現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

刑法 公務員でないことを装ってされた行為と公務員職権濫用罪 最三小決平成元年3月14日

概要
職権行使の相手方の意思に直接働きかけ、それを制圧することは職権濫用行為にみられる通常の特徴であるから、公務員職権濫用罪の成立に不可欠の要件ではない。警察官が職務として行ったものであっても、終始何人に対しても警察官でないことを装ってした本件電話盗聴行為は、職権を濫用して行ったものとはいえず、公務員職権濫用罪を構成しない。
判例
事案:公務員の職権濫用行為が、公務員でないことを装ってされた事案において、公務員職権濫用罪の成否が問題となった。

判旨:「警察官である被疑者甲及び同乙は、職務として、日本共産党に関する警備情報を得るため、他の警察官とも意思を通じたうえ、同党中央委員会国際部長である請求人方の電話を盗聴したものであるが、その行為が電気通信事業法に触れる違法なものであることなどから、電話回線への工作、盗聴場所の確保をはじめ盗聴行為全般を通じ、終始何人に対しても警察官による行為でないことを装う行動をとっていたというのである。
 ところで、右の行為について、原原決定は、『相手方において、職権の行使であることを認識できうる外観を備えたもの』でないことを理由に、原決定は、『行為の相手方の意思に働きかけ、これに影響を与える職権行使の性質を備えるもの』でないことを理由に、職権を濫用した行為とはいえないとして公務員職権濫用罪に当たらないと判断した。これに対し、所論は、公務員の不法な行為が職務として行われ、その結果個人の権利、自由が侵害されたときには当然同罪が成立し、本件盗聴行為についても同罪が成立すると主張する。  
 しかし、刑法193条の公務員職権濫用罪における『職権』とは、公務員の一般的職務権限のすべてをいうのではなく、そのうち、職権行使の相手方に対し法律上、事実上の負担ないし不利益を生ぜしめるに足りる特別の職務権限をいい(最高裁昭和55年(あ)第461号同57年1月28日第二小法廷決定・刑集36巻1号1頁参照)、同罪が成立するには、公務員の不法な行為が右の性質をもつ職務権限を濫用して行われたことを要するものというべきである。すなわち、公務員の不法な行為が職務としてなされたとしても、職権を濫用して行われていないときは同罪が成立する余地はなく、その反面、公務員の不法な行為が職務とかかわりなくなされたとしても、職権を濫用して行われたときには同罪が成立することがあるのである(前記昭和57年1月28日第二小法廷決定、最高裁昭和58年(あ)第1309号同60年7月16日第三小法廷決定・刑集39巻5号245頁参照)。
 …被疑者らは盗聴行為の全般を通じて終始何人に対しても警察官による行為でないことを装う行動をとっていたというのであるから、そこに、警察官に認められている職権の濫用があったとみることはできない。したがって、本件行為が公務員職権濫用罪に当たらないとした原判断は、正当である。
 なお、原原決定及び原決定が職権に関して判示するところは、それらが公務員職権濫用罪が成立するための不可欠の要件を判示した趣旨であるとすれば、同罪が成立しうる場合の一部について、その成立を否定する結果を招きかねないが、これを職権濫用行為にみられる通常の特徴を判示した趣旨と解する限り、是認することができる。」
過去問・解説
(R1 共通 第10問 1)
公務員職権濫用罪の成立には、必ずしも職権行使の相手方の意思に直接働きかけ、それを制圧することまで要しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.3.14)は、「原決定は、『行為の相手方の意思に働きかけ、これに影響を与える職権行使の性質を備えるもの』でないことを理由に、職権を濫用した行為とはいえないとして公務員職権濫用罪に当たらないと判断した。…原決定が職権に関して判示しているところは、…これを職権濫用行為にみられる通常の特徴を判示した趣旨と解する限り、是認することができる。」としている。
したがって、職権行使の相手方の意思に直接働きかけ、それを制圧することは職権濫用行為にみられる通常の特徴にとどまるのであって、必ずしもこれがなければ公務員職権濫用罪が成立しないわけではない。

(R1 共通 第10問 2)
公務員職権濫用罪の成立には、必ずしも公務員の不法な行為が職務としてなされることまで要しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.3.14)は、「公務員の不法な行為が右の性質をもつ職務権限を濫用して行われたことを要するものというべきである。すなわち、公務員の不法な行為が職務としてなされたとしても、職権を濫用して行われていないときは同罪が成立する余地はなく、その反面、公務員の不法な行為が職務とかかわりなくなされたとしても、職権を濫用して行われたときには同罪が成立することがあるのである…。」としている。

(R1 共通 第10問 4)
公務員職権濫用罪にいう「職権」は、職権行使の相手方に対し、必ずしも法律上又は事実上の負担や不利益を生ぜしめるに足りる特別の職務権限であることまで要しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.3.14)は、「刑法193条の公務員職権濫用罪における『職権』とは、…職権行使の相手方に対し法律上、事実上の負担ないし不利益を生ぜしめるに足りる特別の職務権限をいい…、同罪が成立するには、公務員の不法な行為が右の性質をもつ職務権限を濫用して行われたことを要するものというべき…。」としている。
総合メモ
前の判例 次の判例