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短答判例
法的観点指摘義務 最一小判平成22年10月14日
概要
裁判所が、判決において、原告と被告が共に主張しておらず、従前の訴訟の経過からは予測が困難な法律構成である信義則上の義務違反を認める判断をする場合には、適切に釈明権を行使して、原告に信義則違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促すとともに、相手方に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものである。
判例
事案:裁判所が、判決において、原告と被告が共に主張しておらず、従前の訴訟の経過からは予測が困難な法律構成である信義則上の義務違反を認める判断をした事案において、釈明権の行使を怠った違法があるかが問題となった。
判旨:「記録によれば、本件訴訟の経過として、…本件は、第1審の第2回口頭弁論期日において弁論準備手続に付され、弁論準備手続期日において本件の争点は本件合意の存否である旨が確認され、第3回口頭弁論期日において、弁論準備手続の結果が陳述されるとともに、被上告人本人及び2名の証人の尋問が行われ、第4回口頭弁論期日において口頭弁論が終結されたこと、…第1審判決は、本件合意があったとは認められないとして被上告人の請求を棄却するものであったところ、これに対し、被上告人から控訴が提起されたこと、…原審の第1回口頭弁論期日において、控訴状、被上告人の準備書面(控訴理由が記載されたもの)及び上告人の答弁書が陳述されて口頭弁論が終結されたところ、控訴理由もそれに対する答弁も、専ら本件合意の存否に関するものであったこと、以上の事実が認められる。
…上記…のような訴訟の経過の下において、前記…のように信義則違反の点についての判断をするのであれば、原審としては、適切に釈明権を行使して、被上告人に信義則違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促すとともに、上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものである。とりわけ、原審の採った法律構成は、…上告人には、被上告人に対し、定年退職の1年前までに、定年規程を厳格に適用し、かつ、再雇用をしない旨を告知すべき信義則上の義務があったとした上、さらに、…具体的な告知の時から1年を経過するまでは、賃金支払義務との関係では、信義則上、定年退職の効果を主張することができないとする法律効果を導き出すというもので、従前の訴訟の経過等からは予測が困難であり、このような法律構成を採るのであれば、なおさら、その法律構成の適否を含め、上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものといわなければならない。
原審が、上記…のような訴訟の経過の下において、上記…のような措置をとることなく前記…のような判断をしたことには、釈明権の行使を怠った違法があるといわざるを得ず、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」
判旨:「記録によれば、本件訴訟の経過として、…本件は、第1審の第2回口頭弁論期日において弁論準備手続に付され、弁論準備手続期日において本件の争点は本件合意の存否である旨が確認され、第3回口頭弁論期日において、弁論準備手続の結果が陳述されるとともに、被上告人本人及び2名の証人の尋問が行われ、第4回口頭弁論期日において口頭弁論が終結されたこと、…第1審判決は、本件合意があったとは認められないとして被上告人の請求を棄却するものであったところ、これに対し、被上告人から控訴が提起されたこと、…原審の第1回口頭弁論期日において、控訴状、被上告人の準備書面(控訴理由が記載されたもの)及び上告人の答弁書が陳述されて口頭弁論が終結されたところ、控訴理由もそれに対する答弁も、専ら本件合意の存否に関するものであったこと、以上の事実が認められる。
…上記…のような訴訟の経過の下において、前記…のように信義則違反の点についての判断をするのであれば、原審としては、適切に釈明権を行使して、被上告人に信義則違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促すとともに、上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものである。とりわけ、原審の採った法律構成は、…上告人には、被上告人に対し、定年退職の1年前までに、定年規程を厳格に適用し、かつ、再雇用をしない旨を告知すべき信義則上の義務があったとした上、さらに、…具体的な告知の時から1年を経過するまでは、賃金支払義務との関係では、信義則上、定年退職の効果を主張することができないとする法律効果を導き出すというもので、従前の訴訟の経過等からは予測が困難であり、このような法律構成を採るのであれば、なおさら、その法律構成の適否を含め、上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものといわなければならない。
原審が、上記…のような訴訟の経過の下において、上記…のような措置をとることなく前記…のような判断をしたことには、釈明権の行使を怠った違法があるといわざるを得ず、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」
過去問・解説
(R7 予備 第38問 イ)
裁判所が、判決において、原告と被告が共に主張しておらず、従前の訴訟の経過からは予測が困難な法律構成である信義則上の義務違反を認める判断をする場合に、当該信義則上の義務違反を基礎付ける事実が主張されていれば、原告に信義則上の義務違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促す措置がとられていなくても、釈明権の行使を怠った違法があるとはいえない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平22.10.14)は、本肢と同種の事案において、「信義則違反の点についての判断をするのであれば、原審としては、適切に釈明権を行使して、被上告人に信義則違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促すとともに、上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものである。」として、釈明権の行使を怠った違法があるとしている。