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罪数関係(包括一罪) - 解答モード
傷害罪と器物損壊罪 東京地判平成7年1月31日
概要
判例
判旨:「眼鏡レンズの損壊は、顔面を手拳で殴打して傷害を負わせるという通常の行為態様による傷害に随伴するものと評価できること、傷害罪と器物損壊罪の保護法益及び法定刑の相違に加え、本件における結果も、傷害は加療約2週間を要する顔面挫創兼脳震盪症等であるのに対し、レンズ破損による被害額は1万円であることに照らすと、本件のような場合は検察官主張のような観念的競合の関係を認める必要はなく、重い傷害罪によって包括的に評価し(量刑にあたってレンズを破損させた点も考慮されることはもちろんである)、同罪の罰条を適用すれば足りると解すべきである。」
過去問・解説
(H23 司法 第6問 3)
甲は、眼鏡を掛けた乙の顔面を、眼鏡の上から拳で殴打し、眼鏡を損壊するとともに、乙に全治1週間を要する顔面打撲の傷害を負わせた。この場合、甲には傷害罪と器物損壊罪が成立し、両罪は併合罪となる。
窃取又は詐取した財物の返還を免れるための殺人 最一小決昭和61年11月18日
概要
判例
判旨:「被告人による拳銃発射行為は、Vを殺害して同人に対する本件覚せい剤の返還ないし買主が支払うべきものとされていたその代金の支払を免れるという財産上不法の利益を得るためになされたことが明らかであるから、右行為はいわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪に当たるというべきであり(暴力団抗争の関係も右行為の動機となっており、被告人についてはこちらの動機の方が強いと認められるが、このことは、右結論を左右するものではない。)、先行する本件覚せい剤取得行為がそれ自体としては、窃盗罪又は詐欺罪のいずれに当たるにせよ、前記事実関係にかんがみ、本件は、その罪と2項強盗殺人未遂罪のいわゆる包括一罪として重い後者の刑で処断すべきものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R4 司法 第17問 1)
甲は、Aから財物を詐取した上で当該財物の返還を免れるためにAを殺害することを計画し、計画どおりにAから財物を詐取し、その後、殺意をもってAの胸部をナイフで刺して殺害し、これにより、財物の返還を免れるという財産上不法の利益を得た。甲には、詐欺罪と強盗殺人罪が成立し、これらは包括一罪となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最決昭61.11.18)は、「先行する本件覚せい剤取得行為がそれ自体としては、窃盗罪又は詐欺罪のいずれに当たるにせよ、前記事実関係にかんがみ、本件は、その罪と2項強盗殺人未遂罪のいわゆる包括一罪として重い後者の刑で処断すべきものと解するのが相当である。」としている。
甲は、計画どおりにAから財物を詐取しているため、詐欺罪が成立し、殺意をもってAの胸部をナイフで刺して殺害し、これにより、財物の返還を免れるという財産上不法の利益を得たから強盗殺人罪が成立する。
財物と財物の返還を免れるという財産上不法の利益は実質同一であって、包括一罪として処理される。
したがって、甲には、詐欺罪と強盗殺人罪が成立し、これらは包括一罪となる。
反復的な暴行による複数の傷害結果 最一小決平成26年3月17日
概要
判例
判旨:「一連の暴行によって各被害者に傷害を負わせた事実は、いずれの事件も、約4か月間又は約1か月間という一定の期間内に、被告人が、被害者との上記のような人間関係を背景として、ある程度限定された場所で、共通の動機から繰り返し犯意を生じ、主として同態様の暴行を反復累行し、その結果、個別の機会の暴行と傷害の発生、拡大ないし悪化との対応関係を個々に特定することはできないものの、結局は1人の被害者の身体に一定の傷害を負わせたというものであり、そのような事情に鑑みると、それぞれ、その全体を一体のものと評価し、包括して一罪と解することができる。」
過去問・解説
(R4 司法 第17問 5)
甲は、対立する不良グループのメンバーA及びBを襲撃することを計画し、路上で発見したAをバットで1回殴打した直後、そばにいたBを同バットで1回殴打し、両名に傷害を負わせた。甲には、2個の傷害罪が成立し、これらは包括一罪となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平26.3.17)は、「同一被害者に対し約4か月間又は約1か月間という一定の期間内に反復累行された一連の暴行によって種々の傷害を負わせた事実については、その暴行が、被告人と被害者との一定の人間関係を背景として、共通の動機から繰り返し犯意を生じて行われたものであることなどの事情に鑑みると、全体を一体のものと評価し、包括して一罪と解することができる。」としている。
甲は、異なる機会に、異なる人物であるA、Bに対して暴行を行っているのであるから、法益侵害の一体性を欠き、全体を一体として評価することはできない。
したがって、甲には、2個の傷害罪が成立し、これらは併合罪となる。
街頭募金詐欺 最二小決平成22年3月17日
概要
判例
判旨:「犯行は、偽装の募金活動を主宰する被告人が、約2か月間にわたり、アルバイトとして雇用した事情を知らない多数の募金活動員を関西一円の通行人の多い場所に配置し、募金の趣旨を立看板で掲示させるとともに、募金箱を持たせて寄付を勧誘する発言を連呼させ、これに応じた通行人から現金をだまし取ったというものであって、個々の被害者ごとに区別して個別に欺もう行為を行うものではなく、不特定多数の通行人一般に対し、一括して、適宜の日、場所において、連日のように、同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであり、かつ、被告人の1個の意思、企図に基づき継続して行われた活動であったと認められる。加えて、このような街頭募金においては、これに応じる被害者は、比較的少額の現金を募金箱に投入すると、そのまま名前も告げずに立ち去ってしまうのが通例であり、募金箱に投入された現金は直ちに他の被害者が投入したものと混和して特定性を失うものであって、個々に区別して受領するものではない。以上のような本件街頭募金詐欺の特徴にかんがみると、これを一体のものと評価して包括一罪と解した原判断は是認できる。」
過去問・解説
(H24 予備 第8問 イ)
連日、駅前で募金箱を持ち、真実は募金を難病の子供のために使うつもりはなく、自己のために費消するつもりであるのにそれを隠して、「難病の子供を救うため、募金をお願いします。」と連呼し、多数回にわたり、不特定多数の通行人からそれぞれ少額の金員をだまし取った。これらは包括一罪となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平22.3.17)は、本肢と同種の事案において、「不特定多数の通行人一般に対し、一括して、適宜の日、場所において、連日のように、同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであり、かつ、被告人の1個の意思、企図に基づき継続して行われた活動であったと認められる。」とした上で、「このような街頭募金においては、これに応じる被害者は、比較的少額の現金を募金箱に投入すると、そのまま名前も告げずに立ち去ってしまうのが通例であり、募金箱に投入された現金は直ちに他の被害者が投入したものと混和して特定性を失うものであって、個々に区別して受領するものではない。」として、募金詐欺が詐欺罪の包括一罪となるとしている。
(R6 司法 第7問 4)
甲は、真実は募金を災害復興支援のために使うつもりはなく、自己のために費消するつもりであるのにこれを隠して、事情を知らない多数のアルバイトの募金活動員に、連日、駅前で募金箱を持たせ、「災害復興支援のために募金をお願いします。」と連呼させ、多数回にわたり、不特定多数の通行人からそれぞれ少額の現金を募金箱に投入させてだまし取った。この場合、甲に詐欺罪の包括一罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平22.3.17)は、本肢と同種の事案において、「不特定多数の通行人一般に対し、一括して、適宜の日、場所において、連日のように、同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであり、かつ、被告人の1個の意思、企図に基づき継続して行われた活動であったと認められる。」とした上で、「このような街頭募金においては、これに応じる被害者は、比較的少額の現金を募金箱に投入すると、そのまま名前も告げずに立ち去ってしまうのが通例であり、募金箱に投入された現金は直ちに他の被害者が投入したものと混和して特定性を失うものであって、個々に区別して受領するものではない。」として、募金詐欺が詐欺罪の包括一罪となるとしている。甲は、多数回にわたり、不特定多数の通行人からそれぞれ少額の現金を募金箱に投入させてだまし取っている。
したがって、甲に詐欺罪の包括一罪が成立する。
1項恐喝罪と2項恐喝罪 大判明治45年4月15日
概要
判例
判旨:「刑法第249条第1項及ヒ第2項ハ同一罪質ニシテ又同一罪名ヲ成スモノナレハ同一ノ被害者ニ対スル1箇ノ行為ニシテ同時ニ同条第2項及ヒ第1項ニ触ルル場合ニハ単ニ1箇ノ罪名ニ触ルル恐喝罪ヲ構成スルモノトス」
過去問・解説
(R1 司法 第7問 1)
甲は、乙を恐喝して乙から財物の交付を受けるとともに財産上の利益を得た。甲には、包括して1個の恐喝罪が成立する。
複数の放火行為 大判明治45年4月29日
概要
判例
判旨:「連続犯ハ放火罪ノ如キ個人ノ財産的法益ヲ侵害スルニ止ラス主トシテ静謐ナル公共的法益ノ侵害ヲ以テ其本質ト為ス犯罪ト雖モ苟モ同一ノ意思発動ニ因リテ其行為ヲ反覆実行スルニ於テハ当然該犯罪ヲ構成スヘキモノトス」
過去問・解説
(H21 司法 第11問 3)
甲は、乙が住居に使用する同人所有の家屋に放火した後、さらに、同家屋に隣接する丙所有の物置を燃やそうと思い付き、同物置に放火し、同家屋及び同物置を同時に焼損した。この場合、甲は複数の放火行為を行い、所有者の異なる複数の建造物を焼損しているのであるから、現住建造物等放火罪及び非現住建造物等放火罪の各既遂罪が成立し、両者は併合罪となる。
(H29 予備 第8問 5)
甲は、乙が居住する乙所有の家屋を燃やそうと考え、同家屋の壁際に駐車されていた乙所有の自動車に放火して焼損し、同家屋への延焼の危険を生じさせたが、その火は通行人により消し止められ、同家屋に燃え移らなかった。この場合、甲には、建造物等以外放火罪のみが成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大判明45.4.29)は、「連続犯ハ放火罪ノ如キ個人ノ財産的法益ヲ侵害スルニ止ラス主トシテ静謐ナル公共的法益ノ侵害ヲ以テ其本質ト為ス犯罪ト雖モ苟モ同一ノ意思発動ニ因リテ其行為ヲ反覆実行スルニ於テハ当然該犯罪ヲ構成スヘキモノトス」として、放火行為を近接した日時場所で連続して行った場合に全体を一罪とすることを示している。
現住建造物等放火罪の故意で110条の「前2条に規定する物以外の物」に放火した場合、現住建造物等放火罪の未遂罪が成立する。
甲は、乙が居住する乙所有の家屋を燃やそうと考え同家屋の壁際に駐車されていた乙所有の自動車に放火しているから、現住建造物等放火罪の故意で110条の「前2条に規定する物以外の物」に放火し、これを焼損させ同家屋への延焼の危険を生じさせたといえる。
したがって、甲には、現住建造物等放火罪の未遂罪が成立する。
詐欺罪と偽造通貨行使罪 大判明治43年6月30日
概要
判例
判旨:「偽造ノ通貨ヲ収得シテ之ヲ行使シタル所為ハ2箇ノ犯罪ヲ構成ス
偽造銀行券ヲ行使シテ財物ヲ不正ニ領得シタルトキハ財物領得ノ行為ハ銀行券行使ノ所為中ニ包含セラレ別ニ犯罪ヲ構成スルモノニ非ス」
過去問・解説
(H19 司法 第14問 ア)
組み合わせとして正しいものを選びなさい。
甲は、乙の経営する商店において偽造の1万円札を使用しようと考え、同店において、情を知らない乙に対し、価格1万円の商品の購入を申し込み、代金として偽造の1万円札を渡して同商品を得た。
a. 詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し、両罪は観念的競合となる。
b. 詐欺罪が成立し、偽造通貨行使罪は詐欺罪に吸収される。
c. 偽造通貨行使罪が成立し、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収される。
(H23 司法 第1問 1)
甲は、乙から商品を購入する際、偽造通貨を真正な通貨のように装って乙に代金として交付した。甲には詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し、両罪は観念的競合となる。
(H26 共通 第6問 4)
偽造通貨又は偽造有価証券を行使して相手から金品をだまし取った場合、詐欺罪は偽造通貨行使罪には吸収されるが、詐欺罪と偽造有価証券行使罪とは牽連犯となる。
(H28 司法 第7問 1)
甲は、偽造された1万円札を使って価格1万円の商品をだまし取ろうと考え、事情を知らない商店の店員Aに対し、同商品の購入を申し込み、代金として同1万円札を渡して、Aから同商品の交付を受けた。甲には、詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し、これらは観念的競合となる。
(H29 共通 第20問 2)
【事例】
甲は、ホテルの部屋で乙と会い、乙に対し、100万円相当の覚せい剤(以下「本件覚せい剤」という。)の代金として、偽造した1万円札100枚を渡した。乙は、甲から渡された1万円札が偽札であることに気付かずに、甲に対し、本件覚せい剤を渡し、甲は、これを持って同部屋を出た。
【記述】
甲には詐欺罪が成立し、偽造通貨行使罪は詐欺罪に吸収される。
(R5 司法 第5問 イ)
甲は、行使の目的で1万円札を偽造し、Aが経営する商店において、事情を知らないAに対し、1万円の商品の購入を申し込み、その代金として偽造の1万円札をAに手渡して同商品の交付を受けた。この場合、甲には通貨偽造罪、偽造通貨行使罪及び詐欺罪が成立し、これらは牽連犯となる。