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刑法 被害者の行為を利用した殺人 最一小決昭和59年3月27日

概要
被害者を河川堤防上に連行し、未必の故意をもって、脅迫的言動を用いて同人を護岸際まで追いつめ、逃げ場を失った同人を川に転落するのやむなきに至らしめて溺死させた行為は、殺人罪が成立する。
判例
事案:被害者を河川堤防上に連行し、未必の故意をもって、脅迫的言動を用いて同人を護岸際まで追いつめ、逃げ場を失った同人を川に転落するのやむなきに至らしめて溺死させたという事案において、殺人罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、外2名と共に、厳寒の深夜、かなり酩酊しかつ被告人らから暴行を受けて衰弱していた被害者を、都内荒川の河口近くの堤防上に連行し、同所において同人を川に転落させて死亡させるのもやむを得ない旨意思を相通じ、上衣、ズボンを無理矢理脱がせたうえ、同人を取り囲み、『この野郎、いつまでふざけてるんだ、飛び込める根性あるか。』などと脅しながら護岸際まで追いつめ、さらにたる木で殴りかかる態度を示すなどして、遂には逃げ場を失った同人を護岸上から約3メートル下の川に転落するのやむなきに至らしめ、そのうえ長さ約3、4メートルのたる木で水面を突いたり叩いたりし、もって同人を溺死させたというのであるから、右被告人の所為は殺人罪にあたるとした原判断は相当である。」
過去問・解説
(H27 司法 第6問 2)
甲は、真冬の深夜、河川堤防でVに激しい暴行を加えたところ、Vは走って逃げ出した。甲は、逃げるVを堤防際まで追い詰めれば、逃げ場を失ったVが堤防から下の川に飛び込んで溺死するかもしれないがそれでも構わないと考え、Vを堤防際まで追い詰めた。逃げ場を失ったVは、甲からの暴行を免れるため、堤防から約3メートル下の川に飛び込んで溺死した。甲には、殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭59.3.27)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、…被害者を、都内荒川の河口近くの堤防上に連行し、同所において同人を川に転落させて死亡させるのもやむを得ない旨意思を相通じ、…脅しながら護岸際まで追いつめ、さらにたる木で殴りかかる態度を示すなどして、遂には逃げ場を失った同人を護岸上から約3メートル下の川に転落するのやむなきに至らしめ…同人を溺死させたというのであるから、右被告人の所為は殺人罪にあたる…。」としている。
Vは自分の意思によらず川に飛び込むことを強制され、甲は、V自身の行為を利用した間接正犯であるといえ、甲に殺人罪が成立する。

(R6 司法 第2問 ア)
甲は、真冬の深夜、甲から暴行を受けて衰弱したAを河川堤防上に連れて行き、未必の殺意をもって、Aを脅迫して護岸際まで追い詰め、さらに、Aに対して殴りかかる態度を示したため、逃げ場を失ったAが足を滑らせて堤防から3メートル下の川に転落して溺死した。この場合、甲に殺人罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭59.3.27)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、…被害者を、都内荒川の河口近くの堤防上に連行し、同所において同人を川に転落させて死亡させるのもやむを得ない旨意思を相通じ、…脅しながら護岸際まで追いつめ、さらにたる木で殴りかかる態度を示すなどして、遂には逃げ場を失った同人を護岸上から約3メートル下の川に転落するのやむなきに至らしめ…同人を溺死させたというのであるから、右被告人の所為は殺人罪にあたる…。」としている。
甲は、逃げ場を失ったAに対して、甲はさらに殴り掛かる態度を示しているため、川に転落して死亡する危険性が高い行為に及んでいるといえ、甲に殺人罪が成立する。
総合メモ
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