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信用及び業務に対する罪 - 解答モード
信用毀損罪における「信頼」の意義 最三小判平成15年3月11日
概要
判例
判旨:「刑法233条が定める信用毀損罪は、経済的な側面における人の社会的な評価を保護するものであり、同条にいう『信用』は、人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限定されるべきものではなく、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含むと解するのが相当であるから、これと異なる上記大審院の各判例は、いずれもこれを変更し、原判決を維持すべきである。」
過去問・解説
(H24 司法 第8問 1)
甲は、スーパーマーケットVに嫌がらせをする目的で、誰でも閲覧できるインターネット上の掲示板に「Vで買ったオレンジジュースに異物が混入していた。」旨の嘘の書き込みをした。甲には信用毀損罪は成立しない。
(H29 司法 第10問 3)
信用毀損罪における「信用」は、人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限定されず、経済的側面とは関係のない社会的な信頼を害した場合も、同罪が成立する。
業務妨害罪における「業務」 大判大正10年10月24日
概要
判例
判旨:「刑法第233条ニ所謂業務ハ公務ヲ除ク外精神的ナルト経済的ナルトヲ問ハス汎ク職業其他継続シテ従事スルコトヲ要スヘキ事務又ハ事業ヲ総称スルモノトス」
過去問・解説
(H19 司法 第11問 1)
業務妨害罪における業務は、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は事業であり、経済的に収入を得る目的のものであることを要しないから、運転免許を取得した者が娯楽のために行う自動車の運転も本罪の業務に含まれる。
(H27 司法 第2問 1)
業務妨害罪における「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は事業をいい、営利を目的とするものでなくても「業務」に含まれる。
(H29 司法 第10問 4)
業務妨害罪における「業務」は、社会生活上又は個人生活上の地位に基づき反復継続して従事する事務であるから、学生の学習活動を妨害した場合も、同罪が成立する。
(R6 司法 第1問 2)
業務妨害罪における「業務」は、職業その他継続して従事する事務又は事業をいい、営利を目的とするものであることを要する。
業務妨害罪における「業務」の適法性 東京高判昭和27年7月3日
概要
判例
判旨:「原判示A及びBに対する本件浴場の転貸が、所有者たる被告人の承諾なしに行われたこと並びに原判示第二の所為が行われた当時同湯屋営業につき県知事の許可を受けていたものが被告人であってAでもBでもないことは、所論のとおりこれを認めるに難くないが、一方記録に徴すると、右A及びBは原判示のとおりの事情により、右原判示第2所為が行われた時までに事実上平成穏且公然に右浴場を占拠してその湯屋営業を継続して来ていたものであることを肯認するのに十分である。そして刑法業務妨害罪により保護せられる法益は事実上平成穏に行われている一定の業務であって、その業務の開始される原因となった契約が民法上有効であることや、その業務に関する行政上の許可が存在することの如きは必ずしもその業務ということの要件ではないと解するのを相当とするから、前記A及びBの右湯屋業務も刑法第233条、第234条にいわゆる業務というのに該当するものと認むべきである。」
威力業務妨害罪における「業務」の意義 最一小決昭和62年3月12日
概要
判例
判旨:「本件において妨害の対象となった職務は、新潟県議会総務文教委員会の条例案採決等の事務であり、なんら被告人らに対して強制力を行使する権力的公務ではないのであるから、右職務が威力業務妨害罪にいう『業務』に当たるとした原判断は、正当である(最高裁昭和31年(あ)第3015号同35年11月18日第二小法廷判決・刑集14巻13号1713頁、同昭和36年(あ)第823号同41年11月30日大法廷判決・刑集20巻9号1076頁参照)。」
過去問・解説
(H19 司法 第11問 4)
県議会の審議中、傍聴席において、大声を上げながら椅子を叩くなどして審議を中断させた場合、妨害の対象となったのは公務であるから、威力業務妨害罪ではなく公務執行妨害罪が成立する。
(H27 司法 第2問 3)
強制力を行使しない非権力的公務は、公務執行妨害罪における「公務」に当たるとともに業務妨害罪における「業務」にも当たる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭53.6.29)は、「刑法95条1項…にいう職務には、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるものである…。」としている。
また、判例(最決昭62.3.12)は、県議会委員会の条例案採決の事案において、「本件において妨害の対象となった職務は、新潟県議会総務文教委員会の条例案採決等の事務であり、なんら被告人らに対して強制力を行使する権力的公務ではないのであるから、右職務が威力業務妨害罪にいう『業務』に当たる…。」としている。
したがって、強制力を行使しない非権力的公務は、公務執行妨害罪における「公務」に当たるとともに、業務妨害罪における「業務」にも当たる。
威力業務妨害罪としての要保護性(R6) 最一小決平成14年9月30日
概要
判例
判旨:「本件工事は、上記のように路上生活者の意思に反して段ボール小屋を撤去するに及んだものであったが、…本件工事は,公共目的に基づくものであるのに対し、本件通路上に起居していた路上生活者は、これを不法に占拠していた者であって、これらの者が段ボール小屋の撤去によって被る財産的不利益はごくわずかであり、居住上の不利益についても、行政的に一応の対策が立てられていた上、事前の周知活動により、路上生活者が本件工事の着手によって不意打ちを受けることがないよう配慮されていたということができる。しかも、東京都が道路法32条1項又は43条2号に違反する物件であるとして、段ボール小屋を撤去するため、同法71条1項に基づき除却命令を発した上,行政代執行の手続を採る場合には、除却命令及び代執行の戒告等の相手方や目的物の特定等の点で困難を来し、実効性が期し難かったものと認められる。そうすると、道路管理者である東京都が本件工事により段ボール小屋を撤去したことは、やむを得ない事情に基づくものであって、業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵があったとは認められない。
以上のとおり、本件工事は、刑法上威力業務妨害罪により保護される業務に当たると解するのが相当であるから、被告人らの行為について同罪の成立を認めた原判断は正当である。」
過去問・解説
(R6 司法 第1問 1)
業務妨害罪における「業務」は、適法なものであることを要するから、行政上の許可を受けていない営業行為や行政取締法規に違反する営業行為は、同罪で保護されることはない。
信用毀損罪における「流布」 大判昭和12年3月17日
概要
判例
判旨:「多数ノ者ニ伝播セラルルモノナルコトヲ認識シナカラ人ノ信用ヲ害スヘキ虚偽ノ事実ヲ告知スルトキハ其ノ直接告知ヲ受クル者二三人ニ過キサル場合ト雖刑法第233条ニ所謂流布罪ヲ構成ス」
過去問・解説
(H30 共通 第18問 2)
信用毀損罪における「流布」とは、虚偽の風説を不特定又は多数の人が認識可能な状態に置くことをいい、行為者自らが直接に不特定又は多数の人に告知する場合のみならず、特定かつ少数の者を通じて順次不特定又は多数の人に伝播させる場合も含まれる。
威力業務妨害罪における「妨害」の意義 最二小判昭和28年1月30日
概要
判例
判旨:「刑法234条業務妨害罪にいう業務の『妨害』とは現に業務妨害の結果の発生を必要とせず、業務を妨害するに足る行為あるをもって足るものであり、又『業務』とは具体的個々の現実に執行している業務のみに止まらず、広く被害者の当該業務における地位に鑑みその任として遂行すべき業務をも指称するものと解するを相当とするのである。
…同条の『威力』とは犯人の威勢、人数及び四囲の状勢よりみて、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力と解するを相当とするものであり、且つ右勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足るものであればよいのであって、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要するものではないと解すベきものである。」
過去問・解説
(H19 司法 第11問 2)
威力業務妨害罪が成立するには、現実に執行中の業務の執行を妨害した結果が発生したことを要し、被害者に業務を中止させあるいは不能にさせたことが必要である。
(H27 司法 第2問 5)
業務妨害罪における「妨害」とは、現に業務妨害の結果が発生したことを必要とせず、業務を妨害するに足りる行為があることをもって足りる。
(H29 司法 第10問 5)
信用毀損罪は危険犯であるが、業務妨害罪は侵害犯である。
威力業務妨害罪における威力を「用いて」 最一小判昭和32年2月21日
概要
判例
判旨:「原判決が、刑法234条にいう『威カヲ用ヒ』とは、一定の行為の必然的結果として、人の意思を制圧するような勢力を用いれば足り、必ずしも、それが直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要しない旨の法律見解の下に、『送炭を阻止するため、実力を以て貨車の開閉弁を開放して、同貨車に積載せる石炭をその場に落下せしめて会社の送炭業務を不能ならしめた行為は、同条所定の構成要件を充足するものとした』第1審判決の判断を相当としたことは、当裁判所においてもこれを正当として是認することができる。」
過去問・解説
(H27 司法 第2問 4)
威力業務妨害罪における威力を「用いて」といえるためには、威力が直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要する。
(H29 司法 第10問 1)
威力業務妨害罪における「威力」は、暴行又は脅迫を用いることを要し、騒音喧騒により人の意思を制圧して業務を妨害した場合、同罪は成立しない。
偽計業務妨害罪の成立要件 大阪高判昭和39年10月5日
概要
判例
判旨:「さればこそ、被告人は右結果の招来を意に介することなく、本件各被害者らに対し電話によって真実前認定の如き注文依頼があったように慎重巧妙に同人らを欺きとおし、その錯誤を利用するという策略手段に訴えた次第であり、その動機、目的、態様に照し右の手段は軽犯罪法第1条第31号にいう悪戯と目しうる程度を超え、刑法第233条にいう偽計に該ると解するのが相当である。又、同法条の規定する業務妨害罪の犯意は行為者が積極的に他人の業務を妨害することを意欲する場合に限られるものではなく、業務妨害の結果を惹起することの認識があるだけでも足りると解すべきことは他の犯罪一般におけると同様であって、業務妨害罪の成立には業務を妨害せんとする意図を要する旨の所論見解は採用できない。」
過去問・解説
(H19 司法 第11問 3)
弁当屋に電話をかけ、弁当を受け取る意思もなく、代金を支払う意思もないのに、偽名を名のって弁当100個を注文し、これを架空の住所まで配達することを依頼して、同弁当屋の店員に弁当100個を作らせ、配達に赴かせた場合、偽計業務妨害罪が成立する。
(R2 司法 第12問 4)
知人Aに対する嫌がらせの目的で、同人に成り済まし、同人に無断で宅配ピザ店に電話をかけてピザ50枚を注文し、これを同人宅まで配達することを依頼して、同店店員にピザ50枚を作らせ、配達させた場合、偽計業務妨害罪が成立する。
鞄の奪取と威力業務妨害罪 最三小決昭和59年3月23日
概要
判例
判旨:「被告人は、弁護士である被害者の勤務する弁護士事務所において、同人が携行する訟廷日誌、訴訟記録等在中の鞄を奪い取り、これを2か月余りの間自宅に隠匿し、同人の弁護士活動を困難にさせたというのである。右のように、弁護士業務にとって重要な書類が在中する鞄を奪取し隠匿する行為は、被害者の意思を制圧するに足りる勢力を用いたものということができるから、刑法234条にいう『威力ヲ用ヒ』た場合にあたり、被告人の本件所為につき、威力業務妨害罪が成立するとした第1審判決を是認した原判断は、正当である。」
過去問・解説
(R2 司法 第12問 5)
弁護士Xの弁護士としての活動を困難にさせる目的で、同人から、同人が携行し、その業務にとって重要な訴訟記録等が入ったかばんを奪い取った上、自宅に保管した場合、偽計業務妨害罪が成立する。
(R6 司法 第1問 5)
甲は、弁護士Aの弁護士としての活動を困難にする目的で、Aが携行していた弁護士業務にとって重要な書類が在中するかばんを奪い取って自宅に隠匿した。この場合、甲に偽計業務妨害罪が成立する。
マジックホン事件判決 最三小決昭和59年4月27日
概要
判例
判旨:「A公社の架設する電話回線において、発信側電話機に対する課金装置を作動させるため受信側から発信側に送出される応答信号は、有線電気通信法2条1項にいう『符号』にあたり、応答信号の送出を阻害する機能を有するマジックホンと称する電気機器を加入電話回線に取り付け使用して、応答信号の送出を妨害するとともに発信側電話機に対する課金装置の作動を不能にした行為が、有線電気通信妨害罪(同法21条)及び偽計業務妨害罪にあたるとした原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H29 司法 第10問 2)
偽計業務妨害罪における「偽計」は、直接人に向けられていなくてもよい。
(R4 共通 第4問 3)
偽計業務妨害罪における「偽計」とは、人を欺罔し、あるいは人の錯誤又は不知を利用することをいい、電話料金の支払を免れるための機器を電話回線に取り付けて課金装置の作動を不能にする行為は、これに該当しない。
威力業務妨害罪にいう「威力」 最二小決平成4年11月27日
概要
判例
判旨:「被告人は、部下の消防署職員と共謀の上、町消防本部消防長の業務を妨害しようと企て、ひそかに、消防本部消防長室にある同人のロッカー内の作業服ポケットに犬のふんを、事務机中央引き出し内にマーキュロクロム液で赤く染めた猫の死がいをそれぞれ入れておき、翌朝執務のため消防長室に入った消防長をして、右犬のふん及び猫の死がいを順次発見させ、よって恐怖感や嫌悪感を抱かせて同人を畏怖させ、当日の朝行われる予定であった部下職員からの報告の受理、各種決裁事務の執務を不可能にさせたというのである。右のように、被害者が執務に際して目にすることが予想される場所に猫の死がいなどを入れておき、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為は、被害者の行為を利用する形態でその意思を制圧するような勢力を用いたものということができるから、刑法234条にいう『威力ヲ用ヒ』た場合に当たると解するのが相当であり、被告人の本件行為につき威力業務妨害罪が成立するとした第一審判決を是認した原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第11問 5)
自己の勤務する会社の上司に恨みを持ち、同人の事務机の引き出し内に犬の死がいを入れておいて同人にこれを発見させ、畏怖させた行為は、これにより同人の当日の各種決裁事務等の執行が不可能になったとしても、「威力を用いた」とはいえないから、威力業務妨害罪には当たらない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平4.11.27)は、本肢と同種の事案において、「被害者が執務に際して目にすることが予想される場所に猫の死がいなどを入れておき、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為は、被害者の行為を利用する形態でその意思を制圧するような勢力を用いたものということができるから、刑法234条にいう『威力ヲ用ヒ』た場合に当たる…。」としている。
したがって、上司の事務机の引き出し内に犬の死がいを入れておいてこれを発見させ、上司を畏怖させた結果、これにより同人の当日の各種決裁事務等の執行が不可能となったのであれば、被害者の行為を利用した形態の威力を用いて業務を妨害したとして、威力業務妨害罪が成立する。
(R4 共通 第4問 5)
威力業務妨害罪における「威力」は、被害者の面前で行使される必要があるので、被害者が執務のために日頃使っている机の引き出しに猫の死骸をひそかに入れた場合、後に被害者がこれを発見するに至ったとしても、威力業務妨害罪は成立しない。
電子計算機損壊等業務妨害罪 大阪地判平成9年10月3日
概要
判例
判旨:「被告人が、放送会社がインターネット利用者に提供するため開設したホームページ内の天気予報画像を消去し、わいせつな画像等に置き換え、同会社の情報提供業務を妨害するとともに、わいせつな画像をホームページにアクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者に閲覧させ、もって、人の業務に使用する電子計算機の用に供する電磁的記録を損壊し、かつ、同電子計算機に虚偽の情報を与え、電子計算機に使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害…した…。」
過去問・解説
(H26 司法 第8問 5)
甲は、自己がインターネット上に開設した天気予報サイトのホームページの閲覧数を増やして広告収入を増やそうと考え、競合会社の電子計算機に接続されたハードディスクに記録されていた同社の天気予報サイトのホームページに関する電磁的記録を書き換えて予報が外れるようにさせたところ、自己の開設したサイトのホームページ閲覧数が増えて広告収入も増えた。甲に電子計算機使用詐欺罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大阪地判平9.10.3)は、本肢と同種の事案において、「被告人が、放送会社がインターネット利用者に提供するため開設したホームページ内の天気予報画像を消去し、わいせつな画像等に置き換え、同会社の情報提供業務を妨害するとともに、わいせつな画像をホームページにアクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者に閲覧させ、もって、人の業務に使用する電子計算機の用に供する電磁的記録を損壊し、かつ、同電子計算機に虚偽の情報を与え、電子計算機に使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害…した…。」として、電子計算機損壊等業務妨害罪の成立を認めている。
したがって、甲に電子計算機損壊等業務妨害罪が成立する。
現金自動預払機の占拠と偽計業務妨害罪 最一小決平成19年7月2日
概要
判例
判旨:「被告人らは、現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で、現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入ったものであり、そのような立入りが同所の管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであるから、その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても、建造物侵入罪が成立するものというべきである。
また、被告人らは、盗撮用ビデオカメラを設置した現金自動預払機の隣に位置する現金自動預払機の前の床にビデオカメラが盗撮した映像を受信する受信機等の入った紙袋が置いてあるのを不審に思われないようにするとともに、盗撮用ビデオカメラを設置した現金自動預払機に客を誘導する意図であるのに、その情を秘し、あたかも入出金や振込等を行う一般の利用客のように装い、適当な操作を繰り返しながら、1時間30分間以上、あるいは約1時間50分間にわたって、受信機等の入った紙袋を置いた現金自動預払機を占拠し続け、他の客が利用できないようにしたものであって、その行為は、偽計を用いて銀行が同現金自動預払機を客の利用に供して入出金や振込等をさせる業務を妨害するものとして、偽計業務妨害罪に当たるというべきである。」
過去問・解説
(R2 司法 第12問 1)
利用客のキャッシュカードの暗証番号等を盗撮する目的で、現金自動預払機が2台設置されている銀行の無人出張所において、そのうち1台にカメラを設置し、当該現金自動預払機に客を誘導する意図で、一般客を装い、もう1台の現金自動預払機を2時間占拠した場合、偽計業務妨害罪が成立する。
(R6 司法 第1問 3)
甲は、利用客のキャッシュカードの暗証番号等を盗撮する目的で、2台の現金自動預払機が設置されている銀行の無人出張所において、一方の現金自動預払機にビデオカメラを設置し、同現金自動預払機に客を誘導する意図で、一般の利用客を装い、もう一方の現金自動預払機を2時間にわたり占拠した。この場合、甲に偽計業務妨害罪が成立する。
インターネットの書き込みと威力業務妨害罪 東京高判平成20年5月19日
概要
判例
判旨:「本件書き込みは、本件講座の会場に灯油をまき火をつけ、会場を血の海にするとの犯罪予告を内容とするものであって、その連絡を受けた本件講座の主催者である上記センターの事務局長らの自由意思を制圧するに足りる勢力の行使があったというに十分なものである。
…威力業務妨害罪の故意としては、威力を用いる認識とその結果人の業務を妨害するおそれのある状態が生じることの認識があれば足りるところ、本件書き込みの内容に照らせば、その連絡を受けるなどした本件講座の主催者が、本件講座の会場に火がつけられ、講師や受講生らに被害が及ぶことをおそれて、本件講座を中止したり、巡回等の仕事を行うことを余儀なくされる事態は当然に予想できるのであり、そうすると、かかる書き込みをした被告人に、威力を用いる認識とその結果人の業務を妨害するおそれのある状態が生じることの認識があったことは優に認められる。」
過去問・解説
(R2 司法 第12問 2)
講演会の主催者が閲覧する可能性を認識した上、インターネット上の掲示板に、当該講演会の会場に放火するという趣旨の書き込みをし、当該主催者に閲覧させた結果、当該講演会を中止させた場合、威力業務妨害罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
裁判例(東京高判平20.5.19)は、本肢と同種の事案において、「本件書き込みは、本件講座の会場に灯油をまき火をつけ、会場を血の海にするとの犯罪予告を内容とするものであって、その連絡を受けた本件講座の主催者である上記センターの事務局長らの自由意思を制圧するに足りる勢力の行使があった…威力を用いる認識とその結果人の業務を妨害するおそれのある状態が生じることの認識があったことは優に認められる。」としている。
講演会の会場に放火するという趣旨の書き込みをもって、主催者の自由意思を制圧するに足りる勢力の行使があったといえ、講演会の主催者が閲覧することで講演会が中止になる可能性を認識しているから故意も認められる。
したがって、この場合、威力業務妨害罪が成立する。
威力業務妨害罪における「威力」の該当性(R6) 最一小判平成23年7月7日
概要
判例
判旨:「被告人が大声や怒号を発するなどして、同校が主催する卒業式の円滑な遂行を妨げたことは明らかであるから、被告人の本件行為は、威力を用いて他人の業務を妨害したものというべきであり、威力業務妨害罪の構成要件に該当する。
…表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならないが、憲法21条1項も、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ意見を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない。被告人の本件行為は,その場の状況にそぐわない不相当な態様で行われ、静穏な雰囲気の中で執り行われるべき卒業式の円滑な遂行に看過し得ない支障を生じさせたものであって、こうした行為が社会通念上許されず、違法性を欠くものでないことは明らかである。したがって,被告人の本件行為をもって刑法234条の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない。」
過去問・解説
(R6 司法 第1問 4)
以前A高校に勤務していた甲は、同校卒業式の開式直前に、式典会場である体育館において、予定された式典の進行を止めさせる目的で、参列の保護者らに対して大声で騒ぎ立て、これを制止しようとした教頭に怒号するなどして同会場を喧騒状態に陥れた。この場合、甲に威力業務妨害罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平23.7.7)は、本肢と同様の事案において、「被告人が大声や怒号を発するなどして、同校が主催する卒業式の円滑な遂行を妨げたことは明らかであるから、被告人の本件行為は、威力を用いて他人の業務を妨害したものというべきであり、威力業務妨害罪の構成要件に該当する。」として、暴行や脅迫に至らない程度の威迫行為も威力に該当することを示している。
甲は、A高校の卒業式の開式直前に、予定された式典の進行を止めさせる目的で、参列の保護者らに対して大声で騒ぎ立て、これを制止しようとした教頭に怒号するなどして同会場を喧騒状態に陥れているため、威力を用いて業務を妨害したとして、甲には威力業務妨害罪が成立する。