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公務員職権濫用の罪 - 解答モード

公務員職権濫用罪 甲府地判昭和43年12月18日

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概要
公務員職権濫用罪にいう「権利の行使を妨害した」の「権利」は、必ずしも法律に明記されたものであることを要しないから、立木売却のための競争入札が行なわれた際、入札価格が下位にある特定業者に落札させるため、その入札価格を増額訂正して発表し、訂正額で売買契約を締結した事案につき、「本来落札できるはずだった者が売買契約を締結する権利」を侵害したといえる。
判例
事案:立木売却のための競争入札が行なわれた際、入札価格が下位にある特定業者に落札させるため、その入札価格を増額訂正して発表し、訂正額で売買契約を締結した事案において、公務員職権濫用罪の成否が問題となった。

判旨:「三番入札したD株式会社…に落札せしめる目的をもって…勝手に入札整理表の同会社の右入札価格を…増額訂正して同額で同会社が前記立木を落札した旨発表し、…右D株式会社との間で契約書を作成して右同額をもって右立木の売買契約を締結し、もって偽計を用い入札の公正を害する行為をなすと共に、職権を濫用して前記最高価格入札者である有限会社Bの本契約締結権の行使を妨害し、
 二番入札した株式会社C…に落札せしめる目的をもって、即時同所に於て勝手に入札整理表の同会社の右入札価格を…増額訂正して同額で同会社が前記立木を落札した旨発表し、…右株式会社Cとの間で契約書を作成して右同額をもって右立木の売買契約を締結し、もって偽計を用い入札の公正を害する行為をなすと共に、職権を濫用して前記最高価格入札者であるA株式会社の本契約締結権の行使を妨害し
 …被告人の…刑法193条に…該当する…。」
過去問・解説

(R1 共通 第10問 5)
公務員職権濫用罪にいう「権利の行使を妨害した」の「権利」は、必ずしも法律に明記されたものであることを要しない。

(正答)

(解説)
裁判例(甲府地判昭43.12.18)は、、競争入札の際に下位の入札価格者が落札できるように便宜を図ったという事案において、「職権を濫用して前記最高価格入札者である有限会社Bの本契約締結権の行使を妨害し、二番入札した株式会社C…に落札せしめる目的をもって、即時同所に於て勝手に入札整理表の同会社の右入札価格を…増額訂正して同額で同会社が前記立木を落札した旨発表し、…右株式会社Cとの間で契約書を作成して右同額をもって右立木の売買契約を締結し、もって偽計を用い入札の公正を害する行為をなすと共に、職権を濫用して前記最高価格入札者であるA株式会社の本契約締結権の行使を妨害し…たものである。被告人の…所為は、…刑法193条に…該当する…。」として、本来落札できるはずだった者が売買契約を締結する権利という、法律上明記されていない権利を侵害したとして、公務員職権濫用罪の成立を認めている。
したがって、公務員職権濫用罪にいう「権利の行使を妨害した」の「権利」は、必ずしも法律に明記されたものであることを要しない。

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「職権を濫用」の意義 最二小判昭和57年1月28日

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概要
公務員職権濫用罪の「職権を濫用」とは、公務員が、その一般的職務権限に属する事項につき、職権の行使に仮託して実質的、具体的に違法、不当な行為をすることを指称するが、右一般的職務権限は、必ずしも法律上の強制力を伴うものであることを要せず、それが濫用された場合、職権行使の相手方をして事実上義務なきことを行わせ又は行うべき権利を妨害するに足りる権限であれば、これに含まれる。
判例
事案:裁判官であった被告人が、訴外Aの事件を担当していないにもかかわらず、調査・閲覧する必要があると偽り、そう誤信した刑務所所長をして、訴外Aに関する身分帳簿の記載内容について閲覧させた等の事案において、公務員職権濫用罪の「職権を濫用」の意義が問題となった。

判旨:「刑法193条にいう『職権の濫用』とは、公務員が、その一般的職務権限に属する事項につき、職権の行使に仮託して実質的、具体的に違法、不当な行為をすることを指称するが、右一般的職務権限は、必ずしも法律上の強制力を伴うものであることを要せず、それが濫用された場合、職権行使の相手方をして事実上義務なきことを行わせ又は行うべき権利を妨害するに足りる権限であれば、これに含まれるものと解すべきである。
 ところで、刑務所における行刑は、受刑者の名誉を保護する等の見地から、原則として密行すべきものとされているのであるが、裁判官については、一般の部外者について刑務所長の裁量により参観が許されることがある(監獄法5条)にとどまるのと異なり、刑務所の巡視権が与えられている(同法4条2項)。また、刑務所長が保管責任を負う身分帳簿は、行刑密行の一環として秘密性を有し、部外に対する提出やその内容の回答については厳格な規制がなされているのであるが、司法研究の委嘱を受けた裁判官は、研究題目等によつては身分帳簿の内容を了知することが許される場合があるとされている。このように、裁判官に巡視権が与えられ、かつ、現に担当している具体的事件についての証拠調等でない場合にも、身分帳簿の内容の了知が許されることがあるとされているゆえんは、刑務所は裁判所が言い渡した刑を執行する施設であり、裁判官は、適正妥当な刑事裁判の実現というその職責の遂行上、行刑の実情について十分な理解をもつことがとくに要請されるからにほかならない。
 右の点にかんがみると、裁判官が刑務所長らに対し資料の閲覧、提供等を求めることは、司法研究ないしはその準備としてする場合を含め、量刑その他執務上の一般的参考に資するためのものである以上、裁判官に特有の職責に由来し監獄法上の巡視権に連なる正当な理由に基づく要求というべきであって、法律上の強制力を伴ってはいないにしても、刑務所長らに対し行刑上特段の支障がない限りこれに応ずべき事実上の負担を生ぜしめる効果を有するものであるから、それが濫用された場合相手方をして義務なきことを行わせるに足りるものとして、職権濫用罪における裁判官の一般的職務権限に属すると認めるのが相当である。
 したがって、裁判官が、司法研究その他職務上の参考に資するための調査・研究という正当な目的ではなく、これとかかわりのない目的であるのに、正当な目的による調査行為であるかのように仮装して身分帳簿の閲覧、その写しの交付等を求め、刑務所長らをしてこれに応じさせた場合は、職権を濫用して義務なきことを行わせたことになるといわなければならない。」
過去問・解説

(R1 司法 第10問 3)
公務員職権濫用罪にいう「職権」は、必ずしも法律上の強制力を伴うことまで要しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.1.28)は、「『職権の濫用』とは、公務員が、その一般的職務権限に属する事項につき、職権の行使に仮託して実質的、具体的に違法、不当な行為をすることを指称するが、右一般的職務権限は、必ずしも法律上の強制力を伴うものであることを要せず、それが濫用された場合、職権行使の相手方をして事実上義務なきことを行わせ又は行うべき権利を妨害するに足りる権限であれば、これに含まれる…。」としている。

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公務員でないことを装ってされた行為と公務員職権濫用罪 最三小決平成元年3月14日

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概要
職権行使の相手方の意思に直接働きかけ、それを制圧することは職権濫用行為にみられる通常の特徴であるから、公務員職権濫用罪の成立に不可欠の要件ではない。警察官が職務として行ったものであっても、終始何人に対しても警察官でないことを装ってした本件電話盗聴行為は、職権を濫用して行ったものとはいえず、公務員職権濫用罪を構成しない。
判例
事案:公務員の職権濫用行為が、公務員でないことを装ってされた事案において、公務員職権濫用罪の成否が問題となった。

判旨:「警察官である被疑者甲及び同乙は、職務として、日本共産党に関する警備情報を得るため、他の警察官とも意思を通じたうえ、同党中央委員会国際部長である請求人方の電話を盗聴したものであるが、その行為が電気通信事業法に触れる違法なものであることなどから、電話回線への工作、盗聴場所の確保をはじめ盗聴行為全般を通じ、終始何人に対しても警察官による行為でないことを装う行動をとっていたというのである。
 ところで、右の行為について、原原決定は、『相手方において、職権の行使であることを認識できうる外観を備えたもの』でないことを理由に、原決定は、『行為の相手方の意思に働きかけ、これに影響を与える職権行使の性質を備えるもの』でないことを理由に、職権を濫用した行為とはいえないとして公務員職権濫用罪に当たらないと判断した。これに対し、所論は、公務員の不法な行為が職務として行われ、その結果個人の権利、自由が侵害されたときには当然同罪が成立し、本件盗聴行為についても同罪が成立すると主張する。  
 しかし、刑法193条の公務員職権濫用罪における『職権』とは、公務員の一般的職務権限のすべてをいうのではなく、そのうち、職権行使の相手方に対し法律上、事実上の負担ないし不利益を生ぜしめるに足りる特別の職務権限をいい(最高裁昭和55年(あ)第461号同57年1月28日第二小法廷決定・刑集36巻1号1頁参照)、同罪が成立するには、公務員の不法な行為が右の性質をもつ職務権限を濫用して行われたことを要するものというべきである。すなわち、公務員の不法な行為が職務としてなされたとしても、職権を濫用して行われていないときは同罪が成立する余地はなく、その反面、公務員の不法な行為が職務とかかわりなくなされたとしても、職権を濫用して行われたときには同罪が成立することがあるのである(前記昭和57年1月28日第二小法廷決定、最高裁昭和58年(あ)第1309号同60年7月16日第三小法廷決定・刑集39巻5号245頁参照)。
 …被疑者らは盗聴行為の全般を通じて終始何人に対しても警察官による行為でないことを装う行動をとっていたというのであるから、そこに、警察官に認められている職権の濫用があったとみることはできない。したがって、本件行為が公務員職権濫用罪に当たらないとした原判断は、正当である。
 なお、原原決定及び原決定が職権に関して判示するところは、それらが公務員職権濫用罪が成立するための不可欠の要件を判示した趣旨であるとすれば、同罪が成立しうる場合の一部について、その成立を否定する結果を招きかねないが、これを職権濫用行為にみられる通常の特徴を判示した趣旨と解する限り、是認することができる。」
過去問・解説

(R1 共通 第10問 1)
公務員職権濫用罪の成立には、必ずしも職権行使の相手方の意思に直接働きかけ、それを制圧することまで要しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.3.14)は、「原決定は、『行為の相手方の意思に働きかけ、これに影響を与える職権行使の性質を備えるもの』でないことを理由に、職権を濫用した行為とはいえないとして公務員職権濫用罪に当たらないと判断した。…原決定が職権に関して判示しているところは、…これを職権濫用行為にみられる通常の特徴を判示した趣旨と解する限り、是認することができる。」としている。
したがって、職権行使の相手方の意思に直接働きかけ、それを制圧することは職権濫用行為にみられる通常の特徴にとどまるのであって、必ずしもこれがなければ公務員職権濫用罪が成立しないわけではない。


(R1 共通 第10問 2)
公務員職権濫用罪の成立には、必ずしも公務員の不法な行為が職務としてなされることまで要しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.3.14)は、「公務員の不法な行為が右の性質をもつ職務権限を濫用して行われたことを要するものというべきである。すなわち、公務員の不法な行為が職務としてなされたとしても、職権を濫用して行われていないときは同罪が成立する余地はなく、その反面、公務員の不法な行為が職務とかかわりなくなされたとしても、職権を濫用して行われたときには同罪が成立することがあるのである…。」としている。


(R1 共通 第10問 4)
公務員職権濫用罪にいう「職権」は、職権行使の相手方に対し、必ずしも法律上又は事実上の負担や不利益を生ぜしめるに足りる特別の職務権限であることまで要しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.3.14)は、「刑法193条の公務員職権濫用罪における『職権』とは、…職権行使の相手方に対し法律上、事実上の負担ないし不利益を生ぜしめるに足りる特別の職務権限をいい…、同罪が成立するには、公務員の不法な行為が右の性質をもつ職務権限を濫用して行われたことを要するものというべき…。」としている。

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刑法195条2項の「陵虐若しくは加虐の行為」における精神的肉体的苦痛の要否 東京高判平成15年1月29日

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概要
留置場の看守である被告人が、同留置場内において殺人等の罪により起訴されて勾留中であったA子を7回にわたって姦淫したとする特別公務員暴行陵虐罪にいう「陵虐若しくは加虐の行為」とは、公務の適正とこれに対する国民の信頼を保護するという本罪の趣旨に照らして解されるべきであり、現実にその相手が承諾したか否か、精神的又は肉体的苦痛を被ったか否かを問わないものと解するのが相当である。
判例
事案:看守が被留置者を姦淫した事案において、当該行為が「陵辱若しくは加虐の行為」に当たるか、被害者の同意により違法性が阻却されるかなどが問題となった。

判旨:「本罪の主体である『法令により拘禁された者を看守し又は護送する者』(以下『看守者等』という。)は、被拘禁者を実力的に支配する関係に立つものであって、その職務の性質上、被拘禁者に対して職務違反行為がなされるおそれがあることから、本罪は、このような看守者等の公務執行の適正を保持するため、看守者等が、一般的、類型的にみて、前記のような関係にある被拘禁者に対し、精神的又は肉体的苦痛を与えると考えられる行為(看守者等が被拘禁者を姦淫する行為[性交]がこれに含まれることは明らかである。)に及んだ場合を処罰する趣旨であって、現実にその相手方が承諾したか否か、精神的又は肉体的苦痛を被ったか否かを問わないものと解するのが相当である。すなわち、前記のような看守者等の立場に照らすと、看守者等が、その実力的支配下にある被拘禁者に対し、前記のような行為に及んだ場合には、当該具体的状況下において、相手方の被拘禁者がこれを承諾しており、精神的又は肉体的苦痛を被らなかったとしても、公務執行の適正とこれに対する国民の信頼を保護するという観点から見た場合には、本罪の陵虐行為に当たるということができるのであって、本罪の趣旨に照らしたこのような解釈が罪刑法定主義に反するものとはいえない。
 もっとも、所論が指摘するように、本罪にいう陵虐行為の意味については、一般に、暴行以外の方法で精神的又は肉体的苦痛を与える一切の行為をいうとされているが、同時に、本罪の性格に照らして、相手方個人の承諾は本罪の違法性を阻却しないとされており、前記大審院判例も、涜職罪の一種として公務員の職務違反行為を処罰する本罪において、当該行為が被害者の意思に反するか否かはあえて問うところではないと判示するところである。所論は、前記大審院判例は、現憲法下では先例的意義を有しないと主張するが、前記のとおり、公務員の法的性格が大きく変化した現憲法下でも、汚職の罪の一種として公務員の職務違反行為を処罰するという本罪の基本的性格に変わりはないと考えられることに照らすと、前記大審院判例の趣旨が合理性を失ったと解することはできない。そして、相手方の承諾がある場合には、当該行為によりその相手方が精神的又は肉体的苦痛を被らない場合も十分に考えられるところ、前記のように相手方の承諾が本罪の成否に何ら影響しないということは、本罪の構成要件的行為の解釈にあたって当然考慮されるべきであり(この点を争う趣旨の所論は採用できない。)、前記のとおり、当該行為が現実に相手方に対して精神的又は肉体的苦痛を与えなかった場合にも、本罪の陵虐行為に該当すると解することが、所論がいうように本罪の予定する犯罪定型を逸脱したものであるとはいえない。」
過去問・解説

(R1 共通 第9問 5)
甲は、自らが刑務官を務める刑務所で受刑中の成人女性乙と恋愛関係になり、乙の承諾を得て、勤務中、同刑務所内において、乙と性交した。この場合、甲には、特別公務員暴行陵虐罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判平15.1.29)は、本肢と同種の事案において、「本罪は、…看守者等の公務執行の適正を保持するため、看守者等が、一般的、類型的にみて、前記のような関係にある被拘禁者に対し、精神的又は肉体的苦痛を与えると考えられる行為…に及んだ場合を処罰する趣旨であって、現実にその相手方が承諾したか否か、精神的又は肉体的苦痛を被ったか否かを問わない…。」として、刑務官と同様の性格を有する留置場の職員が受刑者と同様の性格を有する被留置者に同意の上、口腔性交をした事例において特別公務員暴行陵虐罪の成立を認めている。
したがって、甲は、乙の承諾を得ているものの、甲に特別公務員暴行陵虐罪が成立する。

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