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刑法 公文書の書換と公文書偽造罪 最二小判昭和24年4月9日 - 解答モード

概要
通帳における世帯主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であって、世帯主甲名義の通帳と同乙名義の通帳とは、たとえ通帳自体は同一物が利用されその通帳の作成名義者は同一であっても、全く別個の通帳と認めざるを得ないから、村長Aの作成にかかる世帯主被告人名義の通帳を利用して世帯主B名義の新なる通帳を作成したものと解し公文書偽造罪に当たる。
判例
事案:世帯が甲名義の通帳に新たに世帯主乙名義を書き加えたという事案において、公文書偽造罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人はa村々長Aの記名捺印ある世帯主被告人の家庭用米穀配給通帳中に、『世帯主、C』と記載してあったその『C』の部分を指先ですり消し、其処にインキ等を使って、亡弟の名『B』の字を書き込み、恰も世帯主Bに交付せられた通帳のように改竄したというのである。およそ、家庭用米穀配給通帳は各世帯毎に交付せられるものであって、右通帳における世帯主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であって、世帯主甲名義の通帳と、同乙名義の通帳とは、たとえ、通帳自体は同一物が利用せられ従ってその通帳の作成名義者は同一であっても、全く別個の通帳と認めざるを得ない。されば原判決が前示被告人の所為を以て村長Aの作成にかかる世帯主被告人名義の通帳を利用して世帯主B名義の新なる通帳を作成したものと解し、これを公文書偽造罪に問擬したのは正当であって、右は公交書変造の罪にあたるものであると主張する論旨はあやまりである…。」
過去問・解説

(H27 共通 第20問 ア)
【事例】
 借金の返済に苦しんでいた甲とその内縁の妻乙は、A市が発行した乙を被保険者とする国民健康保険被保険者証の氏名を乙から実在しない丙に改変し、丙になりすまして消費者金融会社から借入れをして現金を手に入れることを相談した。甲と相談したとおり、乙は、上記国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄に乙とあるのを丙と書き換えた。そして、乙は、消費者金融会社の無人借入手続コーナーにおいて、借入申込書に丙の氏名を記載し、丙と刻した印鑑を押捺するなどして丙名義の借入申込書1通を完成させた上、同申込書及び氏名を丙に改変した上記国民健康保険被保険者証の内容を、同コーナーに設置された機械を使用し、同機械に接続されている同社本店の端末機に送信し、同社の貸付手続担当者に対し、丙であるかのように装って100万円の借入れを申し込んだ。同担当者は、当該申込みをした者が真実丙であり、かつ、貸付金は約定のとおりに返済されるものと誤信し、同社の貸付システムに従って丙名義の借入カードを上記コーナーに設置された機械から発券した。乙は、その場で同カードを入手し、同カードを現金自動入出機に挿入して同機から現金100万円を引き出した。その後、乙は、上記行為に及んだことを後悔し、自宅で、甲に一緒に自首をしようと持ち掛けた。甲は、これを聞いて激高し、乙を窒息死させようと考え、その首を絞めたところ、乙は首を絞められたことによるショックで心不全になり死亡した。甲は、乙の死亡から約30分後、死亡して横たわっている乙の指に時価20万円相当の乙の指輪がはめてあることに気が付き、同指輪を奪って逃走した。
【記述】
乙が国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄を丙と書き換えた行為については、単に文書の内容を書き換えたにすぎないから、甲と乙には、公文書偽造罪ではなく、公文書変造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.4.9)は、「家庭用米穀配給通帳は各世帯毎に交付せられるものであって、右通帳における世帯主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であって、世帯主甲名義の通帳と、同乙名義の通帳とは、たとえ、通帳自体は同一物が利用せられ従ってその通帳の作成名義者は同一であっても、全く別個の通帳と認めざるを得ない。されば原判決が前示被告人の所為を以て村長Aの作成にかかる世帯主被告人名義の通帳を利用して世帯主B名義の新なる通帳を作成したものと解し、これを公文書偽造罪に問擬したのは正当…。」として、文書の本質的部分へ変更を加えている場合、新たな証明力ある文書を作成したとして変造ではなく偽造に当たるとしている。
そして、国民健康保険被保険者証の被保険者氏名もその文書の被保険者を示す本質的部分として、これを書き換える行為は偽造に当たる。
したがって、乙には公文書偽造罪が成立する。

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