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刑事訴訟法 訴因変更の要否 最三小決平成13年4月11日
概要
① 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的なものである上、実行行為者の判示が「A又は被告人あるいはその両名」という択一的なものであっても、その事件が被告人とAの2名の共謀による犯行であるときには、殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえない。
② 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に、それと実質的に異なる認定をするには、原則として訴因変更手続を要するが、被告人に不意打ちを与えるものではなく、かつ、認定される事実が訴因に記載された事実に比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定しても違法ではない。
③ 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に、訴因変更手続を経ることなく実行行為者がA又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことは、訴因と認定との間で共犯者の範囲に変わりがなく、被告人が1審の審理においてAとの共謀及び実行行為への関与を否定し、実行行為者は被告人である旨のAの証言につき自己の責任を被告人に転嫁するものであると主張するなどした判示の事情の下においては、違法とはいえない。
② 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に、それと実質的に異なる認定をするには、原則として訴因変更手続を要するが、被告人に不意打ちを与えるものではなく、かつ、認定される事実が訴因に記載された事実に比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定しても違法ではない。
③ 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に、訴因変更手続を経ることなく実行行為者がA又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことは、訴因と認定との間で共犯者の範囲に変わりがなく、被告人が1審の審理においてAとの共謀及び実行行為への関与を否定し、実行行為者は被告人である旨のAの証言につき自己の責任を被告人に転嫁するものであると主張するなどした判示の事情の下においては、違法とはいえない。
判例
事案:殺人事件の共同正犯の事件について、裁判所が、訴因において実行行為者が明示されたにもかかわらず、実行行為者について、被告人と共犯者の択一的認定をした事案において、①殺害の日時・場所・方法の判示が概括的で実行行為者の判示が択一的であり、罪となるべき事実の判示として不十分でないか、②共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することの適否、及び、③共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に訴因変更手続を経ることなく実行行為者を択一的に認定したことの適法性が問題となった。
判旨:①「本件のうち殺人事件についてみると、その公訴事実は、当初、『被告人は、Aと共謀の上、昭和63年7月24日ころ、青森市a所在の産業廃棄物最終処分場付近道路に停車中の普通乗用自動車内において、Bに対し、殺意をもってその頸部をベルト様のもので絞めつけ、そのころ窒息死させて殺害した』というものであったが、被告人がAとの共謀の存在と実行行為への関与を否定して、無罪を主張したことから、その点に関する証拠調べが実施されたところ、検察官が第1審係属中に訴因変更を請求したことにより、『被告人は、Aと共謀の上、前同日午後8時ころから午後9時30分ころまでの間、青森市bc丁目所在の共済会館付近から前記最終処分場に至るまでの間の道路に停車中の普通乗用自動車内において、殺意をもって、被告人が、Bの頸部を絞めつけるなどし、同所付近で窒息死させて殺害した』旨の事実に変更された。この事実につき、第1審裁判所は、審理の結果、『被告人は、Aと共謀の上、前同日午後8時ころから翌25日未明までの間に、青森市内又はその周辺に停車中の自動車内において、A又は被告人あるいはその両名において、扼殺、絞殺又はこれに類する方法でBを殺害した』旨の事実を認定し、罪となるべき事実としてその旨判示した。まず、以上のような判示が殺人罪に関する罪となるべき事実の判示として十分であるかについて検討する。...上記判示は、殺害の日時・場所・方法が概括的なものであるほか、実行行為者が『A又は被告人あるいはその両名』という択一的なものであるにとどまるが、その事件が被告人とAの2名の共謀による犯行であるというのであるから、この程度の判示であっても、殺人罪の構成要件に該当すべき具体的事実を、それが構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにしているものというべきであって、罪となるべき事実の判示として不十分とはいえないものと解される。」
②「次に、実行行為者につき第1審判決が訴因変更手続を経ずに訴因と異なる認定をしたことに違法はないかについて検討する。訴因と認定事実とを対比すると、前記のとおり、犯行の態様と結果に実質的な差異がない上、共謀をした共犯者の範囲にも変わりはなく、そのうちのだれが実行行為者であるかという点が異なるのみである。そもそも、殺人罪の共同正犯の訴因としては、その実行行為者がだれであるかが明示されていないからといって、それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえないと考えられるから、訴因において実行行為者が明示された場合にそれと異なる認定をするとしても、審判対象の画定という見地からは、訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。とはいえ、...実行行為者がだれであるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な事項であるから、当該訴因の成否について争いがある場合等においては、争点の明確化などのため、検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ、検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、前記のとおり訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではないものと解すべきである。」
③「そこで、本件について検討すると、記録によれば、次のことが認められる。第1審公判においては、当初から、被告人とAとの間で被害者を殺害する旨の共謀が事前に成立していたか、両名のうち殺害行為を行った者がだれかという点が主要な争点となり、多数回の公判を重ねて証拠調べが行われた。その間、被告人は、Aとの共謀も実行行為への関与も否定したが、Aは、被告人との共謀を認めて被告人が実行行為を担当した旨証言し、被告人とAの両名で実行行為を行った旨の被告人の捜査段階における自白調書も取り調べられた。弁護人は、Aの証言及び被告人の自白調書の信用性等を争い、特に、Aの証言については、自己の責任を被告人に転嫁しようとするものであるなどと主張した。審理の結果、第1審裁判所は、被告人とAとの間で事前に共謀が成立していたと認め、その点では被告人の主張を排斥したものの、実行行為者については、被告人の主張を一部容れ、検察官の主張した被告人のみが実行行為者である旨を認定するに足りないとし、その結果、実行行為者がAのみである可能性を含む前記のような択一的認定をするにとどめた。以上によれば、第1審判決の認定は、被告人に不意打ちを与えるものとはいえず、かつ、訴因に比べて被告人にとってより不利益なものとはいえないから、実行行為者につき変更後の訴因で特定された者と異なる認定をするに当たって、更に訴因変更手続を経なかったことが違法であるとはいえない。したがって、罪となるべき事実の判示に理由不備の違法はなく、訴因変更を経ることなく実行行為者につき択一的認定をしたことに訴訟手続の法令違反はない...。」
判旨:①「本件のうち殺人事件についてみると、その公訴事実は、当初、『被告人は、Aと共謀の上、昭和63年7月24日ころ、青森市a所在の産業廃棄物最終処分場付近道路に停車中の普通乗用自動車内において、Bに対し、殺意をもってその頸部をベルト様のもので絞めつけ、そのころ窒息死させて殺害した』というものであったが、被告人がAとの共謀の存在と実行行為への関与を否定して、無罪を主張したことから、その点に関する証拠調べが実施されたところ、検察官が第1審係属中に訴因変更を請求したことにより、『被告人は、Aと共謀の上、前同日午後8時ころから午後9時30分ころまでの間、青森市bc丁目所在の共済会館付近から前記最終処分場に至るまでの間の道路に停車中の普通乗用自動車内において、殺意をもって、被告人が、Bの頸部を絞めつけるなどし、同所付近で窒息死させて殺害した』旨の事実に変更された。この事実につき、第1審裁判所は、審理の結果、『被告人は、Aと共謀の上、前同日午後8時ころから翌25日未明までの間に、青森市内又はその周辺に停車中の自動車内において、A又は被告人あるいはその両名において、扼殺、絞殺又はこれに類する方法でBを殺害した』旨の事実を認定し、罪となるべき事実としてその旨判示した。まず、以上のような判示が殺人罪に関する罪となるべき事実の判示として十分であるかについて検討する。...上記判示は、殺害の日時・場所・方法が概括的なものであるほか、実行行為者が『A又は被告人あるいはその両名』という択一的なものであるにとどまるが、その事件が被告人とAの2名の共謀による犯行であるというのであるから、この程度の判示であっても、殺人罪の構成要件に該当すべき具体的事実を、それが構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにしているものというべきであって、罪となるべき事実の判示として不十分とはいえないものと解される。」
②「次に、実行行為者につき第1審判決が訴因変更手続を経ずに訴因と異なる認定をしたことに違法はないかについて検討する。訴因と認定事実とを対比すると、前記のとおり、犯行の態様と結果に実質的な差異がない上、共謀をした共犯者の範囲にも変わりはなく、そのうちのだれが実行行為者であるかという点が異なるのみである。そもそも、殺人罪の共同正犯の訴因としては、その実行行為者がだれであるかが明示されていないからといって、それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえないと考えられるから、訴因において実行行為者が明示された場合にそれと異なる認定をするとしても、審判対象の画定という見地からは、訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。とはいえ、...実行行為者がだれであるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な事項であるから、当該訴因の成否について争いがある場合等においては、争点の明確化などのため、検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ、検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、前記のとおり訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではないものと解すべきである。」
③「そこで、本件について検討すると、記録によれば、次のことが認められる。第1審公判においては、当初から、被告人とAとの間で被害者を殺害する旨の共謀が事前に成立していたか、両名のうち殺害行為を行った者がだれかという点が主要な争点となり、多数回の公判を重ねて証拠調べが行われた。その間、被告人は、Aとの共謀も実行行為への関与も否定したが、Aは、被告人との共謀を認めて被告人が実行行為を担当した旨証言し、被告人とAの両名で実行行為を行った旨の被告人の捜査段階における自白調書も取り調べられた。弁護人は、Aの証言及び被告人の自白調書の信用性等を争い、特に、Aの証言については、自己の責任を被告人に転嫁しようとするものであるなどと主張した。審理の結果、第1審裁判所は、被告人とAとの間で事前に共謀が成立していたと認め、その点では被告人の主張を排斥したものの、実行行為者については、被告人の主張を一部容れ、検察官の主張した被告人のみが実行行為者である旨を認定するに足りないとし、その結果、実行行為者がAのみである可能性を含む前記のような択一的認定をするにとどめた。以上によれば、第1審判決の認定は、被告人に不意打ちを与えるものとはいえず、かつ、訴因に比べて被告人にとってより不利益なものとはいえないから、実行行為者につき変更後の訴因で特定された者と異なる認定をするに当たって、更に訴因変更手続を経なかったことが違法であるとはいえない。したがって、罪となるべき事実の判示に理由不備の違法はなく、訴因変更を経ることなく実行行為者につき択一的認定をしたことに訴訟手続の法令違反はない...。」
過去問・解説
(H18 司法 第28問 1)
訴因は、裁判所に対し、審判の対象を限定するという機能を有するとともに、被告人に対し、防御の範囲を示すという機能を有するという見解は、判例と明らかに矛盾する。
訴因は、裁判所に対し、審判の対象を限定するという機能を有するとともに、被告人に対し、防御の範囲を示すという機能を有するという見解は、判例と明らかに矛盾する。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平13.4.11)は、「訴因において実行行為者が明示された場合にそれと異なる認定をするとしても、審判対象の画定という見地からは、訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。」として、訴因が、審判の対象を限定するという機能を有することを前提としている。
また、その上で、「実行行為者がだれであるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な事項であるから、当該訴因の成否について争いがある場合等においては、争点の明確化などのため、検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ、検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要する…。」として、訴因が、被告人に対し、防御の範囲を示すという機能を有することも否定していない。
したがって、訴因は、裁判所に対し、審判の対象を限定するという機能を有するとともに、被告人に対し、防御の範囲を示すという機能を有するという見解は、判例と明らかに矛盾するとはいえない。
判例(最決平13.4.11)は、「訴因において実行行為者が明示された場合にそれと異なる認定をするとしても、審判対象の画定という見地からは、訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。」として、訴因が、審判の対象を限定するという機能を有することを前提としている。
また、その上で、「実行行為者がだれであるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な事項であるから、当該訴因の成否について争いがある場合等においては、争点の明確化などのため、検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ、検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要する…。」として、訴因が、被告人に対し、防御の範囲を示すという機能を有することも否定していない。
したがって、訴因は、裁判所に対し、審判の対象を限定するという機能を有するとともに、被告人に対し、防御の範囲を示すという機能を有するという見解は、判例と明らかに矛盾するとはいえない。
(H18 司法 第28問 2)
刑事訴訟法は、訴因変更の要否の基準を直接に定めていないので、訴因制度の趣旨を踏まえつつ、訴因の果たすべき機能から、その基準を導き出すべきであるという見解は、判例と明らかに矛盾する。
刑事訴訟法は、訴因変更の要否の基準を直接に定めていないので、訴因制度の趣旨を踏まえつつ、訴因の果たすべき機能から、その基準を導き出すべきであるという見解は、判例と明らかに矛盾する。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平13.4.11)は、「審判対象の画定という見地からは、訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。とはいえ、...実行行為者がだれであるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な事項であるから、当該訴因の成否について争いがある場合等においては、争点の明確化などのため、検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ、検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、前記のとおり訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」として、「審判対象の画定」や、「被告人の防御にとって重要な事項である」という訴因の果たすべき機能から、基準を導き出している。
したがって、刑事訴訟法は、訴因変更の要否の基準を直接に定めていないので、訴因制度の趣旨を踏まえつつ、訴因の果たすべき機能から、その基準を導き出すべきであるという見解は、判例と明らかに矛盾するとはいえない。
判例(最決平13.4.11)は、「審判対象の画定という見地からは、訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。とはいえ、...実行行為者がだれであるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な事項であるから、当該訴因の成否について争いがある場合等においては、争点の明確化などのため、検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ、検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、前記のとおり訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」として、「審判対象の画定」や、「被告人の防御にとって重要な事項である」という訴因の果たすべき機能から、基準を導き出している。
したがって、刑事訴訟法は、訴因変更の要否の基準を直接に定めていないので、訴因制度の趣旨を踏まえつつ、訴因の果たすべき機能から、その基準を導き出すべきであるという見解は、判例と明らかに矛盾するとはいえない。
(H18 司法 第28問 3)
裁判所が、訴因の特定に不可欠な事項について、訴因の記載と実質的に異なる事実を認定しようとする場合には、常に訴因変更手続が必要であるという見解は、判例と明らかに矛盾する。
裁判所が、訴因の特定に不可欠な事項について、訴因の記載と実質的に異なる事実を認定しようとする場合には、常に訴因変更手続が必要であるという見解は、判例と明らかに矛盾する。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平13.4.11)は、「検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、...訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」として、原則と例外を示している。そして、この例外は、訴因の記載と実質的に異なる事実を認定しようとしている事項が、「訴因の記載として不可欠な事項ではない」ことを前提としている。
したがって、訴因の特定に不可欠な事項について、訴因の記載と実質的に異なる事実を認定しようとする場合には、原則の考え方が常に妥当すると考えることもできるため、本肢の見解は、判例と明らかに矛盾するとはいえない。
判例(最決平13.4.11)は、「検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、...訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」として、原則と例外を示している。そして、この例外は、訴因の記載と実質的に異なる事実を認定しようとしている事項が、「訴因の記載として不可欠な事項ではない」ことを前提としている。
したがって、訴因の特定に不可欠な事項について、訴因の記載と実質的に異なる事実を認定しようとする場合には、原則の考え方が常に妥当すると考えることもできるため、本肢の見解は、判例と明らかに矛盾するとはいえない。
(H18 司法 第28問 4)
共謀共同正犯の訴因において、共謀の日時、場所等が明示されていなくても、訴因の特定に欠けるところはないという立場に立ち、上記判例の論理に従えば、検察官が共謀の日時、場所を訴因に明示した場合、判決において、それと実質的に異なる認定をするには、必ずしも訴因変更手続を要しないという見解は、判例と明らかに矛盾する。
共謀共同正犯の訴因において、共謀の日時、場所等が明示されていなくても、訴因の特定に欠けるところはないという立場に立ち、上記判例の論理に従えば、検察官が共謀の日時、場所を訴因に明示した場合、判決において、それと実質的に異なる認定をするには、必ずしも訴因変更手続を要しないという見解は、判例と明らかに矛盾する。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平13.4.11)は、訴因変更について、「検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、...訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」としている。
そして、共謀共同正犯の訴因において、共謀の日時、場所等が明示されていなくても、訴因の特定に欠けるところはないという立場は、共謀の日時、場所等が明示が、「訴因の記載として不可欠な事項ではない」とする立場である。
したがって、例外的に訴因変更手続を要しない場合に該当しうるといえる。
よって、判例と明らかに矛盾するとは言えない。
判例(最決平13.4.11)は、訴因変更について、「検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、...訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」としている。
そして、共謀共同正犯の訴因において、共謀の日時、場所等が明示されていなくても、訴因の特定に欠けるところはないという立場は、共謀の日時、場所等が明示が、「訴因の記載として不可欠な事項ではない」とする立場である。
したがって、例外的に訴因変更手続を要しない場合に該当しうるといえる。
よって、判例と明らかに矛盾するとは言えない。
(H18 司法 第28問 5)
殺人の共同正犯の訴因における実行行為者の記載は、訴因の特定に不可欠な事項ではないが、いったん訴因に明示されると、常に訴因としての拘束力を有するという見解は、判例と明らかに矛盾する。
殺人の共同正犯の訴因における実行行為者の記載は、訴因の特定に不可欠な事項ではないが、いったん訴因に明示されると、常に訴因としての拘束力を有するという見解は、判例と明らかに矛盾する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平13.4.11)は、訴因変更の要否について、「検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、...訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」としている。
したがって、判例は、訴因の特定に不可欠な事項ではない場合については、一定の例外に該当すれば訴因としての拘束力を否定する立場に立っているといえ、上記見解は、判例と明らかに矛盾する。
判例(最決平13.4.11)は、訴因変更の要否について、「検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、...訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」としている。
したがって、判例は、訴因の特定に不可欠な事項ではない場合については、一定の例外に該当すれば訴因としての拘束力を否定する立場に立っているといえ、上記見解は、判例と明らかに矛盾する。
(H21 司法 第32問 イ)
【事例】
Vの死体が発見され、司法解剖の結果、Vの死因が頸部圧迫による窒息であることが判明した。その後、警察は、甲及び乙が共謀してVを殺害した事実により、甲を逮捕したが、乙は逃亡してその所在が判明しなかった。甲は、取調べに対し、自分はVの殺害とは無関係である旨供述した。捜査を尽くしたところ、検察官は、甲及び乙が共謀してVを殺害し、殺害の実行行為者が甲であると認定したが、犯行日時については、「平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間」、犯行場所については、「H市内又はその周辺」、犯行方法については、「何らかの方法で頸部を圧迫した」としか認定できなかった。そのため、検察官は、甲の勾留満期日に、以下の<公訴事実>で甲を起訴した。
<公訴事実>
被告人甲は、乙と共謀の上、平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間、H市内又はその周辺において、Vに対し、殺意をもって、何らかの方法でVの頸部を圧迫し、よって、そのころ、同所付近において、Vを頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。
検察官は、殺人罪の共同正犯の訴因につき、その実行行為者がだれであるかを明示しなければならないので、実行行為者を甲とする記載がない<公訴事実>は、訴因の特定に欠ける。
【事例】
Vの死体が発見され、司法解剖の結果、Vの死因が頸部圧迫による窒息であることが判明した。その後、警察は、甲及び乙が共謀してVを殺害した事実により、甲を逮捕したが、乙は逃亡してその所在が判明しなかった。甲は、取調べに対し、自分はVの殺害とは無関係である旨供述した。捜査を尽くしたところ、検察官は、甲及び乙が共謀してVを殺害し、殺害の実行行為者が甲であると認定したが、犯行日時については、「平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間」、犯行場所については、「H市内又はその周辺」、犯行方法については、「何らかの方法で頸部を圧迫した」としか認定できなかった。そのため、検察官は、甲の勾留満期日に、以下の<公訴事実>で甲を起訴した。
<公訴事実>
被告人甲は、乙と共謀の上、平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間、H市内又はその周辺において、Vに対し、殺意をもって、何らかの方法でVの頸部を圧迫し、よって、そのころ、同所付近において、Vを頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。
検察官は、殺人罪の共同正犯の訴因につき、その実行行為者がだれであるかを明示しなければならないので、実行行為者を甲とする記載がない<公訴事実>は、訴因の特定に欠ける。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平13.4.11)は、「殺人罪の共同正犯の訴因としては、その実行行為者がだれであるかが明示されていないからといって、それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえないと考えられる...。」としている。
したがって、<公訴事実>に実行行為者を甲とする記載がなくとも、訴因の特定に欠けるとはいえない。
判例(最決平13.4.11)は、「殺人罪の共同正犯の訴因としては、その実行行為者がだれであるかが明示されていないからといって、それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえないと考えられる...。」としている。
したがって、<公訴事実>に実行行為者を甲とする記載がなくとも、訴因の特定に欠けるとはいえない。
(H21 司法 第32問 ウ)
【事例】
Vの死体が発見され、司法解剖の結果、Vの死因が頸部圧迫による窒息であることが判明した。その後、警察は、甲及び乙が共謀してVを殺害した事実により、甲を逮捕したが、乙は逃亡してその所在が判明しなかった。甲は、取調べに対し、自分はVの殺害とは無関係である旨供述した。捜査を尽くしたところ、検察官は、甲及び乙が共謀してVを殺害し、殺害の実行行為者が甲であると認定したが、犯行日時については、「平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間」、犯行場所については、「H市内又はその周辺」、犯行方法については、「何らかの方法で頸部を圧迫した」としか認定できなかった。そのため、検察官は、甲の勾留満期日に、以下の<公訴事実>で甲を起訴した。
<公訴事実>
被告人甲は、乙と共謀の上、平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間、H市内又はその周辺において、Vに対し、殺意をもって、何らかの方法でVの頸部を圧迫し、よって、そのころ、同所付近において、Vを頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。
共謀共同正犯における共謀の日時、場所、内容等は訴因の明示に不可欠であるので、それらの記載がない<公訴事実>は、訴因の特定に欠けるため、裁判所は、検察官に釈明を求めるまでもなく、公訴棄却の判決をすることができる。
【事例】
Vの死体が発見され、司法解剖の結果、Vの死因が頸部圧迫による窒息であることが判明した。その後、警察は、甲及び乙が共謀してVを殺害した事実により、甲を逮捕したが、乙は逃亡してその所在が判明しなかった。甲は、取調べに対し、自分はVの殺害とは無関係である旨供述した。捜査を尽くしたところ、検察官は、甲及び乙が共謀してVを殺害し、殺害の実行行為者が甲であると認定したが、犯行日時については、「平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間」、犯行場所については、「H市内又はその周辺」、犯行方法については、「何らかの方法で頸部を圧迫した」としか認定できなかった。そのため、検察官は、甲の勾留満期日に、以下の<公訴事実>で甲を起訴した。
<公訴事実>
被告人甲は、乙と共謀の上、平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間、H市内又はその周辺において、Vに対し、殺意をもって、何らかの方法でVの頸部を圧迫し、よって、そのころ、同所付近において、Vを頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。
共謀共同正犯における共謀の日時、場所、内容等は訴因の明示に不可欠であるので、それらの記載がない<公訴事実>は、訴因の特定に欠けるため、裁判所は、検察官に釈明を求めるまでもなく、公訴棄却の判決をすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平13.4.11)は、「公訴事実は、…『被告人は、Aと共謀の上、前同日午後8時ころから午後9時30分ころまでの間、青森市bc丁目所在の共済会館付近から前記最終処分場に至るまでの間の道路に停車中の普通乗用自動車内において、殺意をもって、被告人が、Bの頸部を絞めつけるなどし、同所付近で窒息死させて殺害した』旨の事実に変更された。この事実につき、第1審裁判所は、審理の結果、『被告人は、Aと共謀の上、前同日午後8時ころから翌25日未明までの間に、青森市内又はその周辺に停車中の自動車内において、A又は被告人あるいはその両名において、扼殺、絞殺又はこれに類する方法でBを殺害した』旨の事実を認定し、罪となるべき事実としてその旨判示した。...上記判示は、…罪となるべき事実の判示として不十分とはいえない…。」として、単に「共謀の上」とのみ記載され、共謀の日時、場所、内容等の記載されていない訴因を前提に審理・判断を行っている。
したがって、共謀共同正犯における共謀の日時、場所、内容等は訴因の明示に不可欠なものではないと解されている。
判例(最決平13.4.11)は、「公訴事実は、…『被告人は、Aと共謀の上、前同日午後8時ころから午後9時30分ころまでの間、青森市bc丁目所在の共済会館付近から前記最終処分場に至るまでの間の道路に停車中の普通乗用自動車内において、殺意をもって、被告人が、Bの頸部を絞めつけるなどし、同所付近で窒息死させて殺害した』旨の事実に変更された。この事実につき、第1審裁判所は、審理の結果、『被告人は、Aと共謀の上、前同日午後8時ころから翌25日未明までの間に、青森市内又はその周辺に停車中の自動車内において、A又は被告人あるいはその両名において、扼殺、絞殺又はこれに類する方法でBを殺害した』旨の事実を認定し、罪となるべき事実としてその旨判示した。...上記判示は、…罪となるべき事実の判示として不十分とはいえない…。」として、単に「共謀の上」とのみ記載され、共謀の日時、場所、内容等の記載されていない訴因を前提に審理・判断を行っている。
したがって、共謀共同正犯における共謀の日時、場所、内容等は訴因の明示に不可欠なものではないと解されている。
(H21 司法 第32問 オ)
【事例】
Vの死体が発見され、司法解剖の結果、Vの死因が頸部圧迫による窒息であることが判明した。その後、警察は、甲及び乙が共謀してVを殺害した事実により、甲を逮捕したが、乙は逃亡してその所在が判明しなかった。甲は、取調べに対し、自分はVの殺害とは無関係である旨供述した。捜査を尽くしたところ、検察官は、甲及び乙が共謀してVを殺害し、殺害の実行行為者が甲であると認定したが、犯行日時については、「平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間」、犯行場所については、「H市内又はその周辺」、犯行方法については、「何らかの方法で頸部を圧迫した」としか認定できなかった。そのため、検察官は、甲の勾留満期日に、以下の<公訴事実>で甲を起訴した。
<公訴事実>
被告人甲は、乙と共謀の上、平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間、H市内又はその周辺において、Vに対し、殺意をもって、何らかの方法でVの頸部を圧迫し、よって、そのころ、同所付近において、Vを頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。
検察官が、<公訴事実>につき、「・・・殺意をもって、被告人甲が、何らかの方法で・・・」と殺害の実行行為者を甲と特定する旨の訴因変更をした後、裁判所が、その実行行為者につき、「被告人甲又は乙あるいはその両名において」と択一的に認定するには、必ず訴因変更の手続を経なければならず、その手続を経ないで認定した場合には訴訟手続の法令違反がある。
【事例】
Vの死体が発見され、司法解剖の結果、Vの死因が頸部圧迫による窒息であることが判明した。その後、警察は、甲及び乙が共謀してVを殺害した事実により、甲を逮捕したが、乙は逃亡してその所在が判明しなかった。甲は、取調べに対し、自分はVの殺害とは無関係である旨供述した。捜査を尽くしたところ、検察官は、甲及び乙が共謀してVを殺害し、殺害の実行行為者が甲であると認定したが、犯行日時については、「平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間」、犯行場所については、「H市内又はその周辺」、犯行方法については、「何らかの方法で頸部を圧迫した」としか認定できなかった。そのため、検察官は、甲の勾留満期日に、以下の<公訴事実>で甲を起訴した。
<公訴事実>
被告人甲は、乙と共謀の上、平成〇年3月15日ころから同月18日ころまでの間、H市内又はその周辺において、Vに対し、殺意をもって、何らかの方法でVの頸部を圧迫し、よって、そのころ、同所付近において、Vを頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。
検察官が、<公訴事実>につき、「・・・殺意をもって、被告人甲が、何らかの方法で・・・」と殺害の実行行為者を甲と特定する旨の訴因変更をした後、裁判所が、その実行行為者につき、「被告人甲又は乙あるいはその両名において」と択一的に認定するには、必ず訴因変更の手続を経なければならず、その手続を経ないで認定した場合には訴訟手続の法令違反がある。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平13.4.11)は、「実行行為者がだれであるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な事項であるから、…検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、…被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」としている。
したがって、「殺意をもって、被告人甲が、何らかの方法で」と殺害の実行行為者を甲と特定する旨の訴因に対して、訴因変更手続を経ることなくして、裁判所が、その実行行為者につき、「被告人甲又は乙あるいはその両名において」と択一的に認定することも、許容されうる。
判例(最決平13.4.11)は、「実行行為者がだれであるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な事項であるから、…検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、…被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではない…。」としている。
したがって、「殺意をもって、被告人甲が、何らかの方法で」と殺害の実行行為者を甲と特定する旨の訴因に対して、訴因変更手続を経ることなくして、裁判所が、その実行行為者につき、「被告人甲又は乙あるいはその両名において」と択一的に認定することも、許容されうる。
(H24 共通 第37問 エ)
【事例】
外国人である甲、乙、丙、丁及び戊は、共謀の上、平成23年4月1日、H県I市内において、被害者Vに対し、その顔面を多数回殴打するなどの暴行を加えてバッグ1個を強取したとして強盗罪によりH地方裁判所に起訴された。ちなみに、甲、乙、丙、丁及び戊は、いずれも、家庭裁判所に送致されることなく、成人として起訴された。その後、同年7月1日に開かれた第1回公判期日において、乙、丙、丁及び戊については、成人であることに間違いないことが確認されたが、甲については、18歳であることが判明した。また、同公判において、結審した。
裁判所は、甲、乙及び丙については、強盗罪の共同正犯である旨の心証を抱いたが、丁については、「公訴事実記載のとおり、甲、乙及び丙と共にVに対してその顔面を多数回殴打するなどの暴行を加えたことに間違いない。しかし、これは、Vを痛めつけるために行ったものであり、Vからバッグ1個を奪うためではない。Vからバッグ1個等財物を奪う話は誰からも聞いたこともない。」との丁の公判廷での供述のとおり、強盗罪の共謀までは認められず、前記強盗の手段である暴行につき、甲、乙及び丙と共に実行行為に関与したものとして共同暴行(暴力行為等処罰に関する法律第1条違反)の共同正犯にとどまる旨の心証を抱いた。さらに、戊については、犯罪の証明がない旨の心証を抱いた。
裁判所は、丁につき、強盗罪の訴因から暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の訴因に変更する手続を採っていないことから、有罪の言渡しをする余地はない。
【事例】
外国人である甲、乙、丙、丁及び戊は、共謀の上、平成23年4月1日、H県I市内において、被害者Vに対し、その顔面を多数回殴打するなどの暴行を加えてバッグ1個を強取したとして強盗罪によりH地方裁判所に起訴された。ちなみに、甲、乙、丙、丁及び戊は、いずれも、家庭裁判所に送致されることなく、成人として起訴された。その後、同年7月1日に開かれた第1回公判期日において、乙、丙、丁及び戊については、成人であることに間違いないことが確認されたが、甲については、18歳であることが判明した。また、同公判において、結審した。
裁判所は、甲、乙及び丙については、強盗罪の共同正犯である旨の心証を抱いたが、丁については、「公訴事実記載のとおり、甲、乙及び丙と共にVに対してその顔面を多数回殴打するなどの暴行を加えたことに間違いない。しかし、これは、Vを痛めつけるために行ったものであり、Vからバッグ1個を奪うためではない。Vからバッグ1個等財物を奪う話は誰からも聞いたこともない。」との丁の公判廷での供述のとおり、強盗罪の共謀までは認められず、前記強盗の手段である暴行につき、甲、乙及び丙と共に実行行為に関与したものとして共同暴行(暴力行為等処罰に関する法律第1条違反)の共同正犯にとどまる旨の心証を抱いた。さらに、戊については、犯罪の証明がない旨の心証を抱いた。
裁判所は、丁につき、強盗罪の訴因から暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の訴因に変更する手続を採っていないことから、有罪の言渡しをする余地はない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平13.4.11)は、「検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、...少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる…認定することも違法ではない…。」としている。
暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の訴因は強盗罪の訴因の一部を構成するものであり、訴因変更を経ずに有罪を認定したとしても、被告人にとって不利益ではなく、不意打ちを与えるものではない。
したがって、裁判所は、丁につき、強盗罪の訴因から暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の訴因に変更する手続を採っていなくても、有罪の言渡しをする余地がある。
判例(最決平13.4.11)は、「検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、...少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる…認定することも違法ではない…。」としている。
暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の訴因は強盗罪の訴因の一部を構成するものであり、訴因変更を経ずに有罪を認定したとしても、被告人にとって不利益ではなく、不意打ちを与えるものではない。
したがって、裁判所は、丁につき、強盗罪の訴因から暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の訴因に変更する手続を採っていなくても、有罪の言渡しをする余地がある。