲の同弁解録取書を両手で破った行為に、公用文書等毀棄罪が成立する。


(R6 司法 第20問 エ)
【事 例】
保険会社の従業員である甲は、顧客Aが独りで住んでいる一戸建て家屋に多額の現金が保管されていることを知り、Aを殺害した上で同現金を手に入れようと計画した。甲は、その計画に従い、某月1日午後4時頃、Aを戸外に連れ出し、麻酔薬を吸引させて気絶させた上、自動車の後部座席にAを押し込み、同車を運転してAを山奥まで運んだ。さらに、甲は、同日午後6時頃、気絶していたAを車外に引っ張り出した上、自殺に見せ掛けるため、大木の枝に縛り付けた縄でAの頸部をくくり、そのままAをつり下げて窒息死させた。甲は、Aが持っていたA方の鍵を入手した上で、その場にAの死体を放置して上記自動車を運転してA方に向かった。甲は、同日午後8時50分頃、上記鍵を使用してA方内に立ち入り、同所に保管されていた現金500万円を自己のかばんに入れて上記計画を完遂した。
甲は、A方を燃やして犯行を隠蔽しようと考え、同日午後9時頃、A方居室の畳に火を放ってA方を出た。その直後、付近住民が異変に気付いてA方内に立ち入り、上記畳を取り外して屋外に投げ捨てたため、同畳以外は焼損しなかった。
甲は、同月5日、逮捕され、その後の弁解録取手続において、自暴自棄になり、警察官Bが甲の弁解を記載した弁解録取書を手で破り捨てた。
Aには死亡事故を起こしたことによる前科があり、乙は、かつてAから同前科があることを聞いていた。乙は、Aが死亡したことを知り、同月7日、インターネットの掲示板に「Aは、事故を起こして人を死なせた前科がある。」と書き込み、インターネットを利用する不特定多数の者が閲覧可能な状態にした。

以下の記述は正しいか。

【記 述】
甲が弁解録取書を手で破り捨てた行為について、同弁解録取書に甲及びBの署名押印がなかったとしても、甲に公用文書毀棄罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.1.29)は、本肢と同種の事案において、「弁解録取書は未だ被疑者及び右司法警察員の作成者としての署名捺印がなくても刑法258条にいわゆる公務所の用に供する文書というを妨げない。そして、かような文書を他人がほしいままに両手で丸めしわくちゃにした上床上に投げ棄てる行為は同条にいわゆる毀棄に当る…。」としている。
警察官Bが甲の弁解を記載した弁解録取書は、「公務所の用に供する文書」に当たるから、甲の同弁解録取書を手で破り捨てた行為に、公用文書等毀棄罪が成立する。

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公用文書毀棄罪における「公務所の用に供する文書」 最三小判昭和38年12月24日

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概要
258条にいう「公務所の用に供する文書」とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称し、その文書が証明の用に供せられるべき性質を有することを要するものではない。
判例
事案:被告人が、労働組合による文書について、勝手にこれを取りはずし、駅通路に持ち出したうえ、黒板拭をもってその記載文言を全部抹消したという事案において、「公務所の用に供する文書」に当たるかが問題となった。

判旨:「刑法258条にいわゆる『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、その作成者、作成の目的等にかかわりなく、現に公務所において使用に供せられ、又は使用の目的をもって保管されている文書を総称するものと解すべきである。したがって、現に公務所において使用又は保管中の文書であるかぎり、それが証明の用に供せられるべき文書であっても、そうでない文書であっても、この罪の客体となりうる点に変りはない。原審の認定した本件毀棄の事実は、昭和34年2月14日A労働組合広島第二支部が可部線合理化反対斗争を行ない、同線に列車遅延等の事態が生じたさい、同線b駅助役らが、管理所長の命により、急告板に白墨を用いて『組合の不法行為により乗務員がらちされ、各列車が遅延又は運転中止にあっております。当局はできるだけ努力して列車の運転を確保していますが以上の理由により大変御迷惑をおかけしておりますことをお詫び致します』と記載し、これを同駅待合室に掲示しておいたところ、被告人は、勝手にこれを取りはずし、同駅通路に持ち出したうえ、黒板拭をもってその記載文言を全部抹消したというのであって、本件毀棄の客体となった右文言掲載の急告板は、法律上文書たるに欠けるところなく、まさしく公務所(日本国有鉄道法34条、刑法7条参照)において現に使用に供せられている文書に該当するものというべきである。原判決は、刑法258条にいう公用文書は証明の用に供せられるべき書類であることを要するとし、本件文書は、その内容が旅客に対する報道ないしは陳謝文である等の点で証明の用に供するものとは認めがたいから、同条の公用文書に当らないとするのであるが、本件文書が証明文書たる性質を全く有しないかどうかの点は別として、刑法258条の公用文書に右のような制限が存するとする解釈に誤りがあることは前叙に照らして明白である。したがって、原判決が、証拠にもとずき前記毀棄の事実を認定しながら、被告人の所為を刑法258条の公文書毀棄罪に当らないとし、これを同法261条の器物毀棄罪に問擬したのは、法令の適用を誤ったものであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合といわなければならない。論旨は理由がある。」
過去問・解説

(R1 予備 第2問 1)
公用文書等毀棄罪における「公務所の用に供する文書」とは、公務所又は公務員が作成したもので、現に公務所において使用され、又は使用の目的をもって保管されている文書のことをいう。

(正答)

(解説)
判例(最判昭38.12.24)は、「刑法258条にいわゆる『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、その作成者、作成の目的等にかかわりなく、現に公務所において使用に供せられ、又は使用の目的をもって保管されている文書を総称するものと解すべきである。」としている。

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公用文書毀棄罪における「公務所の用に供する文書」 最一小判昭和52年7月14日

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概要
公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、258条にいう「公務所の用に供する文書」に当たる。
判例
事案: 公務執行妨害罪の現行犯人が逮捕され、被疑者がいきなり作成中の弁解録取書をひったくり、両手で丸めしわくちゃにして床上に投げ棄て、足で踏みつけ更に拾い上げて引きちぎったという事案において、職務権限に基づいて作成中の文書が、「公務所の用に供する文書」に当たるかが問題となった。

判旨:「刑法258条にいう『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとすることは、つとに当裁判所の判例(昭和37年(あ)第1191号同38年12月24日第三小法廷判決・刑集17巻12号2485頁)とするところであるが、当該公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたるものと解すべきである。
 …本件弁解録取書は、その作成者が明示されていないとはいえ、公務員である司法警察員が公務所の作用としてその職務権限に基づき、原判決認定どおりの文言を記載し、すでに文書としての意味、内容をそなえるに至ったものであることが明らかであるから、刑法258条にいう『公務所ノ用ニ供スル文書』に該当し、これらを前示の方法で毀棄した被告人の本件行為は、同条の罪に該当するものというべきである。」
過去問・解説

(H18 司法 第1問 イ)
執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、司法警察員Xから、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられた。その際、甲は単純な事件なので起訴されることはないと思い、事実関係を争わなかった。そこで、Xは「傷害事件を起こしたことは間違いありません。弁解はありません。」などと供述録取書に録取して読み聞かせたところ、甲は間違いない旨を申し立てて署名・指印した。そのとき、Xは上司から呼出しを受けたため、供述録取書にXの署名・押印及び契印をしないまま、取調室前の廊下にいた同僚の司法警察員Yに甲の監視を依頼して、取調室から出て行った。
甲がYに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Yは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はYの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Yに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、前記の供述録取書を破り捨てた上、制止するために立ちふさがったYの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。
甲に公用文書毀棄等罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭52.7.14)は、本肢と同種の事案において、「『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとする…公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたる…。」としている。
甲が破り捨てた供述録取書は、すでに文書としての意味、内容をそなえるに至ったものであることが明らかであるから、「公務所の用に供する文書」に当たる。
したがって、甲に公用文書毀棄等罪が成立する。


(R1 予備 第2問 2)
偽造された文書や未完成の文書は、公用文書等毀棄罪の客体とはなり得ない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭52.7.14)は、「『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとする…公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたる…。」としている。
したがって、偽造された文書や未完成の文書も、公用文書等毀棄罪の客体となり得る。

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公用文書等毀棄罪の成否 大判明治42年7月8日

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概要
保存期間が経過した公文書といえどもこれを毀棄する行為は公用文書等毀棄罪が成立する。
判例
事案:保存期間を経過した公文書を毀棄したという事案において、保存期間が経過した公文書が公用文書等毀棄罪の客体になり得るかが問題となった。

判旨:「文書ハ既ニ保存期限ヲ經過シタルモノトスルモ苟モ之ヲ毀棄スルニ於テハ仍ホ文書毀棄ノ罪ヲ構成スルコト多言ヲ俟タサル」
過去問・解説

(R1 予備 第2問 3)
保存期間が経過した後の文書は、公用文書等毀棄罪の客体とはなり得ない。

(正答)

(解説)
判例(大判明42.7.8)は、「文書ハ既ニ保存期限ヲ經過シタルモノトスルモ苟モ之ヲ毀棄スルニ於テハ仍ホ文書毀棄ノ罪ヲ構成スルコト多言ヲ俟タサル」として、保存期間を経過した文書であっても、文書毀棄罪の客体となることを示している。

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私用文書毀棄罪の成否 最二小決昭和44年5月1日

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概要
259条の「権利、義務に関する他人の文書」には、有価証券である小切手も含まれる。同条にいわゆる文書を毀棄したというためには、必ずしもこれを有形的に毀損することを要せず、隠匿その他の方法によって、その文書を利用することができない状態におくことをもって足りる。
判例
事案:借用証書及び小切手を示してその支払を請求されるや、「これが何だ」と言いながら、卓上に置かれた右証書や小切手を突嗟に取上げて両手で揉み、着衣ポケットに突込んでそのまま返還せずこれを使用することができないようにしたという事案において、私用文書毀棄罪の成否が問題となった。

判旨:「刑法259条の『権利、義務ニ関スル他人ノ文書』には、有価証券である小切手も含まれるとした原判断は相当である。…刑法259条にいわゆる文書を毀棄したというためには、必ずしもこれを有形的に毀損することを要せず、隠匿その他の方法によって、その文書を利用することができない状態におくことをもって足り、その利用を妨げた期間が一時的であると永続的であると、また、犯人に後日返還の意思があったと否とを問わないものと解すべきである。」
過去問・解説

(H19 司法 第17問 イ)
自己が振り出した小切手を呈示されてその支払を請求された際、その支払を拒むため、相手方からその小切手を取り上げ、着衣のポケットに突っ込んでそのまま返還しなかった行為に私用文書毀棄罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭44.5.1)は、本肢と同種の事案において、「259条にいわゆる文書を毀棄したというためには、必ずしもこれを有形的に毀損することを要せず、隠匿その他の方法によって、その文書を利用することができない状態におくことをもって足り、その利用を妨げた期間が一時的であると永続的であると、また、犯人に後日返還の意思があったと否とを問わない…。」としている。
したがって、小切手を取り上げ、着衣のポケットに突っ込んでそのまま返還しなかったことで、少なくとも一時的に当該小切手の利用を妨げたといえるから、当該行為に私用文書毀棄罪が成立する。


(R1 予備 第2問 5)
手形や小切手等の有価証券は、私用文書等毀棄罪の客体とはなり得ない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭44.5.1)は、「259条の『権利、義務ニ関スル他人ノ文書』には、有価証券である小切手も含まれる…。」としている。

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建造物損壊罪における建造物の範囲 最一小決平成19年3月20日

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概要
建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、当該物と建造物との接合の程度のほか、当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきである。居の玄関ドアとして、外壁と接続し、外界とのしゃ断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしている物は、適切な工具を使用すれば損壊せずに取り外しが可能であるとしても、建造物損壊罪の客体に当たる。
判例
事案:建造物に取り付けられたドアは構造上家屋の外壁と接続しており、一体的な外観を呈しているところ、所携の金属バットで、同ドアを叩いて凹損させるなどしたという事案において、当該ドアが建造物損壊罪の客体に当たるかが問題となった。

判旨:「本件ドアは、5階建て市営住宅1階にある居室の出入口に設置された、厚さ約3.5cm、高さ約200cm、幅約87cmの金属製開き戸であり、同ドアは、上記建物に固着された外枠の内側に3個のちょうつがいで接合され、外枠と同ドアとは構造上家屋の外壁と接続しており、一体的な外観を呈しているところ、被告人は、所携の金属バットで、同ドアを叩いて凹損させるなどし、その塗装修繕工事費用の見積金額は2万5000円であったというのである。
 …建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、当該物と建造物との接合の程度のほか、当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきものであるところ、上記1の事実関係によれば、本件ドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続し、外界とのしゃ断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしているから、建造物損壊罪の客体に当たるものと認められ、適切な工具を使用すれば損壊せずに同ドアの取り外しが可能であるとしても、この結論は左右されない。そうすると、建造物損壊罪の成立を認めた原判断は、結論において正当である。」
過去問・解説

(R3 共通 第20問 ウ)
甲がB組事務所の玄関ドアを凹損させた行為については、同ドアが工具を使用すれば容易に取り外せる構造であった場合、建造物損壊罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平19.3.20)は、「建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、当該物と建造物との接合の程度のほか、当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきものであるところ、…本件ドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続し、外界とのしゃ断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしているから、建造物損壊罪の客体に当たるものと認められ、適切な工具を使用すれば損壊せずに同ドアの取り外しが可能であるとしても、この結論は左右されない。」としている。
したがって、玄関ドアが工具を使用すれば容易に取り外せる構造であっても、機能上の重要性によっては甲に建造物損壊罪が成立しうる。

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器物損壊罪における「損壊」 最二小判昭和25年4月21日

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概要
261条にいう「損壊」とは物質的に物の全部一部を害し又は物の本来の効用を失わせる行為をいう。盗難及び火災予防のため土中に埋設したドラム缶入ガソリン貯蔵所を発掘して土壌を排除し右ドラム缶を露出させた行為は、右貯蔵施設本来の効用を喪失するに至らせたもので、261条にいう損壊に当たる。
判例
事案:盗難及び火災予防のため土中に埋設したドラム缶入ガソリン貯蔵所を発掘して土壌を排除し右ドラム缶を露出させたという事案において、器物損壊罪における「損壊」に当たるかが問題となった。

判旨:「刑法261条に謂う損壊とは物質的に物の全部一部を害し又は物の本来の効用を失わしむる行為を言うものであるが、A炭鉱が本件ガソリンを埋設貯蔵したのは盗難及び火災予防のためであるから…、上示原判示認定程度の殿棄行為は右貯蔵施設本来の効用を喪失するに至らしめたものであることは明白である。又所論原状回復の難易如何は本罪の成立に影響あるものではないのである。」
過去問・解説

(H28 司法 第12問 ア)
Aの知人Bは、料理が趣味であり、自宅のパソコンに料理のレシピのデータを保存していた。Aは、Bと口論をした際、Bが大事にしている同データを壊してやろうと思い、同パソコンをたたき壊した。同パソコンを壊したAの行為について、電子計算機損壊等業務妨害罪は成立せず、器物損壊罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大10.10.24)は、「刑法第233條ニ所謂業務ハ公務ヲ除ク外精神的ナルト經濟的ナルトヲ問ハス汎ク職業其他繼續シテ從事スルコトヲ要スヘキ事務又ハ事業ヲ總稱スルモノナル」として、業務妨害罪にいう業務とは、職業その他継続して従事することを要すべき事務又は事業を意味することを示している。
また、別の判例(最判昭25.4.21)は、器物破損の事案において、「261条に謂う損壊とは物質的に物の全部一部を害し又は物の本来の効用を失わしむる行為を言う…。」としている。
趣味で料理のデータを保存する行為は、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務に当たらず、業務に含まれないから業務妨害罪は成立しない。
したがって、AがBのパソコンを壊した行為には、電子計算機損壊等業務妨害罪は成立せず、器物損壊罪が成立する。

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毀棄隠匿罪の成否 最二小決平成16年11月30日

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概要
支払督促の債務者を装い郵便配達員を欺いて支払督促正本を受領することにより、送達が適式にされたものとして支払督促の効力を生じさせ、債務者から督促異議申立ての機会を奪ったまま確定させて、その財産を差し押さえようとしたが、支払督促正本はそのまま廃棄するだけで外に何らかの用途に利用、処分する意思がなかったという事実関係の下では、支払督促正本に対する詐欺罪における不法領得の意思を認めることはできず、私用文書等毀棄罪が成立する。
判例
事案:虚偽の支払督促を申し立てた上、裁判所から発送される支払督促正本及び仮執行宣言付支払督促正本について、共犯者が叔父を装って郵便配達員から受け取ることで適式に送達されたように外形を整え、それを廃棄することで、叔父に督促異議申立ての機会を与えることなく支払督促の効力を確定させたという事案において、詐欺罪における不法領得の意思の有無及び私用文書等毀棄罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、金員に窮し、支払督促制度を悪用して叔父の財産を不正に差し押さえ、強制執行することなどにより金員を得ようと考え、被告人が叔父に対して6000万円を超える立替金債権を有する旨内容虚偽の支払督促を申し立てた上、裁判所から債務者とされた叔父あてに発送される支払督促正本及び仮執行宣言付支払督促正本について、共犯者が叔父を装って郵便配達員から受け取ることで適式に送達されたように外形を整え、叔父に督促異議申立ての機会を与えることなく支払督促の効力を確定させようと企てた。そこで、共犯者において、2回にわたり、あらかじめ被告人から連絡を受けた日時ころに叔父方付近で待ち受け、支払督促正本等の送達に赴いた郵便配達員に対して、自ら叔父の氏名を名乗り出て受送達者本人であるように装い、郵便配達員の求めに応じて郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に叔父の氏名を記載して郵便配達員に提出し、共犯者を受送達者本人であると誤信した郵便配達員から支払督促正本等を受け取った。なお、被告人は、当初から叔父あての支払督促正本等を何らかの用途に利用するつもりはなく速やかに廃棄する意図であり、現に共犯者から当日中に受け取った支払督促正本はすぐに廃棄している。
 …郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は、同人名義の受領書を偽造したものとして、有印私文書偽造罪を構成すると解するのが相当であるから、被告人に対して有印私文書偽造、同行使罪の成立を認めた原判決は、正当として是認できる。
 …郵便配達員から正規の受送達者を装って債務者あての支払督促正本等を受領することにより、送達が適式にされたものとして支払督促の効力を生じさせ、債務者から督促異議申立ての機会を奪ったまま支払督促の効力を確定させて、債務名義を取得して債務者の財産を差し押さえようとしたものであって、受領した支払督促正本等はそのまま廃棄する意図であった。このように、郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等について、廃棄するだけで外に何らかの用途に利用、処分する意思がなかった場合には、支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできないというべきであり、このことは、郵便配達員からの受領行為を財産的利得を得るための手段の一つとして行ったときであっても異ならないと解するのが相当である。」
過去問・解説

(H19 司法 第17問 ウ)
支払督促の債権者が、支払督促正本の送達に際し、支払督促の債務者を装い郵便配達員を欺いて支払督促正本を受領することにより、送達が適式にされたものとして支払督促の効力を生じさせ、債務者から督促異議申立の機会を奪ったまま確定させて、その財産を不正に差し押さえようとし、支払督促正本はそのまま廃棄するつもりで、郵便配達員からその交付を受け、その後同支払督促正本を廃棄した行為に、詐欺罪ではなく私用文書等毀棄罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平16.11.30)は、本肢と同種の事案において、「郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等について、廃棄するだけで外に何らかの用途に利用、処分する意思がなかった場合には、支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできないというべきであり、このことは、郵便配達員からの受領行為を財産的利得を得るための手段の一つとして行ったときであっても異ならないと解する…。」としている。
したがって、支払督促正本はそのまま廃棄するつもりで、郵便配達員からその交付を受け、その後同支払督促正本を廃棄した場合には、不法領得の意思が認められず、詐欺罪は成立しない。
他方、支払督促正本を廃棄した行為につき、私用文書等毀棄罪が成立する。

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