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信教の自由 - 解答モード
加持祈祷事件 最大判昭和38年5月15日
概要
判例
過去問・解説
(H26 共通 第5問 イ)
僧侶がその業務として遂行した行為の結果、刑法上の犯罪構成要件に該当することになった場合、その行為の目的や内容に宗教上の意義が認められるときは、たとえそれが著しく社会的妥当性を欠くものであっても、正当な業務行為として処罰の対象とはならない。
(正答) ✕
(解説)
加持祈祷事件判決(最大判昭38.5.15)は、「信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。…被告人の本件行為は、被害者…の精神異常平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈祷の行としてなされたものであるが、被告人の右加持祈祷行為の動機、手段、方法およびそれによって…被害者の生命を奪うに至つた暴行の程度等は、医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ないというのである。しからば、被告人の本件行為は、所論のように一種の宗教行為としてなされたものであったとしても、…他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、これにより被害者を死に致したものである以上、被告人の右行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないところであって、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはな…い」としているから、宗教上の意義が認められる行為であっても、社会的妥当性を欠くものであれば、正当な業務行為とはえず、違法行為として処罰の対象となる。
(H28 司法 第5問 イ)
僧侶が病者の平癒を祈願して加持祈祷を行うに当たり、病者の手足を縛って線香の火に当てるなどして同人を死亡させることは、医療上一般に承認された治療行為とは到底認められず、信教の自由の保障の限界を逸脱したものであって許されない。
(正答) 〇
(解説)
加持祈祷事件判決(最大判昭38.5.15)は、「信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。…被告人の本件行為は、被害者…の精神異常平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈祷の行としてなされたものであるが、被告人の右加持祈祷行為の動機、手段、方法およびそれによって…被害者の生命を奪うに至つた暴行の程度等は、医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ないというのである。しからば、被告人の本件行為は、所論のように一種の宗教行為としてなされたものであったとしても、…他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、これにより被害者を死に致したものである以上、被告人の右行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないところであって、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはな…い」としているから、宗教上の意義が認められる行為であっても、社会的妥当性を欠くものであれば、正当な業務行為とはえず、違法行為として処罰の対象となる。
宗教法人解散命令事件 最一小決平成8年1月30日
概要
判例
判旨:「宗教法人法(以下「法」という。)…は、宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有してこれを維持運用するなどのために、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とし(法1条1項)、宗教団体に法人格を付与し得ることとしている(法4条)。すなわち、法による宗教団体の規制は、専ら宗教団体の世俗的側面だけを対象とし、その精神的・宗教的側面を対象外としているのであって、信者が宗教上の行為を行うことなどの信教の自由に介入しようとするものではない(法1条2項参照)。法81条に規定する宗教法人の解散命令の制度も、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(同条1項1号)や宗教団体の目的を著しく逸脱した行為(同項2号前段)があった場合、あるいは、宗教法人ないし宗教団体としての実体を欠くに至ったような場合(同項2号後段、3号から5まで)には、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切あるいは不必要となるところから、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わしめることが可能となるようにしたものであり、会社の解散命令(商法58条)と同趣旨のものであると解される。したがって、解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。もっとも、宗教法人の解散命令が確定したときはその清算手続が行われ(法49条2項、51条)、その結果、宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから(法50条参照)、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。このように、宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。
法81条に規定する宗教法人の解散命令の制度は、前記のように、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではなく、その制度の目的も合理的であるということができる。そして、原審が確定したところによれば、抗告人の代表役員であった松本智津夫及びその指示を受けた抗告人の多数の幹部は、大量殺人を目的として毒ガスであるサリンを大量に生成することを計画した上、多数の信者を動員し、抗告人の物的施設を利用し、抗告人の資金を投入して、計画的、組織的にサリンを生成したというのであるから、抗告人が、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたことが明らかである。抗告人の右のような行為に対処するには、抗告人を解散し、その法人格を失わせることが必要かつ適切であり、他方、解散命令によって宗教団体であるオウム真理教やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は、解散命令に伴う間接的で事実上のものであるにとどまる。したがって、本件解散命令は、宗教団体であるオウム真理教やその信者らの精神的・宗教的側面に及ぼす影響を考慮しても、抗告人の行為に対処するのに必要でやむを得ない法的規制であるということができる。また、本件解散命令は、法81条の規定に基づき、裁判所の司法審査によって発せられたものであるから、その手続の適正も担保されている。宗教上の行為の自由は、もとより最大限に尊重すべきものであるが、絶対無制限のものではなく、以上の諸点にかんがみれば、本件解散命令及びこれに対する即時抗告を棄却した原決定は、憲法20条1項に違背するものではないというべきであ…る。」
過去問・解説
(H20 司法 第6問 ア)
宗教法人解散命令事件(最一小決平成8年1月30日)は、解散命令の制度は専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではないとした。
(H20 司法 第6問 イ)
宗教法人解散命令事件(最一小決平成8年1月30日)は、解散命令の制度は信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのであるから、信者の宗教上の行為に何らの支障も生じさせるものではないとした。
(正答) ✕
(解説)
宗教法人解散命令事件決定(最決平8.1.30)は、「解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。」とする一方で、「もっとも、宗教法人の解散命令が確定したときは…宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。このように、宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。」とし、解散命令により信者の宗教上の行為に何らかの支障が生じることを認めている。
(H20 司法 第6問 ウ)
宗教法人解散命令事件(最一小決平成8年1月30日)は、当該宗教法人に対する解散命令は、宗教法人法第81条の規定に基づき、裁判所の司法審査によって発せられたものであるから、その手続の適正も担保されているとした。
(H20 司法 第6問 エ)
宗教法人解散命令事件(最一小決平成8年1月30日)は、宗教上の行為の自由は、内心における信仰の自由が最大限尊重されるべきものであるのとは異なって、公共の福祉の観点からする合理的な制約に服するべきものであるとした。
(H26 共通 第5問 ウ)
宗教法人が法令に違反して著しく反社会的な行為を組織的に行ったため、裁判所から宗教法人法所定の解散命令を受け、法人格を失った宗教団体やその信者が宗教上の行為を継続する上で支障が生じても、その支障は間接的で事実上のものにとどまるので、やむを得ない。
(H28 司法 第5問 ウ)
宗教法人法の解散命令によって宗教法人を解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させたり宗教上の行為を行ったりすることができるので、宗教上の行為を継続するに当たり何ら支障はない。
(H30 司法 第4問 ウ)
宗教法人に対する解散命令のような法的規制は、たとえ信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあり得ることから、信教の自由の重要性に鑑み、憲法上、そのような規制が許容されるものであるかどうかは慎重に吟味しなければならない。
(正答) 〇
(解説)
宗教法人解散命令事件決定(最決平8.1.30)は、宗教法人解散命令事件決定(最決平8.1.30)は、「解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。」とする一方で、「もっとも、宗教法人の解散命令が確定したときは…宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。このように、宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。」とし、解散命令により信者の宗教上の行為に何らかの支障が生じることを認めている。
エホバの証人剣道受講拒否事件 最二小判平成8年3月8日
概要
判例
過去問・解説
(H21 司法 第6問 ア)
宗教上の教義に基づき高等学校における剣道の実技に参加しなかった生徒がいる場合に、学校側がその生徒の信教の自由を理由として参加したのと同様の評価をすることは、一部の生徒について特定の宗教に基づいて有利な取扱いをすることになる。このことは、ひいてはその宗教を信仰しない他の生徒の信教の自由を侵害することになりかねない。
(正答) ✕
(解説)
エホバの証人剣道受講拒否事件判決(最判平8.3.8)は、「信仰上の真しな理由から剣道実技に参加することができない学生に対し、代替措置として、例えば、他の体育実技の履修、レポートの提出等を求めた上で、その成果に応じた評価をすることが、その目的において宗教的意義を有し、特定の宗教を援助、助長、促進する効果を有するものということはできず、他の宗教者又は無宗教者に圧迫、干渉を加える効果があるともいえないのであって、およそ代替措置を採ることが、その方法、態様のいかんを問わず、憲法20条3項に違反するということができないことは明らかである。」としており、信教の自由を理由に剣道の実技の受講に代わって代替措置をとることが特定の宗教に基づいて有利な取り扱いをすることになるとは述べていない。
(H26 共通 第5問 ア)
生徒が自らの信仰に基づき、その通学する公立校で義務付けられている授業の履修を拒んだため不利益処分を受けることになっても、公教育が特例なしに実施されるべきであることに鑑み、その不利益の内容や程度に関わりなく、これを受忍しなければならない。
(正答) ✕
(解説)
エホバの証人剣道受講拒否事件判決(最判平8.3.8)は、「信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく、体育科目を不認定とした担当教員らの評価を受けて、原級留置処分をし、さらに、不認定の主たる理由及び全体成績について勘案することなく、2年続けて原級留置となったため進級等規程及び退学内規にしたがって学則にいう「学力劣等で成業の見込みがないと認められる者」に当たるとし、退学処分をしたという上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。」とし、不利益の内容や程度に関わりなく受忍しなければならないとはしていない。
「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、…校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである…。」とした上で、「退学処分は学生の身分をはく奪する重大な措置であり、学校教育法施行規則13条3項も4個の退学事由を限定的に定めていることからすると、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要するものである…。また、原級留置処分も、…その学生に与える不利益の大きさに照らして、…同様に慎重な配慮が要求されるものというべきである。」としている。
(H30 司法 第4問 イ)
信仰上の理由から剣道実技の履修を拒否した高等専門学校の生徒に対して学校長が行った原級留置処分及び退学処分は、履修拒否が生徒の信仰の核心部分と密接に関連する真しな理由からのものであり、代替措置の申入れに対して学校側はそれが不可能でないのに何ら検討することなく拒否したなどという事情の下では、裁量権の範囲を超えて違法である。
(正答) 〇
(解説)
エホバの証人剣道受講拒否事件判決(最判平8.3.8)は、「被上告人が剣道実技への参加を拒否する理由は、被上告人の信仰の核心部分と密接に関連する真しなものであった。」とした上で、「信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく、…退学処分をしたという上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。」とし、代替措置を検討せずにした措置は、裁量権の範囲を超えているとしている。
(R6 司法 第4問 ア)
公立学校において、学生の信仰について調査やせん索を行い、宗教を序列化して別段の取扱いをすることは許されない。したがって、公立学校の学生が信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否する場合、その理由の当否を判断するために、学校が宗教上の信条と履修拒否との合理的関連性が認められるかどうかを確認するための調査をすることは、公教育の宗教的中立性に反する。
(正答) ✕
(解説)
エホバの証人剣道受講拒否事件判決(最判平8.3.8)は、「およそ代替措置を採ることが、その方法、態様のいかんを問わず、憲法20条3項に違反するということができないことは明らかである。また、公立学校において、学生の信仰を調査せん索し、宗教を序列化して別段の取扱いをすることは許されないものであるが、学生が信仰を理由に剣道実技の履修を拒否する場合に、学校が、その理由の当否を判断するため、単なる怠学のための口実であるか、当事者の説明する宗教上の信条と履修拒否との合理的関連性が認められるかどうかを確認する程度の調査をすることが公教育の宗教的中立性に反するとはいえないものと解される。」としている。
エホバの証人輸血拒否事件 最三小判平成12年2月29日
概要
判例
Y病院では、外科手術を受ける患者がエホバの証人の信者である場合にはできる限り輸血をしないことにするが、輸血以外に救命手段がない事態に至ったときには患者及びその家族の諾否にかかわらず輸血をするという方針を採っており、医師Zらは、その方針をXに説明することなく手術を実施したところ、手術中に輸血をしなければXを救うことができない可能性が高いという判断に至ったために、Xに対して輸血を行った。
ところが、Zらは、本件手術に至るまでの約一か月の間に、手術の際に輸血を必要とする事態が生ずる可能性があることを認識したにもかかわらず、Xに対してY病院が採用していた右方針を説明せず、X及びその家族に対して輸血する可能性があることを告げないまま本件手術を施行し、右方針に従って輸血をしたのである。そうすると、本件においては、Zらは、右説明を怠ったことにより、Xが輸血を伴う可能性のあった本件手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪ったものといわざるを得ず、この点において同人の人格権を侵害したものとして、同人がこれによって被った精神的苦痛を慰謝すべき責任を負うものというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第6問 ウ)
患者が、輸血を受けることは宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合には、その意思決定をする権利は尊重されなければならない。医師としては、手術の際に輸血以外には救命手段がないと判断したときは輸血するとの方針を採っていることを患者に説明し、手術を受けるか否かをその意思決定にゆだねるべきである。
(正答) 〇
(解説)
エホバの証人輸血拒否事件判決(最判平12.2.29)は、「患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。そして、みさえが、宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有しており、輸血を伴わない手術を受けることができると期待して医科研に入院したことを内田医師らが知っていたなど本件の事実関係の下では、内田医師らは、手術の際に輸血以外には救命手段がない事態が生ずる可能性を否定し難いと判断した場合には、みさえに対し、医科研としてはそのような事態に至ったときには輸血するとの方針を採っていることを説明して、医科研への入院を継続した上、内田医師らの下で本件手術を受けるか否かをみさえ自身の意思決定にゆだねるべきであったと解するのが相当である。」としている。
(H30 司法 第4問 ア)
輸血以外に救命手段がない場合には輸血を拒否するという意思決定を尊重すべきとはいえないので、患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有していたとしても、このような意思決定をする権利は、人格権としての保護に値しない。