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犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪
第104条
条文
第104条(証拠隠滅等)
他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
過去問・解説
(H18 司法 第1問 ア)
執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、司法警察員Xから、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられた。その際、甲は単純な事件なので起訴されることはないと思い、事実関係を争わなかった。そこで、Xは「傷害事件を起こしたことは間違いありません。弁解はありません。」などと供述録取書に録取して読み聞かせたところ、甲は間違いない旨を申し立てて署名・指印した。そのとき、Xは上司から呼出しを受けたため、供述録取書にXの署名・押印及び契印をしないまま、取調室前の廊下にいた同僚の司法警察員Yに甲の監視を依頼して、取調室から出て行った。
甲がYに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Yは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はYの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Yに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、前記の供述録取書を破り捨てた上、制止するために立ちふさがったYの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。甲に証拠隠滅罪が成立する。
執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、司法警察員Xから、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられた。その際、甲は単純な事件なので起訴されることはないと思い、事実関係を争わなかった。そこで、Xは「傷害事件を起こしたことは間違いありません。弁解はありません。」などと供述録取書に録取して読み聞かせたところ、甲は間違いない旨を申し立てて署名・指印した。そのとき、Xは上司から呼出しを受けたため、供述録取書にXの署名・押印及び契印をしないまま、取調室前の廊下にいた同僚の司法警察員Yに甲の監視を依頼して、取調室から出て行った。
甲がYに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Yは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はYの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Yに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、前記の供述録取書を破り捨てた上、制止するために立ちふさがったYの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。甲に証拠隠滅罪が成立する。
(正答) ✕
(解説)
104条は、証拠隠滅等罪について、「他人の刑事事件に関する証拠」の隠滅等に限定しているから、自己の刑事事件に関する証拠の隠滅等は本罪の対象外である。
甲がXの供述録取書を破り捨てた行為は、自己の刑事事件を隠滅するものにすぎないから、証拠隠滅罪は成立しない。
104条は、証拠隠滅等罪について、「他人の刑事事件に関する証拠」の隠滅等に限定しているから、自己の刑事事件に関する証拠の隠滅等は本罪の対象外である。
甲がXの供述録取書を破り捨てた行為は、自己の刑事事件を隠滅するものにすぎないから、証拠隠滅罪は成立しない。
(H27 司法 第14問 1)
甲は、Aが窃盗被告事件で公判請求されたと知り、同事件に関するAに有利な情状証拠を隠匿した。甲には証拠隠滅罪は成立しない。
甲は、Aが窃盗被告事件で公判請求されたと知り、同事件に関するAに有利な情状証拠を隠匿した。甲には証拠隠滅罪は成立しない。
(正答) ✕
(解説)
104条に規定する「証拠」に関して、条文上では特に区別されていないため、他人にとって有利な証拠も含まれる。
104条は、証拠隠滅等罪の客体について、「他人の刑事事件に関する証拠」と規定するにとどまり、他人にとって不利な証拠に限定していない。したがって、被告人に有利な情状証拠も「他人の刑事事件に関する証拠」として本罪の客体となる。よって、甲には証拠隠滅罪が成立する。
104条に規定する「証拠」に関して、条文上では特に区別されていないため、他人にとって有利な証拠も含まれる。
104条は、証拠隠滅等罪の客体について、「他人の刑事事件に関する証拠」と規定するにとどまり、他人にとって不利な証拠に限定していない。したがって、被告人に有利な情状証拠も「他人の刑事事件に関する証拠」として本罪の客体となる。よって、甲には証拠隠滅罪が成立する。
(H27 共通 第18問 2)
甲は、自宅において、本件窃盗事件に係る捜索差押許可状に基づく捜索を受けた際、自宅に隠し持っていた覚せい剤が警察官に発見されることを恐れ、これを密かにトイレに流した。甲の行為に証拠隠滅罪が成立する。
甲は、自宅において、本件窃盗事件に係る捜索差押許可状に基づく捜索を受けた際、自宅に隠し持っていた覚せい剤が警察官に発見されることを恐れ、これを密かにトイレに流した。甲の行為に証拠隠滅罪が成立する。
(正答) ✕
(解説)
104条は、証拠隠滅等罪について、「他人の刑事事件に関する証拠」の隠滅等に限定しているから、自己の刑事事件に関する証拠の隠滅等は本罪の対象外である。
甲が覚せい剤をトイレに流した行為は、自己の刑事事件を隠滅するものにすぎないから、証拠隠滅罪は成立しない。
104条は、証拠隠滅等罪について、「他人の刑事事件に関する証拠」の隠滅等に限定しているから、自己の刑事事件に関する証拠の隠滅等は本罪の対象外である。
甲が覚せい剤をトイレに流した行為は、自己の刑事事件を隠滅するものにすぎないから、証拠隠滅罪は成立しない。
(H29 共通 第14問 ウ)
証拠隠滅罪の「他人の刑事事件」は、犯人蔵匿罪と異なり、罰金以上の刑に当たる罪に限られない。
証拠隠滅罪の「他人の刑事事件」は、犯人蔵匿罪と異なり、罰金以上の刑に当たる罪に限られない。
(正答) 〇
(解説)
104条に規定する「他人の刑事事件」にあたるかについて法定刑による区別はない。
犯人蔵匿等罪(103条)の客体には、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者」という限定があるが、証拠隠滅罪(104条)の客体は、単に「他人の刑事事件に関する証拠」と規定されているにとどまり、罰金以上の刑に当たる旨の限定はない。したがって、証拠隠滅罪の「他人の刑事事件」は、犯人蔵匿罪と異なり、罰金以上の刑に当たる罪に限られない。
104条に規定する「他人の刑事事件」にあたるかについて法定刑による区別はない。
犯人蔵匿等罪(103条)の客体には、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者」という限定があるが、証拠隠滅罪(104条)の客体は、単に「他人の刑事事件に関する証拠」と規定されているにとどまり、罰金以上の刑に当たる旨の限定はない。したがって、証拠隠滅罪の「他人の刑事事件」は、犯人蔵匿罪と異なり、罰金以上の刑に当たる罪に限られない。
(R3 司法 第14問 ウ)
貸金返還請求訴訟における被告が、同訴訟の証拠である消費貸借契約書の原本を焼却した場合、証拠隠滅罪は成立しない。
貸金返還請求訴訟における被告が、同訴訟の証拠である消費貸借契約書の原本を焼却した場合、証拠隠滅罪は成立しない。
(正答) 〇
(解説)
証拠隠滅等罪(104条)の客体は、「他人の刑事事件に関する証拠」であり、民事事件に関する証拠はこれに当たらない。
証拠隠滅等罪(104条)の客体は、「他人の刑事事件に関する証拠」であり、民事事件に関する証拠はこれに当たらない。
総合メモ
第105条
条文
第105条(親族による犯罪に関する特例)
前2条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
前2条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
過去問・解説
(H25 司法 第8問 3)
甲は、強盗事件を犯した息子乙を逮捕から免れさせるため、乙に逃走資金を与えた。甲には、犯人隠避罪が成立する。
甲は、強盗事件を犯した息子乙を逮捕から免れさせるため、乙に逃走資金を与えた。甲には、犯人隠避罪が成立する。
(正答) 〇
(解説)
甲が、強盗事件を犯した息子乙を逮捕から免れさせるため、乙に逃走資金を与えたことは、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者…を…隠避させた」として、犯人隠避罪が成立する。
なお、甲は、「犯人…の親族」であり、「犯人…の者の利益のために」本罪を「犯した」のだから、「その刑を免除することができる」として、刑の任意的免除を受けることができる(105条)が、同条は処罰阻却事由を定めているにすぎないから、犯人隠避罪の成立は妨げられない。
甲が、強盗事件を犯した息子乙を逮捕から免れさせるため、乙に逃走資金を与えたことは、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者…を…隠避させた」として、犯人隠避罪が成立する。
なお、甲は、「犯人…の親族」であり、「犯人…の者の利益のために」本罪を「犯した」のだから、「その刑を免除することができる」として、刑の任意的免除を受けることができる(105条)が、同条は処罰阻却事由を定めているにすぎないから、犯人隠避罪の成立は妨げられない。
(H29 共通 第14問 ア)
犯人の親族が当該犯人の利益のために犯人蔵匿罪を犯したときは、当該親族に対する刑は減軽しなければならない。
犯人の親族が当該犯人の利益のために犯人蔵匿罪を犯したときは、当該親族に対する刑は減軽しなければならない。
(正答) ✕
(解説)
105条は、親族による犯罪に関する特例として、「その刑を免除することができる」として、任意的免除を定めており、必要的減軽を定めているのではない。
105条は、親族による犯罪に関する特例として、「その刑を免除することができる」として、任意的免除を定めており、必要的減軽を定めているのではない。
(R3 司法 第14問 イ)
自己の配偶者の犯罪行為に関する証拠を隠滅した場合、証拠隠滅罪が成立する。
自己の配偶者の犯罪行為に関する証拠を隠滅した場合、証拠隠滅罪が成立する。
(正答) 〇
(解説)
105条は、親族による犯罪に関する特例として、「その刑を免除することができる」として、任意的免除を定めており、これは処罰阻却事由にすぎず、犯罪の成立自体を妨げるものではない。
105条は、親族による犯罪に関する特例として、「その刑を免除することができる」として、任意的免除を定めており、これは処罰阻却事由にすぎず、犯罪の成立自体を妨げるものではない。
総合メモ
第105条の2
条文
第105条の2(証人等威迫)
自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。