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刑事訴訟法 現場指示と伝聞例外 最二小判昭和36年5月26日

概要
①捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書は、たとえ被告人側においてこれを証拠とすることに同意しなくても、検証調書について321条3項に規定するところと同一の条件の下に、これを証拠とすることができる。
②実況見分の手段として被疑者、被害者その他の者をこれに立ち会わせ、立会人の指示説明としてそれらの者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述者の署名押印を必要としない。
③右実況見分調書は、あらためてその立会人を公判期日において尋問する機会を被告人に与えなくても、これを証拠とすることができる。
判例
事案:原審が実況見分調書を証拠採用した事案において、①実況見分調書に適用される伝聞例外の条項、②実況見分調書における立会人の供述記載とその署名押印の要否、及び③立会人の供述を記載した実況見分調書を証拠とすることと立会人喚問の要否が問題となった。

判旨:①「捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も刑訴321条3項所定の書面に包含されるものと解するを相当とすることは昭和35年9月8日第一小法廷判決(刑集14巻11号1437頁)の判示するところである。従って、かかる実況見分調書は、たとえ被告人側においてこれを証拠とすることに同意しなくても、検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる...。」
 ②「捜査機関は任意処分として検証(実況見分)を行うに当り必要があると認めるときは、被疑者、被害者その他の者を立ち会わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させることができ、そうしてその指示、説明を該実況見分調書に記載することができるが、右の如く立会人の指示、説明を求めるのは、要するに、実況見分の1つの手段であるに過ぎず、被疑者及び被疑者以外の者を取り調べ、その供述を求めるのとは性質を異にし、従って、右立会人の指示、説明を実況見分調書に記載するのは結局実況見分の結果を記載するに外ならず、被疑者及び被疑者以外の者の供述としてこれを録取するのとは異なるのである。従って、立会人の指示説明として被疑者又は被疑者以外の者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述をした立会人の署名押印を必要としないものと解すべく(昭和5年3月20日大審院判決、刑集9巻4号221頁、同9年1月17日大審院判決、刑集13巻1号1頁参照)、これと同旨に出た原判示(控訴趣意第1点についての判断後段)は正当である。」
 ③「そうして、刑訴321条3項が憲法37条2項前段に違反するものでないことは前掲昭和35年9月8日第一小法廷判決の判示するところであって、既にいわゆる実況見分調書が刑訴321条3項所定の書面に包含されるものと解される以上は、同調書は単にその作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述しさえすれば、それだけでもって、同条1項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができるのであり、従って、たとえ立会人として被疑者又は被疑者以外の者の指示説明を聴き、その供述を記載した実況見分調書を一体として、即ち右供述部分をも含めて証拠に引用する場合においても、右は該指示説明に基く見分の結果を記載した実況見分調書を刑訴321条3項所定の書面として採証するに外ならず、立会人たる被疑者又は被疑者以外の者の供述記載自体を採証するわけではないから。更めてこれらの立会人を証人として公判期日に喚問し、被告人に尋問の機会を与えることを必要としないと解すべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第34問 ア)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(a)の記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(a).甲は、同現場交差点南側の街灯を指さして「事故当時、この街灯は点灯していませんでした。」と説明した。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(a)の記載を、当該街灯が事故当時点灯していなかったという事実の認定に用いることができる。

(正答)

(解説)
まず、判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
また、同判例は、「捜査機関は任意処分として検証(実況見分)を行うに当り必要があると認めるときは、被疑者、被害者その他の者を立ち会わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させることができ、そうしてその指示、説明を該実況見分調書に記載することができるが、右の如く立会人の指示、説明を求めるのは、要するに、実況見分の1つの手段であるに過ぎず、被疑者及び被疑者以外の者を取り調べ、その供述を求めるのとは性質を異にし、従って、右立会人の指示、説明を実況見分調書に記載するのは結局実況見分の結果を記載するに外ならず、被疑者及び被疑者以外の者の供述としてこれを録取するのとは異なるのである。従って、立会人の指示説明として被疑者又は被疑者以外の者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述をした立会人の署名押印を必要としない…。」としている。
ここから、(a)の記載を、単に、「この街頭」を実況見分の対象とするための現場指示として用いるのであれば、実況見分調書自体の伝聞例外を満たせば足りるということになる。
しかし、本肢のように、当該街灯が事故当時点灯していなかったという事実を証明するために用いるのであれば、甲の、(a)における供述内容の真実性が問題になることから、322条1項の伝聞例外の要件を満たさなければならないということになる。
したがって、本肢では、甲の署名押印を欠く以上、322条1項の要件を満たすことはない。
よって、実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(a)の記載を、当該街灯が事故当時点灯していなかったという事実の認定に用いることは伝聞法則に反し許されない。

(H19 司法 第34問 イ)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(b)の記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(b).甲は、「私が被害者を初めて発見した場所は①地点でした。その時、被害者が立っていた場所は②地点でした。」と説明した。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(b)の記載を、甲が初めて被害者を発見したときに、被害者は②地点に立っていたという事実の認定に用いることができる。

(正答)

(解説)
まず、判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
また、同判例は、「捜査機関は任意処分として検証(実況見分)を行うに当り必要があると認めるときは、被疑者、被害者その他の者を立ち会わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させることができ、そうしてその指示、説明を該実況見分調書に記載することができるが、右の如く立会人の指示、説明を求めるのは、要するに、実況見分の1つの手段であるに過ぎず、被疑者及び被疑者以外の者を取り調べ、その供述を求めるのとは性質を異にし、従って、右立会人の指示、説明を実況見分調書に記載するのは結局実況見分の結果を記載するに外ならず、被疑者及び被疑者以外の者の供述としてこれを録取するのとは異なるのである。従って、立会人の指示説明として被疑者又は被疑者以外の者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述をした立会人の署名押印を必要としない…。」としている。
ここから、(b)の記載を、単に、①地点と②地点を実況見分の対象とするための現場指示として用いるのであれば、実況見分調書自体の伝聞例外を満たせば足りるということになる。
しかし、本肢のように、甲が初めて被害者を発見したときに、被害者は②地点に立っていたという事実を証明するために用いるのであれば、甲の、(b)における供述内容の真実性が問題になることから、322条1項の伝聞例外の要件を満たさなければならないということになる。
したがって、本肢では、甲の署名押印を欠く以上、322条1項の要件を満たすことはない。
よって、実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(b)の記載を、甲が初めて被害者を発見したときに、被害者は②地点に立っていたという事実の認定に用いることは、伝聞法則に反し許されない。

(H19 司法 第34問 ウ)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(b)および(c)の各記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(b).甲は、「私が被害者を初めて発見した場所は①地点でした。その時、被害者が立っていた場所は②地点でした。」と説明した。
(c).Kが、①地点と②地点の間の距離を測定したところ、10.7メートルであった。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(b)及び(c)の記載を、甲が初めて被害者を発見した場所として指示した地点とその際に被害者が立っていた場所として指示した地点の間の距離が10.7メートルであるという事実の認定に用いることができる。

(正答)

(解説)
まず、判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
また、同判例は、「捜査機関は任意処分として検証(実況見分)を行うに当り必要があると認めるときは、被疑者、被害者その他の者を立ち会わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させることができ、そうしてその指示、説明を該実況見分調書に記載することができるが、右の如く立会人の指示、説明を求めるのは、要するに、実況見分の1つの手段であるに過ぎず、被疑者及び被疑者以外の者を取り調べ、その供述を求めるのとは性質を異にし、従って、右立会人の指示、説明を実況見分調書に記載するのは結局実況見分の結果を記載するに外ならず、被疑者及び被疑者以外の者の供述としてこれを録取するのとは異なるのである。従って、立会人の指示説明として被疑者又は被疑者以外の者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述をした立会人の署名押印を必要としない…。」としている。
そして、(b)の記載は、(c)の記載にある距離を測るための現場指示であり、(c)の記載は、実況見分の結果であるところ、本肢の事実を認定するにあたっては、実況見分調書の伝聞例外を満たせば足りる。

(H19 司法 第34問 エ)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(d)の記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(d).Kが、①地点の運転席に着席した甲の目の高さに視線を置き、②地点方向を見たところ、道路脇に設置された看板の陰になって、②地点の路面は見えなかったが、高さ80センチメートルを超える部分は見えた。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(d)の記載を、①地点の運転席に着席していた甲からは②地点の路面を見通すことができないという事実の認定に用いることはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
(d)の記載は、まさに実況見分の結果を記載したものである。
したがって、実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(d)の記載を、①地点の運転席に着席していた甲からは②地点の路面を見通すことができないという事実の認定に用いることができる。

(H19 司法 第34問 オ)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(e)の記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(e).実況見分を実施している間、本件現場付近の人通りは多かった。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(e)の記載を、事故直後の午後7時から40分間、本件現場付近の人通りは多かったという事実の認定に用いることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
(e)の記載は、まさに実況見分の結果を記載したものである。
したがって、実況見分調書の伝聞例外を満たせば、実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(e)の記載を、事故直後の午後7時から40分間、本件現場付近の人通りは多かったという事実の認定に用いることができる。
総合メモ
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