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商行為 総則 - 解答モード
第501条
条文
次に掲げる行為は、商行為とする。
一 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為
二 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為
三 取引所においてする取引
四 手形その他の商業証券に関する行為
過去問・解説
(H18 司法 第51問 1)
電器部品の製造・販売業者が製品を販売する行為は、商行為である。
(正答) 〇
(解説)
501条1号は、絶対的商行為の一つとして、「利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為」を挙げている。これは、投機購買とその実行行為と呼ばれる。
判例(大判昭4.9.28)は、「譲渡」とは、必ずしも取得した動産等をそのまま譲渡することを意味するものではなく、製造又は加工して譲渡する場合を含むとしているから、原材料を購入して、加工・製造のうえ販売するメーカーの行為も「譲渡」に含まれる(弥永真生「リーガルマインド商法総則・商行為法」第3版12頁)。
したがって、したがって、電器部品の製造・販売業者が製品を販売する行為は、それが営業として行われるか否かにかかわらず、商行為である。
第502条
条文
次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。
一 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
二 他人のためにする製造又は加工に関する行為
三 電気又はガスの供給に関する行為
四 運送に関する行為
五 作業又は労務の請負
六 出版、印刷又は撮影に関する行為
七 客の来集を目的とする場屋における取引
八 両替その他の銀行取引
九 保険
十 寄託の引受け
十一 仲立ち又は取次ぎに関する行為
十二 商行為の代理の引受け
十三 信託の引受け
過去問・解説
(H18 司法 第51問 3)
結婚の媒介を引き受ける行為は、営業としてするときは、商行為となる。
(H18 司法 第51問 4)
貸金業者による貸付行為は、営業としてするときは、商行為となる。
第503条
条文
① 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。
② 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。
過去問・解説
(H18 司法 第51問 2)
旅館業を営む者が無償で客を送迎することを引き受ける行為は、商行為である。
(H18 司法 第51問 5)
商人が従業員を雇い入れる行為は、商行為である。
(正答) 〇
(解説)
503条は、附属的商行為について、1項において「商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。」と規定した上で、2項において「商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。」と規定している。
判例(最判昭30.9.29)は、「原判決が「前記雇傭は控訴人(上告人)がその営業のためにする行為であると認められる」と判示しており、雇傭に関しての右判示にはその証拠を掲げていない点において違法の嫌いがないでもないが、商人の行為は一般にその営業のためにするものと推定され、この点について何ら反証のあげられていない本件においては、商人たる上告人がその営業のためにする行為は商行為となるから、原判決は結局正当に帰し、論旨は理由がない。」として、商人が従業員を雇い入れる行為について、附属的商行為の推定を認めている。
したがって、商人が従業員を雇い入れる行為は、商行為である。
第504条
条文
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。
過去問・解説
(H28 予備 第28問 イ)
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合には、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときであっても、代理人に対して履行の請求をすることはできない。
(R6 予備 第28問 ア)
甲社の従業員が、乙社との間で売買契約を締結する代理権を甲社から授与された場合において、甲社のためにすることを示さないで乙社との間で売買契約を締結したときは、乙社は、甲社に対し、その履行を請求することができない。
第506条
条文
商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。
過去問・解説
(H18 司法 第52問 3)
商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。
(H25 司法 第52問 イ)
商行為の委任による代理の場合であっても、代理権は、本人の死亡によって消滅する。
旧507条
条文
商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
※平成29年改正により削除
過去問・解説
(H23 予備 第28問 ア)
契約の申込みを受けた対話者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失うとの規律は、当事者双方が商人である場合に限り適用される。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正前商法下では、旧商法507条は、商人間である対話者間における契約の申込みについて、「商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」と規定していた。
しかし、平成29年改正商法下では、旧商法507条が削除されたため、民法525条3項が適用される。同条3項は、「対話者に対してした第1項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。」と規定している。
(H25 司法 第44問 オ)
商人である対話者の間において、承諾の期間を定めないでした申込みに対して対話が継続している間に契約の申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
(正答) 〇
(解説)
平成29年改正前商法下では、旧商法507条は、商人間である対話者間における契約の申込みについて、「商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」と規定していた。
しかし、平成29年改正商法下では、旧商法507条が削除されたため、民法525条3項が適用される。同条3項は、「対話者に対してした第1項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。」と規定している。したがって、商人である対話者の間において、承諾の期間を定めないでした申込みに対して対話が継続している間に契約の申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
(H28 予備 第28問 ア)
商人である対話者の間において、承諾の期間を定めないでした申込みに対して対話が継続している間に契約の申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
(正答) 〇
(解説)
平成29年改正前商法下では、旧商法507条は、商人間である対話者間における契約の申込みについて、「商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」と規定していた。
しかし、平成29年改正商法下では、旧商法507条が削除されたため、民法525条3項が適用される。同条3項は、「対話者に対してした第1項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。」と規定している。したがって、商人である対話者の間において、承諾の期間を定めないでした申込みに対して対話が継続している間に契約の申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
第508条
条文
① 商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
② 民法第524条の規定は、前項の場合について準用する。
過去問・解説
(H27 予備 第28問 ア)
商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、効力を失う。
第509条
条文
① 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。
② 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。
過去問・解説
(H18 司法 第52問 4)
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しないときは、その申込みを拒絶したものとみなされる。
(H25 司法 第52問 ウ)
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、遅滞なく諾否の通知を発することを怠ったときは、その商人は、その契約の申込みを承諾したものとみなされる。
(H30 予備 第28問 3)
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、これを怠ったときは、その商人は、当該契約の申込みを承諾したものとみなされる。
第510条
条文
商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りでない。
過去問・解説
(H26 司法 第54問 ウ)
商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときでも、平常取引をする者から申込みを受けたときでなければ、その商人は、その物品を保管する義務を負わない。
(H28 予備 第28問 エ)
商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、その物品を保管する必要はない。
(R6 予備 第28問 ウ)
甲社は、これまでに取引関係になかった乙社から売買の申込みを受けるとともにその目的物の引渡しを受けた場合において、その目的物と同種の目的物を第三者から継続的に買っており、 乙社との間で売買契約を締結する意思がないときは、乙社から引渡しを受けた目的物の価額にかかわらず、直ちにその目的物を廃棄することができる。
第511条
条文
① 数人の者がその1人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。
② 保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、又は保証が商行為であるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する。
過去問・解説
(H19 司法 第50問 イ)
A株式会社がB信用金庫の組合員である場合について、B信用金庫がA株式会社に対し事業資金を融資するために消費貸借契約を締結した場合において、B信用金庫に対するA株式会社の債務を商人でないC(自然人)が保証した場合には、当該保証は連帯保証となる。
(正答) 〇
(解説)
511条2項は、「保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき…は、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する。」と規定している。
会社法5条は、「会社…がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。」と規定しており、B信用金庫がA株式会社に対し事業資金を融資するために消費貸借契約を締結することは、「会社…がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為」として「商行為」に当たるから、「債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき」に当たる。
したがって、B信用金庫に対するA株式会社の債務を商人でないC(自然人)が保証した場合には、当該保証は連帯保証となる。
(H20 司法 第51問 ア)
商行為によって生じた債務に関し、当該債務を数人の者が負担する場合であっても、その債務が一人のために商行為となる行為によって負担したものであるときは、当該債務は、連帯債務とはならない。
(H27 予備 第28問 イ)
保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときでも、その債務は、各自が連帯して負担する。
(H29 予備 第28問 1)
相手方のためには商行為となる行為でなくても、数人の者がそのうちの1人のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。
第512条
条文
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
過去問・解説
(H23 予備 第28問 イ)
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、その他人に対し、相当な報酬を請求することができるとの規律は、当事者双方が商人である場合に限り適用される。
(H27 予備 第28問 ウ)
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、その他人が商人であるか否かにかかわらず、相当な報酬を請求することができる。
(H30 予備 第28問 4)
委託を受けた商人がその営業の範囲内において委託者のために行為をした場合には、委託者との間で報酬についての合意がないときであっても、その委託者に対し、相当な報酬を請求することができる。
第513条
条文
① 商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求することができる。
② 商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以後の法定利息を請求することができる。
過去問・解説
(H18 司法 第52問 5)
商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、当該商人は、当該他人に対して立替えの日以後の法定利率による利息を請求することができる。
(H20 司法 第51問 オ)
商行為によって生じた債務に関し、当該債務が商人間における金銭の消費貸借によって生じたものであるときは、貸主は、約定をしなくとも、当該債務につき、法定利率による利息を請求することができる。
(H23 予備 第28問 ウ)
金銭の消費貸借をしたときは、利息の約定がなくても、貸主が年6分の利率による利息を請求することができるとの規律は、当事者双方が商人である場合に限り適用される。
(正答) ✕
(解説)
民法589条1項は、「貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。」と規定している。これに対し、商法513条2項は、「商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以降の法定利息を請求することができる。」と規定している。そして、平成29年改正前商法下では、「商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年6分とする。」との規定が設けられていた。
しかし、平成29年改正商法下では、商事法定利率に関する旧商法514条が削除されているため、商行為によって生じた債務の法定利率は「年3%」である(民法404条2項)。
(H26 司法 第54問 イ)
商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その他人に対し、立替えの日以後の年6分の利率により算定した利息を請求することができる。
(正答) ✕
(解説)
民法589条1項は、「貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。」と規定している。これに対し、商法513条2項は、「商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以降の法定利息を請求することができる。」と規定している。そして、平成29年改正前商法下では、「商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年6分とする。」との規定が設けられていた。
しかし、平成29年改正商法下では、商事法定利率に関する旧商法514条が削除されているため、商行為によって生じた債務の法定利率は「年3%」である(民法404条2項)。
(H29 予備 第28問 2)
商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以後の法定利息を請求することができる。
旧514条
条文
商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年6分とする。
過去問・解説
(H19 司法 第46問 3)
会社法第429条第1項に基づく取締役の第三者に対する責任に関し、取締役の第三者に対する責任は会社法の定める法定責任であるから、その遅延損害金の利率は年6分である。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正前民法・商法下では、会社法429条1項に基づく取締役の第三者に対する責任について、商事法定利率を定めている旧商法514条を適用ないし準用して、その遅延損害金の利率は年6分であると解する余地があった(なお、最判平26.1.30は、会社法423条1項に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任について、旧商法514条の準用を否定し、その遅延損害金の利率を旧民法404条所定の年5%と解している。)。
しかし、平成29年改正民法・商法下では、商事法定利率を定める旧商法514条が削除されたため、会社法429条1項に基づく取締役の第三者に対する責任については、年3%の民事法定利率を定める改正民法404条2項が適用される。
第515条
条文
民法第349条の規定は、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、適用しない。
過去問・解説
(H23 予備 第28問 オ)
質権設定者は、設定行為において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させることを約することができるとの規律は、当事者双方が商人である場合に限り適用される。
(正答) ✕
(解説)
民法349条は、「質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。」として、契約による質物の処分を禁止している。
これに対し、商法515条は、「民法第349条の規定は、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、適用しない。」と規定している。したがって、「商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権」については、契約による質物の処分は禁止されない。
本肢は、民法349条の適用が除外される場合について、当事者双方が証人である場合に限定している点において、誤っている。
(H28 予備 第28問 オ)
商行為によって生じた債権を担保するために設定された質権の質権設定者は、債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させることを約することができる。
第516条
条文
商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない。
過去問・解説
(H20 司法 第51問 エ)
商行為によって生じた債務に関し、当該債務に係る債権が指図債権であっても、取引の性質又は当事者の意思表示によってその履行をすべき場所が定まらない限り、債権者の現在の営業所で履行しなければならない。
(正答) ✕
(解説)
商法516条は、「商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、…その他の債務の履行は債権者の現在の営業所…において、それぞれしなければならない。」と規定している。
もっとも、民法520条の8は、指図証券の弁済の場所については、「指図証券の弁済は、債務者の現在の住所においてしなければならない。」と規定している。したがって、指図証券の弁済の場所は、「債務者の現在の住所」である。
なお、旧商法516条2項は、「指図債権及び無記名債権の弁済は、債務者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)においてしなければならない。」と規定していたが、平成29年改正により削除された。
(H27 予備 第28問 エ)
商行為によって生じた債務に係る債権が指図債権である場合でも、その債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、その債務の履行は、債権者の現在の営業所においてしなければならない。
(正答) ✕
(解説)
商法516条は、「商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、…その他の債務の履行は債権者の現在の営業所…において、それぞれしなければならない。」と規定している。
もっとも、民法520条の8は、指図証券の弁済の場所については、「指図証券の弁済は、債務者の現在の住所においてしなければならない。」と規定している。したがって、指図証券の弁済の場所は、「債務者の現在の住所」である。
なお、旧商法516条2項は、「指図債権及び無記名債権の弁済は、債務者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)においてしなければならない。」と規定していたが、平成29年改正により削除された。
(R5 予備 第28問 5)
商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、不特定物の引渡しは、債務者の現在の営業所においてしなければならない。
(正答) ✕
(解説)
民法414条1項は、「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。」と規定している。
これに対し、商法516条は、「商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない。」と規定している。
したがって、商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、不特定物の引渡しは、債務者の現在の営業所ではなく、「債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)」においてしなければならない。
第521条
条文
商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。
過去問・解説
(H26 司法 第54問 オ)
写真の撮影を業とする商人がその営業の部類に属する取引によって商人でない顧客に対して債権を有し、その弁済期が到来している場合において、その商人がその顧客の物を占有しているときは、当該債権がその物に関して生じたものでなくても、その商人は、当該債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。
(H29 予備 第28問 3)
当事者の別段の意思表示がない限り、商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にある場合には、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物であれば、その物の占有取得後に債務者がその物の所有権を失ったときであっても、その物を留置することができる。
(正答) 〇
(解説)
521条本文は、「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。」と規定しているから、商事留置権が成立する客体は「債務者の所有する物又は有価証券」であることを要する。もっとも、客体が「債務者の所有する物又は有価証券」であることは、留置権の成立要件にとどまり、存続要件ではない。したがって、留置権の成立後に、債務者が客体である「物又は有価証券」の所有権等を失った場合であっても、留置権は消滅しない。そして、この場合、商人は、その留置権を新たに「物又は有価証券」の所有権等を取得した第三者に対しても対抗することができる(物権の絶対性)。
(R6 予備 第28問 イ)
甲社が乙社から買った目的物の代金をその弁済期になっても支払わない場合には、別段の意思表示がない限り、乙社は、甲社から修理のために預かっていた別の動産であって甲社が所有するものの返還を拒むことができる。
旧522条
条文
商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。
※平成29年改正により削除
過去問・解説
(H19 司法 第50問 ア)
A株式会社がB信用金庫の組合員である場合について、B信用金庫がA株式会社に対し事業資金を融資するために消費貸借契約を締結した場合においては、B信用金庫のA株式会社に対する元利金支払請求権の消滅時効期間は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から10年間である。
(正答) 〇
(解説)
平成29年改正前商法下では、旧522条本文は、「商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。」として、商事消滅時効を定めていた。
しかし、平成29年改正商法下では、商事消滅時効に関する規定が削除されたため、「商行為によって生じた債権」についても、消滅時効の一般規定である民法166条1項が適用される。民法166条1項は、債権の消滅時効期間について、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間」(1号)、「権利を行使することができる時から10年間」(2号)と規定している。
(H19 司法 第52問 オ)
判例によれば、満期が白地の約束手形が振り出された場合において、白地が補充されないまま補充権を行使し得べき時から3年が経過したときは、白地補充権は時効により消滅する。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正前商法下の判例(最判昭44.2.20)は、「満期白地の手形の補充権の消滅時効については、商法522条の規定が準用され、右補充権は、これを行使しうべきときから5年の経過によって、時効により消滅すると解すべき」との立場であった。
しかし、平成29年改正商法下では、商事消滅時効に関する規定が削除されたため、「商行為によって生じた債権」についても、消滅時効の一般規定である民法166条1項が適用される。
したがって、満期白地の手形の補充権の消滅時効期間は、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間」、「権利を行使することができる時から10年間」である。
(H20 司法 第51問 イ)
商行為によって生じた債務に関し、当該債務が附属的商行為によって生じたものであっても、債権者が5年間行使しないときは、当該債務に係る債権は、時効によって消滅する。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正前商法下では、旧522条本文は、「商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。」として、商事消滅時効を定めていた。
しかし、平成29年改正商法下では、商事消滅時効に関する規定が削除されたため、「商行為によって生じた債権」についても、消滅時効の一般規定である民法166条1項が適用される。民法166条1項は、債権の消滅時効期間について、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間」(1号)、「権利を行使することができる時から10年間」(2号)と規定している。