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刑法 横領罪の成否 最三小判昭和31年6月26日 - 解答モード

概要
不動産のいわゆる二重譲渡において、譲受人は二重譲渡であることにつき悪意であっても、代物弁済という民法上の原因によって本件不動産所有権を適法に取得したのだから、不動産の引渡人と横領罪の共犯とならない。
判例
事案:不動産のいわゆる二重譲渡の事案において、二重譲渡であることにつき悪意の譲受人は、引渡人と横領の共同正犯となるかが問題となった。

判旨:「被告人甲は、被告人乙に対する元金28000円の債権に基きその代物弁済として昭和24年2月5日本件不動産の所有権移転登記を受けその所有権を取得したというのであるから代物弁済という民法上の原因によって本件不動産所有権を適法に取得したのであって、被告人乙の横領行為とは法律上別個独立の関係である。されば本件においてたとい被告人甲が『前記の事実を良く知りながら』右所有権の移転登記を受けたとしても、これをもって直ちに横領の共犯と認めることはできないのである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H18 司法 第5問 エ)
Aは、自己の所有する不動産を乙に売却して代金を受領した後、所有権移転登記をするまでの間に、その不動産を更に甲に売却しようとしたところ、甲は、Aがその不動産を既に乙に売却済みかもしれないとの未必的な認識を有しながら、この点を確認しないまま、Aからその不動産を購入して登記を完了した。甲に横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.6.26)は、本肢と同種の事案において、「被告人甲は、被告人乙に対する…債権に基きその代物弁済として…本件不動産の所有権移転登記を受けその所有権を取得したというのであるから代物弁済という民法上の原因によって本件不動産所有権を適法に取得したのであって、被告人乙の横領行為とは法律上別個独立の関係である。…被告人甲が『前記の事実を良く知りながら』右所有権の移転登記を受けたとしても、これをもって直ちに横領の共犯と認めることはできない…。」として、単純悪意者に対する横領罪の共同正犯の成立を否定している。
甲は、Aがその不動産を既に乙に売却済みかもしれないとの未必的な認識を有しているにすぎない単純悪意者であり、売買という民法上の原因によって本件不動産所有権を適法に取得し、対抗要件を具備したといえる。
したがって、甲に横領罪は成立しない。


全体の正答率 : 100%

(H30 共通 第20問 オ)
甲は、別居している実弟Aとの間で、自己が所有するX市内の土地(以下「本件土地」という。)を代金3000万円で売却する売買契約を締結し、Aから代金全額の支払を受けたものの、本件土地の所有権移転登記は未了のままであった。
 そこで、甲は、自己が経営する会社の資金繰りのため、自らが保管していた本件土地の登記済証を利用し、事情を知らないBに対して、本件土地に抵当権を設定するので、それを担保に1000万円を融資してほしい旨申し入れたところ、Bは、これを了承した。数日後、甲は、Bから1000万円の融資を受けた上、Aに無断で本件土地の抵当権設定登記を完了した。
 X市の土木部長である乙は、本件土地を乙個人として購入したいと考え、甲に対して、その旨を申し入れた。甲は、乙に対して、本件土地は既にAに売却済みであるが、登記名義は自分に残っているので、代金2000万円で売却してもよい旨を伝えたところ、乙は、これを了承した。そして、乙は、Y市内に時価700万円の農地(以下「本件農地」という。)を所有していたことから、本件土地の購入資金を調達するため、それまでにX市発注の公共工事の受注に際して、土木部長として便宜を図ってきた建築業を営むCに対して、本件農地を時価で買い取ってほしい旨を依頼した。Cは、本件農地にはそれまで買手が全く見付からず、乙が苦労していることを知りながら、かねてX市発注の公共工事の受注に際して乙が有利な取り計らいをしてくれたことに対する謝礼の趣旨に加え、時価であれば損をすることもないと考えて、乙の依頼を了承した。そして、Cは、乙と本件農地の売買契約を締結した上で、乙に現金700万円を手渡した。
 その後、甲は、Aに無断で乙と本件土地の売買契約を締結し、乙から代金全額の支払を受けた上、本件土地の所有権が売買により乙に移転した旨の登記を完了した。
 乙は、甲から本件土地が既にAに売却済みであることを知らされながら、Aに無断で本件土地を購入し、所有権移転登記を完了したのであるから、乙に横領罪の共同正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.6.26)は、本肢と同種の事案において、「被告人甲は、被告人乙に対する…債権に基きその代物弁済として…本件不動産の所有権移転登記を受けその所有権を取得したというのであるから代物弁済という民法上の原因によって本件不動産所有権を適法に取得したのであって、被告人乙の横領行為とは法律上別個独立の関係である。…被告人甲が『前記の事実を良く知りながら』右所有権の移転登記を受けたとしても、これをもって直ちに横領の共犯と認めることはできない…。」として、単純悪意者に対する横領罪の共同正犯の成立を否定している。
乙は、甲から本件土地が既にAに売却済みであることを知らされながら、Aに無断で本件土地を購入しているものの単純悪意者にすぎず、売買という民法上の原因によって本件不動産所有権を適法に取得し対抗要件を具備したといえる。
したがって、乙に横領罪の共同正犯は成立しない。

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