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短答判例

弁論主義

当事者の主張のない所有権喪失の原因となる事実と弁論主義 最三小判昭和41年4月12日

概要
原告が土地の所有権に基づき登記の抹消を求めた訴訟において、裁判所が、当事者のいずれも主張していない原告から第三者への土地の譲渡を認定し、原告が所有権を失ったとして請求を排斥することは、弁論主義に反する。
判例
事案:原告は、自己所有の土地について、被告ら名義の所有権移転登記の抹消を求めたところ、被告らは、原告から代物弁済により土地の所有権を取得したと主張した。原審は、原告がいったん土地を買い戻したと認定した上、さらに、当事者が主張していない原告から第三者への土地の譲渡を認定し、原告の請求を排斥した。
 そこで、裁判所が当事者の主張していない所有権喪失の原因となる事実を認定し、判決の基礎とすることが弁論主義に反しないかが問題となった。

判旨:「原判決は、Xにおいて本件土地をYより買戻した旨を認定した以上、Xが現に本件土地所有権を有しないのは、XよりZへ本件土地を譲渡したという理由によるものであつて、YがXより本件土地を代物弁済により取得したという理由によるものではないといわなければならない。しかるに、XよりZへの本件土地譲渡の事実は、原審口頭弁論において当事者の主張のない事実であるから、原判決は、当事者の主張のない事実によりXの前記請求を排斥したものというべく、右違法は判決に影響があること明らかである…。」
過去問・解説

(R8 予備 第36問 イ)
Xは、甲土地につき、登記名義人であるYに対し、所有権に基づき所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、これに対し、Yは、抗弁として、XがAに対し代物弁済により甲土地を譲渡したと主張し、X及びYは、その他の主張をしなかった。この場合において、裁判所が、XからAへの代物弁済による甲土地の譲渡の事実を認定した上で、さらに、その後、XがAから甲土地を買い戻したことを認定して、Xの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反する。

(正答)〇

(解説)
判例(最判昭41.4.12)は、当事者が主張していない所有権移転の事実について、「原審口頭弁論において当事者の主張のない事実であるから、原判決は、当事者の主張のない事実により上告人の前記請求を排斥したものというべく」として、これを判決の基礎にすることは弁論主義に反する旨判示している。
本肢において、XがAから甲土地を買い戻したとの事実は、代物弁済によって甲土地の所有権を失ったXが、その所有権を再び取得したことを基礎付ける主要事実であるところ、X及びYのいずれもこれを主張していない。
したがって、裁判所が、XからAへの代物弁済による甲土地の譲渡の事実を認定した上で、さらに、その後、XがAから甲土地を買い戻したことを認定して、Xの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反する。

該当する過去問がありません

相続財産の所有権喪失と弁論主義 最一小判昭和55年2月7日

概要
原告が、被相続人が取得した財産を相続したとして権利を主張したのに対し、被告は被相続人の所有権取得自体を争うにとどまり、その後の処分事実は抗弁として主張していなかった場合に、裁判所が被相続人から被告側への死因贈与という未主張の抗弁事実を認定し、原告の請求を棄却することは、弁論主義に反する。
判例
事案:被相続人Aの相続人であるXらは、Aが第三者Cから土地を買い受けて所有権を取得し、Aの死亡によりXらがこれを共同相続したとして、登記名義人Yに対し、共有持分権に基づく所有権移転登記手続を求めた。これに対し、Yは、土地を買い受けたのはAではなくYの亡夫Bであると主張した。原審は、土地を買い受けたのはAであると認定したものの、当事者が主張していなかったAからBへの死因贈与の事実を認定し、Xらの請求を棄却した。
 そこで、①相続による財産の取得を主張する原告は、被相続人が所有権を取得した後、その所有権を喪失していないことや、当該財産を処分していないことまで主張立証する必要があるか、②相手方が抗弁として主張していない死因贈与の事実を裁判所が認定し、原告の請求を排斥することができるかが問題となった。

判旨:「相続による特定財産の取得を主張する者は、(1)被相続人の右財産所有が争われているときは同人が生前その財産の所有権を取得した事実及び(2)自己が被相続人の死亡により同人の遺産を相続した事実の二つを主張立証すれば足り、(1)の事実が肯認される以上、その後被相続人の死亡時まで同人につき右財産の所有権喪失の原因となるような事実はなかつたこと、及び被相続人の特段の処分行為により右財産が相続財産の範囲から逸出した事実もなかつたことまで主張立証する責任はなく、これら後者の事実は、いずれも右相続人による財産の承継取得を争う者において抗弁としてこれを主張立証すべきものである。
 これを本件についてみると、Xらにおいて、AがCから本件土地を買い受けてその所有権を取得し、Aの死亡によりXらがAの相続人としてこれを共同相続したと主張したのに対し、Yは、前記のとおり、右Xらの所有権取得を争う理由としては、単に右土地を買い受けたのはAではなくBであると主張するにとどまつているのであるから(このような主張は、Aの所有権取得の主張事実に対する積極否認にすぎない。)、原審が証拠調の結果Cから本件土地を買い受けてその所有権を取得したのはAであつてBではないと認定する以上、XらがAの相続人としてその遺産を共同相続したことに争いのない本件においては、Xらの請求は当然認容されてしかるべき筋合である。しかるに、原審は、前記のとおり、Yが原審の口頭弁論において抗弁として主張しないBがAから本件土地の死因贈与を受けたとの事実を認定し、したがつて、Xらは右土地の所有権を相続によつて取得することができないとしてその請求を排斥しているのであつて、右は明らかに弁論主義に違反するものといわなければならない。」
過去問・解説

(R8 予備 第36問 ア)
Xは、甲土地につき、AがBから買い受け、Aの死亡によりXが相続したと主張して、登記名義人であるYに対し、所有権に基づき所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、これに対し、Yは、甲土地につき、YがBから買い受けたものであると主張し、X及びYは、その他の主張をしなかった。この場合において、裁判所が、甲土地につき、AがBから買い受けた後にYに死因贈与したとの事実を認定し、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反する。

(正答)〇

(解説)
判例(最判昭55.2.7)は、同種の事案において、被相続人が財産の所有権を取得した後、その所有権を喪失した事実について、「これら…の事実は、いずれも右相続人による財産の承継取得を争う者において抗弁としてこれを主張立証すべきものである。」とした上で、被告が抗弁として主張していない死因贈与の事実を裁判所が認定して原告の請求を排斥したことについて、「明らかに弁論主義に違反するものといわなければならない。」としている。
本肢において、Yは、甲土地を買い受けたのはAではなくYであると主張するにとどまり、AがBから甲土地を買い受けた後にYに死因贈与したとの事実を主張していない。そして、この死因贈与の事実は、Xの相続による甲土地の所有権取得を争うYにおいて抗弁として主張されるべき事実である。
したがって、裁判所が、甲土地につき、AがBから買い受けた後にYに死因贈与したとの事実を認定し、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反する。

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公序良俗違反の主張と弁論主義 最一小判昭和36年4月27日

概要
当事者が、契約が民法90条により無効であること自体を主張していなくても、公序良俗違反を基礎付ける具体的事実を主張している場合には、裁判所は、その契約が公序良俗に反し無効であると判断することができる。
判例
事案:原告は、不動産を買い受けたものの未登記であったところ、被告がその事情を知りながら、売主と共謀して当該不動産を取得したなどと主張したが、被告らの売買契約が民法90条により無効であること自体は明示的に主張していなかった。そこで、裁判所が、原告の主張した具体的事実に基づき、当該売買契約が公序良俗に反し無効であると判断することができるかが問題となった。

判旨:「裁判所は当事者が特に民法90条による無効の主張をしなくとも同条違反に該当する事実の陳述さえあれば、その有効無効の判断をなしうるものと解するを相当とする。そして、原告(被控訴人、被上告人)は、1審以来大久保貞良と被告長野は共謀の上本件不動産を横領して刑事訴追をうけその他原判示のごとき仮処分に関する不法行為をした旨の主張をしていることが明らかであるから、原審が判示事実認定の下にこれを公の秩序、善良の風俗に反し無効であると判断したからといつて、所論の違法あるということはできない。」
過去問・解説

(R8 予備 第36問 ウ)
Xは、甲土地につき、Aから買い受けたと主張して、登記名義人であるYに対し、所有権に基づき所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、これに対し、Yは、AX間の売買契約が公序良俗に反し無効であるとの主張をしていなかったが、それを基礎付ける事実を主張していた。この場合において、裁判所が、公序良俗違反を基礎付ける事実を認定した上で、AX間の売買契約が公序良俗に反し無効であると判断して、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反する。

(正答)✕

(解説)
判例(最判昭36.4.27)は、「裁判所は当事者が特に民法90条による無効の主張をしなくとも同条違反に該当する事実の陳述さえあれば、その有効無効の判断をなしうるものと解するを相当とする。」としている。
本肢において、Yは、AX間の売買契約が公序良俗に反し無効であるとの主張はしていないものの、公序良俗違反を基礎付ける事実を主張している。
したがって、裁判所が、公序良俗違反を基礎付ける事実を認定した上で、AX間の売買契約が公序良俗に反し無効であると判断して、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反しない。

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当事者の主張した自己に不利益な事実で相手方の援用しないものが訴訟資料となるか 最一小判昭和41年9月8日

概要
所有権に基づき土地の明渡を求めた当事者が相手方に対しその土地の使用を許した事実を主張し、裁判所がこれを確定した場合には、相手方が右事実を自己の利益に援用しなかったときでも、裁判所は、その当事者の請求の当否を判断するについてその事実をしんしゃくすべきである。
判例
事案:所有権に基づき土地の明渡を求めた当事者が相手方に対しその土地の使用を許した事実を主張し、裁判所がこれを確定したが、相手方が右事実を自己の利益に援用しなかった事案において、当事者の主張した自己に不利益な事実で相手方の援用しないものが訴訟資料となるか問題となった。

判旨:「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきであると解するのが相当である。」
過去問・解説

(H19 司法 第70問 2)
Xは、「甲建物は、かつてAが所有していたが、同人が死亡し、同人の子で唯一の相続人であるXが相続した。しかるに、Yは何らの権原もなく、同建物を占有している。」と主張し、同建物の所有権に基づいて、Yに対して、同建物の明渡しを求める訴えを提起した。Yは、「元所有者のAは、生前Yに甲建物を賃貸し、同建物を引き渡した。」と主張した。Xは、このYの主張を否認し、「AはYに、甲建物を、期間の定めなくYの居住のため無償で利用させる旨約束して、これを引き渡したが、Yの居住の目的に従った使用収益をするのに足りる期間は経過した。」と主張した。Yは、このXの主張を全部否認した。裁判所は、証拠調べの結果、AY間において使用貸借契約が成立したが、Xの主張する期間の経過は認められないと判断した場合、Yの使用借権の存在を理由として、Xの請求を棄却することができる。

(正答)〇

(解説)
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告Xが主張している、「AはYに、甲建物を、期間の定めなくYの居住のため無償で利用させる旨約束して、これを引き渡した。」という事実は、被告Yが主張すべき事実である。もっとも、かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
したがって、裁判所は、証拠調べの結果、AY間において使用貸借契約が成立したが、Xの主張する期間の経過は認められないと判断した場合、Yの使用借権の存在を理由として、Xの請求を棄却することができる。


(H23 共通 第66問 オ)
所有権に基づく建物明渡請求訴訟の原告が、被告との間で当該建物について使用貸借契約を締結したがその契約は終了した旨の陳述をしたのに対し、被告は、当該建物はもともと自己の所有する建物であったと主張し、口頭弁論の終結に至るまで、原告が陳述した使用貸借契約締結の事実を援用しなかった。この場合、裁判所は、証拠調べの結果、当該使用貸借契約締結の事実が認められるとの心証を得ても、この事実を判決の基礎とすることができない。

(正答)✕

(解説)
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告が陳述した使用貸借契約締結の事実は、被告が主張すべき事実である。かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。


(R2 予備 第39問 2)
所有権に基づく建物明渡請求訴訟において、「原告は、被告に対してその建物を無償で使用させていた。」との事実を原告が陳述した場合には、被告がその援用をしないときであっても、裁判所は、原告と被告との間でその建物の使用貸借契約が成立したことを判決の基礎とすることができる。

(正答)〇

(解説)
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告が陳述していた、「原告は、被告に対してその建物を無償で使用させていた。」という事実は、被告が主張立証すべき事項である。もっとも、かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。

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相手方の援用しない自己に不利益な事実の陳述(主張共通の原則) 最一小判平成9年7月17日

概要
主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができる(主張共通の原則)。
判例
事案:請求の一部についての予備的請求原因となるべき事実を被告が主張し、原告がこれを自己の利益に援用しなかった事案において、裁判所はこの事実をしんしゃくすべきであるかが問題となった。

判旨:「原審の確定したところによれば、定次は昭和29年4月5日に死亡し、定次には妻田辺正美及び上告人を含む6人の子があったというのである。したがって、原審の認定するとおり、本件土地を賃借し、本件建物を建築したのが定次であるとすれば、本件土地の賃借権及び本件建物の所有権は定次の遺産であり、これを右7人が相続したことになる。そして、上告人の法定相続分は9分の1であるから、これと異なる遺産分割がされたなどの事実がない限り、上告人は、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことが明らかである。
 上告人が、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことを前提として、予備的に右持分の確認等を請求するのであれば、定次が本件土地を賃借し、本件建物を建築したとの事実がその請求原因の一部となり、この事実については上告人が主張立証責任を負担する。本件においては、上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和38年(オ)第1227号同41年9月8日第一小法廷判決・民集20巻7号1314頁参照)。」
過去問・解説

(R5 予備 第39問 3)
Xは、Yに対し、300万円を貸し付けたと主張して、消費貸借契約に基づく貸金返還請求として300万円の支払を求める訴えを甲裁判所に提起した(以下、この消費貸借契約を「本件消費貸借契約」といい、この訴えを「本件訴え」という。)。
Xは、Yが貸付けの事実を認めた上で、消滅時効の抗弁を主張したため、時効の更新の再抗弁として、Yから300万円のうち100万円の弁済を受けた事実を主張したところ、Yはこの弁済の事実を否認した。Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。

(正答)〇

(解説)
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)
本肢において、Yが弁済したという事実は、消滅時効の抗弁が認められなかった場合に、一部弁済の抗弁となり、予備的な主張となる。かかる予備的主張をする場合、一部弁済の事実はYが主張立証責任を負う。
したがって、原告Xが弁済の事実を主張し、被告Yがこれを否認したとしても、弁済の抗弁を認定することができるから、Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。


(R8 予備 第36問 エ)
Xは、甲建物につき、Xが甲建物を建築してその所有権を取得したと主張して、Yに対し、その所有権の確認を求める訴えを提起し、Yは、Xによる甲建物の所有権取得の事実を否認し、その理由として、甲建物を建築してその所有権を取得したのはAであると主張し、また、Aが死亡し、Aの子であるX及びYがAを相続したことも主張していた。この場合において、Xが、Aが甲建物の所有権を取得したとの事実を自己の利益に援用していなかったときに、裁判所が、Aが甲建物を建築してその所有権を取得したことを認定した上で、X及びYが相続により甲建物の共有持分権をそれぞれ取得したと判断して、当該共有持分権の確認を求める限度でXの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反しない。

(正答)〇

(解説)
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)。
本肢において、Aが甲建物を建築してその所有権を取得した事実及びAの死亡によりX及びYがAを相続した事実は、Yが主張している。したがって、Xが、Aが甲建物の所有権を取得したとの事実を自己の利益に援用していなかったとしても、裁判所は、これらの事実を判決の基礎とすることができる。
よって、裁判所が、Aが甲建物を建築してその所有権を取得したことを認定した上で、X及びYが相続により甲建物の共有持分権をそれぞれ取得したと判断して、当該共有持分権の確認を求める限度でXの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反しない。

該当する過去問がありません

当事者から主張されない消極的間接事実を認定すること 最三小判昭和46年6月29日

概要
請求原因事実または抗弁事実の存否に争いがある場合に、裁判所が右主張事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張責任のない事実を認定し、もって右請求原因事実または抗弁事実の立証なしとして排斥することは、認定された事実が当事者によって主張されていない場合でも、弁論主義に違反しない。
判例
事案:被告が主張した抗弁について、かかる抗弁事実と両立せず、かつ、原告に主張責任のない事実を認定してかかる抗弁を排斥した事案において、当事者の一定の主張を排斥するために当事者から主張されない他の事実を認定することと弁論主義の関係が問題となった。

判旨:「被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのはもっぱら自己の主張にかかる請求原因事実または抗弁事実の立証ができなかったためであって、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。」
過去問・解説

(R2 予備 第39問 4)
保証債務履行請求訴訟において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合には、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所は、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることができる。

(正答)〇

(解説)
判例(最判昭46.6.29)は、本肢と同種の事案において、「原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が…抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって…抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。」としている。なぜならば、ここでいう「抗弁として主張された事実…と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実」とは、抗弁事実を否認するための消極的間接事実にすぎず、弁論主義の適用がないからである。
本肢において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合に、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所が、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることは、弁論主義に違反するものではなく、許される。弁済の抗弁の主要事実は、「訴求債権に対する弁済」であり、「訴求債権に対する弁済はない」との事実は、弁済の抗弁の主要事実との関係で否認の理由たる消極的間接事実にすぎないからである。


(R8 予備 第36問 オ)
Xは、甲土地につき、Aから買い受けたと主張して、登記名義人であるYに対し、所有権に基づき所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、これに対し、Yは、AX間の甲土地の売買の事実を否認した。この場合において、裁判所が、Aから甲土地を買い受けたのはXではなくXの妻のBであるという、XもYも主張していない事実を認定し、その結果、Xが主張するXがAから甲土地を買い受けたとの事実は認められないと判断して、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反する。

(正答)✕

(解説)
判例(最判昭46.6.29)は、「原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が…抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって…抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。」としている。ここでいう「抗弁として主張された事実…と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実」とは、抗弁事実を否認するための消極的間接事実にすぎず、弁論主義の適用がないからである。本肢において、Aから甲土地を買い受けたのはXではなくXの妻のBであるという事実は、Xが主張するAX間の売買の事実を否認するための間接事実にすぎない。そのため、X及びYが当該事実を主張していない場合であっても、裁判所は、これを認定して、XがAから甲土地を買い受けたとの事実の立証がないと判断することができる。したがって、裁判所が、Aから甲土地を買い受けたのはXではなくXの妻のBであるという、XもYも主張していない事実を認定し、その結果、Xが主張するXがAから甲土地を買い受けたとの事実は認められないと判断して、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反しない。

該当する過去問がありません

留置権の抗弁 最一小判昭和27年11月27日

概要
置留権のような権利抗弁にあつては、抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても、権利者においてその権利を行使する意思を表明しないかぎり、裁判所においてこれを斟酌することはできない。
判例
事案:留置権の基礎たる事実関係の主張があるにすぎない事案において、留置権を行使する意思の表明がない場合にも留置権の抗弁を斟酌することができるかが問題となった。

判旨:「記録によると、原審で上告人は被上告人に対し所論のように借地法10条による建物買収請求の意思表示をしたことは認め得るけれど、その代金の支払あるまで当該建物を留置する旨の抗弁を主張したことを認むべき証跡は存在しない。さればたとい右建物の買収請求により上告人と被上告人との間に当該建物につき売買契約をしたのと同様の法律上の効果を生じ、建物の所有権は被上告人に移転し、上告人は被上告人に対しこれが引渡義務を、また被上告人は上告人に対しこれが代金支払義務をそれぞれ負担することとなり、従って当然に上告人において被上告人がその代金の支払をなすまで右建物の上に留置権を取得するに至ったとしても、前説示のように上告人において該権利を行使した形跡のない以上、原審がこれを斟酌しなかったのはむしろ当然であり原判決には所論第一点のような違法があるとはいえない、けだし、権利は権利者の意思によって行使されその権利行使によって権利者はその権利の内容たる利益を享受するのである。それ故留置権のような権利抗弁にあっては、弁済免除等の事実抗弁が苟くもその抗弁を構成する事実関係の主張せられた以上、それが抗弁により利益を受ける者により主張せられたると、その相手方により主張せられたるとを問わず、常に裁判所においてこれを斟酌しなければならないのと異なり、たとい抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても権利者において権利を行使する意思を表明しない限り裁判所においてこれを斟酌することはできないのである…。そしてまた当事者の一方が或る権利を取得したことを窺わしめるような事実が訴訟上あらわれたに拘わらず、その当事者がこれを行使しない場合にあっても、裁判所はその者に対しその権利行使の意思の有無をたしかめ、或はその権利行使を促すべき責務あるものではない。」
過去問・解説

(R2 予備 第39問 1)
所有権に基づく動産引渡請求訴訟において、被告が留置権の発生の原因となる事実を主張した場合には、被告が留置権を行使する意思を表明していないときであっても、裁判所は、被告が留置権を有することを判決の基礎とすることができる。

(正答)✕

(解説)
判例(最判昭27.11.27)は、「留置権のような権利抗弁にあっては、…たとい抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても権利者においてその権利を行使する意思を表明しない限り裁判所においてこれを斟酌することはできない…。」としている。
したがって、被告が留置権を行使する意思を表明していないとき、裁判所は、被告が留置権を有することを判決の基礎とすることができない。

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不法行為を理由とする損害賠償請求における過失相殺と当事者による主張の要否 最三小判昭和41年6月21日

概要
不法行為を理由とする損害賠償請求訴訟において、被害者に過失があると認めるときには、裁判所は、当事者からの主張を要しないで、過失相殺をすることができる。
判例
事案:不法行為を理由とする損害賠償請求にいて、被害者に過失があると認められる事案において、過失相殺と当事者による主張の要否が問題となった。

判旨:「不法行為による損害賠償の額を定めるにあたり、被害者に過失のあるときは、裁判所がこれをしんしゃくすることができることは民法722条の規定するところである。この規定によると、被害者の過失は賠償額の範囲に影響を及ぼすべき事実であるから、裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を判定するについて職権をもってこれをしんしゃくすることができると解すべきであって、賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しないものである(大審院判昭和2年(オ)802号・同3年8月1日民集7巻648頁参照)。
 したがって、これと異なり、過失相殺にもいわゆる弁論主義の適用のあることを主張する論旨は、失当として排斥を免れない。」
過去問・解説

(R2 予備 第39問 5)
不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、被告が原告に損害の発生に関する過失があることの根拠となる事実を主張した場合には、被告が過失相殺を主張していないときであっても、裁判所は、過失相殺の結果を判決の基礎とすることができる。

(正答)〇

(解説)
判例(最判昭41.6.21)は、本肢と同種の事案において、「裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を判定するについて職権をもってこれをしんしゃくすることができると解すべきであって、賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しない…。」としている。

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