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親族(実子 772条~791条) - 解答モード
内縁関係が先行する場合における嫡出推定 大連判昭和15年1月23日
概要
判例
判旨:「未タ婚姻ノ届出ヲ為ササルモ既ニ事実上ノ夫婦トシテ同棲シ所謂内縁関係ノ継続中ニ内縁ノ妻カ内縁ノ夫ニ因リテ懐胎シ而モ右内縁ノ夫妻カ適式ニ法律上ノ婚姻ヲ為シタル後ニ於テ出生シタル子ノ如キハ仮令婚姻ノ届出ト其ノ出生トノ間ニ民法第820条所定ノ200日ノ期間ヲ存セサル場合ト雖モ之ヲ民法上私生子ヲ以テ目スヘキモノニアラスカクノ如キ子ハ特ニ父母ノ認知ノ手続ヲ要セスシテ出生ト同時ニ当然ニ父母ノ嫡出子タル身分ヲ有スルモノト解スルハ之ヲ民法中親子法ニ関スル規定全般ノ精神ヨリ推シテ当ヲ得タルモノト謂ハサルヘカラス。」
過去問・解説
(R3 予備 第13問 エ)
婚姻の届出から1か月後に妻が出産した子について夫がその子との間の法律上の父子関係を否定しようとする場合、婚姻前に数年にわたり内縁関係が先行するときに限り、嫡出否認の訴えによらなければならない。
(正答)✕
(解説)
772条は、1項において「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。」と規定した上で、2項前段において「前項の場合において、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定…する。」と規定している。そうすると、婚姻の届出から1か月後に妻が出産した子は、婚姻前に数年にわたり内縁関係が先行するか否かにかかわらず、「婚姻前に懐胎したものと推定」され、それにより「夫の子と推定」される。そして、嫡出推定を覆す場合には、嫡出否認の訴えによる必要がある(774条1項、775条)。
したがって、婚姻の届出から1か月後に妻が出産した子について夫がその子との間の法律上の父子関係を否定しようとする場合、婚姻前に数年にわたり内縁関係が先行するか否かにかかわらず、嫡出否認の訴えによらなければならない。
内縁の妻が懐胎した子と父の推定 最一小判昭和29年1月21日
概要
判例
判旨:「民法772条の適用によつて嫡出子の推定を受ける子が、特に父の認知を必要としないのは、単に同条の推定があるばかりではなく、さらにその他に民法774条、775条、777条、人訴29条により、嫡出子の推定は一定の期間内に否認の訴を提起してこれを覆す途が設けられているに止まり、それ以外の方法において反証を挙げてこの推定を争うことは許されていないものと解すべきだからである。また民法779条においては、嫡出子については認知を問題としていないし、民法776条では、「その嫡出であることを承認したとき」という表現を用い、認知という言葉は使つていない。しかるに、内縁の子についても民法772条が類推されるという趣旨は、事実の蓋然性に基いて立証責任の問題として、父の推定があるというに過ぎない。それ故、認知の訴訟において父の推定を受けている者が、父にあらざることを主張する場合には、その推定を覆すに足るだけの反証をあげる責任を負うわけである。そして、父と推定される者は、認知をまたずして、法律上一応その子の父として取扱われることもなく、また同様にその子は、認知をまたずして、法律上一応推定を受ける父の子として取扱われることもないものと言わねばならぬ。」
過去問・解説
(H25 司法 第31問 エ)
A男とB女の内縁成立の日から200日を経過した後又は内縁解消の日から300日以内にBが分娩した子のAに対する認知の訴えにおいては、その子はAの子と推定されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭29.1.21)は、「内縁の子についても民法772条が類推される」と判示している。そして、772条2項後段は、「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定しており、同条1項前段は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。」と規定している。したがって、A男とB女の内縁成立の日から200日を経過した後又は内縁解消の日から300日以内にBが分娩した子のAに対する認知の訴えにおいては、その子はBが内縁関係中に解体したものと推定され(同条2項後段類推)、それに伴い同条1項前段が類推適用されるから、その子はAの子と推定される。
母と非嫡出子間の親子関係と認知 最二小判昭和37年4月27日
概要
判例
判旨:「母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生すると解するのが相当である…。」
過去問・解説
(H23 司法 第32問 3)
母とその嫡出でない子との間の親子関係は、母が認知をしたときに認知の時から発生する。
内縁関係成立の日から200日後、婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は772条所定の嫡出の推定を受けるか 最三小判昭和41年2月15日
概要
判例
判旨:「民法772条2項にいう「婚姻成立の日」とは、婚姻の届出の日を指称すると解するのが相当であるから、AとBの婚姻届出の日から200日以内に出生したCは、同条により、Bの嫡出子としての推定を受ける者ではなく、たとえ、C出生の日が、AとBの挙式あるいは同棲開始の時から200日以後であつても、同条の類推適用はないものというべきである(大審院民事連合部昭和15年1月23日判決、民集19巻1号54頁、大審院昭和15年9月20日判決、民集19巻18号1596頁参照)。」
過去問・解説
(H27 司法 第30問 ア)
婚姻成立後200日以内に生まれた子は、同棲開始の時から200日経過後に生まれたときに限り、嫡出子であることが推定され、親子関係を否定するには、嫡出否認の方法によらなければならない。
(正答)✕
(解説)
772条は、1項において「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。」と規定した上で、2項前段において「前項の場合において、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定…する。」と規定している。そうすると、婚姻成立後200日以内に生まれた子は、同棲開始の時から200日経過後に生まれたか否かに関わらず、「婚姻前に懐胎したものと推定」され、それにより「夫の子」と推定される。そして、嫡出推定を覆す場合には、嫡出否認の訴えによる必要がある(774条1項、775条)。
したがって、婚姻成立後200日以内に生まれた子については、同棲開始の時から200日経過後に生まれたか否かにかかわらず、嫡出子であることが推定され、親子関係を否定するには、嫡出否認の方法によらなければならない。
婚姻解消と嫡出子の推定 最一小判昭和44年5月29日
概要
②772条の推定を受けない嫡出子は、戸籍上の父からの嫡出否認を待つまでもなく、血縁上の父に対して認知の請求をすることができる。
判例
②772条の推定を受けない嫡出子がある場合において、戸籍上の父からの嫡出否認を受けなくても、血縁上の父に対して認知の請求をすることができるかが問題となった。
判旨:「Aらの母Bは、昭和21年Cと結婚したが、同24年4月頃Cと事実上の離婚をして別居し、爾来同人とは全く交渉を絶ち、同26年10月2日正式に離婚したのであるが、それに先だつ同25年9月頃から同39年3月頃までの間Dと肉体関係を持続し、その間同27年3月28日A1を、同31年1月31日A2を各分娩し、同人らを自己の嫡出でない子として出生届をしたというのである。
右事実関係のもとにおいては、A1は母BとCとの婚姻解消の日から300日以内に出生した子であるけれども、BとC間の夫婦関係は、右離婚の届出に先だち約2年半以前から事実上の離婚をして爾来夫婦の実態は失われ、たんに離婚の届出がおくれていたにとどまるというのであるから、A1は実質的には民法772条の推定を受けない嫡出子というべく、A1はCからの嫡出否認を待つまでもなく、Dに対して認知の請求ができる…。」
過去問・解説
(H23 司法 第32問 1)
離婚による婚姻解消後300日以内に出生した子であっても、母とその夫とが離婚に先立ち長期間事実上の離婚をして別居し、全く交渉を絶って、夫婦の実態が失われていた場合には、夫の子と推定されない。
(H27 司法 第30問 ウ)
離婚後300日以内に生まれた子であっても、嫡出の推定が及ばないときには、その子は、血縁上の父に対して認知の訴えを提起することができる。
第三者が親子関係存否確認の訴えを提起する場合において、親子の一方が死亡し他方が生存しているときに被告とすべき者 最一小判昭和56年10月1日
概要
判例
判旨:「第三者が親子関係存否確認の訴を提起する場合において、親子の双方が死亡しているときには、第三者は検察官を相手方として右訴を提起することが必要であるが(最高裁昭和43年(オ)第179号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号861頁)、親子のうちの一方のみが死亡し他方が生存しているときには、第三者は生存している者のみを相手方として右訴を提起すれば足り、死亡した者について検察官を相手方に加える必要はないものと解するのが相当である(人事訴訟手続法2条項の類推適用)。」
過去問・解説
(H18 司法 第8問 オ)
母子関係の存在を争う第三者は、母と子のどちらか一方が死亡した後は、訴えを提起することができない。
婚姻関係が終了していることと嫡出の推定を受ける子に対する親子関係不存在確認の訴えの許否 最三小判平成12年3月14日
概要
判例
判旨:「民法772条2項所定の期間内に妻が出産した子について、妻が右子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、右子は実質的には民法772条の推定を受けない嫡出子に当たるということができるから、同法774条以下の規定にかかわらず、夫は右子との間の父子関係の存否を争うことができると解するのが相当である(最高裁昭和43年(オ)第1184号同44年5月29日第一小法廷判決・民集23巻6号1064頁、最高裁平成7年(オ)第2178号同10年8月31日第二小法廷判決・裁判集民事189号497頁参照)。」
過去問・解説
(H30 司法 第30問 ウ)
夫が長期間服役しており、妻が夫の子を懐胎することが不可能であったと認められる時期に妻が懐胎した子について、夫が父子関係を争う場合には、嫡出否認の訴えによらなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平12.3.14)は、「民法772条2項所定の期間内に妻が出産した子について、妻が右子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、右子は実質的には民法772条の推定を受けない嫡出子に当たるということができるから、同法774条以下の規定にかかわらず、夫は右子との間の父子関係の存否を争うことができると解するのが相当である…。」と判示している。本肢においても、夫が長期間服役しており、妻が夫の子を懐胎することが不可能であったと認められる時期に妻が懐胎した子は、772条の推定を受けない嫡出子に当たるということができる。したがって、その子について、夫が父子関係を争う場合には、嫡出否認の訴え(774条)ではなく、親子関係不存在確認の訴えによることができる。
保存された男性の精子を用いて当該男性の死亡後に行われた人工生殖により女性が懐胎し出産した子と当該男性との間における法律上の親子関係の形成の可否 最二小判平成18年9月4日
概要
判例
判旨:「民法の実親子に関する法制は、血縁上の親子関係を基礎に置いて、嫡出子については出生により当然に、非嫡出子については認知を要件として、その親との間に法律上の親子関係を形成するものとし、この関係にある親子について民法に定める親子、親族等の法律関係を認めるものである。ところで、現在では、生殖補助医療技術を用いた人工生殖は、自然生殖の過程の一部を代替するものにとどまらず、およそ自然生殖では不可能な懐胎も可能とするまでになっており、死後懐胎子はこのような人工生殖により出生した子に当たるところ、上記法制は、少なくとも死後懐胎子と死亡した父との間の親子関係を想定していないことは、明らかである。すなわち、死後懐胎子については、その父は懐胎前に死亡しているため、親権に関しては、父が死後懐胎子の親権者になり得る余地はなく、扶養等に関しては、死後懐胎子が父から監護、養育、扶養を受けることはあり得ず、相続に関しては、死後懐胎子は父の相続人になり得ないものである。また、代襲相続は、代襲相続人において被代襲者が相続すべきであったその者の被相続人の遺産の相続にあずかる制度であることに照らすと、代襲原因が死亡の場合には、代襲相続人が被代襲者を相続し得る立場にある者でなければならないと解されるから、被代襲者である父を相続し得る立場にない死後懐胎子は、父との関係で代襲相続人にもなり得ないというべきである。このように、死後懐胎子と死亡した父との関係は、上記法制が定める法律上の親子関係における基本的な法律関係が生ずる余地のないものである。そうすると、その両者の間の法律上の親子関係の形成に関する問題は、本来的には、死亡した者の保存精子を用いる人工生殖に関する生命倫理、生まれてくる子の福祉、親子関係や親族関係を形成されることになる関係者の意識、更にはこれらに関する社会一般の考え方等多角的な観点からの検討を行った上、親子関係を認めるか否か、認めるとした場合の要件や効果を定める立法によって解決されるべき問題であるといわなければならず、そのような立法がない以上、死後懐胎子と死亡した父との間の法律上の親子関係の形成は認められないというべきである。」
過去問・解説
(H27 司法 第30問 オ)
保存された男性の精子を用いてその男性の死亡後に行われた人工生殖によって女性が子を懐胎し出産した場合には、その男性と子の間に法律上の親子関係は認められない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.9.4)は、本肢と同種の事案において、「その両者の間の法律上の親子関係の形成に関する問題は、本来的には、死亡した者の保存精子を用いる人工生殖に関する生命倫理、生まれてくる子の福祉、親子関係や親族関係を形成されることになる関係者の意識、更にはこれらに関する社会一般の考え方等多角的な観点からの検討を行った上、親子関係を認めるか否か、認めるとした場合の要件や効果を定める立法によって解決されるべき問題であるといわなければならず、そのような立法がない以上、死後懐胎子と死亡した父との間の法律上の親子関係の形成は認められないというべきである。」と判示している。
(R3 予備 第13問 ウ)
妻が、夫の死亡後に、凍結保存されていた夫の精子を用いて懐胎し、子を出産した場合において、夫が生前にその精子を用いて懐胎することに同意していたときであっても、死後認知によって夫と子との間に法律上の父子関係が認められることはない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.9.4)は、本肢と同種の事案において、「その両者の間の法律上の親子関係の形成に関する問題は、本来的には、死亡した者の保存精子を用いる人工生殖に関する生命倫理、生まれてくる子の福祉、親子関係や親族関係を形成されることになる関係者の意識、更にはこれらに関する社会一般の考え方等多角的な観点からの検討を行った上、親子関係を認めるか否か、認めるとした場合の要件や効果を定める立法によって解決されるべき問題であるといわなければならず、そのような立法がない以上、死後懐胎子と死亡した父との間の法律上の親子関係の形成は認められないというべきである。」と判示している。
代理出産と母子関係 最二小判平成19年3月23日
概要
判例
判旨:「子を懐胎し出産した女性とその子に係る卵子を提供した女性とが異なる場合についても、現行民法の解釈として、出生した子とその子を懐胎し出産した女性との間に出産により当然に母子関係が成立することとなるのかが問題となる。この点について検討すると、民法には、出生した子を懐胎、出産していない女性をもってその子の母とすべき趣旨をうかがわせる規定は見当たらず、このような場合における法律関係を定める規定がないことは、同法制定当時そのような事態が想定されなかったことによるものではあるが、前記のとおり実親子関係が公益及び子の福祉に深くかかわるものであり、一義的に明確な基準によって一律に決せられるべきであることにかんがみると、現行民法の解釈としては、出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず、その子を懐胎、出産していない女性との間には、その女性が卵子を提供した場合であっても、母子関係の成立を認めることはできない。」
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者の妻が婚姻中に懐胎した子と嫡出の推定 最三小決平成25年12月10日
概要
判例
判旨:「特例法4条1項は、性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、民法その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす旨を規定している。したがって、特例法4条1項の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、以後、法令の規定の適用について男性とみなされるため、民法の規定に基づき夫として婚姻することができるのみならず、婚姻中にその妻が子を懐胎したときは、同法772条の規定により、当該子は当該夫の子と推定されるというべきである。もっとも、民法772条2項所定の期間内に妻が出産した子について、妻がその子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、その子は実質的には同条の推定を受けないことは、当審の判例とするところであるが(最高裁昭和43年(オ)第1184号同44年5月29日第一小法廷判決・民集23巻6号1064頁、最高裁平成8年(オ)第380号同12年3月14日第三小法廷判決・裁判集民事197号375頁参照)、性別の取扱いの変更の審判を受けた者については、妻との性的関係によって子をもうけることはおよそ想定できないものの、一方でそのような者に婚姻することを認めながら、他方で、その主要な効果である同条による嫡出の推定についての規定の適用を、妻との性的関係の結果もうけた子であり得ないことを理由に認めないとすることは相当でないというべきである。」
過去問・解説
(R3 予備 第13問 イ)
妻が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた夫と婚姻中に懐胎し、子を出産した場合には、子は夫の嫡出子と推定される。
夫と772条により嫡出の推定を受ける子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであるなどの事情がある場合における親子関係不存在確認の訴えの許否 最一小判平成26年7月17日
概要
判例
判旨:「民法772条により嫡出の推定を受ける子につきその嫡出であることを否認するためには、夫からの嫡出否認の訴えによるべきものとし、かつ、同訴えにつき1年の出訴期間を定めたことは、身分関係の法的安定を保持する上から合理性を有するものということができる(最高裁昭和54年(オ)第1331号同55年3月27日第一小法廷判決・裁判集民事129号353頁、最高裁平成8年(オ)第380号同12年3月14日第三小法廷判決・裁判集民事197号375頁参照)。そして、夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、子が、現時点において夫の下で監護されておらず、妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、上記の事情が存在するからといって、同条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である。このように解すると、法律上の父子関係が生物学上の父子関係と一致しない場合が生ずることになるが、同条及び774条から778条までの規定はこのような不一致が生ずることをも容認しているものと解される。」
過去問・解説
(R3 予備 第13問 ア)
妻が夫と婚姻中に懐胎し、子を出産した場合において、夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであるときは、子は、親子関係不存在確認の訴えにより、夫との法律上の父子関係を否定することができる。
婚姻成立の日から200日以後に出生した子を被告として父親の死亡後にその養子が提起した親子関係不存在確認の訴えが適法とされた事例 最二小判平成10年8月31日
概要
判例
判旨:「A男は、応召した昭和18年10月13日から名古屋港に帰還した昭和21年5月28日の前日までの間、B女と性的関係を持つ機会がなかったことが明らかである。そして、…昭和21年当時における我が国の医療水準を考慮すると、当時、妊娠週数26週目に出生した子が生存する可能性は極めて低かったものと判断される。そうすると、B女がCを懐胎したのは昭和21年5月28日より前であると推認すべきところ、当時、A男は出征していまだ帰還していなかったのであるから、B女がA男の子を懐胎することが不可能であったことは、明らかというべきである。したがって、Cは実質的には民法722条の推定を受けない嫡出子であり、A男の養子であるDが亡A男とCとの間の父子関係の存否を争うことが権利の濫用に当たると認められるような特段の事情の存しない本件においては、Dは、親子関係不存在確認の訴えをもって、亡A男とCとの間の父子関係の存否を争うことができるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H25 共通 第32問 ウ)
判例によれば、母の夫が服役していた間に母が懐胎したことが明らかな子は夫の子と推定されないから、母も嫡出否認の訴えを提起することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平10.8.31)は、母が子を懐胎した当時、夫が当該母と性的関係を持つ機会がなく、当該母が当該夫の子を懐胎することが不可能であったことが明らかである場合には、出生した子は772条の推定を受けない嫡出子となる旨判示している。したがって、母の夫が服役していた間に母が懐胎したことが明らかな子は夫の子と推定されないといえる。
そして、嫡出否認の訴え(775条)は、772条の規定による嫡出推定を覆すための訴えであるから(774条1項)、772条の推定を受けない嫡出子に対しては、嫡出否認の訴えを提起することはできない。したがって、母の夫が服役していた間に母が懐胎したことが明らかな子は夫の子と推定されず、母は嫡出否認の訴えを提起することができない。
虚偽の嫡出子出生届と認知としての効力 大判大正15年10月11日
概要
判例
判旨:「原審ノ認定シタル事実ニ依レハAハ父Bト其ノ妾Cトノ間ニ明治43年9月28日出生シタルモノナル処BハAヲ妻Dトノ間ニ生レタル嫡出子トシテ同年10月6日所轄戸籍吏ニ対シ出生届出ヲ為シタルモノトス而シテ右届出カ旧戸籍法第215条ニ該当スル違法行為ナルコト洵ニ所論ノ如シト雖之カ為ニ直ニ該届出カ全然何等ノ効力ヲ生セサルモノト速断スヘカラス該届出中ニハ自ラBニ於テAカ自己ノ子ナルコトヲ認ムル意思表示ヲ包含スルヲ以テ父タルBカ所轄戸籍吏ニ対シ右ノ如キ出生届出ヲ為シ該出生子カ事実妾腹ノ子ナル本件ノ如キ場合ニ於テハ之ニ依リ私生子認知ノ効力ヲ生スルモノト解スルヲ相当トス。」
認知の確定判決がある場合に第三者は認知無効の訴を提起できるか 最二小判昭和28年6月26日
概要
判例
判旨:「認知の訴につき言渡した判決は第三者に対しても効力を有することは人訴32条1項、18条1項の明定するところであるから、すでに前記の如くAを亡Bの子であるとした認知の判決が正当なる当事者の間に確定している以上、該判決は第三者たるCに対しても効力を有するのであつて、Cは同判決に対し再審の手続で争うのは格別、もはや反対の事実を主張して認知無効の訴を提起することを得ないのは当然である。」
父が認知しない場合における母が胎児を代理しておこなう認知の訴えの可否 大判明治32年1月12日
概要
判例
判旨:「明治6年布告第21号ニ於テ私生児ニハ父ニ対シテ認知ヲ求ムルコトヲ許サス民法第835条ニ於テ始メテ之ヲ許シ而シテ明治6年布告第21号ハ民法施行法第9条ニ依リ民法施行ノ日即チ明治31年7月16日ヨリ廃止セラレタリト雖モ私権ノ享有ハ出生ニ始マリ胎児カ之ヲ享有スルヲ得サル法理ハ民法未タ施行セラレサリシ時ト雖モ存在セシコトハ毫モ疑ヲ容ルヘキニ非ス且父又ハ母ニ対シテ認知ヲ求ムルノ権ハ其性質子其直系卑属又ハ其法定代理人ノ行使スヘキ所ノモノニシテ第三者ノ行使スヘキモノニ非サルコト固ヨリ論ヲ待タス。」
過去問・解説
(H20 司法 第32問 3)
父が胎児を認知するためには、母の承諾が必要であるが、父が認知しない場合は、母は胎児を代理して認知の訴えを提起することができる。
(H30 司法 第1問 エ)
胎児の母は、胎児を代理して認知の訴えを提起することはできない。
認知無効の訴えとその理由 大判大正11年3月27日
概要
判例
判旨:「子其ノ他ノ利害関係人ハ認知ニ対シテ反対ノ事実ヲ主張スルコトヲ得ヘキコト同法第834条ノ定ムルトコロナリ而シテ認知ハ或私生子ノ事実上ノ父タル者又ハ母タル者カ之ヲ承認シテ法律上ノ親子関係ヲ発生セシムル行為ナレハ認知ニヨリ法律上ノ親子関係ヲ発生スルニハ事実上父タル者又ハ母タル者ニ於テ之ヲ為スコトヲ要シ然ラサル場合ニ於テハ認知ハ其ノ効力ナキモノナルヲ以テ子其ノ他ノ利害関係人ハ認知カ真実ニ反スルノ事由ヲ以テ其ノ無効ナルコトヲ主張スルコトヲ得ルモノト為ササルヘカラス。」
認知者が血縁上の父子関係がないことを理由に認知の無効を主張することの可否 最三小判平成26年1月14日
概要
判例
判旨:「血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知は無効というべきであるところ、認知者が認知をするに至る事情は様々であり、自らの意思で認知したことを重視して認知者自身による無効の主張を一切許さないと解することは相当でない。また、血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知については、利害関係人による無効の主張が認められる以上(民法786条)、認知を受けた子の保護の観点からみても、あえて認知者自身による無効の主張を一律に制限すべき理由に乏しく、具体的な事案に応じてその必要がある場合には、権利濫用の法理などによりこの主張を制限することも可能である。そして、認知者が、当該認知の効力について強い利害関係を有することは明らかであるし、認知者による血縁上の父子関係がないことを理由とする認知の無効の主張が民法785条によって制限されると解することもできない。そうすると、認知者は、民法786条に規定する利害関係人に当たり、自らした認知の無効を主張することができるというべきである。この理は、認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異なるところはない。」
過去問・解説
(R3 予備 第13問 オ)
生物学上の父子関係がないことを知りながら認知をした者は、認知無効の訴えを提起することができない。