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毀棄及び隠匿の罪(公用文書等毀棄罪) - 解答モード
公用文書毀棄罪における「公務所の用に供する文書」 最三小判昭和32年1月29日
概要
判例
判旨:「被疑事件につき逮捕状により逮捕せられた被疑者に対し、市警察局公安部において所属警察員が、刑訴203条に基き、被疑事実の要旨及び弁護人を選任し得る旨を告げ被疑者がこれに対する供述をしたのでその旨を記載した弁解録収書原本を執筆しこれを読み聞かせ誤の有無を問うたところ被疑者は黙秘したため、司法警察員はその旨の文言の一部を末尾に記載した場合においては、右弁解録取書は未だ被疑者及び右司法警察員の作成者としての署名捺印がなくても刑法258条にいわゆる公務所の用に供する文書というを妨げない。そして、かような文書を他人がほしいままに両手で丸めしわくちゃにした上床上に投げ棄てる行為は同条にいわゆる毀棄に当るものと解するを相当とする。…被告人がこれを取って両手で丸めしわくちゃにした際においては、右文書は刑法258条にいわゆる公務所たる福岡市警察局の用に供する文書であり、そして、被告人がこれを取って両手で丸めしわくちゃにした上床上に投げ棄てた判示所為は同条にいわゆる毀棄に当るものというべきである。」
過去問・解説
(H27 共通 第18問 3)
甲は、A方から高価な壺を盗み出した。Aは、これに気付いて甲を追い掛けたが、甲は、逃げ切って帰宅し、盗んだ上記壺を自宅のテーブルに置いていた。警察官は、甲の本件窃盗事件の捜査を開始した。
甲は、本件窃盗事件で通常逮捕され、警察署において弁解録取の手続を受けた際、警察官が甲の供述を記載した弁解録取書を手に取って破った。甲に公用文書毀棄罪が成立する。
(H29 共通 第20問 4)
甲は、本件覚せい剤を所持しているのを警察官に現認され、覚せい剤取締法違反の現行犯人として逮捕され、A警察署に連行された。警察官丙は、A警察署の取調室において、甲の弁解録取手続を行い、甲の供述内容を弁解録取書に記載した上、同弁解録取書を甲に手渡して内容の確認を求めたところ、甲は、署名押印する前に同弁解録取書を両手で破った。
丙が作成した弁解録取書には、甲の署名押印がないが、甲の供述内容が記載されていることから、甲には公用文書等毀棄罪が成立する。
(R6 司法 第20問 エ)
【事 例】
保険会社の従業員である甲は、顧客Aが独りで住んでいる一戸建て家屋に多額の現金が保管されていることを知り、Aを殺害した上で同現金を手に入れようと計画した。甲は、その計画に従い、某月1日午後4時頃、Aを戸外に連れ出し、麻酔薬を吸引させて気絶させた上、自動車の後部座席にAを押し込み、同車を運転してAを山奥まで運んだ。さらに、甲は、同日午後6時頃、気絶していたAを車外に引っ張り出した上、自殺に見せ掛けるため、大木の枝に縛り付けた縄でAの頸部をくくり、そのままAをつり下げて窒息死させた。甲は、Aが持っていたA方の鍵を入手した上で、その場にAの死体を放置して上記自動車を運転してA方に向かった。甲は、同日午後8時50分頃、上記鍵を使用してA方内に立ち入り、同所に保管されていた現金500万円を自己のかばんに入れて上記計画を完遂した。
甲は、A方を燃やして犯行を隠蔽しようと考え、同日午後9時頃、A方居室の畳に火を放ってA方を出た。その直後、付近住民が異変に気付いてA方内に立ち入り、上記畳を取り外して屋外に投げ捨てたため、同畳以外は焼損しなかった。
甲は、同月5日、逮捕され、その後の弁解録取手続において、自暴自棄になり、警察官Bが甲の弁解を記載した弁解録取書を手で破り捨てた。
Aには死亡事故を起こしたことによる前科があり、乙は、かつてAから同前科があることを聞いていた。乙は、Aが死亡したことを知り、同月7日、インターネットの掲示板に「Aは、事故を起こして人を死なせた前科がある。」と書き込み、インターネットを利用する不特定多数の者が閲覧可能な状態にした。
以下の記述は正しいか。
【記 述】
甲が弁解録取書を手で破り捨てた行為について、同弁解録取書に甲及びBの署名押印がなかったとしても、甲に公用文書毀棄罪が成立する。
公用文書毀棄罪における「公務所の用に供する文書」 最三小判昭和38年12月24日
概要
判例
判旨:「刑法258条にいわゆる『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、その作成者、作成の目的等にかかわりなく、現に公務所において使用に供せられ、又は使用の目的をもって保管されている文書を総称するものと解すべきである。したがって、現に公務所において使用又は保管中の文書であるかぎり、それが証明の用に供せられるべき文書であっても、そうでない文書であっても、この罪の客体となりうる点に変りはない。原審の認定した本件毀棄の事実は、昭和34年2月14日A労働組合広島第二支部が可部線合理化反対斗争を行ない、同線に列車遅延等の事態が生じたさい、同線b駅助役らが、管理所長の命により、急告板に白墨を用いて『組合の不法行為により乗務員がらちされ、各列車が遅延又は運転中止にあっております。当局はできるだけ努力して列車の運転を確保していますが以上の理由により大変御迷惑をおかけしておりますことをお詫び致します』と記載し、これを同駅待合室に掲示しておいたところ、被告人は、勝手にこれを取りはずし、同駅通路に持ち出したうえ、黒板拭をもってその記載文言を全部抹消したというのであって、本件毀棄の客体となった右文言掲載の急告板は、法律上文書たるに欠けるところなく、まさしく公務所(日本国有鉄道法34条、刑法7条参照)において現に使用に供せられている文書に該当するものというべきである。原判決は、刑法258条にいう公用文書は証明の用に供せられるべき書類であることを要するとし、本件文書は、その内容が旅客に対する報道ないしは陳謝文である等の点で証明の用に供するものとは認めがたいから、同条の公用文書に当らないとするのであるが、本件文書が証明文書たる性質を全く有しないかどうかの点は別として、刑法258条の公用文書に右のような制限が存するとする解釈に誤りがあることは前叙に照らして明白である。したがって、原判決が、証拠にもとずき前記毀棄の事実を認定しながら、被告人の所為を刑法258条の公文書毀棄罪に当らないとし、これを同法261条の器物毀棄罪に問擬したのは、法令の適用を誤ったものであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合といわなければならない。論旨は理由がある。」
公用文書毀棄罪における「公務所の用に供する文書」 最一小判昭和52年7月14日
概要
判例
判旨:「刑法258条にいう『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとすることは、つとに当裁判所の判例(昭和37年(あ)第1191号同38年12月24日第三小法廷判決・刑集17巻12号2485頁)とするところであるが、当該公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたるものと解すべきである。
…本件弁解録取書は、その作成者が明示されていないとはいえ、公務員である司法警察員が公務所の作用としてその職務権限に基づき、原判決認定どおりの文言を記載し、すでに文書としての意味、内容をそなえるに至ったものであることが明らかであるから、刑法258条にいう『公務所ノ用ニ供スル文書』に該当し、これらを前示の方法で毀棄した被告人の本件行為は、同条の罪に該当するものというべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第1問 イ)
執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、司法警察員Xから、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられた。その際、甲は単純な事件なので起訴されることはないと思い、事実関係を争わなかった。そこで、Xは「傷害事件を起こしたことは間違いありません。弁解はありません。」などと供述録取書に録取して読み聞かせたところ、甲は間違いない旨を申し立てて署名・指印した。そのとき、Xは上司から呼出しを受けたため、供述録取書にXの署名・押印及び契印をしないまま、取調室前の廊下にいた同僚の司法警察員Yに甲の監視を依頼して、取調室から出て行った。
甲がYに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Yは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はYの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Yに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、前記の供述録取書を破り捨てた上、制止するために立ちふさがったYの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。
甲に公用文書毀棄等罪が成立する。
公用文書等毀棄罪の成否 大判明治42年7月8日
概要
判例
判旨:「文書ハ既ニ保存期限ヲ經過シタルモノトスルモ苟モ之ヲ毀棄スルニ於テハ仍ホ文書毀棄ノ罪ヲ構成スルコト多言ヲ俟タサル」