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実行の着手 - 解答モード

間接正犯における実行の着手時期 大判大正7年11月16日

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概要
他人が食用の結果中毒死に至ることを予見し、毒物をその飲食できる状態に置いた事実があるときは毒殺行為に着手したといえる。
判例
事案:被告人が致死性の毒入り飲食物を送付した事案において、どの時点で殺人の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「他人カ食用ノ結果中毒死ニ至ルコトアルヘキヲ予見シ乍ラ毒物ヲ其飲食シ得ヘキ状態ニ置キタル事実アルトキハ毒殺行為ニ著手シタルモノニ外ナラス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第11問 オ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、殺人罪が既遂になる場合は1を、未遂にとどまる場合は2を、既遂にも未遂にもならない場合は3を選びなさい。
甲は、乙を自宅に招いて毒入りの菓子を食べさせて毒殺しようと考え、菓子に致死量の毒薬を混入し、乙に自宅に招待する旨の電話をしたが、乙が多忙を理由にこれを断ったため、乙を殺害することができなかった。

(正答)3

(解説)
判例(大判大7.11.16)は、「他人カ食用ノ結果中毒死ニ至ルコトアルヘキヲ予見シ乍ラ毒物ヲ其飲食シ得ヘキ状態ニ置キタル事実アルトキハ毒殺行為ニ著手シタルモノニ外ナラス」として、毒入り食品が被害者宅へ到着した時点で実行の着手を認めている。
乙は、甲の自宅に行くことを電話で誘われただけで、実際には多忙を理由に断っているから、この時点では死に至る客観的危険性があるとは認められない。
したがって、甲は罪責を負わない。


全体の正答率 : 100%

(H23 共通 第10問 ア)
甲は、乙を毒殺する目的で毒入り菓子をお歳暮として郵送するため、郵便局の窓口でその菓子を包んだ小包の郵送を申し込んだが、誤って実際には存在しない住所を宛先として記載したために同小包はどこにも配達されずに甲宅に送り返された。この場合、甲には殺人未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.11.16)は、「他人カ食用ノ結果中毒死ニ至ルコトアルヘキヲ予見シ乍ラ毒物ヲ其飲食シ得ヘキ状態ニ置キタル事実アルトキハ毒殺行為ニ著手シタルモノニ外ナラス」として、毒入り食品が被害者宅へ到着した時点で実行の着手を認めている。
甲が誤って実際には存在しない住所を宛先として記載したために、小包はどこにも配達されずに甲宅に送り返されているから、被害者宅に到着していない。
したがって、甲に殺人未遂罪は成立しない。


全体の正答率 : 100%

(R2 司法 第11問 エ)
甲は、Vを殺害する意思で、毒入りの菓子を箱詰めし、それをV宅に宛てて宅配便で発送した。しかし、仕事に嫌気が差した配達員により、その菓子は配達途中に川に捨てられた。甲には、殺人未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.11.16)は、「他人カ食用ノ結果中毒死ニ至ルコトアルヘキヲ予見シ乍ラ毒物ヲ其飲食シ得ヘキ状態ニ置キタル事実アルトキハ毒殺行為ニ著手シタルモノニ外ナラス」として、毒入り食品が被害者宅へ到着した時点で実行の着手を認めている。
甲がV宅に宛てて発送した毒入り菓子は、仕事に嫌気が差した配達員により、その菓子は配達途中に川に捨てられ、被害者宅に到着していない。
したがって、甲に殺人未遂罪は成立しない。

該当する過去問がありません

中止未遂と傷害未遂 最三小決昭和32年9月10日

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概要
被告人の犯行完成の意力を抑圧した原因が、本件のように、犯罪の完成を妨害するに足る性質の障がいに基づくものと認められる場合は、いわゆる中止未遂ではなく、障がい未遂にあたると解するのが相当とする。
判例
事案:母を殺害しようとしたものの、頭部より血を流し痛苦していたので、その姿を見て俄かに驚愕恐怖し、その後の殺害行為を続行することができず、所期の殺害の目的を遂げなかった事案において、中止犯の成否が問題となった。

判旨:「被告人が犯行完成の意力を抑圧されて本件犯行を中止した場合は、犯罪の完成を妨害するに足る性質の障がいに基くものと認めるべきであって、刑法43条但書にいわゆる自己の意思により犯行を止めたる場合に当らないものと解するを相当とする。」
過去問・解説
全体の正答率 : 50%

(H24 司法 第11問 ア)
【事例】
甲は、殺意をもって、乙の頭部目掛けて包丁で1回切り付けたが、乙は、これを左腕で防いだため、左前腕部切創の傷害を負った。
【記述】
乙の負った傷害は、全治約2週間の左前腕部切創にとどまり、生命に危険のある状態には至らなかった。甲は、更に乙に切り付けようとしたが、通行人が近づいてくるのを認めて、自己の犯行が発覚すると思い、その場から逃走した。中止犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭32.9.10)は、「被告人が犯行完成の意力を抑圧されて本件犯行を中止した場合は、犯罪の完成を妨害するに足る性質の障がいに基くものと認めるべきであって、刑法43条但書にいわゆる自己の意思により犯行を止めたる場合に当らないものと解するを相当とする。」としている。
甲は、通行人に発見されれば犯行の継続は事実上困難で、その場から逃走したのは犯罪の完成を妨害するに足る性質の障がいに基づくものといえ、任意性が認められない。
したがって、甲に中止犯は成立しない。

該当する過去問がありません

殺人の既遂時期 大判大正6年9月10日

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概要
殺意をもってふたつの異なる殺害方法を他人に施した第1の方法をもってしては殺害の結果を惹起することは絶対に不能であって、単にその者を傷害したにとどまる第2の方法を用い、はじめて殺害の目的を達したときは、第1の方法による行為を殺人罪に問擬すべきでないことは勿論であって、当該行為の結果が傷害罪に該当するにおいては傷害罪として処断すべく第2の方法による殺人罪の既遂と連続犯の関係を有する未遂をもって論ずべきものではない。
判例
事案:殺意をもって2回殺害を試みた事案において、最初の行為で被害者を絶対殺害できないときに最初の行為の時点で殺人の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「殺意ヲ以テ2箇ノ異ナレル殺害方法ヲ他人ニ施シタル處第1ノ方法ヲ以テシテハ殺害ノ結果ヲ惹起スルコト絶對ニ不能ニシテ單タ他人ヲ傷害シタルニ止マリ第2ノ方法ヲ用ヰ始メテ殺害ノ目的ヲ達シタルトキハ右2箇ノ行爲カ孰レモ同一ノ殺意ニ出テタリトスルモ第1ノ方法ニ依ル行爲カ殺人罪トシテ純然タル不能犯ニ屬スル場合ニ於テハ殺人罪ニ問擬スヘカラサルハ勿論ニシテ若シ又該行爲ノ結果カ傷害罪ニ該當スルニ於テハ殺人罪トシテハ不能犯ナルモ傷害罪ヲ以テ之ヲ處斷スヘク第2ノ方法ニ依ル殺人罪ノ既遂ト連續犯ノ關係ヲ有スル殺人罪ノ未遂ヲ以テ論スヘキニ非ス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第13問 イ)
判例の立場に従って検討し、殺人罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、Aを殺害しようと考え、Bから致死性の毒薬であると告げられて小瓶入りの液体を購入し、コーヒーに同液体を入れて、これをAに飲ませたものの、同液体は水であったため、Aは死亡しなかった。

(正答)3

(解説)
判例(大判大6.9.10)は、本肢と同種の事案において、「第1ノ方法ニ依ル行爲カ殺人罪トシテ純然タル不能犯ニ屬スル場合ニ於テハ殺人罪ニ問擬スヘカラサル」とした上で、「第2ノ方法ニ依ル殺人罪ノ既遂ト連續犯ノ關係ヲ有スル殺人罪ノ未遂ヲ以テ論スヘキニ非ス」として、第1行為によって結果を発生させることが絶対に不能な場合には、続く第2行為との連続性が認められることをもって第1行為に殺人未遂罪を成立させることはできないことを示している。
水を飲ませることにより人を殺すことができない以上、コーヒーに水を混ぜた行為は殺人の実行行為に当たらない。
したがって、甲の行為は不能犯であり、殺人罪は既遂にも未遂にもならない。

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毒殺行為の着手 大判大正7年11月16日

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概要
他人が食用の結果中毒死に至ることを予見し、毒物をその飲食できる状態に置いた事実があるときは毒殺行為に着手したといえる。
判例
事案:被告人が致死性の毒入り飲食物を送付した事案において、どの時点で殺人の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「他人カ食用ノ結果中毒死ニ至ルコトアルヘキヲ予見シ乍ラ毒物ヲ其飲食シ得ヘキ状態ニ置キタル事実アルトキハ毒殺行為ニ著手シタルモノニ外ナラス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第11問 オ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、殺人罪が既遂になる場合は1を、未遂にとどまる場合は2を、既遂にも未遂にもならない場合は3を選びなさい。
甲は、乙を自宅に招いて毒入りの菓子を食べさせて毒殺しようと考え、菓子に致死量の毒薬を混入し、乙に自宅に招待する旨の電話をしたが、乙が多忙を理由にこれを断ったため、乙を殺害することができなかった。

(正答)3

(解説)
判例(大判大7.11.16)は、「他人カ食用ノ結果中毒死ニ至ルコトアルヘキヲ予見シ乍ラ毒物ヲ其飲食シ得ヘキ状態ニ置キタル事実アルトキハ毒殺行為ニ著手シタルモノニ外ナラス」として、毒入り食品が被害者宅へ到着した時点で実行の着手を認めている。
乙は、甲の自宅に行くことを電話で誘われただけで、実際には多忙を理由に断っているから、甲が、毒入りの菓子を乙が飲食し得るべき状態に置いたとはいえない。
したがって、甲が殺人罪の実行に着手したとはいえないから、甲に殺人未遂罪は成立しない。


全体の正答率 : 100%

(H23 共通 第10問 ア)
甲は、乙を毒殺する目的で毒入り菓子をお歳暮として郵送するため、郵便局の窓口でその菓子を包んだ小包の郵送を申し込んだが、誤って実際には存在しない住所を宛先として記載したために同小包はどこにも配達されずに甲宅に送り返された。この場合、甲には殺人未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.11.16)は、「他人カ食用ノ結果中毒死ニ至ルコトアルヘキヲ予見シ乍ラ毒物ヲ其飲食シ得ヘキ状態ニ置キタル事実アルトキハ毒殺行為ニ著手シタルモノニ外ナラス」として、毒入り食品が被害者宅へ到着した時点で実行の着手を認めている。
甲が誤って実際には存在しない住所を宛先として記載したために、小包はどこにも配達されずに甲宅に送り返されているから、被害者宅に到着していない。
したがって、甲が殺人罪の実行に着手したとはいえないから、甲に殺人未遂罪は成立しない。


全体の正答率 : 100%

(R2 司法 第11問 エ)
甲は、Vを殺害する意思で、毒入りの菓子を箱詰めし、それをV宅に宛てて宅配便で発送した。しかし、仕事に嫌気が差した配達員により、その菓子は配達途中に川に捨てられた。甲には、殺人未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.11.16)は、「他人カ食用ノ結果中毒死ニ至ルコトアルヘキヲ予見シ乍ラ毒物ヲ其飲食シ得ヘキ状態ニ置キタル事実アルトキハ毒殺行為ニ著手シタルモノニ外ナラス」として、毒入り食品が被害者宅へ到着した時点で実行の着手を認めている。
甲がV宅に宛てて発送した毒入り菓子は、仕事に嫌気が差した配達員により、その菓子は配達途中に川に捨てられ、被害者宅に到着していない。
したがって、甲が殺人罪の実行に着手したとはいえないから、甲に殺人未遂罪は成立しない。


全体の正答率 : 100%

(R6 司法 第2問 ウ)
甲は、Aの殺害を企て、致死量の毒物を混入した砂糖を、情を知らない郵便配達員を介して、贈答品を装ってAに郵送し、Aがこれを受領したが、Aは、毒物の混入に気付いたため、同砂糖を食用に供することはなかった。この場合、甲に殺人未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.11.16)は、「他人カ食用ノ結果中毒死ニ至ルコトアルヘキヲ予見シ乍ラ毒物ヲ其飲食シ得ヘキ状態ニ置キタル事実アルトキハ毒殺行為ニ著手シタルモノニ外ナラス」として、毒入り食品が被害者宅へ到着した時点で実行の着手を認めている。
致死量の毒物を混入した砂糖は、情を知らない郵便配達員を介して、贈答品を装ってAに郵送し、Aがこれを受領しているから、Aは毒物をその飲食できる状態に置かれているといえ、実行の着手が認められる。
したがって、甲が殺人罪の実行に着手したといえるから、甲に殺人未遂罪は成立する。

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殺人罪の実行の着手時期 宇都宮地判昭和40年12月9日

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概要
飲食物を路上に置き、人を毒殺した場合、飲食物を路上に置いた時点では殺人の実行の着手が認められず、被害者が当該飲食物を手に取った時点で実行の着手が認められる。農道に単に毒入りジュースが配置されたというだけでは殺人罪の実行の着手は認められない。
判例
事案:道端に毒入りの飲食物を置いた事案において、その時点で殺人の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「行為が結果発生のおそれある客観的状態に至った場合、換言すれば保護客体を直接危険ならしめるような法益侵害に対する現実的危険性を発生せしめた場合をもって実行の着手があったと解するもので、この考えは殺人罪における実行の着手に関する左記諸判例から必然的に帰納されたものである。…農道に単に食品が配置されたというだけではそれが直ちに他人の食用に供されたといえないことは明らかである。すなわち農村においては野ねずみ、害虫等の駆除のため毒物混入の食品を農道に配置することもあるであろうし、道に棄てた物を必ずしも人が食用に供するとは限らないからである。もっとも本件のようにビニール袋入りのジュースではこれを他人が発見した場合右のような目的に使用された毒物混入食品とは思わないであろうから比較的に拾得飲用される危険は、成人はともかく幼児などについては相当大きいといわなければならない。ただ左様な危険の存するからといってただちに本件被告人の行為をもって犯罪実行の着手と認めることができないのは前示のとおりであるばかりでなく前記引用の諸判例に示された法律上の見解からすればなおさら本件被告人の行為をもって他人の食用に供されたと見ることはできないからである。 
 以上の次第で本件においては毒入りジュースの配置をもって尊属殺および普通殺人の各予備行為と解し…ただ本件被害者らによって右ジュースが拾得飲用される直前に普通殺人について実行の着手があり…殺害によって普通殺人罪が既遂に達し…。」
過去問・解説
全体の正答率 : 50%

(H26 司法 第9問 5)
甲は、登校中の子供に毒入りジュースを飲ませてこれを殺害する目的で、前日の夜に、夜間は人通りのない通学路に致死量を超える毒を混入させたペットボトル入りのジュースを置いた。甲には殺人罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
裁判例(宇都宮地判昭40.12.9)は、本肢と同種の事案において、「行為が結果発生のおそれある客観的状態に至った場合、換言すれば保護客体を直接危険ならしめるような法益侵害に対する現実的危険性を発生せしめた場合をもって実行の着手があったと解する…。」とした上で、毒入りジュースを配置した時点では実行の着手が認められないと判断している。
したがって、甲に殺人罪の実行の着手は認められない。

該当する過去問がありません

殺人罪における実行の着手・早すぎた結果発生 最一小決平成16年3月22日

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概要
クロロホルムを吸引させて失神させた被害者を自動車ごと海中に転落させてでき死させようとした場合において、クロロホルムを吸引させて失神させる行為が自動車ごと海中に転落させる行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠であり、失神させることに成功すれば、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったなど判示の事実関係の下では、クロロホルムを吸引させる行為を開始した時点で殺人罪の実行の着手があったと認められる。
判例
事案:クロロホルムを吸引させ失神させたうえで、海中に転落させ溺死させる殺害計画のもと、クロロホルムを吸引させたところ、薬物死した事案において、クロロホルムを吸引させた時点で殺人の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「実行犯3名の殺害計画は、クロロホルムを吸引させてVを失神させた上、その失神状態を利用して、Vを港まで運び自動車ごと海中に転落させてでき死させるというものであって、第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、実行犯3名が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H24 司法 第3問 2)
【事例】
甲は、自動車内でVにクロロホルムを吸引させて失神させた上、約2キロメートル離れた港までVを運び、自動車ごと海中に転落させて溺死させようという計画の下、Vにクロロホルムを吸引させた。甲は、Vが動かなくなったので、計画どおりVが失神したものと考え、港に運んで自動車ごと海中に転落させた。Vの遺体の司法解剖の結果、甲の計画とは異なり、Vは溺死ではなく、海中への転落前にクロロホルムの吸引により死亡していたことが判明した。

【判旨】
甲の殺害計画は、クロロホルムを吸引させてVを失神させた上(以下「第1行為」という。)、その失神状態を利用してVを港まで運び、自動車ごと海中に転落させ(以下「第2行為」という。)、溺死させるというものであって、第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。

【記述】
この判旨は、甲がVにクロロホルムを吸引させた場所と殺害計画を実行しようとしていた港との距離が約2キロメートルの距離にあったということを、実行の着手時期を決する上で考慮している。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.3.22)は、「…第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。」として、甲がVにクロロホルムを吸引させた場所と殺害計画を実行しようとしていた港との距離が約2キロメートルの距離にあったということを、実行の着手時期を決する上で考慮している。


全体の正答率 : 50%

(H24 司法 第3問 3)
【事例】 
甲は、自動車内でVにクロロホルムを吸引させて失神させた上、約2キロメートル離れた港までVを運び、自動車ごと海中に転落させて溺死させようという計画の下、Vにクロロホルムを吸引させた。甲は、Vが動かなくなったので、計画どおりVが失神したものと考え、港に運んで自動車ごと海中に転落させた。Vの遺体の司法解剖の結果、甲の計画とは異なり、Vは溺死ではなく、海中への転落前にクロロホルムの吸引により死亡していたことが判明した。 

【判旨】 
甲の殺害計画は、クロロホルムを吸引させてVを失神させた上(以下「第1行為」という。)、その失神状態を利用してVを港まで運び、自動車ごと海中に転落させ(以下「第2行為」という。)、溺死させるというものであって、第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。

【記述】
この判旨が第1行為を開始した時点で殺人罪の実行の着手を認めたのは、第1行為自体によってVの死の結果が生じることを甲が認識・認容していたことを前提としている。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.3.22)は、「甲の殺害計画は、クロロホルムを吸引させてVを失神させた上(以下「第1行為」という。)、その失神状態を利用してVを港まで運び、自動車ごと海中に転落させ(以下「第2行為」という。)、溺死させるというもの…。」として、第1行為自体によってVの死の結果が生じることを甲が認識・認容していたことを前提としていない。


全体の正答率 : 100%

(H24 司法 第3問 4)
【事例】 
甲は、自動車内でVにクロロホルムを吸引させて失神させた上、約2キロメートル離れた港までVを運び、自動車ごと海中に転落させて溺死させようという計画の下、Vにクロロホルムを吸引させた。甲は、Vが動かなくなったので、計画どおりVが失神したものと考え、港に運んで自動車ごと海中に転落させた。Vの遺体の司法解剖の結果、甲の計画とは異なり、Vは溺死ではなく、海中への転落前にクロロホルムの吸引により死亡していたことが判明した。 

【判旨】 
甲の殺害計画は、クロロホルムを吸引させてVを失神させた上(以下「第1行為」という。)、その失神状態を利用してVを港まで運び、自動車ごと海中に転落させ(以下「第2行為」という。)、溺死させるというものであって、第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。

【記述】
この判旨の立場に立てば、甲が第1行為によってVが死亡していることに気付き、自動車ごとVを海中に転落させる行為に及ばなかった場合でも、甲に殺人既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.3.22)は、「甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。」として、第1行為の開始時点で殺人罪の実行の着手を認めている。
したがって、甲が第1行為によってVが死亡していることに気付き、自動車ごとVを海中に転落させる行為に及ばなかった場合でも、甲に殺人既遂罪が成立する。


全体の正答率 : 50%

(H24 司法 第3問 5)
【事例】 
甲は、自動車内でVにクロロホルムを吸引させて失神させた上、約2キロメートル離れた港までVを運び、自動車ごと海中に転落させて溺死させようという計画の下、Vにクロロホルムを吸引させた。甲は、Vが動かなくなったので、計画どおりVが失神したものと考え、港に運んで自動車ごと海中に転落させた。Vの遺体の司法解剖の結果、甲の計画とは異なり、Vは溺死ではなく、海中への転落前にクロロホルムの吸引により死亡していたことが判明した。 

【判旨】 
甲の殺害計画は、クロロホルムを吸引させてVを失神させた上(以下「第1行為」という。)、その失神状態を利用してVを港まで運び、自動車ごと海中に転落させ(以下「第2行為」という。)、溺死させるというものであって、第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。

【記述】
この判旨の立場に立てば、第1行為を行ってもそれ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存在していたような場合には、甲に殺人未遂罪と重過失致死罪が成立することになる。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.3.22)は、「第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。」としている。
したがって、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情がある場合、第1行為時点で殺人に至る客観的危険性が認められない。
よって、甲は第1行為という不法な有形力の行使によってVを死亡させているから、甲には傷害致死罪が成立することになる。

該当する過去問がありません

窃盗の着手 大判大正2年3月17日

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概要
容器若しくは包装の占有者が開封してその内容物を自己の占有に移す行為に窃盗罪が成立する。
判例
事案:容器若しくは包装の占有者が開封してその内容物を自己の占有に移した事案において、窃盗罪の成否が問題となった。

判旨:「鎖鑰ヲ施セル容器内若クハ封緘ヲ為セル包裏内ニ存在セル他人ノ物ハ容器若クハ包裏ノ占有者カ自由ニ支配シ得ル状態ニ在ラサルヲ以テ其占有ハ依然所有者ニ存スルモノト謂ハサルヘカラス故ニ容器若クハ包裏ノ占有者カ鎖鑰又ハ封緘ヲ開披シ其内容物ヲ自己ノ占有ニ移スニ於テハ窃盗罪成立スルモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H24 共通 第1問 4)
甲に窃盗罪が成立するか。
甲は、乙から封かんされた現金10万円入りの封筒を渡されて丙に届けるように依頼され、丙方に向かって歩き始めたが、途中で封筒内の現金が欲しくなり、封を開いて封筒に入っていた現金のうち2万円を取り出してこれを自分のものにした後、残りの現金が入った封筒を丙に交付した。

(正答)

(解説)
判例(大判大2.3.17)は、本肢と同種の事案にいて、「容器若クハ包裏ノ占有者カ鎖鑰又ハ封緘ヲ開披シ其内容物ヲ自己ノ占有ニ移スニ於テハ窃盗罪成立スルモノトス」として、占有者が鍵又は封かんを開披し、その内容物を自己の占有に移した時点で窃盗罪が成立することを示している。
封かんされた現金10万円入りの封筒全体の占有は委託された甲にあるが、内容物の現金は委託者乙に占有があり、甲が封かんされた封筒内から現金2万円を抜き出して自分のものにする行為は窃盗罪の実行行為に当たる。
したがって、甲に窃盗罪が成立する。

該当する過去問がありません

窃盗罪の実行の着手 大判大正6年10月11日

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概要
他人の財物を領得する意思に出た行為といえども未だ他人の事実上の支配を侵すにつき密接な程度に達していない場合は窃盗罪に着手したものということはできない。他人の財物がある衣装に手を差し入れ金品を窃取しようとしてそれを遂げなかったときは他人の事実上の支配を侵し窃盗行為に着手し遂げなかった事実に該当するものであるから窃盗未遂罪をもって論ずべきである。
判例
事案:他人の財物がある衣装に手を差し入れ金品を窃取しようとしてそれを遂げなかった事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「他人ノ財物ヲ領得スル意思ニ出ツル行為ト雖モ未タ他人ノ事実上ノ支配ヲ侵スニ付キ密接ノ程度ニ達セサル場合ハ窃盗罪ニ著手シタルモノト謂フヲ得ス
 他人ノ財物在中ノ衣嚢ニ手ヲ差入レ金品ヲ窃取セントシテ遂ケサリシトキハ他人ノ事実上ノ支配ヲ侵シ窃盗行為ニ著手シ遂ケサリシ事実ニ該当スルモノナレハ窃盗未遂罪ヲ以テ論スヘキモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第8問 イ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、窃盗罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、乙方応接間で乙と雑談中、乙が部屋を出たすきに隣室にある金目の物を探して窃取しようと思い立ち、乙に対し、「お茶が欲しい。」と言って、乙を台所に行かせたが、乙の娘が応接間に入ってきたため、隣室に行くことができなかった。

(正答)3

(解説)
判例(大判大6.10.11)は、「他人ノ財物ヲ領得スル意思ニ出ツル行為ト雖モ未タ他人ノ事実上ノ支配ヲ侵スニ付キ密接ノ程度ニ達セサル場合ハ窃盗罪ニ著手シタルモノト謂フヲ得ス」として、占有者の事実上の支配を侵すのに密接な行為を開始しなければ窃盗罪の実行の着手が認められないことを示している。
また、その後の判例(最決昭40.3.9)は、「窃盗罪が成立するには他人の事実上の支配内に在る他人の財物を自己の支配内に移すことを要する。したがって他人の財物を領得する意思に出たとしても行為が未だ他人の事実上の支配を侵すに付き密接に至る程度に達していない場合においては窃盗罪に着手したとはいえない。…他人の財物がある衣装に手を差し入れ金品を窃取しようとしてそれを遂げなかったときは他人の事実上の支配を侵し窃盗行為に着手し遂げなかった事実に該当するものであるから窃盗未遂罪をもって論ずべきである。」としている。
甲は、乙が応接間を離れたすきに、隣室で金目の物を盗ろうとしたが、応接間に乙の娘が入ってきたため、隣室に行くこと自体を断念しているから、他人の事実上の支配を侵すに付き密接に至る程度に達しておらず、いまだ結果発生の現実的危険が生じているとはいえない。
したがって、甲に窃盗の実行の着手は認められず、甲の窃盗罪は未遂にもならない。

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窃盗罪の実行の着手 大判大正8年4月4日

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概要
被告が領得した物件は所有者甲の事実上の支配を離脱したが甲が宿泊する旅館主乙の事実上の支配が及ぶ当該旅館屋内の便所にあり、乙がこのことを知っているか問わず当然乙の支配内に属するものとして、窃盗罪の成立を認めた。
判例
事案:旅館内に置き忘れられた財物を窃取したという事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題になった。

判旨:「被告ノ領得シタル物件ハ所有者甲ノ事実上ノ支配ヲ離脱シタルモ甲ノ宿泊セル旅館主乙ノ事実上ノ支配ノ及フ該旅館屋内ノ便所ニ現在セルモノナルトキハ乙カ右事実ヲ認知セルト否トヲ問ハス当然乙ノ支配内ニ属スルヲ以テ遺失物ヲ以テ論スルヲ得ス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H24 共通 第1問 2)
甲に窃盗罪が成立するか。
甲は、旅館に宿泊した際、旅館内にある共同浴場の脱衣場で、他の宿泊客が置き忘れた時計を見付けたので、脱衣場から持ち出し、これを自分のものにした。

(正答)

(解説)
判例(大判大8.4.4)は、本肢と同種の事案において、「被告ノ領得シタル物件ハ所有者甲ノ事実上ノ支配ヲ離脱シタルモ甲ノ宿泊セル旅館主乙ノ事実上ノ支配ノ及フ該旅館屋内ノ便所ニ現在セルモノナルトキハ乙カ右事実ヲ認知セルト否トヲ問ハス当然乙ノ支配内ニ属スルヲ以テ遺失物ヲ以テ論スルヲ得ス」として、所有者の事実上の支配を離れていても、旅館の主の事実上の支配が及んでいる物については、窃盗罪の客体となることを示している。
他の宿泊客が旅館内にある共同浴場の脱衣場で時計を置き忘れていたとしても、当該時計には旅館主の占有が認められ、遺失物には当たらず、これを脱衣場から持ち出すことは窃盗の実行行為に当たる。
したがって、甲には窃盗罪が成立する。

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窃盗罪の実行の着手 最一小決昭和29年5月6日

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概要
ズボンの尻ポケットから現金をすり取ろうとして手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものである。
判例
事案:ズボンの尻ポケットから現金をすり取ろうとして手を差しのべその外側に触れたという事案において、当該行為が窃盗の実行に着手にあたるかが問題となった。

判旨:「被害者のズボン右ポケットから現金をすり取ろうとして同ポケットに手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものと解すべきこというまでもない。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 1)
甲は、乙がズボンのポケットに財布を入れるのを見て、同財布をすり取ろうとして同ポケットに手を差し伸べ、ポケットの外側に触れた。この場合、財布に触っていないので、窃盗罪の実行の着手は認められない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭29.5.6)は、「被害者のズボン右ポケットから現金をすり取ろうとして同ポケットに手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものと解すべきこというまでもない。」としている。
甲は、財布をすり取ろうとしてポケットに手を差し伸べ、ポケットの外側に触れているから、財布自体に触っているかどうかに関係なく、実行の着手が認められる。
したがって、甲に窃盗罪の実行の着手が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第13問 エ)
甲は、駅のホームのベンチで寝ているAの隣に座ったところ、Aのズボンのポケットに財布が入っていることに気付き、これを盗もうと考え、手を差し伸べて同ポケットの外側に触れたが、駅員が近付いてきたので、財布に触れることはできなかった。甲について、窃盗の実行の着手が認められるか。

(正答)

(解説)
判例(最決昭29.5.6)は、「被害者のズボン右ポケットから現金をすり取ろうとして同ポケットに手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものと解すべきこというまでもない。」としている。
甲は、Aの財布を盗む目的で手を差し伸べてAのポケットの外側に触れているから、窃盗罪の実行の着手が認められる。
したがって、甲に窃盗の実行の着手が認められる。

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窃盗罪の実行の着手 最三小決昭和31年10月2日

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概要
電柱に架設中の電話線を切断しようとした以上、窃盗の実行に着手したものである。
判例
事案:電柱に架設中の電話線を切断しようとした行為につき、窃盗の実行に着手したと認められるかが問題となった。

判旨:「被告人はA管理の電柱に架設中の電話線を切断窃取しようとしたが、巡査に発見逮捕されてその目的を遂げなかったというのであって、被告人は窃盗の目的で、他人の財物を切断しようとしたというのであるから、このときすでに窃盗の着手があったとみるのが相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 2)
甲は、電柱に架設されている電話線を盗もうと考え、電柱に登って切断用具を電話線に当て、その切断を始めたが、警察官に発見されたため、電話線の被膜を傷付けただけにとどまった。この場合、電話線を切断していなくても、窃盗罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭31.10.2)は、「被告人は窃盗の目的で、他人の財物を切断しようとしたというのであるから、このときすでに窃盗の着手があったとみるのが相当である。」としている。
したがって、甲が電柱に登って切断用具を電話線に当て、その切断を始めた時点で、電話線を切断していなくても、窃盗罪の実行の着手が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H26 司法 第9問 1)
甲は、電話線を盗む目的で、電柱に架設されていた電話会社所有の電話線を切断しているところを警察官に発見された。甲には窃盗罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭31.10.2)は、「被告人は窃盗の目的で、他人の財物を切断しようとしたというのであるから、このときすでに窃盗の着手があったとみるのが相当である。」としている。
したがって、甲が電柱に架設されていた電話会社所有の電話線を切断し始めた時点で、甲には窃盗罪の実行の着手が認められる。

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窃盗罪の実行の着手時期 最二小決昭和40年3月9日

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概要
犯人が被害者方店舗内において所携の懐中電燈により真暗な店内を照らし、電気器具類の積んであることが分かったが、なるべく金を盗りたいので店内煙草売場の方に行きかけた、との事実があれば、窃盗の着手行為があったものと認めるのが相当である。
判例
事案:被害者方店舗内において、所携の懐中電燈により真暗な店内を照らしたところ、電気器具類が積んであることが分かったが、なるべく金を盗りたいので自己の左側に認めた煙草売場の方に行きかけたという事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題になった。

判旨:「被告人は昭和38年11月27日午前0時40分頃電気器具商たる本件被害者方店舗内において、所携の懐中電燈により真暗な店内を照らしたところ、電気器具類が積んであることが判ったが、なるべく金を盗りたいので自己の左側に認めた煙草売場の方に行きかけた際、本件被害者らが帰宅した事実が認められるというのであるから、原判決が被告人に窃盗の着手行為があったものと認め、刑法238条の『窃盗』犯人にあたるものと判断したのは相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 4)
窃盗罪の実行の着手に関する甲の行為を判例の立場に従って検討し、正しいものを選びなさい。
甲は、金品を盗もうと考え、深夜、無人の店舗内において、懐中電灯で真っ暗な店内を照らしたところ、食品類が積んであることが分かったが、なるべく現金を盗みたいと思い、現金がある精算レジに近づいた。この場合、未だレジ内を物色していないので、窃盗罪の実行の着手は認められない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭40.3.9)は本肢と同種の事案において、「金を盗りたいので自己の左側に認めた煙草売場の方に行きかけた際、本件被害者らが帰宅した事実が認められるというのであるから、原判決が被告人に窃盗の着手行為があったものと認め、刑法238条の『窃盗』犯人にあたるものと判断したのは相当である。」としている。
したがって、甲が、現金がある精算レジに近づいた時点で、窃盗罪の実行の着手が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第8問 イ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、窃盗罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、乙方応接間で乙と雑談中、乙が部屋を出たすきに隣室にある金目の物を探して窃取しようと思い立ち、乙に対し、「お茶が欲しい。」と言って、乙を台所に行かせたが、乙の娘が応接間に入ってきたため、隣室に行くことができなかった。

(正答)3

(解説)
判例(最決昭40.3.9)は、「被告人は…店舗内において、所携の懐中電燈により真暗な店内を照らしたところ、電気器具類が積んであることが判ったが、なるべく金を盗りたいので自己の左側に認めた煙草売場の方に行きかけた際、本件被害者らが帰宅した事実が認められるというのであるから、原判決が被告人に窃盗の着手行為があったものと認め、刑法238条の『窃盗』犯人にあたるものと判断したのは相当である。」として、金のある烟草売場に行きかけた時点で、結果発生の現実的危険があるとして、窃盗罪の実行の着手を認めている。
甲は、乙が応接間を離れたすきに、隣室で金目の物を盗ろうとしたが、応接間に乙の娘が入ってきたため、隣室に行くこと自体断念しているから、他人の事実上の支配を侵すに付き密接に至る程度に達しておらず、いまだ結果発生の現実的危険が生じているとはいえない。
したがって、甲に窃盗の実行の着手は認められない。

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窃盗罪の実行の着手 東京地判平成2年11月15日

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概要
駐車中のA所有の普通乗用自動車内から金員を窃取すべく、助手席側ドアの鍵穴に所携のドライバーを差し込んで開ける行為に窃盗罪の実行の着手が認められる。
判例
事案:駐車中のA所有の普通乗用自動車内から金員を窃取すべく、助手席側ドアの鍵穴に所携のドライバーを差し込んで開け車内にある金員を窃取しようとした事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「被告人は、昭和59年6月20日下館簡易裁判所で窃盗罪等により懲役1年6月(3年間執行猶予、昭和60年8月9日取消)に、昭和60年8月6日水戸地方裁判所下妻支部で窃盗罪等により懲役1年に、昭和63年12月23日古河簡易裁判所で窃盗罪等により懲役1年10月にそれぞれ処せられ、いずれの刑も左記犯行前10年内に執行を受けたものであるが、更に、常習として、平成2年9月29日午後9時43分ころ、東京都文京区《番地略》先路上において、同所に駐車中のA所有の普通乗用自動車内から金員を窃取すべく、助手席側ドアの鍵穴に所携のドライバーを差し込んで開け、車内にある金員を窃取しようとしたが、その場で警察官に発見されて逮捕されたため、その目的をとげなかったものである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 3)
甲は、乙所有の自動車を運転して盗み出すため、不正に入手した同自動車のスペアキーを使い、駐車場に駐車してある同自動車の運転席のドアを開けた。この場合、運転席に乗り込む前でも、窃盗罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
裁判例(東京地判平2.11.15)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、…常習として、…駐車中のA所有の普通乗用自動車内から金員を窃取すべく、助手席側ドアの鍵穴に所携のドライバーを差し込んで開け、車内にある金員を窃取しようとしたが、その場で警察官に発見されて逮捕されたため、その目的をとげなかったものである。」とした上で、ドライバーの差込行為の時点で実行の着手を認めている。
甲は、スペアキーを使い、自動車の運転席のドアを開けているところ、この時点で、上記裁判例のドライバー差込行為以上に結果発生の現実的危険が生じているといえる。
したがって、甲が運転席に乗り込む前でも、窃盗罪の実行の着手が認められる。

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ATMと窃盗の着手 京都地判平成18年5月12日

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概要
被害者名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした行為に窃盗罪の実行の着手が認められる。
判例
事案:被害者名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「弁護人らは、C銀行D支店及びE郵便局での各ATM機の操作について、残高照会を行うことは金銭を確認するだけの準備行為にとどまり、本件では、残高照会後に引き出し手続に移行するつもりであったかどうかについては立証がなされていないことから、単なる準備行為として窃盗未遂罪は成立しない旨主張している。しかし、第三者が他人のキャッシュカードを使用して預金を引き出す場合、残高がどれくらいであるか認識している場合でもない限り、どの程度の金額を引き出すことができるか分からないのであるから、本件の行為者は、まず残高照会を行い、残高を確認した後に現金を引き出すのが合理的な行動であるといえ、さらに、不正に他人のキャッシュカードを使用する場合はもとより、自らのキャッシュカードを正当に使用してATM機を操作して現金を引き出す場合にも、残高照会を行い、残高を確認した上で必要な金額を引き出すということがしばしばなされているところである。本件の行為者は、C銀行D支店及びE郵便局でもV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作しているところ、他人のキャッシュカードを使用してATM機を操作する目的としては現金を引き出すということあるいはその預金引き出しの前提として残高の確認をしていること以外には想定し難い。本件の行為者は、本件直前にA信用金庫B支店において預金を引き出しているが、その際にもまず残高照会を行った上で甲野名義の口座から現金を引き出している。この同一人物が、Vの預金の残高照会をしているのであり、それはとりもなおさず、預金を引き出す前提で預金されている金額の確認をしていることは明らかであると認められる。そして、キャッシュカードをATM機に挿入し、残高照会を行った上で必要な金額を引き出そうとしている場合において、残高照会を預金の引き出しと全く別個の独立した行為であるととらえることは行為の実情を無視した形式的なものといわざるを得ないものであって、各行為は密接に関連した一連の行為ととらえるのが相当である。それ故、C銀行D支店及びE郵便局でV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした行為は現金を引き出すための前提行為ととらえることができるのであって、すなわち窃盗罪の実行の着手行為として残高照会をしたものと認めることができると考える。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 5)
甲は、不正に取得した乙名義のキャッシュカードを使用して同人の預金口座から現金を引き出そうと考え、同カードを銀行の現金自動預払機に挿入し、暗証番号を入力した。甲は、同カードの正しい暗証番号を知っていたが、その入力を誤ったため払戻しを受けることができなかった場合でも、窃盗罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
裁判例(京都地判平18.5.12)は、本肢と同種の事案において、「C銀行D支店及びE郵便局でV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした行為は現金を引き出すための前提行為ととらえることができるのであって、すなわち窃盗罪の実行の着手行為として残高照会をしたものと認めることができると考える。」としている。
したがって、甲が不正に取得した乙名義のキャッシュカードを使用して同人の預金口座から現金を引き出そうと考え、同カードを銀行の現金自動預払機に挿入し、暗証番号を入力した時点で、窃盗罪の実行の着手が認められる。

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窃盗罪の着手時期 最二小判昭和23年4月17日

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概要
窃盗の目的で人の家屋に侵入し、財物を物色したときは既に窃盗の着手があったとみるべきである。
判例
事案:共謀の上馬齢薯その他食料品を窃取しようと企てB方養蚕室に侵入し、懐中電燈を利用して食料品等を物色中、警察官等に発見されて、その目的を遂げなかったという事案において、窃盗の着手があるかが問題となった。

判旨:「被告人等は、共謀の上馬齢薯その他食料品を窃取しようと企てB方養蚕室に侵入し、懐中電燈を利用して食料品等を物色中、警察官等に発見せられて、その目的を遂けなかったというのであって、被告人等は、窃盗の目的で他人の屋内に侵入し、財物を物色したというのであるから、このとき既に、窃盗の着手があったとみるのは当然である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H27 共通 第5問 4)
甲は、X方の居間に置かれた金庫に多額の現金が入れてあることを知り、これを盗む目的で、X方の無施錠のドアから玄関に入ったが、Xにその場で発見されたため、逃走した。甲には窃盗未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.4.17)は、空き巣の事案において、「被告人等は、窃盗の目的で他人の屋内に侵入し、財物を物色したというのであるから、このとき既に、窃盗の着手があったとみるのは当然である。」として、空き巣の場合、財物の物色を始めた時点で窃盗罪の実行の着手を認めている。
甲は、未だ財物の物色をしていなかったから、窃盗罪の着手があったとはいえない。
したがって、甲に窃盗未遂罪は成立しない。

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事後強盗罪の実行の着手時期 最二小判昭和24年7月9日

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概要
事後強盗罪の既遂未遂は窃盗の既遂未遂で区別するから、窃盗未遂犯人が逮捕を免れるためにした脅迫した場合には事後強盗未遂罪が成立する。
判例
事案:窃盗未遂犯人が逮捕を免れるためにした脅迫したという事案において、事後強盗既遂罪の成否が問題となった。

判旨:「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものであることは当然であるにかゝわらず、原審はその擬律において刑法第238条同第236条を適用し、以って準強盗の既遂をもって問擬したのは違法である。けだし、窃盗未遂犯人による準強盗は、財物を得なかった点において、恰かも強盗の未遂と同一の犯罪態様を有するに過ぎないものである。しからば、強盗未遂の場合には刑法第243条の適用があるにかゝわらず、これと同一態様の窃盗未遂の準強盗を、強盗の既遂をもって論ずるときは、右刑法第243条の適用は排除せられることゝなり彼此極めて不合理の結果を生ずるに至るからである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H23 共通 第10問 ウ)
甲は、乙の住居内に侵入し、タンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探したが、見付けることができないうちに乙に発見された。甲は、逮捕を免れるため、乙に対して包丁を示して脅迫し、屋外に逃走したが、通報により駆けつけた警察官に現場付近で逮捕された。この場合、甲には事後強盗未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.7.9)は、「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものであることは当然である…。けだし、窃盗未遂犯人による準強盗は、財物を得なかった点において、恰かも強盗の未遂と同一の犯罪態様を有するに過ぎないものである。」としている。
甲は、乙の住居内に侵入し、タンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探したが、見付けることができないうちに乙に発見され、逮捕を免れるため、乙に対して包丁を示して脅迫し逃走しているから、窃盗未遂犯人による事後強盗行為に当たる。
したがって、甲に事後強盗未遂罪が成立する。


全体の正答率 : 0%

(H29 共通 第17問 ア)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、事後強盗罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、会社事務所内において現金を窃取して、戸外に出たところを警備員乙に発見されて取り押さえられそうになったため、逮捕を免れようと考え、乙に対し、刃体の長さ20センチメートルの出刃包丁をその腹部に突き付け、「ぶっ殺すぞ。」と怒鳴り付けたが、偶然その場を通り掛かった警察官に取り押さえられ、逮捕を免れることができなかった。

(正答)1

(解説)
判例(最判昭24.7.9)は、「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものであることは当然である…。けだし、窃盗未遂犯人による準強盗は、財物を得なかった点において、恰かも強盗の未遂と同一の犯罪態様を有するに過ぎないものである。」としている。
甲は、乙に逮捕を逃れる目的で包丁を突き出す前に会社事務所内において現金を窃取しているから、窃盗既遂犯による事後強盗行為に当たる。
したがって、甲に事後強盗既遂罪が成立する。

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詐欺罪の既遂時期 大判大正11年12月15日

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概要
不動産の騙取を目的とする詐欺罪の成立には人を騙取してその所有権移転に関する意思表示がされるだけでは足りず、現実に占有を移転させ若しくはその所有権取得の登記を経ることを要する。
判例
事案:被告人が、金銭を支払う意思がないのに山林を買い入れるとして契約を締結した事案において、詐欺罪の既遂時期が問題となった。

判旨:「刑法第246条第1項ニ所謂財物ノ騙取トハ不法領得ノ目的ヲ以テ人ヲ欺罔シ有体物ノ所持即チ占有ヲ移付セシムルコトヲ意味スルモノトス
 不動産ノ騙取ヲ目的トスル詐欺罪ノ成立ニハ人ヲ欺罔シテ其ノ所有権移転ニ関スル意思表示ヲ為サシメタルノミヲ以テ足レリトセス尚現実ニ之カ占有ヲ移転セシメ若ハ其ノ所有権取得ノ登記ヲ経ルコトヲ要スルモノトス
 立木法ノ適用ヲ受ケサル立木ヲ騙取スル目的ヲ以テ売買名義ノ下ニ所有者ヲ欺罔シ之カ売渡契約ヲ為サシメタル場合ニ在テハ単ニ其ノ契約ヲ為サシメタルニ止ラス進テ之カ引渡ヲ受ケ若ハ他人ノ土地ニ於テ立木ヲ所有シ得ヘキ権利取得ノ登記ヲ経ルニ非サレハ其ノ詐欺罪ハ既遂ト為ラス」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H26 共通 第20問 ア)
甲は、知人のAをだまして、A所有の土地・建物(以下「本件不動産」という。)を時価よりも割安な価格で入手した上、他人に転売してもうけを得ようと考えた。そこで、甲は、Aに対し、実際にはそのような事実はないのに、「本件不動産は、現在は公表されていないが、大規模な地盤沈下のおそれのある地域にある。」と伝えた上、「公表される前に、俺が買ってやる。」と言った。Aは、元々、本件不動産を子供に相続させるつもりであり、他人に売り渡すつもりはなかったが、甲の言葉を信じ、低額でも処分しようと思い、某月1日、甲との間で、通常の取引価額の半額程度である2000万円で本件不動産を売却する旨の売買契約を締結した。そして、甲は、同月3日、本件不動産の自己への所有権移転登記を行うとともに、本件不動産の売買代金として、現金2000万円をAに支払い、同月5日、本件不動産の引渡しを受けた。甲には、本件不動産の自己への所有権移転登記が完了した時点で、詐欺既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.12.15)は、不動産の詐欺の事案において、「不動産ノ騙取ヲ目的トスル詐欺罪ノ成立ニハ人ヲ欺罔シテ其ノ所有権移転ニ関スル意思表示ヲ為サシメタルノミヲ以テ足レリトセス尚現実ニ之カ占有ヲ移転セシメ若ハ其ノ所有権取得ノ登記ヲ経ルコトヲ要スルモノトス」として、不動産の騙取を目的とする詐欺罪の成立には人を騙取してその所有権移転に関する意思表示では足りず、現実に不動産が移転するか、所有権移転登記を得ることまで必要であることを示している。
甲は、本件不動産の自己への所有権移転登記を行うとともに、本件不動産の売買代金をAに支払い、本件不動産の引渡しを受けている。
したがって、1項詐欺罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H28 共通 第16問 5)
甲は、乙所有の土地について、価格が暴落すると偽って、これを信じた乙との間で、時価の半額で同土地を買い受ける旨の売買契約を締結した。この場合、その売買契約が成立したことのみをもって、甲には詐欺既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.12.15)は、不動産の詐欺の事案において、「不動産ノ騙取ヲ目的トスル詐欺罪ノ成立ニハ人ヲ欺罔シテ其ノ所有権移転ニ関スル意思表示ヲ為サシメタルノミヲ以テ足レリトセス尚現実ニ之カ占有ヲ移転セシメ若ハ其ノ所有権取得ノ登記ヲ経ルコトヲ要スルモノトス」として、不動産の騙取を目的とする詐欺罪の成立には人を騙取してその所有権移転に関する意思表示では足りず、現実に不動産が移転するか、所有権移転登記を得ることまで必要であることを示している。
乙所有の土地について、現実の占有の移転若しくは所有権移転登記が行われていないため、既遂に至っていない。
したがって、甲に1項詐欺既遂罪は成立しない。

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詐欺罪の既遂時期 大判大正11年12月22日

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概要
虚偽の債権に基づいて金銭請求を行い、被害者が錯誤に陥らずに支払いを行った場合は、詐欺未遂罪が成立するにとどまる。
判例
事案:被告人は虚偽の債権に基づいて金銭請求を行い、被害者は錯誤に陥らずに支払いを行ったという事案で、詐欺未遂罪の成否が問題となった。

判旨:「金銭ヲ騙取センカ為他人ニ対シ虚偽ノ貸金債権ヲ主張シテ支払ヲ請求シタルモ其ノ者ニ於テ錯誤ニ陥ラサリシトキハ刑法第246条第1項ニ規定スル詐欺ノ未遂罪ヲ構成シ請求ヲ受ケタル者カ錯誤ニ陥ラスシテ請求金額ヲ支払ヒタリトスルモ其ノ未遂罪ノ成立ニ消長ナキモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H24 共通 第6問 ウ)
甲は、無銭宿泊を企て、宿泊代金を支払う意思も能力もないのに、これらがあるように装い、民宿を営む乙に対し、宿泊を申し込んだところ、乙は、他の民宿から甲が無銭宿泊の常習者であることを聞いていたため、甲に宿泊代金支払の意思も能力もないことが分かったが、甲に憐憫の情を抱き、甲を宿泊させた。この場合、甲には、詐欺未遂罪が成立するにとどまる。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.12.22)は、「金銭ヲ騙取センカ為他人ニ対シ虚偽ノ貸金債権ヲ主張シテ支払ヲ請求シタルモ其ノ者ニ於テ錯誤ニ陥ラサリシトキハ刑法第246条第1項ニ規定スル詐欺ノ未遂罪ヲ構成シ請求ヲ受ケタル者カ錯誤ニ陥ラスシテ請求金額ヲ支払ヒタリトスルモ其ノ未遂罪ノ成立ニ消長ナキモノトス」として、欺罔行為によって相手が錯誤に陥らずに財物を交付した場合には、詐欺未遂罪が成立することを示している。
甲は、無銭宿泊を企て、宿泊代金を支払う意思も能力もないのに、これらがあるように装い、乙に対し、宿泊を申し込みを行っているところ、乙は、甲に宿泊代金の支払い能力が欠如していることを知りつつ、甲に憐憫の情を抱き、甲を宿泊させたのであるから、錯誤に陥らずに欺罔行為と因果関係なく宿泊させたにすぎない。
したがって、甲には、詐欺未遂罪が成立するにとどまる。


全体の正答率 : 0%

(H20 司法 第20問 5)
甲は、生活費に窮したため、返済する意思がないのに、知人の乙に、「故郷にいる自分の父親が亡くなった。故郷に帰るお金がないので貸してほしい。」旨のうそを言って金員の借入れを申し込んだところ、乙は、そのうそを見破り、甲に返済の意思がないことを察したが、憐憫の情から、甲に現金を手渡した。この場合、乙は錯誤に陥っていないので、甲には詐欺未遂罪が成立するにとどまる。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.12.22)は、「金銭ヲ騙取センカ為他人ニ対シ虚偽ノ貸金債権ヲ主張シテ支払ヲ請求シタルモ其ノ者ニ於テ錯誤ニ陥ラサリシトキハ刑法第246条第1項ニ規定スル詐欺ノ未遂罪ヲ構成シ請求ヲ受ケタル者カ錯誤ニ陥ラスシテ請求金額ヲ支払ヒタリトスルモ其ノ未遂罪ノ成立ニ消長ナキモノトス」として、欺罔行為によって相手が錯誤に陥らずに財物を交付した場合には、詐欺未遂罪が成立することを示している。
乙は、甲のうそを見破り、甲に返済の意思がないことを察しているから、錯誤に陥っていないといえ、欺罔行為と因果関係なく財産を受領したにすぎない。
したがって、甲には詐欺未遂罪が成立する。


全体の正答率 : 0%

(H22 司法 第11問 イ)
甲は、出資金名目で金をだまし取ろうと考え、乙に対し、架空の投資案件を持ちかけたところ、乙は、甲の話が嘘であることに気付いたものの、甲が金に困っているのに同情して現金を甲に渡した。甲に詐欺既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.12.22)は、「金銭ヲ騙取センカ為他人ニ対シ虚偽ノ貸金債権ヲ主張シテ支払ヲ請求シタルモ其ノ者ニ於テ錯誤ニ陥ラサリシトキハ刑法第246条第1項ニ規定スル詐欺ノ未遂罪ヲ構成シ請求ヲ受ケタル者カ錯誤ニ陥ラスシテ請求金額ヲ支払ヒタリトスルモ其ノ未遂罪ノ成立ニ消長ナキモノトス」として、欺罔行為によって相手が錯誤に陥らずに財物を交付した場合には、詐欺未遂罪が成立することを示している。
乙は、甲の話が嘘であることに気付いたものの、甲が金に困っているのに同情して現金を甲に渡し、乙は錯誤に陥っておらず、欺罔行為と因果関係なく財産を受領したにすぎない。
したがって、甲には詐欺未遂罪が成立するのであって、甲に詐欺既遂罪は成立しない。

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詐欺罪の成否(保険金未請求) 大判昭和7年6月15日

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概要
保険金騙取の目的をもって家屋に放火し燃焼させたが、保険会社に保険金の支払い請求を行わなかった場合は詐欺の着手とならない。
判例
事案:保険金騙取の目的をもって家屋に放火し燃焼させたが、保険会社に保険金の支払い請求を行わなかった事案において、詐欺罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「保険金騙取ノ目的ヲ以テ家屋ニ放火シテ之ヲ焼燬シタルモ未タ保険会社ニ対シ保険金支払ノ請求ヲ為ササルトキハ詐欺ノ著手トナラス」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H23 共通 第10問 イ)
甲は、自己が居住する建物に付した火災保険の保険金を保険会社からだまし取る目的で同建物に放火したが、保険金を請求するに至らなかった。この場合、甲には詐欺未遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭7.6.15)は、「保険金騙取ノ目的ヲ以テ家屋ニ放火シテ之ヲ焼燬シタルモ未タ保険会社ニ対シ保険金支払ノ請求ヲ為ササルトキハ詐欺ノ著手トナラス」として、保険金の請求をしていない時点では詐欺罪の実行の着手が認められないことを示している。
したがって、甲はいまだ保険金請求をしていない以上、詐欺未遂罪は成立しない。


全体の正答率 : 100%

(H24 共通 第6問 ア)
甲は、交通事故を装い保険会社から保険金をだまし取ろうと企て、自己の運転する自動車を道路脇の電柱に衝突させて自ら怪我をした。この場合、甲には、自動車を電柱に衝突させた時点で、詐欺未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭7.6.15)は、「保険金騙取ノ目的ヲ以テ家屋ニ放火シテ之ヲ焼燬シタルモ未タ保険会社ニ対シ保険金支払ノ請求ヲ為ササルトキハ詐欺ノ著手トナラス」として、保険金の請求をしていない時点では詐欺罪の実行の着手が認められないことを示している。
甲は、未だ保険会社に保険金請求を行っていないから、甲には詐欺罪の実行の着手が認められない。
したがって、甲には、自動車を電柱に衝突させた時点では詐欺未遂罪が成立しない。


全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第13問 オ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、詐欺罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい
甲は、交通事故を装って保険会社から保険金をだまし取ろうと考え、Aに依頼して、甲運転の自動車にA運転の自動車を衝突させ、警察官に交通事故を申告したが、Aが警察官から追及されて偽装事故であると認めたため、保険金を請求しなかった。

(正答)3

(解説)
判例(大判昭7.6.15)は、「保険金騙取ノ目的ヲ以テ家屋ニ放火シテ之ヲ焼燬シタルモ未タ保険会社ニ対シ保険金支払ノ請求ヲ為ササルトキハ詐欺ノ著手トナラス」として、保険金の請求をしていない時点では詐欺罪の実行の着手が認められないことを示している。
甲は、Aが警察官から追及されて偽装事故であると認めたことで、保険金請求自体を断念しているから、詐欺罪の実行の着手は認められない。
したがって、甲の詐欺罪は既遂にも未遂にもならない。

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詐欺罪の既遂時期 大阪高判平成16年12月21日

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概要
犯人が、預金口座から預金を引き出すことについて障害となるような事情のなかったことが明らかな場合、預金口座に詐取金が振込送金された時点で既遂に達したと解する。
判例
事案:他人所有の不動産につき、その所有者に成りすまして融資を申し込み、当該他人名義であらかじめ開設していた銀行口座に振込送金させた詐欺の事案において、その既遂がいつとなるかが問題となった。

判旨:「被告人らが本件預金口座に振込送金された詐取金を引き出すためには、更にA1本人に成りすますなどして銀行側を欺く必要があることは確かであるが、そうしたことは、既に同口座を開設し管理していた被告人らにとってさほど困難なことではないし(現に、上記詐取金は、後記のとおり、それが振込送金となった直後にそのほとんどが引き出されている。)、他に本件において、被告人らが本件預金口座から預金を引き出すことについて障害となるような事情のなかったことも明らかである。そうすると、やはり本件詐欺は、本件預金口座に詐取金が振込送金された時点で既遂に達したと解さざるを得ない…。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第20問 4)
甲は、架空人である丙名義で預金口座を開設した上、乙に対し、「あなたの息子が交通事故を起こし、直ちに示談のお金が必要である。」とうそを言って、自ら通帳・印鑑を所持する上記口座に乙をして現金を振り込ませた。この場合、甲は、いまだ他人名義の口座に振込みを受けたにすぎないので、甲には詐欺未遂罪が成立するにとどまる。

(正答)

(解説)
裁判例(大阪高判平16.12.21)は、本肢と同種の事案において、「本件詐欺は、本件預金口座に詐取金が振込送金された時点で既遂に達したと解さざるを得ない…。」としている。
したがって、甲が丙名義口座に現金を振り込ませた時点で、甲に詐欺既遂罪が成立する。

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放火の実行の着手時期 大判大正12年11月12日

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概要
人の住居に使用する家屋を焼損する目的をもってこれに接近する物置に放火しその燃焼作用により前者の延焼を惹起しうる状態に置いたときは108条の放火罪の実行の着手が認められる。
判例
事案:隣接物置に放火し人がいる住居に延焼しうる状態にした事案において、現在建造物放火罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「人ノ住居ニ使用スル家屋ヲ焼燬スル目的ヲ以テ之ニ接近スル物置ニ放火シ其ノ燃焼作用ニ依リ前者ノ延焼ヲ惹起シ得ヘキ状態ニ置キタルトキハ刑法第108条放火罪実行ノ著手トナルモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H26 司法 第9問 4)
甲は、Xの住んでいる家を焼損する目的で、これと約50センチメートル隔てて隣接している木造物置小屋の中のわらや薪に灯油をまいて放火したが、物置小屋の一部を焼損するにとどまった。甲には現住建造物等放火罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
判例(大判大12.11.12)は、本肢と同種の事案において、「人ノ住居ニ使用スル家屋ヲ焼燬スル目的ヲ以テ之ニ接近スル物置ニ放火シ其ノ燃焼作用ニ依リ前者ノ延焼ヲ惹起シ得ヘキ状態ニ置キタルトキハ刑法第108条放火罪実行ノ著手トナルモノトス」として、物置への放火時点で現住建造物等放火罪の実行の着手を認めている。
甲は、X宅を焼損する目的で、わずか約50cmしか離れていない物置小屋の中にあるわらや薪に灯油をまき、放火している。
したがって、物置小屋の一部を焼損するにとどまったとしても、甲には現住建造物等放火罪の実行の着手が認められる。


全体の正答率 : 0%

(H30 司法 第12問 5)
他人所有の土地を当該他人から買い受けた事実がないのに、当該他人から盗んだ印鑑を押して登記申請に必要な書類を偽造した上、これを登記官に提出し、当該他人に無断で、自己への所有権移転登記を完了させた場合、当該土地についての詐欺罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大12.11.12)は、本肢と同種の事案において、「乙者甲者ノ為金員借用抵当権設定登記ヲ為スモノノ如ク装ヒテ之ヲ欺罔シ私ニ其ノ印顆ヲ不正ニ使用シテ甲者ヨリ乙者ニ対シ土地ヲ売渡シタル旨ノ証書ヲ偽造シ附属書類ト併セテ之ヲ登記所ニ提出行使シ登記官吏ヲシテ土地登記簿ノ原本ニ其ノ旨不実ノ記載ヲ為サシムル行為ハ公正証書原本ノ不実記載及其ノ行使ノ罪ヲ構成スルニ止リ土地ニ対スル詐欺罪ヲ構成スルモノニ非ス」として、登記官は土地を処分する権限をもたないため、土地を買い受けた事実がないのに、登記申請に必要な書類を偽造して登記官に提出し、当該土地につき別人へ所有権移転登記をさせた場合、詐欺罪は成立しないことを示している。

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現住建造物放火未遂罪の成否 大判大正15年9月28日

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概要
現に人の住居に使用する建物を焼損する目的をもって人の住居に使用していない建物に放火しこれを焼損したけれども、人の住居に使用する建物に延焼させるに至らなかったときはその行為は現住建造物放火罪の未遂罪に問うべきである。
判例
事案:現に人の住居に使用する建物を焼損する目的をもって人の住居に使用していない建物に放火しこれを焼損したけれども、人の住居に使用する建物に延焼させるに至らなかった事案において、現住建造物放火未遂罪が成立するかが問題になった。

判旨:「現ニ人ノ住居ニ使用スル建物ヲ焼燬スル目的ヲ以テ人ノ住居ニ使用セサル建物ニ放火シ之ヲ焼燬シタルモ人ノ住居ニ使用スル建物ニ延焼セシムルニ至ラサリシトキハ其ノ所為ハ人ノ住居ニ使用スル建物焼燬罪ノ未遂ヲ以テ論スヘキモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H20 司法 第10問 イ)
甲は、乙が住居として使用する乙所有の木造家屋に延焼させる意思で、同家屋に隣接し、だれも住居として使用せず、だれも現在しない丙所有の家屋に放火してこれを全焼させたが、上記乙所有の家屋には燃え移らなかった。この場合、甲には現住建造物等放火未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大15.9.28)は、「現ニ人ノ住居ニ使用スル建物ヲ焼燬スル目的ヲ以テ人ノ住居ニ使用セサル建物ニ放火シ之ヲ焼燬シタルモ人ノ住居ニ使用スル建物ニ延焼セシムルニ至ラサリシトキハ其ノ所為ハ人ノ住居ニ使用スル建物焼燬罪ノ未遂ヲ以テ論スヘキモノトス」として、現住建造物に延焼させる目的をもって非現住建造物に放火した場合、現住建造物等放火未遂罪が成立することを示している。
甲は、乙所有現住建造物を燃やす目的で、隣接する丙所有非現住建造物に放火し全焼させているが、現住建造物等放火の実行の着手が認められるために現住建造物等放火未遂罪が成立し、より軽い非現住建造物等放火罪はこれに吸収される。
したがって、甲には現住建造物等放火未遂罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R3 司法 第16問 4)
甲は、隣人Aが居住する木造家屋を焼損しようと考え、同家屋から1メートル離れた位置にある自己が所有する無人の木造倉庫に放火してこれを焼損したが、同家屋に延焼する危険を生じさせるにとどまった。この場合、甲には、現住建造物等放火未遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判大15.9.28)は、「現ニ人ノ住居ニ使用スル建物ヲ焼燬スル目的ヲ以テ人ノ住居ニ使用セサル建物ニ放火シ之ヲ焼燬シタルモ人ノ住居ニ使用スル建物ニ延焼セシムルニ至ラサリシトキハ其ノ所為ハ人ノ住居ニ使用スル建物焼燬罪ノ未遂ヲ以テ論スヘキモノトス」として、現住建造物に延焼させる目的をもって非現住建造物に放火した場合、現住建造物等放火未遂罪が成立することを示している。
甲は、A所有現住建造物を燃やす目的で隣接する自己所有の無人の木造倉庫に放火し全焼させているが、現住建造物等放火の実行の着手が認められるために現住建造物等放火未遂罪が成立し、より軽い非現住建造物等放火罪はこれに吸収される。
したがって、甲には現住建造物等放火未遂罪が成立する。

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密閉された室内全体にガソリンを撒いた行為と放火罪の実行の着手 横浜地判昭和58年7月20日

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概要
木造建物を焼燬する目的で密閉された室内全体にガソリンを撒いた行為は放火罪の実行の着手に当たる。
判例
事案:木造建物を焼燬する目的で密閉された室内全体にガソリンを撒いた事案において、放火罪の実行の着手に当たるかが問題となった。

判旨:「本件家屋は木造平成家建であり、内部も特に不燃性の材料が用いられているとは見受けられず、和室にはカーペットが敷かれていたこと、本件犯行当時、本件家屋は雨戸や窓が全部閉められ密閉された状態にあったこと、被告人によって撒布されたガソリンの量は、約6.4リットルに達し、しかも6畳及び4畳半の各和室、廊下、台所、便所など本件家屋の床面の大部分に満遍無く撤布されたこと、右撒布の結果、ガソリンの臭気が室内に充満し、被告人は鼻が痛くなり、目もまばたきしなければ開けていられないほどであったことが認められるのであり、ガソリンの強い引火性を考慮すると、そこに何らかの火気が発すれば本件家屋に撒布されたガソリンに引火し、火災が起こることは必定の状況にあったのであるから、被告人はガソリンを撒布することによって放火について企図したところの大半を終えたものといってよく、この段階において法益の侵害即ち本件家屋の焼燬を惹起する切迫した危険が生じるに至ったものと認められるから、右行為により放火罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。
 よって、右の点に関する弁護人の主張は採用できない。
 (なお、前記のとおり本件焼燬の結果は被告人自身がタバコを吸おうとして点火したライターの火に引火して生じたものではあるが、前記の状況の下でライターを点火すれば引火するであろうことは一般人に容易に理解されるところであって予想し得ないような事柄ではなく、被告人はライターを点火する時に本件家屋を焼燬する意思を翻したわけでもないから、右のような経緯で引火したことにより本件の結果が生じたからといって因果関係が否定されるものではなく、被告人は放火既遂罪の刑責を免れない。)」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(R2 司法 第11問 ウ)
甲は、Vが居住する木造家屋に火をつけて焼損しようと考え、同家屋台所において、プロパンガスを多量かつ長時間にわたり放出するとともに、ガソリン約18リットルを撒布したが、点火行為には至らなかった。甲には、現住建造物等放火未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(横浜地判昭58.7.20)は、「被告人はガソリンを撒布することによって放火について企図したところの大半を終えたものといってよく、この段階において法益の侵害即ち本件家屋の焼燬を惹起する切迫した危険が生じるに至ったものと認められるから、右行為により放火罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。」としている。
甲は、乙が居住する木造家屋にプロパンガスを多量かつ長時間にわたり放出するとともに、引火性の高いガソリン約18リットルを撒布しているから、この時点で現住建造物放火罪の実行の着手が認められる。
したがって、甲には、現住建造物等放火未遂罪が成立する。

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強制性交等罪の実行の着手 最三小判昭和45年7月28日

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概要
被告人が、外1名と共謀のうえ、夜間1人で道路を通行中の婦女を強姦しようと企て、共犯者とともに、必死に抵抗する同女を被告人運転のダンプカーの運転席に引きずり込み、発進して同所から約5800メートル離れた場所に至り、運転席内でこもごも同女を強姦した事実関係のもとにおいては、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした時点において旧強姦罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。
判例
事案:自動車により婦女を他所へ連行したうえ強姦した事案において、婦女を自動車内に引きずり込もうとした時点で旧強姦罪の実行の着手があるかが問題となった。

判旨:「被告人は、昭和43年1月26日午後7時30分頃、ダンプカーに友人のAを同乗させ、ともに女性を物色して情交を結ぼうとの意図のもとに防府市内を俳徊走行中、同市ab丁目付近にさしかかった際、1人で通行中のB(当時23歳)を認め、「車に乗せてやろう。」等と声をかけながら約100メートル尾行したものの、相手にされないことにいら立ったAが下車して、同女に近づいて行くのを認めると、付近の同市cb丁目赤間交差点西側の空地に車をとめて待ち受け、Aが同女を背後から抱きすくめてダンプカーの助手席前まで連行して来るや、Aが同女を強いて姦淫する意思を有することを察知し、ここにAと強姦の意思を相通じたうえ、必死に抵抗する同女をAとともに運転席に引きずり込み、発進して同所より約5000メートル西方にあるe大橋の北方約800メートルの護岸工事現場に至り、同所において、運転席内で同女の反抗を抑圧してA、被告人の順に姦淫したが、前記ダンプカ―運転席に同女を引きずり込む際の暴行により、同女に全治まで約10日間を要した左膝蓋部打撲症等の傷害を負わせたというのであって、かかる事実関係のもとにおいては、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であり、また、Bに負わせた右打撲症等は、傷害に該当すること明らかであって(当裁判所昭和38年6月25日第三小法廷決定、裁判集刑事147号507頁参照)、以上と同趣旨の見解のもとに被告人の所為を強姦致傷罪にあたるとした原判断は、相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第8問 ウ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、不同意性交罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、通行中の女性乙に自動車内で暴行を加えて姦淫する目的で、激しく抵抗する乙を自動車内に引きずり込み、数キロメートル離れた河原まで自動車を走行させたが、乙がすきを見て逃走したため、姦淫できなかった。

(正答)2

(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
したがって、甲が姦淫する目的で無理やり自動車内に引きずり込もうとした時点で不同意性交の実行の着手が認められ、性交に至っていない以上未遂にとどまる。
よって、甲には、不同意性交未遂罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H24 司法 第3問 1)
【事例】
甲は、自動車内でVにクロロホルムを吸引させて失神させた上、約2キロメートル離れた港までVを運び、自動車ごと海中に転落させて溺死させようという計画の下、Vにクロロホルムを吸引させた。甲は、Vが動かなくなったので、計画どおりVが失神したものと考え、港に運んで自動車ごと海中に転落させた。Vの遺体の司法解剖の結果、甲の計画とは異なり、Vは溺死ではなく、海中への転落前にクロロホルムの吸引により死亡していたことが判明した。

【判旨】
甲の殺害計画は、クロロホルムを吸引させてVを失神させた上(以下「第1行為」という。)、その失神状態を利用してVを港まで運び、自動車ごと海中に転落させ(以下「第2行為」という。)、溺死させるというものであって、第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。

【記述】
1.ダンプカーに女性を引きずり込んで数キロメートル離れた人気のない場所まで連れて行き姦淫しようという計画の下、抵抗する女性をダンプカーに引きずり込んだ上、計画どおり姦淫したが、引きずり込もうとした段階で加えた暴行により同女が負傷したという事例において不同意性交等致傷罪の成立を認める見解は、実行の着手時期に関してこの判旨の考え方と矛盾する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
【判旨】は「既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解する…。」とあるように、結果発生に至る客観的な危険性が認められる時点で実行の着手を認めている。
甲がダンプカーに引きずり込んだ時点でダンプカー内に監禁可能となり数キロメートル離れた人気のない場所まで連れて行く計画に障害となるような特段の事情が存しないから、この時点で不同意性交等罪の実行の着手が認められ、その際に被害者が負傷すれば不同意性交等致傷罪が成立することになる。
したがって、実行の着手時期に関して、上記判例の考え方は、この判旨の考え方と矛盾しない。


全体の正答率 : 100%

(H26 司法 第9問 3)
甲は、夜間、1人で歩いていたV女を見付け、約5キロメートル先のひとけのない工事現場にV女を連れ込んで強姦することを決意し、V女を殴って失神させた上、近くに停めていたダンプカーの助手席にV女を乗せて発進させた。甲には不同意性交等罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
したがって、甲が姦淫する目的で無理やりダンプカー内に引きずり込んだ時点で、不同意性交等罪の実行の着手が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H29 共通 第17問 エ)
甲は、知り合いの女性乙を自己が運転する自動車に乗せて同車内において強いて姦淫しようと考え、乙に対し、「自宅まで送ってあげる。」とうそを言ったところ、乙は、これを信じて同車に乗り込んだが、甲の態度を不審に思い即座に同車から降りた。不同意性交等罪の既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
乙は、甲にうそを信じて同車に乗り込んだが、甲の態度を不審に思い即座に同車から降りているから、不同意性交等に至る客観的な危険性は認められない。
したがって、不同意性交等罪の既遂罪は成立しない。


全体の正答率 : 100%

(R2 司法 第11問 ア)
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。
甲及び乙は、深夜、路上を1人で歩いていたV女を見付け、約6キロメートル先のひとけのない工事現場にV女を連れ込んで強制的にV女と性交しようと決意し、2人でV女の背後からその身体を抱きかかえながら、付近に停めていた自動車にV女を押し込んで乗せ、同車を発進させたが、性交には至らなかった。甲及び乙には、不同意性交等未遂罪の共同正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
したがって、甲が付近に停めていた自動車にV女を押し込んで乗せた時点で、約6キロメートル先のひとけのない工事現場に連れ込むにあたって障害となる事情はなく、結果発生に至る客観的な危険性が明らかに認められるといえるから、姦淫する目的で無理やり自動車内に引きずり込んだ時点で、不同意性交等罪の実行の着手が認められる。
したがって、甲及び乙には、不同意性交等未遂罪の共同正犯が成立する。

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恐喝罪の成否(未開封の郵便) 大判大正5年8月28日

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概要
恐喝の目的をもって他人を畏怖させるに足りる文章を郵便で送達し、受信人に到達したが受信人は封を開ける前に誤って捨ててしまった場合は不能犯とならず、恐喝未遂罪となる。
判例
事案:恐喝の目的をもって他人を畏怖させるに足りる文章を郵便で送達し、受信人に到達したが受信人は封を開ける前に誤って捨ててしまったという事案において、恐喝罪の成否が問題となった。

判旨:「苟モ恐喝ノ犯意ヲ以テ他人ヲ畏怖セシムルニ足ル文書ヲ郵便ニ付シ受信人ニ到達セシメタル以上ハ該文書ハ既ニ行使セラレタルモノナルヲ以テ縦令犯人ノ意思ニ基カサル事由ニ因リ受信人カ其内容ヲ了知シ得サルニ至ルモ所謂不能犯ト為ルモノニ非ス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第11問 エ)
甲は、乙が万引きするのを目撃したことを奇貨として、乙から現金を脅し取ろうと考え、乙にあてて、「万引きをしたのを警察に知られたくなかったら、30万円持ってこい。」などと記載した文書を郵送したところ、乙は同文書を受け取ったが、封を開ける前に誤って捨ててしまったため、甲は現金を手に入れることができなかった。甲に恐喝既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大5.8.28)は、受信人が封を開ける前に恐喝文章を捨てた事案において、「恐喝ノ犯意ヲ以テ他人ヲ畏怖セシムルニ足ル文書ヲ郵便ニ付シ受信人ニ到達セシメタル以上ハ該文書ハ既ニ行使セラレタルモノナルヲ以テ縦令犯人ノ意思ニ基カサル事由ニ因リ受信人カ其内容ヲ了知シ得サルニ至ルモ所謂不能犯ト為ルモノニ非ス」として、不能犯の成立を認めず、恐喝文書を送付した時点で恐喝罪の実行の着手を認めている。
したがって、甲には、恐喝未遂罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第8問 オ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、恐喝罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、乙から現金を喝取する目的で、現金の交付を要求する脅迫状を乙宅に郵送したが、乙が不在中に同脅迫状を受け取って読んだ乙の妻が直ちに警察に届け出たため、甲は現金を取得できなかった。

(正答)2

(解説)
判例(大判大5.8.28)は、受信人が封を開ける前に恐喝文章を捨てた事案において、「恐喝ノ犯意ヲ以テ他人ヲ畏怖セシムルニ足ル文書ヲ郵便ニ付シ受信人ニ到達セシメタル以上ハ該文書ハ既ニ行使セラレタルモノナルヲ以テ縦令犯人ノ意思ニ基カサル事由ニ因リ受信人カ其内容ヲ了知シ得サルニ至ルモ所謂不能犯ト為ルモノニ非ス」として、不能犯の成立を認めず、恐喝文書を送付した時点で恐喝罪の実行の着手を認めている。
甲は、乙から現金を喝取する目的で、現金の交付を要求する脅迫状を乙宅に郵送したが、乙が不在中に同脅迫状を受け取って読んだ乙の妻が直ちに警察に届け出たため、甲は現金を取得できなかった。
乙宅に脅迫状を郵送した時点で恐喝罪の実行の着手が認められるが、現金を取得できていない以上、未遂にとどまる。
したがって、甲の恐喝罪は未遂にとどまる。

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加重逃走未遂罪の実行の着手時期 最三小判昭和54年12月25日

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概要
加重逃走罪のうち、拘禁場又は械具の損壊によるものについては、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、加重逃走罪の実行の着手があるものと解するのが相当である。
判例
事案:勾留状の執行により拘禁されている未決の被告人が逃走目的で拘禁場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊したが、いまだ脱出可能な穴を開けるに至らず、逃走行為自体に及ばないうちに検挙された事案において、加重逃走罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「刑法98条のいわゆる加重逃走罪のうち拘禁場又は械具の損壊によるものについては、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、右加重逃走罪の実行の着手があるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H23 共通 第10問 エ)
甲は、勾留状の執行により拘禁されている未決の被告人であったところ、逃走の目的で拘禁場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊したが、いまだ脱出可能な穴を開けるに至らず、逃走行為自体に及ばないうちに検挙された。この場合、甲には加重逃走未遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.12.25)は、「加重逃走罪のうち拘禁場又は械具の損壊によるものについては、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、右加重逃走罪の実行の着手があるものと解するのが相当である。」としている。
未決の被告人甲は、逃走行為自体に及ばないうちに検挙されているところ、逃走の目的で拘禁場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊しているから、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、実行の着手があるといえる。
したがって、甲には加重逃走未遂罪が成立する。

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