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手形法 第18条
条文
第18条(取立委任裏書)
① 裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得但シ所持人ハ代理ノ為ノ裏書ノミヲ為スコトヲ得
② 前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル
③ 代理ノ為ノ裏書ニ依ル委任ハ委任者ノ死亡又ハ其ノ者ガ行為能力ノ制限ヲ受ケタルコトニ因リ終了セズ
① 裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得但シ所持人ハ代理ノ為ノ裏書ノミヲ為スコトヲ得
② 前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル
③ 代理ノ為ノ裏書ニ依ル委任ハ委任者ノ死亡又ハ其ノ者ガ行為能力ノ制限ヲ受ケタルコトニ因リ終了セズ
過去問・解説
(H29 予備 第29問 3)
AがBに対し振り出した約束手形に関して、Bから裏書を受けたCがDに対し「取立てのため」との文言を付して裏書をし、Dが、Aに対し、支払のため手形を呈示したが、支払がなかったため、手形をCに返還した場合には、Dに対する被裏書人欄の記載を抹消しないときであっても、裏書の連続が認められる。
AがBに対し振り出した約束手形に関して、Bから裏書を受けたCがDに対し「取立てのため」との文言を付して裏書をし、Dが、Aに対し、支払のため手形を呈示したが、支払がなかったため、手形をCに返還した場合には、Dに対する被裏書人欄の記載を抹消しないときであっても、裏書の連続が認められる。
(正答) 〇
(解説)
取立委任裏書とは、「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」など、取立委任であることを示す文言を付記した裏書をいう。手形法18条1項本文は、取立委任裏書について、「裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得」と規定している。取立委任裏書は、権利移転的効力(同法14条1項)、これを前提とする担保的効力(同法15条1項)を有せず、代理権授与的効力を有するにとどまるから、裏書人は手形権利者のままであり、被裏書人は権利者である裏書人の代理人として手形上の権利を行使できるにすぎない(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版154頁)。
権利者としての資格に関しては、取立委任裏書は記載がないのと同じ扱いになる。本肢の事例では、A→B(振出)、B→C(裏書)、C→D(取立委任裏書)となっており、DにはCの代理人としての資格が認められるが、「裏書ノ連続」(同法16条1項)によって権利者と推定されるのは裏書人Cである(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版156頁)。
取立委任裏書とは、「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」など、取立委任であることを示す文言を付記した裏書をいう。手形法18条1項本文は、取立委任裏書について、「裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得」と規定している。取立委任裏書は、権利移転的効力(同法14条1項)、これを前提とする担保的効力(同法15条1項)を有せず、代理権授与的効力を有するにとどまるから、裏書人は手形権利者のままであり、被裏書人は権利者である裏書人の代理人として手形上の権利を行使できるにすぎない(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版154頁)。
権利者としての資格に関しては、取立委任裏書は記載がないのと同じ扱いになる。本肢の事例では、A→B(振出)、B→C(裏書)、C→D(取立委任裏書)となっており、DにはCの代理人としての資格が認められるが、「裏書ノ連続」(同法16条1項)によって権利者と推定されるのは裏書人Cである(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版156頁)。
(H29 予備 第30問 5)
AがBに対し振り出した約束手形につき、AB間の手形振出しの原因関係が消滅した場合において、BがCに対し「取立てのため」との文言を付して裏書をしたときは、Aは、Cが債務者を害することを知って手形を取得した場合でなければ、当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができない。
AがBに対し振り出した約束手形につき、AB間の手形振出しの原因関係が消滅した場合において、BがCに対し「取立てのため」との文言を付して裏書をしたときは、Aは、Cが債務者を害することを知って手形を取得した場合でなければ、当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができない。
(正答) ✕
(解説)
手形法18条2項は、取立委任裏書がある場合について、「前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル」と規定している。取立委任裏書の被裏書人は、裏書人の権利を代理行使するにすぎず、独自の経済的利益を有しないから、債務者は裏書人に対して主張できる一切の人的抗弁をもって被裏書人に対抗することができる(手形法17条による人的抗弁の主張制限がない。)が、その一方で、被裏書人に対して有する抗弁をもって対抗することはできない(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版155頁)。
したがって、振出人Aは、取立委任裏書の被裏書人Cが債務者Bを害することを知って手形を取得した場合(手形法17条参照)でなくても、AB間の手形振出しの当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができる。
手形法18条2項は、取立委任裏書がある場合について、「前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル」と規定している。取立委任裏書の被裏書人は、裏書人の権利を代理行使するにすぎず、独自の経済的利益を有しないから、債務者は裏書人に対して主張できる一切の人的抗弁をもって被裏書人に対抗することができる(手形法17条による人的抗弁の主張制限がない。)が、その一方で、被裏書人に対して有する抗弁をもって対抗することはできない(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版155頁)。
したがって、振出人Aは、取立委任裏書の被裏書人Cが債務者Bを害することを知って手形を取得した場合(手形法17条参照)でなくても、AB間の手形振出しの当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができる。