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文書偽造の罪(公文書の偽造) - 解答モード

欺罔行為と文書偽造罪 大判明治44年5月8日

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概要
文書偽造罪における文書は必ずしも偽造者若しくは情を知らない第三者においてこれを作成することを要しない。署名者をして他の文書であると誤信させ、又はその内容を知らせずにこれを作成する場合においても文書偽造罪の成立を妨げない。
判例
事案:本人を欺罔して虚偽の内容の文書を作成させたという事案において、文書偽造罪の成否が問題となった。

要旨:文書偽造罪ニ於ケル文書ハ必スシモ偽造者若クハ情ヲ知ラサル第三者ニ於テ之ヲ作成スルヲ要セス署名者ヲシテ他ノ文書ナリト誤信セシメ又ハ其内容ヲ知悉セシメスシテ之ヲ作成スル場合ニ於テモ文書偽造罪ノ成立ヲ妨ケス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説

(H22 司法 第15問 2)
甲は、乙所有の建物の売買契約書を会員制クラブの入会申込書であると偽って乙に示し、乙をしてその旨誤信させてその売主欄に署名押印させた。甲には、有印私文書偽造罪の間接正犯が成立する。ただし、甲は、「行使の目的」又は「人の財産上の事務処理を誤らせる目的」を有するものとする。

(正答)

(解説)
判例(大判明44.5.8)は、署名者をして他の文書と誤信させ、又はその内容を知らせずにこれを作成する場合においても文書偽造罪が成立することを示している。
甲は、作成名義人乙を欺いて署名押印させているから、甲には、有印私文書偽造罪の間接正犯が成立する。

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虚偽公文書作成罪と間接正犯 最二小判昭和32年10月4日

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概要
作成権限者たる公務員を補佐して公文書の起案を担当する公務員が、行使の目的で内容虚偽の公文書を起案し、情を知らない右上司を利用してこれを完成した場合は、虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。
判例
事案:補助者たる公務員が情を知らない上司を利用して虚偽の公文書を作成した場合の事案において、身分犯たる虚偽公文書作成罪の間接正犯の成否が問題になった。

判旨:「156条の虚偽公文書作成罪は、公文書の作成権限者たる公務員を主体とする身分犯ではあるが、作成権限者たる公務員の職務を補佐して公文書の起案を担当する職員が、その地位を利用し行使の目的をもってその職務上起案を担当する文書につき内容虚偽のものを起案し、これを情を知らない右上司に提出し上司をして右起案文書の内容を真実なものと誤信して署名若しくは記名、捺印せしめ、もって内容虚偽の公文書を作らせた場合の如きも、なお、虚偽公文書作成罪の間接正犯の成立あるものと解すべきである。けだし、この場合においては、右職員は、その職務に関し内容虚偽の文書を起案し情を知らない作成権限者たる公務員を利用して虚偽の公文書を完成したものとみるを相当とするからである…。」
過去問・解説

(R3 共通 第6問 5)
上司である公文書の作成権限のある公務員を補佐して公文書の起案を担当する公務員が、その地位を利用し、行使の目的で、その職務上起案を担当する公文書に内容虚偽の記載をした上、情を知らない上司に、当該文書の内容が真実であると誤信させ、これに署名押印させた場合、虚偽公文書作成罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.10.4)は、「虚偽公文書作成罪は、公文書の作成権限者たる公務員を主体とする身分犯ではあるが、作成権限者たる公務員の職務を補佐して公文書の起案を担当する職員が、その地位を利用し行使の目的をもってその職務上起案を担当する文書につき内容虚偽のものを起案し、これを情を知らない右上司に提出し上司をして右起案文書の内容を真実なものと誤信して署名若しくは記名、捺印せしめ、もって内容虚偽の公文書を作らせた場合の如きも、なお、虚偽公文書作成罪の間接正犯の成立あるものと解すべきである。」としている。
したがって、虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。

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公文書の書換と公文書偽造罪 最二小判昭和24年4月9日

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概要
通帳における世帯主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であって、世帯主甲名義の通帳と同乙名義の通帳とは、たとえ通帳自体は同一物が利用されその通帳の作成名義者は同一であっても、全く別個の通帳と認めざるを得ないから、村長Aの作成にかかる世帯主被告人名義の通帳を利用して世帯主B名義の新なる通帳を作成したものと解し公文書偽造罪に当たる。
判例
事案:世帯が甲名義の通帳に新たに世帯主乙名義を書き加えたという事案において、公文書偽造罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人はa村々長Aの記名捺印ある世帯主被告人の家庭用米穀配給通帳中に、『世帯主、C』と記載してあったその『C』の部分を指先ですり消し、其処にインキ等を使って、亡弟の名『B』の字を書き込み、恰も世帯主Bに交付せられた通帳のように改竄したというのである。およそ、家庭用米穀配給通帳は各世帯毎に交付せられるものであって、右通帳における世帯主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であって、世帯主甲名義の通帳と、同乙名義の通帳とは、たとえ、通帳自体は同一物が利用せられ従ってその通帳の作成名義者は同一であっても、全く別個の通帳と認めざるを得ない。されば原判決が前示被告人の所為を以て村長Aの作成にかかる世帯主被告人名義の通帳を利用して世帯主B名義の新なる通帳を作成したものと解し、これを公文書偽造罪に問擬したのは正当であって、右は公交書変造の罪にあたるものであると主張する論旨はあやまりである…。」
過去問・解説

(H27 共通 第20問 ア)
【事例】
 借金の返済に苦しんでいた甲とその内縁の妻乙は、A市が発行した乙を被保険者とする国民健康保険被保険者証の氏名を乙から実在しない丙に改変し、丙になりすまして消費者金融会社から借入れをして現金を手に入れることを相談した。甲と相談したとおり、乙は、上記国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄に乙とあるのを丙と書き換えた。そして、乙は、消費者金融会社の無人借入手続コーナーにおいて、借入申込書に丙の氏名を記載し、丙と刻した印鑑を押捺するなどして丙名義の借入申込書1通を完成させた上、同申込書及び氏名を丙に改変した上記国民健康保険被保険者証の内容を、同コーナーに設置された機械を使用し、同機械に接続されている同社本店の端末機に送信し、同社の貸付手続担当者に対し、丙であるかのように装って100万円の借入れを申し込んだ。同担当者は、当該申込みをした者が真実丙であり、かつ、貸付金は約定のとおりに返済されるものと誤信し、同社の貸付システムに従って丙名義の借入カードを上記コーナーに設置された機械から発券した。乙は、その場で同カードを入手し、同カードを現金自動入出機に挿入して同機から現金100万円を引き出した。その後、乙は、上記行為に及んだことを後悔し、自宅で、甲に一緒に自首をしようと持ち掛けた。甲は、これを聞いて激高し、乙を窒息死させようと考え、その首を絞めたところ、乙は首を絞められたことによるショックで心不全になり死亡した。甲は、乙の死亡から約30分後、死亡して横たわっている乙の指に時価20万円相当の乙の指輪がはめてあることに気が付き、同指輪を奪って逃走した。
【記述】
乙が国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄を丙と書き換えた行為については、単に文書の内容を書き換えたにすぎないから、甲と乙には、公文書偽造罪ではなく、公文書変造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.4.9)は、「家庭用米穀配給通帳は各世帯毎に交付せられるものであって、右通帳における世帯主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であって、世帯主甲名義の通帳と、同乙名義の通帳とは、たとえ、通帳自体は同一物が利用せられ従ってその通帳の作成名義者は同一であっても、全く別個の通帳と認めざるを得ない。されば原判決が前示被告人の所為を以て村長Aの作成にかかる世帯主被告人名義の通帳を利用して世帯主B名義の新なる通帳を作成したものと解し、これを公文書偽造罪に問擬したのは正当…。」として、文書の本質的部分へ変更を加えている場合、新たな証明力ある文書を作成したとして変造ではなく偽造に当たるとしている。
そして、国民健康保険被保険者証の被保険者氏名もその文書の被保険者を示す本質的部分として、これを書き換える行為は偽造に当たる。
したがって、乙には公文書偽造罪が成立する。

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写真の貼り代え等による公文書偽造罪の成否 最三小決昭和35年1月12日

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概要
特定人に交付された自動車運転免許証に貼付してある写真をほしいままに剥ぎとり、その特定人と異なる他人の写真を貼り代え、生年月日欄の数字を改ざんし全く別個の新たな免許証としたときは、公文書偽造罪が成立する。
判例
事案:自動車運転免許証に貼付してある写真を貼り代え、生年月日欄の数字を改ざんした事案において、公文書偽造罪の成否が問題となった。

判旨:「運転免許証の写真を貼り代え、その生年月日欄を改めただけであって、その作成名義を変更したものではないから、公文書変造罪を構成することはあっても公文書偽造罪を構成するものではないと主張するが、特定人に交付された自動車運転免許証に貼付しある写真及びその人の生年月日の記載は、当該免許証の内容にして重要事項に属するのであるから、右写真をほしいままに剥ぎとり、その特定人と異なる他人の写真を貼り代え、生年月日欄の数字を改ざんし、全く別個の新たな免許証としたるときは、公文書偽造罪が成立すると解すべきである。」
過去問・解説

(H23 司法 第19問 ア)
【事例】
 甲は、求人広告を見て乙と会い、乙から、銀行で架空人名義の預金口座を開設し、その預金通帳とキャッシュカードを手に入れて乙に渡すというアルバイトを依頼され、これを引き受けた。その際、甲は、乙から、預金口座を開設する際に身分証明書として呈示するため、甲の顔写真が印刷された架空人A名義の運転免許証を作成する必要があると聞かされたので、甲の顔写真を乙に交付するとともに、甲の知人Bの住所をキャッシュカードの送付先として乙に教えた。乙は、不正に入手したC名義の真正な運転免許証の顔写真の上から甲の顔写真を貼り付け、氏名をA名義に、住所をBの住所にそれぞれ書き換えるなどの加工を施し、甲の顔写真が貼付されたA名義の運転免許証を作成した。同免許証は、一見すると真正なものと見分けがつかないような精巧なものであった。数日後、甲は、乙から、前記運転免許証とAの姓を刻した印鑑を受け取った。その後、甲は、銀行に行き、口座開設申込書にAの氏名及びBの住所等を書いてAの印鑑を押した上、同銀行窓口係丙に対し、Aを装い、同申込書を前記運転免許証と一緒に提出して口座開設を申し込んだ。丙は、甲がAであることを疑うこともなく、かつ、前記運転免許証及び前記口座開設申込書の記載内容が虚偽であると知っていれば口座開設をしなかったのに、これらの内容が真実であるものと誤信し、A名義の口座を開設する手続を行い、即日窓口で預金通帳を甲に交付し、キャッシュカードについては、Bの住所地宛てに郵送した。甲は、数日後に郵送されたキャッシュカードをBから受け取った後、しばらくの間、自宅に通帳とキャッシュカードを保管し、その後、報酬と引換えに、預金通帳とキャッシュカードを乙に交付した。
【罪名】
有印公文書変造・同行使罪

(正答)

(解説)
判例(最決昭35.1.12)は、「特定人に交付された自動車運転免許証に貼付しある写真及びその人の生年月日の記載は、当該免許証の内容にして重要事項に属するのであるから、右写真をほしいままに剥ぎとり、その特定人と異なる他人の写真を貼り代え、生年月日欄の数字を改ざんし、全く別個の新たな免許証としたるときは、公文書偽造罪が成立する…。」として、文書の本質的部分へ変更を加えている場合、新たな証明力ある文書を作成したとして、変造ではなく偽造に当たるとしている。
乙は、甲と共謀した上で、C名義の真正な運転免許証の顔写真の上から甲の顔写真を貼り付け、氏名をA名義に、住所をBの住所にそれぞれ書き換えているから、重要事項に属する本質的部分へ変更を加えたといえ、偽造に当たる。
したがって、甲に有印公文書偽造罪の共同正犯が成立する。


(H28 共通 第4問 エ)
Xは、身分証明書として使おうと考え、A県公安委員会が発行したYの自動車運転免許証の写真をXの写真に貼り替えた。有印公文書偽造罪が成立するか。

(正答)

(解説)
判例(最決昭35.1.12)は、「特定人に交付された自動車運転免許証に貼付しある写真及びその人の生年月日の記載は、当該免許証の内容にして重要事項に属するのであるから、右写真をほしいままに剥ぎとり、その特定人と異なる他人の写真を貼り代え、生年月日欄の数字を改ざんし、全く別個の新たな免許証としたるときは、公文書偽造罪が成立する…。」として、文書の本質的部分へ変更を加えている場合、新たな証明力ある文書を作成したとして、変造ではなく偽造に当たるとしている。
A県公安委員会が発行したYの自動車運転免許証の写真をXの写真に張り替えているから、重要事項に属する本質的部分へ変更を加えたといえ、偽造に当たる。そして、作成名義人たるA県公安委員会の印章を不正に利用しているとして有印である。
したがって、Xに有印公文書偽造罪が成立する。

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偽造運転免許証の携帯運転と偽造公文書行使罪 最大判昭和44年6月18日

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概要
自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているにとどまる場合には、偽造公文書行使罪を構成しない。
判例
事案:偽造運転免許証の携帯運転をしたという事案において、偽造公文書行使罪の成否が問題となった。

判旨:「本件偽造公文書行使の各事実は、前記のように、被告人が自動車を運転した際に偽造にかかる運転免許証を携帯していたというものであるところ、偽造公文書行使罪は公文書の真正に対する公共の信用か具体的に侵害されることを防止しようとするものであるから、同罪にいう行使にあたるためには、文書を真正に成立したものとして他人に交付、提示等して、その閲覧に供し、その内容を認識させまたはこれを認識しうる状態におくことを要するのである。したがって、たとい自動車を運転する際に運転免許証を携帯し、一定の場合にこれを提示すべき義務が法令上定められているとしても、自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、未だこれを他人の閲覧に供しその内容を認識しうる状態においたものというには足りず、偽造公文書行使罪にあたらないと解すべきである。」
過去問・解説

(H23 共通 第1問 5)
甲は、運転中に警察官に免許証の提示を求められたときに提示するつもりで、偽造された自動車運転免許証を携帯して自動車の運転を開始した。甲には偽造公文書行使罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭44.6.18)は、「たとい自動車を運転する際に運転免許証を携帯し、一定の場合にこれを提示すべき義務が法令上定められているとしても、自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、未だこれを他人の閲覧に供しその内容を認識しうる状態においたものというには足りず、偽造公文書行使罪にあたらない…。」としている。
甲は、運転中に警察官に免許証の提示を求められたときに提示するつもりで、偽造された自動車運転免許証を携帯したにすぎないから、甲に偽造公文書行使罪は成立しない。


(H27 司法 第4問 2)
偽造公文書の内容、形式を口頭で他人に告知するだけでは、偽造公文書行使罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭44.6.18)は、「行使にあたるためには、文書を真正に成立したものとして他人に交付、提示等して、その閲覧に供し、その内容を認識させまたはこれを認識しうる状態におくことを要する…。」としている。


全体の正答率 : 0%

(H27 司法 第4問 5)
自動車を運転する際、警察官から運転免許証の提示を求められれば提示するつもりで偽造した運転免許証を携帯した場合、偽造公文書行使罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭44.6.18)は、「たとい自動車を運転する際に運転免許証を携帯し、一定の場合にこれを提示すべき義務が法令上定められているとしても、自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、未だこれを他人の閲覧に供しその内容を認識しうる状態においたものというには足りず、偽造公文書行使罪にあたらない…。」としている。


全体の正答率 : 100%

(R3 共通 第6問 4)
警察官から提示を求められたときに備え、偽造された自動車運転免許証を携帯して自動車を運転した場合、偽造公文書行使罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭44.6.18)は、「たとい自動車を運転する際に運転免許証を携帯し、一定の場合にこれを提示すべき義務が法令上定められているとしても、自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、未だこれを他人の閲覧に供しその内容を認識しうる状態においたものというには足りず、偽造公文書行使罪にあたらない…。」としている。

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免許証の偽造と偽造公文書行使罪 最二小決昭和52年4月25日

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概要
偽造にかかる自動車運転免許証表示の有効期間が3ケ月余経過した時点であっても、警察官をして、真正に作成され、かつ、被告人が自動車運転免許を受けたものであると誤信させるに足りる外観を具備していると認められる本件免許証の提示行為は、偽造公文書の行使にあたる。
判例
事案:窃取した他人の免許証に自己の写真を貼り替えて、被告人が免許証の交付を受けた他人であるかのように作出して免許証を偽造したうえ、これを交通取締の警察官に提示したが、有効期限が過ぎていたという事案において、偽造公文書行使罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、窃取したAの自動車運転免許証に自己の写真を貼り替えて、あたかも被告人が自動車運転免許証の交付を受けたAであるかのように作出して神奈川県公安委員会作成名義の自動車運転免許証1通を偽造したうえ、これを交通取締の警察官に提示したところ、警察官は、直ちに右免許証表示の有効期間が3ケ月余経過していることに気付いたが、右免許証が真正に作成されたものであって被告人が運転免許を受けたものであると誤信したまま、無免許運転の取調べに入ったというのであり、右事実によれば、本件偽造運転免許証は、表示の有効期間を3ケ月余経過した時点であっても、警察官をして自動車運転免許証自体は真正に作成されたものであって、被告人が自動車運転免許を受けたものであると誤信させるに足りる外観を具備していたことが明らかであるから、右提示行為をもって偽造公文書の行使にあたるとした原判断は正当である。」
過去問・解説

(H29 司法 第4問 1)
甲は、他人の自動車運転免許証に甲の写真を貼り付けた偽造自動車運転免許証を入手し、これを携帯して自動車を運転中に検問で停止を求められ、情を知らない警察官に同免許証を真正に成立したものとして提示した。提示した時には同免許証に表示されている有効期間が経過していたとしても、甲には偽造公文書行使罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭52.4.25)は、本肢と同種の事案において、「本件偽造運転免許証は、表示の有効期間を3ケ月余経過した時点であっても、警察官をして自動車運転免許証自体は真正に作成されたものであって、被告人が自動車運転免許を受けたものであると誤信させるに足りる外観を具備していたことが明らかであるから、右提示行為をもって偽造公文書の行使にあたる…。」として、法的に無効な文書であっても偽造公文書行使罪の客体になりうることを示している。
甲が免許証を提示した時には同免許証に表示されている有効期間が経過していたが、情を知らない警察官に同免許証を真正に成立したものとして提示しているから、甲には偽造公文書行使罪が成立する。

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虚偽公文書作成罪と間接正犯 最一小判昭和27年12月25日

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概要
①公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは157条の場合の外これを処罰しない。
②公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時にその性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するから、旅券の交付を受ける行為は、246条の詐欺罪ではなく、157条2項の罪だけが成立する。
判例
事案:非公務員が虚偽の申立をして情を知らない公務員をして虚偽の証明書を作成させた事案において、虚偽公文書作成罪の間接正犯の成否が問題になった。

判旨:「刑法は、いわゆる無形偽造については公文書のみに限ってこれを処罰し、一般私文書の無形偽造を認めないばかりでなく、公文書の無形偽造についても同法156条の他に特に公務員に対し虚偽の申立を為し、権利義務に関する公正証書の原本又は免状、鑑札若しくは旅券に不実の記載を為さしめたときに限り同法157条の処罰規定を設け、しかも右156条の場合の刑よりも著しく軽く罰しているに過ぎない点から見ると公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法157条の場合の外これを処罰しない趣旨と解するのを相当とする。
 …原判決は『被告人は同係員を欺罔して旅券の下付を受けようとしたけれども、その後占領軍官憲の調査により右証明書2通の記載内容が虚偽であることを発見されたため竟に旅券騙取の目的を遂げなかったものである』と認定し、刑法246条1項、250条に該当する詐欺未遂である旨判示している。そして、刑法157条2項には、公務員に対し虚偽の申立を為し免状、鑑札又は旅券に不実の記載を為さしめたる者とあるに過ぎないけれども、免状、鑑札、旅券のような資格証明書は、当該名義人においてこれが下付を受けて所持しなければ効用のないものであるから、同条に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時にその性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するものと解するを正当とする。
 しかも、同条項の刑罰が1年以下の懲役又は300円以下の罰金に過ぎない点をも参酌すると免状、鑑札、旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、右刑法157条2項だけを適用すべきものと解するを相当とする。」
過去問・解説

(H21 司法 第9問 4)
公務員でない甲は、行使の目的で、虚偽の内容を記載した証明願を村役場の係員に提出し、情を知らない同係員をして村長名義の虚偽の証明書を作成させた。甲は、情を知らない同係員を利用して虚偽の公文書を作成しているので、甲には虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭27.12.25)は、「公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法157条の場合の外これを処罰しない…。」として、公務員以外の者が虚偽公文書作成罪の間接正犯である場合、公正証書原本不実記載等罪のほかに処罰しないとしている。
公務員ではない甲は、情を知らない同係員をして村長名義の虚偽の証明書を作成させている。
したがって、甲に虚偽公文書作成罪の間接正犯は成立しない。


(H22 司法 第15問 3)
甲は、内容虚偽の旅券申請書を作成して旅券の交付を申請し、旅券の交付を受けた。甲には、詐欺罪が成立するので、免状等不実記載罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭27.12.25)は、「刑法157条2項には、公務員に対し虚偽の申立を為し…旅券に不実の記載を為さしめたる者とあるに過ぎないけれども、…旅券のような資格証明書は、…同条に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足する…。…旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、右刑法157条2項だけを適用すべき…。」としている。
甲は、内容虚偽の旅券申請書を作成して旅券の交付を申請し、旅券の交付を受けているから、免状等不実記載罪が成立するが、別途詐欺罪は成立しない。
したがって、甲には免状等不実記載罪が成立する。


(H28 司法 第17問 3)
公務員ではない甲は、公証人乙に対して虚偽の申立てをし、事情を知らない乙をして、公文書である公正証書の原本に虚偽の記載をさせた。甲に虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭27.12.25)は、「公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法157条の場合の外これを処罰しない…。」として、公務員以外の者が虚偽公文書作成罪の間接正犯である場合、公正証書原本不実記載等罪のほかに処罰しないことを示している。
公務員ではない甲は、公証人乙に対して虚偽の申立てをし、事情を知らない乙をして、公文書である公正証書の原本に虚偽の記載をさせている。
したがって、甲に虚偽公文書作成罪の間接正犯は成立しない。


(H29 司法 第4問 2)
公務員でない甲は、情を知らない公務員に対し虚偽の申立てをして登記簿に不実の記載をさせ、その登記簿謄本の交付を受けた。甲には虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭27.12.25)は、「公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法157条の場合の外これを処罰しない…。」として、公務員以外の者が虚偽公文書作成罪の間接正犯である場合、公正証書原本不実記載等罪のほかに処罰しないことを示している。
公務員ではない甲は、情を知らない公務員に対し虚偽の申立てをして登記簿に不実の記載をさせ、その登記簿謄本の交付を受けている。
したがって、甲に虚偽公文書作成罪の間接正犯は成立しない。


(R5 司法 第15問 1)
公務員でない甲は、行使の目的で、情を知らない市役所の係員Aに虚偽の申立てをして、市長名義の虚偽の課税証明書を作成させた。この場合、甲に虚偽公文書作成罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭27.12.25)は、「公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法157条の場合の外これを処罰しない…。」として、公務員以外の者が虚偽公文書作成罪の間接正犯である場合、公正証書原本不実記載等罪のほかに処罰しないとしている。
公務員ではない甲は、行使の目的で、情を知らない市役所の係員Aに虚偽の申立てをして、市長名義の虚偽の課税証明書を作成させている。
したがって、甲に虚偽公文書作成罪の間接正犯は成立しない。

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