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故意 - 解答モード

条件付故意 最一小判昭和56年12月21日

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概要
謀議された計画の内容においては被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする意思が確定的であったときは、殺人の故意の成立に欠けるところはない。
判例
事案:共犯者との間で、被害者らが住居に押し掛け又は喧嘩となるなどの事態になれば、被害者を殺害するもやむないとして、同人殺害の共謀を遂げるという共謀がなされ、その際、現実に殺害の実行に着手すべきかは現場に赴く者の状況判断に委ねられていたという事案において、共謀時に殺人の故意が認められるかが問題となった。これは、条件付故意の問題である。

判旨:「被告人甲は、乙及び丙との間で、被害者らがこがねビル四階のV方に押し掛け又は喧嘩となるなどの事態になれば、被害者を殺害するもやむないとして、V殺害の共謀を遂げ、その際、現実に殺害の実行に着手すべき右の事態については、乙ら現場に赴く者の状況判断に委ねられた、というのである。…謀議された計画の内容においては被害者Vの殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする被告人甲の意思そのものは確定的であったのであり、被告人甲は被害者Vの殺害の結果を認容していたのであるから、被告人甲の故意の成立に欠けるところはないというべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H25 予備 第7問 1)
暴力団組長甲は、配下組員乙に対し、「もし、Aがこちらの要求を聞き入れなかったら、Aを殺してこい。Aがこちらの要求を聞き入れるのであれば、Aを殺す必要はない。」旨指示し、乙にけん銃を手渡した上、乙を対立する暴力団組員Aのところに行かせた。乙は、Aが要求を聞き入れなかったので、Aをけん銃で射殺した。甲には殺人罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭56.12.21)は、「 謀議された計画の内容においては被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする意思が確定的であったときは、殺人の故意の成立に欠けるところはない…。」として、条件付故意を認めている。
甲ら、Aがこちらの要求を聞き入れなかったらという一定の事態の発生にかからせていたものの、乙にけん銃を手渡した以上、そのような殺害計画を遂行しようとする意思が確定的であるといえる。
したがって、甲には殺人の故意が認められる。


全体の正答率 : 100%

(R4 司法 第1問 2)
暴力団組員甲は、配下の組員乙に対し、抗争状態にある暴力団組員Aとの間でもめごとが起きた場合にはAを殺害してよいが、実際にAを殺害するかは乙の判断に任せる旨伝えて拳銃を渡し、乙も了承したところ、乙は、Aともめたことから、殺意をもってAを射殺した。甲が乙とAの間でもめごとが起きることがあり得ると認識していた場合、甲には、殺人罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭56.12.21)は、「 謀議された計画の内容においては被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする意思が確定的であったときは、殺人の故意の成立に欠けるところはない…。」として、条件付故意を認めている。
甲は、抗争状態にある暴力団組員Aとの間でもめごとが起きた場合にはという一定の事態の発生にかからせていたものの、乙に拳銃を手渡した以上はそのような殺害計画を遂行しようとする意思が確定的であるといえる。
したがって、甲には、殺人の故意が認められる。

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故意における認識の程度 最二小判平成2年2月9日

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概要
覚せい剤輸入罪及び所持罪における覚せい剤であることの認識は、覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったかどうかで判別される。
判例
事案:被告人が覚せい剤を密輸入し、所持していた事案において、覚せい剤所持の故意の程度について問題となった。

判旨:「被告人は、本件物件を密輸入して所持した際、覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはないから、これと同旨と解される原判決の判断は、正当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 33.3%

(H25 予備 第7問 4)
覚せい剤が含まれている錠剤を所持していた甲は、同錠剤について、身体に有害で違法な薬物類であるとの認識はあったが、覚せい剤や麻薬類ではないと認識していた。甲には覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.2.9)は、「覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはない…。」としている。
甲は、覚醒剤や麻薬類ではないと認識していたのであるから、甲には覚醒剤所持の罪の故意は認められない。


全体の正答率 : 100%

(H27 司法 第9問 1)
【事例】
Aは、外国へ旅行に行った際、旅行先で知り合ったBから、荷物を預けるので手荷物として日本まで運んでほしいと依頼され、これを了承し、その荷物を日本に持ち込んだが、荷物の中身は覚せい剤であった。
なお、覚せい剤をみだりに日本に持ち込んだ場合には覚せい剤取締法の輸入罪が成立し、麻薬をみだりに日本に持ち込んだ場合には麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪が成立するものとする。

【記述】
Aは、Bから預かった荷物の中身は「薬物ではない。」と聞かされていたが、「薬物以外の何か違法なものかもしれない。」と思ってこれを日本に持ち込んだ場合、Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.2.9)は、「覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはない…。」としている。
Aは、荷物の中身について、薬物以外の違法なものと認識をしていたのであるから、覚醒剤取締法の輸入罪の故意は認められず、同罪は成立しない。


全体の正答率 : 0%

(H27 司法 第9問 3)
Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤である。」と聞かされたものの、覚せい剤が違法な薬物であることを知らず、「覚せい剤とは高価な化粧品のことである。」と認識してこれを日本に持ち込んだ場合でも、「覚せい剤」という認識がある以上、Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。

(正答)

(解説)
確かに、判例(最判平2.2.9)は、「覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはない…。」としており、Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤である。」と聞かされていたため、荷物の中身が覚せい剤であることを認識している以上、事実の錯誤には当たらず、覚せい剤が違法な薬物であることを知らず「覚せい剤とは高価な化粧品のことである。」と認識していた点は違法性の錯誤にとどまるとも思える。しかし、事実の錯誤とは、刑法的評価の対象となる事実に関する錯誤を意味する一方で、違法性の錯誤とは、刑法的評価の基準となる規範(行為規範それ自体)に関する錯誤を意味すると理解されている(高橋則夫「刑法総論」第5版393頁)。そして、Aは、覚せい剤が違法な薬物であることを知らず、「覚せい剤とは高価な化粧品のことである。」と認識していたのだから、刑法的評価の対象となる事実に関する錯誤、すなわち事実の錯誤が認められる。
したがって、Aについては、事実の錯誤により覚醒剤取締法の輸入罪の故意は認められず、同罪は成立しない。


全体の正答率 : 66.6%

(H27 司法 第9問 4)
Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤かもしれないし、もしかしたら麻薬かもしれない。」と思ってこれを日本に持ち込んだ場合、Aには客体の認識に錯誤があり、麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪の法定刑が覚せい剤取締法の輸入罪の法定刑よりも軽いときには、Aには麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.2.9)は、「覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはない…。」としている。
Aは、覚醒剤かもしれないという認識をしていたのであるから、覚醒剤を含む身体に違法で有害な薬物類との認識があったといえる。
したがって、Aには麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪の故意が認められ、Aには同罪が成立する。


全体の正答率 : 66.6%

(H29 司法 第3問 イ)
覚せい剤を含有する粉末を所持していた甲は、同粉末が身体に有害で違法な薬物であることは認識していたが、覚せい剤や麻薬ではないと認識していた。この場合、甲には覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.2.9)は、「覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはない…。」としている。
甲は、身体に有害で違法な薬物であることは認識していたが、覚醒剤や麻薬ではないと認識していたのであるから、甲には覚醒剤所持の罪の故意が認められない。


全体の正答率 : 100%

(R1 司法 第11問 1)
甲は、乙から、甲宛てに荷物を発送したので受け取ってほしいと依頼され、もしかしたら同荷物には覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物が入っているかもしれないと思いながら、乙が覚せい剤を忍び込ませた荷物を受け取って所持していた。この場合、甲には、覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.2.9)は、「覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはない…。」としている。
甲は、覚醒剤を含む、身体に違法で有害な薬物類との認識があるから、覚醒剤所持の故意が認められる。
したがって、甲には覚醒剤所持の罪が成立する。

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構成要件の重なり合い 最一小判昭和54年3月27日

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概要
①営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類粉末を覚せい剤と誤認して輸入した場合には、麻薬取締法64条2項、1項、12条1項の麻薬輸入罪が成立する。
②税関長の許可を受けないで、麻薬を覚せい剤と誤認して輸入した場合には、関税法111条1項の無許可輸入罪が成立する。
判例
事案:営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類である粉末を覚せい剤と誤認して、本邦内に持ち込み、もって右麻薬を輸入し、税関長の許可を受けないで、前記麻薬を覚せい剤と誤認して、輸入したとされる事案において、適用法令について問題となった。

判旨:「麻薬と覚せい剤とは、ともにその濫用による保健衛生上の危害を防止する必要上、麻薬取締法及び覚せい剤取締法による取締の対象とされているものであるところ、これらの取締は、実定法上は前記2つの取締法によって各別に行われているのであるが、両法は、その取締の目的において同一であり、かつ、取締の方式が極めて近似していて、輸入、輸出、製造、譲渡、譲受、所持等同じ態様の行為を犯罪としているうえ、それらが取締の対象とする麻薬と覚せい剤とは、ともに、その濫用によってこれに対する精神的ないし身体的依存(いわゆる慢性中毒)の状態を形成し、個人及び社会に対し重大な害悪をもたらすおそれのある薬物であって、外観上も類似したものが多いことなどにかんがみると、麻薬と覚せい剤との間には、実質的には同一の法律による規制に服しているとみうるような類似性があるというべきである。本件において、被告人は、営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類である粉末を覚せい剤と誤認して輸入したというのであるから、覚せい剤取締法41条2項、1項1号、13条の覚せい剤輸入罪を犯す意思で、麻薬取締法64条2項、1項、12条1項の麻薬輸入罪にあたる事実を実現したことになるが、両罪は、その目的物が覚せい剤か麻薬かの差異があるだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であり、その法定刑も全く同一であるところ、前記のような麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではないと解すべきである。してみると、被告人の前者の行為については、麻薬取締法64条2項、1項、12条1項の麻薬輸入罪が成立し、これに対する刑も当然に同罪のそれによるものというべきである。次に、被告人の後者の行為についてみるに、関税法は、貨物の輸入に際し一般に通関手続の履行を義務づけているのであるが、右義務を履行しないで貨物を輸入した行為のうち、その貨物が関税定率法21条1項所定の輸入禁制品である場合には関税法109条1項によって、その余の一般輸入貨物である場合には同法111条1項によって処罰することとし、前者の場合には、その貨物が関税法上の輸入禁制品であるところから、特に後者に比し重い刑をもってのぞんでいるものであるところ、密輸入にかかる貨物が覚せい剤か麻薬かによって関税法上その罰則の適用を異にするのは、覚せい剤が輸入制限物件(関税法118条3項)であるのに対し麻薬が輸入禁制品とされているというだけの理由によるものに過ぎないことにかんがみると、覚せい剤を無許可で輸入する罪と輸入禁制品である麻薬を輸入する罪とは、ともに通関手続を履行しないでした類似する貨物の密輸入行為を処罰の対象とする限度において、その犯罪構成要件は重なり合っているものと解するのが相当である。本件において、被告人は、覚せい剤を無許可で輸入する罪を犯す意思であったというのであるから、輸入にかかる貨物が輸入禁制品たる麻薬であるという重い罪となるべき事実の認識がなく、輸入禁制品である麻薬を輸入する罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が重なり合う限度で軽い覚せい剤を無許可で輸入する罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H27 司法 第9問 5)
【事例】
Aは、外国へ旅行に行った際、旅行先で知り合ったBから、荷物を預けるので手荷物として日本まで運んでほしいと依頼され、これを了承し、その荷物を日本に持ち込んだが、荷物の中身は覚せい剤であった。
なお、覚せい剤をみだりに日本に持ち込んだ場合には覚せい剤取締法の輸入罪が成立し、麻薬をみだりに日本に持ち込んだ場合には麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪が成立するものとする。
【記述】
Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤ではないが、麻薬である。」と思ってこれを日本に持ち込んだ場合、覚せい剤取締法の輸入罪の法定刑と麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪の法定刑が同じときには、Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.3.27)は、「麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではないと解すべきである。」として、両罪の構成要件が実質的に同じで、認識していた犯罪事実と発生した犯罪事実の法定刑が同じ場合、発生した犯罪事実について故意を認めている。
Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤ではないが、麻薬である。」と思ってこれを日本に持ち込んでいるが、覚醒剤取締法の輸入罪の法定刑と麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪の法定刑が同じで両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているから、発生した犯罪事実である覚醒剤取締法の輸入罪の故意が認められる。
したがって、Aには覚醒剤取締法の輸入罪が成立する。


全体の正答率 : 0%

(R4 司法 第1問 1)
甲は、麻薬であるヘロインの粉末を覚醒剤と誤信して営利目的で輸入した。ヘロインの営利目的輸入罪と覚醒剤の営利目的輸入罪の法定刑は同一であった。この場合、甲には、覚醒剤の営利目的輸入罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.3.27)は、「麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではないと解すべきである。」として、両罪の構成要件が実質的に同じで、認識していた犯罪事実と発生した犯罪事実の法定刑が同じ場合、発生した犯罪事実について故意を認めている。
甲は、麻薬であるヘロインの粉末を覚醒剤と誤信して営利目的で輸入しているが、ヘロインの営利目的輸入罪と覚醒剤の営利目的輸入罪の法定刑が同じで両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているから、発生した犯罪事実であるヘロインの営利目的輸入罪の故意が認められる。
したがって、甲にはヘロインの営利目的輸入罪が成立する。

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方法の錯誤 大判昭和8年8月30日

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概要
殺意をもって暴行を加えた際、目的とした人とは別の他の人を殺害するに至ったときは、別の他人に対する殺人罪の成立を認めるべきである。
判例
事案:殺意をもって暴行したものの、実際に暴行した者は殺害しようとした者と異なっていた事案において、殺人罪が成立するかが問題となった。

判旨:「人ヲ殺害スル意思ヲ以テ之ニ暴行ヲ加ヘ因テ人ヲ殺害シタル結果ヲ惹起シタル以上ハ縱令其ノ殺害ノ結果カ犯人ニ於テ毫モ意識セサリシ客體ノ上ニ生シタルトキト雖暴行ト殺害トノ間ニ因果ノ關係存スルコト明白ナル以上犯人ニ於テ殺人既遂ノ罪責ヲ負フヘキコト勿論ニシテ過失致死罪ヲ以テ論スヘキニ非ス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第7問 ウ)
甲は、乙に対する殺意をもって、乙の背後からけん銃を発射したところ、乙は赤ん坊の丙を抱いており、銃弾が乙の身体を貫通した後、丙にも命中して、乙及び丙の両名を死亡させた。甲が、乙に抱かれている丙の存在を認識していなかった場合でも、甲には乙及び丙に対する殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.8.30)は、「人ヲ殺害スル意思ヲ以テ之ニ暴行ヲ加ヘ因テ人ヲ殺害シタル結果ヲ惹起シタル以上ハ縱令其ノ殺害ノ結果カ犯人ニ於テ毫モ意識セサリシ客體ノ上ニ生シタルトキト雖暴行ト殺害トノ間ニ因果ノ關係存スルコト明白ナル以上犯人ニ於テ殺人既遂ノ罪責ヲ負フヘキコト勿論ニシテ過失致死罪ヲ以テ論スヘキニ非ス」として、行為のときに少しも認識していなかった客体に結果が生じたとしても、殺害行為と結果との間に因果関係が認められることが明白ならば、殺人罪が成立しうることを示している。
甲は、乙に抱かれている丙の存在を認識していなかったが、人を殺す意思のもとで、拳銃を発射し銃弾が乙の身体を貫通した後、丙にも命中しているから、甲の殺害行為と乙及び丙の死亡結果との間に因果関係が認められることが明白であるといえる。
したがって、甲には乙及び丙に対する殺人罪が成立する。

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方法の錯誤と故意の個数 最三小判昭和53年7月28日

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概要
犯人が強盗の手段として人を殺害する意思のもとに銃弾を発射して殺害行為に出た結果、犯人の意図した者に対して右側胸部貫通銃創を負わせたほか、犯人の予期しなかった者に対しても腹部貫通銃創を負わせたときは、後者に対する関係でも強盗未遂罪が成立する。
判例
事案:いわゆる具体的事実の錯誤の事案において、認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とがどの程度一致していれば故意が認められるか問題となった。

判旨:「犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りるものと解すべきであるから、人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 75%

(H20 司法 第7問 エ)
甲は、公務員乙がその法令上の職務Aを執行するに当たり、乙が執行している職務がそれとは別の法令上の乙の職務Bであると誤信して乙の顔面を手拳で殴る暴行を加えた。乙の執行する職務が職務Bでなく職務Aであると分かっていれば、甲は上記暴行には及ばなかったという事情があった場合でも、甲には公務執行妨害罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、職務Aを職務Bと誤信しているものの、いずれの事実も公務執行妨害罪の構成要件の範囲内である。
したがって、甲には公務執行妨害罪の故意が認められ、同罪が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H22 司法 第6問 1)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し、誤っているものを2個選びなさい。
甲が、Aを脅迫する意図でA宅に宛てて「お前の家に火をつけてやる。」と記載した手紙を郵送したところ、同手紙が誤ってA宅の隣のB宅に配達され、Bがこの手紙を読んで畏怖した。甲には、Bに対する脅迫罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、Aを脅迫する意図で、誤ってBを脅迫しているから、具体的事実の錯誤のうち、本来意図した者とは別の客体に対して侵害したという客体の錯誤があるといえる。
脅迫罪の構成要件上の客体は「人」であり、甲が認識していたAと現実に畏怖したBは「人」であるという点で、両者は構成要件の範囲内で一致する。
したがって、甲には、Bに対する脅迫罪が成立する。


全体の正答率 : 0%

(H22 司法 第6問 5)
甲は、Aが甲に射殺されることに同意したため、Aに対し、殺意をもってけん銃を発射したが、銃弾は、Aに当たらずにAの頭部をかすめ、Aの背後にいて甲がその存在を認識しておらず、甲に射殺されることに同意していなかったBに命中して同人を死亡させた。甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する殺人既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
同意殺人罪と殺人罪では、より軽い同意殺人罪の限度で重なり合いが認められる。
したがって、Aに対しては同意殺人罪の故意が認められ、実行行為に及んだものの結果発生に至らなかったことから、同意殺人未遂罪が成立する。
また、Bに対しては、客観的には殺人罪の実行行為をしているが、同意殺人罪の限度でしか故意が認められないため、同意殺人罪の既遂が成立する。
よって、甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する同意殺人既遂罪が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H23 共通 第18問 4)
甲は、パチンコ店の従業員乙が運搬していた同店の売上金の入ったかばんを強取するため、乙の後方から、乙の頭部を狙い、殺意をもってけん銃の弾丸を発射したところ、同弾丸は乙の肩を貫通した上、甲が認識していなかった通行人丙の腹部に命中し、乙と丙にそれぞれ傷害を負わせた。この場合、甲には、乙に対する強盗殺人未遂罪、丙に対する強盗殺人未遂罪がそれぞれ成立し、両罪は観念的競合となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、かばんを強奪する目的で、「人」を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった「人」に対してその結果が発生した場合にも、強盗殺人罪の構成要件の範囲内といえ、その結果について強盗殺人罪の故意があるものといえる。そして、拳銃発射という実行行為を行ったものの結果が発生していないから、強盗殺人未遂罪が成立する。
また、乙に対する1発の拳銃発射という1個の行為によって、乙丙のそれぞれに傷害という2つの結果が発生しているから、観念的競合となる。
したがって、甲には、乙に対する強盗殺人未遂罪、丙に対する強盗殺人未遂罪がそれぞれ成立し、両罪は観念的競合となる。


全体の正答率 : 75%

(H24 共通 第7問 2)
甲は、乙に対し、Aを殺害するよう唆したところ、乙は、その旨決意し、夜道で待ち伏せした上、歩いてきた男をAだと思って包丁で刺し殺したが、実際には、その男はBであった。甲には殺人既遂罪の教唆犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、乙にA対する殺人を教唆しているところ、乙はAと誤信してBを殺害している。
また、甲は、乙に対して「人」の殺害を教唆している以上、構成要件の重なりが認められ、殺人罪の故意が認められる。
したがって、甲には、Bに対する殺人既遂罪の教唆犯が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H24 共通 第7問 4)
甲は、駐車場に駐車中のA所有の自動車を見て、Aに対する腹いせに傷つけてやろうと思って石を投げたが、狙いがそれて、その隣に駐車中のB所有の自動車に石が当たってフロントガラスが割れた。甲には器物損壊罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、Aの車に対する器物損壊の意思で投石し、Bの車に対する器物損壊の結果を生じさせている。
これらは、「他人の物」という器物損壊罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められる。
したがって、甲には器物損壊罪が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H25 予備 第7問 5)
甲は、Aを殺害しようと考え、Aに向けてけん銃を発射し、弾丸をAに命中させ、Aを死亡させたが、同弾丸は、Aの身体を貫通し、甲が認識していなかったBにも命中し、Bも死亡した。甲にはA及びBに対する殺人罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、Aに対する殺人の意図のもと、拳銃発射という実行行為を行い、A及びBを殺害している。
また、AとBに対する殺人は、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められる。
したがって、甲にはA及びBに対する殺人罪の故意が認められる。


全体の正答率 : 66.6%

(H29 司法 第3問 ア)
甲は、乙を殺害する目的で、乙を含む複数の者の飲用に供されているペットボトル内のお茶に致死量の劇薬を投入した。その結果、そのお茶を飲用した複数の者全員が死亡した。この場合、甲には、前記お茶を飲用して死亡した者の数に応じた殺人罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、乙に対する殺人の意図で複数人が飲用するボトルに劇薬を投入し、乙だけでなく、そのお茶を飲用した複数の者を殺害しているから、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められる。
したがって、甲には、お茶を飲用して死亡した者の数に応じた殺人罪の故意が認められる。


全体の正答率 : 0%

(R1 司法 第11問 5)
甲は、乙を殺害しようと考え、乙の背部を狙って拳銃の弾丸を発射したところ、同弾丸が乙ではなく、乙の隣にいた丙の腹部に当たり、丙を死亡させた。この場合、甲には、乙に対する殺人未遂罪と丙に対する重過失致死罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、乙に対する殺人の意図で拳銃発射という実行行為を行い、丙に被弾し殺害しているから、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められ、丙に対するものについても殺人罪の故意が認められる。
したがって、甲には、乙に対する殺人未遂罪と丙に対する殺人罪が成立する。


全体の正答率 : 66.6%

(R4 司法 第1問 3)
甲は、殺意をもってAに向けて拳銃を発射したところ、その弾丸がAを貫通し、その背後にいて甲がその存在を認識していなかったBにも命中し、その結果、Aが死亡し、Bが重傷を負った。この場合、甲には、Aに対する殺人罪が成立するが、Bに対する殺人未遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
故意の内容を構成要件の範囲内で抽象化する以上、故意の個数は問題にならないこととなる。
甲は、Aに対する殺人の意図でBに重傷を負わせており、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められるから、Bに対しても殺人罪の故意が認められ、Bに対する殺人未遂罪が成立する。
したがって、甲には、Aに対する殺人罪のほかに、Bに対する殺人未遂罪も成立する。

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教唆犯と具体的事実の錯誤 最三小判昭和25年7月11日

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概要
教唆犯の故意があるというためには、必ずしも犯人が認識した事実と、現実に発生した事実とが、具体的に一致することを要するものではなく、両者が犯罪の類型として規定している範囲において一致することをもって足りる。
判例
事案:住居侵入窃盜を教唆した場合において、被教唆者がこれと異る他の被害者に対して住居侵入強盜をしたという事案において、教唆者の罪責が問題となった。

判旨:「原判決によれば、被告人甲は乙に対して判示A方に侵入して金品を盗取することを使嗾し、以て窃盗を教唆したものであって、判示B商会に侵入して窃盗をすることを教唆したものでないことは正に所論の通りであり、しかも、右乙は、判示丙等三名と共謀して判示B商会に侵入して強盗をしたものである。しかし、犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人甲は住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負うべきは当然であって、被告人甲の教唆行為において指示した犯罪の被害者と、本犯たる乙のなした犯罪の被害者とが異る一事を以て、直ちに被告人甲に判示乙の犯罪について何等の責任なきものと速断することを得ないものと言わなければならない。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R5 司法 第1問 エ)
甲は、乙に対し、A方に侵入して金品を窃取するように唆したところ、乙は、犯行を決意し、A方に侵入しようとしたが、施錠を解錠できず、犯行を断念した。帰路において、乙は、B方に侵入し、Bから金品を強取した。甲の教唆行為と乙のB方における住居侵入及び強盗との間に因果関係が認められない場合であっても、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.7.11)は、「犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人Aは住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負う…。」として、教唆行為と実行した犯罪との因果関係が必要となることを示している。
甲の教唆行為と、乙のB方における住居侵入及び強盗との間には、因果関係が認められないから、教唆行為と実行した犯罪との因果関係は認められない。
したがって、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯は成立しない。


全体の正答率 : 0%

(R5 司法 第20問 イ)
【事 例】
甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながらカードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、逮捕を免れるとともに本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去った。同日午前9時20分頃、乙は、甲に電話で、本件計画どおりカードを入手したと伝えた。同日午前9時30分頃、甲は、丙に電話をかけ、本件計画の内容を初めて説明し、乙からカードを受け取って甲に届けるよう依頼し、丙はこれを承諾した。丙は、同日午前11時頃、乙と合流し、カードを受け取って乙と別れ、自動車でA方から約50キロメートル離れた甲方に向かったが、同日午後0時30分頃、甲方付近で降車した際、制服警察官BからA方での事件とは関係なく職務質問を受けた。その際、丙は、Bを殴り、Bに全治2週間を要する打撲傷を負わせ、その隙に上記自動車で逃走し、同日午後1時頃、甲と合流して甲にカードを届けた。その後、丙の交際相手丁は、丙が上記一連の犯行を行い、警察から捜査されていることを認識しつつ、丙を丁の自宅にかくまった。

【記 述】
甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかった場合、乙がAからカードを奪取した行為について、甲に窃盗未遂罪の共同正犯が成立するにとどまる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.7.11)は、「犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人Aは住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負う…。」としている。
構成要件が重なり合う限度で軽い共同正犯が成立することから、窃盗の共謀に基いて実行行為者が強盗に及んだ場合、これに加わらなかった共犯者は共謀の限度で窃盗罪の共同正犯が成立するにとどまる。
甲は、本件計画を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾したことにより窃盗の共謀が成立し、乙はAからカードを奪って持ち去ったとあるから、甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかったとしても、窃盗既遂罪の共同正犯が成立することになる。
したがって、窃盗未遂罪の共同正犯は成立しない。

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放火罪と抽象的事実の錯誤 福岡高判昭和38年12月20日

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概要
現住建造物であるにもかかわらず他人所有非現住建造物であると誤信して放火した場合、他人所有非現住建造物放火罪が成立する。
判例
事案:現住建造物であるにもかかわらず他人所有非現住建造物であると誤信して放火した事案において、他人所有非現住建造物放火罪が成立するかが問題となった。

判旨:「本件家屋にはかねて被告人甲およびその妻A、長女B(当時3年3月余)次女C(当時9月)の4名が居住していたのであるが、Bの母Eが偶々本件犯行のあった2時間位前の午後6時頃本件家屋を訪れたところ、AよりBをしばらく、D方につれて行って遊ばしておいてくれる様依頼されたので、Dは約420米位離れた同人方にBをつれて行ったもので、このことは被告人甲も了知していたものであるところ、被告人甲はその後2時間位して午後8時頃原判示のような経緯から本件家屋でその妻Aを刺殺し、二女Cに瀕死の重傷を与えて之が死亡したものと誤認し、被告人甲も自殺しようと決意し、巳に両女は死亡し被告人甲も自殺するのであるから、もはや本件家屋は住家としても必要ないので焼燬しようと考えて本件家屋に放火した事実が認められる。
 右事実によると本件放火当時被告人甲はAとCは死亡したものと考え、Bは已にD方に行き本件家屋に居ないことを知って、本件家屋はもはや必要がないものとして火を放ったものであるから、被告人は放火直前本件家屋を住居とすることを抛棄し火を放ったものと認めるのが相当である。
 ところでBはその当時3年3月余の幼児であったので、その住居は母A亡きあとは、当然父であった被告人甲の意思に従って定まるものであるから、被告人甲が放火直前本件家屋をその住居とすることを抛棄した以上、Bは本件家屋に住居するものではないというべきであり、したがって、これと同一の見解の下に、本件につき現住建造物放火未遂罪の成立を否定した原判決は正当であり、原判決には所論のような法令の適用の誤はない。」
過去問・解説

(H23 司法 第9問 2)
次の【事例】における甲の罪責に関する【記述】を判例の立場に従って検討しなさい(ただし、事例において、公共の危険は発生したものとする。)。
【事例】
 甲は、乙が所有し単身で居住している木造家屋の玄関前において、同所に駐車中の乙所有の自動二輪車の車体にガソリンをまいた上、新聞紙にライターで点火し、これを同車に投げ付け、同車を炎上させたところ、火が上記家屋に燃え移って全焼した。
【記述】
甲は、火が家屋に燃え移ることを認識・認容していたが、同家屋は居住する者のいない空き家であって同家屋内には誰もいないものと誤信していた場合、他人所有非現住建造物等放火罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(福岡高判昭38.12.20)は、犯人が現住性及び現在性を認識せずに現住建造物に放火した事案において、「甲が放火直前本件家屋をその住居とすることを抛棄した以上、Bは本件家屋に住居するものではないというべきであり、したがって、これと同一の見解の下に、本件につき現住建造物放火未遂罪の成立を否定した原判決は正当…。」として、他人所有非現住建造物放火罪の成立を認めている。
甲は、乙が所有し単身で居住している家屋を居住する者のいない空き家であって同家屋内には誰もいないものと認識していた。
そのため、主観的には他人所有非現住建造物等放火罪の認識で、客観的には他人所有現住建造物等放火罪の構成要件に該当する行為を行っている。
そして、両罪は、他人所有の建造物に放火するという限度で構成要件及び行為態様が重なり合う。
したがって、甲には、他人所有非現住建造物等放火罪が成立する。

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被害者の同意と抽象的事実の錯誤 名古屋地判平成7年6月6日

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概要
殺人罪で起訴された事案において、被害者の真意に基づく嘱託はないものの、被告人においてその嘱託があるものと誤信して殺害したものであるとして、嘱託殺人罪の成立を認めた。
判例
事案:被害者の真意に基づく嘱託はないものの、被告人においてその嘱託があるものと誤信して殺害したとされた事案において、嘱託殺人罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、本件犯行直後から捜査段階、公判段階を通じて、本件殺害につき、『犯行直前にVが発した”僕が先だよ” ”刺してもいいよ”との言葉が呪文のように心の中によぎり、Vが本気で同意し依頼していると信じて殺害に及んだ』と、Vの真意に基づく嘱託があると信じていた旨一貫して供述している。
 しかして、そのように信じた点は、一面、被告人のいわば思いこみの激しい性格によるところもあるものの、他面、被告人は、犯行当時巨額の借金の返済期日が目前に迫っており、Vにその返済への協力を求めたが、Aからはよい返事が得られず、精神的に追い詰められ疲弊していたこと、前記の九州旅行以来、Vから何度となく死を仄めかされ、Vの求めで睡眠薬や果物ナイフを購入したこと、犯行前日から当日にかけて、被告人の目にとまり易いベット横の木箱上に右果物ナイフが置かれていたこと(しかも、これはVが置いたものである)、寝るでもなく起きるでもなくの状態で一夜を過ごすことが一日にわたって続き、精神的にも肉体的にも疲労困ぱいし、前途を思って動揺していたさ中、Vから『僕が先だよ』『刺してもいいよ』と言われたことなどの事情も認められ、これらの事情にかんがみると、『僕が先だよ』『刺してもいいよ』との言葉が呪文のように心の中によぎり、Vが真摯に殺害に同意しているものと信じて犯行に及んだ被告人の心情は、当時の状況に照して通常人の立場からも納得でき、その供述は十分信用できる。
 …被告人は、被害者Aの嘱託がないのにこれあるものと誤信して殺害行為に及んだことが明らかであるから、嘱託殺人の故意で殺人を犯したものとして、平成7年法律第91号による改正前の刑法38条2項により、同改正前の刑法202条嘱託殺人罪の罪責を負うことになる。」
過去問・解説

(H19 司法 第16問 イ)
甲は、乙を殺害することについての乙の承諾がないのに、これがあると誤信して、乙の首をひもで絞めて殺害した。甲には同意殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(名古屋地判平7.6.6)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、被害者Aの嘱託がないのにこれあるものと誤信して殺害行為に及んだことが明らかであるから、嘱託殺人の故意で殺人を犯したものとして、平成7年法律第91号による改正前の刑法38条2項により、同改正前の刑法202条嘱託殺人罪の罪責を負うことになる。」として、同意殺人罪の成立を認めている。これは、軽い罪の認識で重い罪を実現した場合に関する判例の構成要件的符合説の立場から、同意殺人罪の成立を認めた裁判例であると理解されている。
したがって、乙を殺害することについての乙の承諾がないのに、これがあると誤信して乙を殺害した甲には、同意殺人罪が成立する。

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共謀共同教唆犯の事実の錯誤 最二小判昭和23年10月23日

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概要
156条の公文書無形偽造の罪を教唆することを共謀した者の1人が結局公文書有形偽造教唆の手段を選びこれによって目的を達した場合には、共謀者の他方は事実上公文書有形偽造教唆に直接関与しなかったとしても、その結果に対する故意の責任を負わなければならない。
判例
事案:公文書無形偽造の教唆を共謀した者の1人が結局公文書有形偽造の教唆により目的を達した事案において、他の者が故意責任を負うかが問題となった。

判旨:「原判決の認定によれば被告人甲は第1審相被告人乙と共謀して…刑務所医務課長Aを買収してBのため…虚偽の内容の診断書を作成さしてこれを入手しようと決め、乙がその任に当ることになったところ乙は医務課長の買収が困難なのを知って寧しろ医務課長名義の診断書を偽造しようと決意し第1審相被告人丙を教唆して本件診断書を作成偽造せしめたというのである。被告人の故意は前記認定の如く乙と共謀して医務課長をして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る、しかるに現実には前記のような公文書偽造の結果となったのであるから事実の錯誤の問題である、かかる場合に乙の丙に対する本件公文書偽造教唆について被告人が故意の責任を負うべきであるか否やは一の問題であるが本件故意の内容は刑法第156条の罪の教唆であり結果は同法第155条の罪の教唆であるそしてこの両者は犯罪の構成要件を異にするもその罪質を同じくするものであり且法定刑も同じである、而して右両者の動機目的は全く同一である、いづれもBの保釈の為めに必要な虚偽の診断書を取得する為めである、即ち被告人等は最初その目的を達する手段として刑法第156条の公文書無形偽造の罪を教唆することを共謀したが結局共謀者の1人たる乙が公文書有形偽造教唆の手段を選びこれによって遂に目的を達したものである、それであるから乙の丙に対する本件公文書偽造の教唆行為は被告人と乙との公文書無形偽造教唆の共謀と全然無関係に行われたものと云うことはできないのであって矢張り右共謀に基づいてたまたまその具体的手段を変更したに過ぎないから両者の間には相当因果関係があるものと認められる、然らば被告人甲は事実上本件公文書偽造教唆に直接に関与しなかったとしてもなおその結果に対する責任を負わなければならないのである。即ち被告人甲は法律上本件公文書偽造教唆につき故意を阻却しないのである。而して原判決は以上説明の如き趣旨によって被告人が本件診断書の偽造を教唆したものと判断したのであって何等違法の点はない。」
過去問・解説

(H22 司法 第12問 2)
刑法第60条にいう「犯罪」には、教唆犯・従犯も含まれるので、共同して教唆・幇助行為に及んだ者には教唆犯・従犯の共同正犯が成立し得る。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.10.23)は、本肢と同種の事案において、「然らば被告人甲は事実上本件公文書偽造教唆に直接に関与しなかったとしてもなおその結果に対する責任を負わなければならないのである。即ち被告人甲は法律上本件公文書偽造教唆につき故意を阻却しないのである。」として、被告人に教唆犯の共同正犯の成立を認めている。
したがって、共同して教唆・幇助行為に及んだ者には、教唆犯・従犯の共同正犯が成立し得る。

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殺人罪と同意殺人罪の錯誤 大判明治43年4月28日

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概要
被害者が真意なくして冗談で自己の殺害を嘱託し加害者が殺そうとして手を下したるも死ななかった場合には38条2項により、その行為に対して202条、203条の刑を適用すべきである。
判例
事案:被害者が真意なく冗談で被告人に自己の殺害を嘱託したところ、被告人が殺そうとして手を下した場合において、被害者が死ななかった事案において、いかなる罪が成立するかが問題となった。

判旨:「被害者カ真意ナクシテ戯レニ自己ノ殺害ヲ嘱託シ加害者之ヲ殺サントシテ手ヲ下シタルモ遂ケサル場合ニ於テハ刑法第38条第2項ニ依リ其所為ニ対シテ同第202条第203条ノ刑ヲ適用スヘキモノトス」
過去問・解説

(H22 司法 第6問 5)
甲は、Aが甲に射殺されることに同意したため、Aに対し、殺意をもってけん銃を発射したが、銃弾は、Aに当たらずにAの頭部をかすめ、Aの背後にいて甲がその存在を認識しておらず、甲に射殺されることに同意していなかったBに命中して同人を死亡させた。甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する殺人既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「被害者カ真意ナクシテ戯レニ自己ノ殺害ヲ嘱託シ加害者之ヲ殺サントシテ手ヲ下シタルモ遂ケサル場合ニ於テハ刑法第38条第2項ニ依リ其所為ニ対シテ同第202条第203条ノ刑ヲ適用スヘキモノトス」として、被害者が殺害を同意・嘱託していないのにそれを受けたと考えて被害者を殺害した場合、自殺関与等罪が成立することを示している。
そして、別の判例(最判昭53.7.28)は、「犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りるものと解すべき…。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
また、同意殺人罪と殺人罪では、より軽い同意殺人罪の限度で重なり合いが認められる。
したがって、Aに対しては同意殺人罪の故意が認められ、実行行為に及んだものの結果発生に至らなかったため、同意殺人未遂罪が成立する。
また、Bに対しては、客観的には殺人の実行行為であるが、同意殺人罪の限度でしか故意が認められず、同罪が成立するにとどまる。
よって、甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する同意殺人既遂罪が成立する。

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麻薬所持罪の故意 最一小判昭和61年6月9日

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概要
覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩粉末を麻薬であるコカインと誤認して所持した場合には、麻薬取締法66条1項、28条1項の麻薬所持罪が成立する。麻薬取締法66条1項、28条1項の麻薬所持罪を犯す意思で、覚せい剤取締法41条の2第1項1号、14条1項の覚せい剤所持罪に当たる事実を実現したことになり、両罪は、その目的物が麻薬か覚せい剤かの差異があり、後者につき前者に比し重い刑が定められているだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であるところ、麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は、軽い前者の罪の限度において、実質的に重なり合っているといえるためである。
判例
事案:覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩粉末を麻薬であるコカインと誤認して所持していた事案において、いかなる罪が成立するかが問題となった。

判旨:「被告人は、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する粉末を麻薬であるコカインと誤認して所持したというのであるから、麻薬取締法66条1項、28条1項の麻薬所持罪を犯す意思で、覚せい剤取締法41条の2第1項1号、14条1項の覚せい剤所持罪に当たる事実を実現したことになるが、両罪は、その目的物が麻薬か覚せい剤かの差異があり、後者につき前者に比し重い刑が定められているだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であるところ、麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は、軽い前者の罪の限度において、実質的に重なり合っているものと解するのが相当である。被告人には、所持にかかる薬物が覚せい剤であるという重い罪となるべき事実の認識がないから、覚せい剤所持罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い麻薬所持罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第7問 ア)
甲は、乙が所有する木造家屋に乙が現在しているものと思って、同家屋に放火し、これを全焼させたが、実際には同家屋はだれも現在していない空き家であった。この場合、甲には現住建造物等放火罪が成立するが、その刑は非現住建造物等放火罪の刑による。

(正答)

(解説)
判例(最決昭61.6.9)は、「犯罪構成要件要素は同一で、軽い前者の罪の限度において、実質的に重なり合っている…。被告人には、所持にかかる薬物が覚せい剤であるという重い罪となるべき事実の認識がないから、覚せい剤所持罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い罪の故意が成立し同罪が成立する…。」としている。
甲は、現住建造物等放火罪の故意で放火行為を行っているものの、客観的に乙が所有する木造家屋は誰も現在していない空き家であった。
したがって、両者が実質的に重なり合う非現住建造物等放火罪の限度で故意を認めることができ、甲に他人所有非現住建造物等放火罪が成立する。

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