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横領の罪(実行行為) - 解答モード

横領罪の不法領得の意思 大判大正2年12月16日

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概要
公務員が、自己の保管する公文書を市役所以外に持ち出してこれを隠匿した行為は、自己領得の意思を外形に表示するものであるから、その行為の終局の目的が何かを問わず横領罪が成立する。
判例
事案:市助役(市長の補助人)が、他人と共謀して自己の保管する公文書を市役所以外に持ち出してこれを隠匿した事案において、不法領得の意思が認められるか問題となった。

判旨:「所論市立小學校ノ工事設計ニ關スル青色圖面ヲ以テ市助役タル相被告捨吉ノ保管ニ屬スルモノナリト判定シ而シテ右事實ヲ認メタル證據理由ヲ明示セサルモノトスルモ公文書タル前掲圖面カ市助役ノ保管ニ屬スル事實ハ既ニ説示セル如ク法令上明白ニシテ固ヨリ證明ヲ要セサルヲ以テ原判決ハ此點ニ關シテ何等違法アルモノニアラス而シテ右圖面カ相被告捨吉ノ職務上保管ニ係ル以上ハ原判決所掲各證憑ニ依リテ認メ得ル如ク被告安等カ右相被告捨吉ト之ヲ横領スルコトヲ共謀實行シタル場合ニ於テハ被告安等ハ業務上占有者タル身分ヲ有セサルモ刑法第65條第1項ニ依リ同法第253條ノ業務上横領罪ノ正犯タル罪責ヲ負フハ當然ニシテ唯同法第65條第2項ニ依リ業務上占有者タル身分ナキ被告安等ハ輕キ同法第252條ノ刑ヲ科セラルルニ過キサルモノトス
 …横領罪ハ自己ノ占有内ニ在ル他人ノ物ニ對シテ自己領得ノ意思實行アルニ由リテ成立スルヲ以テ苟モ同罪ノ目的タル物ノ所有者ヲシテ其經濟的利益ヲ喪失セシメ因リテ自己ニ其經濟的利益ヲ收得スル如キ行爲アレハ自己領得ノ意思實行アリタルモノト謂フヘク横領罪ヲ以テ該行爲ヲ論スルハ相當ナリ原判決ノ認定セル事實ニ據レハ被告捨吉等ハ共謀シテ捨吉ノ市助役トシテ保管セル公文書ヲ相被告安ヲシテ市役所以外ニ帶出シテ之ヲ隱匿セシメタル者ニシテ右隱匿ノ行爲ハ所有者タル市ヲシテ其公文書ヲ保存使用スルノ利益ヲ喪失セシメ被告等ニ於テ自由ニ之ヲ處分シ得ヘキ状態ニ措キタルモノ即チ自己領得ノ意思ヲ外形ニ表示シタルモノニ外ナラサレハ其行爲ノ終局ノ目的如何ヲ問ハス被告等ノ行爲ヲ以テ横領罪ニ問擬シタル原判決ハ相當ニシテ本論旨ハ理由ナシ」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H29 司法 第8問 イ)
A市建設部長である甲は、不正工事の発覚を恐れ自宅に隠匿する目的で、自己が業務上保管している公文書である市立小学校の設計書を市役所外に持ち出した。この場合、甲に不法領得の意思は認められず、業務上横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.12.7)は、本肢と同種の事案において、「市助役トシテ保管セル公文書ヲ相被告安ヲシテ市役所以外ニ帶出シテ之ヲ隱匿セシメタル者ニシテ右隱匿ノ行爲ハ所有者タル市ヲシテ其公文書ヲ保存使用スルノ利益ヲ喪失セシメ被告等ニ於テ自由ニ之ヲ處分シ得ヘキ状態ニ措キタルモノ即チ自己領得ノ意思ヲ外形ニ表示シタルモノニ外ナラサレハ其行爲ノ終局ノ目的如何ヲ問ハス被告等ノ行爲ヲ以テ横領罪ニ問擬シタル原判決ハ相當」として、自己の保管する文書を市役所以外に持ち出し、隠匿する行為は、不法領得の意思の外部的発現であるとして、目的を問わずに横領罪となることを示している。
甲は、自己が業務上保管している公文書である市立小学校の設計書を市役所外に持ち出しており、最終的な目的が不正工事の発覚を恐れ自宅に隠匿する目的であっても、甲に業務上横領罪が成立する。

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第三者の利益を図る目的の下、業務上横領罪が成立するか(R6) 大判昭和11年12月24日

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概要
第三者の利益を図る目的であったとしても背任罪は成立する。
判例
事案:業務上横領及び背任の事案において、247条における背任の目的の内容が問題となった。

判旨:「他人ノ為事務ヲ処理スル者カ本人ノ損害ニ帰スヘキコトヲ認識シナカラ自己若クハ第三者ノ利益ヲ図リ其ノ任務ニ背キタル行為ヲ為シタル以上ハ刑法第247条ニ所謂背任ノ目的アル場合ニ該当スルモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(R6 司法 第6問 5)
A村の村長である甲は、A村に住む給与所得者の利益を図る目的で、同給与所得者に対する村民税の徴収につき、A村の条例に何ら規定がなく法令上の根拠がないのに、同給与所得者の収入金額に対し一律に過少に税額を算定して徴収した。この場合、上記給与所得者の利益を図る目的であったとしても、甲にはA村に対する背任罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭11.12.24)は、「他人ノ為事務ヲ処理スル者カ本人ノ損害ニ帰スヘキコトヲ認識シナカラ自己若クハ第三者ノ利益ヲ図リ其ノ任務ニ背キタル行為ヲ為シタル以上ハ刑法第247条ニ所謂背任ノ目的アル場合ニ該当スルモノトス」として、第三者の利益を図る場合にも背任罪が成立し得ることを示している。
したがって、甲が、第三者であるA村に住む給与所得者の利益を図る目的であったとしても、甲にはA村に対する背任罪が成立する。

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横領罪における不法領得の意思 最三小判昭和24年3月8日

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概要
横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいうのであって、必ずしも占有者が自己の利益取得を意図することを必要とするものではない。
判例
事案:居村の農業会長が、各農家が農業会に寄託し政府への売渡を委託した供出米を保管中、米穀と魚粕とを交換するため、右保管米を組合外2人に宛て送付して領得したという事案において、不法領得の意思が認められるかが問題となった。

判旨:「横領罪の成立に必要な不法領得の意志とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志をいうのであって、必ずしも占有者が自己の利益取得を意図することを必要とするものではなく、又占有者において不法に処分したものを後日に補填する意志が行為当時にあったからとて横領罪の成立を妨げるものでもない。本件につき原審の確定した事実によると、被告人は居村の農業会長として、村内の各農家が食糧管理法及び同法に基ずく命令の定めるところによって政府に売渡すべき米穀すなわち供出米を農業会に寄託し政府への売渡を委託したので、右供出米を保管中、米穀と魚粕とを交換するため、右保管米をA組合外2者に宛て送付して横領したというのである。農業会は各農家から寄託を受けた供出米については、政府への売渡手続を終った後、政府の指図によって出庫するまでの間は、これを保管する任務を有するのであるから、農業会長がほしいままに他にこれを処分するが如きことは、固より法の許さないところである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R2 共通 第2問 4)
甲は、乙から某日までに製茶を買い付けてほしい旨の依頼を受け、その買付資金として現金を預かっていたところ、その現金を確実に補填するあてがなかったにもかかわらず、後日補填するつもりで自己の遊興費に費消した。この場合、甲がたまたま補填することができ、約定どおりに製茶の買い付けを行ったとしても、甲には、横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.3.8)は、本肢と同種の事案において、「横領罪の成立に必要な不法領得の意志とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志をいうのであって、必ずしも占有者が自己の利益取得を意図することを必要とするものではなく、又占有者において不法に処分したものを後日に補填する意志が行為当時にあったからとて横領罪の成立を妨げるものでもない。」としている。
自己の遊興費に費消している以上、甲たまたま補填することができたとしても、甲には、横領罪が成立する。

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横領罪の成否 最三小決昭和55年7月15日

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概要
自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた自動車を金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した行為は横領罪に当たる。
判例
事案:自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた自動車を金融業者に対し自己の借入金の担保として提供したという事案において、横領罪の成否が問題となった。

判旨:「自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた3台の貨物自動車を、右会社に無断で、金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した被告人の本件各所為が、横領罪に該当するとした原判断は相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第2問 イ)
甲は、所有権留保の約定付き割賦売買契約に基づき24回の月賦払いで、自動車販売会社から自動車を購入し、同自動車の引渡しを受けたが、3回分を支払った時点で、自己の借金の担保として、同自動車を金融業者に提供した。甲に横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.7.15)は、本肢と同種の事案において、「貨物自動車を、右会社に無断で、金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した被告人の本件各所為が、横領罪に該当する…。」としている。
したがって、3回分を支払った時点で、無断で自己の借金の担保として自動車を金融業者に提供した行為について、甲に横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R3 予備 第8問 1)
所有権留保の約定付き割賦売買契約に基づき24回の均等分割払いで、自動車販売会社から自動車を購入した者が、同車の引渡しを受け、3回分の支払を済ませた時点で、同車の売却代金を自己の生活費として費消するため、同社に無断で、第三者に同車を売却し、これを引き渡した場合、当該行為は、実質的には他人の所有権を侵害する行為ではないから、横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.7.15)は、本肢と同種の事案において、「貨物自動車を、右会社に無断で、金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した被告人の本件各所為が、横領罪に該当する…。」としている。
したがって、3回分を支払った時点で、売却代金を自己の生活費として費消するため無断で自動車を売却した行為について、横領罪が成立する。

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業務上横領罪の不法領得の意思 最二小決平成13年11月5日

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概要
株式会社の取締役は、同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。この場合、会社の不利益を回避する意図を有していたとしても、当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので、自己の弱みを隠す意図をも有していたなど、専ら会社のためにしたとは認められないときは、業務上横領罪が成立する。
判例
事案:株式の買占めによる経営権の取得を阻止するための工作を依頼し、その工作資金及び報酬等にAの資金を流用しようと企て、支出権限がないのに、業務上保管中のAの現金合計8億9500万円をFらに交付した事案において、横領罪における不法領得の意思を認めることができるかが問題となった。

判旨:「当時、Aとしては、乗っ取り問題が長期化すると、同社のイメージや信用が低下し、官公庁からの受注が減少したり、社員が流出するなどの損害が懸念されており、被告人らがこうした不利益を回避する意図をも有していたことは、第一審判決が認定し、原判決も否定しないところである。しかし、原判決も認定するように、本件交付は、それ自体高額なものであった上、もしそれによって株式買取りが実現すれば、Fらに支払うべき経費及び報酬の総額は25億5000万円、これを含む買取価格の総額は595億円という高額に上り(当時のAの経常利益は、1事業年度で20億円から30億円程度であった。)、Aにとって重大な経済的負担を伴うものであった。しかも、それは違法行為を目的とするものとされるおそれもあったのであるから、会社のためにこのような金員の交付をする者としては、通常、交付先の素性や背景等を慎重に調査し、各交付に際しても、提案された工作の具体的内容と資金の必要性、成功の見込み等について可能な限り確認し、事後においても、資金の使途やその効果等につき納得し得る報告を求めるはずのものである。しかるに、記録によっても、被告人がそのような調査等をした形跡はほとんどうかがうことができず、また、それをすることができなかったことについての合理的な理由も見いだすことができない。…上記の事情をも考慮すれば、本件交付における被告人の意図は専らAのためにするところにはなかったと判断して、本件交付につき被告人の不法領得の意思を認めた原判決の結論は、正当として是認することができる。
 …当該行為ないしその目的とするところが違法であるなどの理由から委託者たる会社として行い得ないものであることは、行為者の不法領得の意思を推認させる1つの事情とはなり得る。しかし、行為の客観的性質の問題と行為者の主観の問題は、本来、別異のものであって、たとえ商法その他の法令に違反する行為であっても、行為者の主観において、それを専ら会社のためにするとの意識の下に行うことは、あり得ないことではない。したがって、その行為が商法その他の法令に違反するという一事から、直ちに行為者の不法領得の意思を認めることはできないというべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H25 共通 第18問 4)
法人の金員を管理する者が、同法人の金員を支出した場合、同支出が商法その他関係法令に照らして違法であっても、横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある。

(正答)

(解説)
判例(最決平13.11.5)は、業務上横領の事案において、「行為の客観的性質の問題と行為者の主観の問題は、本来、別異のものであって、たとえ商法その他の法令に違反する行為であっても、行為者の主観において、それを専ら会社のためにするとの意識の下に行うことは、あり得ないことではない。したがって、その行為が商法その他の法令に違反するという一事から、直ちに行為者の不法領得の意思を認めることはできない…。」としている。


全体の正答率 : 100%

(R2 共通 第2問 3)
株式会社の取締役経理部長甲は、同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。この場合、甲が、会社の不利益を回避する意図を有していたとしても、当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので、甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど、専ら会社のためにしたとは認められないときは、甲には、業務上横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平13.11.5)は、本肢と同種の事案において、「本件交付における被告人の意図は専らAのためにするところにはなかったと判断して、本件交付につき被告人の不法領得の意思を認めた原判決の結論は、正当として是認することができる。」として、被告人の意図は専ら会社のためにするところにはなかったことを前提として、業務上横領罪の成立を認めている。
したがって、甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど、専ら会社のためにしたとは認められないときは、甲には、業務上横領罪が成立する。

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