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刑法 背任罪における「財産上の損害」 最一小決昭和58年5月24日 - 解答モード

概要
247条にいう「本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」とは、経済的見地において本人の財産状態を評価し、被告人の行為によって本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかったときをいう。
判例
事案:信用保証協会の支所長が、企業者の資金使途が倒産を一時期糊塗するためのものであることを知りながら、委任された限度額を超えて同人に対する債務保証を専決し、あるいは協会長に対する稟議資料に不実の記載をし、保証条件についての協会長の指示に従わないで保証書を交付するなどして、同協会をして企業者の債務を保証させたという事案において、「本人に財産上の損害を加えたとき」に当たるかが問題となった。

判旨:「刑法247条にいう『本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ』とは、経済的見地において本人の財産状態を評価し、被告人の行為によって、本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかったときをいうと解すべきであるところ、被告人が本件事実関係のもとで同協会をしてAの債務を保証させたときは、同人の債務がいまだ不履行の段階に至らず、したがって同協会の財産に、代位弁済による現実の損失がいまだ生じていないとしても、経済的見地においては、同協会の財産的価値は減少したものと評価されるから、右は同条にいう『本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ』にあたるというべきである。
 また、信用保証協会の行う債務保証が、常態においても同協会に前記の意味の損害を生じさせる場合の少なくないことは、同協会の行う業務の性質上免れ難いところであるとしても、同協会の負担しうる実損には資金上限度があり、倒産の蓋然性の高い企業からの保証申込をすべて認容しなければならないものではなく、同協会の役職員は、保証業務を行うにあたり、同協会の実損を必要最小限度に止めるべく、保証申込者の信用調査、資金使途調査等の確実を期するとともに、内規により役職に応じて定められた保証決定をなしうる限度額を遵守すべき任務があるものというべきである。本件においては、信用保証協会の支所長であった被告人が、企業者の債務につき保証業務を行うにあたり、原判示の如く、同企業者の資金使途が倒産を一時糊塗するためのものにすぎないことを知りながら、しかも、支所長に委任された限度額を超えて右企業者に対する債務保証を専決し、あるいは協会長に対する禀議資料に不実の記載をし、保証条件として抵当権を設定させるべき旨の協会長の指示に反して抵当権を設定させないで保証書を交付するなどして、同協会をして保証債務を負担させたというのであるから、被告人はその任務に背いた行為をし同協会に財産上の損害を加えたものというべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H22 司法 第9問 4)
「財産上の損害」は、経済的見地から把握されるべきものであるから、返済の可能性が著しく低い無担保貸付けについては、その債務不履行が確定しなければ損害が発生したとはいえない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭58.5.24)は、無担保貸付がなされた事案において、「『本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ』とは、経済的見地において本人の財産状態を評価し、被告人の行為によって、本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかったときをいうと解すべきであるところ、被告人が…同協会をしてAの債務を保証させたときは、同人の債務がいまだ不履行の段階に至らず、したがって同協会の財産に、代位弁済による現実の損失がいまだ生じていないとしても、経済的見地においては、同協会の財産的価値は減少したものと評価されるから、右は同条にいう『本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ』にあたる…。」としている。
したがって、返済の可能性が著しく低い無担保貸付けについては、その債務不履行が確定する前であっても、経済的見地においては、同協会の財産的価値は減少したものと評価され、「財産上の損害」に当たりうる。


全体の正答率 : 100%

(R4 予備 第4問 ア)
甲は、信用保証協会の支所長であり、金融機関が中小企業者等に対して行う融資に関して、信用保証をなす業務を行っていたところ、乙の利益を図る目的で、乙に返済能力がないことを知りながら、乙が金融機関から融資を受けるに際し、確実かつ十分な担保の徴求をしないまま、同協会にその保証債務を負担させた。この場合、乙の金融機関に対する債務がいまだ不履行の状態に至らず、上記協会に、代位弁済による現実の損失がいまだ生じていなくても、甲に背任罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭58.5.24)は、本肢と同種の事案において、「『本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ』とは、経済的見地において本人の財産状態を評価し、被告人の行為によって、本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかったときをいうと解すべきであるところ、被告人が…同協会をしてAの債務を保証させたときは、同人の債務がいまだ不履行の段階に至らず、したがって同協会の財産に、代位弁済による現実の損失がいまだ生じていないとしても、経済的見地においては、同協会の財産的価値は減少したものと評価されるから、右は同条にいう『本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ』にあたる…。」としている。
甲は、乙に返済能力がないことを知りながら、信用保証協会にその保証債務を負担させているから、経済的見地においては、同協会の財産的価値は減少し「財産上の損害」が認められる。
したがって、協会に代位弁済による現実の損失がいまだ生じていなくても、甲に背任罪が成立する。

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