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詐欺の罪(実行行為) - 解答モード
不作為の欺罔行為の成否 大判大正6年11月29日
概要
判例
要旨:単純ナル事実ノ緘黙ニ因リテ他人ニ錯誤ヲ生セシメ若クハ之ヲ保持セシメタル場合ニ於テハ事実ヲ告知スヘキ法律上ノ義務存スルニ非サレハ之ヲ以テ詐欺罪ノ欺罔アリト謂フヲ得ス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
詐欺罪における欺罔行為 最二小決昭和43年6月6日
概要
判例
判旨:「原判決が、その判示にかかる事実関係のもとで、…欺岡行為を、作為によるものとし、不作為による欺罔行為に必要な告知義務の有無を論ずる必要がない旨判示したのは相当である。けだし、商品買受の注文をする場合においては、特に反対の事情がある場合のほかは、その注文に代金を支払う旨の意思表示を包含しているものと解するのが通例であるから、注文者が、代金を支払える見込もその意思もないのに、単純に商品買受の注文をしたときは、その注文の行為自体を欺罔行為と解するのが相当であるからである。」
詐欺罪の成否(被害者の過失あるとき) 大判大正14年4月7日
概要
判例
要旨:犯人ノ施用シタル欺罔手段ト被害者ノ自ラ為シタル判断ノ過誤ト相俟ツテ被害者ニ錯誤ノ結果ヲ生セシメタルトキト雖詐欺罪ノ成立ヲ妨ケス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
無銭飲食 最一小判昭和30年7月7日
概要
判例
判旨:「刑法246条2項にいわゆる『財産上不法の利益を得』とは、同法236条2項のそれとはその趣を異にし、すべて相手方の意思によって財産上不法の利益を得る場合をいうものである。従って、詐欺罪で得た財産上不法の利益が、債務の支払を免れたことであるとするには、相手方たる債権者を欺罔して債務免除の意思表示をなさしめることを要するものであって、単に逃走して事実上支払をしなかっただけで足りるものではないと解すべきである。…宿泊、飲食等をしたときに刑法246条の詐欺罪が既遂に達したと判示したものと認めることができる。」
過去問・解説
(H28 司法 第13問 ア)
判例の立場に従って検討し、詐欺罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、所持金がなかったことから代金を支払わずに食事をしようと考え、飲食店に行って料理を注文し、これを食べた後、代金を請求した店員に対し、財布を忘れたので自宅に取りに帰ると嘘を言ったが、店員にその嘘を見破られた。
誤振込みと詐欺罪 最二小決平成15年3月12日
概要
判例
判旨:「銀行実務では、振込先の口座を誤って振込依頼をした振込依頼人からの申出があれば、受取人の預金口座への入金処理が完了している場合であっても、受取人の承諾を得て振込依頼前の状態に戻す、組戻しという手続が執られている。また、受取人から誤った振込みがある旨の指摘があった場合にも、自行の入金処理に誤りがなかったかどうかを確認する一方、振込依頼先の銀行及び同銀行を通じて振込依頼人に対し、当該振込みの過誤の有無に関する照会を行うなどの措置が講じられている。
これらの措置は、普通預金規定、振込規定等の趣旨に沿った取扱いであり、安全な振込送金制度を維持するために有益なものである上、銀行が振込依頼人と受取人との紛争に巻き込まれないためにも必要なものということができる。また、振込依頼人、受取人等関係者間での無用な紛争の発生を防止するという観点から、社会的にも有意義なものである。したがって、銀行にとって、払戻請求を受けた預金が誤った振込みによるものか否かは、直ちにその支払に応ずるか否かを決する上で重要な事柄であるといわなければならない。これを受取人の立場から見れば、受取人においても、銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に上記の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があると解される。社会生活上の条理からしても、誤った振込みについては、受取人において、これを振込依頼人等に返還しなければならず、誤った振込金額相当分を最終的に自己のものとすべき実質的な権利はないのであるから、上記の告知義務があることは当然というべきである。そうすると、誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たり、また、誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから、錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には、詐欺罪が成立する。」
過去問・解説
(H27 司法 第1問 エ)
不真正不作為犯は、殺人罪や放火罪については成立するが、財産犯については成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平15.3.12)は、「受取人においても、銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に上記の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があると解される。」とした上で、「誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たり、また、誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから、錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には、詐欺罪が成立する。」として、不作為の欺罔による詐欺罪の成立を認めている。
したがって、財産犯である詐欺罪においても、不真正不作為犯は成立し得る。
(H30 司法 第12問 4)
自己名義の銀行預金口座に多額の誤った振込みがなされていることを知った上で、同銀行の窓口係員に対し、誤った振込みがあった旨を告知することなく同口座の残金全額の払戻しを請求し、同係員から即時にその払戻しを受けた場合、詐欺罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平15.3.12)は、本肢と同種の事案において、「受取人においても、銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に上記の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があると解される。」とした上で、「誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たり、また、誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから、錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には、詐欺罪が成立する。」としている。
他人名義のクレジットカードの利用と詐欺罪 最二小決平成16年2月9日
概要
判例
判旨:「Aは、友人のBから、同人名義の本件クレジットカードを預かって使用を許され、その利用代金については、Bに交付したり、所定の預金口座に振り込んだりしていた。
その後、本件クレジットカードを被告人が入手した。その入手の経緯はつまびらかではないが、当時、Aは、バカラ賭博の店に客として出入りしており、暴力団関係者である被告人も、同店を拠点に賭金の貸付けなどをしていたものであって、両者が接点を有していたことなどの状況から、本件クレジットカードは、Aが自発的に被告人を含む第三者に対し交付したものである可能性も排除できない。なお、被告人とBとの間に面識はなく、BはA以外の第三者が本件クレジットカードを使用することを許諾したことはなかった。
被告人は、本件クレジットカードを入手した直後、加盟店であるガソリンスタンドにおいて、本件クレジットカードを示し、名義人のBに成り済まして自動車への給油を申し込み、被告人がB本人であると従業員を誤信させてガソリンの給油を受けた。上記ガソリンスタンドでは、名義人以外の者によるクレジットカードの利用行為には応じないこととなっていた。
本件クレジットカードの会員規約上、クレジットカードは、会員である名義人のみが利用でき、他人に同カードを譲渡、貸与、質入れ等することが禁じられている。また、加盟店規約上、加盟店は、クレジットカードの利用者が会員本人であることを善良な管理者の注意義務をもって確認することなどが定められている。
以上の事実関係の下では、被告人は、本件クレジットカードの名義人本人に成り済まし、同カードの正当な利用権限がないのにこれがあるように装い、その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けたことが認められるから、被告人の行為は詐欺罪を構成する。仮に、被告人が、本件クレジットカードの名義人から同カードの使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金が会員規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたという事情があったとしても、本件詐欺罪の成立は左右されない。」
過去問・解説
(H28 共通 第20問 エ)
甲は、Aから盗んだクレジットカードを担保として丁から現金30万円を借りたが、その際、丁に対し、「これはA名義のクレジットカードだけど、Aから使用を許されており、お前がこのカードを利用して買物をしても、その利用代金はAにおいて決済される。」と伝えた。その後、甲が丁に対して金を返さなかったことから、丁は、甲の話を信じ、デパートにおいて、Aに成り済まして同カードを用いて腕時計1個を購入した。
丁がA名義のクレジットカードで腕時計を購入したことにつき、丁は、Aから同カードの使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金がAにおいて決済されるものと信じていたので、丁に詐欺罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平16.2.9)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、本件クレジットカードの名義人本人に成り済まし、同カードの正当な利用権限がないのにこれがあるように装い、その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けたことが認められるから、被告人の行為は詐欺罪を構成する。仮に、被告人が、本件クレジットカードの名義人から同カードの使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金が会員規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたという事情があったとしても、本件詐欺罪の成立は左右されない。」としている。
したがって、丁が、Aから同カードの使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金がAにおいて決済されるものと信じていたとしても、丁に詐欺罪が成立する。