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実行の着手(詐欺罪) - 解答モード
詐欺罪の既遂時期 大判大正11年12月15日
概要
判例
判旨:「刑法第246条第1項ニ所謂財物ノ騙取トハ不法領得ノ目的ヲ以テ人ヲ欺罔シ有体物ノ所持即チ占有ヲ移付セシムルコトヲ意味スルモノトス
不動産ノ騙取ヲ目的トスル詐欺罪ノ成立ニハ人ヲ欺罔シテ其ノ所有権移転ニ関スル意思表示ヲ為サシメタルノミヲ以テ足レリトセス尚現実ニ之カ占有ヲ移転セシメ若ハ其ノ所有権取得ノ登記ヲ経ルコトヲ要スルモノトス
立木法ノ適用ヲ受ケサル立木ヲ騙取スル目的ヲ以テ売買名義ノ下ニ所有者ヲ欺罔シ之カ売渡契約ヲ為サシメタル場合ニ在テハ単ニ其ノ契約ヲ為サシメタルニ止ラス進テ之カ引渡ヲ受ケ若ハ他人ノ土地ニ於テ立木ヲ所有シ得ヘキ権利取得ノ登記ヲ経ルニ非サレハ其ノ詐欺罪ハ既遂ト為ラス」
過去問・解説
(H26 共通 第20問 ア)
甲は、知人のAをだまして、A所有の土地・建物(以下「本件不動産」という。)を時価よりも割安な価格で入手した上、他人に転売してもうけを得ようと考えた。そこで、甲は、Aに対し、実際にはそのような事実はないのに、「本件不動産は、現在は公表されていないが、大規模な地盤沈下のおそれのある地域にある。」と伝えた上、「公表される前に、俺が買ってやる。」と言った。Aは、元々、本件不動産を子供に相続させるつもりであり、他人に売り渡すつもりはなかったが、甲の言葉を信じ、低額でも処分しようと思い、某月1日、甲との間で、通常の取引価額の半額程度である2000万円で本件不動産を売却する旨の売買契約を締結した。そして、甲は、同月3日、本件不動産の自己への所有権移転登記を行うとともに、本件不動産の売買代金として、現金2000万円をAに支払い、同月5日、本件不動産の引渡しを受けた。甲には、本件不動産の自己への所有権移転登記が完了した時点で、詐欺既遂罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大11.12.15)は、不動産の詐欺の事案において、「不動産ノ騙取ヲ目的トスル詐欺罪ノ成立ニハ人ヲ欺罔シテ其ノ所有権移転ニ関スル意思表示ヲ為サシメタルノミヲ以テ足レリトセス尚現実ニ之カ占有ヲ移転セシメ若ハ其ノ所有権取得ノ登記ヲ経ルコトヲ要スルモノトス」として、不動産の騙取を目的とする詐欺罪の成立には人を騙取してその所有権移転に関する意思表示では足りず、現実に不動産が移転するか、所有権移転登記を得ることまで必要であることを示している。
甲は、本件不動産の自己への所有権移転登記を行うとともに、本件不動産の売買代金をAに支払い、本件不動産の引渡しを受けている。
したがって、1項詐欺罪が成立する。
(H28 共通 第16問 5)
甲は、乙所有の土地について、価格が暴落すると偽って、これを信じた乙との間で、時価の半額で同土地を買い受ける旨の売買契約を締結した。この場合、その売買契約が成立したことのみをもって、甲には詐欺既遂罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大11.12.15)は、不動産の詐欺の事案において、「不動産ノ騙取ヲ目的トスル詐欺罪ノ成立ニハ人ヲ欺罔シテ其ノ所有権移転ニ関スル意思表示ヲ為サシメタルノミヲ以テ足レリトセス尚現実ニ之カ占有ヲ移転セシメ若ハ其ノ所有権取得ノ登記ヲ経ルコトヲ要スルモノトス」として、不動産の騙取を目的とする詐欺罪の成立には人を騙取してその所有権移転に関する意思表示では足りず、現実に不動産が移転するか、所有権移転登記を得ることまで必要であることを示している。
乙所有の土地について、現実の占有の移転若しくは所有権移転登記が行われていないため、既遂に至っていない。
したがって、甲に1項詐欺既遂罪は成立しない。
詐欺罪の既遂時期 大判大正11年12月22日
概要
判例
判旨:「金銭ヲ騙取センカ為他人ニ対シ虚偽ノ貸金債権ヲ主張シテ支払ヲ請求シタルモ其ノ者ニ於テ錯誤ニ陥ラサリシトキハ刑法第246条第1項ニ規定スル詐欺ノ未遂罪ヲ構成シ請求ヲ受ケタル者カ錯誤ニ陥ラスシテ請求金額ヲ支払ヒタリトスルモ其ノ未遂罪ノ成立ニ消長ナキモノトス」
過去問・解説
(H24 共通 第6問 ウ)
甲は、無銭宿泊を企て、宿泊代金を支払う意思も能力もないのに、これらがあるように装い、民宿を営む乙に対し、宿泊を申し込んだところ、乙は、他の民宿から甲が無銭宿泊の常習者であることを聞いていたため、甲に宿泊代金支払の意思も能力もないことが分かったが、甲に憐憫の情を抱き、甲を宿泊させた。この場合、甲には、詐欺未遂罪が成立するにとどまる。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大11.12.22)は、「金銭ヲ騙取センカ為他人ニ対シ虚偽ノ貸金債権ヲ主張シテ支払ヲ請求シタルモ其ノ者ニ於テ錯誤ニ陥ラサリシトキハ刑法第246条第1項ニ規定スル詐欺ノ未遂罪ヲ構成シ請求ヲ受ケタル者カ錯誤ニ陥ラスシテ請求金額ヲ支払ヒタリトスルモ其ノ未遂罪ノ成立ニ消長ナキモノトス」として、欺罔行為によって相手が錯誤に陥らずに財物を交付した場合には、詐欺未遂罪が成立することを示している。
甲は、無銭宿泊を企て、宿泊代金を支払う意思も能力もないのに、これらがあるように装い、乙に対し、宿泊を申し込みを行っているところ、乙は、甲に宿泊代金の支払い能力が欠如していることを知りつつ、甲に憐憫の情を抱き、甲を宿泊させたのであるから、錯誤に陥らずに欺罔行為と因果関係なく宿泊させたにすぎない。
したがって、甲には、詐欺未遂罪が成立するにとどまる。
(H20 司法 第20問 5)
甲は、生活費に窮したため、返済する意思がないのに、知人の乙に、「故郷にいる自分の父親が亡くなった。故郷に帰るお金がないので貸してほしい。」旨のうそを言って金員の借入れを申し込んだところ、乙は、そのうそを見破り、甲に返済の意思がないことを察したが、憐憫の情から、甲に現金を手渡した。この場合、乙は錯誤に陥っていないので、甲には詐欺未遂罪が成立するにとどまる。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大11.12.22)は、「金銭ヲ騙取センカ為他人ニ対シ虚偽ノ貸金債権ヲ主張シテ支払ヲ請求シタルモ其ノ者ニ於テ錯誤ニ陥ラサリシトキハ刑法第246条第1項ニ規定スル詐欺ノ未遂罪ヲ構成シ請求ヲ受ケタル者カ錯誤ニ陥ラスシテ請求金額ヲ支払ヒタリトスルモ其ノ未遂罪ノ成立ニ消長ナキモノトス」として、欺罔行為によって相手が錯誤に陥らずに財物を交付した場合には、詐欺未遂罪が成立することを示している。
乙は、甲のうそを見破り、甲に返済の意思がないことを察しているから、錯誤に陥っていないといえ、欺罔行為と因果関係なく財産を受領したにすぎない。
したがって、甲には詐欺未遂罪が成立する。
(H22 司法 第11問 イ)
甲は、出資金名目で金をだまし取ろうと考え、乙に対し、架空の投資案件を持ちかけたところ、乙は、甲の話が嘘であることに気付いたものの、甲が金に困っているのに同情して現金を甲に渡した。甲に詐欺既遂罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大11.12.22)は、「金銭ヲ騙取センカ為他人ニ対シ虚偽ノ貸金債権ヲ主張シテ支払ヲ請求シタルモ其ノ者ニ於テ錯誤ニ陥ラサリシトキハ刑法第246条第1項ニ規定スル詐欺ノ未遂罪ヲ構成シ請求ヲ受ケタル者カ錯誤ニ陥ラスシテ請求金額ヲ支払ヒタリトスルモ其ノ未遂罪ノ成立ニ消長ナキモノトス」として、欺罔行為によって相手が錯誤に陥らずに財物を交付した場合には、詐欺未遂罪が成立することを示している。
乙は、甲の話が嘘であることに気付いたものの、甲が金に困っているのに同情して現金を甲に渡し、乙は錯誤に陥っておらず、欺罔行為と因果関係なく財産を受領したにすぎない。
したがって、甲には詐欺未遂罪が成立するのであって、甲に詐欺既遂罪は成立しない。
詐欺罪の成否(保険金未請求) 大判昭和7年6月15日
概要
判例
判旨:「保険金騙取ノ目的ヲ以テ家屋ニ放火シテ之ヲ焼燬シタルモ未タ保険会社ニ対シ保険金支払ノ請求ヲ為ササルトキハ詐欺ノ著手トナラス」
過去問・解説
(H23 共通 第10問 イ)
甲は、自己が居住する建物に付した火災保険の保険金を保険会社からだまし取る目的で同建物に放火したが、保険金を請求するに至らなかった。この場合、甲には詐欺未遂罪は成立しない。
(H24 共通 第6問 ア)
甲は、交通事故を装い保険会社から保険金をだまし取ろうと企て、自己の運転する自動車を道路脇の電柱に衝突させて自ら怪我をした。この場合、甲には、自動車を電柱に衝突させた時点で、詐欺未遂罪が成立する。
(H28 司法 第13問 オ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、詐欺罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい
甲は、交通事故を装って保険会社から保険金をだまし取ろうと考え、Aに依頼して、甲運転の自動車にA運転の自動車を衝突させ、警察官に交通事故を申告したが、Aが警察官から追及されて偽装事故であると認めたため、保険金を請求しなかった。
詐欺罪の既遂時期 大阪高判平成16年12月21日
概要
判例
判旨:「被告人らが本件預金口座に振込送金された詐取金を引き出すためには、更にA1本人に成りすますなどして銀行側を欺く必要があることは確かであるが、そうしたことは、既に同口座を開設し管理していた被告人らにとってさほど困難なことではないし(現に、上記詐取金は、後記のとおり、それが振込送金となった直後にそのほとんどが引き出されている。)、他に本件において、被告人らが本件預金口座から預金を引き出すことについて障害となるような事情のなかったことも明らかである。そうすると、やはり本件詐欺は、本件預金口座に詐取金が振込送金された時点で既遂に達したと解さざるを得ない…。」
過去問・解説
(H20 司法 第20問 4)
甲は、架空人である丙名義で預金口座を開設した上、乙に対し、「あなたの息子が交通事故を起こし、直ちに示談のお金が必要である。」とうそを言って、自ら通帳・印鑑を所持する上記口座に乙をして現金を振り込ませた。この場合、甲は、いまだ他人名義の口座に振込みを受けたにすぎないので、甲には詐欺未遂罪が成立するにとどまる。