現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

刑法 建物の横領罪の成否 札幌高判昭和30年11月17日 - 解答モード

概要
建物売買契約が合意解除されるなどして、売買契約が初めから無効であったものとみなされても、原状回復義務に関して、当事者間に委託信任関係は存在し、横領罪が成立しうる。
判例
事案:建物売買契約の合意解除後、建物所有権移転登記手続未了であることを奇貨としてA会社より金20万円を借受けるに際し前記建物上に抵当権を設定したという事案において、横領罪の成否が問題となった。

判旨:「同建物内の居住者等が期限内に立退かず(四)の条項が履行されなかったところより、被告人は右約束手形金を支払うことができなかったため同年6月22日島田豊次郎に対し、前記売買契約解除の意思表示をなし島田名義にその所有権移転登記手続に必要な権利書、委任状及び印鑑証明書を送付したところ、島田はその頃これを承諾して同書類をも受領し茲に同売買契約は合意解除され、その結果前記建物の所有権は原状回復により島田豊次郎に復帰したこと。それにもかかわらず、被告人はその所有権移転登記手続未了なるを奇貨としてその後昭和28年6月3日旭川市2条通3丁目右5号大洋産業株式会社において同社より金20万円を借受けるに際し擅に前記建物上に抵当権を設定し以てこれを横領したことを優に認定できる。従って本件公訴事実はその証明十分であるといわなければならない。記録及び原審並びに当審取調の各証拠中右認定と相容れない部分はいずれも措信し難く、その他記録並びに当審取調の結果につき精査検討するも右認定をくつがえすに足る証拠はない。なお、弁護人は本件建物の所有権が島田豊次郎に移転したのは昭和28年6月3日以降であるとし、その論証として当時被告人において同建物の固定資産税を納付していたものであり、また、島田は被告人より本件建物代金の支払方法として差入れた金額40万円の約束手形を当時その手裡に保有していたものである2点に徴し明らかである、故に、本件横領罪は成立しない旨主張するが、証人島田豊次郎の当公廷における供述及び前掲原審取調の約束手形及び登記簿謄本を綜合すると、本件建物につき昭和28年8月21日被告人より島田豊次郎に対し同人名義の所有権移転登記手続をなしたことが明らかであるが、右は前記昭和24年6月22日頃本件建物売買契約の合意解除により本件建物の所有権が島田豊次郎に復帰したところ、被告人より受領した印鑑証明書に相違の点があったのでその訂正手続方を催告していたけれども早急に運ばず漸く昭和28年6月22日頃に至り新たに印鑑証明書の交付を受けたので同年8月21日島田豊次郎名義にその所有権移転登記手続がなされたものに過ぎず、従って本件建物の所有権が実体法上島田豊次郎に復帰したのは前段認定のように昭和24年6月22日頃であって昭和28年6月3日以降でないことが認められる。尤も記録及び証人島田豊次郎の当公廷における供述によれば、(一)被告人は本件犯行時である昭和28年6月3日当時本件建物の固定資産税を納付していたこと、(二)島田は前記被告人より本件建物代金の支払方法として受領した金額40万円の約束手形を右当時その手裡に保有していたことが認められるが、同証拠及び原審第3回公判調書中証人島田豊次郎の供述記載並びに前掲原審取調の約束手形を綜合すると、右(一)は本件建物が当時登記簿上被告人名義になっていたためであり、右(二)は前記建物売買契約の合意解除当時同手形の被告人名下の印影を破棄してこれを失効せしめたものであって有効手形として保有していたものでないことを認めることができる。記録及び原審並びに当審取調の各証拠中以上認定に反する部分はいずれも措信できない。故に右(一)、(二)の事実は前段認定の妨げとならない。弁護人の所論は採用するを得ず。されば、原判決が本件公訴事実を否定し被告人に対し無罪の言渡をなしたのは事実を誤認したものであり、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、爾余の趣旨に対する判断をなすまでもなく原判決は破棄を免れない。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第18問 ウ)
甲は、17歳の乙と同人所有の絵画の売買契約を締結し当該絵画の引渡しを受けたが、乙が親権者の同意がないことを理由に同契約を取り消した。甲はこれを知りながら、乙に無断で当該絵画を丙に売却して丙に引き渡した場合、甲乙間の売買契約が初めから無効であったものとみなされるため、甲と乙の間に委託信任関係は存在しないこととなるから、甲には横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
裁判例(札幌高判昭30.11.17)は、建物売買契約の合意解除後の横領事案において、「建物…売買契約解除の意思表示をなしV名義にその所有権移転登記手続に必要な権利書、委任状及び印鑑証明書を送付したところ、Vはその頃これを承諾して同書類をも受領し茲に同売買契約は合意解除され、その結果前記建物の所有権は原状回復によりVに復帰したこと。それにもかかわらず、被告人はその所有権移転登記手続未了なるを奇貨としてその後…A株式会社において同社より金20万円を借受けるに際し擅に前記建物上に抵当権を設定し以てこれを横領した…。」として、売買契約が解除により無効となった後においても、原状回復義務について、当事者間における委託信任関係が継続することを前提として横領罪の成立を認めている。
したがって、親権者の取消しにより売買契約が初めから無効であったものとみなされても、原状回復義務に関して、甲乙間に委託信任関係は存在する。
よって、甲が乙に無断で当該絵画を丙に売却して丙に引き渡した行為について、甲には横領罪が成立する。

該当する過去問がありません

前の判例 次の判例