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公判準備及び公判手続

第271条

条文
第271条(起訴状謄本の送達、不送達公訴提起の失効)
① 裁判所は、公訴の提起があったときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。
② 公訴の提起があった日から2箇月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起は、さかのぼってその効力を失う。
過去問・解説
(H23 共通 第31問 エ)
裁判員裁判の対象事件の被告人が、裁判員の参加する合議体ではなく、裁判官のみの合議体による審理を受けることを申し立てた場合には、地方裁判所は、当該事件を裁判官のみの合議体で取り扱う旨の決定をしなければならない。

(正答)

(解説)
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項は、「地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第3条の2の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。」として、裁判員裁判の対象事件について規定している。
しかし、被告人の明示の意思に反するときに、裁判員の参加する合議体により審理・裁判をすることはできないとする規定は存在しない。

(H27 予備 第18問 イ)
検察官が公訴を提起したときは、検察官が遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。

(正答)

(解説)
271条1項は、「裁判所は、公訴の提起があったときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。」と規定している。
したがって、起訴状の謄本を被告人に送達するのは、検察官ではなく裁判所である。

(H27 予備 第18問 エ)
起訴状の謄本が公訴の提起があった日から2か月以内に被告人に送達されなかったため、公訴が棄却され、その裁判が確定したとき、検察官は、同一事件について更に公訴を提起することができる。

(正答)

(解説)
338条は、柱書において、「左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。」と規定し、3号において、「公訴の提起があった事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。」を掲げている。
他方、271条2項は、「公訴の提起があった日から2か月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起は、さかのぼってその効力を失う。」と規定している。
公訴の提起がさかのぼってその効力を失った場合、同一事件について更に公訴を提起することは二重起訴に当たらず、許される。
総合メモ

第280条

条文
第280条(勾留に関する処分)
① 公訴の提起があった後第1回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
② 第199条若しくは第210条の規定により逮捕され、又は現行犯人として逮捕された被疑者でまだ勾留されていないものについて第204条又は第205条の時間の制限内に公訴の提起があった場合には、裁判官は、速やかに、被告事件を告げ、これに関する陳述を聴き、勾留状を発しないときは、直ちにその釈放を命じなければならない。
③ 前2項の裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

刑事訴訟規則第187条(勾留に関する処分をすべき裁判官・法第260条)
① 公訴の提起があった後第1回の公判期日までの勾留に関する処分は、公訴の提起を受けた裁判所の裁判官がこれをしなければならない。但し、事件の審判に関与すべき裁判官は、その処分をすることができない。
②〜⑤ 略
過去問・解説
(H25 共通 第23問 オ)
窃盗の事実で逮捕中に起訴された者につき、同じ事実で勾留する場合、その手続に関して裁判官の裁判が必要となる。

(正答)

(解説)
280条2項は、「逮捕され…た被疑者でまだ勾留されていないものについて…公訴の提起があった場合には、裁判官は、速やかに、被告事件を告げ、これに関する陳述を聴き、勾留状を発しないときは、直ちにその釈放を命じなければならない。」と規定している。
したがって、窃盗の事実で逮捕中に起訴された者につき、同じ事実で勾留する場合、その手続に関して裁判官の裁判が必要となる。

(H26 共通 第38問 オ)
公訴の提起があった後、第1回公判期日までの保釈に関する裁判は、公訴の提起を受けた裁判所の事件の審判に関与すべき裁判官のみが行う。

(正答)

(解説)
280条1項は、「公訴の提起があった後第1回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。」と規定している。
他方、刑事訴訟規則187条1項は、「公訴の提起があった後第1回の公判期日までの勾留に関する処分は、公訴の提起を受けた裁判所の裁判官がこれをしなければならない。但し、事件の審判に関与すべき裁判官は、その処分をすることができない。」と規定している。
したがって、公訴の提起があった後、第1回公判期日までの保釈に関する裁判は、事件の審判に関与すべき裁判官以外で行われる。

(H28 予備 第15問 イ)
検察官は、逮捕中の被疑者につき、公訴を提起することはできない。

(正答)

(解説)
280条2項は、「逮捕され…た被疑者でまだ勾留されていないものについて…公訴の提起があった場合には、裁判官は、速やかに、被告事件を告げ、これに関する陳述を聴き、勾留状を発しないときは、直ちにその釈放を命じなければならない。」と規定しており、逮捕中であってまだ勾留されていない被疑者について公訴の提起ができることを前提としている。
総合メモ

第286条

条文
第286条(被告人の出頭の権利義務)
 前3条に規定する場合の外、被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することはできない。

第284条(軽微事件における出頭義務の免除・代理人の出頭)
 50万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、5万円)以下の罰金又は科料に当たる事件については、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、被告人は、代理人を出頭させることができる。

第285条(出頭義務とそのたの免除)
① 拘留にあたる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告人の出頭がその権利の保護のため重要でないと認めるときは、被告人に対し公判期日に出頭しないことを許すことができる。
② 長期3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、5万円)を超える罰金に当たる事件の被告人は、第291条の手続をする場合及び判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、前項後段の例による。
過去問・解説
(H20 司法 第21問 キ)
第1審の公判期日における被告人の出頭義務の有無は、法定刑によって法律上当然にその結論が異なることにはならない。

(正答)

(解説)
286条は、「前3条に規定する場合の外、被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することはできない。」と規定しており、原則として、被告人は、公判期日に出席する義務を負う。
もっとも、その例外として、284条本文は、「50万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、5万円)以下の罰金又は科料に当たる事件については、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。」と規定している。
また、285条は、1項において、「拘留にあたる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告人の出頭がその権利の保護のため重要でないと認めるときは、被告人に対し公判期日に出頭しないことを許すことができる。」と規定しており、2項において、「長期3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円…を超える罰金に当たる事件の被告人は、第291条の手続をする場合及び判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、前項後段の例による。」と規定している。
したがって、第1審の公判期日における被告人の出頭義務の有無は、法定刑によって法律上当然にその結論が異なる場合がある。
総合メモ

第286条の2

条文
第286の2条(出頭拒否と公判手続)
 被告人が出頭しなければ開廷することができない場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、刑事施設職員による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる。
過去問・解説
(H27 予備 第19問 ア)
証人尋問が予定された公判期日に、勾留されている被告人が、召喚を受け、正当な理由がないのに出頭を拒否し、引致しようとする刑事施設職員に暴力を振るって出頭しないときは、裁判所は、被告人が出頭しないまま、その公判期日において証人尋問を行うことができる。

(正答)

(解説)
286条は、「前3条に規定する場合の外、被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することはできない。」と規定しており、原則として被告人が出頭していることを開廷の要件としている。
もっとも、286条の2は、「被告人が出頭しなければ開廷することができない場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、刑事施設職員による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる。」と規定している。
したがって、引致しようとする刑事施設職員に暴力を振るって出頭しないときは、「刑事施設職員による引致を著しく困難にしたとき」に当たり、裁判所は、被告人が出頭しないまま、その公判期日において証人尋問を行うことができる。
総合メモ

第289条

条文
第289条(必要的弁護)
① 死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
② 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなつたとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
③ 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。
過去問・解説
(H20 司法 第21問 エ)
必要的弁護事件であるか否かは、法定刑によって法律上当然にその結論が異なる。

(正答)

(解説)
289条1項は、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。」と規定している。
したがって、必要的弁護事件であるか否かは、法定刑によって法律上当然にその結論が異なる場合がある。

(H20 司法 第30問 エ)
必要的弁護事件において、弁護人が出頭しないときは、職権で弁護人を付することができるものの、弁護人が出頭しないおそれがあるにとどまるときは、職権で弁護人を付することはできない。

(正答)

(解説)
289条は、1項において、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。」として、必要的弁護事件について規定しており、3項において、「弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。」と規定している。
総合メモ

第290条の2

条文
第290条の2(公開の法廷での被害者特定事項の秘匿)
① 裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
 一 刑法第176条、第177条、第179条、第181条若しくは第182条の罪、同法第225条若しくは第226条の2第3項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、同法第227条第1項(同法第225条又は第226条の2第3項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第3項(わいせつの目的に係る部分に限る。)の罪若しくは同法第241条第1項若しくは第3項の罪又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
 二 児童福祉法第60条第1項の罪若しくは同法第34条第1項第9号に係る同法第60条第2項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第4条から第8条までの罪又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条から第6条までの罪に係る事件
 三 前2号に掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件
② 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
③ 裁判所は、第1項に定めるもののほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件を取り扱う場合において、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
④ 裁判所は、第1項又は前項の決定をした事件について、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至ったとき、第312条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第1項第1号若しくは第2号に掲げる事件に該当しなくなったとき又は同項第3号に掲げる事件若しくは前項に規定する事件に該当しないと認めるに至ったときは、決定で、第1項又は前項の決定を取り消さなければならない。
過去問・解説
(H23 司法 第32問 ア)
裁判所は、強制わいせつ罪(令和5年改正刑法下では不同意わいせつ罪)に係る事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができるが、この場合において、被害者は、あらかじめ、検察官にこの申出をしなければならない。

(正答)

(解説)
290条の2第1項は、柱書において、「裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。」と規定し、1号において、「刑法第176条…の罪」を掲げている。
また、同条2項前段は、「前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。」と規定している。

(R1 予備 第20問 ア)
強制わいせつ(令和5年改正刑法下では不同意わいせつ)致死事件の被害者の兄弟姉妹は、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないよう申し出ることはできない。

(正答)

(解説)
290条の2第1項は、柱書において、「裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。」と規定し、1号において、「刑法…第181条…の罪」を掲げている。
したがって、「被害者が死亡した場合…におけるその兄弟姉妹」として、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないよう申し出ることができる。
総合メモ

第290条の3

条文
第290条の3(公開の法廷での証人等特定事項の秘匿)
① 裁判所は、次に掲げる場合において、証人、鑑定人、通訳人、翻訳人又は供述録取書等(供述書、供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であって供述を記録したものをいう。以下同じ。)の供述者(以下この項において「証人等」という。)から申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、証人等特定事項(氏名及び住所その他の当該証人等を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
 一 証人等特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより証人等若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき。
 二 前号に掲げる場合のほか、証人等特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより証人等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき。
② 裁判所は、前項の決定をした事件について、証人等特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至ったときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。        
過去問・解説
(R4 予備 第22問 オ)
裁判所は、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることはできるが、証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に係る特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることはできない。

(正答)

(解説)
290条の2は、「裁判所は、…被害者特定事項…を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。」と規定している。
他方、290条の3第1項柱書は、「裁判所は、次に掲げる場合において、証人、鑑定人、通訳人、翻訳人…から申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、証人等特定事項…を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。」と規定している。
総合メモ

第291条

条文
第291条(冒頭手続)
① 検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。
② 第290条の2第1項又は第3項の決定があったときは、前項の起訴状の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。
③ 前条第1項の決定があった場合における第1項の起訴状の朗読についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
④ 裁判長は、起訴状の朗読が終った後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。

刑事訴訟規則第196条(人定質問)
裁判長は、検察官の起訴状の朗読に先だち、被告人に対し、その人違でないことを確めるに足りる事項を問わなければならない。

刑事訴訟規則第197条(被告人の権利保護のための告知事項・法第291条)
① 裁判長は、起訴状の朗読が終った後、被告人に対し、終始沈黙し又個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨の外、陳述をすることもできる旨及び陳述をすれば自己に不利益な証拠ともなり又利益な証拠ともなるべき旨を告げなければならない。 
② 略
過去問・解説
(H23 共通 第30問 ア)
裁判長「それでは開廷します。被告人は証言台の前に立ちなさい。」
裁判長「名前は何と言いますか。」①
被告人「甲と言います。」
①は、裁判長が、被告人として出頭している者が起訴状に表示された者と同一であるかどうかを確かめるために行った質問の一環であり、こうした人定質問を行うことは法令上要求されている。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則196条は、「裁判長は、検察官の起訴状の朗読に先だち、被告人に対し、その人違でないことを確めるに足りる事項を問わなければならない。」と規定している。
したがって、①のように、裁判長が、被告人として出頭している者が起訴状に表示された者と同一であるかどうかを確かめるために行った人定質問を行うことは、法令上要求されている。

(H23 共通 第30問 イ)
裁判長「それでは、検察官、起訴状を朗読してください。」
検察官「公訴事実。被告人は、平成20年6月10日ころ、H市I町1番被告人方において、Vに対し、殺意をもって、持っていたナイフでその胸部を突き刺し、よって、同日ころ、同所において、同人を胸部刺傷に基づく失血により死亡させて殺害したものである。罪名及び罰条。殺人。刑法第199条。」②
②は、法令上、検察官が、裁判長の訴訟指揮に基づき、起訴状に記載された公訴事実を要約して告げる方法でも行うことができる。

(正答)

(解説)
291条1項は、「検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。」と規定しており、これに例外は規定されていない。
したがって、②は、法令上、検察官が、裁判長の訴訟指揮に基づき、起訴状に記載された公訴事実を要約して告げる方法で行うことはできない。

(H23 共通 第30問 ウ)
裁判長「被告人には黙秘権という権利があります。被告人は終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができます。また、言いたいことを言うことができますが、この公判廷での被告人の陳述は、被告人にとって不利益な証拠とも利益な証拠ともなることを承知してください。」③
③は、裁判長が、被告人に対し、言いたいことを言うことができることや、公判廷での陳述が被告人にとって不利益な証拠とも利益な証拠ともなることを告げなくても、法令に違反するものではない。

(正答)

(解説)
291条4項は、「裁判長は、起訴状の朗読が終った後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨…を告げ…なければならない。」と規定している。
したがって、③は、裁判長が、被告人に対し、言いたいことを言うことができることや、公判廷での陳述が被告人にとって不利益な証拠とも利益な証拠ともなることを告げなった場合、291条4項に違反する。

(H23 共通 第30問 エ)
裁判長「それでは、検察官、起訴状を朗読してください。」
検察官「公訴事実。被告人は、平成20年6月10日ころ、H市I町1番被告人方において、Vに対し、殺意をもって、持っていたナイフでその胸部を突き刺し、よって、同日ころ、同所において、同人を胸部刺傷に基づく失血により死亡させて殺害したものである。罪名及び罰条。殺人。刑法第199条。」
裁判長「被告人には黙秘権という権利があります。被告人は終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができます。また、言いたいことを言うことができますが、この公判廷での被告人の陳述は、被告人にとって不利益な証拠とも利益な証拠ともなることを承知してください。」
裁判長「それでは、まず被告人に聞きますが、今、検察官が述べた内容に間違いありませんか。」
被告人「間違いありません。」
裁判長「弁護人、御意見はいかがですか。」④
弁護人「被告人と同じです。」
裁判長「それでは、これで冒頭手続を終わり、証拠調手続に入ります。」
④は、裁判長が、その訴訟指揮によって、弁護人の意見を確かめるために事実上行ったものであり、法令上要求されているものではない。

(正答)

(解説)
291条4項は、「裁判長は、起訴状の朗読が終った後、…弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。」と規定している。
したがって、④は、法令上要求されているものである。

(R4 予備 第18問 エ)
被告事件を審理する裁判所の裁判長は、冒頭手続において起訴状の朗読が終わった後、被告人に対し、終始沈黙し又個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨のほか、陳述することもできる旨及び陳述をすれば自己に不利益な証拠ともなり又利益な証拠ともなるべき旨を告げなければならない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則197条1項は、「裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し又個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨の外、陳述をすることもできる旨及び陳述をすれば自己に不利益な証拠ともなり又利益な証拠ともなるべき旨を告げなければならない。」と規定している。

(R4 予備 第22問 エ)
被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定があったときは、検察官は、被害者特定事項を明らかにしない方法で起訴状の朗読を行い、起訴状を被告人に示さなければならない。

(正答)

(解説)
291条2項は、「第290条の2第1項又は第3項の決定(注:被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定)があったときは、前項の起訴状の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。」と規定している。

(R5 予備 第20問 イ)
裁判長は、刑事事件の通常の第1審公判手続における冒頭手続において、検察官の起訴状の朗読に先立ち、人定質問を行う。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則196条は、「裁判長は、検察官の起訴状の朗読に先だち、被告人に対し、その人違でないことを確めるに足りる事項を問わなければならない。」と規定している。これを講学上、人定質問という。
総合メモ

第292条

条文
第292条(証拠調べ)
 証拠調べは、第291条の手続が終った後、これを行う。ただし、次節第一款に定める公判前整理手続において争点及び証拠の整理のために行う手続については、この限りでない。

刑事訴訟規則第198条(弁護人等の陳述)
① 裁判所は、検察官が証拠調のはじめに証拠により証明すべき事実を明らかにした後、被告人又は弁護人にも、証拠により証明すべき事実を明らかにすることを許すことができる。 
② 略
過去問・解説
(R5 予備 第20問 オ)
被告人又は弁護人は、公判前整理手続に付されていない事件について、証拠により証明すべき事実があるときは、裁判所の許可がなくとも、検察官が冒頭陳述をした後、冒頭陳述をすることができる。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則198条1項は、「裁判所は、検察官が証拠調のはじめに証拠により証明すべき事実を明らかにした後、被告人又は弁護人にも、証拠により証明すべき事実を明らかにすることを許すことができる。 」としている。
したがって、被告人又は弁護人は、公判前整理手続に付されていない事件について、証拠により証明すべき事実があるときは、検察官が冒頭陳述をした後、冒頭陳述をすることができるものの、それには裁判所の許可が必要である。
総合メモ

第292条の2

条文
第292条の2(被害者等の意見の陳述)
① 裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。
② 前項の規定による意見の陳述の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
③ 裁判長又は陪席の裁判官は、被害者等又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、これらの者に質問することができる。
④ 訴訟関係人は、被害者等又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、裁判長に告げて、これらの者に質問することができる。
⑤ 裁判長は、被害者等若しくは当該被害者の法定代理人の意見の陳述又は訴訟関係人の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に対する質問が既にした陳述若しくは質問と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、これを制限することができる。
⑥ 第157条の4、第157条の五並びに第157条の6第1項及び第2項の規定は、第1項の規定による意見の陳述について準用する。
⑦ 裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。
⑧ 前項の規定により書面が提出された場合には、裁判長は、公判期日において、その旨を明らかにしなければならない。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、その書面を朗読し、又はその要旨を告げることができる。
⑨ 第1項の規定による陳述又は第7項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。

第316条の38(被害者参加人等による弁論としての意見陳述)
① 略
② 前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
③ 略
④ 第1項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする
過去問・解説
(H18 司法 第36問 イ)
犯罪被害者は、自ら申し出て、公判期日において、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述をすることができる。

(正答)

(解説)
292条の2第1項は、「裁判所は、被害者…から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。」と規定している。

(H23 司法 第32問 イ)
公判期日において、被害者の被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述がなされた場合、裁判所は、この陳述を犯罪事実の認定のための証拠とすることはできない。

(正答)

(解説)
292条の2第1項は、「裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。」と規定している。
他方、同条9項は、「第1項の規定による陳述又は第7項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。」と規定している。

(H24 共通 第39問 オ)
公判期日において、被害に関する心情その他被告事件に関する意見を陳述したい旨の申出ができる被害者の範囲は、刑事訴訟法の規定上、対象となっている事件の法定刑の軽重による差異が設けられていない。

(正答)

(解説)
292条の2第1項は、「裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。」と規定しており、対象となっている事件の法定刑の軽重による差異は設けられていない。

(H25 司法 第38問 ア)
刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述と刑事訴訟法第316条の38第1項による意見の陳述のいずれの場合であっても、その申出は、あらかじめ検察官にしなければならない。

(正答)

(解説)
292条の2第2項前段は、同条1項による意見陳述について、「前項の規定による意見の陳述の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。」と規定している。
そして、316条の38第2項前段は、同条1項による意見陳述の申出について、「前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。」と規定している。

(H25 司法 第38問 イ)
裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述の場合には、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させることができるが、刑事訴訟法第316条の38第1項による意見の陳述の場合には、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させることはできない。

(正答)

(解説)
292条の2第7項は、同条1項に基づく意見陳述について、「裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。」と規定している。
他方、316条の38第1項による意見の陳述の場合には、かかる規定は存在しない。

(H25 司法 第38問 ウ)
刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述と刑事訴訟法第316条の38第1項による意見の陳述のいずれの場合であっても、その陳述は、犯罪事実の認定のための証拠とはならない。

(正答)

(解説)
292条の2は、1項において、「裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。」と規定し、9項において、「第1項の規定による陳述又は第7項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。」と規定している。
したがって、刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述の場合、その陳述は、犯罪事実の認定のための証拠とはならない。
そして、316条の38は、1項において、「裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、…相当と認めるときは、公判期日において、…申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。」と規定し、4項において、「第1項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。」と規定している。
したがって、刑事訴訟法第316条の38第1項による意見の陳述の場合にも、その陳述は、犯罪事実の認定のための証拠とはならない。

(H25 司法 第38問 エ)
刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述と刑事訴訟法第316条の38第1項による意見の陳述のいずれの場合であっても、その陳述は、量刑資料にはなり得る。

(正答)

(解説)
292条の2は、1項において、「裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。」と規定し、9項において、「第1項の規定による陳述又は第7項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。」と規定している。
これにより禁止されているのは、「犯罪事実の認定のための証拠とすること」のみであるから、量刑資料とすることは禁止されていない。
他方、316条の38は、1項において、「裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、…相当と認めるときは、公判期日において、…申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。」と規定し、4項において、「第1項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。」と規定している。
これにより禁止されているのは、「証拠」とすることであるから、量刑資料とすることも禁止されている。

(H25 司法 第38問 オ)
刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述では、法律の適用についての意見を述べることはできないから、被害者等は、被告人が受けるべき刑罰について、「法律上、なし得る限りの最も重い刑罰に処してください。」と述べてはならない。

(正答)

(解説)
292条の2は、1項において、「裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。」と規定し、9項において、「第1項の規定による陳述又は第7項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。」と規定している。
これにより禁止されているのは、「犯罪事実の認定のための証拠とすること」のみであるから、量刑資料とすることは禁止されていない。
そして、「法律上、なし得る限りの最も重い刑罰に処してください。」との陳述は、量刑資料に当たるから、これを述べることは許される。

(H27 予備 第24問 ウ)
犯罪の被害者であるVを証人として尋問する場合とVに被害に関する心情等の意見を陳述させる場合のいずれにおいても、審理の状況その他の事情を考慮して、Vに法廷で供述又は陳述させるのが相当でないと認めるときは、その供述又は意見が記載された書面を提出させることができる。

(正答)

(解説)
292条の2第7項は、同条1項に基づく意見陳述について、「裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。」と規定している。
これに対し、犯罪の被害者を証人として尋問する場合については、供述に代えて供述を記載した書面を提出させることができる旨の規定は存在しない。

(H27 予備 第24問 オ)
犯罪の被害者であるVを証人として尋問する場合とVに被害に関する心情等の意見を陳述させる場合のいずれにおいても、Vの供述又は陳述を犯罪事実の認定に用いることができる。

(正答)

(解説)
犯罪の被害者の証人尋問(157条の6第1項1号、2号等)は証拠調べ手続に当たり、被害者の供述は証拠として犯罪事実の認定に用いることができる。
これに対し、292条の2第7項は、同条1項に基づく意見陳述について、「裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。」と規定している。
したがって、犯罪の被害者であるVに被害に関する心情等の意見を陳述させる場合において、Vの陳述を犯罪事実の認定に用いることはできない。

(R2 予備 第22問 ア)
被害者は、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見を陳述することができ、裁判所は、その陳述を刑の量定のための証拠とすることができる。

(正答)

(解説)
292条の2は、1項において、「裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。」と規定し、9項において、「第1項の規定による陳述又は第7項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。」と規定している。
これにより禁止されているのは、「犯罪事実の認定のための証拠とすること」のみであるから、量刑資料とすることは禁止されていない。
総合メモ

第293条

条文
第293条(弁論)
① 証拠調が終った後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
② 被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。
過去問・解説
(H22 司法 第39問 ウ)
証拠調べが終わった後の弁護人の意見陳述は権利であるから、裁判所がその機会を与えることなく弁論を終結することは違法となる。

(正答)

(解説)
293条2項は、「弁護人は、意見を陳述することができる。」と規定している。
これは弁護人の権利とされており、裁判所がその機会を与えることなく弁論を終結することは違法となる。

(H26 予備 第20問 ウ)
検察官は、証拠調べが終わった後の事実及び法律の適用についての意見の陳述において、被告人が無罪である旨の陳述をしてはならない。

(正答)

(解説)
293条1項は、「証拠調が終った後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。」と規定している。
これに対して、特に陳述内容を制限する規定はないため、検察官は、証拠調べが終わった後の事実及び法律の適用についての意見の陳述において、被告人が無罪である旨の陳述をすることも許される。

(H26 予備 第20問 エ)
弁護人は、証拠調べが終わった後の意見の陳述において、被告人の量刑について、具体的な刑の内容を陳述してはならない。

(正答)

(解説)
293条2項は、「弁護人は、意見を陳述することができる。」と規定している。
これに対して、特に陳述内容を制限する規定はないため、弁護人は、証拠調べが終わった後の意見の陳述において、被告人の量刑について、具体的な刑の内容を陳述をすることも許される。
総合メモ

第295条

条文
第295条(弁論等の制限)
① 裁判長は、訴訟関係人のする尋問又は陳述が既にした尋問若しくは陳述と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、訴訟関係人の本質的な権利を害しない限り、これを制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても同様である。
② 裁判長は、証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問する場合において、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあり、これらの者の住居、勤務先その他その通常所在する場所が特定される事項が明らかにされたならば証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人が十分な供述をすることができないと認めるときは、当該事項についての尋問を制限することができる。ただし、検察官のする尋問を制限することにより犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがあるとき、又は被告人若しくは弁護人のする尋問を制限することにより被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
③ 裁判長は、第290条の2第1項又は第3項の決定があつた場合において、訴訟関係人のする尋問又は陳述が被害者特定事項にわたるときは、これを制限することにより、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、当該尋問又は陳述を制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、同様とする。
④ 第290条の3第1項の決定があった場合における訴訟関係人のする尋問若しくは陳述又は訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
⑤ 裁判所は、前各項の規定による命令を受けた検察官又は弁護士である弁護人がこれに従わなかった場合には、検察官については当該検察官を指揮監督する権限を有する者に、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求することができる。
⑥ 前項の規定による請求を受けた者は、そのとった処置を裁判所に通知しなければならない。
過去問・解説
(H19 司法 第30問 ウ)
暴行・傷害事件の目撃者である証人に対して、「では、その時、被告人はその歩道上のどこにいましたか。」と質問した。なお、被告人は証人が目撃した当時、現場にいたことを争っており、証人は、被告人が現場にいたことをまだ証言していない。この尋問は、証人が、いまだ被告人が現場にいた旨を証言していないのに、被告人が現場にいたことを前提としており、誤導尋問と呼ばれる相当でない尋問であるので許されない。

(正答)

(解説)
295条1項前段は、「裁判長は、訴訟関係人のする尋問…が…相当でないときは、訴訟関係人の本質的な権利を害しない限り、これを制限することができる。」と規定している。
本肢では、被告人が現場にいた事実について争いがあるにもかかわらず、被告人が現場にいたことを前提として尋問しているため、誤導尋問に該当する。
誤導尋問は、「訴訟関係人のする尋問…が…相当でないとき」に該当するため、許されない。

(R1 予備 第20問 エ)
被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定がされた場合、裁判長は、弁護人の尋問が被害者特定事項にわたるときは、当該尋問を必ず制限しなければならない。

(正答)

(解説)
295条3項は、「裁判長は、第290条の2第1項又は第3項の決定があった場合において、訴訟関係人のする尋問又は陳述が被害者特定事項にわたるときは、これを制限することにより、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、当該尋問又は陳述を制限することができる。」と規定している。
したがって、裁判長は被害者特定事項に関する尋問を制限することができるが、必ず制限しなければならないわけではない。

(R5 予備 第20問 エ)
検察官は、証拠調べが終わった後の事実及び法律の適用についての意見の陳述において、量刑についての意見を述べることはできるが、無罪である旨の意見を述べることはできない。

(正答)

(解説)
293条1項は、「証拠調が終った後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。」と規定している。
したがって、検察官は、証拠調べが終わった後の事実及び法律の適用についての意見の陳述において、量刑についての意見を述べることができる。
また、無罪である旨の意見を述べることを制限する規定は存在しないため、無罪である旨の意見を述べることもできる。
総合メモ

第296条

条文
第296条(検察官の冒頭陳述)
 証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。但し、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞のある事項を述べることはできない。
過去問・解説
(H26 予備 第20問 ア)
検察官は、証拠調べのはじめに、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。

(正答)

(解説)
296条本文は、「証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。」と規定している。

(R5 予備 第20問 ア)
検察官は、刑事事件の通常の第1審公判手続における冒頭手続において、冒頭陳述を行う。

(正答)

(解説)
296条は、「証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。」と規定している。
すなわち、冒頭陳述は証拠調のはじめに行うのであって、第1審公判手続の冒頭陳述において行うのではない。
総合メモ

第298条

条文
第298条(証拠調べの請求、職権証拠調べ)
① 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。
② 裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる。

第41条(独立行為権)
弁護人は、この法律に特別の定のある場合に限り、独立して訴訟行為をすることができる。

第299条(証拠調べの請求、職権証拠調べ、当事者の権利)
① 略
② 裁判所が職権で証拠調の決定をするについては、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

刑事訴訟規則第189条(証拠調の請求の方式・法第298条)
① 証拠調の請求は、証拠と証明すべき事実との関係を具体的に明示して、これをしなければならない。
②〜③ 略
④ 前各項の規定に違反してされた証拠調の請求は、これを却下することができる。

刑事訴訟規則第190条(証拠決定・法第298条等)
① 証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。
② 前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を、職権による場合には、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
③ 被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる公判期日に被告人及び弁護人が出頭していないときは、前項の規定にかかわらず、これらの者の意見を聴かないで、第1項の決定をすることができる。

刑事訴訟規則第192条(証拠決定についての提示命令)
証拠調の決定をするについて必要があると認めるときは、訴訟関係人に証拠書類又は証拠物の提示を命ずることができる。
過去問・解説
(H20 司法 第33問 ア)
検察官は、ハンマーを凶器とする傷害被告事件の証拠として、犯行に使用されたとされるハンマーの証拠調べを請求した。ハンマーには伝聞法則は適用されないから、裁判所は、弁護人の意見を聴かずに、ハンマーを証拠として採用するか否かを決定することができる。

(正答)

(解説)
320条1項は、「第321条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。」と規定している。
ハンマーは非供述証拠であるため、伝聞法則は適用されない。
他方、刑事訴訟規則190条は、1項において、「証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。」と規定し、2項において、「前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を、職権による場合には、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。」と規定している。
したがって、裁判所は、ハンマーを証拠として採用するか否かを決定する際に、弁護人の意見を聞く必要がある。

(H20 司法 第33問 イ)
V1は、月刊誌に自己の名誉を毀損する記事が掲載されたとして、同月刊誌の編集責任者甲を名誉毀損の罪で告訴した。捜査の結果、甲に、前記記事によるV1及びその愛人V2に対する名誉毀損の事実が認められた場合、V1の告訴の効力は、甲のV2に対する名誉毀損の事実にも及ぶ。

(正答)

(解説)
230条は、「犯罪により害を被った者は、告訴をすることができる。」と規定している。
単一の犯罪の一部分についてした告訴は、残りの部分に対しても効力を生ずる(告訴客観的不可分の原則)。
もっとも、科刑上一罪の犯罪事実で、かつ、被害者を異にする場合には被害者意思の尊重という観点から、例外的に一方の告訴の効力が他方に及ばない。
甲は、1つの月刊誌の記事でV1とV2の名誉を毀損していることから、「1個の行為が2個以上の罪名に触れ」ているため、科刑上一罪であり(刑法54条1項前段)、かつ、被害者は異なっている。
したがって、V1の告訴の効力は、甲のV2に対する名誉毀損の事実にも及ばない。

(H21 司法 第28問 ウ)
弁護人は、公判期日において、被告人が証拠調べを請求する意思がない証拠についても、その証拠調べを請求することができる。

(正答)

(解説)
41条は、「弁護人は、この法律に特別の定のある場合に限り、独立して訴訟行為をすることができる。」と規定している。
そして、298条1項は、「弁護人は、証拠調を請求することができる。」と規定している。
したがって、弁護人は、公判期日において、被告人が証拠調べを請求する意思がない証拠についても、被告人と独立して、証拠調べを請求することができる。

(H21 司法 第33問 イ)
裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調べをすることができるので、被告人のアリバイの存在を立証趣旨として弁護人から証拠調べを請求された被告人以外の者が作成した供述書につき、検察官の意見を聴かずに、証拠調べの決定をすることができる。

(正答)

(解説)
298条2項は、「裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる。」と規定している。
他方で、299条2項は、「裁判所が職権で証拠調の決定をするについては、検察官…の意見を聴かなければならない。」と規定している。
したがって、弁護人から証拠調べを請求された被告人以外の者が作成した供述書につき、職権で証拠調べの決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。

(H24 共通 第34問 1)
当事者の一方が鑑定を請求した場合、裁判所が鑑定を決定するについては、相手方又はその弁護人に意見を述べる機会を与えなければならない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則190条は、1項において、「証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。」と規定し、2項において、「前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を…聴かなければならない。」と規定している。
鑑定の決定は、証拠調の決定に当たるため、相手方又はその弁護人に意見を述べる機会を与えなければならない。

(H24 司法 第28問 エ)
証拠調べの請求は、証拠と証明すべき事実との関係を具体的に明示して行わなければならず、裁判所は、その関係が明らかにされていないときは、証拠調べの請求を却下することができる。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則189条は、1項において、「証拠調の請求は、証拠と証明すべき事実との関係を具体的に明示して、これをしなければならない。」と規定し、4項において、「前各項の規定に違反してされた証拠調の請求は、これを却下することができる。」と規定している。

(H26 共通 第30問 イ)
被告人Aと被告人Bは、共謀の上、A方で覚せい剤を所持したとの覚せい剤取締法違反に係る公訴事実で起訴された。公判廷では、Aは、Bと共に犯行に及んだことを認める旨の供述をしているが、Bは、自己の関与を否定する旨の供述をしている。検察官は、A方から押収された覚せい剤、同覚せい剤の鑑定書、A方の捜索差押調書等の証拠調べを請求している。
前記覚せい剤の証拠調べ請求について、Aの弁護人は「異議なし」との意見を述べ、Bの弁護人は「関連性なし」との意見を述べた場合、裁判所はBとの関係でも同覚せい剤を証拠として採用し、取り調べることが許される。

(正答)

(解説)
共同被告人の一方に対する関係で取り調べられた証拠が当然に他方の被告人との関係でも証拠となるわけではない。
Bの弁護人は「関連性なし」との意見を述べているところ、関連性がなければ、覚醒剤について、Bとの関係で証拠調べすることはできない。

(H26 司法 第27問 エ)
犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が取調べに対して供述を拒んだため、検察官が刑事訴訟法第226条に基づき証人尋問を請求する場合において、証人尋問が実施された後、裁判所は、公判期日において、その尋問の結果を記載した書面を取り調べなければならない。

(正答)

(解説)
298条は、1項において、「検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。」と規定し、2項において、「裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる。」と規定している。
刑事訴訟法第226条に基づく証人尋問における証言は、その証言を録取した書面が証拠となるため、当事者の請求または職権により取調べが行われるところ、この職権証拠調べは義務ではない。

(H28 予備 第25問 イ)
被害者参加制度における被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、法律上定められた権限として、情状に関する事項について、証拠調べを請求することができる。

(正答)

(解説)
298条1項は、「検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。」と規定しており、被害者参加制度における被害者参加人又はその委託を受けた弁護士はここに含まれない。
また、被害者参加制度について規定する316条の33以下にも、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士による情状に関する事項についての証拠調べ請求を認める規定は存在しない。
したがって、被害者参加制度における被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、情状に関する事項について、証拠調べを請求することができない。

(H30 予備 第18問 ウ)
弁護人は、被告人の明示の同意がなければ、証拠調べを請求することができない。

(正答)

(解説)
41条は、「弁護人は、この法律に特別の定のある場合に限り、独立して訴訟行為をすることができる。」と規定している。
また、298条が「弁護人は、証拠調を請求することができる。」と規定している。
したがって、弁護人は、被告人の同意がなくても、証拠調べを請求することができる。
総合メモ

第299条

条文
第299条(証拠調べの請求、職権証拠調べ、当事者の権利)
① 検察官、被告人又は弁護人が証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の尋問を請求するについては、あらかじめ、相手方に対し、その氏名及び住居を知る機会を与えなければならない。証拠書類又は証拠物の取調を請求するについては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。但し、相手方に異議のないときは、この限りでない。
② 裁判所が職権で証拠調の決定をするについては、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
過去問・解説
(H24 司法 第28問 イ)
公判期日において検察官が証拠書類又は証拠物の取調べを請求する場合には、あらかじめ被告人又は弁護人に閲覧する機会を与えなければならず、弁護人が証拠書類又は証拠物の取調べを請求する場合には、あらかじめ検察官に閲覧する機会を与えなければならない。

(正答)

(解説)
299条1項本文は、「検察官、被告人又は弁護人が…証拠書類又は証拠物の取調を請求するについては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。」と規定している。
総合メモ

第299条の3

条文
第299条の3(証拠開示の際の被害者特定事項の秘匿要請)
 検察官は、第299条第1項の規定により証人の氏名及び住居を知る機会を与え又は証拠書類若しくは証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者等の名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、その旨を告げ、被害者特定事項が、被告人の防御に関し必要がある場合を除き、被告人その他の者に知られないようにすることを求めることができる。ただし、第271条の2第2項の規定により起訴状抄本等を提出した場合を除き、被告人に知られないようにすることを求めることについては、被害者特定事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限る。
過去問・解説
(H23 司法 第32問 ウ)
検察官は、検察官請求に係る証拠書類を弁護人に閲覧する機会を与えるに当たり、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者等の名誉が著しく害されるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、その旨を告げ、起訴状に記載された被害者特定事項を被告人に知られないようにすることを求めることができる。

(正答)

(解説)
299条の3は、「検察官は、…証拠書類…を閲覧する機会を与えるに当たり、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者等の名誉…が著しく害されるおそれがあると認めるとき…は、弁護人に対し、その旨を告げ、被害者特定事項が、…被告人…に知られないようにすることを求めることができる。ただし、被告人に知られないようにすることを求めることについては、被害者特定事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限る。」と規定している。
総合メモ

第301条の2

条文
第301条の2(取調べ等の録音・録画と記録媒体の証拠調べの請求)
① 次に掲げる事件については、検察官は、第322条第1項の規定により証拠とすることができる書面であって、当該事件についての第198条第1項の規定による取調べ(逮捕又は勾留されている被疑者の取調べに限る。第3項において同じ。)又は第203条第1項、第204条第1項若しくは第205条第1項(第211条及び第216条においてこれらの規定を準用する場合を含む。第3項において同じ。)の弁解の機会に際して作成され、かつ、被告人に不利益な事実の承認を内容とするものの取調べを請求した場合において、被告人又は弁護人が、その取調べの請求に関し、その承認が任意にされたものでない疑いがあることを理由として異議を述べたときは、その承認が任意にされたものであることを証明するため、当該書面が作成された取調べ又は弁解の機会の開始から終了に至るまでの間における被告人の供述及びその状況を第4項の規定により記録した記録媒体の取調べを請求しなければならない。ただし、同項各号のいずれかに該当することにより同項の規定による記録が行われなかったことその他やむを得ない事情によって当該記録媒体が存在しないときは、この限りでない。        
 一 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
 二 短期1年以上の有期の懲役又は禁錮に当たる罪であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件
 三 司法警察員が送致し又は送付した事件以外の事件(前2号に掲げるものを除く。)
② 検察官が前項の規定に違反して同項に規定する記録媒体の取調べを請求しないときは、裁判所は、決定で、同項に規定する書面の取調べの請求を却下しなければならない。        
③ 前2項の規定は、第1項各号に掲げる事件について、第324条第1項において準用する第322条第1項の規定により証拠とすることができる被告人以外の者の供述であって、当該事件についての第198条第1項の規定による取調べ又は第203条第1項、第204条第1項若しくは第205条第1項の弁解の機会に際してされた被告人の供述(被告人に不利益な事実の承認を内容とするものに限る。)をその内容とするものを証拠とすることに関し、被告人又は弁護人が、その承認が任意にされたものでない疑いがあることを理由として異議を述べた場合にこれを準用する。        
④ 検察官又は検察事務官は、第1項各号に掲げる事件(同項第3号に掲げる事件のうち、関連する事件が送致され又は送付されているものであって、司法警察員が現に捜査していることその他の事情に照らして司法警察員が送致し又は送付することが見込まれるものを除く。)について、逮捕若しくは勾留されている被疑者を第198条第1項の規定により取り調べるとき又は被疑者に対し第204条第1項若しくは第205条第1項(第211条及び第216条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定により弁解の機会を与えるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、被疑者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録媒体に記録しておかなければならない。司法警察職員が、第1項第1号又は第2号に掲げる事件について、逮捕若しくは勾留されている被疑者を第198条第1項の規定により取り調べるとき又は被疑者に対し第203条第1項(第211条及び第216条において準用する場合を含む。)の規定により弁解の機会を与えるときも、同様とする。        
 一 記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。
 二 被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。
 三 当該事件が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第3条の規定により都道府県公安委員会の指定を受けた暴力団の構成員による犯罪に係るものであると認めるとき。
 四 前2号に掲げるもののほか、犯罪の性質、関係者の言動、被疑者がその構成員である団体の性格その他の事情に照らし、被疑者の供述及びその状況が明らかにされた場合には被疑者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあることにより、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。
過去問・解説
(R6 予備 第23問 ア)
検察官又は検察事務官は、裁判員の参加する合議体で取り扱うべき事件について逮捕又は勾留されている被疑者を取り調べるときは、被疑者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録媒体に必ず記録しておかなければならない。

(正答)

(解説)
301条の2第4項前段は、裁判員裁判対象事件又は司法警察員が送致し又は送付した事件以外の事件について、「次の各号のいずれかに該当する場合を除き、被疑者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録媒体に記録しておかなければならない。」と規定している。
したがって、301条の2第4項各号に掲げる事由に該当する場合には、被疑者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録媒体に記録しておく必要がない。
総合メモ

第303条

条文
第303条(公判準備の結果と証拠調べの必要)
 公判準備においてした証人その他の者の尋問、検証、押収及び捜索の結果を記載した書面並びに押収した物については、裁判所は、公判期日において証拠書類又は証拠物としてこれを取り調べなければならない。
過去問・解説
(H29 予備 第22問 エ)
検察官は、甲に対する傷害被疑事件の捜査において、目撃者Wを取り調べて供述録取書(以下「検察官調書」という。)を作成した上、甲を傷害罪で地方裁判所に起訴した。検察官は、公判において、検察官調書の取調べを請求したが、弁護人は、これを証拠とすることに同意しなかった。そこで、検察官は、Wの証人尋問を請求した。裁判所は、Wが病気で入院していたため、検察官及び弁護人の意見を聴いて、Wの入院先の病院においてWの証人尋問を実施することを決定した。その後、同病院において、Wの証人尋問が実施されたところ、Wは、検察官調書の内容と相反する供述をした。
裁判所は、Wの証人尋問の実施後、その結果を記載した調書を公判廷で取り調べなければ、証人尋問におけるWの供述内容を事実認定に用いることができない。

(正答)

(解説)
303条は、「公判準備においてした証人その他の者の尋問、検証、押収及び捜索の結果を記載した書面並びに押収した物については、裁判所は、公判期日において証拠書類又は証拠物としてこれを取り調べなければならない。」と規定している。
病院でのWに対する尋問は、「公判準備」に当たるため、その結果を記載した調書を公判廷で取り調べなければ、証人尋問におけるWの供述内容を事実認定に用いることができない。
総合メモ

第304条

条文
第304条(人的証拠に対する証拠調べの方式)
① 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人は、裁判長又は陪席の裁判官が、まず、これを尋問する。
② 検察官、被告人又は弁護人は、前項の尋問が終った後、裁判長に告げて、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問することができる。この場合において、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の取調が、検察官、被告人又は弁護人の請求にかかるものであるときは、請求をした者が、先に尋問する。
③ 裁判所は、適当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、前2項の尋問の順序を変更することができる。

憲法第37条(刑事被告人の権利)
① 略
② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
③ 略

刑事訴訟規則第199条の3(主尋問・法第304条等)
① 主尋問は、立証すべき事項及びこれに関連する事項について行う。
② 主尋問においては、証人の供述の証明力を争うために必要な事項についても尋問することができる。
③ 主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。ただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる。
 一 証人の身分、経歴、交友関係等で、実質的な尋問に入るに先だって明らかにする必要のある準備的な事項に関するとき。
 二 訴訟関係人に争のないことが明らかな事項に関するとき。
 三 証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるとき。
 四 証人が主尋問者に対して敵意又は反感を示すとき。
 五 証人が証言を避けようとする事項に関するとき。
 六 証人が前の供述と相反するか又は実質的に異なる供述をした場合において、その供述した事項に関するとき。
 七 その他誘導尋問を必要とする特別の事情があるとき。
④ 誘導尋問をするについては、書面の朗読その他証人の供述に不当な影響を及ぼすおそれのある方法を避けるように注意しなければならない。
⑤ 裁判長は、誘導尋問を相当でないと認めるときは、これを制限することができる。

刑事訴訟規則第199条の10(書面又は物の提示・法第304条等)
① 訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができる。
② 前項の書面又は物が証拠調を終ったものでないときは、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。

刑事訴訟規則第199条の11(記憶喚起のための書面等の提示・法第304条)
① 訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。 
② 前項の規定による尋問については、書面の内容が証人の供述に不当な影響を及ぼすことのないように注意しなければならない。 
③ 第1項の場合には、前条第2項の規定を準用する。

刑事訴訟規則第199条の12(図面等の利用・法第304条)
① 訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問することができる。 
② 前項の場合には、第199条の10第2項の規定を準用する。
過去問・解説
(H18 司法 第31問 イ)
弁論併合後に、検察官が証拠調べ請求し、裁判所に採用されて取り調べられた証拠であっても、甲又は乙の一方に対する関係でのみ証拠となる場合がある。

(正答)

(解説)
憲法37条2項は、「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ…る権利を有する。」として、反対尋問権の保障について規定している。
また、304条2項前段は、「被告人…は、…尋問が終った後、裁判長に告げて、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問することができる。」と規定している。
したがって、被告人には反対尋問権が保障されていることから、たとえ弁論併合後に取り調べられた証拠であったとしても、反対尋問権が保障されない場合には、共同被告人の一方に対する関係でのみ証拠となる場合がある。

(H19 司法 第30問 ア)
暴行・傷害事件をたまたま目撃した証人であるプロのカメラマンに対し、主尋問において、「あなたは、プロのカメラマンをしていますね。」と質問した。この尋問は、主尋問における誘導尋問であるが、証人の身分等で実質的な尋問に入るに先立って明らかにする必要のある準備的な事項に関するものであるので許される。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の3第3項は、柱書において、「主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。ただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる。」と規定し、1号において、「証人の身分…等で、実質的な尋問に入るに先だって明らかにする必要のある準備的な事項に関するとき。」を掲げている。
証人がプロのカメラマンであることは、「証人の身分」に該当することから、1号の例外に当たる。
したがって、本肢の誘導尋問は許容される。

(H19 司法 第30問 イ)
暴行・傷害事件をたまたま目撃した証人であるプロのカメラマンが、目撃当時、カメラを所持していたことについて争いがない場合において、証人に対し、「その時、あなたは、カメラを携帯していましたね。」と質問した。この尋問は、主尋問における誘導尋問であるので許されない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の3第3項は、柱書において、「主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。ただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる。」と規定し、2号において、「訴訟関係人に争のないことが明らかな事項に関するとき。」を掲げている。
証人が犯行目撃当時、カメラを所持していたことは、「訴訟関係人に争のないことが明らかな事項」に該当することから、2号の例外に当たる。
したがって、本肢の誘導尋問は許容される。

(H19 司法 第30問 エ)
暴行・傷害事件の目撃者である証人のプロのカメラマンが目撃時に撮影した写真7枚を添付した司法警察員作成の捜査報告書を証拠調べ請求したところ、被告人の弁護人は、不同意の意見を述べた。かかる捜査報告書の証拠採用決定及び証拠調べはなされていない。公判において、検察官は、証人に対して、「捜査報告書添付の写真7枚を示します。これらの写真7枚は、あなたが本件現場で撮影したものですか。」と尋問した。この尋問は、証人に示した写真7枚が、いまだ証拠調べを終えていないものであるので許されない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の10は、1項において、「訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができる。」と規定し、2項本文において、「前項の書面又は物が証拠調を終ったものでないときは、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。」と規定している。
したがって、証拠調べを終えていないことから直ちに尋問が許されないわけではない。
そして、証人に、捜査報告書添付の写真7枚を示して尋問するのは、「書面…その…同一性…について証人を尋問する場合」に該当することから、いまだ証拠調べを終えていないものであっても、捜査報告書添付の写真7枚を示して尋問することは許される。

(H20 司法 第33問 オ)
検察官は、ハンマーを凶器とする傷害被告事件の証拠として、犯行を目撃したWの検察官に対する供述調書及び犯行に使用されたとされるハンマーの証拠調べを請求した。ハンマーがいまだ証拠として採用されていない段階でWの証人尋問が行われた場合、Wに対するハンマーを示しての尋問が許されることはない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の10は、1項において、「訴訟関係人は、…物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その…物を示すことができる。」と規定し、2項において、「物が証拠調を終ったものでないときは、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。」と規定しており、1項に基づく証拠物の提示が、証拠調べが終わる前になされうることを前提としている。
したがって、ハンマーがいまだ証拠として採用されていない段階でWの証人尋問が行われた場合であっても、Wに対するハンマーを示しての尋問が許されることがある。

(H22 司法 第33問 1)
被告人甲は、運転していた普通乗用自動車を歩行中のVに衝突させて傷害を負わせ、前方不注視の過失による自動車運転過失致傷罪で起訴された。第1回公判期日において、甲の弁護人は、事故直後に犯行現場で実施された実況見分に甲が立ち会ったことは争わないものの、前方不注視の過失の有無を争い、検察官から事前に開示されていた同実況見分に係る実況見分調書について不同意の意見を述べた。そこで、検察官は、その作成者である司法警察員Kの証人尋問を請求し、裁判所の採用決定を経て、次のとおりKの証人尋問を行った。

検察官. 証人は、本件当時、〇〇警察署交通課に警部補として勤務していましたね。
K.   はい。
検察官. 証人は、平成×年×月×日、本件犯行現場で現場の状況に関する実況見分を行いましたか。
K.   はい。
検察官. 証人は、実況見分の経過と結果を書面にしましたか。
K.   はい。
検察官. (1)検察官請求に係るK作成の実況見分調書を示します。証人が作成した実況見分調書は、これですか。

(1)の尋問は、書面に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときに該当するので、実況見分調書の証拠調べが未了であっても、同調書を示して尋問することができる。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の10は、1項において、「訴訟関係人は、書面…関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面…を示すことができる」と規定し、2項本文において、「前項の書面…が証拠調を終ったものでないときは、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。」と規定している。
本肢における尋問は、検察官請求に係るK作成の実況見分調書の同一性についてなされていることから、同調書を示して尋問することも可能である。

(H22 司法 第33問 4)
被告人甲は、運転していた普通乗用自動車を歩行中のVに衝突させて傷害を負わせ、前方不注視の過失による自動車運転過失致傷罪で起訴された。第1回公判期日において、甲の弁護人は、事故直後に犯行現場で実施された実況見分に甲が立ち会ったことは争わないものの、前方不注視の過失の有無を争い、検察官から事前に開示されていた同実況見分に係る実況見分調書について不同意の意見を述べた。そこで、検察官は、その作成者である司法警察員Kの証人尋問を請求し、裁判所の採用決定を経て、次のとおりKの証人尋問を行った。

検察官. 証人は、本件当時、〇〇警察署交通課に警部補として勤務していましたね。
K.   はい。
検察官. 証人は、平成×年×月×日、本件犯行現場で現場の状況に関する実況見分を行いましたか。
K.   はい。
検察官. 証人は、実況見分の経過と結果を書面にしましたか。
K.   はい。
検察官. 検察官請求に係るK作成の実況見分調書を示します。証人が作成した実況見分調書は、これですか。
K.   はい。この実況見分調書は、私が自分で作成したものに間違いありません。
検察官. 実況見分調書に添付された現場の写真を示します。この写真は、証人が撮影しましたか。
K.   いいえ。私が、部下のL巡査部長に命じて撮影させました。
検察官. (4)その実況見分には、被告人を立ち会わせましたね。
K.   はい。
検察官. 実況見分の際、被告人は、何か言っていませんでしたか。
K.   確か、被告人がよそ見をしてしまったなどと言って、何度も繰り返して謝っていました。

(4)の尋問は、主尋問における誘導尋問であるので許されない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の3第3項は、柱書において、「主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。ただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる。」と規定し、2号において、「訴訟関係人に争のないことが明らかな事項に関するとき。」を掲げている。
甲の弁護人は、事故直後に犯行現場で実施された実況見分に甲が立ち会ったことは争わないとしているため、実況見分に被告人が立ち会ったことは、「訴訟関係人に争のないことが明らかな事項に関するとき。」に該当する。
したがって、(4)の尋問は、誘導尋問であるものの、許される。

(H26 共通 第32問 ア)
【事例】
 Aは、平成26年2月3日、司法警察員から職務質問を受け、所持していた覚せい剤を発見されて逮捕された。Aは、同月12日、検察官による取調べにおいて、前記覚せい剤は知人甲から買った旨供述し、その旨記載された検察官調書が作成された。その後、甲に対する捜査が行われ、甲は、Aに対して前記覚せい剤を譲渡した事実で、同年3月2日に起訴されたが、公判において公訴事実を否認した。検察官は、甲の公判において、Aの前記検察官調書の証拠調べを請求したが、弁護人が不同意の意見を述べたので、Aの証人尋問を請求し、次のとおりの証人尋問が実施された。
【Aの証人尋問】
検察官.(ア)あなたは、平成26年2月3日、所持していた覚せい剤を司法警察員に発見されたのですね。
A. はい。

下線部(ア)の尋問方法は、誘導尋問に該当するが、甲及びその弁護人が争わないことが明らかであれば、許される。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の3第3項は、柱書において、「主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。ただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる。」と規定し、2号において、「訴訟関係人に争のないことが明らかな事項に関するとき。」を掲げている。
そして、下線部(ア)は検察官の求める答えが質問中に含まれているため、誘導尋問に該当し、主尋問であるが、甲及びその弁護人が争わないことが明らかであれば、許される。

(H26 共通 第32問 イ)
【事例】
 Aは、平成26年2月3日、司法警察員から職務質問を受け、所持していた覚せい剤を発見されて逮捕された。Aは、同月12日、検察官による取調べにおいて、前記覚せい剤は知人甲から買った旨供述し、その旨記載された検察官調書が作成された。その後、甲に対する捜査が行われ、甲は、Aに対して前記覚せい剤を譲渡した事実で、同年3月2日に起訴されたが、公判において公訴事実を否認した。検察官は、甲の公判において、Aの前記検察官調書の証拠調べを請求したが、弁護人が不同意の意見を述べたので、Aの証人尋問を請求し、次のとおりの証人尋問が実施された。
【Aの証人尋問】
検察官.あなたは、その覚せい剤をどうやって手に入れたのですか。
A. 路上で、見知らぬ人から買いました。
検察官.(イ)知人から買ったのではありませんか。
A. 知人から買ったものではありません。

下線部(イ)の尋問方法は、甲が争う事項に関する誘導尋問に該当するから、許されない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の3第3項は、柱書において、「主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。ただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる。」と規定し、6号において、「証人が前の供述と相反する…供述をした場合において、その供述した事項に関するとき。」を掲げている。
そして、下線部(イ)は検察官の求める答えが質問中に含まれているため、主尋問における誘導尋問に該当するものの、Aは、検察官による取調べ段階においては、前記覚せい剤は知人甲から買った旨供述したにもかかわらず、相反する供述をしている。
したがって、下線部(イ)は誘導尋問であるものの、許される。

(H26 共通 第32問 ウ)
【事例】
 Aは、平成26年2月3日、司法警察員から職務質問を受け、所持していた覚せい剤を発見されて逮捕された。Aは、同月12日、検察官による取調べにおいて、前記覚せい剤は知人甲から買った旨供述し、その旨記載された検察官調書が作成された。その後、甲に対する捜査が行われ、甲は、Aに対して前記覚せい剤を譲渡した事実で、同年3月2日に起訴されたが、公判において公訴事実を否認した。検察官は、甲の公判において、Aの前記検察官調書の証拠調べを請求したが、弁護人が不同意の意見を述べたので、Aの証人尋問を請求し、次のとおりの証人尋問が実施された。
【Aの証人尋問】
検察官.あなたは、平成26年2月12日、検察官の取調べを受けた際、誰から覚せい剤を買ったと説明しましたか。
A. 覚えていません。
検察官.(ウ)あなたは、検察官に対し、「甲から覚せい剤を買った。」と説明したのではありませんか。
A. そのように述べたかもしれません。

下線部(ウ)の尋問方法は、書面を朗読するものであるから、許されない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の3第4項は、「誘導尋問をするについては、書面の朗読その他証人の供述に不当な影響を及ぼすおそれのある方法を避けるように注意しなければならない。」と規定しており、書面の朗読それ自体は禁止していない。
したがって、下線部(ウ)の様に検察官面前調書を朗読することも許容される。

(H26 共通 第32問 エ)
【事例】
 Aは、平成26年2月3日、司法警察員から職務質問を受け、所持していた覚せい剤を発見されて逮捕された。Aは、同月12日、検察官による取調べにおいて、前記覚せい剤は知人甲から買った旨供述し、その旨記載された検察官調書が作成された。その後、甲に対する捜査が行われ、甲は、Aに対して前記覚せい剤を譲渡した事実で、同年3月2日に起訴されたが、公判において公訴事実を否認した。検察官は、甲の公判において、Aの前記検察官調書の証拠調べを請求したが、弁護人が不同意の意見を述べたので、Aの証人尋問を請求し、次のとおりの証人尋問が実施された。
【Aの証人尋問】
検察官.(エ)(検察官が、Aに、前記検察官調書の署名及び指印部分を示す。)これは、あなたの署名及び指印に間違いありませんか。
A. 間違いありません。

下線部(エ)の尋問方法は、記憶を喚起するために供述を録取した書面を示すものであるから、許されない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の10第1項は、「訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができる。 」と規定している。
下線部(エ)の尋問は、「証人を尋問する場合において必要があるとき」に当たるため許される。

(H30 予備 第24問 ア)
主尋問において、誘導尋問をすることができる場合がある。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の3第3項柱書は、「主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。ただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる。」と規定している。
したがって、同条項各号に掲げる場合には、主尋問においても、誘導尋問をすることができる。

(H30 予備 第24問 イ)
証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けずに、書面を証人に示して尋問することができる。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の11第1項は、「訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。」と規定している。
したがって、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときに書面を証人に示して尋問するためには、裁判長の許可を受けなければならない。

(R1 予備 第21問 ア)
甲は、Vの顔面を鉄パイプで殴打して傷害を負わせたという傷害の事実で公訴を提起された。甲は、公判において公訴事実を否認し、検察官の請求により、Vの証人尋問が実施された。
検察官は、Vの供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、実況見分調書に添付された現場見取図を利用して尋問することができる。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の12は、「訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問することができる。」と規定している。
したがって、検察官は、Vの供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、実況見分調書に添付された現場見取図を利用して尋問することができる。

(R1 予備 第21問 イ)
甲は、Vの顔面を鉄パイプで殴打して傷害を負わせたという傷害の事実で公訴を提起された。甲は、公判において公訴事実を否認し、検察官の請求により、Vの証人尋問が実施された。
検察官や弁護人は、証拠調べを終わったものでない書面又は物については、これをVに示して尋問することができない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の10第2項は、「前項の書面又は物が証拠調を終ったものでないときは、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。」と規定している。
そして、199条の11は、1項において、「訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。 」と規定し、3項において、「第1項の場合には、前条第2項の規定を準用する。」と規定している。
したがって、証拠調べを終わっていないものでない書面又は物についても、予め相手方に閲覧する機会を与えていれば、これをVに示して尋問することができる。

(R1 予備 第21問 ウ)
甲は、Vの顔面を鉄パイプで殴打して傷害を負わせたという傷害の事実で公訴を提起された。甲は、公判において公訴事実を否認し、検察官の請求により、Vの証人尋問が実施された。
検察官は、現場に遺留された鉄パイプにつき、犯行に使用された鉄パイプとの同一性をVに尋問する場合に必要があるときは、裁判長の許可を受けずにこれを示すことができる。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の10第1項は、「訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができる。」と規定しており、裁判長の許可は必要とされていない。
したがって、検察官は、現場に遺留された鉄パイプにつき、犯行に使用された鉄パイプとの同一性をVに尋問する場合に必要があるときは、裁判長の許可を受けずにこれを示すことができる。

(R1 予備 第21問 オ)
甲は、Vの顔面を鉄パイプで殴打して傷害を負わせたという傷害の事実で公訴を提起された。甲は、公判において公訴事実を否認し、検察官の請求により、Vの証人尋問が実施された。
検察官は、Vの記憶が明らかでない被害状況についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、Vが被害状況について記載していたメモを示して尋問することができる。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の11第1項は、「訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。」と規定している。
Vが被害状況について記載していたメモは、「供述を録取した書面」には当たらないから、同条項に基づき、検察官は、Vの記憶が明らかでない被害状況についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、同メモを示して尋問することができる。

(R3 予備 第24問 ア)
刑事訴訟規則は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項についてその書面又は物を示してする尋問は、裁判長の許可が必要であると定めている。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の10第1項は、「訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができる。」と規定しており、裁判長の許可は必要とされていない。

(R3 予備 第24問 イ)
証人の供述を明確にするため、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問する際、それらの図面等が証拠調べを終わったものでないときは、あらかじめ、相手方に閲覧する機会を与えなければならないが、相手方に異議がないときは、この限りでない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の12は、1項において、「訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問することができる。」と規定し、2項において準用する199条の10第2項は、「前項の書面又は物が証拠調を終ったものでないときは、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。」と規定している。
したがって、図面等が証拠調を終わったものでないときは、相手方に意義がない場合を除いては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならないが、相手方に異議がないときは、閲覧の機会の付与は不要である。

(R3 予備 第24問 ウ)
刑事訴訟規則は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときに示すことができる書面について、供述を録取した書面を条文上除外している。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の11第1項は、「訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。」と規定している。
したがって、刑事訴訟規則199条の11第1項括弧書は、供述を録取した書面を条文上除外している。
総合メモ

第304条の2

条文
第304条の2(被告人の退廷)
 裁判所は、証人を尋問する場合において、証人が被告人の面前(第157条の5第1項に規定する措置を採る場合並びに第157条の6第1項及び第2項に規定する方法による場合を含む。)においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が出頭している場合に限り、検察官及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中被告人を退廷させることができる。この場合には、供述終了後被告人を入廷させ、これに証言の要旨を告知し、その証人を尋問する機会を与えなければならない。
過去問・解説
(H30 予備 第24問 オ)
裁判所は、証人が被告人の面前においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が出頭している場合に限り、検察官及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中被告人を退廷させることができる。

(正答)

(解説)
304条の2は、「裁判所は、証人を尋問する場合において、証人が被告人の面前…においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が出頭している場合に限り、検察官及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中被告人を退廷させることができる。」と規定している。

(R4 予備 第22問 ア)
裁判所は、弁護人が出頭している法廷で証人を尋問する場合において、証人が被告人の面前においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、証人と被告人の間の遮へい措置又はビデオリンク方式が採られている場合を除き、検察官及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中被告人を退廷させることができる。

(正答)

(解説)
304条の2は、「裁判所は、証人を尋問する場合において、証人が被告人の面前(第157条の5第1項に規定する措置〔注:遮へい措置〕を採る場合並びに第157条の6第1項及び第2項に規定する方法〔注:ビデオリンク方式〕による場合を含む。)においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が出頭している場合に限り、検察官及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中被告人を退廷させることができる。」と規定している。
したがって、遮へい措置やビデオリンク方式が採られている場合にも、証人の供述中被告人を退廷させ得る。
総合メモ

第305条

条文
第305条(証拠書類等に対する証拠調べの方式)
① 検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させなければならない。ただし、裁判長は、自らこれを朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させることができる。
② 裁判所が職権で証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、自らその書類を朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
③ 第290条の2第1項又は第3項の決定があったときは、前2項の規定による証拠書類の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。
④ 第290条の3第1項の決定があった場合における第1項又は第2項の規定による証拠書類の朗読についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
⑤ 第157条の6第4項の規定により記録媒体がその一部とされた調書の取調べについては、第1項又は第2項の規定による朗読に代えて、当該記録媒体を再生するものとする。ただし、裁判長は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、当該記録媒体の再生に代えて、当該調書の取調べを請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官に当該調書に記録された供述の内容を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
⑥ 裁判所は、前項の規定により第157条の6第4項に規定する記録媒体を再生する場合において、必要と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、第157条の5に規定する措置を採ることができる。

第306条(証拠物に対する証拠調べの方式)
① 検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠物の取調をするについては、裁判長は、請求をした者をしてこれを示させなければならない。但し、裁判長は、自らこれを示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させることができる。
② 略

刑事訴訟規則第203条の2(証拠書類等の取調の方法・法第305条等)
① 裁判長は、訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、請求により証拠書類又は証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについての朗読に代えて、その取調を請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にその要旨を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
② 略
過去問・解説
(H23 司法 第34問 ア)
被告人甲が、被害者V宅において、Vを包丁で突き刺して殺害したという事件に関し、後記aからfまでの【証拠】がある。
【証拠】
a.V宅でVを包丁で突き刺した旨の甲が作成した供述書
b.事件直前、V宅を訪ねてきた甲を応接間に通した後、しばらくして、Vの叫び声が聞こえ、応接間を確認したところ、倒れているVを発見した旨のVの妻Aの供述を録取した書面
c.Vの妻A立会いのもとで、司法警察職員が任意処分として行った検証の結果を記載した書面
d.犯行現場に遺留されていた包丁
e.前記包丁に付着していた血液のDNA型がVのものと一致する旨の鑑定の結果を記載した書面
f.甲宅から押収した日記(事件前日の欄に、「Vと口論となった挙句、拳で顔面を殴られた。許せない。」と記載のあるもの。)

a、b、c及びeは、証拠書類であるから、その取調べをするについては、朗読又はその要旨を告げる必要があり、d及びfは、証拠物であるから、その取調べをするについては、示させる必要があるがそれで足り、fの記載内容を立証する場合であっても、これを朗読する必要はない。

(正答)

(解説)
305条1項本文は、「検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させなければならない」と規定している。
また、306条1項本文は、「検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠物の取調をするについては、裁判長は、請求をした者をしてこれを示させなければならない。」と規定している。
そして、307条は、「証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについては、前条の規定による外、第305条の規定による。」と規定している。
abceについては、その書面の内容のみが証拠となるため、証拠書類であり、その取調べをするについては、朗読する必要がある。
dfについては、証拠物であるため、その取調べをするについては、朗読する必要がある。
fについては、日記に記載された内容を立証する場合、日記の記載内容が証拠となる以上、「証拠物中書面の意義が証拠となるもの」に当たるから、展示することの他、朗読する必要がある。

(H29 予備 第24問 イ)
甲は、冒頭手続において、甲がVの頭部を鉄パイプで殴打し、加療約1か月間の傷害を負わせた旨の公訴事実につき、これを認める旨の陳述をし、弁護人も被告人と同旨であるとの意見を述べた。
 検察官は、公訴事実を立証するため、証拠書類のほか、Vの血液が付着した鉄パイプの証拠調べ請求を行い、弁護人は、証拠書類全てを証拠とすることに同意し、鉄パイプの証拠調べについては異議がない旨の意見を述べた。
 検察官請求証拠の証拠調べ終了後、弁護人は、甲とVとの間の示談書及び甲がV宛てに郵送した反省文の写しの証拠調べ請求を行い、検察官は、これら全てを証拠とすることに同意した。
証拠として採用する決定があった証拠書類の取調べについては、必ず朗読の方法で行わなければならない。

(正答)

(解説)
305条1項は、「検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させなければならない。ただし、裁判長は、自らこれを朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させることができる。」と規定している。
他方、刑事訴訟規則302条の2第1項は、「裁判長は、訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、請求により証拠書類又は証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについての朗読に代えて、その取調を請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にその要旨を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。」と規定しており、朗読に代えて要旨の告知によることを認めている。
したがって、証拠として採用する決定があった証拠書類の取調べについては、必ず朗読の方法で行わなければならないわけではない。
総合メモ

第306条

条文
第306条(証拠物に対する証拠調べの方式)
① 検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠物の取調をするについては、裁判長は、請求をした者をしてこれを示させなければならない。但し、裁判長は、自らこれを示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させることができる。
② 裁判所が職権で証拠物の取調をするについては、裁判長は、自らこれを訴訟関係人に示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させなければならない。
過去問・解説
(H20 司法 第33問 エ)
検察官は、ハンマーを凶器とする傷害被告事件の証拠として、犯行に使用されたとされるハンマーの証拠調べを請求した。ハンマーの証拠調べの方法は、ハンマーを裁判所と訴訟関係人が認識できる状態にすることである。

(正答)

(解説)
306条1項本文は、「検察官…の請求により、証拠物の取調をするについては、裁判長は、請求をした者をしてこれを示させなければならない。」と規定している。
そして、ここでいう示すとは、証拠物の存在・状態を裁判所及び訴訟関係人が明確に認識しうるように展示することをいう。

(H29 予備 第24問 ウ)
甲は、冒頭手続において、甲がVの頭部を鉄パイプで殴打し、加療約1か月間の傷害を負わせた旨の公訴事実につき、これを認める旨の陳述をし、弁護人も被告人と同旨であるとの意見を述べた。
 検察官は、公訴事実を立証するため、証拠書類のほか、Vの血液が付着した鉄パイプの証拠調べ請求を行い、弁護人は、証拠書類全てを証拠とすることに同意し、鉄パイプの証拠調べについては異議がない旨の意見を述べた。
 検察官請求証拠の証拠調べ終了後、弁護人は、甲とVとの間の示談書及び甲がV宛てに郵送した反省文の写しの証拠調べ請求を行い、検察官は、これら全てを証拠とすることに同意した。
検察官は、鉄パイプの証拠調べにおいて、鉄パイプを被告人に展示する際、事件との関連性を被告人に質問しなければならない。

(正答)

(解説)
306条1項は、「検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠物の取調をするについては、裁判長は、請求をした者をしてこれを示させなければならない。但し、裁判長は、自らこれを示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させることができる。」と規定している。
他方、証拠物を展示する際に事件との関連性を被告人に質問することを要求する規定は存在しない。
総合メモ

第309条

条文
第309条(証拠調べに関する異議申立て、裁判長の処分に対する異議申立て)
① 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。
② 検察官、被告人又は弁護人は、前項に規定する場合の外、裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。
③ 裁判所は、前2項の申立について決定をしなければならない。

第288条(被告人の在廷義務、法廷警察権)
① 略
② 裁判長は、被告人を在廷させるため、又は法廷の秩序を維持するため相当な処分をすることができる。

第294条(訴訟指揮権)
公判期日における訴訟の指揮は、裁判長がこれを行う。

第295条(弁論等の制限)
① 裁判長は、訴訟関係人のする尋問又は陳述が既にした尋問若しくは陳述と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、訴訟関係人の本質的な権利を害しない限り、これを制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても同様である。
②〜⑥ 略

第298条(証拠調べの請求、証権証拠調べ)
① 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。
② 略

刑事訴訟規則第190条(証拠決定・法第298条等)
① 証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。
② 前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を、職権による場合には、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
③ 略

刑事訴訟規則第199条の3(主尋問・法第304条)
①〜② 略
③ 主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。ただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる
 一〜七 略
④〜⑤ 略

刑事訴訟規則第199条の13(証人尋問の方法・法第304条)
① 略
② 訴訟関係人は、次に掲げる尋問をしてはならない。ただし、第2号から第4号までの尋問については、正当な理由がある場合は、この限りでない。
 一 略
 二 すでにした尋問と重複する尋問
 三〜四 略

刑事訴訟規則第205条(異議申立ての事由・法第309条)
① 法第309条第1項の異議の申立は、法令の違反があること又は相当でないことを理由としてこれをすることができる。但し、証拠調に関する決定に対しては、相当でないことを理由としてこれをすることはできない。
② 法第309条第2項の異議の申立は、法令の違反があることを理由とする場合に限りこれをすることができる。

刑事訴訟法第205条の2(異議申立ての方式、時期・法第309条)
異議の申立は、個々の行為、処分又は決定ごとに、簡潔にその理由を示して、直ちにしなければならない。

刑事訴訟規則第205条の3(異議申立てに対する決定の時期・法第309条)
異議の申立については、遅滞なく決定をしなければならない。

刑事訴訟規則第206条(重ねて異議を申立てることの禁止・法第309条)
異議の申立について決定があったときは、その決定で判断された事項については、重ねて異議を申し立てることはできない。

刑事訴訟規則第208条(釈明等)
① 裁判長は、必要と認めるときは、訴訟関係人に対し、釈明を求め、又は立証を促すことができる。
②〜③ 略
過去問・解説
(H22 司法 第35問 ア)
弁護人 裁判長、ただいま検察官が朗読した起訴状記載の公訴事実のうち、共謀の日時及び場所について検察官に対する釈明を求めます。
裁判長 現段階では求釈明の必要はないと考えます。
弁護人 異議あり。釈明権の不行使は裁量の範囲を逸脱しており違法と考えます。

以上の記述中下線部については、刑事訴訟法第309条第1項に定める証拠調べに関する異議に当たる。

(正答)

(解説)
294条は、「公判期日における訴訟の指揮は、裁判長がこれを行う。」と規定しており、これを受けて、刑事訴訟規則208条1項は、「裁判長は、必要と認めるときは、訴訟関係人に対し、釈明を求め、又は立証を促すことができる。」と規定している。
また、309条2項は、「弁護人は、…裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。」と規定しているところ、裁判長の釈明権の不行使は、「裁判長の処分」に該当するため、309条2項の異議に該当する。

(H22 司法 第35問 イ)
検察官 証人は、犯人を目撃しましたか。
証 人 はい。黒っぽいジャンパーを着た若い感じの男でした。
検察官 犯人の年格好は被告人と比べてどうですか。
弁護人 異議あり。誘導尋問です。

以上の記述中下線部については、刑事訴訟法第309条第1項に定める証拠調べに関する異議に当たる。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則199条の3第3項柱書本文は、「主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。」と規定している。
したがって、下線部の異議は、検察官の証拠調べに関する訴訟行為に対するものである。
309条1項は、「弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。」と規定しているところ、誘導尋問に関する異議は、「証拠調」に関する異議であるため、309条1項の異議に該当する。

(H22 司法 第35問 ウ)
検察官 被告人に対する処罰について、証人から裁判所に述べておきたいことはありますか。
証 人 できるだけ長く刑務所に入れてほしいと思います。
被告人 何が刑務所だよ。ばか言ってるんじゃないよ。覚えてろよ。
裁判長 被告人が勝手に発言することを禁じます。
弁護人 異議あり。ただいまの発言禁止の措置は、著しく不相当で権限の濫用に当たり違法と考えます。

以上の記述中下線部については、刑事訴訟法第309条第1項に定める証拠調べに関する異議に当たる。

(正答)

(解説)
288条2項は、「裁判長は、被告人を在廷させるため、又は法廷の秩序を維持するため相当な処分をすることができる。」と規定しており、発言禁止の措置は、「相当な処分」として行われている。
309条2項は、「弁護人は、…裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。」と規定しているところ、発言禁止の措置は、「裁判長の処分」に該当するため、309条2項の異議に該当する。

(H22 司法 第35問 エ)
裁判長 検察官から刑事訴訟法321条1項2号後段書面として請求があった甲4号証は、特信性が認められないので却下します。
検察官 異議あり。ただいまの却下決定は、特信性の判断を誤っており違法であると考えます。

以上の記述中下線部については、刑事訴訟法第309条第1項に定める証拠調べに関する異議に当たる。

(正答)

(解説)
298条1項は、「検察官…は、証拠調を請求することができる。」と規定しており、刑事訴訟規則190条1項は、「証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。」と規定しているところ、本肢では、かかる規定に基づいて、裁判所の証拠調請求却下決定がなされている。
309条1項は、「検察官…は、証拠調に関し異議を申し立てることができる」と規定しているところ、裁判所の証拠調請求却下決定は、「証拠調」に関する異議であるため、309条1項の異議に該当する。

(H22 司法 第35問 オ)
検察官は、執行猶予中の被疑者が再度その前科と同種の犯罪に及んだ場合であっても、犯罪の軽重及び情状等を考慮して、公訴を提起しないことができる。

(正答)

(解説)
248条は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」と規定している。
これについて、執行猶予中の被疑者が再度その前科と同種の犯罪に及んだ場合を除外する規定は存在しないため、そのような場合であっても、公訴を提起しないことができる。

(H25 司法 第30問 ア)
検察官は、Vを被害者とする傷害罪により甲を起訴したが、凶器を特定することができなかったことから、起訴状には、「Vの足を刃物様の物で1回突き刺した」旨記載し、裁判所においては、合議体で審理及び裁判をする旨の決定がなされた。検察官の起訴状朗読の後、弁護人は、裁判長に対し、「刃物様の物」がいかなる凶器であるのか検察官に釈明を求めるように申し立てたが、①裁判長は、その必要がないと判断して釈明を求めなかった。
下線部①につき、裁判長が釈明を求めなかったことについての異議申立ては、法令の違反があることを理由とする場合に限られる。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則208条1項は、「裁判長は、必要と認めるときは、訴訟関係人に対し、釈明を求め、又は立証を促すことができる。」と規定しており、本肢の求釈明は、証拠調べに関する処分以外の裁判長の処分である。
そして、309条2項は、「検察官、被告人又は弁護人は、前項に規定する場合の外、裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。」と規定しており、刑事訴訟規則205条2項は、「法第309条第2項の異議の申立は、法令の違反があることを理由とする場合に限りこれをすることができる。」と規定している。
したがって、裁判長が釈明を求めなかったことについての異議申立ては、法令の違反があることを理由とする場合に限られている。

(H25 司法 第30問 イ)
検察官は、Vを被害者とする傷害罪により甲を起訴したが、凶器を特定することができなかったことから、起訴状には、「Vの足を刃物様の物で1回突き刺した」旨記載し、裁判所においては、合議体で審理及び裁判をする旨の決定がなされた。検察官の起訴状朗読の後、弁護人は、裁判長に対し、「刃物様の物」がいかなる凶器であるのか検察官に釈明を求めるように申し立てたが、裁判長は、その必要がないと判断して釈明を求めなかった。証拠調べ手続において、検察官は、目撃者の供述を録取した検察官調書の証拠調べを請求したが、弁護人が同意しなかったことから、目撃者の証人尋問を請求し、裁判所もこれを取り調べる旨の決定をした。目撃者に対する主尋問においては、②検察官の尋問に対して弁護人が異議を申し立てることがあった。
下線部②につき、検察官の尋問に対する異議申立ては、法令の違反があることを理由とする場合に限られる。

(正答)

(解説)
309条1項は、「被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。」と規定している。
本肢のような、証人尋問に対する異議申し立ては、「証拠調」に関する異議申し立てに該当する。
そして、刑事訴訟規則205条1項本文は、「法第309条第1項の異議の申立は、法令の違反があること又は相当でないことを理由としてこれをすることができる。」と規定している。
したがって、検察官の尋問に対する異議申立ては、法令の違反があることを理由とする場合に限られず、相当でないことを理由とする場合も含まれる。

(H25 司法 第30問 ウ)
検察官は、Vを被害者とする傷害罪により甲を起訴したが、凶器を特定することができなかったことから、起訴状には、「Vの足を刃物様の物で1回突き刺した」旨記載し、裁判所においては、合議体で審理及び裁判をする旨の決定がなされた。検察官の起訴状朗読の後、弁護人は、裁判長に対し、「刃物様の物」がいかなる凶器であるのか検察官に釈明を求めるように申し立てたが、①裁判長は、その必要がないと判断して釈明を求めなかった。証拠調べ手続において、検察官は、目撃者の供述を録取した検察官調書の証拠調べを請求したが、弁護人が同意しなかったことから、目撃者の証人尋問を請求し、裁判所もこれを取り調べる旨の決定をした。目撃者に対する主尋問においては、②検察官の尋問に対して弁護人が異議を申し立てることがあった。
下線部②につき、裁判長は、弁護人の異議申立てに対して判断するに当たり、他の裁判官との合議を経る必要がない。

(正答)

(解説)
309条1項は、「被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。」と規定している。
本肢のような、証人尋問に対する異議申し立ては、「証拠調」に関する異議申し立てに該当する。
刑事訴訟規則205条の3は、「異議の申立については、遅滞なく決定をしなければならない。」と規定していることから、異議申し立てに対しては決定がなされる。
そして、決定で判断するにあたって、合議体においては、必ず合議を経る必要がある。

(H25 司法 第30問 エ)
検察官は、Vを被害者とする傷害罪により甲を起訴したが、凶器を特定することができなかったことから、起訴状には、「Vの足を刃物様の物で1回突き刺した」旨記載し、裁判所においては、合議体で審理及び裁判をする旨の決定がなされた。検察官の起訴状朗読の後、弁護人は、裁判長に対し、「刃物様の物」がいかなる凶器であるのか検察官に釈明を求めるように申し立てたが、①裁判長は、その必要がないと判断して釈明を求めなかった。証拠調べ手続において、検察官は、目撃者の供述を録取した検察官調書の証拠調べを請求したが、弁護人が同意しなかったことから、目撃者の証人尋問を請求し、裁判所もこれを取り調べる旨の決定をした。目撃者に対する主尋問においては、②検察官の尋問に対して弁護人が異議を申し立てることがあった。結局、目撃者は、記憶が減退してしまったとして検察官調書の記載内容と実質的に異なった供述をしたので、検察官が、検察官調書を刑事訴訟法第321条第1項第2号に基づき証拠調べ請求した。③弁護人は、検察官調書における供述を信用すべき特別の情況がない旨意見を述べたが、裁判所は、検察官調書を取り調べる旨の決定をした。
下線部③につき、弁護人は、検察官調書の証拠調べをする決定に不服がある場合には、直ちに抗告する必要がある。

(正答)

(解説)
309条1項は、「被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。」と規定している。
本肢において、弁護人は、「証拠調に関し異議を申し立てる」ことができるのであって、直ちに抗告する必要があるのではない。

(H25 司法 第30問 オ)
検察官は、Vを被害者とする傷害罪により甲を起訴したが、凶器を特定することができなかったことから、起訴状には、「Vの足を刃物様の物で1回突き刺した」旨記載し、裁判所においては、合議体で審理及び裁判をする旨の決定がなされた。検察官の起訴状朗読の後、弁護人は、裁判長に対し、「刃物様の物」がいかなる凶器であるのか検察官に釈明を求めるように申し立てたが、①裁判長は、その必要がないと判断して釈明を求めなかった。証拠調べ手続において、検察官は、目撃者の供述を録取した検察官調書の証拠調べを請求したが、弁護人が同意しなかったことから、目撃者の証人尋問を請求し、裁判所もこれを取り調べる旨の決定をした。目撃者に対する主尋問においては、②検察官の尋問に対して弁護人が異議を申し立てることがあった。結局、目撃者は、記憶が減退してしまったとして検察官調書の記載内容と実質的に異なった供述をしたので、検察官が、検察官調書を刑事訴訟法第321条第1項第2号に基づき証拠調べ請求した。③弁護人は、検察官調書における供述を信用すべき特別の情況がない旨意見を述べたが、裁判所は、検察官調書を取り調べる旨の決定をした。
下線部③につき、裁判所は、仮に検察官からの証拠調べ請求を却下する場合であっても、弁護人の意見を聴く必要がある。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則190条は、1項において、「証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。」と規定し、2項において、「前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を…聴かなければならない。」と規定している。
したがって、裁判所は、仮に検察官からの証拠調べ請求を却下する場合であっても、弁護人の意見を聴く必要がある。

(H26 司法 第31問 エ)
勾留中の被告人甲は、傷害の公訴事実により、H地方裁判所に起訴されるとともに、H地方裁判所裁判官から接見禁止の裁判を受けた。その後、被告人甲の弁護人に選任されたAは、H拘置所において、被告人甲と接見し、正当防衛の主張をする弁護方針を立てた。
 本件傷害被告事件は、公判前整理手続に付されたところ、この公判前整理手続の中で、検察官は、検察官が目撃者Wの供述を録取した供述録取書1通[供述録取書ア]の取調べを請求し、弁護人Aにも開示したが、警察官が目撃者Wの供述を録取した供述録取書1通[供述録取書イ]については、その取調べを請求することもなく、弁護人Aにも開示しなかった。そこで、弁護人Aは、検察官に対し、刑事訴訟法第316条の15に基づき、[供述録取書ア]の証明力を判断するために重要な証拠として、[供述録取書イ]の開示を請求した。また、弁護人Aは、公判前整理手続の中で、刑事訴訟法第316条の17に基づき、裁判所及び検察官に対し、正当防衛の主張等証明予定事実その他公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張を明らかにした。
 その後、公判前整理手続が終了して第1回公判期日が開かれたところ、検察官は、同公判において、冒頭陳述を行った。また、同公判において、目撃者Wの証人尋問が実施された後、検察官は、刑事訴訟法第321条第1項第2号後段に基づき、[供述録取書ア]の取調べを請求したところ、⑤裁判所は、弁護人Aの意見を聴いた上で、[供述録取書ア]の取調べを決定した。
弁護人Aは、下線部⑤の決定については、これに先立ち裁判所から意見を聴かれているものの異議を申し立てることができる。

(正答)

(解説)
309条1項は、「被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。」と規定している。
下線部⑤の決定は、供述録取書という証拠物の取調べの決定であるから、証拠調の決定に当たる。
したがって、弁護士Aは、下線部⑤の決定については、これに先立ち裁判所から意見を聴かれているものの異議を申し立てることができる。

(H27 予備 第19問 イ)
弁護人が行った証拠調べに関する異議の申立てについて、裁判所が決定で棄却したのに対し、弁護人は、その判断に不服があるときでも、重ねて異議を申し立てることはできない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則206条は、「異議の申立について決定があったときは、その決定で判断された事項については、重ねて異議を申し立てることはできない。」と規定している。

(H27 予備 第19問 エ)
同一事件の共犯者である甲と乙が、共同被告人として併合審理を受けている場合、検察官が、乙のためにのみその供述録取書の証拠調べを請求したとき、甲及び甲の弁護人は、これに対して意見を述べる権利がある。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則190条は、1項において、「証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。」と規定し、2項において、「前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を、職権による場合には、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。」と規定している。
もっとも、共同被告人が併合審理を受けている場合でも、証拠調べ請求や証拠調べ決定は被告人ごとに別々に行われる。
したがって、検察官が乙のためにのみその供述録取書の証拠調べを請求している本肢においては、甲及び甲の弁護人は「相手方又はその弁護人」に当たらず、その意見を聴く必要はない。

(H27 予備 第20問 ア)
司法警察員Kは、現住建造物に対する放火事件の捜査として、焼損した建造物につき、その所有者Vを立会人とする見分を行い、実況見分調書を作成した(実況見分調書には、Vの署名・押印のいずれもない。)。Vが実況見分の際に建造物の特定の箇所を指し示しながら、Kに対し「ここにAが火を付けるのを見た。」旨説明したので、Kは、その箇所を写真撮影した後、同写真を実況見分調書に添付するとともに、Vの前記説明内容を実況見分調書に記載した。その後、Aが同事件の犯人として起訴された。検察官は、当該被告事件の公判前整理手続において、「建造物の焼損状況」を立証趣旨として実況見分調書の証拠調べを請求した。弁護人は、「Aは犯人ではなく、本件火災はVによる失火が原因である。」旨主張した上、実況見分調書について不同意の意見を述べた。弁護人は、裁判長から、不同意意見の理由として実況見分調書が真正に作成されたものであることを争う趣旨であるかについて釈明を求められた場合には、釈明する義務を負う。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則208条は、「裁判長は、必要と認めるときは、訴訟関係人に対し、釈明を求め、又は立証を促すことができる。」と規定している。
そして、釈明を求められた訴訟関係人は、釈明する義務を負うと解されている。
したがって、弁護人は、裁判長から、不同意意見の理由として実況見分調書が真正に作成されたものであることを争う趣旨であるかについて釈明を求められた場合には、釈明する義務を負う。

(H27 予備 第21問 イ)
検察官、被告人又は弁護人は、裁判所による証拠調べの決定に対し、適法に異議を申し立てることができる。

(正答)

(解説)
319条は、「検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。」と規定している。
ここでいう、「証拠調に関し」とは、裁判所、裁判長、裁判官、検察官、被告人又は弁護人による証拠調べに関するあらゆる訴訟行為に関してという意味であり、裁判所による証拠調べの決定もこれに含まれる。

(H29 予備 第22問 ア)
検察官は、甲に対する傷害被疑事件の捜査において、目撃者Wを取り調べて供述録取書(以下「検察官調書」という。)を作成した上、甲を傷害罪で地方裁判所に起訴した。検察官は、公判において、検察官調書の取調べを請求したが、弁護人は、これを証拠とすることに同意しなかった。そこで、検察官は、Wの証人尋問を請求した。裁判所は、Wが病気で入院していたため、検察官及び弁護人の意見を聴いて、Wの入院先の病院においてWの証人尋問を実施することを決定した。その後、同病院において、Wの証人尋問が実施されたところ、Wは、検察官調書の内容と相反する供述をした。
弁護人は、裁判所がWの証人尋問の実施場所を病院と定めたことについて、相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることはできない。

(正答)

(解説)
309条1項は、「検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。」と規定しており、刑事訴訟規則205条1項は、「法第309条第1項の異議の申立は、法令の違反があること又は相当でないことを理由としてこれをすることができる。但し、証拠調に関する決定に対しては、相当でないことを理由としてこれをすることはできない。」と規定している。
裁判所がWの証人尋問の実施場所を病院と定めたことは、「証拠調に関する決定」に当たるから、弁護人は、相当でないことを理由として異議を申し立てることはできない。

(R3 予備 第25問 ア)
検察官、被告人又は弁護人は、裁判所による証拠調べ請求を却下した決定に対し、相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることができる。

(正答)

(解説)
309条1項は、「検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。」と規定しており、刑事訴訟規則205条1項は、「法第309条第1項の異議の申立は、法令の違反があること又は相当でないことを理由としてこれをすることができる。但し、証拠調に関する決定に対しては、相当でないことを理由としてこれをすることはできない。」と規定している。

(R3 予備 第25問 イ)
合議体の裁判長は、証人尋問において、検察官の尋問に対する弁護人の異議申立てに対して判断をするに当たり、陪席裁判官との合議を経る必要がある。

(正答)

(解説)
309条は、1項において、「検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。」と規定し、3項において、「裁判所は、前2項の申立について決定をしなければならない。」と規定している。
決定の主体は、「裁判所」とされているのであるから、裁判所が合議体で構成されている場合、裁判長は陪席裁判官との審議を経る必要がある。

(R3 予備 第25問 ウ)
証人尋問における異議の申立てについては、個々の行為、処分又は決定ごとに、直ちにしなければならないが、その理由を示す必要はない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則205条の2は、「異議の申立は、個々の行為、処分又は決定ごとに、簡潔にその理由を示して、直ちにしなければならない。」と規定している。

(R3 予備 第25問 エ)
検察官、被告人又は弁護人は、裁判長の訴訟指揮に基づく処分に対し、相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることができる。

(正答)

(解説)
309条2項は、「検察官、被告人又は弁護人は、前項に規定する場合の外、裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。」と規定しており、刑事訴訟規則205条2項は、「法第309条第2項の異議の申立は、法令の違反があることを理由とする場合に限りこれをすることができる。」と規定している。
裁判長の訴訟指揮に基づく処分は、309条2項の「裁判長の処分」に当たるため、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長の訴訟指揮に基づく処分に対し、相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることはできない。

(R3 予備 第25問 オ)
弁護人が行った証拠調べに関する異議の申立てについて、裁判所が決定で棄却したのに対し、弁護人は、その判断に不服があるときでも、その決定で判断された事項については、重ねて異議を申し立てることはできない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則206条は、「異議の申立について決定があったときは、その決定で判断された事項については、重ねて異議を申し立てることはできない。」と規定している。
総合メモ

第310条

条文
第310条(証拠調べを終わった証拠の提出)
 証拠調を終った証拠書類又は証拠物は、遅滞なくこれを裁判所に提出しなければならない。但し、裁判所の許可を得たときは、原本に代え、その謄本を提出することができる。
過去問・解説
(H29 予備 第24問 エ)
甲は、冒頭手続において、甲がVの頭部を鉄パイプで殴打し、加療約1か月間の傷害を負わせた旨の公訴事実につき、これを認める旨の陳述をし、弁護人も被告人と同旨であるとの意見を述べた。
 検察官は、公訴事実を立証するため、証拠書類のほか、Vの血液が付着した鉄パイプの証拠調べ請求を行い、弁護人は、証拠書類全てを証拠とすることに同意し、鉄パイプの証拠調べについては異議がない旨の意見を述べた。
 検察官請求証拠の証拠調べ終了後、弁護人は、甲とVとの間の示談書及び甲がV宛てに郵送した反省文の写しの証拠調べ請求を行い、検察官は、これら全てを証拠とすることに同意した。
示談書の原本が取り調べられた後、弁護人は、裁判所の許可を得て、示談書の写しを提出することができる。

(正答)

(解説)
310条は、「証拠調を終った証拠書類又は証拠物は、遅滞なくこれを裁判所に提出しなければならない。但し、裁判所の許可を得たときは、原本に代え、その謄本を提出することができる。」と規定している。
したがって、同条但書により、弁護人は、裁判所の許可を得て、示談書の写しを提出することが認められる。
総合メモ

第311条

条文
第311条(被告人の黙秘権・供述拒否権、任意の供述)
① 被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。
② 被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。
③ 陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。
過去問・解説
(H24 共通 第40問 エ)
被告人甲の弁護人は、裁判長に告げて、共同審理を受けている被告人乙の供述を求めることができるが、甲が乙の供述を求めることはできない。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」と規定している。
したがって、共同被告人甲の弁護人だけでなく、甲自身も、裁判長に告げて、共同審理を受けている被告人乙の供述を求めることができる。

(H25 共通 第31問 ア)
被告人質問については、証拠調べの最終の段階で行うこととされており、検察官の立証が終了する前に被告人質問を実施することは許されない。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
したがって、被告人質問は、「何時でも」可能なのであるから、検察官の立証が終了する前に被告人質問を実施することも許される。

(H25 共通 第31問 イ)
被告人質問を実施するためには証拠調べの請求や決定を必要としない。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
他方、被告人質問の実施に際し、証拠調べの請求や決定を必要とする規定は存在しない。

(H25 共通 第31問 ウ)
被告人質問を開始するに当たっては、あらかじめ被告人に供述する意思の有無を確かめなければ違法な手続となる。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
他方、被告人質問の実施に際し、あらかじめ被告人に供述する意思の有無を確かめなければならないとする規定は存在しない。

(H25 共通 第31問 エ)
被告人質問においては、まず弁護人が質問し、次いで検察官が質問をするという順番によらなければならない。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
他方、被告人質問の実施に際し、まず弁護人が質問し、次いで検察官が質問をするという順番によらなければならないとする規定は存在しない。

(H25 共通 第31問 オ)
当事者の質問終了後、裁判長が被告人に対し質問をしなかったとしても、訴訟手続の法令違反の問題は生じない。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
裁判所の補充質問は、裁判長の権利であって義務ではない。
したがって、当事者の質問終了後、裁判長が被告人に対し質問をしなかったとしても、訴訟手続の法令違反の問題は生じない。

(H26 共通 第30問 ウ)
被告人Aと被告人Bは、共謀の上、A方で覚せい剤を所持したとの覚せい剤取締法違反に係る公訴事実で起訴された。公判廷では、Aは、Bと共に犯行に及んだことを認める旨の供述をしているが、Bは、自己の関与を否定する旨の供述をしている。検察官は、A方から押収された覚せい剤、同覚せい剤の鑑定書、A方の捜索差押調書等の証拠調べを請求している。
Aの弁護人だけでなく、Bの弁護人も、Aに対し、その供述を求めるための質問をすることができる。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「共同被告人…の弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
したがって、Aの弁護人だけでなく、共同被告であるBの弁護人も、Aに対し、その供述を求めるための質問をすることができる。

(R2 予備 第21問 ア)
被告人質問を実施するためには、証拠調べの請求や決定を必要としない。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
他方、証拠調べの請求や決定は要求されていない。

(R2 予備 第21問 イ)
被告人質問を実施する場合には、他の証拠が全て取り調べられた後にこれを行わなければならない。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
他方、被告人質問を実施する場合には、他の証拠が全て取り調べられた後にこれを行わなければならないとする規定は存在しない。

(R2 予備 第21問 ウ)
被告人質問を実施する場合には、まず裁判長が質問をしなければならず、弁護人がこれに先んじて質問をすることはできない。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
他方、まず裁判長が質問をしなければならず、弁護人がこれに先んじて質問をすることはできないとする規定は存在しない。

(R2 予備 第21問 エ)
被告人は、供述を拒む場合に、その理由を明らかにする必要はない。

(正答)

(解説)
311条1項は、「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。」と規定している。
したがって、被告人は、供述を拒む場合に、その理由を明らかにする必要はない。

(R2 予備 第21問 オ)
被告人が任意に供述をする場合には、共同被告人の弁護人は、裁判長に告げて、被告人の供述を求めることができる。

(正答)

(解説)
311条は、2項において、「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」と規定し、3項において、「陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。」として、被告人質問について規定している。
したがって、被告人が任意に供述をする場合には、共同被告人の弁護人は、裁判長に告げて、被告人の供述を求めることができる。
総合メモ

第312条

条文
第312条(起訴状の変更)
① 裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
② 裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
③ 第1項の請求は、書面を提出してしなければならない。
④ 検察官は、第1項の請求と同時に、被告人に送達するものとして、前項の書面(以下「訴因変更等請求書面」という。)の謄本を裁判所に提出しなければならない。
⑤ 裁判所は、前項の規定による訴因変更等請求書面の謄本の提出があったときは、遅滞なくこれを被告人に送達しなければならない。
⑥ 第3項の規定にかかわらず、被告人が在廷する公判廷においては、第1項の請求は、口頭ですることができる。この場合においては、第4項の規定は、適用しない。
⑦ 裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に十分な防御の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。
過去問・解説
(H21 司法 第32問 エ)
【事例】
 Vの死体が発見され、司法解剖の結果、Vの死因が頸部圧迫による窒息であることが判明した。その後、警察は、甲及び乙が共謀してVを殺害した事実により、甲を逮捕したが、乙は逃亡してその所在が判明しなかった。甲は、取調べに対し、自分はVの殺害とは無関係である旨供述した。捜査を尽くしたところ、検察官は、甲及び乙が共謀してVを殺害し、殺害の実行行為者が甲であると認定したが、犯行日時については、「平成◯年3月15日ころから同月18日ころまでの間」、犯行場所については、「H市内又はその周辺」、犯行方法については、「何らかの方法で頸部を圧迫した」としか認定できなかった。そのため、検察官は、甲の勾留満期日に、以下の<公訴事実>で甲を起訴した。
<公訴事実>
 被告人甲は、乙と共謀の上、平成◯年3月15日ころから同月18日ころまでの間、H市内又はその周辺において、Vに対し、殺意をもって、何らかの方法でVの頸部を圧迫し、よって、そのころ、同所付近において、Vを頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。

裁判所は、<公訴事実>の「殺意」を認定することができないと判断した場合、傷害致死の事実が当初の訴因中に含まれていて黙示的に主張されていると解されるときであっても、訴因変更の手続を経ることなく、傷害致死の事実を認定することはできない。

(正答)

(解説)
殺人罪の審理において「殺意」を認定することができないと判断した場合、傷害致死の事実が当初の訴因中に含まれていて黙示的に主張されていると解されるときに傷害致死の事実を認定することを、縮小認定という。このような認定方法は、許容されると解されている。
したがって、裁判所は、<公訴事実>の「殺意」を認定することができないと判断した場合、傷害致死の事実が当初の訴因中に含まれていて黙示的に主張されていると解されるときであれば、訴因変更の手続を経ることなく、傷害致死の事実を認定することができる。

(H21 司法 第33問 ア)
裁判所は、審判対象の設定について検察官に裁量権があるので、検察官に対して訴因を変更すべきことを命ずることはできない。

(正答)

(解説)
312条2項は、「裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因…を…変更すべきことを命ずることができる。」と規定している。

(H23 共通 第29問 ア)
検察官は、第1回の公判期日の前であっても、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因の追加、撤回又は変更を裁判所に請求することができる。

(正答)

(解説)
312条1項は、「裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因…の追加、撤回又は変更を許さなければならない。」と規定している。
また、第1回の公判期日の前の訴因変更を禁止する規定は存在しないため、検察官は、第1回の公判期日の前であっても、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因の追加、撤回又は変更を裁判所に請求することができる。

(H23 共通 第29問 オ)
裁判所は、訴因の追加又は変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に十分な防御の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。

(正答)

(解説)
312条4項は、「裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。」と規定している。

(H24 予備 第26問 3)
審理の途中で予備的訴因を追加することも許される。

(正答)

(解説)
312条1項は、「裁判所は、…公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加…を許さなければならない。」と規定している。
したがって、審理の途中で予備的訴因を追加することも許される。
総合メモ

第313条

条文
第313条(弁論の分離・併合・再開)
① 裁判所は、適当と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、決定を以て、弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる。
② 裁判所は、被告人の権利を保護するため必要があるときは、裁判所の規則の定めるところにより、決定を以て弁論を分離しなければならない。

刑事訴訟規則第210条(意見陳述が行われる公判期日の通知)
裁判所は、被告人の防禦が互に相反する等の事由があって被告人の権利を保護するため必要があると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、決定を以て、弁論を分離しなければならない。
過去問・解説
(H18 司法 第31問 ウ)
弁論併合後に、検察官が甲及び乙以外の者の検察官面前調書を証拠調べ請求し、甲の弁護人が同意、乙の弁護人が不同意の意見を述べた場合は、弁論を分離しない限り、裁判所は、甲に対する関係でも、この検察官面前調書を証拠として採用し、取調べをすることはできない。

(正答)

(解説)
313条は、「裁判所は、適当と認めるときは、…弁論を…併合…することができる」と規定している。
もっとも、弁論の併合は、単に裁判所に格別に係属する複数の事件を一個の手続で併せて同時に審理することをいうに過ぎず、共同被告人のうち、一部の被告人についてのみ限定して訴訟行為を行うことも可能である。
したがって、仮に甲の弁護人が同意、乙の弁護人が不同意の意見を述べたとしても、弁論を分離することなく、甲に対する関係で、証拠として採用し、取り調べることができる。

(H21 司法 第33問 ウ)
裁判所は、適当と認めるときは、職権で、決定を以て、弁論を分離し又は併合することができるが、終結した弁論を再開することはできない。

(正答)

(解説)
313条1項は、「裁判所は、適当と認めるときは、…職権で、決定を以て、弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる。」と規定している。

(H26 共通 第30問 ア)
被告人Aと被告人Bは、共謀の上、A方で覚せい剤を所持したとの覚せい剤取締法違反に係る公訴事実で起訴された。公判廷では、Aは、Bと共に犯行に及んだことを認める旨の供述をしているが、Bは、自己の関与を否定する旨の供述をしている。検察官は、A方から押収された覚せい剤、同覚せい剤の鑑定書、A方の捜索差押調書等の証拠調べを請求している。
本件では、被告人らの防御が互いに相反しているから、裁判所は、必ず弁論を分離しなければならない。

(正答)

(解説)
刑事訴訟規則210条は、「裁判所は、被告人の防禦が互に相反する等の事由があって被告人の権利を保護するため必要があると認めるときは、…弁論を分離しなければならない。」と規定している。
もっとも、この場合においても、「必要があると認めるとき」に弁論を分離する必要があるとしているのみであり、被告人の防禦が互に相反することのみをもって弁論を分離しなければならないわけではない。
総合メモ