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強盗の罪(事後強盗罪) - 解答モード
居直り強盗 最二小判昭和24年2月15日
概要
判例
判旨:「暴行脅迫を用いて財物を奪取する犯意の下に先づ財産を奪取し、次いで被害者に暴行を加えてその奪取を確保した場合は強盗罪を構成するのであって、窃盗がその財物の取還を拒いで暴行をする場合の準強盗ではないのである。」
過去問・解説
(R5 司法 第20問 ア)
甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながらカードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去った。
乙がAからカードを奪った行為は、窃盗罪の実行に着手した後、Aに暴行を加えてこれを奪取したことになるから、乙に事後強盗既遂罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭24.2.15)は、居直り強盗の事案において、「暴行脅迫を用いて財物を奪取する犯意の下に先づ財産を奪取し、次いで被害者に暴行を加えてその奪取を確保した場合は強盗罪を構成するのであつて、窃盗がその財物の取還を拒いで暴行をする場合の準強盗ではないのである。」として、強盗取得罪(236条1項)が成立し、事後強盗罪(238条)は成立しない旨判示している。すなわち、取戻防止目的の場合は、「財物を得て」という文言から、「窃盗」には窃盗罪の既遂の犯人に限られるところ、居直り強盗の場合、窃盗未遂の犯人が財物奪取だけのために暴行・脅迫を行っているため、「窃盗」要件を満たさないとの理由から事後強盗罪の成立が否定され、強盗強盗罪が成立するのである。
確かに、判例(最決令4.2.14)は、本肢と同種の事案において、「このような事実関係の下においては、被告人が被害者に対して印鑑を取りに行かせるなどしてキャッシュカード入りの封筒から注意をそらすための行為をしていないとしても、本件うそが述べられ、Xが被害者宅付近路上まで赴いた時点では、窃盗罪の実行の着手が既にあったと認められる。」としているから、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙が、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた時点において、甲及び乙が、窃盗罪の「実行に着手」(43条本文)したといえる。しかし、乙は、本件計画どおりにカードを手に入れるためだけに、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去ったのだから、居直り強盗の事案であって、窃盗未遂の犯人が財物奪取だけのために暴行・脅迫を行っているとして、「窃盗」要件を満たさないとの理由から事後強盗罪の成立が否定され、強盗強盗罪が成立するのである。
したがって、乙には、事後強盗既遂罪ではなく、強盗取得既遂罪が成立する。
事後強盗罪の成否(窃盗の機会) 最二小判平成16年12月10日
概要
判例
判旨:「被告人は、財布等を窃取した後、だれからも発見、追跡されることなく、いったん犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごしており、この間に、被告人が被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況はなくなったものというべきである。そうすると、被告人が、その後に、再度窃盗をする目的で犯行現場に戻ったとしても、その際に行われた上記脅迫が、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。」
過去問・解説
(H25 司法 第12問 2)
甲は、乙宅で財布を窃取し、誰からも追跡されることなく、約2キロメートル離れた場所まで徒歩で移動した後、窃取した財布の中を見たが、予想していたよりも現金が少なかったことから、再び窃盗を行う目的で乙宅に戻り、玄関を開けたところ、帰宅していた乙に発見され、逮捕を免れるために、乙に対し、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。甲には事後強盗既遂罪は成立しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平16.12.10)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、財布等を窃取した後、だれからも発見、追跡されることなく、いったん犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごしており、この間に、被告人が被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況はなくなったものというべきである。そうすると、被告人が、その後に、再度窃盗をする目的で犯行現場に戻ったとしても、その際に行われた上記脅迫が、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。」としている。
甲は、誰からも追跡されることなく、約2キロメートル離れた場所まで徒歩で移動した後再び乙宅へ戻っているから、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。
したがって、甲には、事後強盗既遂罪は成立しない。
(R1 共通 第20問 イ)
乙は、某日午後0時頃、前記の意図でナイフを購入し、それを携帯してV方に向かい、同日午後1時頃、腕時計を盗む目的で、V方に窓から侵入した上、寝室でV所有の腕時計(時価100万円相当)を窃取した。乙は、その後間もなく、V方玄関ドアの施錠を外して戸外に出て、誰からも発見、追跡されることなく、V方から約1キロメートル離れた公園まで逃げた。乙は、同所において、やはり現金も欲しいと考え、再度V方に窃盗に入ることを決意し、V方に戻り、同日午後1時30分頃、V方玄関内に入ったところ、その直後に帰宅してきたVと鉢合わせとなったことから、逮捕を免れるため、前記ナイフをVの面前に示し、Vが恐怖の余り身動きできないうちに逃走した。
乙がVをナイフで脅迫したことについては、腕時計の窃取行為との時間的・場所的な近接性に照らせば、窃盗の機会の継続中に行われたものといえるため、乙に事後強盗罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平16.12.10)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、財布等を窃取した後、だれからも発見、追跡されることなく、いったん犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごしており、この間に、被告人が被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況はなくなったものというべきである。そうすると、被告人が、その後に、再度窃盗をする目的で犯行現場に戻ったとしても、その際に行われた上記脅迫が、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。」としている。
乙は、誰からも発見、追跡されることなく、V方から約1キロメートル離れた公園まで逃げたから、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。
したがって、乙には、事後強盗既遂罪は成立しない。
(R3 共通 第18問 5)
甲は、乙宅に侵入して財布を盗んだ後、誰にも発見されずに1キロメートル離れた公園へ移動して財布内の現金を確認した。しかし、甲は、その金額に満足せず再度乙宅で窃盗をしようと考え、乙宅を出た30分後に乙宅に戻り、その玄関扉を開けようとしたところ、帰宅していた乙に発見されたため、逮捕を免れる目的で、乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。この場合、甲には、事後強盗罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平16.12.10)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、財布等を窃取した後、だれからも発見、追跡されることなく、いったん犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごしており、この間に、被告人が被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況はなくなったものというべきである。そうすると、被告人が、その後に、再度窃盗をする目的で犯行現場に戻ったとしても、その際に行われた上記脅迫が、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。」としている。
甲は、誰にも発見されずに1キロメートル離れた公園へ移動していたから、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。
したがって、甲には、事後強盗既遂罪は成立しない。
強盗の機会 最二小判昭和24年5月28日
概要
判例
判旨:「刑法第240条後段の強盗殺人罪は強盗犯人が強盗をなす機会において他人を殺害することによりて成立する罪である。原判決の摘示した事実によれば、家人が騒ぎ立てたため他の共犯者が逃走したので被告人も逃走しようとしたところ同家表入口附近で被告人に追跡して来た被害者両名の下腹部を日本刀で突刺し死に至らしめたというのである。即ち殺害の場所は同家表入口附近といって屋内か屋外か判文上明でないが、強盗行為が終了して別の機会に被害者両名を殺害したものではなく、本件強盗の機会に殺害したことは明である。」
過去問・解説
(H22 司法 第20問 ア)
甲は、乙及びその妻子全員が1週間の旅行に出ていて留守であると聞いていた乙宅に、窃盗の目的で侵入し、金庫を開けたところ、乙の妻子は旅行中だったものの、1人で在宅していた乙に発見され、「泥棒」と叫ばれた。甲は、捕まっては大変だと思い、乙にナイフを突き付け、「静かにしろ。」と言ったところ、乙は、慌てて逃げ出そうとして転倒し、暖炉の角に頭部をぶつけた結果、脳内出血を起こして死亡した。
甲は、乙の死亡を確認した上、金庫の中にあった多量の宝石と多額の現金を奪った後、犯行の痕跡を消し去ろうと考えて乙宅に火を放ち、乙宅は全焼した。
その後、甲は、上記宝石を丙に売却することとしたが、その際、上記事情を知る丁に依頼して、丁が運転する自動車に乗り、丁と一緒に同宝石を丙宅まで運搬した。
甲に、強盗致死罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭24.5.28)は、本肢と同種の事案において、「刑法第240条後段の強盗殺人罪は強盗犯人が強盗をなす機会において他人を殺害することによりて成立する罪である。」とした上で、「殺害の場所は同家表入口附近といって屋内か屋外か…明でないが、強盗行為が終了して別の機会に被害者両名を殺害したものではなく、本件強盗の機会に殺害したことは明である。」として、強盗致死罪の成立を認めている。
乙は、慌てて逃げ出そうとして転倒し、暖炉の角に頭部をぶつけた結果、脳内出血を起こして死亡しており、強盗の機会の継続中に死に至ったといえる。
したがって、甲には、強盗致死罪が成立する。
事後強盗罪の成否(被害者の主観) 最二小判昭和22年11月29日
概要
判例
判旨:「刑法第238條の規定は窃盗が財物の取還を拒き又は逮捕を免かれ若しくは罪跡を湮滅する爲暴行又は脅迫を加へた以上被害者において財産を取還せんとし又は加害者を逮捕せんとする行爲を爲したと否とに拘はらず強盗を以って論ずる趣旨であると解するのが妥當である從って本件において原審は證據により原判示第3の事實を認定した以上前記法條により準強盗として處斷できるのであって所論の如く被害者において財物を取還せんとし又は加害者を逮捕せんとした事實を確定する必要はないのであるから原判決には所論2の違法はない。」
過去問・解説
(H27 共通 第16問 3)
窃盗犯人が窃盗の現場で逮捕を免れるために暴行・脅迫を加えた相手方が、現に当該窃盗犯人を逮捕する意図を有していなくても、事後強盗罪は成立する。
事後強盗罪の既遂時期 最二小判昭和24年7月9日
概要
判例
判旨:「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものであることは当然であるにかゝわらず、原審はその擬律において刑法第238条同第236条を適用し、以って準強盗の既遂をもって問擬したのは違法である。けだし、窃盗未遂犯人による準強盗は、財物を得なかった点において、恰かも強盗の未遂と同一の犯罪態様を有するに過ぎないものである。しからば、強盗未遂の場合には刑法第243条の適用があるにかゝわらず、これと同一態様の窃盗未遂の準強盗を、強盗の既遂をもって論ずるときは、右刑法第243条の適用は排除せられることゝなり彼此極めて不合理の結果を生ずるに至るからである。」
過去問・解説
(H20 司法 第11問 ウ)
甲は、深夜、コンビニエンスストアでおにぎりを万引きして店外に出たところ、これに気付いた店員乙に呼び止められたので、逮捕を免れるため、路上に落ちていた角材で乙を殴るなど同人の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたが、たまたま通り掛かった通行人に取り押さえられ、逮捕を免れることができなかった。甲は、事後強盗既遂罪が成立する。
(H23 共通 第10問 ウ)
甲は、乙の住居内に侵入し、タンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探したが、見付けることができないうちに乙に発見された。甲は、逮捕を免れるため、乙に対して包丁を示して脅迫し、屋外に逃走したが、通報により駆けつけた警察官に現場付近で逮捕された。この場合、甲には事後強盗未遂罪が成立する。
(H25 司法 第12問 3)
甲は、電車内で乗客のポケットから財布を窃取した直後、その犯行状況を目撃して甲を逮捕しようとした警察官乙に対し、逮捕を免れるために、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたが、乙に逮捕された。甲には事後強盗未遂罪が成立する。
(H26 司法 第14問 1)
甲は、金品窃取の目的で乙方内を物色中、金品を手にする前に乙に見付かり、逮捕を免れるため、乙に暴行を加えてその反抗を抑圧し、逃走した。甲には事後強盗未遂罪が成立する。
(H27 共通 第16問 1)
窃盗既遂犯人のみが事後強盗罪の主体となる。
(H29 共通 第17問 ア)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、事後強盗罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、会社事務所内において現金を窃取して、戸外に出たところを警備員乙に発見されて取り押さえられそうになったため、逮捕を免れようと考え、乙に対し、刃体の長さ20センチメートルの出刃包丁をその腹部に突き付け、「ぶっ殺すぞ。」と怒鳴り付けたが、偶然その場を通り掛かった警察官に取り押さえられ、逮捕を免れることができなかった。
事後強盗罪の予備罪 最二小決昭和54年11月19日
概要
判例
判旨:「刑法237条にいう『強盗ノ目的』には、同法238条に規定する準強盗を目的とする場合を含むと解すべきであって、これと同旨の原判断は正当である。」
過去問・解説
(H27 共通 第16問 5)
強盗予備罪の「強盗の罪を犯す目的」には、事後強盗を犯す目的も含まれる。
(R1 共通 第20問 ア)
甲は、友人乙から、借金の返済に窮している旨の相談をされ、乙に対し、「実家に親父の高級腕時計がある。それを盗んで売りさばけば金になる。」と提案し、甲と別居する甲の実父V方からV所有の腕時計を盗むことを唆した。乙は、甲の提案を受け、V方に窃盗に入ることとしたが、仮に、窃盗を行う際にVらに見付かって逮捕されそうになった場合には、Vらをナイフで脅してこれを抑圧し、逃走しようと考えた。乙が某日午後0時頃に、前記の意図で購入したナイフを携帯してV方に向かったことについては、「強盗の罪を犯す目的」が認められないので、乙に強盗予備罪は成立しない。
(R3 共通 第18問 3)
甲は、留守宅に侵入して窃盗をしようと考え、金品を物色中に家人が帰ってきたら同人に反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫を加えて逃げる意図でサバイバルナイフを携帯し、住宅街を徘徊して侵入に適した留守宅を探したが、これを発見できず、侵入を断念した。この場合、甲には、強盗予備罪が成立する。
事後強盗罪における「暴行」 大判昭和19年2月8日
概要
判例
判旨:「刑法第238条ニ所謂暴行トハ逮捕ヲ抑圧スルニ足ル程度ノ動作ヲ指称スルモノニシテ其ノ程度ノ存否ハ具体的状況ニ徴シテ之ヲ決スベキモノトス」
過去問・解説
(H21 司法 第20問 1)
甲は、コンビニエンスストアでおにぎり1個(時価150円相当)を窃取したが、甲の犯行を目撃して追いかけてきた店員乙に対し、同人に捕まえられるのを免れる目的で、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行を加えて加療約1週間を要する傷害を負わせた。甲に事後強盗罪が成立する。
(R3 共通 第18問 2)
甲は、電車内で寝ていた乙の財布を盗んで電車を降りたが、乙が目を覚まして追い掛けてきたため、逮捕を免れる目的で、乙に暴行を加えたところ、乙が転倒して重傷を負い、反抗が抑圧された状態に至った。この場合、甲の暴行の程度を問わず、甲には、強盗致傷罪が成立する。