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文書偽造の罪
第157条
条文
第157条(公正証書原本不実記載等)
① 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
② 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金に処する。
③ 前2項の罪の未遂は、罰する。
① 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
② 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金に処する。
③ 前2項の罪の未遂は、罰する。
過去問・解説
(H20 司法 第8問 3)
甲は、外国籍の女性乙に長期滞在資格を取得させるため婚姻を偽装しようと考え、甲を夫とし乙を妻として婚姻する旨の内容虚偽の婚姻届を作成し、情を知らない市役所の係員に提出した。同係員は、同婚姻届を受理し、甲の戸籍の原本として用いられる電磁的記録に甲と乙が婚姻した旨の記録をし、これを同市役所の事務処理に用いられる状態においた。甲は、公務員に対し虚偽の申立てをして、権利義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせ、原本としての用に供したのであるから、甲には電磁的公正証書原本不実記録罪、同供用罪が成立する。
甲は、外国籍の女性乙に長期滞在資格を取得させるため婚姻を偽装しようと考え、甲を夫とし乙を妻として婚姻する旨の内容虚偽の婚姻届を作成し、情を知らない市役所の係員に提出した。同係員は、同婚姻届を受理し、甲の戸籍の原本として用いられる電磁的記録に甲と乙が婚姻した旨の記録をし、これを同市役所の事務処理に用いられる状態においた。甲は、公務員に対し虚偽の申立てをして、権利義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせ、原本としての用に供したのであるから、甲には電磁的公正証書原本不実記録罪、同供用罪が成立する。
(正答) 〇
(解説)
甲は、市役所の係員である「公務員」に対し、内容虚偽の婚姻届を提出することで「虚偽の申立てをして」、「権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録」に甲と乙が結婚した旨の「不実の記録をさせた」のだから、電磁的公正証書原本不実記録罪(157条1項)が成立する。
甲は、上記行為を通じて、虚偽の電磁的記録を市役所の事務処理に用いられる状態においたのだから、「前条…第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供し…た」といえ、電磁的公正証書原本不実供用罪(158条1項)が成立する。
甲は、市役所の係員である「公務員」に対し、内容虚偽の婚姻届を提出することで「虚偽の申立てをして」、「権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録」に甲と乙が結婚した旨の「不実の記録をさせた」のだから、電磁的公正証書原本不実記録罪(157条1項)が成立する。
甲は、上記行為を通じて、虚偽の電磁的記録を市役所の事務処理に用いられる状態においたのだから、「前条…第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供し…た」といえ、電磁的公正証書原本不実供用罪(158条1項)が成立する。
総合メモ
第159条
条文
第159条(私文書偽造等)
① 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する。
② 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
③ 前2項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する。
① 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する。
② 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
③ 前2項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する。
過去問・解説
(H21 司法 第9問 1)
甲は、行使の目的で、乙を債務者とする乙名義の金銭借用証を勝手に作成した。同借用証に乙の氏名の記載はあるが、その押印がなかった場合、甲には無印私文書偽造罪が成立する。
甲は、行使の目的で、乙を債務者とする乙名義の金銭借用証を勝手に作成した。同借用証に乙の氏名の記載はあるが、その押印がなかった場合、甲には無印私文書偽造罪が成立する。
(正答) ✕
(解説)
私文書偽造罪には、「他人の印章若しくは署名を使用」する有印私文書偽造罪(159条1項)と、「他人の印章若しくは署名を使用」する無印私文書偽造罪(159条3項)がある。
本肢の事例では、作成名義人である「他人」乙の氏名が金銭借用証に記載されているから、「行使の目的で、他人の…署名を使用して権利、義務…に関する文書…を偽造し…た」といえ、有印私文書偽造罪が成立する。
私文書偽造罪には、「他人の印章若しくは署名を使用」する有印私文書偽造罪(159条1項)と、「他人の印章若しくは署名を使用」する無印私文書偽造罪(159条3項)がある。
本肢の事例では、作成名義人である「他人」乙の氏名が金銭借用証に記載されているから、「行使の目的で、他人の…署名を使用して権利、義務…に関する文書…を偽造し…た」といえ、有印私文書偽造罪が成立する。
総合メモ
第160条
条文
第160条(虚偽診断書等作成)
医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
過去問・解説
(H20 司法 第8問 4)
医師である甲は、乙に依頼され、同人が保険会社に提出する診断書に、同人が肺結核に罹患した事実はないのに、同人が肺結核に罹患している旨記載した。医師である甲が、保険会社に提出する診断書に虚偽の記載をしたのであるから、甲には虚偽診断書作成罪が成立する。
医師である甲は、乙に依頼され、同人が保険会社に提出する診断書に、同人が肺結核に罹患した事実はないのに、同人が肺結核に罹患している旨記載した。医師である甲が、保険会社に提出する診断書に虚偽の記載をしたのであるから、甲には虚偽診断書作成罪が成立する。
(正答) ✕
(解説)
公文書においては、無形偽造も全般的に処罰対象とされている(156条、157条)の対し、私文書においては、無形偽造は限られた範囲で例外的に処罰対象とされているにとどまる(160条)。
160条は、私文書の無形偽造の客体として、「医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書」と規定しているところ、保険会社に提出する診断書は、、「医師が公務所に提出すべき診断書」に当たらない。
したがって、甲には虚偽診断書作成罪は成立しない。
公文書においては、無形偽造も全般的に処罰対象とされている(156条、157条)の対し、私文書においては、無形偽造は限られた範囲で例外的に処罰対象とされているにとどまる(160条)。
160条は、私文書の無形偽造の客体として、「医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書」と規定しているところ、保険会社に提出する診断書は、、「医師が公務所に提出すべき診断書」に当たらない。
したがって、甲には虚偽診断書作成罪は成立しない。
(H25 共通 第6問 4)
甲と乙は、警察署に提出する目的で、県立病院の医師丙に内容虚偽の診断書を作成させる旨共謀し、甲が丙にこれを依頼したが、丙に断られたため、甲は、乙に相談することなく自ら県立病院医師丙名義で内容虚偽の診断書を作成した。乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する。
甲と乙は、警察署に提出する目的で、県立病院の医師丙に内容虚偽の診断書を作成させる旨共謀し、甲が丙にこれを依頼したが、丙に断られたため、甲は、乙に相談することなく自ら県立病院医師丙名義で内容虚偽の診断書を作成した。乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する。
(正答) ✕
(解説)
虚偽診断書作成罪(160条)は、「医師」を身分とする真正身分犯である。実行行為者である甲も、共謀者である乙も「医師」ではないから、乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯(60条、160条)は成立しない。
虚偽診断書作成罪(160条)は、「医師」を身分とする真正身分犯である。実行行為者である甲も、共謀者である乙も「医師」ではないから、乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯(60条、160条)は成立しない。
(H28 共通 第4問 ア)
医師Xは、Yに依頼され、Yが保険会社に提出するために虚偽の病名を記載した診断書を作成した場合、Xに虚偽診断書作成罪が成立する。
医師Xは、Yに依頼され、Yが保険会社に提出するために虚偽の病名を記載した診断書を作成した場合、Xに虚偽診断書作成罪が成立する。
(正答) ✕
(解説)
160条は、私文書の無形偽造の客体として、「医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書」と規定しているところ、保険会社に提出する診断書は、、「医師が公務所に提出すべき診断書」に当たらない。
したがって、Xに虚偽診断書作成罪は成立しない。
160条は、私文書の無形偽造の客体として、「医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書」と規定しているところ、保険会社に提出する診断書は、、「医師が公務所に提出すべき診断書」に当たらない。
したがって、Xに虚偽診断書作成罪は成立しない。