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傷害の罪(因果関係) - 解答モード

暴行と死亡結果との間の因果関係 最三小判昭和49年7月5日

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概要
被告人が被害者を地上に突き倒し同人の大腿部、腰部などを地下足袋で数回踏みつけるなどの暴行を加え、同人に対し左血胸(胸腔内血液貯留)、左大腿打撲症の傷害を負わせたところ、医師が投与した薬剤の作用によりかねて同人の体内にあった未知の病気により、炎症を惹起して左胸膜炎を起し、これに起因する心機能不全のため同人が死亡した場合において、被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。
判例
事案:被害者が暴行を受け、その治療を受けていたところ、治療薬が被害者にとっても無知の病気を悪化させ、死亡したという事案において、暴行と死亡との間に因果関係が認められるかが問題となった。

判旨:「被告人が被害者を地上に突き倒し同人の大腿部、腰部などを地下足袋で数回踏みつけるなどの暴行を加え、同人に対し左血胸(胸腔内血液貯留)、左大腿打撲症の傷害を負わせたところ、同人の胸腔内貯留液を消滅させるため医師が投与した薬剤の作用によりかねて同人の体内にあった未知の乾酪型の結核性病巣が滲出型に変化し、これが炎症を惹起して左胸膜炎を起し、これに起因する心機能不全のため同人が死亡した場合において、被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H29 予備 第1問 2)
甲が、Vを突き倒し、その胸部を踏み付ける暴行を加え、Vに血胸の傷害を負わせたところ、Vは、Vの胸腔内に貯留した血液を消滅させるため医師が投与した薬剤の影響により、かねてVが罹患していた結核性の病巣が変化して炎症を起こし、同炎症に基づく心機能不全により死亡した。この場合、甲の暴行とVの死亡との間には、因果関係がない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭49.7.5)は、本肢と同種の事案において、「同人の胸腔内貯留液を消滅させるため医師が投与した薬剤…が炎症を惹起して左胸膜炎を起し、これに起因する心機能不全のため同人が死亡した場合において、被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。」とのしている。
したがって、甲の暴行とVの死亡との間には、因果関係が認められる。

該当する過去問がありません

暴行と死亡結果との間の因果関係 最二小判平成16年2月17日

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概要
暴行による傷害がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものであった場合には、その治療中に被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在したとしても、上記暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。
判例
事案:暴行により傷害を負った被害者が治療中、医師の指示に従わなかったために治療効果が十分に発揮せず、死亡したという事案において、暴行と死亡結果との間の因果関係が問題となった。

判旨:「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべきであり、本件において傷害致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H19 司法 第12問 3)
甲がVの腹部をナイフで突き刺して内臓損傷の重傷を負わせたところ、Vは救急病院に搬送されて緊急手術を受け、術後、いったん容体は安定した。ところが、意識を回復したVが、医師の指示に従わずに暴れたため、治療の効果が失われ、上記内臓損傷により死亡した。この場合、治療の効果が失われたのはVの落ち度によるのであるから、Vの内臓損傷がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものであっても、甲の刺突行為とVの死亡の結果との間の因果関係を肯定することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.2.17)は、「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべき…。」としている。
したがって、Vの落ち度により治療の効果が出なかったとしても、Vの内臓損傷がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものである以上、甲の刺突行為とVの死亡の結果との間には因果関係が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H23 司法 第2問 オ)
甲は、Vの後頸部に割れたビール瓶を突き刺し、Vに重篤な頸部の血管損傷等の傷害を負わせたため、Vは病院に搬送された。Vは、病院で手術を受け、容体が一旦は安定したが、医師からなお予断を許さないから安静を続けるように指示されていたにもかかわらず、医師の指示に従わずに病室内を動き回ったため、当初の傷害の悪化による脳機能障害により死亡した。因果関係が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.2.17)は、「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべき…。」としている。
したがって、Vが医師の指示に従わなかったという落ち度により悪化したとしても、Vの重篤な頸部の血管損傷等の傷害がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものである以上、甲の刺突行為とVの脳機能障害による死亡の結果との間には因果関係が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H28 共通 第5問 3)
甲は、Vの頸部を包丁で刺し、Vは、同刺創に基づく血液循環障害による脳機能障害により死亡した。その死亡するまでの経過は、Vは、受傷後、病院で緊急手術を受けて一命をとりとめ、引き続き安静な状態で治療を継続すれば数週間で退院することが可能であったものの、安静にすることなく病室内を歩き回ったため治療の効果が上がらず、同脳機能障害により死亡したというものであった。この場合でも、甲がVの頸部を包丁で刺した行為とVの死亡との間には、因果関係がある。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.2.17)は、「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべき…。」としている。
したがって、安静にすることなく病室内を歩き回ったというVの落ち度により治療の効果が上がらなかったとしても、Vの頸部の傷害がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものである以上、甲の刺突行為とVの脳機能障害による死亡の結果との間に因果関係が認められる。


全体の正答率 : 100%

(R3 予備 第11問 イ)
甲は、Vの頸部を包丁で刺突し、致命傷になり得る頸部刺創の傷害をVに負わせたところ、Vは、病院で緊急手術を受けたため一命をとりとめ、引き続き安静な状態で治療を継続すれば数週間で退院することが可能となったが、安静にせず、病室内を歩き回ったことから治療の効果が上がらず、同頸部刺創に基づく血液循環障害による肝機能障害により死亡した。この場合、甲の上記刺突行為とVの死亡との間に、因果関係はない。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.2.17)は、「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべき…。」としている。
したがって、安静にすることなく病室内を歩き回ったというVの落ち度により治療の効果が上がらなかったとしても、Vの致命傷になり得る頸部の傷害がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものである以上、甲の刺突行為とVの肝機能障害による死亡の結果との間には因果関係が認められる。

該当する過去問がありません

第三者の行為が介在した場合における因果関係 最三小判平成2年11月20日

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概要
被告人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、その後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。
判例
事案:被告人が被害者を暴行し、いずれ死に至らしめる傷害を負わせたあと、放置したところ、第三者が被害者に暴行を加え、第三者の暴行により、被害者の死期が早まったという事案において、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係が問題となった。

判旨:「被告人は、…多数回殴打するなどの暴行を加えた結果、恐怖心による心理的圧迫等によって、被害者の血圧を上昇させ、内因性高血圧性橋脳出血を発生させて意識消失状態に陥らせた後、同人を…建材会社の資材置場まで自動車で運搬し、…放置して立ち去ったところ、被害者は、…内因性高血圧性橋脳出血により死亡するに至った。ところで、右の資材置場においてうつ伏せの状態で倒れていた被害者は、その生存中、何者かによって角材でその頭頂部を数回殴打されているが、その暴行は、既に発生していた内因性高血圧性橋脳出血を拡大させ、幾分か死期を早める影響を与えるものであった、というのである。
 このように、犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ、本件において傷害致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H23 司法 第2問 イ)
判例の立場に従って検討し、甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められる場合には1を、認められない場合には2を選びなさい。
甲は、人通りの多い路上でVとけんかになり、Vの顔面を殴打したところ、Vは路上に転倒し、脳震とうを起こして一時的に意識を失った。甲がVを放置して逃走した後、日頃からVに恨みを持っていた乙が通り掛かり、意識を失っているVの腹部を多数回足で蹴ったところ、Vは乙のこの暴行で生じた内臓の出血により死亡した。(甲がVの顔面を殴打して転倒させた行為)

(正答)2

(解説)
判例(最判平2.11.20)は、「犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ、本件において傷害致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。」としている。
甲はVの顔面を殴り、Vが路上に転倒し、脳震とうを起こして一時的に意識を失ったものの、Vが死亡したのは甲とは無関係の乙によりなされたVの腹部暴行により内臓出血によるものであるから、甲の暴行によりVの死因となった傷害が形成されたとはいえず、甲がVの顔面を殴打して転倒させた行為とVの死亡との間には因果関係が認められない。


全体の正答率 : 100%

(H29 予備 第1問 5)
甲の暴行とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、Vの頭部を多数回殴打する暴行を加えた結果、Vに脳出血を発生させて意識喪失状態に陥らせた上、Vを放置して立ち去った。その後、Vは、甲とは無関係な乙から角材で頭頂部を殴打される暴行を加えられ、死亡するに至った。Vの死因は甲の暴行により形成された脳出血であり、乙の暴行は、既に発生していた脳出血を拡大させ、幾分か死期を早める影響を与えるものであった。この場合、甲の暴行とVの死亡との間には、因果関係がある。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.11.20)は、「犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ、本件において傷害致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。」としている。
甲は、Vの頭部を殴り、Vに脳出血を発生させて意識喪失状態に陥らせている。
そして、その後乙が角材でVの頭頂部を殴打する暴行を加え、既に発生していた脳出血を拡大させている。
もっとも、乙の暴行は、幾分か死期を早める影響を与えるものであったものの、Vの死因は甲の暴行により形成された脳出血であるから、甲の暴行とVの死亡との間に因果関係が認められる。


(H27 司法 第3問 エ)
判例の立場に従って検討し、甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められる場合には1を、認められない場合には2を選びなさい。
甲は、路上でVの頭部を木刀で多数回殴打し、これにより直ちに治療しなければ数時間後には死亡するほどの脳出血を伴う傷害をVに負わせ、倒れたまま動けないVを残して立ち去った。そこへ、たまたま通り掛かった事情を知らない乙が、Vの頭部を1回蹴り付け、Vは、当初の脳出血が悪化し、死期が若干早まって死亡した。

(正答)1

(解説)
判例(最判平2.11.20)は、「犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ、本件において傷害致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。」としている。
甲は、Vの頭部を殴り、Vに脳出血を発生させて直ちに治療しなければ数時間後には死亡するほどの脳出血を伴う傷害をVに負わせている。
その後、放置されているVをたまたま通り掛かった事情を知らない乙が、Vの頭部を1回蹴り付け、Vは、当初の脳出血が悪化し、死期が若干早まって死亡したとしているが、甲の暴行によってVの死因となった傷害が形成されていることから、甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

該当する過去問がありません

被害者の行為の介在と因果関係 最二小判平成15年7月16日

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概要
公園内及びマンション居室内で暴行を受けた被害者が、すきをみて逃走し、被告人らによる追跡を逃れるためにマンション付近の高速道路に進入し、疾走してきた自動車に追突され、後続の自動車に礫過されて死亡した事案において、被害者が逃走しようとして高速道路に進入したことは、それ自体極めて危険な行為であるが、その行為が、被告人らの暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえず、被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価でき、被告人らの暴行と被害者の死亡の間の因果関係が認められる。
判例
事案:被害者が被告人からの暴行から逃れるために高速道路に出て、車にはねられ死亡したという事案において、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係が問題となった。

判旨:「被告人4名は、害者に対し、公園において、深夜約2時間10分にわたり、間断なく極めて激しい暴行を繰り返し、引き続き、マンション居室において、約45分間、断続的に同様の暴行を加えた。
 被害者は、すきをみて、上記マンション居室から靴下履きのまま逃走したが、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、逃走を開始してから約10分後、被告人らによる追跡から逃れるため、上記マンションから約763mないし約810m離れた高速道路に進入し、疾走してきた自動車に衝突され、後続の自動車に轢かれて、死亡した。
 …被害者が逃走しようとして高速道路に進入したことは、それ自体極めて危険な行為であるというほかないが、被害者は、被告人らから長時間激しくかつ執ような暴行を受け、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、必死に逃走を図る過程で、とっさにそのような行動を選択したものと認められ、その行動が、被告人らの暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえない。そうすると、被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H19 司法 第12問 4)
甲及び乙が木刀と野球のバットでVを執拗に殴打し、辛うじて逃走したVを更に殴打すべく追跡したところ、Vは、追跡を逃れようとビルの屋上に逃げ、更に約1メートル離れた隣のビルの屋上に飛び移ろうとして地上に落下して死亡した場合には、Vは自ら危険な行動を行っている以上、甲及び乙による殴打、追跡とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、本肢と同種の事案において、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」として、直接の死因が行為者の行為に起因しているのであれば因果関係を肯定できることを示している。
Vは、追跡を逃れようとビルの屋上に逃げ、更に約1メートル離れた隣のビルの屋上に飛び移ろうとして地上に落下して死亡している。
甲及び乙が木刀と野球のバットでVを執拗に殴打していたから、Vが飛び移ろうとしたことは、暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえず、殴打行為に起因するものと評価することができる。
したがって、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H23 司法 第2問 ウ)
甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、高速道路のパーキングエリアに駐車中の自動車内で、V女と口論になり、感情が高ぶってV女の顔面を平成手で1回殴打した。V女は、腹を立てて1人で帰宅しようと考え、車外に出て、高速道路の本線を横断し、反対車線側に設置された高速バスの停留所に行こうとしたところ、本線上を走行してきた乙運転の自動車にはねられ、全身打撲により死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、被害者が暴行の現場から移動した結果死亡した事案において、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
V女は、腹を立てて1人で帰宅しようと考え、車外に出て、高速道路の本線を横断している。
高速道路の本線を横断し、反対車線側に設置された高速バスの停留所に行こうとしたことは、Vの正常な判断能力のもとになされたものであり、甲の暴行に起因するものと評価できない。
したがって、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係は認めらない。


全体の正答率 : 100%

(H27 司法 第3問 ア)
甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、自宅に遊びに来た友人Vの態度に腹を立て、その頭部を平成手で1回殴打したところ、Vが家から出て行ったので、謝りながらVを追い掛けた。Vは、甲が謝りながら追い掛けてきたことに気付いたが、甲と話をしたくなかったので、甲に追い付かれないように、あえて遮断機が下りていた踏切に入ったところ、列車にひかれ、内臓破裂により死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、被害者が暴行の現場から移動した結果死亡した事案において、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
Vは、甲が謝りながら追い掛けてきたことに気付いたが、甲と話をしたくなかったので、甲に追い付かれないように、あえて遮断機が下りていた踏切に入っている。
あえて遮断機が下りていた踏切に入ったことは、Vの正常な判断能力のもとになされたものであり、甲の暴行に起因するものと評価できないから、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認めらない。


全体の正答率 : 100%

(H27 司法 第3問 イ)
甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、マンション4階の甲方居間で、Vの頭部や腹部を木刀で多数回殴打した。Vは、このままでは殺されると思い、甲の隙を見て逃走することを決意し、窓からすぐ隣のマンションのベランダに飛び移ろうとしたが、これに失敗して転落し、脳挫滅により死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、被害者が暴行の現場から移動した結果死亡した事案において、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
甲は、甲の自宅でVの頭部や腹部を木刀で多数回殴打しており、Vは、このままでは殺されると思い、甲の隙を見て逃走することを決意し、窓からすぐ隣のマンションのベランダに飛び移ろうとしたが、これに失敗して転落し、脳挫滅により死亡している。
このように飛び移ろうとしたことは、暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であるとはいえず、甲の暴行に起因するものと評価することができるから、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。


全体の正答率 : 100%

(R3 予備 第11問 ア)
甲は、他の共犯者5名と共に、約3時間にわたり、マンションの一室において、Vの頭部、腹部等を木刀で多数回殴打していたところ、これにより極度の恐怖感を抱いたVが、同室から逃走し、甲らによる追跡から逃れるために、同マンション付近にある高速道路に進入し、疾走してきた自動車に衝突され、死亡した。この場合、甲らの上記殴打行為とVの死亡との間に、因果関係はない。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、本肢と同種の事案において、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
甲は、Vを共犯者5名とともに3時間にわたり、Vの頭部、腹部等を木刀で多数回殴打しており、これにより極度の恐怖感を抱いたVが、追跡から逃れるために、付近にある高速道路に進入し、疾走してきた自動車に衝突されVが死亡している。
付近にある高速道路に進入したことは、暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえず、暴行に起因するものと評価することができるから、甲らの殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

該当する過去問がありません

被告人の行為と被害者の不適当な行為により生じた結果との間の因果関係 最三小判平成16年10月19日

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概要
被告人の行為と密接な関係を有する被害者が不適当な行為により危険が誘発された場合、被告人の行為と被害者の不適当な行為により生じた結果との間には因果関係が認められる。
判例
事案:被告人が、被害者が運転する車を高速道路上で止め、その後被告人が立ち去った後被害者が高速道路上でエンジンキーを探していたところ被害者が後続車にはねられたという事案において、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係が問題となった。

判旨:「Aに文句を言い謝罪させるため、夜明け前の暗い高速道路の第3通行帯上に自車及びA車を停止させたという被告人の本件過失行為は、それ自体において後続車の追突等による人身事故につながる重大な危険性を有していたというべきである。そして、本件事故は、被告人の上記過失行為の後、Aが、自らエンジンキーをズボンのポケットに入れたことを失念し周囲を捜すなどして、被告人車が本件現場を走り去ってから7、8分後まで、危険な本件現場に自車を停止させ続けたことなど、少なからぬ他人の行動等が介在して発生したものであるが、それらは被告人の上記過失行為及びこれと密接に関連してされた一連の暴行等に誘発されたものであったといえる。そうすると、被告人の過失行為と被害者らの死傷との間には因果関係があるというべきである…。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H23 司法 第2問 ア)
甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、深夜、高速道路上で自動車(甲車)を運転中、大型トレーラー(乙車)を運転中の乙とトラブルになり、乙車の進路を妨害した上、追越車線上に乙車を停止させた。甲は、甲車から降り、乙を降車させた上、路上で乙に暴行を加えた後、甲車を運転して立ち去った。乙は、甲が立ち去った後、甲に奪われないためにズボンのポケットにエンジンキーを入れていたのを失念し、乙車を追越車線上に停車させたまま、エンジンキーを探していた。甲が立ち去ってから約5分後、後方から自動車を運転してきたVは、乙車を発見するのが遅れて自車を追突させ、Vはそれにより死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.10.19)は、本肢と同種の事案において、「少なからぬ他人の行動等が介在して発生したものであるが、それらは被告人の上記過失行為及びこれと密接に関連してされた一連の暴行等に誘発されたものであったといえる。そうすると、被告人の過失行為と被害者らの死傷との間には因果関係があるというべきである。」としている。
乙は、車を高速道路の追越車線上に停車させたまま、エンジンキーを探していたという乙の危険な行動が介在しているが、甲が乙を停車させ暴行した行為に誘発されたものであるといえ、甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

該当する過去問がありません

被害者の負傷と被告人の行為との因果関係 最一小判昭和25年11月9日

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概要
傷害罪は、結果犯であって、その成立には、傷害の原因たる暴行についての意思があれば足り、特に傷害の意思の存在を必要としない。被告人が被害者に対して大声で「何をボヤボヤしているのだ」等と悪口を浴せ、矢庭に拳大の瓦の破片を投げつけ、なおも「殺すぞ」等と怒鳴りながら側にあった鍬を振りあげて追いかける気勢を示したので被害者がこれに驚いて難を避けようとして夢中で逃げ出し、走り続けるうち誤って鉄棒に躓いて転倒し、打撲傷を負った場合には、右傷害の結果は、被告人の暴行によって生じたものと解するのが相当である。
判例
事案:被害者が被告人の暴行行為から逃れる途中にけがをしたという事案において、傷害罪の成否が問題となった。

判旨:「傷害罪は結果犯であるから、その成立には傷害の原因たる暴行についての意思が存すれば足り、特に傷害の意思の存在を必要としないのである。されば、仮りに、所論のように被告人には被害者に傷害を加える目的をもたなかったとしても、傷害の原因たる判示の暴行についての意思が否定されえない限り、原判決には所論のような理由不備の違法は存しない。
 …被害者が打撲傷を負うた直接の原因が過って鉄棒に躓いて転倒したことであり、この転倒したことは被告人が大声で『何をボヤボヤしているのだ』等と悪口を浴せ矢庭に拳大の瓦の破片を同人の方に投げつけ、尚も『殺すぞ』等と怒鳴りながら側にあった鍬をふりあげて追かける気勢を示したので同人は之に驚いて難を避けようとして夢中で逃げ出し走り続ける中におこったことであることは判文に示すとおりであるから、所論のように被告人の追い掛けた行為と被害者の負傷との間には何等因果関係がないと解すべきではなく、被告人の判示暴行によって被害者の傷害を生じたものと解するのが相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H24 共通 第15問 2)
【事例】
甲と乙は、V経営の食料品店で買った弁当を食べたら食中毒になった旨の嘘を言って因縁を付けてVを脅迫するとともに、同人に軽度の暴行を加え、これらの暴行・脅迫により同人を畏怖させて、損害賠償金の名目で50万円を支払わせ、これを分配することを計画した。乙は、計画に従い、同店に行き、Vに対し、「この店の弁当を食べたら食中毒になった。店の営業を続けたければ50万円払え。払わないと、この店の弁当で食中毒になったと書いたビラをばらまくぞ。」と語気鋭く申し向けた上、Vの額を手の平成で軽くたたいた。Vは、これをよけようとした際、バランスを崩して転倒し、全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負った。
Vは、乙が食中毒になったことは嘘であると気付いたが、乙の要求に応じないと、更に暴力を振るわれたり、店を中傷するビラをまかれるかもしれないと畏怖し、手持ちの現金30万円を乙に渡し、残りの20万円は翌日支払うことで乙を納得させた。
乙は、同店を出て、甲と会い、前記経緯を説明した上、Vから受け取った30万円のうち15万円を分け前として甲に渡した。
乙は、翌日、同店を訪れてVから残りの20万円を受け取ろうとしたが、通報を受けた警察官が同店近くにいたので、20万円の受取は断念した。
乙は、甲に事前に相談することなく、腹いせに、「V経営の食料品店で買った弁当を食べた客が食中毒になった。」という虚偽の事実が書かれたビラを多数の者に配った。
なお、甲は、乙がVに怪我を負わせることや前記ビラを配ることを予想していなかった。
Vに怪我を負わせたことについて、乙には、傷害罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.11.9)は、「被害者が打撲傷を負った直接の原因が過って鉄棒に躓いて転倒したことであり、この転倒したことは被告人が大声で『何をボヤボヤしているのだ』等と悪口を浴せ矢庭に拳大の瓦の破片を同人の方に投げつけ、尚も『殺すぞ』等と怒鳴りながら側にあった鍬をふりあげて追かける気勢を示したので同人は之に驚いて難を避けようとして夢中で逃げ出し走り続ける中におこったことであることは判文に示すとおりであるから…被告人の判示暴行によって被害者の傷害を生じたものと解する。」として、被害者が避けた際に負傷した場合にも、暴行と怪我の因果関係が認められることを示している。
Vは、乙の暴行をよけようとした際バランスを崩して転倒し、全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負っているから、乙の暴行とVの怪我の因果関係が認められ、乙に傷害罪が成立する。

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傷害罪の実行行為 最二小判昭和27年6月6日

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概要
傷害罪は暴行によらずに病毒を他人に感染させる場合にも成立する。
判例
事案:急性りん菌性尿道炎にかかっている被告人が、これを自覚しながら被害者の外陰部に被告人の陰茎を押し当て、被害者に淋菌性子宮内膜炎の疾病を生じさせたという事案において、傷害罪の成否が問題となった。

判旨:「傷害罪は他人の身体の生理的機能を毀損するものである以上、その手段が何であるかを問はないのであり、本件のごとく暴行によらずに病毒を他人に感染させる場合にも成立するのである。
 …性病を感染させる懸念あることを認識して本件所為に及び他人に病毒を感染させた以上,当然傷害罪は成立する…。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R5 司法 第2問 エ)
性病を有する者が、性行為を行えば相手方に感染させる危険性があると認識しながら、情を秘して同人と性行為を行い、同人に性病を感染させたとしても、同人が性行為に同意している場合には、傷害罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭27.6.6)は、「傷害罪は他人の身体の生理的機能を毀損するものである以上、その手段が何であるかを問はないのであり、本件のごとく暴行によらずに病毒を他人に感染させる場合にも成立する。」としている。
被害者が性行為に同意していたとしても、性病に感染することへの同意はない。
したがって、相手方に感染させる危険性があると認識しながら、情を秘して性行為を行い、性病を感染させているのであれば、傷害罪が成立する。

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傷害の実行行為 最二小決平成17年3月29日

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概要
自宅から隣家の被害者に向けて、精神的ストレスによる障害を生じさせるかもしれないことを認識しながら、連日連夜、ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして、被害者に精神的ストレスを与え、慢性頭痛症等を生じさせた行為は、傷害罪の実行行為に当たる。
判例
事案:自宅から隣家の被害者に向けて、精神的ストレスによる障害を生じさせるかもしれないことを認識しながら、連日連夜、ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして、被害者に精神的ストレスを与え、慢性頭痛症等を生じさせたという事案において、傷害罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、自宅の中で隣家に最も近い位置にある台所の隣家に面した窓の一部を開け、窓際及びその付近にラジオ及び複数の目覚まし時計を置き、約1年半の間にわたり、隣家の被害者らに向けて、精神的ストレスによる障害を生じさせるかもしれないことを認識しながら、連日朝から深夜ないし翌未明まで、上記ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして、同人に精神的ストレスを与え、よって、同人に全治不詳の慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴り症の傷害を負わせたというのである。以上のような事実関係の下において、被告人の行為が傷害罪の実行行為に当たるとして、同罪の成立を認めた原判断は正当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R1 共通 第4問 2)
傷害罪は、暴行罪の結果的加重犯であるから、被害者に暴行を加えずに身体の生理的機能を毀損した場合、傷害罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最決平17.3.29)は、騒音によって睡眠障害などの傷害を負わせた事案において、「被告人の行為が傷害罪の実行行為に当たる…。」としている。
したがって、暴行のみならず、暴行を加えない無形的方法によっても、身体の生理的機能を毀損した場合、傷害罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R5 司法 第2問 イ)
相手方の意思に反して、その耳元で楽器を大音量で鳴らし続けた場合には、人の身体に対して不法な攻撃を加えたものとして暴行罪が成立し得る。

(正答)

(解説)
判例(最決平17.3.29)は、騒音によって睡眠障害などの傷害を負わせた事案において、「被告人の行為が傷害罪の実行行為に当たる…。」として、暴行のみならず、暴行を加えない無形的方法によっても、身体の生理的機能を毀損した場合、傷害罪が成立することを示している。
したがって、相手方の意思に反して、その耳元で楽器を大音量で鳴らし続ける行為は、暴行罪の実行行為に当たり、当該行為に暴行罪が成立し得る。

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傷害罪の実行行為 最三小決平成24年1月30日

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概要
睡眠薬等を摂取させて数時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた行為につき傷害罪の成立が認められる。
判例
事案:被害者に対し、睡眠薬等を摂取させたことによって、意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせたという事案において、傷害罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、病院で勤務中ないし研究中であった被害者に対し、睡眠薬等を摂取させたことによって、約6時間又は約2時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせ、もって、被害者の健康状態を不良に変更し、その生活機能の障害を惹起したものであるから、いずれの事件についても傷害罪が成立すると解するのが相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R1 共通 第4問 3)
被害者に睡眠薬を摂取させたことによって一定時間にわたり筋弛緩作用等を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた場合、傷害罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最決平24.1.30)は、「被告人は、病院で勤務中ないし研究中であった被害者に対し、睡眠薬等を摂取させたことによって、約6時間又は約2時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせ、もって、被害者の健康状態を不良に変更し、その生活機能の障害を惹起したものであるから、いずれの事件についても傷害罪が成立すると解するのが相当である。」としている。
したがって、被害者に睡眠薬を摂取させたことによって一定時間にわたり筋弛緩作用等を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた場合、傷害罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R5 司法 第2問 ウ)
ひそかに相手方に睡眠薬を摂取させ、2時間にわたり意識を失わせるとともに筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせたとしても、覚醒後の健康状態に支障がない場合には、傷害罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最決平24.1.30)は、「被告人は、病院で勤務中ないし研究中であった被害者に対し、睡眠薬等を摂取させたことによって、約6時間又は約2時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせ、もって、被害者の健康状態を不良に変更し、その生活機能の障害を惹起したものであるから、いずれの事件についても傷害罪が成立すると解するのが相当である。」としている。
したがって、覚醒後の健康状態に支障がない場合であっても、傷害罪が成立する。

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傷害致死の因果関係 最二小判昭和25年3月31日

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概要
被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合でも、被告人が行為時の特殊事情と相まって致死の結果を生じたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる。
判例
事案:被害者に暴行を加え負傷させ、本来その傷は通常10日ぐらいで治癒する軽いのものであったが、被害者が病気により脳の病変を患っていたためにその病変に起因して死亡したという事案において、被告人の行為と被害者の死亡との間に因果関係が認められるかが問題となった。

判旨:「被害者Vは予て脳梅毒にかかって居り脳に高度の病的変化があったので顔面に激しい外傷を受けたため脳の組織を一定度崩壊せしめその結果死亡するに至った…被告人の行為によって脳組織の崩壊を来したものであること従って被告人の行為と被害者の死亡との間に因果関係を認めることができるのであってかかる判断は毫も経験則に反するものではない。又被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができるのである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H27 司法 第3問 オ)
甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、面識のないVが電車内で酔って絡んできたため、Vの顔面を拳で1回殴打したところ、もともとVは特殊な病気により脳の組織が脆弱となっており、その1回の殴打で脳の組織が崩壊し、その結果Vが死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったらば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる…。」としている。
したがって、Vは、特殊な病気により脳の組織が脆弱となっていたという特殊事情があったが、甲の殴打行為と相まって死亡結果をもたらしたといえ、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。


全体の正答率 : 100%

(R3 予備 第11問 ウ)
甲は、Vの顔面を1回足で蹴ったところ、特殊な病気により脆弱となっていたVの脳組織が崩壊してVが死亡したが、当該病気の存在について、一般人は認識することができず、甲も認識していなかった。この場合、甲の上記足蹴り行為とVの死亡との間に、因果関係はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったらば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる…。」としている。
Vの病気の存在について、一般人は認識することができず、甲も認識していなかったが、甲の蹴った行為と相まって死亡結果をもたらしたといえ、甲の蹴った行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

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傷害致死の因果関係 最一小判昭和46年6月17日

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概要
致死の原因たる暴行は、必ずしもそれが死亡の唯一の原因又は直接の原因であることを要するものではなく、たまたま被害者の身体に高度の病変があったため、これと相まって死亡の結果を生じた場合であっても、右暴行による致死の罪の成立を妨げない。
判例
事案:被告人が被害者の顔面を夏布団でおおい、鼻口部を圧迫するなどして被害者の反抗を抑圧した上、現金等を強取し、その暴行により被害者を死亡させたという事案において、暴行と致死の結果との間の因果関係が問題になった。

判旨:「原判決の認定した事実によれば、被害者Aの死因は、被告人の同判決判示の暴行によって誘発された急性心臓死であるというのであり、…致死の原因たる暴行は、必らずしもそれが死亡の唯一の原因または直接の原因であることを要するものではなく、たまたま被害者の身体に高度の病変があったため、これとあいまって死亡の結果を生じた場合であっても、右暴行による致死の罪の成立を妨げないと解すべきことは所論引用の当裁判所判例(昭和22年(れ)第22号同年11月14日第三小法廷判決、刑集1巻6頁。昭和24年(れ)第2831号同25年3月31日第二小法廷判決、刑集4巻3号469頁。昭和31年(あ)第2778号同32年3月14日第一小法廷決定、刑集11巻3号1075頁。昭和35年(あ)第2042号同36年11月21日第三小法廷決定、刑集15巻10号1731頁。)の示すところであるから、たとい、原判示のように、被告人の本件暴行が、被害者の重篤な心臓疾患という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められ、しかも、被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らず、また、致死の結果を予見することもできなかったものとしても、その暴行がその特殊事情とあいまって致死の結果を生ぜしめたものと認められる以上、その暴行と致死の結果との間に因果関係を認める余地があるといわなければならない。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H19 司法 第12問 2)
甲がVを殴打したところ、Vには重篤な心臓疾患があったため、その疾患と相まってVが死亡した場合、V自身が同疾患の存在を認識していない限り、甲の殴打とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができるのである。」として、被害者自身が特殊事情について認識しているか否かに関係なく因果関係を肯定している。
したがって、Vは重篤な心臓疾患を患っていたことを認識はしていないが、甲の殴打行為とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することができる。


全体の正答率 : 100%

(H28 共通 第5問 2)
甲が、心臓発作を起こしやすい持病を持ったVを突き飛ばして尻餅をつくように路上に転倒させたところ、Vはその転倒のショックで心臓発作を起こして死亡した。Vにその持病があることを甲が知り得なかった場合でも、甲がVを突き飛ばして路上に転倒させた行為とVの死亡との間には、因果関係がある。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったらば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる…。」として、行為者の認識や予見可能性を問題としていない。
したがって、Vにその持病があることを甲が知り得ず、Vは心臓発作を起こしやすい持病があるという特殊事情があったとしても、甲の突き飛ばした行為と相まって死亡結果をもたらしたといえ、甲の突き飛ばした行為とVの死亡との間には因果関係が認められる。

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傷害致死の因果関係 最三小判昭和49年7月5日

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概要
被告人が被害者を地上に突き倒し同人の大腿部、腰部などを地下足袋で数回踏みつけるなどの暴行を加え、同人に対し左血胸(胸腔内血液貯留)、左大腿打撲症の傷害を負わせたところ、医師が投与した薬剤の作用によりかねて同人の体内にあった未知の病気により、炎症を惹起して左胸膜炎を起し、これに起因する心機能不全のため同人が死亡した場合において、被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。
判例
事案:被害者が暴行を受け、その治療を受けていたところ、治療薬が被害者にとっても無知の病気を悪化させ、死亡したという事案において、暴行と死亡との間に因果関係が認められるかが問題となった。

判旨:「被告人が被害者を地上に突き倒し同人の大腿部、腰部などを地下足袋で数回踏みつけるなどの暴行を加え、同人に対し左血胸(胸腔内血液貯留)、左大腿打撲症の傷害を負わせたところ、同人の胸腔内貯留液を消滅させるため医師が投与した薬剤の作用によりかねて同人の体内にあった未知の乾酪型の結核性病巣が滲出型に変化し、これが炎症を惹起して左胸膜炎を起し、これに起因する心機能不全のため同人が死亡した場合において、被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H29 予備 第1問 2)
甲が、Vを突き倒し、その胸部を踏み付ける暴行を加え、Vに血胸の傷害を負わせたところ、Vは、Vの胸腔内に貯留した血液を消滅させるため医師が投与した薬剤の影響により、かねてVが罹患していた結核性の病巣が変化して炎症を起こし、同炎症に基づく心機能不全により死亡した。この場合、甲の暴行とVの死亡との間には、因果関係がない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭49.7.5)は、本肢と同種の事案において、「被告人が…暴行を加え、同人に対し…傷害を負わせたところ、同人の胸腔内貯留液を消滅させるため医師が投与した薬剤の作用…に起因する心機能不全のため同人が死亡した場合において、被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係があるとしている。」としている。
したがって、甲の暴行とVの死亡との間には、因果関係がある。

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傷害致死の因果関係 最三小判昭和59年7月6日

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概要
被害者の死因となったくも膜下出血が、被告人らの暴行に耐えかねた被害者が逃走しようとして池に落ち込み露出した岩石に頭部を打ちつけたため生じたものであるとしても、被告人らの暴行と被害者の右受傷に基づく死亡との間に因果関係を認めるのが相当である。
判例
事案:被害者が暴行から逃れようとして池に落ち、岩に頭部をぶつけたことが原因で死亡した事案において、暴行と死亡結果の間の因果関係が問題となった。

判旨:「本件被害者の死因となったくも膜下出血の原因である頭部擦過打撲傷が、たとえ、被告人及び共犯者2名による足蹴り等の暴行に耐えかねた被害者が逃走しようとして池に落ち込み、露出した岩石に頭部を打ちつけたため生じたものであるとしても、被告人ら3名の右暴行と被害者の右受傷に基づく死亡との間に因果関係を認めるのを相当とした原判決の判断は、正当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H29 予備 第1問 1)
甲が、Vの胸部、腹部及び腰部を殴打したり足蹴りしたりする暴行を加えたところ、それに耐えかねたVは、その場から逃走した際、逃げることに必死の余り、過って路上に転倒し、縁石に頭部を打ち付けたことによって、くも膜下出血により死亡した。この場合、甲の暴行とVの死亡との間には、因果関係がある。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.7.6)は、本肢と同種の事案において、「暴行に耐えかねた被害者が逃走しようとして池に落ち込み、露出した岩石に頭部を打ちつけたため生じたものであるとしても、被告人らの右暴行と被害者の右受傷に基づく死亡との間に因果関係を認めるのが相当である。」としている。
Vは、甲の暴行に耐えかねて逃げるのに必死になるあまり転倒し頭部を打ち付け死亡しているが、甲の暴行がVの転倒をもたらし、危険を死亡結果へと現実化させたといえる。
したがって、甲の暴行とVの死亡との間に、因果関係が認められる。

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傷害致死の因果関係 最三小判平成2年11月20日

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概要
被告人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、その後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。
判例
事案:被告人が被害者を暴行し、いずれ死に至らしめる傷害を負わせたあと、放置したところ、第三者が被害者に暴行を加え、第三者の暴行により、被害者の死期が早まったという事案において、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係が問題となった。

判旨:「被告人は、…多数回殴打するなどの暴行を加えた結果、恐怖心による心理的圧迫等によって、被害者の血圧を上昇させ、内因性高血圧性橋脳出血を発生させて意識消失状態に陥らせた後、同人を…建材会社の資材置場まで自動車で運搬し、…放置して立ち去ったところ、被害者は、…内因性高血圧性橋脳出血により死亡するに至った。ところで、右の資材置場においてうつ伏せの状態で倒れていた被害者は、その生存中、何者かによって角材でその頭頂部を数回殴打されているが、その暴行は、既に発生していた内因性高血圧性橋脳出血を拡大させ、幾分か死期を早める影響を与えるものであった、というのである。
 このように、犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ、本件において傷害致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H23 司法 第2問 イ)
判例の立場に従って検討し、甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められる場合には1を、認められない場合には2を選びなさい。
甲は、人通りの多い路上でVとけんかになり、Vの顔面を殴打したところ、Vは路上に転倒し、脳震とうを起こして一時的に意識を失った。甲がVを放置して逃走した後、日頃からVに恨みを持っていた乙が通り掛かり、意識を失っているVの腹部を多数回足で蹴ったところ、Vは乙のこの暴行で生じた内臓の出血により死亡した。(甲がVの顔面を殴打して転倒させた行為)

(正答)2

(解説)
判例(最判平2.11.20)は、「犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ…る。」としている。
甲はVの顔面を殴り、Vが路上に転倒し、脳震とうを起こして一時的に意識を失ったものの、Vが死亡したのは甲とは無関係の乙によりなされたVの腹部暴行により内臓出血によるものである。
したがって、甲がVの顔面を殴打して転倒させた行為とVの死亡との間に因果関係は認められない。


全体の正答率 : 100%

(H29 予備 第1問 5)
甲の暴行とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、Vの頭部を多数回殴打する暴行を加えた結果、Vに脳出血を発生させて意識喪失状態に陥らせた上、Vを放置して立ち去った。その後、Vは、甲とは無関係な乙から角材で頭頂部を殴打される暴行を加えられ、死亡するに至った。Vの死因は甲の暴行により形成された脳出血であり、乙の暴行は、既に発生していた脳出血を拡大させ、幾分か死期を早める影響を与えるものであった。この場合、甲の暴行とVの死亡との間には、因果関係がある。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.11.20)は、「犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ…る。」としている。
甲はVの頭部を殴り、Vに脳出血を発生させて意識喪失状態に陥らせており、その後乙が角材でVの頭頂部を殴打する暴行を加え、既に発生していた脳出血を拡大させている。
当該暴行は、幾分か死期を早める影響を与えるものであったものの、Vの死因は甲の暴行により形成された脳出血であるから、甲の暴行とVの死亡との間に因果関係が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H27 司法 第3問 エ)
判例の立場に従って検討し、甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められる場合には1を、認められない場合には2を選びなさい。
.甲は、路上でVの頭部を木刀で多数回殴打し、これにより直ちに治療しなければ数時間後には死亡するほどの脳出血を伴う傷害をVに負わせ、倒れたまま動けないVを残して立ち去った。そこへ、たまたま通り掛かった事情を知らない乙が、Vの頭部を1回蹴り付け、Vは、当初の脳出血が悪化し、死期が若干早まって死亡した。

(正答)1

(解説)
判例(最判平2.11.20)は、「犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ…る。」としている。
甲は、Vの頭部を殴り、Vに脳出血を発生させて直ちに治療しなければ数時間後には死亡するほどの脳出血を伴う傷害をVに負わせている。
したがって、乙が、放置されているVの頭部を1回蹴り付け、Vの脳出血が悪化し、死期が若干早まって死亡したとしても、甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

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傷害致死の因果関係 最二小判平成15年7月16日

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概要
公園内及びマンション居室内で暴行を受けた被害者が、すきをみて逃走し、被告人らによる追跡を逃れるためにマンション付近の高速道路に進入し、疾走してきた自動車に追突され、後続の自動車に礫過されて死亡した事案において、被害者が逃走しようとして高速道路に進入したことは、それ自体極めて危険な行為であるが、その行為が、被告人らの暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえず、被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価でき、被告人らの暴行と被害者の死亡の間の因果関係が認められる。
判例
事案:被害者が被告人からの暴行から逃れるために高速道路に出て、車にはねられ死亡したという事案において、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係が問題となった。

判旨:「被告人4名は、害者に対し、公園において、深夜約2時間10分にわたり、間断なく極めて激しい暴行を繰り返し、引き続き、マンション居室において、約45分間、断続的に同様の暴行を加えた。
 被害者は、すきをみて、上記マンション居室から靴下履きのまま逃走したが、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、逃走を開始してから約10分後、被告人らによる追跡から逃れるため、上記マンションから約763mないし約810m離れた高速道路に進入し、疾走してきた自動車に衝突され、後続の自動車に轢かれて、死亡した。
 …被害者が逃走しようとして高速道路に進入したことは、それ自体極めて危険な行為であるというほかないが、被害者は、被告人らから長時間激しくかつ執ような暴行を受け、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、必死に逃走を図る過程で、とっさにそのような行動を選択したものと認められ、その行動が、被告人らの暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえない。そうすると、被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H19 司法 第12問 4)
甲及び乙が木刀と野球のバットでVを執拗に殴打し、辛うじて逃走したVを更に殴打すべく追跡したところ、Vは、追跡を逃れようとビルの屋上に逃げ、更に約1メートル離れた隣のビルの屋上に飛び移ろうとして地上に落下して死亡した場合には、Vは自ら危険な行動を行っている以上、甲及び乙による殴打、追跡とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、本肢と同種の事案において、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
Vは、追跡を逃れようとビルの屋上に逃げ、更に約1メートル離れた隣のビルの屋上に飛び移ろうとして地上に落下して死亡している。
したがって、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H23 司法 第2問 ウ)
甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、高速道路のパーキングエリアに駐車中の自動車内で、V女と口論になり、感情が高ぶってV女の顔面を平成手で1回殴打した。V女は、腹を立てて1人で帰宅しようと考え、車外に出て、高速道路の本線を横断し、反対車線側に設置された高速バスの停留所に行こうとしたところ、本線上を走行してきた乙運転の自動車にはねられ、全身打撲により死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
V女は、腹を立てて1人で帰宅しようと考え、車外に出て、高速道路の本線を横断している。
高速道路の本線を横断し、反対車線側に設置された高速バスの停留所に行こうとしたことは、著しく不自然、不相当であったといえ、暴行に起因するものと評価できないから、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認めらない。


全体の正答率 : 100%

(H27 司法 第3問 ア)
甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、自宅に遊びに来た友人Vの態度に腹を立て、その頭部を平成手で1回殴打したところ、Vが家から出て行ったので、謝りながらVを追い掛けた。Vは、甲が謝りながら追い掛けてきたことに気付いたが、甲と話をしたくなかったので、甲に追い付かれないように、あえて遮断機が下りていた踏切に入ったところ、列車にひかれ、内臓破裂により死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
Vは、甲が謝りながら追い掛けてきたことに気付いたが、甲と話をしたくなかったので、甲に追い付かれないように、あえて遮断機が下りていた踏切に入っている。
あえて遮断機が下りていた踏切に入ったことは、著しく不自然、不相当であったといえ、暴行に起因するものと評価できないから、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認めらない。


全体の正答率 : 100%

(H27 司法 第3問 イ)
甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、マンション4階の甲方居間で、Vの頭部や腹部を木刀で多数回殴打した。Vは、このままでは殺されると思い、甲の隙を見て逃走することを決意し、窓からすぐ隣のマンションのベランダに飛び移ろうとしたが、これに失敗して転落し、脳挫滅により死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
Vが飛び移ろうとしたことは、甲の暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえず、暴行に起因するものと評価することができるから、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。


全体の正答率 : 100%

(R3 予備 第11問 ア)
甲は、他の共犯者5名と共に、約3時間にわたり、マンションの一室において、Vの頭部、腹部等を木刀で多数回殴打していたところ、これにより極度の恐怖感を抱いたVが、同室から逃走し、甲らによる追跡から逃れるために、同マンション付近にある高速道路に進入し、疾走してきた自動車に衝突され、死亡した。この場合、甲らの上記殴打行為とVの死亡との間に、因果関係はない。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
付近にある高速道路に進入したことは、暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえず、暴行に起因するものと評価することができるから、甲らの殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

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傷害致死の因果関係 最二小判平成16年2月17日

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概要
暴行による傷害がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものであった場合には、その治療中に被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在したとしても、上記暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。
判例
事案:暴行により傷害を負った被害者が治療中、医師の指示に従わなかったために治療効果が十分に発揮せず、死亡したという事案において、暴行と死亡結果との間の因果関係が問題となった。

判旨:「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべきであり、本件において傷害致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。」
過去問・解説

(H19 司法 第12問 3)
甲がVの腹部をナイフで突き刺して内臓損傷の重傷を負わせたところ、Vは救急病院に搬送されて緊急手術を受け、術後、いったん容体は安定した。ところが、意識を回復したVが、医師の指示に従わずに暴れたため、治療の効果が失われ、上記内臓損傷により死亡した。この場合、治療の効果が失われたのはVの落ち度によるのであるから、Vの内臓損傷がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものであっても、甲の刺突行為とVの死亡の結果との間の因果関係を肯定することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.2.17)は、本肢と同種の事案において、「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべき…。」としている。
したがって、Vの落ち度により治療の効果が出なかったとしても、Vの内臓損傷がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものである以上、甲の刺突行為とVの死亡の結果との間に因果関係が認められる。


(H23 司法 第2問 オ)
甲は、Vの後頸部に割れたビール瓶を突き刺し、Vに重篤な頸部の血管損傷等の傷害を負わせたため、Vは病院に搬送された。Vは、病院で手術を受け、容体が一旦は安定したが、医師からなお予断を許さないから安静を続けるように指示されていたにもかかわらず、医師の指示に従わずに病室内を動き回ったため、当初の傷害の悪化による脳機能障害により死亡した。因果関係が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.2.17)は、本肢と同種の事案において、「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべき…。」としている。
Vが、医師の指示に従わなかったという落ち度により悪化したとしても、Vの重篤な頸部の血管損傷等の傷害がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものである以上、甲の刺突行為とVの脳機能障害による死亡の結果との間に因果関係が認められる。


(H28 共通 第5問 3)
甲は、Vの頸部を包丁で刺し、Vは、同刺創に基づく血液循環障害による脳機能障害により死亡した。その死亡するまでの経過は、Vは、受傷後、病院で緊急手術を受けて一命をとりとめ、引き続き安静な状態で治療を継続すれば数週間で退院することが可能であったものの、安静にすることなく病室内を歩き回ったため治療の効果が上がらず、同脳機能障害により死亡したというものであった。この場合でも、甲がVの頸部を包丁で刺した行為とVの死亡との間には、因果関係がある。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.2.17)は、本肢と同種の事案において、「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべき…。」としている。
したがって、安静にすることなく病室内を歩き回ったというVの落ち度により治療の効果が上がらなかったとしても、Vの頸部の傷害がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものである以上、甲の刺突行為とVの脳機能障害による死亡の結果との間に因果関係が認められる。


(R3 予備 第11問 イ)
甲は、Vの頸部を包丁で刺突し、致命傷になり得る頸部刺創の傷害をVに負わせたところ、Vは、病院で緊急手術を受けたため一命をとりとめ、引き続き安静な状態で治療を継続すれば数週間で退院することが可能となったが、安静にせず、病室内を歩き回ったことから治療の効果が上がらず、同頸部刺創に基づく血液循環障害による肝機能障害により死亡した。この場合、甲の上記刺突行為とVの死亡との間に、因果関係はない。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.2.17)は、「被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係があるというべき…。」としている。
したがって、安静にすることなく病室内を歩き回ったというVの落ち度により治療の効果が上がらなかったとしても、Vの致命傷になり得る頸部の傷害がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものである以上、甲の刺突行為とVの肝機能障害による死亡の結果との間に因果関係が認められる。

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