①弁護人が被告人の利益を擁護するためにした行為につき刑法上の違法性の阻却を認めるためには、それが弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮して、法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならないのであり、かつ、その判断にあたっては、その行為が法令上の根拠をもつ職務活動であるかどうか、弁護目的の達成との間にどのような関連性をもつか、弁護を受ける被告人自身がこれを行った場合に刑法上の違法性の阻却を認めるべきどうかの諸点を考慮に入れるのが相当である。
②被告人以外の特定人が真犯人であることを広く社会に報道して、世論を喚起し、被告人を無罪とするための証拠の収集につき協力を求め、かつ、最高裁判所の職権発動による原判決の破棄ないしは再審請求の途をひらくため、右の特定人が真犯人である旨の事実摘示をした名誉毀損行為は、弁護人の相当な弁護活動として刑法上の違法性を阻却されるものではない。
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刑法 名誉毀損罪と正当な弁護活動 最一小決昭和51年3月23日 - 解答モード
概要
判例
事案:弁護人が訴訟外での被告人の再審を認めさせるため、被告人以外が犯人であると記者会見で述べたという事案において、名誉棄損罪行為の違法性が阻却されるかが問題となった。
判旨:「名誉毀損罪などの構成要件にあたる行為をした場合であっても、それが自己が弁護人となつた刑事被告人の利益を擁護するためにした正当な弁護活動であると認められるときは、刑法35条の適用を受け、罰せられないことは、いうまでもない。しかしながら、刑法35条の適用を受けるためには、その行為が弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮して、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならないのであり、かつ、右の判断をするにあたっては、それが法令上の根拠をもつ職務活動であるかどうか、弁護目的の達成との間にどのような関連性をもつか、弁護を受ける刑事被告人自身がこれを行った場合に刑法上の違法性阻却を認めるべきかどうかという諸点を考慮に入れるのが相当である。
…弁護人が弁護活動のために名誉毀損罪にあたる事実を公表することを許容している法令上の具体的な定めが存在しないことは、いうまでもない。
…被告人らは、Xら三名が真犯人であることを広く社会に報道して、世論を喚起し、Aら両名を無罪とするための証拠の収集につき協力を求め、かつ、最高裁判所の職権発動による原判決破棄ないしは再審請求の途をひらくため本件行為に出たものであって、Aらの無罪を得るために当該被告事件の訴訟手続内において行ったものではないから、訴訟活動の一環としてその正当性を基礎づける余地もない。すなわち、その行為は、訴訟外の救援活動に属するものであり、弁護目的との関連性も著しく間接的であり、正当な弁護活動の範囲を起えるものというほかはないのである。
…被告人らの摘示した事実は、真実であるとは認められず、また、これを真実と誤信するに足りる確実な資料、根拠があるとも認められないから、たとえAら自身がこれを公表した場合であっても、名誉毀損罪にあたる違法な行為というほかはなく、同一の行為が弁護人によってなされたからといって、違法性の阻却を認めるべきいわれはない。」
判旨:「名誉毀損罪などの構成要件にあたる行為をした場合であっても、それが自己が弁護人となつた刑事被告人の利益を擁護するためにした正当な弁護活動であると認められるときは、刑法35条の適用を受け、罰せられないことは、いうまでもない。しかしながら、刑法35条の適用を受けるためには、その行為が弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮して、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならないのであり、かつ、右の判断をするにあたっては、それが法令上の根拠をもつ職務活動であるかどうか、弁護目的の達成との間にどのような関連性をもつか、弁護を受ける刑事被告人自身がこれを行った場合に刑法上の違法性阻却を認めるべきかどうかという諸点を考慮に入れるのが相当である。
…弁護人が弁護活動のために名誉毀損罪にあたる事実を公表することを許容している法令上の具体的な定めが存在しないことは、いうまでもない。
…被告人らは、Xら三名が真犯人であることを広く社会に報道して、世論を喚起し、Aら両名を無罪とするための証拠の収集につき協力を求め、かつ、最高裁判所の職権発動による原判決破棄ないしは再審請求の途をひらくため本件行為に出たものであって、Aらの無罪を得るために当該被告事件の訴訟手続内において行ったものではないから、訴訟活動の一環としてその正当性を基礎づける余地もない。すなわち、その行為は、訴訟外の救援活動に属するものであり、弁護目的との関連性も著しく間接的であり、正当な弁護活動の範囲を起えるものというほかはないのである。
…被告人らの摘示した事実は、真実であるとは認められず、また、これを真実と誤信するに足りる確実な資料、根拠があるとも認められないから、たとえAら自身がこれを公表した場合であっても、名誉毀損罪にあたる違法な行為というほかはなく、同一の行為が弁護人によってなされたからといって、違法性の阻却を認めるべきいわれはない。」
過去問・解説
(R3 共通 第12問 イ)
弁護人が被告人の利益を擁護するためにした弁護活動であれば、それが名誉毀損罪の構成要件に該当する行為であっても、違法性が阻却されるため、名誉毀損罪が成立することはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭51.3.23)は、「刑法35条の適用を受けるためには、その行為が弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮して、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならない…その行為は、訴訟外の救援活動に属するものであり、弁護目的との関連性も著しく間接的であり、正当な弁護活動の範囲を起えるものというほかはない…。」として、弁護人の名誉棄損につき正当業務行為としての違法性阻却を否定している。
したがって、弁護人が被告人の利益を擁護するためにした弁護活動であっても名誉毀損罪が成立し得る。