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学問の自由 - 解答モード
東大ポポロ事件 最大判昭和38年5月22日
概要
②大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている。
③大学の学生として一般の国民以上に学問の自由を享有し、かつ大学当局の自治的管理による施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてであるところ、大学における学生の集会も、上記の範囲において自由と自治を認められるものにすぎず、学生の集会が真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない。
④本件の東大劇団ポポロ演劇発表会真に学問的な研究と発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会またはこれに準じるものであって、大学の学問の自由と自治を享有しないものであるから、これに警察官が立ち入ったことは大学の学問の自由と自治を犯すものではない。
判例
過去問・解説
(H19 司法 第9問 ア)
学問の自由を保障した憲法23条の規定は、支配的見解によれば、大学における教授その他の研究者の学問研究の自由、学問研究成果の発表の自由及び教授の自由の保障に限定されており、国民一般の学問的活動の自由を保障するものとは解されていない。
(H22 司法 第8問 イ)
最高裁判所の判例によれば、憲法23条は大学における学術研究活動の自由を保障し、国民一般の学問の自由は憲法19条及び21条によって保障される。なぜなら、大学が学術の中心であり、深く真理を探究することが大学の本質であるからである。
(H22 司法 第8問 ウ)
最高裁判所の判例によれば、憲法23条は、狭義の学問の自由ばかりでなく、大学の自治を制度的に保障する。なぜなら、大学における学問の自由を保障するために、大学の自治が伝統的に認められているからである。
(H28 共通 第7問 ア)
学問の自由は、学問的研究の自由とその研究成果の発表の自由を指しており、憲法23条は大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることに鑑みて規定されたものであるから、同条の保障は大学の教授や研究者を対象とするものであり、国民一般はその保障の対象ではない。
(H28 共通 第7問 イ)
大学における学問の自由を保障するために伝統的に大学の自治が認められているところ、学内集会について大学の自治の保障が及ぶか否かの判断に当たって、その集会の目的や性格を考慮することは、学内で行われる活動をその思想内容に着目して規制することになり、大学の自治を認めた趣旨に抵触するから、許されない。
(正答) ✕
(解説)
東大ポポロ事件判決(最大判昭38.5.22)は、「憲法23条の学問の自由は、学生も一般の国民と同じように享有する。しかし、大学の学生としてそれ以上に学問の自由を享有し、また大学当局の自治的管理による施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである。大学における学生の集会も、右の範囲において自由と自治を認められるものであつて、大学の公認した学内団体であるとか、大学の許可した学内集会であるとかいうことのみによつて、特別な自由と自治を享有するものではない。学生の集会が真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しないといわなければならない。」としているから、学内集会について大学の自治の保障が及ぶか否かの判断に当たって、その集会の目的や性格を考慮する立場であるといえる。
(H30 共通 第7問 ア)
大学における学生の集会が、大学の公認した団体が大学の許可を得て開催したものであれば、真に学問的な研究又はその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当たる場合であっても、同集会への警察官の立入りは、大学の有する学問の自由と自治を侵害することとなる。
(正答) ✕
(解説)
東大ポポロ事件判決(最大判昭38.5.22)は、「学生の集会が真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しないといわなければならない。」とした上で、「本件の東大劇団ポポロ演劇発表会は、…真に学問的な研究と発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会またはこれに準じるものであつて、大学の学問の自由と自治は、これを享有しないといわなければならない。したがって、本件の集会に警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と自治を犯すものではない。」としている。
(R2 共通 第7問 ウ)
大学の自治は、大学における研究教育の自由を制度的に保障するために憲法23条によって保障されていると解されるから、教授の任免や施設の管理等、研究教育の内容に直接関係しない事項については、大学の自治権は及ばない。
(R3 司法 第7問 ア)
大学の学問の自由と自治は、大学が学術の中心として深く真理を探究し、専門の学芸を教授研究することを本質とすることに基づくから、教授や研究者の研究、その結果の発表、研究結果の教授の自由とこれらを保障するための自治とを意味すると解されており、大学の学生が学問の自由を享有するのは、教授や研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである。
(R3 司法 第7問 ウ)
大学における学生の集会が大学の学問の自由と自治を享有するか否かは、その集会が真に学問的な研究と発表のためのものか、実社会の政治的社会的活動に当たるかによって判断されるものであり、その集会が公開か否かといった点は考慮されない。
(R5 司法 第5問 イ)
大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められており、この自治は、特に大学の教授その他の研究者の人事に関して認められるとともに、大学の施設と学生の管理についてもある程度で認められる。
(R5 司法 第5問 ウ)
憲法23条の学問の自由は、学問研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含むものであるが、教育ないし教授の自由は、学問の自由と密接な関係を有するけれども、学問の自由に含まれるものではない。
第一次家永教科書事件上告審 最三小判平成5年3月16日
概要
②本件検定は、不合格図書の一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、「検閲」に当たらず、憲法21条2項前段に違反しない。また、本件検定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度のものであるから、憲法21条1項にも違反しない。さらに、旧検定基準は、当該教科・科目の専門知識を有する教科書執筆者がこれらを全体として理解すれば、具体的記述への当てはめができないほどに不明確であるとはいえないから、明確性の原則にも違反しない。
③本件検定は、申請図書に記述された研究結果が旧検定基準の各条件に違反する場合に、教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎないから、憲法23条の規定に違反しない。
④学校教育法51条によって高等学校に準用される同法21条1項は本件検定の根拠規定とみることができるから、本件検定は法治主義に違反しない。また、文部大臣が、学校教育法88条の規定に基づいて、教科書の要件の審査の内容及び基準並びに検定の施行細則である検定の手続を定めたことが、法律の委任を欠くとまではいえない。
⑤検定の審議手続が公開されていないこと、検定不合格の場合は事前に不合格理由についての告知・弁解・防御の機会が与えられず、事後の告知も理由の一部についてされるにすぎないことの故をもって直ちに、本件検定が憲法31条の法意に反するということはできない。
判例
判旨:①「一 所論は、要するに、学校教育法21条1項(昭和45年法律第48号による改正前のもの、以下同じ)、51条(昭和49年法律第70号による改正前のもの、以下同じ)、旧教科用図書検定規則(昭和23年文部省令第四号、以下「旧検定規則」という)、旧教科用図書検定基準(昭和33年文部省告示第86号、以下「旧検定基準」という)に基づく高等学校用の教科用図書の検定(以下「本件検定」という)は、国が教育内容に介入するものであるから、憲法26条、教育基本法10条に違反するというにある。
学校教育法21条1項は、小学校においては文部大臣の検定を経た教科用図書(以下「教科書」という)等を使用しなければならない旨を規定し、同法40条が中学校に、同法51条が高等学校にこれを準用している。これを受けて、旧検定規則1条1項は、右文部大臣の検定は、著作者又は発行者から申請された「図書が教育基本法及び学校教育法の趣旨に合し,教科用に適することを認めるものとする」旨を規定している。そして、その審査の具体的な基準は旧検定基準に規定されているが、これによれば、本件の高等学校用日本史の教科書についての審査は、教育基本法に定める教育の目的及び方針等並びに学校教育法に定める当該学校の目的と一致していること、学習指導要領に定める当該教科の目標と一致していること、政治や宗教について立場が公正であることの3項目の「絶対条件」(これに反する申請図書は絶対的に不適格とされる)と、取扱内容(取扱内容は学習指導要領に定められた当該科目等の内容によっているか)、正確性(誤りや不正確なところはないか、一面的な見解だけを取上げている部分はないか)、内容の選択(学習指導要領の示す教科及び科目等の目標の達成に適切なものが選ばれているか)、内容の程度等(その学年の児童・生徒の心身の発達段階に適応しているか等)、組織・配列・分量(組織・配列・分量は学習指導を有効に進め得るように適切に考慮されているか)等の10項目の「必要条件」(これに反する申請図書は欠陥があるとされるが、絶対的に不適格とはされない)を基準として行われ、他の教科、科目についてもほぼ同じである。したがって、本件検定による審査は、単なる誤記、誤植等の形式的なものにとどまらず、記述の実質的な内容、すなわち教育内容に及ぶものである。
しかし、普通教育の場においては、児童、生徒の側にはいまだ授業の内容を批判する十分な能力は備わっていないこと、学校、教師を選択する余地も乏しく教育の機会均等を図る必要があることなどから、教育内容が正確かつ中立・公正で、地域、学校のいかんにかかわらず全国的に一定の水準であることが要請されるのであって、このことは、もとより程度の差はあるが、基本的には高等学校の場合においても小学校、中学校の場合と異ならないのである。また、このような児童、生徒に対する教育の内容が、その心身の発達段階に応じたものでなければならないことも明らかである。そして、本件検定が、右の各要請を実現するために行われるものであることは、その内容から明らかであり、その審査基準である旧検定基準も、右目的のための必要かつ合理的な範囲を超えているものとはいえず、子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような内容を含むものでもない。また、右のような検定を経た教科書を使用することが、教師の授業等における前記のような裁量の余地を奪うものでもない。
なお、所論は、教育の自由の一環として国民の教科書執筆の自由をいうが、憲法26条がこれを規定する趣旨でないことは前記のとおりであり、憲法21条、23条との関係については、後記…において判断するとおりである。
したがって、本件検定は、憲法26条、教育基本法10条の規定に違反するものではなく、このことは、前記大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。これと同旨の原審の判断は正当であって、論旨は採用することができない。」
②「二 …憲法21条違反…について
憲法21条2項にいう検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的とし、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを特質として備えるものを指すと解すべきである。本件検定は、前記のとおり、一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲に当たらず、憲法21条2項前段の規定に違反するものではない。このことは、当裁判所の判例(最高裁昭和57年(行ツ)第156号同59年12月12日大法廷判決・民集38巻12号1308頁)の趣旨に徴して明らかである。
また、憲法21条1項にいう表現の自由といえども無制限に保障されるものではなく、公共の福祉による合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けることがあり、その制限が右のような限度のものとして容認されるかどうかは、制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである。これを本件検定についてみるのに、(一)前記のとおり、普通教育の場においては、教育の中立・公正、一定水準の確保等の要請があり、これを実現するためには、これらの観点に照らして不適切と認められる図書の教科書としての発行、使用等を禁止する必要があること(普通教育の場でこのような教科書を使用することは、批判能力の十分でない児童、生徒に無用の負担を与えるものである)、(二)その制限も、右の観点からして不適切と認められる内容を含む図書のみを、教科書という特殊な形態において発行を禁ずるものにすぎないことなどを考慮すると、本件検定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであって、憲法21条1項の規定に違反するものではない。このことは、当裁判所の判例…の趣旨に徴して明らかである。
所論引用の最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁は、発表前の雑誌の印刷、製本、販売、頒布等を禁止する仮処分、すなわち思想の自由市場への登場を禁止する事前抑制そのものに関する事案において、右抑制は厳格かつ明確な要件の下においてのみ許容され得る旨を判示したものであるが、本件は思想の自由市場への登場自体を禁ずるものではないから、右判例の妥当する事案ではない。
所論は、本件検定は、審査の基準が不明確であるから憲法21条1項の規定に違反するとも主張する。確かに、旧検定基準の一部には、包括的で、具体的記述がこれに該当するか否か必ずしも一義的に明確であるといい難いものもある。しかし、右旧検定基準及びその内容として取り込まれている高等学校学習指導要領(昭和35年文部省告示第94号)の教科の目標並びに科目の目標及び内容の各規定は、学術的、教育的な観点から系統的に作成されているものであるから、当該教科、科目の専門知識を有する教科書執筆者がこれらを全体として理解すれば、具体的記述への当てはめができないほどに不明確であるとはいえない。所論違憲の主張は、前提を欠き、失当である。
したがって、本件検定は憲法21条1項の規定に違反するとはいえず、これと同旨の原審の判断は正当である。論旨は採用することができない。」
③「三 …憲法23条違反…について
したがって、所論違憲の主張は、前提を欠き、失当である。これと同旨の原審の判断は正当であって、論旨は採用することができない。
⑤「五 …手続保障(憲法31条)違反の点について
所論は、行政手続にも憲法三一条が適用されるところ、(一)検定の審議手続が公開されていないこと、(二)検定不合格の場合は、事前に不合格理由についての告知、弁解、防御の機会が与えられず、事後の告知も理由の一部についてされるにすぎないこと、(三)教科用図書検定調査審議会の人選が不公正であること、(四)検定の基準(旧検定基準)の内容が不明確であることなどから、本件検定は手続保障に違反するものであるというにある…。
しかし、右(三)の審議会の人選が不公正であるとの点は原審の認定にそわない事実に基づくものであり、右(四)の旧検定基準が不明確とはいえないことも前記のとおりであるから、右(三)、(四)についての所論違憲の主張は、その前提を欠く。
また、行政処分については、憲法31条による法定手続の保障が及ぶと解すべき場合があるにしても、それぞれの行政目的に応じて多種多様であるから、常に必ず行政処分の相手方に告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を必要とするものではない。
本件検定による制約は、思想の自由市場への登場という表現の自由の本質的な部分に及ぶものではなく、また、教育の中立・公正、一定水準の確保等の高度の公益目的のために行われるものである。これらに加え、検定の公正を保つために、文部大臣の諮問機関として、教育的、学術的な専門家である教育職員、学識経験者等を委員とする前記審議会が設置され(昭和58年法律第78号による改正前の文部省設置法27条1項、昭和59年政令第229号による改正前の教科用図書検定調査審議会令1条、3条1項)、文部大臣の合否の決定は同審議会の答申に基づいて行われること(旧検定規則2条)、申請者に交付される不合格決定通知書には、不合格の理由として、主に旧検定基準のどの条件に違反するかが記載されているほか、文部大臣の補助機関である教科書調査官が申請者側に口頭で申請原稿の具体的な欠陥箇所を例示的に摘示しながら補足説明を加え、申請者側の質問に答える運用がされ、その際には速記、録音機等の使用も許されていること、申請者は右の説明応答を考慮した上で、不合格図書を同一年度内ないし翌年度に再申請することが可能であることなどの原審の適法に確定した事実関係を総合勘案すると、前記(一)、(二)の事情があったとしても、そのことの故をもって直ちに、本件検定が憲法31条の法意に反するということはできない。以上は、当裁判所の判例(最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)の趣旨に徴して明らかである…。
したがって、所論の点に関する原審の判断は、本件検定に手続保障違反の違法がないとした結論において正当として是認することができる。論旨は採用することができない。」
過去問・解説
(H19 司法 第9問 イ)
最高裁判所の判例によれば、教科書検定制度は、普通教育の場で教科用図書として用いるための図書を作成する目的でつくられた規制であって、それは教科書の形態における研究結果の発表を著しく制限するから、学問の自由を保障した憲法23条に反する。
(H22 司法 第5問 ア)
教科書検定が憲法21条2項に違反しないとされるのは、審査が、教科書の誤記や誤植などの客観的に明らかな誤りがあるか、教科書の内容が教育課程の大綱的基準の枠内にあるかなどの点に限定され、かつ、執筆者の思想の内容にわたらない場合に限られる。
(H22 司法 第5問 イ)
教科書検定が教科書執筆者の表現行為を制限することになるとしても、教育の中立・公正、一定水準の確保等の要請にかんがみれば、検定による表現の自由の制約は合理的で必要やむを得ない限度のものであるから、憲法21条1項に違反しない。
(正答) 〇
(解説)
第一次家永教科書事件上告審判決(最判平5.3.16)は、「(一)…普通教育の場においては、教育の中立・公正、一定水準の確保等の要請があり、これを実現するためには、これらの観点に照らして不適切と認められる図書の教科書としての発行、使用等を禁止する必要があること…、(二)その制限も、右の観点からして不適切と認められる内容を含む図書のみを、教科書という特殊な形態において発行を禁ずるものにすぎないことなどを考慮すると、本件検定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであって、憲法21条1項の規定に違反するものではない。」としている。
(H22 司法 第5問 ウ)
教科書検定は、検定で不合格とされた図書を一般図書として「思想の自由市場」に流通させることを何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査等の特質がないから、憲法21条2項の「検閲」には当たらない。
(H28 共通 第7問 ウ)
普通教育の場において使用される教科書は学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、教科書検定は、記載内容がいまだ学界において支持を得ていないとき、あるいは当該教科課程で取り上げるにふさわしい内容と認められないときなど一定の検定基準に違反する場合に、教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎないから、憲法23条に反しない。
(正答) 〇
(解説)
第一次家永教科書事件上告審判決(最判平5.3.16)は、「教科書は、教科課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、普通教育の場において使用される児童、生徒用の図書であって…、学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、本件検定は、申請図書に記述された研究結果が、たとい執筆者が正当と信ずるものであったとしても、いまだ学界において支持を得ていなかったり、あるいは当該学校、当該教科、当該科目、当該学年の児童、生徒の教育として取り上げるにふさわしい内容と認められないときなど旧検定基準の各条件に違反する場合に、教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎない。このような本件検定が学問の自由を保障した憲法23条の規定に違反しないことは、当裁判所の判例…の趣旨に徴して明らかである。」としている。
(R4 共通 第8問 イ)
教育内容に対する国家的介入は抑制的であることが要請され、誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような教育を施すことを国が強制することは許されないと解されるが、このことは、教育内容について決定する国の権能を否定する理由とはならない。
(正答) 〇
(解説)
㋐「教師は、高等学校以下の普通教育の場においても、授業等の具体的内容及び方法においてある程度の裁量が認められるという意味において、一定の範囲における教育の自由が認められ、私学教育の自由も限られた範囲において認められるが、それ以外の領域においては、国は、子ども自身の利益の擁護のため、又は子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、子どもに対する教育内容を決定する権能を有する。」とする一方で、㋑「もっとも、教育内容への国家的介入はできるだけ抑制的であることが要請され、殊に、子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような内容の教育を施すことを強制することは許されない。」として、教育内容について決定する国の権能の限界を設けているだけであり、㋑を理由にして教育内容について決定する国の権能を否定しているわけではない。
(R5 共通 第5問 ア)
普通教育の場において使用される教科書は、研究結果の発表を直接の目的とするものではないものの、研究結果の発表という面があることから、記載内容がいまだ学界において支持を得ていないときに検定基準を満たさないとする教科書検定処分は憲法23条に違反する。
九大・井上事件 東京地判昭和48年5月1日
概要
②大学の学長事務取扱として発令する行為は、任命権の一環に含まれ、任命の性質をそなえるものであつて、任命権者の包括的支配権に基づいて発する聴務命令とみることはできない。
③大学の学長事務取扱に発令する法的根拠は、任命権者として学長等の任用に関する教育公務員法特例法10条の規定が類推適用される。
判例
判旨:①「大学における人事の自治に鑑みれば、前記教特法10条にいう「大学管理機関の申出に基いて」とは、大学管理機関(同法25条1項6号により、当分の間は学長)から申出がなされたときは、任命権者(国立の大学にあつては国家公務員法55条1項により文部大臣、公立の大学にあつては教特法25条2項により当分の間その大学を設置する地方公共団体の長)は、右申出が既に同法4条に準拠して大学の自主的選考を経たものとされる以上、その申出に羈束されて、申出のあつた者(それはおのずから1つの地位に1人だけと解さねばならない。)を任命すべく、そこに選択の余地、拒否の権能はなく、他面、申出がなければ、右の人事を行ない得ないものと解するのが相当である。もつとも、任命権者たる文部大臣あるいは地方公共団体の長は、その権限を適法に行使しなければならないこともいうをまたないから、申出が明らかに違法無効と客観的に認められる場合、例えば、申出が明白に法定の手続に違背しているとき、あるいは申出のあつた者が公務員としての欠格条項にあたるようなときなどは、形式的瑕疵を補正させるために差戻したり、申出を拒否して申出のあつた者を学長等に任用しないことができるといわなければならないが、しからざる限り、その申出に応ずべき義務、すなわち相当の期間内に申出のあつた者を学長、教員および部局長として任命しなければならない職務上の義務を負うものと解すべきである。」
②「国立大学の学長事務取扱として発令する行為は、任命権者である文部大臣が任命権の対象である学長が欠け、またはこれに事故のあるときに、臨時かつ応急にその代理者を指定する行為(指定代理)にほかならず、右の指定は、任命権の一環に含まれ、これに由来するものとして、ひつきよう任命の性質を具えるものと解するのが相当である。この点につき、被告はこれを行組法10条に基づく職務命令であると主張し、…右主張に添う供述をする。…してみれば、国立大学の学長事務取扱に指定し発令するのは、任命行為として、学長等の任用に関する教特法10条の規定が類推適用されるものといわなければならない。」
③「文部省が学長事務取扱について上申書を受理してからその発令に至るまでに通常の手続上必要とされる期間は、最長の期間を考えても、30日あれば十分であると認めざるを得ない。…すなわち、文部大臣は未だ不当に長期に亘つて原告を学長事務取扱に発令しないまま放置したものとは断じ難く、文部大臣の右不作為をとらえて、合理的な期間を超えた違法なものとの法的評価を加えることは相当でないというべきである。」
過去問・解説
(H22 司法 第8問 ア)
下級裁判所の裁判例の趣旨によれば、文部科学大臣は、国立大学法人の学長の任命に関し、その者を任命することが不適当と認められるときには、国立大学法人の申出を拒否することができる。なぜなら、学長人事は大学の自治とは無関係であるからである。