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相続(相続の効力(総則、相続分、遺産分割) 896条~914条) - 解答モード
身元保証人たる地位と相続 大判昭和18年9月10日
概要
判例
判旨:「身元保証契約ハ保証人ト身元本人トノ相互ノ信用ヲ基礎トシテ成立シ存続スヘキモノナレハ特別ノ事情ナキ限リ該契約ハ当事者其人ト終始スヘキ専属的性質ヲ有スルモノト云フヘク従テ保証人ノ死亡ニ因リ相続開始スルモソノ相続人ニ於テ契約上ノ義務ヲ承継シ相続開始後ニ生シタル保証契約上ノ事故ニ付ソノ責ニ任スルコトナキモノトス(当院昭和2年(オ)第33号同年7月4日判決参照)而シテ身元保証ニ関スル法律ニ於テハ右ニ反スル趣旨ノ特別ナル規定存セサルノミナラス如上ノ帰結ハ身元保証契約ノ性質上自ラ首肯セラルヘクコノ事ハ又既ニ判例ノ示ストコロナレハ敢テ明文ヲ要セストナシタルノ法意ヲ推知スルニ足リ従テ右法律施行ノ前後ニヨリ其ノ解釈ヲ異ニスヘキモノニアラス然レハ右ト同趣旨ニ出テタル原判決ハ正当ニシテ所論ノ如キ違法ナク論旨ハ独自ノ見地ニ於テ批議スルニ帰シソノ理由ナシ。」
家屋賃借人の死亡と内縁の妻の賃借権の承継の有無 最三小判昭和42年2月21日
概要
判例
判旨:「A1は亡Bの内縁の妻であつて同人の相続人ではないから、Bの死亡後はその相続人であるA2ら4名の賃借権を援用してCに対し本件家屋に居住する権利を主張することができると解すべきである(最高裁昭和34年(オ)第692号、同37年12月25日第三小法廷判決、民集16巻12号2455頁参照)。しかし、それであるからといつて、A1が前記4名の共同相続人らと並んで本件家屋の共同賃借人となるわけではない。」
過去問・解説
(H18 司法 第24問 ウ)
前妻Bとの間に既に独立した子CがいるAが、アパートを賃借して内縁の妻Dとともに居住していたが死亡した場合、同アパートの賃借人の権利義務はDが承継する。
(H20 司法 第31問 1)
建物賃借人Aの内縁の妻Bは、Aが死亡した場合、Aの相続人と並んで同建物の共同賃借人となるので、同建物に居住する権利を主張することができる。
不動産の引渡義務が共同相続された場合、相手方は、共同相続人の1人に対して履行を請求することができるか 大判昭和10年11月22日
概要
判例
判旨:「被相続人カ第三者所有ニ係ル不動産ヲ取得シ之ヲ相手方ニ譲渡スヘキ義務ヲ負担セル場合ニ於テ数人ノ相続人カ遺産相続ヲ為シ其債務ヲ承継シタルトキハ各遺産相続人ハ不可分債務ヲ負担スルニ至リ相手方ハ遺産相続人ノ1人ニ対シ全部ノ履行ヲ求メ得ルハ多言ヲ俟タサルノミナラス偶々遺産相続人ノ或者カ其不動産ヲ所有シ居リタル場合ニ於テモ亦渝ルトコロ無シ否斯カルハ相手方トシテモ亦債務者トシテモ寧ロ好都合ニ外ナラス何者相手方ニ於テ右ノ遺産相続人ニ対シ直チニ其債務ノ履行ヲ請求スルトキハ第三者ヨリ之ヲ取得スル手数ノ如キハ此際之ヲ要スルコト無クシテ容易ニ目的ヲ達スルヲ得ヘケレハナリ。」
慰謝料請求権と相続 最大判昭和42年11月1日
概要
判例
判旨:「案ずるに、ある者が他人の故意過失によつて財産以外の損害を被つた場合には、その者は、財産上の損害を被つた場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰藉料請求権を取得し、右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり、これを行使することができ、その損害の賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為をすることを必要とするものではない。そして、当該被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰藉料請求権を相続するものと解するのが相当である。けだし、損害賠償請求権発生の時点について、民法は、その損害が財産上のものであるか、財産以外のものであるかによつて、別異の取扱いをしていないし、慰藉料請求権が発生する場合における被害法益は当該被害者の一身に専属するものであるけれども、これを侵害したことによつて生ずる慰藉料請求権そのものは、財産上の損害賠償請求権と同様、単純な金銭債権であり、相続の対象となりえないものと解すべき法的根拠はなく、民法711条によれば、生命を害された被害者と一定の身分関係にある者は、被害者の取得する慰藉料請求権とは別に、固有の慰藉料請求権を取得しうるが、この両者の請求権は被害法益を異にし、併存しうるものであり、かつ、被害者の相続人は、必ずしも、同条の規定により慰藉料請求権を取得しうるものとは限らないのであるから、同条があるからといつて、慰藉料請求権が相続の対象となりえないものと解すべきではないからである。」
過去問・解説
(H20 司法 第34問 3)
不法行為による生命侵害の慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明していなければ、相続人には承継されない。
(H23 共通 第30問 イ)
不法行為による生命侵害の場合、被害者が加害者に対して取得した慰謝料請求権は、被害者の相続人に相続される。
(R1 共通 第34問 エ)
被相続人が他人の過失による交通事故によって即死した場合でも、その事故による被相続人の精神的損害についての慰謝料請求権は、相続の対象となる。
占有と相続 最一小判昭和44年10月30日
概要
判例
判旨:「被相続人の事実的支配の中にあつた物は、原則として、当然に、相続人の支配の中に承継されるとみるべきであるから、その結果として、占有権も承継され、被相続人が死亡して相続が開始するときは、特別の事情のないかぎり、従前その占有に属したものは、当然相続人の占有に移ると解すべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第35問 3)
被相続人が有していた占有権は、相続人が相続財産について事実的支配をしないと、相続されない。
(H23 司法 第10問 5)
所有の意思をもって物を占有していた被相続人から相続人が相続により占有を承継した場合、被相続人が所有の意思をもって占有していたことをその相続人が知った時に、その相続人の占有は、所有の意思のある占有となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭44.10.30)は、「被相続人の事実的支配の中にあつた物は、原則として、当然に、相続人の支配の中に承継されるとみるべきであるから、その結果として、占有権も承継され、被相続人が死亡して相続が開始するときは、特別の事情のないかぎり、従前その占有に属したものは、当然相続人の占有に移ると解すべきである。」と判示している。そして、相続は包括承継である(896条参照)から、相続により占有を承継する場合には、相続人は被相続人と同一の性質を有する占有を承継する。
したがって、所有の意思をもって物を占有していた被相続人から相続人が相続により占有を承継した場合は、被相続人が所有の意思をもって占有していたことをその相続人が知ったか否かにかかわらず、その相続人の占有は、当然に所有の意思のある占有となる。
(R4 司法 第33問 ウ)
土地を権原なく占有していた被相続人が死亡して相続が開始した場合、被相続人のその土地に対する占有は、相続人によって承継されない。
相続人が遺産分割前に遺産である金銭を保管している他の相続人に対して自己の相続分相当の金銭の支払を請求することの可否 最二小判平成4年4月10日
概要
判例
判旨:「相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H23 共通 第34問 イ)
判例によれば、共同相続が生じたとき、相続財産を構成する金銭は、相続開始と同時に各自の相続分に従い当然に分割され、遺産分割の対象とならない。
(H28 共通 第33問 ウ)
共同相続が生じた場合、相続人の1人であるAは、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人Bに対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。
相続財産の共有の性質及び遺産分割の方法 最三小判昭和30年5月31日
概要
判例
判旨:「相続財産の共有(民法898条、旧法1002条)は、民法改正の前後を通じ、民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきである。」
過去問・解説
(H24 共通 第35問 3)
甲建物を所有していたAが死亡し、Aには子B、C及びDがいるが、遺産分割は未了である場合、遺産分割がされる前であっても、甲建物について、B、C及びDの法定相続分に応じた持分の割合により、相続を原因とする所有権移転登記をすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭30.5.31)は、「相続財産の共有(民法898条、旧法1002条)は、民法改正の前後を通じ、民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきである。」と判示している。そうすると、相続が開始すると、個々の相続財産について、各相続人がその法定相続分に応じた持分を有するといえ、遺産分割前においても、各相続人は、自己の持分に基づき所有権移転登記をすることができるといえる。したがって、本肢においては、遺産分割がされる前であっても、甲建物について、B、C及びDの法定相続分に応じた持分の割合により、相続を原因とする所有権移転登記をすることができる。
遺言がない場合における遺産分割の方法 最三小判昭和62年9月4日
概要
判例
判旨:「遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。」
共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権の帰属と後にされた遺産分割の効力 最一小判平成17年9月8日
概要
判例
判旨:「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第18問 ア)
相続開始から遺産分割までの間に相続財産である賃貸不動産から生ずる賃料債権は、各共同相続人が、その相続分に応じ、分割債権として確定的に取得する。
(R1 共通 第35問 エ)
A及びBが共同相続した甲不動産をAが遺産分割協議により取得した場合において、相続開始から遺産分割までの間に甲不動産について生じた賃料債権は、その協議で特に定めなかったときは、Aに帰属する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.9.8)は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」と判示している。したがって、相続開始から遺産分割までの間に甲不動産について生じた賃料債権は、A及びBがその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、この帰属は、A及びBが共同相続した甲不動産をAが遺産分割協議により取得し、甲不動産について生じた上記賃料債権について、その協議で特に定めなかったという事情に影響されない。
(R4 司法 第33問 オ)
遺産である賃貸不動産から相続開始後に生じた賃料債権は、遺産分割によって当該不動産を取得した者が、相続開始時に遡って取得する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.9.8)は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」と判示している。
(R6 司法 第35問 エ)
遺産に属する甲建物を共同相続人A及びBのうちAが遺産分割により単独で取得したときは、相続開始から遺産分割までの間に甲建物について生じた賃料債権は、Aがその全額を取得する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.9.8)は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」と判示している。したがって、相続開始から遺産分割までの間に甲建物について生じた賃料債権は、A及びBがその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、この帰属は、甲建物を共同相続人A及びBのうちAが遺産分割により単独で取得したという事情に影響されない。
共同相続人の1人が遺産たる特定不動産に対する共有持分権を譲渡した場合と905条の適用又は類推適用の可否 最一小判昭和53年7月13日
概要
判例
判旨:「共同相続人の1人が遺産を構成する特定の不動産について同人の有する共有持分権を第三者に譲り渡した場合については、民法905条の規定を適用又は類推適用することはできないものと解すべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第34問 ア)
AB夫婦の間に子CDがいる場合、判例によれば、Aの死亡後、遺産の分割前に、Cが、Aの遺産に含まれる特定の土地の持分4分の1を第三者Eに売り渡したときは、Dは、その価額及び費用を償還して、Eから当該持分を取り戻すことができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭53.7.13)は、「共同相続人の1人が遺産を構成する特定の不動産について同人の有する共有持分権を第三者に譲り渡した場合については、民法905条の規定を適用又は類推適用することはできないものと解すべきである。」と判示している。そして、905条1項は、「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」と規定している。したがって、Aの死亡後、遺産の分割前に、Cが、Aの遺産に含まれる特定の土地の持分4分の1を第三者Eに売り渡したときは、905条1項は適用ないし類推適用されないため、Dは、その価額及び費用を償還して、Eから当該持分を取り戻すことができない。
共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者と遺産確認の訴えの当事者適格 最二小判平成26年2月14日
概要
判例
判旨:「遺産確認の訴えは、その確定判決により特定の財産が遺産分割の対象である財産であるか否かを既判力をもって確定し、これに続く遺産分割審判の手続等において、当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによって共同相続人間の紛争の解決に資することを目的とする訴えであり、そのため、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟と解されているものである(最高裁昭和57年(オ)第184号同61年3月13日第一小法廷判決・民集40巻2号389頁、最高裁昭和60年(オ)第727号平成元年3月28日第三小法廷判決・民集43巻3号167頁参照)。しかし、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する割合的な持分を全て失うことになり、遺産分割審判の手続等において遺産に属する財産につきその分割を求めることはできないのであるから、その者との間で遺産分割の前提問題である当該財産の遺産帰属性を確定すべき必要性はないというべきである。そうすると、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと解するのが相当である。」
遺産分割協議と合意解除及び再分割協議の可否 最一小判平成2年9月27日
概要
判例
判旨:「共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではな…い。」
相続人の一部を除外して行った遺産分割協議の効力 最二小判昭和54年3月23日
概要
判例
判旨:「母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず分娩の事実により当然に発生するものと解すべきであつて(最高裁判所昭和35年(オ)第1189号同37年4月27日第二小法廷判決・民集16巻7号1347頁参照)、母子関係が存在する場合には認知によつて形成される父子関係に関する民法784条但書を類推適用すべきではなく、また、同法910条は、取引の安全と被認知者の保護との調整をはかる規定ではなく、共同相続人の既得権と被認知者の保護との調整をはかる規定であつて、遺産分割その他の処分のなされたときに当該相続人の他に共同相続人が存在しなかつた場合における当該相続人の保護をはかるところに主眼があり、第三取得者は右相続人が保護される場合にその結果として保護されるのにすぎないのであるから、相続人の存在が遺産分割その他の処分後に明らかになつた場合については同法条を類推適用することができないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H26 共通 第34問 4)
嫡出でない子がいる母の死亡による相続について、その子が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人らがその子の存在を知らないまま、既に遺産分割の協議を成立させていたときは、その子は、他の共同相続人らに対し、価額のみによる支払の請求権を有する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭54.3.23)は、「910条は、取引の安全と被認知者の保護との調整をはかる規定ではなく、共同相続人の既得権と被認知者の保護との調整をはかる規定であつて、遺産分割その他の処分のなされたときに当該相続人の他に共同相続人が存在しなかつた場合における当該相続人の保護をはかるところに主眼があり、第三取得者は右相続人が保護される場合にその結果として保護されるのにすぎないのであるから、相続人の存在が遺産分割その他の処分後に明らかになつた場合については同法条を類推適用することができないものと解するのが相当である。」と判示している。そして、910条は、「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。」と規定している。
したがって、嫡出でない子がいる母の死亡による相続について、その子が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人らがその子の存在を知らないまま、既に遺産分割の協議を成立させていたときは、910条は類推適用されないから、その子は、他の共同相続人らに対し、価額のみによる支払の請求権を有しない。
遺産分割方法の指定と遺言 最二小判平成3年4月19日
概要
②特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要することなく、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに当該相続人に相続により承継される。
判例
②遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合において、当該遺産が当該相続人に相続により承継されるためには、何らかの行為を要するかが問題となった。
判旨:「被相続人の遺産の承継関係に関する遺言については、遺言書において表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきものであるところ、遺言者は、各相続人との関係にあっては、その者と各相続人との身分関係及び生活関係、各相続人の現在及び将来の生活状況及び資力その他の経済関係、特定の不動産その他の遺産についての特定の相続人のかかわりあいの関係等各般の事情を配慮して遺言をするのであるから、遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合、当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共にではあるが当然相続する地位にあることにかんがみれば、遺言者の意思は、右の各般の事情を配慮して、当該遺産を当該相続人をして、他の共同相続人と共にではなくして、単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではない。そして、右の「相続させる」趣旨の遺言、すなわち、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は、前記の各般の事情を配慮しての被相続人の意思として当然あり得る合理的な遺産の分割の方法を定めるものであって、民法908条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとしているのも、遺産の分割の方法として、このような特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させることをも遺言で定めることを可能にするために外ならない。したがって、右の「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第9問 5)
相続財産のうち、特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言があった場合、その遺言で相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、その不動産の所有権は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により当該相続人に承継される。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に…「相続させる」趣旨の遺言は、正に…遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」と判示している。
(R1 共通 第35問 イ)
被相続人が、共同相続人A及びBのうち、Aに甲不動産を相続させる旨の遺言を残して死亡し、その遺言が遺産分割の方法の指定と解される場合であっても、AB間の遺産分割協議を経なければ、Aは甲不動産を取得することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に…「相続させる」趣旨の遺言は、正に…遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、AB間の遺産分割協議を経ることなく、Aは甲不動産を取得することができる。
(R4 司法 第6問 オ)
Aがその所有する甲土地を相続人Bに承継させる旨の遺言をして死亡した場合には、Bは、Bと共にAを相続したCに対し、登記がなくても、甲土地の単独所有権の取得を対抗することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に…「相続させる」趣旨の遺言は、正に…遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」と判示している。そうすると、本肢においては、Bと共にAを相続したCは、Aによる甲土地を相続人Bに承継させる旨の遺言に拘束されるから、899条の2第1項にいう「第三者」に当たらない。したがって、Bは、Cに対し、登記がなくても、甲土地の単独所有権の取得を対抗することができる。
(R6 司法 第35問 ウ)
被相続人が、遺産に属する甲建物を共同相続人A及びBのうちAに承継させる旨の特定財産承継遺言をしたときであっても、Aは、遺産分割手続を経なければ、甲建物を取得することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に…「相続させる」趣旨の遺言は、正に…遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、Aは、遺産分割手続を経ることなく、甲建物を取得することができる。
共同相続された預貯金債権と遺産分割の対象 最大判平成28年12月19日
概要
判例
判旨:「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」