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放火及び失火の罪 - 解答モード

「人が住居に使用する…建造物」の意義 大判大正2年12月24日

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概要
現住建造物放火罪の「人が住居に使用する…建造物」とは現に人の起臥寝食の場所として日常使用されている建造物をいうものであって昼夜間断なく人の現在する現在することを必要としない。
判例
事案:学校に放火した事案において、「人が住居に使用する…建造物」の意義が問題となった。

判旨:「刑法第108条ニ所謂現ニ人ノ住居ニ使用スル建造物トハ現ニ人ノ起臥寝食ノ場所トシテ日常使用セラルル建造物ヲ謂フモノトス
 校舎ノ一室ヲ宿直室ニ充テ宿直員ヲシテ夜間宿泊セシムルトキハ其校舎ハ現ニ宿直員ノ起臥寝食ノ場所トシテ日常使用セラルルモノニシテ現ニ人ノ住居ニ使用スル建造物ナリトス」
過去問・解説

(H23 司法 第9問 4)
次の【事例】における甲の罪責に関する【記述】を判例の立場に従って検討しなさい(ただし、事例において、公共の危険は発生したものとする。)。
【事例】
 甲は、乙が所有し単身で居住している木造家屋の玄関前において、同所に駐車中の乙所有の自動二輪車の車体にガソリンをまいた上、新聞紙にライターで点火し、これを同車に投げ付け、同車を炎上させたところ、火が上記家屋に燃え移って全焼した。
【記述】
火が家屋に燃え移ること及び同家屋に乙が居住していることを甲が認識・認容していた場合において、現実には同家屋内に乙がいたのに、乙は外出中で同家屋内には誰もいないものと甲が誤信していたときは、現住建造物等放火罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大2.12.24)は、「刑法第108条ニ所謂現ニ人ノ住居ニ使用スル建造物トハ現ニ人ノ起臥寝食ノ場所トシテ日常使用セラルル建造物ヲ謂フモノトス」として、108条にいう建造物とは、人の起臥寝食の場所として日常使用されている建造物をいうことを示している。
甲は、同家屋に乙が居住していることを認識・認容していたから、乙は外出中で同家屋内には誰もいないものと甲が誤信していたとしても、現に人の起臥寝食の場所として日常使用されている建造物であることに対する認識・認容が認められ、故意も認められる。
したがって、甲に現住建造物放火罪が成立する。


(H30 司法 第16問 イ)
甲は、競売手続を妨害する目的で、人が住んでいるように見せ掛けるため、空き屋であった家屋に家財道具を持ち込むなどして住居として使用可能な状態にした上、自己が経営する会社の従業員5名を約1か月半前から10数回にわたり交替で泊まり込ませていたところ、同従業員らが不在にしている隙に、同家屋に放火して全焼させた。甲には現住建造物等放火罪(第108条)が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大2.12.24)は、「刑法第108条ニ所謂現ニ人ノ住居ニ使用スル建造物トハ現ニ人ノ起臥寝食ノ場所トシテ日常使用セラルル建造物ヲ謂フモノトス」として、108条にいう建造物とは、人の起臥寝食の場所として日常使用されている建造物をいうことを示している。
甲は、自己が経営する会社の従業員を交替で泊まり込ませていたから、空き屋であった家屋が現に人の起臥寝食の場所として日常使用されている建造物であることに対する認識・認容が認められる。
したがって、甲に現住建造物放火罪が成立する。

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「建造物」の意義 大判大正13年5月31日

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概要
非現住建造物放火罪の「建造物」とは家屋その他これに類似する工作物であって土地に定着し人の起居出入に適する構造を有するものをいう。
判例
事案:放火の事案において、非現住建造物放火罪の「建造物」の意義が問題となった。

要旨:刑法第百九条第一項ニ所謂建造物トハ家屋其ノ他之ニ類似スル工作物ニシテ土地ニ定着シ人ノ起居出入ニ適スル構造ヲ有スルモノヲ云フ
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説

(H25 司法 第14問 ウ)
「建造物」とは、家屋その他これに類する工作物であって、土地に定着し、人の起居出入に適する構造を有するものをいう。

(正答)

(解説)
判例(大判大13.5.31)は、109条1項における建造物について、家屋その他これに類似する工作物であって、土地に定着し人の起居出入に適する構造を有するものをいうことを示している。


(R1 共通 第8問 1)
「建造物」とは、家屋その他これに類する工作物であって、土地に定着し、人の起居出入りに適する構造を有するものをいう。

(正答)

(解説)
判例(大判大13.5.31)は、109条1項における建造物について、家屋その他これに類似する工作物であって、土地に定着し人の起居出入に適する構造を有するものをいうことを示している。

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一部の部屋に人が現住する建造物に放火した場合の現住建造物等放火罪の成否 最二小判昭和24年2月22日

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概要
劇場には、人が寝泊りしていることを被告人が知っていたこと、及び、放火の結果、既に独立燃焼の程度に達する焼燬のあったことも明らかであるから、現住建造物放火罪の既遂罪が成立する。
判例
事案:一部の部屋に人が現住する建造物に放火した事案において、現住建造物等放火罪が成立するかが問題となった。

判旨:「本件において、被告人が火を放った所論便所は、劇場建物の東側に接着するものであることは、原判決の確定するところであり、原判決の挙示する証拠、殊に強制処分における判事の検証調書の記載、同調書添付の図面によれば、右便所は右劇場に接着して建設ぜられ、右劇場の一部をなすものであることがわかる。しかして、被告人が本件犯行にあたり、右便所を焼燬する意思のあったことは、原判決挙示の証拠上明瞭であるから、これにもとずいて、原判決が、被告人は本件劇場に放火しようと考えた旨判示したのは、相当である。また、右劇場には、人が寝泊りしていることを被告人が知っていたこと、及び、放火の結果、既に独立燃焼の程度に達する焼燬のあったことも、右証拠に照してあきらかであるから、原判決が、被告人の右の所為に対して、刑法108条の既遂罪をもって、問擬したのは正当であって、この点を非難する論旨は理由がない。」
過去問・解説

(R2 共通 第14問 4)
甲が、一部の部屋のみが現に住居に使用されている木造の集合住宅の空き部屋に放火し、同室のみを焼損させた場合、甲には、現住建造物等放火罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.2.22)は、本肢と同種の事案において、「劇場には、人が寝泊りしていることを被告人が知っていたこと、及び、放火の結果、既に独立燃焼の程度に達する焼燬のあったことも、…あきらかであるから、原判決が、被告人の右の所為に対して、刑法108条の既遂罪をもって、問擬したのは正当…。」としている。
甲は、一部の部屋のみが現に住居に使用されている木造の集合住宅の空き部屋に放火しているが、外見上物理的に一体となっている建造物の空き部屋に放火したとしても、その一部が現に住居に使用されているから、「建造物」に該当する。
したがって、甲には、現住建造物等放火罪が成立する。

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家屋の従物と「建造物」の関係 最一小判昭和25年12月14日

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概要
家屋の従物が「建造物」たる家屋の一部を構成するものと認めるには、更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする。
判例
事案:布団と畳を焼損した事案において、建具その他家屋の従物が「建造物」たる家屋の一部を構成するかが問題となった。

判旨:「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とするものである。従って、判示布団は勿論判示畳のごときは未だ家屋と一体となってこれを構成する建造物の一部といえないこと多言を要しないから、原判決の前示判示は、建造物の放火既遂の犯罪事実を認定判示したものではなく、その放火未遂の認定判示であるといわなければならない。」
過去問・解説

(H18 司法 第19問 エ)
甲は、宿泊していたホテルの部屋に放火しようと考え、窓のカーテンに火をつけたが、カーテンを焼損した時点で、従業員に消し止められた。甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が火をつけたカーテンは、毀損しなければ取り外せないとはいえないことから、建造物の一部には当たらない。
したがって、甲に現住建造物等放火既遂罪は成立しない。


(H21 司法 第11問 2)
甲は、乙が住居に使用する同人所有の家屋を燃やそうと考え、火の付いた新聞紙を同家屋内のふすまに近づけ、新聞紙の火をふすまに燃え移らせてこれを燃焼させた。この場合、火が媒介物である新聞紙を離れてふすまが独立に燃焼するに至ったのであるから、この段階で、現住建造物等放火罪の既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が火のついた新聞紙によって焼損させたふすまは、毀損しなければ取り外せないとはいえないことから、建造物の一部には当たらない。
したがって、甲に現住建造物等放火既遂罪は成立しない。


(H24 共通 第17問 2)
甲は、周囲に他の住宅のない場所に空家を所有する乙から、同家屋に付された火災保険金をだまし取る計画を持ちかけられ、これに応じることとし、同家屋に立て掛けてあった薪に灯油をかけて火をつけたところ、火は同家屋の取り外し可能な雨戸に燃え移ったが、たまたま降り出した激しい雨によって鎮火した。甲には他人所有非現住建造物等放火未遂罪が成立するにとどまる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が火をつけた薪から燃え移らせた雨戸はら毀損しなければ取り外せないとはいえないことから、建造物の一部には当たらない。
また、本件家屋は、保険に付したものであることから、109条1項の客体となる(115条)。
したがって、甲には、他人所有非現住建造物等放火未遂罪が成立する。


(H25 司法 第14問 エ)
「建造物」には、家屋の和室に敷かれている畳も含まれる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
畳は、毀損しなければ取り外せないとはいえないことから、「建造物」には含まれない。


(H28 司法 第13問 ウ)
甲は、Aと同居している自宅を燃やそうと考え、自宅の和室に新聞紙が入った段ボール箱を置き、同新聞紙にライターで点火したが、その直後に帰宅したAが燃えている同段ボール箱を発見して消火したため、同段ボール箱の直下の畳だけが焼損した。甲に現住建造物等放火罪の未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が焼損させた畳はら毀損しなければ取り外せないとはいえないことから、建造物の一部には当たらず、これらを焼損したのみでは、「建造物」の焼損とはいえない。
したがって、甲に現住建造物等放火未遂罪が成立する。


(H30 司法 第16問 オ)
甲は、乙が住居に使用する家屋を燃やそうと考え、同家屋の6畳和室に敷かれた布団に灯油をまいて放火し、火は布団からその下に敷かれた畳に燃え移って炎上したが、他に燃え移る前に乙によって消し止められた。甲には現住建造物等放火罪(刑法第108条)の既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が布団に放火して燃え移らせた畳は、毀損しなければ取り外せないとはいえないことから、建造物の一部には当たらない。
したがって、甲に現住建造物等放火既遂罪は成立しない。


(R1 共通 第8問 1)
「建造物」とは、家屋その他これに類する工作物であって、土地に定着し、人の起居出入りに適する構造を有するものをいう。

(正答)

(解説)
判例(大判大13.5.31)は、「刑法第109条第1項ニ所謂建造物トハ家屋其ノ他之ニ類似スル工作物ニシテ土地ニ定着シ人ノ起居出入ニ適スル構造ヲ有スルモノヲ云フ」として、109条1項における建造物とは家屋その他これに類似する工作物であって土地に定着し人の起居出入に適する構造を有するものをいうことを示している。


(R2 共通 第14問 2)
甲が乙に頼まれて、乙所有の大型家具を、丙が居住する家屋に近接する甲所有の畑地で燃やし始めたところ、周辺に火の粉が飛び散り、予期に反して、同家屋の屋根のひさしに飛び火して、同ひさしを焼損させたところで火が消し止められた場合、甲には、延焼罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が乙の大型家具から飛び火させ、焼損させたひさしは、通常毀損しなければ家屋から取り外すことができない状態にあるから、「建造物」の一部に当たる。
そして、甲の予期に反して飛び火して、乙から依頼を受けており自己物と同視できる大型家具から、108条の客体である丙家屋へ火が燃え移ったといえる。
したがって、甲に延焼罪(111条1項、110条2項)が成立する。


(R5 司法 第8問 3)
甲は、妻と二人で居住する木造家屋を燃やそうと考え、壁に掛けられたカレンダーに火をつけた。この場合、上記カレンダーが焼損した時点で、これに気付いた妻に火を消し止められ、他に燃え移らなかったのであれば、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が火をつけた壁に掛けられたカレンダーは、毀損しなければ取り外せないとはいえないことから、建造物の一部には当たらない。
そして、カレンダーが焼損した時点で、これに気付いた妻に火を消し止められ、他に燃え移らなかったのであれば、甲の現住建造物等放火罪は未遂にとどまり、既遂罪が成立することはない。


(R6 司法 第20問 ウ)
【事 例】
保険会社の従業員である甲は、顧客Aが独りで住んでいる一戸建て家屋に多額の現金が保管されていることを知り、Aを殺害した上で同現金を手に入れようと計画した。甲は、その計画に従い、某月1日午後4時頃、Aを戸外に連れ出し、麻酔薬を吸引させて気絶させた上、自動車の後部座席にAを押し込み、同車を運転してAを山奥まで運んだ。さらに、甲は、同日午後6時頃、気絶していたAを車外に引っ張り出した上、自殺に見せ掛けるため、大木の枝に縛り付けた縄でAの頸部をくくり、そのままAをつり下げて窒息死させた。甲は、Aが持っていたA方の鍵を入手した上で、その場にAの死体を放置して上記自動車を運転してA方に向かった。甲は、同日午後8時50分頃、上記鍵を使用してA方内に立ち入り、同所に保管されていた現金500万円を自己のかばんに入れて上記計画を完遂した。
甲は、A方を燃やして犯行を隠蔽しようと考え、同日午後9時頃、A方居室の畳に火を放ってA方を出た。その直後、付近住民が異変に気付いてA方内に立ち入り、上記畳を取り外して屋外に投げ捨てたため、同畳以外は焼損しなかった。
甲は、同月5日、逮捕され、その後の弁解録取手続において、自暴自棄になり、警察官Bが甲の弁解を記載した弁解録取書を手で破り捨てた。
Aには死亡事故を起こしたことによる前科があり、乙は、かつてAから同前科があることを聞いていた。乙は、Aが死亡したことを知り、同月7日、インターネットの掲示板に「Aは、事故を起こして人を死なせた前科がある。」と書き込み、インターネットを利用する不特定多数の者が閲覧可能な状態にした。

以下の記述は正しいか。

【記 述】
甲が焼損させたA方居室の畳は建造物の付属物であるから、甲が同畳を焼損させた行為について、甲に非現住建造物等放火既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が焼損させた畳は、毀損しなければ取り外せないとはいえないことから、建造物の一部には当たらない。
したがって、甲に非現住建造物等放火既遂罪は成立しない。

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「艦船」の意義 大判昭和10年2月2日

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概要
現住建造物放火罪の「艦船」の中には櫓をもって水上を往復し長さ約4間2尺にすぎない木造漁船のようなものも包含している。
判例
事案:現住建造物放火罪における「艦船」の意義が問題となった。

判旨:「所謂艦船中ニハ櫓ヲ以テ水上ヲ往復シ長サ約4間2尺ニ過キサル木造漁船ノ如キモノヲモ包含スルモノトス」
過去問・解説

(H28 予備 第2問 4)
客を乗せて航行中の他人所有のフェリーに放火した場合は、建造物等以外放火罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭10.2.2)は、「所謂艦船中ニハ櫓ヲ以テ水上ヲ往復シ長サ約4間2尺ニ過キサル木造漁船ノ如キモノヲモ包含スルモノトス」として、水上を往復して長さ約4間2尺に過ぎない木造漁船が艦船に含まれることを示している。
客を乗せて航行中の他人所有のフェリーに放火した場合は、建造物等以外放火罪ではなく、「現に人がいる…艦船」(108条)への放火として、現住建造物放火罪が成立する。

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「人」の意義 最二小判昭和32年6月21日

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概要
現住建造物放火罪の「人」とは、犯人以外の者を指称する。
判例
事案:放火保険金詐欺の事案において、犯人が「人」に当たるかが問題となった。

判旨:「刑法108条にいう『人』とは、犯人以外の者を指称する…。」
過去問・解説

(H20 司法 第10問 ウ)
甲は、甲がその家族と共に住居として使用する甲所有の木造家屋に放火して半焼させたが、隣家に燃え移る危険は発生しなかった。この場合、甲には現住建造物等放火罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.6.21)は、「刑法108条にいう『人』とは、犯人以外の者を指称する…。」としている。
したがって、甲の家族が住居として使用する家屋は、現住建造物に当たるため、現住建造物等放火罪が成立する。


(H23 司法 第9問 3)
次の【事例】における甲の罪責に関する【記述】を判例の立場に従って検討しなさい(ただし、事例において、公共の危険は発生したものとする。)。
【事例】 甲は、乙が所有し単身で居住している木造家屋の玄関前において、同所に駐車中の乙所有の自動二輪車の車体にガソリンをまいた上、新聞紙にライターで点火し、これを同車に投げ付け、同車を炎上させたところ、火が上記家屋に燃え移って全焼した。
【記述】
火が家屋に燃え移ること及び同家屋に乙が居住していることを甲が認識・認容していた場合において、甲と乙が、同家屋に掛けられていた火災保険の保険金をだまし取るため、放火することを共謀していたときは、他人所有現住建造物等放火罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.6.21)は、「刑法108条にいう『人』とは、犯人以外の者を指称する…。」としている。
甲と乙は共犯であることから、「人」に当たらない。
また、居住者が所有者である場合には、建造物は、自己の所有に係るものとして、109条2項の客体となるのが原則である。
もっとも、建造物等が、保険に付したものであることから、他人所有非現住建造物等放火罪の客体となる(115条)。
したがって、他人所有現住建造物等放火罪が成立する。


(H25 司法 第14問 オ)
「現に人が住居に使用し」の「人」には、犯人が含まれる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.6.21)は、「刑法108条にいう『人』とは、犯人以外の者を指称する…。」としている。
したがって、「現に人が住居に使用し」の「人」には、犯人は含まれない。


(R1 共通 第8問 5)
現住建造物等放火罪にいう「現に人が住居に使用し」の「人」には犯人が含まれるが、「現に人がいる」の「人」には犯人が含まれない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.6.21)は、「刑法108条にいう『人』とは、犯人以外の者を指称する…。」としている。


(R3 司法 第16問 5)
甲は、Aが1人で居住しており、他に誰もいなかった木造家屋内でAを殺害し、その直後、同家屋に放火してこれを焼損した。この場合、甲には、現住建造物等放火罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.6.21)は、「刑法108条にいう『人』とは、犯人以外の者を指称する…。」としている。
犯人以外の者であるAが住居として使用する家屋は、Aが殺害された時点で非現住建造物となる。
したがって、Aを殺害してから放火した甲には、現住建造物等放火罪は成立しない。


(R5 司法 第8問 4)
甲は、火災保険金を詐取する目的で、自己が単独で居住し、かつ、誰も現在しない木造家屋に放火してこれを焼損した。この場合、刑法第108条の「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」の「人」に犯人は含まれないから、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.6.21)は、「刑法108条にいう『人』とは、犯人以外の者を指称する…。」としている。
甲の木造家屋は、犯人が単独で居住する、誰も現在しない木造家屋が客体であるが、保険に付されているため他人所有となる(115条)。
したがって、甲には他人所有非現住建造物等放火既遂罪が成立するため、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。

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エレベーターのかごの放火と現住建造物放火罪 最二小決平成元年7月7日

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概要
集合住宅内部に設置されたエレベーターのかご内で火を放ち、その側壁として使用されている化粧鋼板を燃焼させた場合、現住建造物等放火罪が成立する。
判例
事案:エレベーターのかご内の壁面の一部の焼損した事案において、現住建造物放火罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、12階建集合住宅である本件マンション内部に設置されたエレベーターのかご内で火を放ち、その側壁として使用されている化粧鋼板の表面約0.3平成方メートルを燃焼させたというのであるから、現住建造物等放火罪が成立するとした原審の判断は正当である。」
過去問・解説

(H21 司法 第11問 4)
甲は、多数人が住居に使用するマンションの居住者用エレベーターのかご内で火を放ち、同かごの側壁に燃え移らせてこれを焼損した。同かごは取り外しが可能であるが、そのための工事は著しい手間と時間を要するものであった。この場合、同かごは同マンションの一部といえるのであるから、現住建造物等放火罪の既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.7.7)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、12階建集合住宅である本件マンション内部に設置されたエレベーターのかご内で火を放ち、その側壁として使用されている化粧鋼板の表面約0.3平方メートルを燃焼させたというのであるから、現住建造物等放火罪が成立する…。」としている。
また、判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が放火して焼損させたエレベーターは、通常毀損しなければ取り外すことができない状態にあるから、建造物の一部に当たる。
したがって、甲に現住建造物等放火罪の既遂罪が成立する。


(H24 共通 第17問 4)
甲は、日頃恨みを持っていたVが居住するマンション内部に設置されたエレベーターのかご内に、ガソリンを染み込ませて点火した新聞紙を投げ入れて放火し、エレベーターのかごの内部を焼損させた。甲には現住建造物等放火未遂罪が成立するにとどまる。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.7.7)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、12階建集合住宅である本件マンション内部に設置されたエレベーターのかご内で火を放ち、その側壁として使用されている化粧鋼板の表面約0.3平方メートルを燃焼させたというのであるから、現住建造物等放火罪が成立する…。」としている。
また、判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が放火して焼損させたエレベーターは、通常毀損しなければ取り外すことができない状態にあるから、建造物の一部に当たる。
したがって、甲に現住建造物等放火罪の既遂罪が成立する。


(R2 共通 第14問 5)
甲が憂さ晴らしの目的で、甲の世帯を含めて計30世帯が居住するマンション内部に設置されたエレベーターのかご内に、灯油を染み込ませて点火した新聞紙を投げ入れて放火したが、エレベーターのかごの側壁を焼損したにとどまり、住居部分には延焼しなかった場合、甲には、現住建造物等放火未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.7.7)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、12階建集合住宅である本件マンション内部に設置されたエレベーターのかご内で火を放ち、その側壁として使用されている化粧鋼板の表面約0.3平方メートルを燃焼させたというのであるから、現住建造物等放火罪が成立する…。」としている。
また、判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が放火して焼損させたエレベーターは、通常毀損しなければ取り外すことができない状態にあるから、建造物の一部に当たる。
したがって、甲に現住建造物等放火罪の既遂罪が成立する。

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複合建造物の一体性 最三小決平成元年7月14日

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概要
本殿、拝殿、社務所等の建物が廻廊等により接続され、夜間も神職等が社務所等で宿直していた本件平成安神宮社殿は、全体として1個の現住建造物に当たる。
判例
事案:外観上複数の建物が接合された複合建造物の一部に現住性が認められる事案において、非現住部分の焼損をもって現住建造物放火罪の成立を肯定できるかが問題となった。

判旨:「右社殿は、その一部に放火されることにより全体に危険が及ぶと考えられる一体の構造であり、また、全体が一体として日夜人の起居に利用されていたものと認められる。そうすると、右社殿は、物理的に見ても、機能的に見ても、その全体が1個の現住建造物であったと認めるのが相当であるから、これと同旨の見解に基づいて現住建造物放火罪の成立を認めた原判決の判断は正当である。」
過去問・解説

(H24 共通 第17問 3)
甲は、深夜、本殿・祭具庫・社務所・守衛詰所が木造の回廊で接続され、一部に火を放てば他の部分に延焼する可能性がある構造の神社の祭具庫壁付近にガソリンをまいてこれに火をつけた。その結果、無人の祭具庫は全焼したものの、Vらが現在する社務所・守衛詰所には、火は燃え移らなかった。甲には現住建造物等放火既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.7.14)は、本肢と同種の事案において、「右社殿は、その一部に放火されることにより全体に危険が及ぶと考えられる一体の構造であり、また、全体が一体として日夜人の起居に利用されていたものと認められる。そうすると、右社殿は、物理的に見ても、機能的に見ても、その全体が1個の現住建造物であったと認めるのが相当である…。」としている。
甲は、神社の一部である祭具庫壁付近に放火しているところ、ここは、本殿・祭具庫・社務所・守衛詰所が木造の回廊で接続され、一部に火を放てば他の部分に延焼する可能性がある構造であるから、物理的に見ても、機能的に見ても、一体の構造であるといえ、その全体が1個の現住建造物であったといえる。
したがって、甲には現住建造物等放火既遂罪が成立する。


(R5 司法 第8問 1)
人が居住する木造建物Aと人が居住していない木造建物Bは、木造の渡り廊下で接合され、渡り廊下を通じて人の行き来のある構造となっていた。甲は、これらの事実を認識した上で、その当時誰もいなかった建物Bに放火して建物Bを焼損した。この場合、建物Aに延焼しなければ、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.7.14)は、本肢と同種の事案において、「右社殿は、その一部に放火されることにより全体に危険が及ぶと考えられる一体の構造であり、また、全体が一体として日夜人の起居に利用されていたものと認められる。そうすると、右社殿は、物理的に見ても、機能的に見ても、その全体が1個の現住建造物であったと認めるのが相当である…。」としている。
甲は、当時誰もいなかった建物Bに放火しているところ、人が居住する木造建物Aと人が居住していない木造建物Bは、木造の渡り廊下で接合され、渡り廊下を通じて人の行き来のある構造となっていたから、物理的に見ても、機能的に見ても、一体の構造であるといえ、AB全体が1個の現住建造物であったといえる。
したがって、甲には現住建造物等放火既遂罪が成立する。

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「現に人が居住に使用」する建造物の意義 最二小決平成9年10月21日

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概要
競売手続の妨害目的で自己の経営する会社の従業員を交替で泊まり込ませていた家屋につき放火を実行する前に右従業員らを旅行に連れ出していても、同家屋に日常生活上必要な設備、備品があり、従業員らが犯行前の約1箇月半の間に10数回交替で宿泊し、旅行から帰れば再び交替で宿泊するものと認識していたなど判示の事実関係の下においては、右家屋は、現住建造物放火罪の「現に人が居住に使用」する建造物に当たる。
判例
事案:競売手続の妨害目的で従業員を交替で泊まり込ませていた家屋につき放火前に右従業員を旅行に連れ出していたという事案において、現住建造物放火罪の「現に人が居住に使用」する建造物に当たるかが問題となった。

判旨:「(1)本件家屋及びその敷地は、被告人が転売目的で取得したものであるが、風呂、洗面所、トイレ、台所等の設備があり、水道、電気、ガスが供給されていて、日常生活に最低限必要なベッド、布団等の寝具のほか、テーブル、椅子、冷蔵庫、テレビ等の家財道具が持ち込まれていた。
 (2)被告人は、本件家屋及びその敷地に対する競売手続の進行を妨げるため、人がそこで生活しているように装うとともに、防犯の意味も兼ねて、自己の経営する会社の従業員5名に指示して、休日以外は毎日交替で本件家屋に宿泊に行かせることとし、本件家屋の鍵を従業員2名にそれぞれ所持させたほか、会社の鍵置き場に鍵1個を掛けて、他の従業員らはこれを用いて本件家屋に自由に出入りできるようにした。
 (3)その結果、平成3年10月上旬ころから同年11月16日夜までの間に10数回にわたり、従業員5名が交替で本件家屋に宿泊して、近隣の住民の目から見ても本件家屋に人が住み着いたと感じ取れる状態になった。
 (4)他方、被告人は、本件家屋及びこれに持ち込んだ家財道具を焼燬して火災保険金を騙取しようと企て、Aが本件家屋に放火する予定日前の同年2月19日から従業員5名を2泊3日の沖縄旅行に連れ出すとともに、その出発前夜に宿泊予定の従業員には、宿泊しなくてもよいと伝え、留守番役の別の従業員には、被告人らの留守中の宿泊は不要であると伝えたが、これらの指示は、本件家屋への放火の準備や実行が従業員らに気付かれないようにするためであった。
 (5)また、被告人は、従業員らに対し、沖縄旅行から帰った後は本件家屋に宿泊しなくてもよいとは指示しておらず、従業員らは、旅行から帰れば再び本件家屋への交替の宿泊が継続されるものと認識していた。また、被告人は、旅行に出発する前に本件家屋の鍵を回収したことはなく、その1本は従業員が旅行に持参していた。 
 (6)Aは、被告人との共謀に基づき、被告人らが沖縄旅行中の同月21日午前0時40分ころ、本件家屋に火を放ち、これを全焼させて焼燬した。
 …本件家屋は、人の起居の場所として日常使用されていたものであり、右沖縄旅行中の本件犯行時においても、その使用形態に変更はなかったものと認められる。そうすると、本件家屋は、本件犯行時においても、平成7年法律第91号による改正前の刑法108条にいう『現ニ人ノ住居ニ使用』する建造物に当たると認めるのが相当であるから、これと同旨の見解に基づき現住建造物等放火罪の成立を認めた原判決の判断は正当である。」
過去問・解説

(H18 司法 第19問 ウ)
甲は、妻と二人で自宅に居住していたが、甲の意図を知らない妻の旅行中、火災保険金を詐取する目的で自宅に放火して全焼させた。甲は、隣家に延焼することは予期していなかったが、隣家も延焼した。甲に延焼罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平9.10.21)は、本肢と同種の事案において、「本件家屋は、人の起居の場所として日常使用されていたものであり、右沖縄旅行中の本件犯行時においても、その使用形態に変更はなかったものと認められる。そうすると、本件家屋は、本件犯行時においても、…『現ニ人ノ住居ニ使用』する建造物に当たると認めるのが相当である…。」としている。
妻が旅行から帰ってきた場合、再び住居として自宅を使用すると考えられるため、使用形態に変更はなかったといえ、甲宅も現住建造物に該当する。
したがって、甲に現住建造物等放火罪が成立し、延焼罪は成立しない。


(H22 司法 第20問 ウ)
次の【事例】における甲の罪責を判例の立場に従って検討し、【罪名】に係る犯罪が成立するか。
【事例】
 甲は、乙及びその妻子全員が1週間の旅行に出ていて留守であると聞いていた乙宅に、窃盗の目的で侵入し、金庫を開けたところ、乙の妻子は旅行中だったものの、1人で在宅していた乙に発見され、「泥棒」と叫ばれた。甲は、捕まっては大変だと思い、乙にナイフを突き付け、「静かにしろ。」と言ったところ、乙は、慌てて逃げ出そうとして転倒し、暖炉の角に頭部をぶつけた結果、脳内出血を起こして死亡した。
 甲は、乙の死亡を確認した上、金庫の中にあった多量の宝石と多額の現金を奪った後、犯行の痕跡を消し去ろうと考えて乙宅に火を放ち、乙宅は全焼した。
 その後、甲は、上記宝石を丙に売却することとしたが、その際、上記事情を知る丁に依頼して、丁が運転する自動車に乗り、丁と一緒に同宝石を丙宅まで運搬した。
【罪名】
非現住建造物等放火罪

(正答)

(解説)
判例(最決平9.10.21)は、本肢と同種の事案において、「本件家屋は、人の起居の場所として日常使用されていたものであり、右沖縄旅行中の本件犯行時においても、その使用形態に変更はなかったものと認められる。そうすると、本件家屋は、本件犯行時においても、…『現ニ人ノ住居ニ使用』する建造物に当たると認めるのが相当である…。」としている。
乙自身は、放火行為時には既に死亡しているものの、乙の妻子が旅行から帰ってきた場合、再び住居として自宅を使用すると考えられるため、使用形態に変更はなかったといえ、乙宅も現住建造物に該当する。
したがって、甲に現住建造物等放火罪が成立し、非現住建造物等放火罪は成立しない。


(R5 司法 第8問 2)
甲は、Vがその家族と共に居住する木造家屋に放火してこれを焼損した。この場合、Vとその家族が1泊2日の旅行中で不在であり、甲がそのことを認識して放火したのであれば、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最決平9.10.21)は、本肢と同種の事案において、「本件家屋は、人の起居の場所として日常使用されていたものであり、右沖縄旅行中の本件犯行時においても、その使用形態に変更はなかったものと認められる。そうすると、本件家屋は、本件犯行時においても、…『現ニ人ノ住居ニ使用』する建造物に当たると認めるのが相当である…。」としている。
甲が放火した時点でVらは不在であったものの、Vとその家族が旅行から帰ってきた場合、再び住居として自宅を使用すると考えられるため、使用形態に変更はなかったといえ、V宅も現住建造物に当たる。
したがって、甲に現住建造物等放火罪が成立する。

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「放火」とは目的物に直接点火する場合に限られるか 大判大正3年10月2日

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概要
放火の手段が家屋に点火できることが物理上明白である以上は未だ家屋の一部に点火していなくても108条の犯罪の着手があるものとし、「放火」には媒介物を介して目的物に点火する場合には、媒介物に点火することも含まれる。
判例
事案:放火で客体に直接点火しなかった事案において、「放火」とは目的物に直接点火する場合に限られるかが問題となった。

判旨:「放火ノ手段カ家屋ニ伝火シ得ヘキモノナルコト物理上明白ナル以上ハ未タ家屋ノ一部ニ伝火セサルモ刑法第108条ニ於ケル犯罪ノ著手アリタルモノトス」
過去問・解説

(H25 司法 第14問 ア)
「放火」とは、目的物の焼損を惹起させる行為をいい、媒介物を介して目的物に点火する場合には、媒介物に点火することも含まれる。

(正答)

(解説)
判例(大判大3.10.2)は、「放火ノ手段カ家屋ニ伝火シ得ヘキモノナルコト物理上明白ナル以上ハ未タ家屋ノ一部ニ伝火セサルモ刑法第108条ニ於ケル犯罪ノ著手アリタルモノトス」として、目的物に直接点火する行為だけでなく、媒介物に点火することも放火に含まれることを示している。

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間接的な放火と現住建造物等放火罪 大判大正3年10月13日

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概要
被告が間接に導火材料の燃焼作用を借りてその目的としている他人の住宅を焼損できることを誤認し、当該材料に点火してその燃焼作用の継続できる状態においた以上は未だ当該住宅に延焼させていないときといえども現住建造物等放火未遂罪を構成することを妨げない。
判例
事案:間接的に導火材料の燃焼作用を借りてその目的としている他人の住宅を焼損しようとした事案において、現住建造物等放火罪の「放火」に当たるかが問題となった。

判旨:「被告カ間接ニ導火材料ノ燃焼作用ヲ藉リテ其目的トセル他人ノ住宅ヲ燃焼シ得ヘキコトヲ認識シ該材料ニ点火シテ其燃焼作用ヲ継続シ得ヘキ状態ニ措キタル以上ハ未タ該住宅ニ延焼セサルトキト雖モ放火罪(刑法第108条)ノ未遂犯ヲ構成スルニ妨ナシ」
過去問・解説

(R1 共通 第8問 2)
「放火」とは、目的物の焼損を惹起させる行為をいい、目的物への直接的な点火行為に限られず、媒介物への点火行為であっても、その燃焼作用が継続して目的物に延焼し得るものである場合、「放火」に当たる。

(正答)

(解説)
判例(大判大3.10.13)は、「被告カ間接ニ導火材料ノ燃焼作用ヲ藉リテ其目的トセル他人ノ住宅ヲ燃焼シ得ヘキコトヲ認識シ該材料ニ点火シテ其燃焼作用ヲ継続シ得ヘキ状態ニ措キタル以上ハ未タ該住宅ニ延焼セサルトキト雖モ放火罪(刑法第108条)ノ未遂犯ヲ構成スルニ妨ナシ」として、媒介物への点火行為であっても、その燃焼作用が継続して目的物に延焼し得るものである場合、「放火」に当たることを示している。
したがって、「放火」は、目的物への直接的な点火行為に限られず、媒介物への点火行為であっても、その燃焼作用が継続して目的物に延焼し得るものである場合、「放火」に当たる。

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不作為の放火罪の成否 最三小判昭和33年9月9日

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概要
自己の過失により炭火が机に引火し、燃焼し始めているのを仮睡から醒めて発見した者が、そのまま放置すれば右事務所を焼損するに至ることを認識しながら、右結果の発生を認容して何らの措置をすることなくその場から逃げ去ったときは、不作為による放火の責任を負うべきである。
判例
事案:自己の過失により炭火が机に引火し、燃焼し始めているのを仮睡から醒めて発見した者が、そのまま放置すれば右事務所を焼損するに至ることを認識しながら、右結果の発生を認容して何らの措置をすることなくその場から逃げ去った事案において、放火罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は自己の過失により右原符、木机等の物件が焼燬されつつあるのを現場において目撃しながら、その既発の火力により右建物が焼燬せられるべきことを認容する意思をもってあえて被告人の義務である必要かつ容易な消火措置をとらない不作為により建物についての放火行為をなし、よってこれを焼燬したものであるということができる。されば結局これと同趣旨により右所為を刑法108条の放火罪に当たるとした原判示は相当であり、引用の大審院判例の趣旨も本判決の趣旨と相容れないものではなく、原判決には右判例に違反するところはない。」
過去問・解説

(H27 司法 第1問 オ)
不作為による放火罪が成立するためには、既発の火力を利用する意思は必ずしも必要ではない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭33.9.9)は、「被告人は自己の過失により右原符、木机等の物件が焼燬されつつあるのを現場において目撃しながら、その既発の火力により右建物が焼燬せられるべきことを認容する意思をもってあえて被告人の義務である必要かつ容易な消火措置をとらない不作為により建物についての放火行為をなし、よってこれを焼燬したものであるということができる。」として、既発の火力によって建物が焼損することを認容していることをもって不作為による放火罪の成立を肯定している。
したがって、不作為による放火罪が成立するためには、既発の火力を利用する意思は必ずしも必要ではない。


(R3 司法 第9問 ア)
甲は、勤務先の事務室で、1人で残業をしていたところ、使用中の電気ストーブから周囲の可燃物に誤って引火させた。甲は、その時点での消火作業は容易であったにもかかわらず、同室を含む勤務先建物が焼損することを認容して、消火作業をすることなく、同室から立ち去り、その結果、同建物が全焼した。その行為当時、同建物の他の部屋では甲の同僚が仮眠中であり、甲もそのことを認識していた。この場合、甲に既発の火力を利用する意思がなければ、現住建造物等放火罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭33.9.9)は、「被告人は自己の過失により右原符、木机等の物件が焼燬されつつあるのを現場において目撃しながら、その既発の火力により右建物が焼燬せられるべきことを認容する意思をもってあえて被告人の義務である必要かつ容易な消火措置をとらない不作為により建物についての放火行為をなし、よってこれを焼燬したものであるということができる。」として、既発の火力によって建物が焼損することを認容していることをもって不作為による放火罪の成立を肯定している。
甲は、自らの過失により、可燃物に引火させ、甲は、その時点での消火作業は容易であったにもかかわらず、同室を含む勤務先建物が焼損することを認容して、消火作業をすることなく立ち去り、その結果、同建物が全焼している。
また、甲は、その行為当時、同建物の他の部屋では甲の同僚が仮眠中であることを認識していた。
したがって、甲に現住建造物等放火罪が成立する。

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殺害後の放火行為と非現住建造物放火罪 大判大正6年4月13日

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概要
人を殺害した後、その形跡を隠蔽する為にその死体の横たわっている家屋に放火し、これを焼損する行為は当該家屋に他に住居する者がなく、また人の現在する事実がない以上は非現住建造物放火罪に該当する。
判例
事案:人を殺害した後、その形跡を隠蔽する為にその死体の横たわっている家屋に放火し、これを焼損した事案で、非現住建造物放火罪の成否が問題となった。

判旨:「人ヲ殺害シタル後其犯跡ヲ蔽ハンカ為メニ其死屍ノ横ハレル家屋ニ放火シ之ヲ焼燬シタル行為ハ該家屋ニ他ニ住居スルモノナク又人ノ現在セル事実ナキ以上ハ刑法第109条ニ該当スヘキモノトス」
過去問・解説

(H18 司法 第19問 イ)
甲は、家屋の居住者全員を殺害した後、証拠を隠滅するためにその家屋を焼失させようと考え、室内の布団に放火したが、布団を焼損した時点で、隣家の住民に消し止められた。甲に非現住建造物等放火未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大6.4.13)は、「人ヲ殺害シタル後其犯跡ヲ蔽ハンカ為メニ其死屍ノ横ハレル家屋ニ放火シ之ヲ焼燬シタル行為ハ該家屋ニ他ニ住居スルモノナク又人ノ現在セル事実ナキ以上ハ刑法第109条ニ該当スヘキモノトス」として、居住者全員を殺害した後の住居は、非現住建造物となることを示している。
また、判例(最判昭25.12.14)は、「建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする…。」としている。
甲が放火した布団は、毀損しなければ取り外せないとはいえないことから、建造物の一部には当たらず、建造物への放火は未遂にとどまる。
したがって、甲に非現住建造物等放火未遂罪が成立する。


(H21 司法 第11問 1)
甲は、乙が1人で住居に使用する乙所有の家屋の中で同人を殺害した後、だれもいない同家屋に放火してこれを焼損した。この場合、乙が死亡した後でも人が同家屋を訪問する可能性があり、「現に人が住居に使用」する建造物といえるのであるから、現住建造物等放火罪の既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大6.4.13)は、「人ヲ殺害シタル後其犯跡ヲ蔽ハンカ為メニ其死屍ノ横ハレル家屋ニ放火シ之ヲ焼燬シタル行為ハ該家屋ニ他ニ住居スルモノナク又人ノ現在セル事実ナキ以上ハ刑法第109条ニ該当スヘキモノトス」として、居住者全員を殺害した後の住居は、非現住建造物となることを示している。
乙は1人で乙宅を住居として使用していたのであって、他の者による現住性も認められない。
したがって、甲に非現住建造物等放火罪が成立する。


(H24 共通 第17問 5)
甲は、妻所有の一戸建て木造家屋に妻と二人で暮らしていたところ、ある日、同家屋内において、口論の末に激高して妻を殺害し、その直後に犯跡を隠すため、同家屋に火をつけて全焼させたが、周囲の住宅には燃え移らなかった。甲には現住建造物等放火既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大6.4.13)は、「人ヲ殺害シタル後其犯跡ヲ蔽ハンカ為メニ其死屍ノ横ハレル家屋ニ放火シ之ヲ焼燬シタル行為ハ該家屋ニ他ニ住居スルモノナク又人ノ現在セル事実ナキ以上ハ刑法第109条ニ該当スヘキモノトス」として、居住者全員を殺害した後の住居は、非現住建造物となることを示している。
また、別の判例(最判昭32.6.21)は、「刑法108条にいう『人』とは、犯人以外の者を指称する…。」としている。
甲は、妻を殺害してから木造家屋を放火しているから、非現住建造物が客体となる。
したがって、甲に非現住建造物等放火罪が成立する。

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「焼損」の意義 大判大正7年3月15日

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概要
放火の行為が一定の目的物上に行われ、導火材料を離れ独立して燃焼状態を営める状態にあるときは、いわゆる焼損の結果を生じ放火の既遂状態に達したというべきである。
判例
事案:放火罪における「焼損」の意義が問題となった。

判旨:「苟モ放火ノ所為カ一定ノ目的物上ニ行ハレ導火材料ヲ離レ独立シテ燃焼作用ヲ営ミ得ヘキ状態ニ在ルトキハ公共ノ静謐ニ対スル危険ハ既ニ発生セルヲ以テ縦令其目的物ヲシテ全然其効用ヲ喪失セシムルニオヨハサルモ刑法ニ所謂焼燬ノ結果ヲ生シ放火ノ既遂状態ニ達シタルモノトス」
過去問・解説

(H25 司法 第14問 イ)
「焼損」とは、火力により目的物の重要部分が焼失し、その本来の効用が失われた状態をいう。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.3.15)は、「放火ノ所為カ一定ノ目的物上ニ行ハレ導火材料ヲ離レ独立シテ燃焼作用ヲ営ミ得ヘキ状態ニ在ルトキハ公共ノ静謐ニ対スル危険ハ既ニ発生セルヲ以テ縦令其目的物ヲシテ全然其効用ヲ喪失セシムルニオヨハサルモ刑法ニ所謂焼燬ノ結果ヲ生シ放火ノ既遂状態ニ達シタルモノトス」として、焼損について、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続する状態に至ったことを指すことを示している。
したがって、火力により目的物の重要部分が焼失し、その本来の効用が失われていなくても、「焼損」は認められ得る。


(R1 共通 第8問 3)
「焼損」とは、火力により目的物の重要部分が焼失し、その本来の効用が失われた状態をいい、不燃性の建造物のコンクリート壁が媒介物の火力によって崩落した場合、「焼損」に当たる。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.3.15)は、「放火ノ所為カ一定ノ目的物上ニ行ハレ導火材料ヲ離レ独立シテ燃焼作用ヲ営ミ得ヘキ状態ニ在ルトキハ公共ノ静謐ニ対スル危険ハ既ニ発生セルヲ以テ縦令其目的物ヲシテ全然其効用ヲ喪失セシムルニオヨハサルモ刑法ニ所謂焼燬ノ結果ヲ生シ放火ノ既遂状態ニ達シタルモノトス」として、焼損について、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続する状態に至ったことを指すことを示している。
不燃性の建造物のコンクリート壁が媒介物の火力によって崩落したとしても、火が媒介物を離れて家屋が独立燃焼する程度に達したとはいえないから、「焼損」に当たらない。


(R5 司法 第8問 5)
甲は、Vが居住する木造家屋の押し入れの床にガソリンをまいて火をつけたところ、同押し入れの床板が独立して燃焼するに至ったが、他に燃え移る前に消し止められた。この場合、上記家屋の効用を失うに至っていなければ、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.3.15)は、「放火ノ所為カ一定ノ目的物上ニ行ハレ導火材料ヲ離レ独立シテ燃焼作用ヲ営ミ得ヘキ状態ニ在ルトキハ公共ノ静謐ニ対スル危険ハ既ニ発生セルヲ以テ縦令其目的物ヲシテ全然其効用ヲ喪失セシムルニオヨハサルモ刑法ニ所謂焼燬ノ結果ヲ生シ放火ノ既遂状態ニ達シタルモノトス」として、焼損について、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続する状態に至ったことを指すことを示している。
甲が火をつけたところ、押し入れの床板が独立して燃焼するに至っているから、家屋の効用を失うに至っていなくとも、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。

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「焼損」の意義 最三小判昭和23年11月2日

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概要
被告人が家屋の押入内壁紙にマッチで放火したため火は天井に燃え移り右家屋の天井板を焼燬した事実を認定しているのであるから、火勢は放火の媒介物を離れて家屋が独立燃焼する程度に達したことが認められるから、放火既遂罪が成立する。
判例
事案:建造物の天井を焼燬したという事案において、「焼損」が認められるかが問題となった。

判旨:「被告人が原判示家屋の押入内壁紙にマッチで放火したため火は天井に燃え移り右家屋の天井板約1尺4方を焼燬した事実を認定しているのであるから、右の事実自体によって、火勢は放火の媒介物を離れて家屋が独立燃焼する程度に達したことが認められるので、原判示の事実は放火既遂罪を構成する事実を充たしたものというべきである。されば、原判決が右の事実に対し刑法第108条を適用して放火既遂罪として処断したのは相当…。」
過去問・解説

(H18 司法 第19問 ア)
甲は、木造アパートの空室の壁際に置いてあったダンボール箱に火をつけ、火を板壁に燃え移らせて放火したが、板壁の一部を焼損した時点で、アパートの住民に消し止められた。甲は、そのアパートに人が居住している部屋があることを認識していたが、人が居住する部屋に延焼するかもしれないとは認識しておらず、空室のみを焼損するつもりだった。甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.11.2)は、本肢と同種の事案において、「被告人が原判示家屋の押入内壁紙にマッチで放火したため火は天井に燃え移り右家屋の天井板約1尺4方を焼燬した事実を認定しているのであるから、右の事実自体によって、火勢は放火の媒介物を離れて家屋が独立燃焼する程度に達したことが認められるので、原判示の事実は放火既遂罪を構成する事実を充たした…。」としている。
甲が放った火は、板壁の一部を焼損し、火勢は放火の媒介物を離れて、家屋が独立して燃焼する程度に達している。
したがって、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。


(H20 司法 第10問 オ)
甲は、多数人が住居として使用する乙所有の集合住宅1棟を全焼させる意思で、同住宅のうち、だれも現在しない空き部屋に放火した。他の住居部分に燃え移る可能性はあったが、甲が放火した空き部屋の床及び天井の大部分が燃焼した時点で消火されたため、他の住居部分は燃焼しなかった。この場合、甲には現住建造物等放火未遂罪が成立するにとどまる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.11.2)は、「被告人が原判示家屋の押入内壁紙にマッチで放火したため火は天井に燃え移り右家屋の天井板約1尺4方を焼燬した事実を認定しているのであるから、右の事実自体によって、火勢は放火の媒介物を離れて家屋が独立燃焼する程度に達したことが認められるので、原判示の事実は放火既遂罪を構成する事実を充たした…。」としている。
甲が放った火は、空き部屋の床および天井の大部分を焼損し、火勢は放火の媒介物を離れて家屋が独立して燃焼する程度に達している。
したがって、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。

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「公共の危険」の意義 最三小決平成15年4月14日

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概要
① 110条1項にいう「公共の危険」は、108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険に限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる。
② 市街地の駐車場において、放火された自動車から付近の2台の自動車に延焼の危険が及んだことなど判示の事実関係の下では、110条1項にいう「公共の危険」の発生が認められる。
判例
事案:小学校教職員用の駐車場に無人でとめられていた被害車両に対し、ガソリンを車体のほぼ全体にかけた上、これにガスライターで点火して放火したという事案において、現住建造物等放火罪・他人所有非現住建造物放火罪の客体に対する延焼の危険がない以上、「公共の危険」の発生は認められないとして建造物等以外放火罪(110条1項)は成立せず、器物損壊罪(261条)が成立するにとどまるのかが問題となった。

判旨:「同法110条1項にいう『公共の危険』は、必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解するのが相当である。そして、市街地の駐車場において、被害車両からの出火により、第1、第2車両に延焼の危険が及んだ等の本件事実関係の下では、同法110条1項にいう『公共の危険』の発生を肯定することができるというべきである。本件について同項の建造物等以外放火罪の成立を認めた原判決の判断は、正当である。」
過去問・解説

(H19 司法 第3問 ①)
教授と学生A及びBが、刑法第110条の建造物等以外放火罪の成立要件である「公共の危険」に関する議論をしている。
【発言】
教 授. 刑法第110条第1項に規定される建造物等以外放火罪は、条文上「公共の危険」の発生を要求していますが、Aさんは、この「公共の危険」の内容について、どのように考えますか。
学生A. 私は、「公共の危険」とは、①(a. 現住建造物等又は他人所有の非現住建造物等に対する延焼の危険・b. 現住建造物等又は他人所有の非現住建造物等に限定せず、不特定又は多数の人の生命、身体又は財産に対する危険)をいうと理解しています。
教 授. Aさんの考え方は、判例の立場と同じですね。
学生A. はい、そうです。
学生B. 私は、判例の立場には反対しています。Aさんの考え方だと、例えば、犯人が小さなゴミ箱1個に放火した際、たまたまその横に置き忘れられていた不特定人の小さな物品1個に延焼の危険が発生しても、「公共の危険」が発生したとされかねず、不当な結果にならないでしょうか。
学生A. 私の立場に立っても、各事案ごとの具体的状況の中で火災に基づく危険の拡大作用が認められるかどうかを判断することになると思います。

(正答)b

(解説)
判例(最決平15.4.14)は、「同法110条1項にいう『公共の危険』は、必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解するのが相当である。」としている。


(H24 共通 第17問 1)
甲は、日頃恨みを持っていたVの所有する自動車が止めてある駐車場に出向き、同車にガソリンをかけて火をつけ、同車を焼損させたところ、同駐車場に駐車されていた第三者が所有する自動車10台に延焼する危険が生じたものの、駐車場が住宅地から離れていたため、住宅その他の建物に延焼する危険は生じなかった。甲には建造物等以外放火既遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平15.4.14)は、「同法110条1項にいう『公共の危険』は、必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解するのが相当である。」としている。
甲がVの自動車に火をつけたことで、第三者が所有する自働車10台という財産に対する延焼の危険が発生しているから、「公共の危険」が発生しているといえ、甲に建造物等以外放火既遂罪が成立する。


(H30 司法 第16問 エ)
甲は、住宅街の中にある駐車場内に駐車されていた乙所有の自動車にガソリンをまいて放火したところ、同自動車が勢いよく炎上し、その付近に駐車されていた所有者の異なる自動車3台に火が燃え移りかねない状態になったが、付近の建造物に燃え移る危険は生じなかった。甲には他人所有建造物等以外放火罪(第110条第1項)は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平15.4.14)は、「同法110条1項にいう『公共の危険』は、必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解するのが相当である。」としている。
甲が乙の自動車に放火したことで、第三者が所有する自働車3台という財産に対する延焼の危険が発生しているから、「公共の危険」が発生しているといえ、甲に建造物等以外放火既遂罪が成立する。


(R1 共通 第8問 4)
建造物等以外放火罪にいう「公共の危険」は、現住建造物等放火罪や他人所有非現住建造物等放火罪の客体である建造物等に対する延焼の危険に限られず、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる。

(正答)

(解説)
判例(最決平15.4.14)は、「同法110条1項にいう『公共の危険』は、必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解するのが相当である。」としている。

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建造物等以外放火罪と公共の危険 最一小決昭和60年3月28日

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概要
建造物等以外放火罪の成立には、公共の危険発生の認識は必要でない。
判例
事案:他人所有の自動二輪車に放火したという事案において、建造物等以外放火罪の構成要件的故意として「公共の危険」の発生の認識(さらには認容)が必要であるかが問題となった。

判旨:「110条1項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが、焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はないものと解すべきである…。」
過去問・解説

(H19 司法 第3問 ⑤)
教授と学生A及びBが、刑法第110条の建造物等以外放火罪の成立要件である「公共の危険」に関する議論をしている。
【発言】
教 授. 建造物等以外放火罪が成立するためには、「公共の危険」の認識が必要かどうかについて議論しましょう。
学生B. 私は、「公共の危険」の認識は、 必要と考えます。なぜなら、責任主義の原則から考えて結果的責任は否定されるべきであるからです。
学生A. しかし、あなたの考えでは、実際上、現住建造物等放火罪又は他人の所有の非現住建造物等放火罪の未必の故意が認められてしまうという問題が生じませんか。
学生B. 私の立場でも、刑法第110条における「公共の危険」の認識内容について、延焼の危険の認識と区別することは可能だと考えます。
教 授. この点に関するあなたの考え方は、判例と同じですか。
学生B. 私は、判例に⑤(i. 賛成・j. 反対)する立場です。

(正答)j

(解説)
判例(最決昭60.3.28)は、「110条1項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが、焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はない…。」としている。
しかし、Bは「公共の危険」の認識は必要であると述べている。
したがって、Bは判例に反対する立場をとっているといえる。


(H21 司法 第11問 5)
甲は、公共の危険発生の認識がないまま、自己所有の自動車に放火してこれを焼損したところ、公共の危険が生じた。この場合、甲には公共の危険発生の認識がないのであるから、建造物等以外放火罪の既遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭60.3.28)は、「110条1項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが、焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はない…。」としている。
甲は、公共の危険発生の認識がないまま、自己所有の自動車に放火し焼損させ公共の危険が生じさせているが、公共の危険の認識は不要であるため、甲に建造物等以外放火罪の既遂罪が成立する。


(H25 予備 第7問 2)
甲は、駐車場で他人の所有する自動車に放火し、公共の危険を生じさせた。その際、甲は、公共の危険が発生するとは認識していなかった。甲には建造物等以外放火罪の故意は認められない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭60.3.28)は、「110条1項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが、焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はない…。」としている。
甲は、公共の危険発生の認識がないまま、駐車場で他人の所有する自動車に放火し、公共の危険を生じさせているが、公共の危険の認識は不要であるため、甲に建造物等以外放火罪の故意が認められる。


(H29 予備 第8問 4)
甲は、不要となった甲所有の自動車を燃やそうと考え、同自動車に放火し全焼させ、公共の危険を生じさせた。甲に公共の危険が生じることについての認識がなかった場合でも、甲には、建造物等以外放火罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭60.3.28)は、「110条1項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが、焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はない…。」としている。
甲は、公共の危険発生の認識がないまま、不要となった甲所有の自動車を燃やそうと考え、同自動車に放火し全焼させ、公共の危険を生じさせているが、公共の危険の認識は不要であるため、甲に建造物等以外放火罪の既遂罪が成立する。


(R3 司法 第16問 3)
甲は、自己が所有する自動二輪車に放火してこれを焼損し、よって公共の危険を生じさせたが、その公共の危険が生じることについての認識はなかった。この場合、甲には、建造物等以外放火罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭60.3.28)は、「110条1項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが、焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はない…。」としている。
甲は、公共の危険発生の認識がないまま、自己が所有する自動二輪車に放火してこれを焼損し、よって公共の危険を生じさせているが、公共の危険の認識は不要であるため、甲に建造物等以外放火罪の既遂罪が成立する。

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