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中止犯 - 解答モード
中止犯と任意性 大判大正2年11月18日
概要
②共犯者の一部の者の中止の効果は他の共犯者に影響しない。
判例
判旨:「逃走スルノ止ムナキニ至リタル者ニシテ犯人ノ意思以外ノ事情ニ強制セラルルコトナク任意ニ殺害行爲ヲ中止シタル事實ニ非サルコト洵ニ明カナルヲ以テ原判決ニ於テ被告幸三郎鹿尾ノ行爲ヲ殺人未遂罪ヲ以テ論シ中止犯トシテ擬律セサリシハ蓋シ相當ナルノミナラス實行正犯ノ一人ノミカ單獨ノ意思ヲ以テ實行ヲ中止シ若クハ結果ノ發生ヲ妨止シタル場合ニ於テハ右中止ノ效力ハ他ノ共犯人ニ及フヘキニ非サレハ被告甲ノ行爲カ中止犯ニ該當スヘキモノト爲スモ中止ニ付キ何等干與セサル被告乙ノ行爲ニ付テハ刑法第四十三條末段ノ規定ヲ適用スヘキモノニ非ス本論旨ハ理由ナシ」
過去問・解説
(R4 司法 第7問 5)
甲と乙は、Vの殺害を共謀し、甲がVをナイフで切り付けて傷害を負わせたが、甲は、Vに憐憫の情を抱き、犯行をやめようと決意した。甲は、更にVを切り付けようとする乙を羽交い締めにし、Vがその隙に逃走したため、乙は、犯行を継続できず、Vは、死亡するに至らなかった。この場合、甲と乙には、いずれも中止犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大2.11.18)は、「中止ノ效力ハ他ノ共犯人ニ及フヘキニ非サレハ被告甲ノ行爲カ中止犯ニ該當スヘキモノト爲スモ中止ニ付キ何等干與セサル被告乙ノ行爲ニ付テハ刑法第四十三條末段ノ規定ヲ適用スヘキモノニ非ス本論旨ハ理由ナシ」として、共犯者の一部の者の中止の効果は他の共犯者に影響しないとしている。
甲は、乙を羽交い絞めにして結果発生防止の措置をとっているため、中止犯が成立するが、乙は甲に羽交い締めされたという外部的事情によって犯行を継続できなかったのであり、強制されることなく任意に実行を中止したのではなく、乙には中止犯は成立しない。
また、甲の中止の効果は乙には影響しない。
したがって、中止犯は甲にのみ成立する。
中止犯成立に必要な中止行為 大判昭和26年12月25日
概要
判例
判旨:「中止未遂タルニハ少クトモ犯人自ラ結果ノ発生ヲ防止スルカ又ハ自ラ防止シタルト同視スルニ足ルヘキ程度ノ努力ヲ払フノ要アルモノトス」
過去問・解説
(H24 司法 第11問 イ)
甲は、殺意をもって、乙の頭部目掛けて包丁で1回切り付けたが、乙は、これを左腕で防いだため、左前腕部切創の傷害を負い、同切創に起因する出血のため、早期に治療を受けなければ出血性ショックにより死亡する危険のある状態となった。甲は、乙に致命傷を与えたと思い、その場を立ち去ろうとしたが、乙から「助けてくれ。」と懇願されたため、憐憫の情を催し、通行人に「あそこに怪我人がいるから、あとはよろしく。」とだけ告げて立ち去った。乙は、その通行人が手配した救急車によって病院に搬送されて治療を受けた結果、死亡するに至らなかった。中止犯が成立する。
予備罪についての中止犯の成否 最大判昭和29年1月20日
概要
判例
過去問・解説
(H22 司法 第10問 1)
強盗予備罪について中止犯が成立し得る。
(H26 司法 第14問 5)
甲は、深夜、事務所で窃盗をしようと考え、窃盗の際に誰かに発見されたら包丁で脅して逃げるため、これを携帯しながら盗みに入ることができそうな事務所を探して街をはいかいしていたが、悔悟の念を生じたため、盗みに入ることを断念した。甲に強盗予備罪の中止犯は成立しない。
中止犯の成否 東京高判昭和62年7月16日
概要
判例
判旨:「被告人は、Vを右牛刀でぶった切り、あるいはめった切りにして殺害する意図を有していたものであって、最初の一撃で殺害の目的が達せられなかった場合には、その目的を完遂するため、更に、二撃、三撃というふうに追撃に及ぶ意図が被告人にあったことが明らかであるから、原判示のように、被告人が同牛刀でVに一撃を加えたものの、その殺害に奏功しなかったという段階では、いまだ殺人の実行行為は終了しておらず、従って、本件はいわゆる着手未遂に該当する事案であるといわねばならない。
そして、いわゆる着手未遂の事案にあっては、犯人がそれ以上の実行行為をせずに犯行を中止し、かつ、その中止が犯人の任意に出たと認められる場合には、中止未遂が成立することになるので、この観点から、原判決の掲げる証拠に当審における被告人質問の結果なども参酌して、本件を考察すると、原判示のように、被告人は確定的殺意のもとに、Vの左側頭部付近を目掛けて、右牛刀で一撃し、これを左腕で防いだ同人に左前腕切傷の傷害を負わせたが、その直後に、同人から両腰付近に抱きつくように取りすがられて、『勘弁して下さい。私が悪かった。命だけは助けて下さい。』などと何度も哀願されたため、かわいそうとのれんびんの情を催して、同牛刀で更に二撃、三撃というふうに追撃に及んで、殺害の目的を遂げることも決して困難ではなかったのに、そのような行為には出ずに犯行を中止したうえ、自らも本件の所為について同人に謝罪し、受傷した同人に治療を受けさせるため、通り掛かりのタクシーを呼び止めて、同人を病院に運んだことなどの事実が明らかである。
右によると、たしかに、Vが被告人の一撃を防御したうえ、被告人に取りすがって謝罪し、助命を哀願したことが、被告人が殺人の実行行為を中止した契機にはなっているけれども、一般的にみて、そのような契機があったからといって、被告人のように強固な確定的殺意を有する犯人が、その実行行為を中止するものとは必ずしもいえず、殺害行為を更に継続するのがむしろ通例であるとも考えられる。
ところが、被告人は前記のように、Vの哀願にれんびんの情を催して、あえて殺人の実行行為を中止したものであり、加えて、被告人が前記のように、自らもVに謝罪して、同人を病院に運び込んだ行為には、本件所為に対する被告人の反省、後悔の念も作用していたことが看取されるのである。
以上によると、本件殺人が未遂に終ったのは、被告人が任意に、すなわち自己の意思によって、その実行行為をやめたことによるものであるから、右の未遂は、中止未遂に当たるといわねばならない。」
過去問・解説
(H24 司法 第11問 エ)
甲は、殺意をもって、乙の頭部目掛けて包丁で1回切り付けたが、乙は、これを左腕で防いだため、左前腕部切創の傷害を負った。乙の負った傷害は、全治約2週間の左前腕部切創にとどまり、生命に危険のある状態には至らなかった。甲は、更に乙に切り付けようとしたが、乙から「助けてくれ。」と懇願されたため、憐憫の情を催し、そのままその場から立ち去った。中止犯が成立する。