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強盗の罪 - 解答モード

強盗罪の成否(被害者不知) 最二小判昭和23年12月24日

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概要
強盗犯人が被害者を脅迫しその犯行を抑圧中に財物を奪取すれば、その奪取行為がたまたま被害者の気付かない間になされたものであっても、強盗罪が成立する。
判例
事案:犯人が屋内に侵入して家人にピストル等を突きつけて脅迫した場合において、被害者が財物奪取を認識していなかった事案において、強盗罪の成否が問題となった。

判旨:「犯人が屋内に侵入して家人にピストル等を突きつけて脅迫した場合に家人は犯人が屋外に退出するに至るまで畏怖を感じ反抗を抑圧されることは当然であるから、犯人がその間家人の所持する財物を奪取すればそれは窃盗ではなく強盗であること言うまでもないことである。されば、被告人甲が懐中時計を奪取した状況が所論のとおりであったとしても強盗であることに論はなく、又強盗罪の判示としては所論のように個々の財物について奪取の状況を逐一説明する必要のないことも多言を要しない虞であり、猶共同強盗であるから仮令論旨のいう様に被告人乙が時計奪取の事実を知らなかったとしても共同の責任を負うのは当然である。」
過去問・解説

(H22 司法 第18問 ア)
甲が、財物奪取の意思で乙に脅迫を加えてその反抗を抑圧し、同人のポケットから財物を奪ったが、財物を奪われたことに乙が気付かなかった場合、強盗既遂罪(刑法第236条第1項)は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.12.24)は、「犯人が屋内に侵入して家人にピストル等を突きつけて脅迫した場合に家人は犯人が屋外に退出するに至るまで畏怖を感じ反抗を抑圧されることは当然であるから、犯人がその間家人の所持する財物を奪取すればそれは窃盗ではなく強盗である…。」としている。
したがって、財物を奪われたことに乙が気付いていなかったとしても、甲に強盗既遂罪が成立する。


(H25 司法 第12問 1)
甲は、乙に対し、金品を奪うために、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え、その反抗を抑圧して乙から財布を奪ったが、乙は財布を奪われたことに気付かなかった。甲には強盗既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.12.24)は、「犯人が屋内に侵入して家人にピストル等を突きつけて脅迫した場合に家人は犯人が屋外に退出するに至るまで畏怖を感じ反抗を抑圧されることは当然であるから、犯人がその間家人の所持する財物を奪取すればそれは窃盗ではなく強盗である…。」としている。
したがって、乙が財物を奪われたことに気付いていなかったとしても、その前に甲が乙の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えているから、甲に強盗既遂罪が成立する。


(R5 予備 第4問 3)
甲は、財物奪取目的でAを脅迫してその反抗を抑圧し、その際、Aが気付かないうちに、Aが持つかばんから財布を抜き取った。この場合、甲に強盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.12.24)は、「犯人が屋内に侵入して家人にピストル等を突きつけて脅迫した場合に家人は犯人が屋外に退出するに至るまで畏怖を感じ反抗を抑圧されることは当然であるから、犯人がその間家人の所持する財物を奪取すればそれは窃盗ではなく強盗である…。」としている。
したがって、Aが財物を抜き取ったことに気付いていなかったとしても、財物奪取目的でAを脅迫して反抗を抑圧しているから、甲に強盗罪が成立する。

該当する過去問がありません

強盗罪の成否 最三小判昭和24年6月14日

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概要
強盜の目的で会社の事務所に押入り、居合わせた事務員全部を縛って、洋服類を着込みその他の物は、荷造りをして持ち出そうにした時点で強盜の既遂に達する。
判例
事案:強盗目的で事務所に押し入り、従業員を縛ったうえ、財物を自らの体に着用して出ようとしようとした時点で警察隊に踏み込まれて捕縛されたという事案において、強盗既遂罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は共犯者等と共に被害会社の事務所に押入り、居合わせた男女事務員の全部を縛って全然抵抗し得ず奪われた物を取返し得ない状態に置き洋服類は着込み、その他の物は荷造りして持ち出すばかりにしたところを、警察隊に踏み込まれて捕縛されたのであって、…既に物の支配を取得したと言い得るのであり、窃盗罪についてではあるが、盗品が犯行の場所から持出される前に既遂を認定した判例が大審院以来繰返されているのであって、…強盗罪についてもこの点は同様であり、論旨は理由がない。」
過去問・解説

(H22 司法 第8問 エ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、強盗罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、深夜、強盗の目的で会社事務所に入り込み、1人で勤務していた事務員乙を縛り上げ、持参したボストンバッグに同事務所に設置された金庫内の現金を詰め込んで手に持ち、同事務所の出入口から外に出ようとしたところ、駆けつけた警察官に同事務所内で逮捕された。

(正答)1

(解説)
判例(最判昭24.6.14)は、本肢と同種の事案において、「共犯者等と共に被害会社の事務所に押入り、居合わせた男女事務員の全部を縛って全然抵抗し得ず奪われた物を取返し得ない状態に置き洋服類は着込み、その他の物は荷造りして持ち出すばかりにしたところを、警察隊に踏み込まれて捕縛されたのであって、…既に物の支配を取得したと言い得る…。」として、物の占有を取得して建物から出ようとした時点で強盗罪は既遂に達することを示している。
したがって、甲が事務所の出入口から外に出ようとした時点で、強盗罪既遂罪が成立する。

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強盗罪の成否(暴行後の奪取の意思) 東京高判昭和48年3月26日

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概要
当初は財物奪取の意思がなく暴行を加えた後に至って奪取の意思を生じ財物を取得した場合においては、被害者の抵抗できない状態にあるのに乗じただけでは足りず、犯人がその意思を生じた後に被害者の抗拒を不能ならしめる暴行ないし脅迫に値する行為が存在して初めて強盗罪の成立があるものと解すべきである。
判例
事案:当初は財物奪取の意思がなく、他の目的で暴行又は脅迫を加えた後に初めて奪取の意思を生じて財物を取得したという事案において、強盗罪の成否が問題となった。

判旨:「強盗罪は相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行または脅迫を手段として財物を奪取することによって成立する犯罪であるから、その暴行または脅迫は財物奪取の目的をもってなされるものでなければならない。それゆえ、当初は財物奪取の意思がなく他の目的で暴行または脅迫を加えた後に至って初めて奪取の意思を生じて財物を取得した場合においては、犯人がその意思を生じた後に改めて被害者の抗拒を不能ならしめる暴行ないし脅迫に値する行為が存在してはじめて強盗罪の成立があるものと解すべきである(もっとも、この場合は、被害者はそれ以前に被告人から加えられた暴行または脅迫の影響によりすでにある程度抵抗困難な状態に陥っているのが通例であろうから、その後の暴行・脅迫は通常の強盗罪の場合に比し程度の弱いもので足りることが多いであろうし、また、前に被告人が暴行・脅迫を加えている関係上、被害者としてはさらに暴行・脅迫(特にその前者)を加えられるかもしれないと考え易い状況にあるわけであるから、被告人のささいな言動もまた被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫となりうることに注意する必要がある。しかし、いずれにしても、さらに暴行または脅迫の行なわれることを要することに変りはない。)。そして右の暴行または脅迫の行なわれたことは、もとより強盗罪の罪となるべき事実として具体的かつ明確に判示されなければならない。しかるに、原判決をみると、被告人が奪取の意思発生前に加えた暴行により畏怖している被害者の懐中に手を差し入れて、抵抗不能の状態にある同人から金品を取り上げた事実は判示されているが、右の判示では、財物奪取の意思を生じた後にその手段として暴行はもとよりなんらかの脅迫が行なわれたことも判示されているとはいいがたい。あるいは、その中に『同人が抵抗できない状態にあるのに乗じ』とあるところからみると、そこに一種の暗黙の脅迫が行なわれたことを認定した趣旨であるかとも想像されなくはないけれども、そう解するには表現があまりに抽象的で罪となるべき事実の要素としての脅迫の判示があったとするには不十分だといわざるをえないのである。また、被告人が被害者の懐中に手を差し入れる際『お前本当に金がないのか』と申し向けたことが判示されているが、これはその文言自体からも明らかなように、暗黙にもせよ被害者に害を加うべき脅迫の意思表示とみることはできない。これを要するに、原判決はその(罪となるべき事実)第2において強盗罪の成立に必要な暴行または脅迫の行為につきその判示が十分であるとはいいがたいのであるから、その理由が不備であるというのほかなく、控訴趣意に対して判断をするまでもなく、この点において破棄を免れない。」
過去問・解説

(R1 司法 第2問 エ)
甲及び乙は、宝石商の丙から宝石を奪うことを計画した。その計画は、甲が、宝石取引のあっせんにかこつけてホテルの一室に丙を呼び出し、別室の顧客に見せる必要があるとうそを言って丙から宝石を受領し、甲の退室後に、乙が同室に入って丙を殺害するという内容であった。
 甲は、計画に従って、ホテルの一室で丙から宝石を受領して退室し、それと入れ替わりに同室に立ち入った乙が丙の腹部を包丁で刺し、丙に重傷を負わせたが、殺害には至らなかった。
乙が丙の腹部を包丁で刺した行為が、丙から宝石の占有を奪取する手段とならないと考えた場合、甲及び乙に、いわゆる一項強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭48.3.26)は、「強盗罪は相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行または脅迫を手段として財物を奪取することによって成立する犯罪であるから、その暴行または脅迫は財物奪取の目的をもってなされるものでなければならない。」としている。
乙が丙の腹部を包丁で刺した行為は、丙から宝石の占有を奪取する手段とならないから、いわゆる1項強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。


(R2 共通 第20問 ウ)
甲は、Vの暴行を避けようとして、その胸付近を1回平成手で突いたところ、その勢いでVが後方に転倒し、後頭部を路面に打ち付け、失神した。甲は、その頃には、Vが本件バッグの所有者であると分かっていたが、Vの態度に怒りを覚えたことなどから、本件バッグを自己のものにしようと考え、失神しているVからこれを取り上げて自宅に持ち帰った。
 甲が本件バッグをVから取り上げた行為は、甲の暴行に起因するVの失神状態に乗じて本件バッグの占有を取得したといえるため、強盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭48.3.26)は、「強盗罪は相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行または脅迫を手段として財物を奪取することによって成立する犯罪であるから、その暴行または脅迫は財物奪取の目的をもってなされるものでなければならない。」としている。
甲は、Vを失神させた時点で財物奪取意思を有しておらず、Vの失神後に改めて被害者の抗拒を不能ならしめる暴行ないし脅迫等に及んでいない。
したがって、甲に、強盗罪は成立しない。

該当する過去問がありません

十分な意思能力を持っていない者に対する暴行脅迫 最二小判昭和22年11月26日

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概要
十分な意思能力を持っていない者に対し暴行脅迫を加え財物を奪取したときは、強盗罪が成立する。
判例
事案:人の居宅内において留守居をしていた10歳の子供に対し暴行脅迫を加え財物を奪取したという事案において、強盗罪の成否が問題となった。

判旨:「本件の被害者は僅かに10歳の小兒であって反抗するに足る意思能力を持ってゐたとは考へられない。反抗する能力の無い者に對して『反抗を抑壓して強取した』と判示した原審判決は理由に齟齬があるから破毀せられるべきものであると思料する。といふのであるが、およそ強盗罪の成立には目的を遂行するに障碍となる者に對してその反抗を抑壓するに足る暴行を加へるといふことで十分であって論旨にいふやうに暴行を受けるものが十分の意思能力を持ってゐることは必要ではない。本件被害者Vの三男能親も既に當10歳と云へば完全な意思能力はないまでも或程度物に對する管理の實力は持ってゐるといふべきであって同人が本件犯行の現場に居合せたことは被告人が同家の物を盗むといふ目的を遂行するのに障碍となったことは疑のないところである。よって右能親に對して原判示のやうな暴行を加へて同家の物を盗んだ被告人の所爲を以て強盗の罪にあたると判斷した原判決はまことに正當であって論旨は理由がない。」
過去問・解説

(H22 司法 第18問 オ)
甲が、財物奪取の意思で乙宅に乙の留守中に侵入し、乙の甥でたまたま留守番をしていた丙(15歳)に対し、暴行を加えてその反抗を抑圧し、タンス内から乙が所有し管理する衣類を奪った場合、強盗既遂罪(刑法第236条第1項)は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭22.11.26)は、人の居宅内において留守居をしていた10歳の子供に対し暴行脅迫を加え財物を奪取した事案において、「強盗罪の成立には目的を遂行するに障碍となる者に對してその反抗を抑壓するに足る暴行を加へるといふことで十分であって論旨にいふやうに暴行を受けるものが十分の意思能力を持ってゐることは必要ではない。」として、暴行脅迫の対象は財物の所有者に限定されず、目的の障害となる者であればよいことを示している。
15歳の丙は、衣類の所有者ではないが、財物奪取の障害となる者である。
したがって、甲に強盗既遂罪が成立する。


(H25 司法 第12問 4)
甲は、空き巣を行う目的で乙宅に侵入したところ、たまたま留守番をしていた乙の甥である10歳の丙に発見され、金品を奪うために、丙に対し、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え、その反抗を抑圧して寝室のタンス内にあった乙名義の預金通帳と印鑑を奪った。甲には強盗既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭22.11.26)は、人の居宅内において留守居をしていた10歳の子供に対し暴行脅迫を加え財物を奪取した事案において、「強盗罪の成立には目的を遂行するに障碍となる者に對してその反抗を抑壓するに足る暴行を加へるといふことで十分であって論旨にいふやうに暴行を受けるものが十分の意思能力を持ってゐることは必要ではない。」として、暴行脅迫の対象は財物の所有者に限定されず、目的の障害となる者であればよいことを示している。
10歳の丙は、乙名義の預金通帳と印鑑の所有者ではないが、財物奪取の障害となる者である。
したがって、甲に強盗既遂罪が成立する。

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強盗罪と間接正犯 東京高判昭和42年6月20日

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概要
脅迫により反抗を抑圧された被害者が財物を差し出すのは、もはや任意交付の観念をもって律すべき限りでなく、犯人がこれを受領するのは、すなわち財物の奪取にほかならないから、仮令犯人において被害者の手を経ず直接財物を奪い取るの意図なく、被害者の提供をまってはじめてこれを受領する意図であったとしても、その目的を達する手段として被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫を用いたものである以上、犯人に強盗の犯意がなかったとはいえない。
判例
事案:暴行や脅迫をもって被害者を財物を差し出すしかないという精神状況に追い込んだという事案において、強盗罪と窃盗罪の間接正犯のいずれが成立するかが問題となった。

判旨:「財物を交付せしめる手段として被害者に対し脅迫を加えた場合、その脅迫が社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであれば,現実に被害者が反抗を抑圧されたか否かを問わず、右脅迫は強盗罪の実行行為に該当するとともに右脅迫により反抗を抑圧された被害者が財物を差し出すのは、もはや任意交付の観念をもって律すべき限りでなく、犯人がこれを受領するのは、すなわち財物の奪取にほかならないから、仮令犯人において被害者の手を経ず直接財物を奪い取るの意図なく、被害者の提供をまってはじめてこれを受領する意図であったとしても、その目的を達する手段として被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫を用いたものである以上、犯人に強盗の犯意がなかったとはいえない。」
過去問・解説

(R2 共通 第1問 3)
甲は、財物を奪取するために、当該財物の占有者Xに対し、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行や脅迫を用いて、当該財物を差し出すしかないとの精神状態に陥らせた上で、当該財物を差し出させた。この場合、甲に、Xに対する強盗罪は成立せず、窃盗罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭42.6.20)は、「脅迫が社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであれば,現実に被害者が反抗を抑圧されたか否かを問わず、右脅迫は強盗罪の実行行為に該当するとともに右脅迫により反抗を抑圧された被害者が財物を差し出すのは、もはや任意交付の観念をもって律すべき限りでなく、犯人がこれを受領するのは、すなわち財物の奪取にほかならない…。」としている。
Xは、当該財物を自ら甲に差し出しているが、直前に甲は反抗を抑圧するに足りる程度の暴行や脅迫を用いて、Xを当該財物を差し出すしかないとの精神状態に陥らせている以上、「強取」に当たる。
したがって、甲には、強盗罪が成立する。

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強盗罪の既遂時期 最三小判昭和24年6月14日

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概要
強盜の目的で会社の事務所に押入り、居合わせた事務員全部を縛って、洋服類を着込みその他の物は、荷造りをして持ち出そうにした時点で強盜の既遂に達する。
判例
事案:強盗目的で事務所に押し入り、従業員を縛ったうえ、財物を自らの体に着用して出ようとしようとした時点で警察隊に踏み込まれて捕縛されたという事案において、強盗既遂罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は共犯者等と共に被害会社の事務所に押入り,居合わせた男女事務員の全部を縛って全然抵抗し得ず奪われた物を取返し得ない状態に置き洋服類は着込み、その他の物は荷造りして持ち出すばかりにしたところを、警察隊に踏み込まれて捕縛されたのであって、…既に物の支配を取得したと言い得るのであり、窃盗罪についてではあるが、盗品が犯行の場所から持出される前に既遂を認定した判例が大審院以来繰返されているのであって、…強盗罪についてもこの点は同様であり、論旨は理由がない。」
過去問・解説

(H22 司法 第8問 エ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、強盗罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、深夜、強盗の目的で会社事務所に入り込み、1人で勤務していた事務員乙を縛り上げ、持参したボストンバッグに同事務所に設置された金庫内の現金を詰め込んで手に持ち、同事務所の出入口から外に出ようとしたところ、駆けつけた警察官に同事務所内で逮捕された。

(正答)1

(解説)
判例(最判昭24.6.14)は、本肢と同種の事案において、「共犯者等と共に被害会社の事務所に押入り,居合わせた男女事務員の全部を縛って全然抵抗し得ず奪われた物を取返し得ない状態に置き洋服類は着込み、その他の物は荷造りして持ち出すばかりにしたところを、警察隊に踏み込まれて捕縛されたのであって、…既に物の支配を取得したと言い得る…。」として、財物の占有を取得して建物から出ようとした時点で強盗罪が既遂に達することを示している。
したがって、甲が事務所の出入口から外に出ようとした時点で、強盗既遂罪が成立する。

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強盗罪の既遂時期 最三小判昭和23年12月24日

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概要
強盗犯人が被害者を脅迫しその犯行を抑圧中に財物を奪取すれば、その奪取行為がたまたま被害者の気付かない間になされたものであっても、強盗罪が成立する。
判例
事案:犯人が屋内に侵入して家人にピストル等を突きつけて脅迫したが、被害者が財物奪取を認識していなかった事案において、強盗罪の成否が問題となった。

判旨:「犯人が屋内に侵入して家人にピストル等を突きつけて脅迫した場合に家人は犯人が屋外に退出するに至るまで畏怖を感じ反抗を抑圧されることは当然であるから、犯人がその間家人の所持する財物を奪取すればそれは窃盗ではなく強盗であること言うまでもないことである。されば、被告人甲が懐中時計を奪取した状況が所論のとおりであったとしても強盗であることに論はなく、又強盗罪の判示としては所論のように個々の財物について奪取の状況を逐一説明する必要のないことも多言を要しない虞であり、猶共同強盗であるから仮令論旨のいう様に被告人乙が時計奪取の事実を知らなかったとしても共同の責任を負うのは当然である。」
過去問・解説

(H22 司法 第18問 ア)
甲が、財物奪取の意思で乙に脅迫を加えてその反抗を抑圧し、同人のポケットから財物を奪ったが、財物を奪われたことに乙が気付かなかった場合、強盗既遂罪(刑法第236条第1項)は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.12.24)は、本肢と同種の事案において、「個々の財物について奪取の状況を逐一説明する必要のないことも多言を要しない虞であり、猶共同強盗であるから仮令論旨のいう様に被告人乙が時計奪取の事実を知らなかったとしても共同の責任を負うのは当然である。」として、自己の行為によって被害者の反抗を抑圧していれば、被害者が財物を奪取されたことに気づいていなくても、強盗罪が成立することを示している。
したがって、乙が財物を奪われたことに気付いていなかったとしても、甲に強盗既遂罪が成立する。

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2項強盗の成否 最一小判昭和61年11月18日

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概要
甲と乙が、共謀の上、まず甲において、覚せい剤取引の斡旋にかこつけてVをホテルの一室に呼び出し、別室に買主が待機しているかのように装って、覚せい剤の売買の話をまとめるためには現物を買主に見せる必要がある旨申し向けてVから覚せい剤を受け取り、これを持って同ホテルから逃走した後、間もなく、乙がVのいる部屋に赴きVを拳銃で狙撃したが殺害の目的を遂げなかった場合、いわゆる1項強盗による強盗殺人未遂罪は成立しないが、窃盗罪又は詐欺罪といわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪との包括一罪が成立する。
判例
事案:甲と乙が、当初は丙を殺害してその所持する覚せい剤を強取することを計画したが、その後計画を変更し、共謀の上、まず甲において、覚せい剤取引の斡旋にかこつけて丙をホテルの一室に呼び出し、別室に買主が待機しているかのように装って、覚せい剤の売買の話をまとめるためには現物を買主に見せる必要がある旨申し向けて丙から覚せい剤を受け取り、これを持って同ホテルから逃走した後、間もなく、乙が丙のいる部屋に赴き丙を拳銃で狙撃したが殺害の目的を遂げなかった。以上のような事案において、強盗殺人未遂罪について1項又は2項のいずれに当たるかが問題となった。

判旨:「右事実につき、原判決は、(1)甲は丙の意思に基づく財産的処分行為を介して本件覚せい剤の占有を取得したとはいえず、これを奪取したものとみるべきであること、(2)あらかじめ殺人と金品奪取の意図をもって、殺害と奪取が同時に行われるときはもとより、これと同視できる程度に日時場所が極めて密着してなされた場合も強盗殺人罪の成立を認めるべきであること、(3)このように解することは、強盗殺人(ないし強盗致死傷)罪が財産犯罪と殺傷犯罪のいわゆる結合犯であることや、法が事後強盗の規定を設けている趣旨にも合致すること、(4)本件の場合、もともと丙を殺害して覚せい剤を奪取する計画であったところ、後に計画を一部変更して覚せい剤を奪取した直後に丙を殺害することにしたが、殺害と奪取を同一機会に行うことに変わりはなく、右計画に従って実行していること、などの理由を説示して、被告人(乙)(及び甲)に対しいわゆる1項強盗による強盗殺人未遂罪の成立を認め、これと結論を同じくする第一審判決を支持している。
 しかしながら、まず、右(1)についてみると、前記一、二審認定事実のみを前提とする限りにおいては、甲らが丙の財産的処分行為によって本件覚せい剤の占有を取得したものとみて、被告人(乙)らによる本件覚せい剤の取得行為はそれ自体としては詐欺罪に当たると解することもできないわけではないが(本件覚せい剤の売買契約が成立したことになっていないことは、右財産的処分行為を肯認する妨げにはならない。)、他方、本件覚せい剤に対する丙の占有は、甲らにこれを渡したことによっては未だ失われず、その後甲らが丙の意思に反して持ち逃げしたことによって失われたものとみて、本件覚せい剤の取得行為は、それだけをみれば窃盗罪に当たると解する余地もあり、以上のいずれかに断を下すためには、なお事実関係につき検討を重ねる必要がある。ところで、仮に右の点について後者の見解に立つとしても、原判決が(2)において、殺害が財物奪取の手段になっているといえるか否かというような点に触れないで、両者の時間的場所的密着性のみを根拠に強盗殺人罪の成立を認めるべきであるというのは、それ自体支持しがたいというほかないし、(3)で挙げられている結合犯のことや、事後強盗のことが、(2)のような解釈を採る根拠になるとは、到底考えられない。また、(4)で、もともとの計画が殺害して奪取するというものであったと指摘している点も、現に実行された右計画とは異なる行為がどのような犯罪を構成するのかという問題の解決に影響するとは思われない。本件においては、被告人(乙)が303号室に赴き拳銃発射に及んだ時点では、甲らは本件覚せい剤を手中にして何ら追跡を受けることなく逃走しており、すでにタクシーに乗車して遠ざかりつつあったかも知れないというのであるから、その占有をすでに確保していたというべきであり、拳銃発射が本件覚せい剤の占有奪取の手段となっているとみることは困難であり、被告人(乙)らが本件覚せい剤を強取したと評価することはできないというべきである。したがって、前記のような理由により本件につき強盗殺人未遂罪の成立を認めた原判決は、法令の解釈適用を誤ったものといわなければならない。
 しかし、前記の本件事実関係自体から、被告人(乙)による拳銃発射行為は、丙を殺害して同人に対する本件覚せい剤の返還ないし買主が支払うべきものとされていたその代金の支払を免れるという財産上不法の利益を得るためになされたことが明らかであるから、右行為はいわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪に当たるというべきであり(暴力団抗争の関係も右行為の動機となっており、被告人(乙)についてはこちらの動機の方が強いと認められるが、このことは、右結論を左右するものではない。)、先行する本件覚せい剤取得行為がそれ自体としては、窃盗罪又は詐欺罪のいずれに当たるにせよ、前記事実関係にかんがみ、
 本件は、その罪と(2項)強盗殺人未遂罪のいわゆる包括一罪として重い後者の刑で処断すべきものと解するのが相当である。したがって、前記違法をもって原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。」
過去問・解説

(H21 司法 第19問 5)
甲は、覚せい剤の密売人乙から覚せい剤を受け取った後、その代金を請求されるや、代金支払債務を免れるため、乙を殺害した。この場合、甲には強盗殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.11.18)は、本肢と同種の事案において、「被告人(乙)による拳銃発射行為は、丙を殺害して同人に対する本件覚せい剤の返還ないし買主が支払うべきものとされていたその代金の支払を免れるという財産上不法の利益を得るためになされたことが明らかであるから、右行為はいわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪に当たる…。」としている。
甲は、覚せい剤の代金支払債務を免れるという、財産上不法の利益を得るために乙を殺害しているといえるから、甲には、2項強盗による強盗殺人罪が成立する。


(H22 司法 第18問 ウ)
甲が、乙から財物をだまし取って財物の占有を確保した後に、だまされたことに気付いた乙から上記財物の返還を要求され、その返還を免れるため、乙に対し、暴行を加えて財物の取戻し行為を抑圧した場合、強盗既遂罪(刑法第236条第1項)が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.11.18)は、本肢と同種の事案において、「被告人(乙)による拳銃発射行為は、丙を殺害して同人に対する本件覚せい剤の返還ないし買主が支払うべきものとされていたその代金の支払を免れるという財産上不法の利益を得るためになされたことが明らかであるから、右行為はいわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪に当たる…。」としている。
甲は、財物の返還債務を免れるという、財産上不法の利益を得るために乙に暴行を加えているから、甲には、2項強盗による強盗既遂罪(236条2項)が成立する。


(H25 司法 第12問 5)
甲は、飲食店において、代金を支払う意思及び能力がないのに、店長乙をだまして酒食を注文し、飲食した後、代金の支払いを免れるために、乙に対し、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え、その反抗を抑圧して逃走し、代金請求を免れた。甲には強盗既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.11.18)は、本肢と同種の事案において、「被告人(乙)による拳銃発射行為は、丙を殺害して同人に対する本件覚せい剤の返還ないし買主が支払うべきものとされていたその代金の支払を免れるという財産上不法の利益を得るためになされたことが明らかであるから、右行為はいわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪に当たる…。」としている。
甲は、飲食店の代金支払債務を免れるという、財産上不法の利益を得るために乙に暴行を加えているといえるから、甲には、2項強盗による強盗既遂罪が成立する。


(H29 共通 第20問 3)
甲は、ホテルの部屋で乙と会い、乙に対し、100万円相当の覚せい剤(以下「本件覚せい剤」という。)の代金として、偽造した1万円札100枚を渡した。乙は、甲から渡された1万円札が偽札であることに気付かずに、甲に対し、本件覚せい剤を渡し、甲は、これを持って同部屋を出た。
 甲は、本件覚せい剤をホテルの駐車場に駐車中の自己の自動車内に置いたところ、甲が乙に渡した1万円札が偽札であることに気付いて追い掛けてきた乙から、本件覚せい剤を返還するように求められた。甲は、本件覚せい剤の返還を免れるため、殺意をもって乙の首を両手で絞めて乙を殺害した。
 覚せい剤は、法定の除外事由なく所持することが禁じられた物であるが、甲は、本件覚せい剤の返還を免れるために乙を殺害していることから、甲には強盗殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.11.18)は、本肢と同種の事案において、「被告人(乙)による拳銃発射行為は、丙を殺害して同人に対する本件覚せい剤の返還ないし買主が支払うべきものとされていたその代金の支払を免れるという財産上不法の利益を得るためになされたことが明らかであるから、右行為はいわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪に当たる…。」としている。
甲は、覚せい剤の返還債務を免れるという、財産上不法の利益を得るために乙を殺害しているといえるから、甲には、2項強盗による強盗殺人罪が成立する。


(R1 司法 第2問 イ)
甲及び乙は、宝石商の丙から宝石を奪うことを計画した。その計画は、甲が、宝石取引のあっせんにかこつけてホテルの一室に丙を呼び出し、別室の顧客に見せる必要があるとうそを言って丙から宝石を受領し、甲の退室後に、乙が同室に入って丙を殺害するという内容であった。
 甲は、計画に従って、ホテルの一室で丙から宝石を受領して退室し、それと入れ替わりに同室に立ち入った乙が丙の腹部を包丁で刺し、丙に重傷を負わせたが、殺害には至らなかった。
 甲が丙から宝石を受領した行為について詐欺罪が成立すると考えた場合、同一の被害を二重に評価することはできないため、甲及び乙が、丙から宝石の代金相当額の支払を免れる意図を持っていたとしても、甲及び乙に、殺人未遂罪が成立するにとどまり、いわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.11.18)は、本肢と同種の事案において、「被告人(乙)による拳銃発射行為は、丙を殺害して同人に対する本件覚せい剤の返還ないし買主が支払うべきものとされていたその代金の支払を免れるという財産上不法の利益を得るためになされたことが明らかであるから、右行為はいわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪に当たる…。」としている。
甲及び乙は、宝石の代金相当額の支払を免れるという、財産上不法の利益を得るために丙を殺害しているといえるから、甲及び乙には、2項強盗による強盗殺人未遂罪が成立する。

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不法原因給付と2項強盗 最三小判昭和35年8月30日

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概要
相手方の反抗を抑圧すべき暴行、脅迫の手段を用いて財産上不法利得するをもって足り、必ずしも相手方の意思による処分行為を強制することを要するものではない。不法原因に基づく給付であるため被害者に返還請求権がないとしても、事実上その返還請求を受けることのない結果を生じさせ返還を免れた以上は、236条2項、240条後段の罪が成立する。
判例
事案:麻薬購入資金を預かり保管中に当該金員を不法に領得する目的をもって、寄託者を殺害し同人から事実上右金員の返還請求を受けることのない結果を生じさせ返還を免れたという事案において、不法原因給付であっても2項強盗殺人罪が成立するかが問題となった。

判旨:「刑法236条2項の罪は同条1項の罪と同じく処罰すべきものと規定され,1項の罪とは不法利得と財物強取とを異にする外、その構成要素に何らの差異がなく、1項の罪におけると同じく相手方の反抗を抑圧すべき暴行、脅迫の手段を用いて財産上不法利得するをもって足り、必ずしも相手方の意思による処分行為を強制することを要するものではない。従って、犯人が債務の支払を免れる目的をもって債権者に対しその反抗を抑圧すべき暴行、脅迫を加え、債権者をして支払の請求をしない旨を表示せしめて支払を免れた場合であると、右の手段により債権者をして事実上支払の請求をすることができない状態に陥らしめて支払を免れた場合であるとを問わず、ひとしく右236条2項の不法利得罪を構成するものと解すべきであるとされるに至ったのであり、原審の確定した事実関係によれば被告人山田は判示第一の犯行の2日位前に被害者藤槻学、藤村章の両名から現金約30万円の保管を託されてこれを受取り、以来その管理一切の責任を負い、その後各地において諸経費を同人らの了解のもとに右金員中より支出し、犯行直前には残金約27万5000円を所持していたところ、同被告人は自己の保管にかかる右金員を領得するため相被告人波木と共同し判示日時判示あかつき丸の船尾から毛布に巻きつけた右藤槻、藤村の両名を次々に暗夜の海中に投入れて溺死させ、もって委託者たる右両名を殺害し、同人らから事実上右金員の返還請求を受けることのない結果を生ぜしめて返還を免れたというのであるから、原審が右被告人らの所為は財産上不法の利益を得たものであるとなし、刑法240条後段、236条2項に該当することが明白であると判示したのはまことに正当であり、論旨は理由がない。…たとえ原判示金員が麻薬購入資金として被害者藤槻及び藤村両名から被告人山田に保管を託され、右金員の授受は不法原因に基ずく給付であるがため右藤槻らがその返還を請求することができないとしても、前示の如くいやしくも被告人らが該金員を領得するため右藤槻らを殺害し、同人らから事実上その返還請求を受けることのない結果を生ぜしめて返還を免れた以上は、刑法240条後段、236条2項の不法利得罪を構成するものと解すべきである。」
過去問・解説

(R5 予備 第4問 1)
甲は、違法な麻薬の購入資金としてAから預かった金銭の返還を免れるために、殺意をもって、Aを殺害し、その返還を免れた。この場合、甲に強盗殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.8.30)は、本肢と同種の事案において、「刑法236条2項の罪は同条1項の罪と同じく処罰すべきものと規定され,1項の罪とは不法利得と財物強取とを異にする外、その構成要素に何らの差異がなく、1項の罪におけると同じく相手方の反抗を抑圧すべき暴行、脅迫の手段を用いて財産上不法利得するをもって足り、必ずしも相手方の意思による処分行為を強制することを要するものではない。」とした上で、「たとえ…金員の授受は不法原因に基ずく給付であるがためVらがその返還を請求することができないとしても、前示の如くいやしくも被告人らが該金員を領得するためVらを殺害し、同人らから事実上その返還請求を受けることのない結果を生ぜしめて返還を免れた以上は、刑法240条後段、236条2項の不法利得罪を構成する…。」としている。
したがって、甲は、違法な麻薬の購入資金の返還をAの殺害によって免れているといえるから、甲には、2項強盗による強盗殺人罪が成立する。

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タクシー料金と2項強盗 名古屋高判昭和35年12月26日

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概要
タクシーに乗車した者が、その運送料金の支払いを免れるため運転者に対し暴行を加え逃走した場合、いわゆる2項強盗罪が成立する。
判例
事案:いわゆる自タクに乗車した者が、その運送料金の支払いを免れるため運転者に対し暴行を加え逃走したという事案において、強盗罪の成否が問題となった。

判旨:「他に被告人が原判示自動車運送契約に基いてVに対し乗車料金支払いを免れ得べき特別の事情も認められないのであるから、被告人としては、原判示の如くVに対し乗車料金の支払いの義務を負うものというべく、かつ又その自動車料金が1700円であったことは、前記Vの検察官に対する供述調書により明認できるところであり、この料金の算定を不当とすべき事情も本件記録上認めることはできないのであるから、被告人が右運送料金債務を免れるためにした本件の所為が強盗傷人の罪を構成することは当然である。」
過去問・解説

(R5 予備 第4問 3)
甲は、タクシーに乗車して目的地に到着した後、運賃を請求された際、運賃の支払を免れるために、タクシー運転手Aにナイフを突き付けた上、「殺すぞ。」と言って脅し、Aが恐怖で動けないうちに逃走し、その支払を免れた。この場合、甲に強盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(名古屋高判昭35.12.26)は、本肢と同種の事案において「乗車料金支払いを免れ得べき特別の事情も認められないのであるから、被告人としては、原判示の如くVに対し乗車料金の支払いの義務を負う…被告人が右運送料金債務を免れるためにした本件の所為が強盗傷人の罪を構成する…。」としている。
甲は、運転手Aにナイフを突き付けた上、「殺すぞ。」と言って脅し、Aが恐怖で動けないうちに逃走し、その支払を免れているから、甲には、2項強盗による強盗罪が成立する。

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居直り強盗 最二小判昭和24年2月15日

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概要
暴行脅迫を用いて財物を奪取する犯意の下に先づ財産を奪取し、次いで被害者に暴行を加えてその奪取を確保した場合(いわゆる「居直り強盗」の場合)は、強盗取得罪を構成するのであって、窃盗がその財物の取還を拒いで暴行をする場合の事後強盗罪ではない。
判例
事案:居直り強盗の場合に、強盗取得罪(236条1項)と事後強盗罪(238条)のどちらが成立するのかが問題となった。

判旨:「暴行脅迫を用いて財物を奪取する犯意の下に先づ財産を奪取し、次いで被害者に暴行を加えてその奪取を確保した場合は強盗罪を構成するのであって、窃盗がその財物の取還を拒いで暴行をする場合の準強盗ではないのである。」
過去問・解説

(R5 司法 第20問 ア)
甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながらカードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去った。
乙がAからカードを奪った行為は、窃盗罪の実行に着手した後、Aに暴行を加えてこれを奪取したことになるから、乙に事後強盗既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.2.15)は、居直り強盗の事案において、「暴行脅迫を用いて財物を奪取する犯意の下に先づ財産を奪取し、次いで被害者に暴行を加えてその奪取を確保した場合は強盗罪を構成するのであつて、窃盗がその財物の取還を拒いで暴行をする場合の準強盗ではないのである。」として、強盗取得罪(236条1項)が成立し、事後強盗罪(238条)は成立しない旨判示している。すなわち、取戻防止目的の場合は、「財物を得て」という文言から、「窃盗」には窃盗罪の既遂の犯人に限られるところ、居直り強盗の場合、窃盗未遂の犯人が財物奪取だけのために暴行・脅迫を行っているため、「窃盗」要件を満たさないとの理由から事後強盗罪の成立が否定され、強盗強盗罪が成立するのである。
確かに、判例(最決令4.2.14)は、本肢と同種の事案において、「このような事実関係の下においては、被告人が被害者に対して印鑑を取りに行かせるなどしてキャッシュカード入りの封筒から注意をそらすための行為をしていないとしても、本件うそが述べられ、Xが被害者宅付近路上まで赴いた時点では、窃盗罪の実行の着手が既にあったと認められる。」としているから、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙が、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた時点において、甲及び乙が、窃盗罪の「実行に着手」(43条本文)したといえる。しかし、乙は、本件計画どおりにカードを手に入れるためだけに、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去ったのだから、居直り強盗の事案であって、窃盗未遂の犯人が財物奪取だけのために暴行・脅迫を行っているとして、「窃盗」要件を満たさないとの理由から事後強盗罪の成立が否定され、強盗強盗罪が成立するのである。
したがって、乙には、事後強盗既遂罪ではなく、強盗取得既遂罪が成立する。

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事後強盗罪の成否(窃盗の機会) 最二小判平成16年12月10日

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概要
被告人が、財物を窃取した後、いったん犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごし、この間に、被告人が被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況はなくなったといえる場合には、窃盗の機会が継続しているとはいえない。
判例
事案:被害者方で財物を窃取した犯人が、だれからも発見、追跡されることなく、いったん同所から約1km離れた場所まで移動し、窃取の約30分後に再度窃盗をする目的で被害者方に戻った際に逮捕を免れるため家人を脅迫したという事案において、事後強盗罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、財布等を窃取した後、だれからも発見、追跡されることなく、いったん犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごしており、この間に、被告人が被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況はなくなったものというべきである。そうすると、被告人が、その後に、再度窃盗をする目的で犯行現場に戻ったとしても、その際に行われた上記脅迫が、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。」
過去問・解説

(H25 司法 第12問 2)
甲は、乙宅で財布を窃取し、誰からも追跡されることなく、約2キロメートル離れた場所まで徒歩で移動した後、窃取した財布の中を見たが、予想していたよりも現金が少なかったことから、再び窃盗を行う目的で乙宅に戻り、玄関を開けたところ、帰宅していた乙に発見され、逮捕を免れるために、乙に対し、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。甲には事後強盗既遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.12.10)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、財布等を窃取した後、だれからも発見、追跡されることなく、いったん犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごしており、この間に、被告人が被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況はなくなったものというべきである。そうすると、被告人が、その後に、再度窃盗をする目的で犯行現場に戻ったとしても、その際に行われた上記脅迫が、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。」としている。
甲は、誰からも追跡されることなく、約2キロメートル離れた場所まで徒歩で移動した後再び乙宅へ戻っているから、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。
したがって、甲には、事後強盗既遂罪は成立しない。


(R1 共通 第20問 イ)
乙は、某日午後0時頃、前記の意図でナイフを購入し、それを携帯してV方に向かい、同日午後1時頃、腕時計を盗む目的で、V方に窓から侵入した上、寝室でV所有の腕時計(時価100万円相当)を窃取した。乙は、その後間もなく、V方玄関ドアの施錠を外して戸外に出て、誰からも発見、追跡されることなく、V方から約1キロメートル離れた公園まで逃げた。乙は、同所において、やはり現金も欲しいと考え、再度V方に窃盗に入ることを決意し、V方に戻り、同日午後1時30分頃、V方玄関内に入ったところ、その直後に帰宅してきたVと鉢合わせとなったことから、逮捕を免れるため、前記ナイフをVの面前に示し、Vが恐怖の余り身動きできないうちに逃走した。
乙がVをナイフで脅迫したことについては、腕時計の窃取行為との時間的・場所的な近接性に照らせば、窃盗の機会の継続中に行われたものといえるため、乙に事後強盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.12.10)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、財布等を窃取した後、だれからも発見、追跡されることなく、いったん犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごしており、この間に、被告人が被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況はなくなったものというべきである。そうすると、被告人が、その後に、再度窃盗をする目的で犯行現場に戻ったとしても、その際に行われた上記脅迫が、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。」としている。
乙は、誰からも発見、追跡されることなく、V方から約1キロメートル離れた公園まで逃げたから、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。
したがって、乙には、事後強盗既遂罪は成立しない。


(R3 共通 第18問 5)
甲は、乙宅に侵入して財布を盗んだ後、誰にも発見されずに1キロメートル離れた公園へ移動して財布内の現金を確認した。しかし、甲は、その金額に満足せず再度乙宅で窃盗をしようと考え、乙宅を出た30分後に乙宅に戻り、その玄関扉を開けようとしたところ、帰宅していた乙に発見されたため、逮捕を免れる目的で、乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。この場合、甲には、事後強盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.12.10)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、財布等を窃取した後、だれからも発見、追跡されることなく、いったん犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごしており、この間に、被告人が被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況はなくなったものというべきである。そうすると、被告人が、その後に、再度窃盗をする目的で犯行現場に戻ったとしても、その際に行われた上記脅迫が、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。」としている。
甲は、誰にも発見されずに1キロメートル離れた公園へ移動していたから、窃盗の機会の継続中に行われたものということはできない。
したがって、甲には、事後強盗既遂罪は成立しない。

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強盗の機会 最二小判昭和24年5月28日

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概要
強盗犯人が侵入した家屋の表入口から逃走するにあたり追跡して来た家人をその入口附近において日本刀で突き刺し死に至らしめた場合には、強盗の機会が継続していたから、強盗殺人罪が成立する。
判例
事案:強盗犯人が侵入した家屋の表入口から逃走するにあたり、追跡して来た家人をその入口附近において日本刀で突き刺し死に至らしめたという事案において、機会の継続が認められるかが問題となった。

判旨:「刑法第240条後段の強盗殺人罪は強盗犯人が強盗をなす機会において他人を殺害することによりて成立する罪である。原判決の摘示した事実によれば、家人が騒ぎ立てたため他の共犯者が逃走したので被告人も逃走しようとしたところ同家表入口附近で被告人に追跡して来た被害者両名の下腹部を日本刀で突刺し死に至らしめたというのである。即ち殺害の場所は同家表入口附近といって屋内か屋外か判文上明でないが、強盗行為が終了して別の機会に被害者両名を殺害したものではなく、本件強盗の機会に殺害したことは明である。」
過去問・解説

(H22 司法 第20問 ア)
甲は、乙及びその妻子全員が1週間の旅行に出ていて留守であると聞いていた乙宅に、窃盗の目的で侵入し、金庫を開けたところ、乙の妻子は旅行中だったものの、1人で在宅していた乙に発見され、「泥棒」と叫ばれた。甲は、捕まっては大変だと思い、乙にナイフを突き付け、「静かにしろ。」と言ったところ、乙は、慌てて逃げ出そうとして転倒し、暖炉の角に頭部をぶつけた結果、脳内出血を起こして死亡した。
 甲は、乙の死亡を確認した上、金庫の中にあった多量の宝石と多額の現金を奪った後、犯行の痕跡を消し去ろうと考えて乙宅に火を放ち、乙宅は全焼した。
 その後、甲は、上記宝石を丙に売却することとしたが、その際、上記事情を知る丁に依頼して、丁が運転する自動車に乗り、丁と一緒に同宝石を丙宅まで運搬した。
 甲に、強盗致死罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.5.28)は、本肢と同種の事案において、「刑法第240条後段の強盗殺人罪は強盗犯人が強盗をなす機会において他人を殺害することによりて成立する罪である。」とした上で、「殺害の場所は同家表入口附近といって屋内か屋外か…明でないが、強盗行為が終了して別の機会に被害者両名を殺害したものではなく、本件強盗の機会に殺害したことは明である。」として、強盗致死罪の成立を認めている。
乙は、慌てて逃げ出そうとして転倒し、暖炉の角に頭部をぶつけた結果、脳内出血を起こして死亡しており、強盗の機会の継続中に死に至ったといえる。
したがって、甲には、強盗致死罪が成立する。

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事後強盗罪の成否(被害者の主観) 最二小判昭和22年11月29日

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概要
238条の規定は、窃盗が財物の奪還を拒み又は逮捕を免れ若しくは罪跡を隠滅するため暴行又は脅迫を加えた以上、被害者が財物を奪還しようとし又は加害者を逮捕しようとする行為をしたと否とにかかわらず、強盗をもって論ずる趣旨である。
判例
事案:工場内の洗濯剤3樽を窃取したのち、倉庫番に発見されたと思い、倉庫番に暴行を加えたという事案において、被害者が財物を奪還しようとし又は加害者を逮捕しようとする行為をしたことが事後強盗罪の成立に必要であるかが問題となった。

判旨:「刑法第238條の規定は窃盗が財物の取還を拒き又は逮捕を免かれ若しくは罪跡を湮滅する爲暴行又は脅迫を加へた以上被害者において財産を取還せんとし又は加害者を逮捕せんとする行爲を爲したと否とに拘はらず強盗を以って論ずる趣旨であると解するのが妥當である從って本件において原審は證據により原判示第3の事實を認定した以上前記法條により準強盗として處斷できるのであって所論の如く被害者において財物を取還せんとし又は加害者を逮捕せんとした事實を確定する必要はないのであるから原判決には所論2の違法はない。」
過去問・解説

(H27 共通 第16問 3)
窃盗犯人が窃盗の現場で逮捕を免れるために暴行・脅迫を加えた相手方が、現に当該窃盗犯人を逮捕する意図を有していなくても、事後強盗罪は成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭22.11.29)は、「刑法第238條の規定は窃盗が財物の取還を拒き又は逮捕を免かれ若しくは罪跡を湮滅する爲暴行又は脅迫を加へた以上被害者において財産を取還せんとし又は加害者を逮捕せんとする行爲を爲したと否とに拘はらず強盗を以って論ずる趣旨である…。」として、強盗罪において被害者において現に当該窃盗犯人を逮捕する意図を有しているかどうかに関係なく事後強盗罪が成立することを示している。

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事後強盗罪の既遂時期 最二小判昭和24年7月9日

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概要
事後強盗罪の既遂未遂は窃盗の既遂未遂で区別するから、窃盗未遂犯人が逮捕を免れるためにした脅迫した場合には事後強盗未遂罪が成立する。
判例
事案:窃盗未遂犯人が逮捕を免れるためにした脅迫したという事案において、事後強盗既遂罪の成否が問題となった。

判旨:「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものであることは当然であるにかゝわらず、原審はその擬律において刑法第238条同第236条を適用し、以って準強盗の既遂をもって問擬したのは違法である。けだし、窃盗未遂犯人による準強盗は、財物を得なかった点において、恰かも強盗の未遂と同一の犯罪態様を有するに過ぎないものである。しからば、強盗未遂の場合には刑法第243条の適用があるにかゝわらず、これと同一態様の窃盗未遂の準強盗を、強盗の既遂をもって論ずるときは、右刑法第243条の適用は排除せられることゝなり彼此極めて不合理の結果を生ずるに至るからである。」
過去問・解説

(H20 司法 第11問 ウ)
甲は、深夜、コンビニエンスストアでおにぎりを万引きして店外に出たところ、これに気付いた店員乙に呼び止められたので、逮捕を免れるため、路上に落ちていた角材で乙を殴るなど同人の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたが、たまたま通り掛かった通行人に取り押さえられ、逮捕を免れることができなかった。甲は、事後強盗既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.7.9)は、「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものである…。」として、窃盗が未遂にとどまる場合には、事後強盗罪も未遂にとどまることを示している。
甲が、コンビニエンスストアでおにぎりを万引きして店外に出たところで、窃盗罪は既遂となっている。
したがって、逮捕を免れるため、路上に落ちていた角材で乙を殴ったことにつき、甲に事後強盗既遂罪が成立する。


(H23 共通 第10問 ウ)
甲は、乙の住居内に侵入し、タンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探したが、見付けることができないうちに乙に発見された。甲は、逮捕を免れるため、乙に対して包丁を示して脅迫し、屋外に逃走したが、通報により駆けつけた警察官に現場付近で逮捕された。この場合、甲には事後強盗未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.7.9)は、「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものである…。」として、窃盗が未遂にとどまる場合には、事後強盗罪も未遂にとどまることを示している。
甲は、乙の住居内に侵入し、タンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探したが、見付けることができないうちに乙に発見され、逮捕を免れるため、乙に対して包丁を示して脅迫し逃走しているから、窃盗未遂犯人による事後強盗行為に当たる。
したがって、甲に事後強盗未遂罪が成立する。


(H25 司法 第12問 3)
甲は、電車内で乗客のポケットから財布を窃取した直後、その犯行状況を目撃して甲を逮捕しようとした警察官乙に対し、逮捕を免れるために、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたが、乙に逮捕された。甲には事後強盗未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.7.9)は、「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものである…。」として、窃盗が未遂にとどまる場合には、事後強盗罪も未遂にとどまることを示している。
甲が、電車内で乗客のポケットから財布を窃取したところで、窃盗罪は既遂となっている。
したがって、乙に対し、逮捕を免れるために、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたことにつき、甲に事後強盗既遂罪が成立する。


(H26 司法 第14問 1)
甲は、金品窃取の目的で乙方内を物色中、金品を手にする前に乙に見付かり、逮捕を免れるため、乙に暴行を加えてその反抗を抑圧し、逃走した。甲には事後強盗未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.7.9)は、「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものである…。」として、窃盗が未遂にとどまる場合には、事後強盗罪も未遂にとどまることを示している。
甲は、金品窃取の目的で乙方内を物色中に、金品を手にする前に乙に見付かっており、財物の占有を取得することができていないため、甲による窃盗罪は未遂にとどまる。
したがって、その後に逮捕を免れるため、乙に暴行を加えてその反抗を抑圧して逃走した甲には、事後強盗未遂罪が成立する。


(H27 共通 第16問 1)
窃盗既遂犯人のみが事後強盗罪の主体となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.7.9)は、「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものである…。」として、窃盗が未遂にとどまる場合には、事後強盗罪も未遂にとどまることを示している。
したがって、窃盗未遂犯人も事後強盗罪の主体となる。


(H29 共通 第17問 ア)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、事後強盗罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、会社事務所内において現金を窃取して、戸外に出たところを警備員乙に発見されて取り押さえられそうになったため、逮捕を免れようと考え、乙に対し、刃体の長さ20センチメートルの出刃包丁をその腹部に突き付け、「ぶっ殺すぞ。」と怒鳴り付けたが、偶然その場を通り掛かった警察官に取り押さえられ、逮捕を免れることができなかった。

(正答)1

(解説)
判例(最判昭24.7.9)は、「窃盗未遂犯人による準強盗行為の場合は、準強盗の未遂を以って問擬すべきものである…。」として、窃盗が未遂にとどまる場合には、事後強盗罪も未遂にとどまることを示している。
甲は、現金を窃取して、戸外に出ているから、甲の窃盗罪は既遂となっている。
そして、乙に対して、逮捕を逃れる目的で包丁を突き出す前に会社事務所内において現金を窃取しているから、窃盗既遂犯による事後強盗行為に当たる。
したがって、甲に事後強盗既遂罪が成立する。

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事後強盗罪の予備罪 最二小決昭和54年11月19日

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概要
237条にいう「強盗の目的」には238条の事後強盗を目的とする場合を含む。
判例
事案:誰かに発見されたら使用しようとナイフ及び模造拳銃を用意し、窃盗に使用するドライバー等をサングラス等とともにアタッシュ・ケースに入れて携帯し、ビル街の路上を、侵入すべき事務所等を物色しながら徘徊して犯行の機を窺っていたところ逮捕されたという事案において、237条にいう「強盗の目的」に、238条の事後強盗を目的とする場合を含むかが問題となった。

判旨:「刑法237条にいう『強盗ノ目的』には、同法238条に規定する準強盗を目的とする場合を含むと解すべきであって、これと同旨の原判断は正当である。」
過去問・解説

(H27 共通 第16問 5)
強盗予備罪の「強盗の罪を犯す目的」には、事後強盗を犯す目的も含まれる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭54.11.19)は、「刑法237条にいう『強盗ノ目的』には、同法238条に規定する準強盗を目的とする場合を含む…。」としている。
したがって、強盗予備罪の「強盗の罪を犯す目的」には、事後強盗を犯す目的も含まれる。


(R1 共通 第20問 ア)
甲は、友人乙から、借金の返済に窮している旨の相談をされ、乙に対し、「実家に親父の高級腕時計がある。それを盗んで売りさばけば金になる。」と提案し、甲と別居する甲の実父V方からV所有の腕時計を盗むことを唆した。乙は、甲の提案を受け、V方に窃盗に入ることとしたが、仮に、窃盗を行う際にVらに見付かって逮捕されそうになった場合には、Vらをナイフで脅してこれを抑圧し、逃走しようと考えた。乙が某日午後0時頃に、前記の意図で購入したナイフを携帯してV方に向かったことについては、「強盗の罪を犯す目的」が認められないので、乙に強盗予備罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭54.11.19)は、「刑法237条にいう『強盗ノ目的』には、同法238条に規定する準強盗を目的とする場合を含む…。」としている。
甲は、乙に対して窃盗を教唆しており、乙は、窃盗を行う際にVらに見付かって逮捕されそうになった場合には、Vらをナイフで脅してこれを抑圧し、逃走しようと考え、購入したナイフを携帯してV方に向かっており、「強盗の罪を犯す目的」が認められる。
したがって、乙に事後強盗罪の予備罪が成立する。


全体の正答率 : 0%

(R3 共通 第18問 3)
甲は、留守宅に侵入して窃盗をしようと考え、金品を物色中に家人が帰ってきたら同人に反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫を加えて逃げる意図でサバイバルナイフを携帯し、住宅街を徘徊して侵入に適した留守宅を探したが、これを発見できず、侵入を断念した。この場合、甲には、強盗予備罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭54.11.19)は、「刑法237条にいう『強盗ノ目的』には、同法238条に規定する準強盗を目的とする場合を含む…。」としている。
甲は、金品を物色中に家人が帰ってきたら同人に反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫を加えて逃げる意図でサバイバルナイフを携帯し、住宅街を徘徊して侵入に適した留守宅を探しており、「強盗の罪を犯す目的」が認められる。
したがって、甲には、事後強盗罪予備罪が成立する。

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事後強盗罪における「暴行」 大判昭和19年2月8日

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概要
238条にいう暴行とは逮捕を抑圧するに足る程度の動作をいい、その程度の判断は具体的状況に照らして行う。
判例
事案:スイカを盗み、逮捕を免れるために被害者を押し倒したという事案において、強盗罪における暴行に当たるかが問題となった。

判旨:「刑法第238条ニ所謂暴行トハ逮捕ヲ抑圧スルニ足ル程度ノ動作ヲ指称スルモノニシテ其ノ程度ノ存否ハ具体的状況ニ徴シテ之ヲ決スベキモノトス」
過去問・解説

(H21 司法 第20問 1)
甲は、コンビニエンスストアでおにぎり1個(時価150円相当)を窃取したが、甲の犯行を目撃して追いかけてきた店員乙に対し、同人に捕まえられるのを免れる目的で、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行を加えて加療約1週間を要する傷害を負わせた。甲に事後強盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭19.2.8)は、「刑法第238条ニ所謂暴行トハ逮捕ヲ抑圧スルニ足ル程度ノ動作ヲ指称スルモノニシテ其ノ程度ノ存否ハ具体的状況ニ徴シテ之ヲ決スベキモノトス」として、事後強盗罪における暴行は、相手方の反抗の抑圧程度のものまで要することを必要としている。
甲は、乙に対し、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行しか加えていないから、事後強盗罪は成立しない。


(R3 共通 第18問 2)
甲は、電車内で寝ていた乙の財布を盗んで電車を降りたが、乙が目を覚まして追い掛けてきたため、逮捕を免れる目的で、乙に暴行を加えたところ、乙が転倒して重傷を負い、反抗が抑圧された状態に至った。この場合、甲の暴行の程度を問わず、甲には、強盗致傷罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭19.2.8)は、「刑法第238条ニ所謂暴行トハ逮捕ヲ抑圧スルニ足ル程度ノ動作ヲ指称スルモノニシテ其ノ程度ノ存否ハ具体的状況ニ徴シテ之ヲ決スベキモノトス」として、事後強盗罪における暴行は、相手方の反抗の抑圧程度のものであることを要するとしている。
そして、甲は、電車内で盗んだ財布の所有者である乙に対し、逮捕を免れる目的で暴行を加えているところ、ここでいう暴行は、相手方の反抗を抑圧する程度のものであることを要するため、甲の暴行の程度によっては、甲に強盗致傷罪の前提となる強盗罪が成立しないことがある。

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強盗殺人罪の成否 大判大正2年10月21日

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概要
240条後段の強盗殺人罪は、強盗が財物強取の行為によって人を死に致らしめた事実あれば直ちに成立するものだから、致死の結果が財物強取の前にあるとその後にあるとは同罪の成立に影響しない。
判例
事案:人を死亡させたのち、身に着けていた金品を奪ったという事案において、致死の結果と強取の先後関係が問題となった。

判旨:「刑法第240条後段ノ強盗殺人罪ハ強盗カ財物強取ノ行為ニ因リテ人ヲ死ニ致シタル事実アレハ直ニ成立スルモノニシテ致死ノ結果カ財物強取ノ前ニ在ルト其後ニ在ルトハ同罪ノ成立ニ影響ナシ」
過去問・解説

(R4 司法 第18問 ②)
死者が生前身に付けていた財物を領得した場合について、丙が当初から財物を領得する意思でBを殺害し、Bの死亡直後に財布を領得したときは、丙に強盗殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大2.10.21)は、本肢と同種の事案において、「刑法第240条後段ノ強盗殺人罪ハ強盗カ財物強取ノ行為ニ因リテ人ヲ死ニ致シタル事実アレハ直ニ成立スルモノニシテ致死ノ結果カ財物強取ノ前ニ在ルト其後ニ在ルトハ同罪ノ成立ニ影響ナシ」として、強盗致死罪の成立にあたって、致死結果と財物奪取は先後を問わないことを示している。
したがって、当初から財物を領得する意思でBを殺害し財布を領得した丙には、強盗殺人罪が成立する。

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事後強盗による強盗殺人強盗傷人・強盗致死傷 大判昭和6年7月8日

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概要
240条の「強盗」には事後強盗(238条)及び昏睡強盗(239条)も含まれる。
判例
事案:強盗犯人が逮捕を免れようと巡査に傷害を負わせたという事案において、強盗致傷罪における「強盗」には事後強盗犯人も含まれるかが問題となった。

判旨:「刑法第二百四十条ニ所謂強盗ニハ同法第二百三十八条及第二百三十九条ニ依リ強盗ヲ以テ論スヘキ場合ヲモ包含ス」
過去問・解説

(H27 共通 第16問 4)
窃盗犯人が窃盗の現場で逮捕を免れるために相手方を殺害した場合、強盗殺人罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭6.7.8)は、「刑法第二百四十条ニ所謂強盗ニハ同法第二百三十八条及第二百三十九条ニ依リ強盗ヲ以テ論スヘキ場合ヲモ包含ス」として、事後強盗行為によって人を死傷させた場合にも、強盗致死傷罪が成立することを示している。
したがって、窃盗犯人が窃盗の現場で逮捕を免れるために相手方を殺害した場合、事後強盗による強盗殺人罪が成立する。


(R3 共通 第18問 1)
甲は、銭湯の脱衣場で窃盗をしようと考え、客の財布を手に取って在中する金額を確認中、その様子を目撃した乙から声を掛けられたため、逮捕を免れる目的で、乙に犯行を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて加療約1か月間を要する傷害を負わせた。この場合、甲には、事後強盗罪及び強盗致傷罪が成立し、両罪は観念的競合となる。

(正答)

(解説)
判例(大判昭6.7.8)は、「刑法第二百四十条ニ所謂強盗ニハ同法第二百三十八条及第二百三十九条ニ依リ強盗ヲ以テ論スヘキ場合ヲモ包含ス」として、事後強盗行為によって人を死傷させた場合にも、強盗致死傷罪が成立することを示している。
甲は、逮捕を免れる目的で、乙に犯行を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて加療約1か月間を要する傷害を負わせているから、甲には、事後強盗による強盗致傷罪の一罪のみが成立する。

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強盗致傷罪の成否 最一小決昭和28年2月19日

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概要
被害者に対し「金を出せ」「騒ぐと突き刺すぞ」等と申し向けて刃渡り45ミリメートルの日本刀を突きつける所為は、人の身体に対する不法な有形力の行使であって、強盗傷人罪における暴行に当たる。被害者が右に日本刀にしがみついて救を求め、犯人がその刀を引いたことによって右手掌等に傷害を負わせたときは、その所為は暴行の結果といいうる。
判例
事案:被害者に対し「金を出せ」「騒ぐと突き刺すぞ」等と申し向けて刃渡り45ミリメートルの日本刀を突きつけ、被害者が右に日本刀にしがみついて救を求めたところ、被告人がその刀を引いたことによって右手掌等に傷害を負わせたという事案において、強盗致傷罪の成否が問題となった。

判旨:「犯人が被害者に対し前示のような日本刀を突き付ける所為をなせばそれだけでも人の身体に対する不法な有形力を行使したものとして暴行を加えたといい得ること勿論であって、かかる際に判示の如く被害者がその日本刀にしがみつき救を求め、犯人がその刀を引いたことにより被害者の判示部位に切創を負わしめたとすればその負傷は右暴行による結果たること多言を要しないところであるから本件は所論のように強盗が暴行を加えずただ脅迫をしただけというような事態ではなく、強盗が暴行により被害者に傷害を加えたとの事案なのである。」
過去問・解説

(R5 予備 第4問 4)
甲は、財物奪取目的でAに包丁を突き付けて「金を出さなければ殺す。」と言って脅したところ、Aに包丁をつかまれたため、Aが負傷することを分かりながら包丁を引き、Aは両手を負傷した。この場合、甲に強盗傷人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭28.2.19)は、本肢と同種の事案において、「犯人が被害者に対し前示のような日本刀を突き付ける所為をなせばそれだけでも人の身体に対する不法な有形力を行使したものとして暴行を加えたといい得る…。」とした上で、「被害者がその日本刀にしがみつき救を求め、犯人がその刀を引いたことにより被害者の判示部位に切創を負わしめたとすればその負傷は右暴行による結果たること多言を要しない…。」としている。
甲は、Aに包丁をつかまれたため、Aが負傷することを分かりながら包丁を引き、Aは両手を負傷しているところ、これは暴行により傷害を加えた結果に当たる。
したがって、甲に強盗傷人罪が成立する。

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2項強盗による殺人罪の成否 最三小判昭和32年9月13日

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概要
犯人が債務の支払を免れる目的をもって債権者に対しその反抗を抑圧すべき暴行、脅迫を加え、債権者をして支払の請求をしない旨を表示させて支払を免れた場合であると、右の手段により債権者をして事実上支払の請求をすることができない状態に陥らしめて支払を免れた場合であるとを問わず等しく236条2項の不法利得罪を構成する。
判例
事案:貸金返還債務を免れるために貸主を殺害しようとしたという事案において、2項強盗罪における「暴行」としていかなる利益を移転させる現実的危険性が必要とされるかが問題となった。

判旨:「236条2項の罪は1項の罪と同じく処罰すべきものと規定され、1項の罪とは不法利得と財物強取とを異にする外、その構成要素に何らの差異がなく、1項の罪におけると同じく相手方の反抗を抑圧すべき暴行、脅迫の手段を用いて財産上不法利得するをもって足り、必ずしも相手方の意思による処分行為を強制することを要するものではない。犯人が債務の支払を免れる目的をもって債権者に対しその反抗を抑圧すべき暴行、脅迫を加え、債権者をして支払の請求をしない旨を表示せしめて支払を免れた場合であると、右の手段により債権者をして事実上支払の請求をすることができない状態に陥らしめて支払を免れた場合であるとを問わず、ひとしく右236条2項の不法利得罪を構成するものと解すべきである。」
過去問・解説

(R1 司法 第2問 ウ)
甲及び乙は、宝石商の丙から宝石を奪うことを計画した。その計画は、甲が、宝石取引のあっせんにかこつけてホテルの一室に丙を呼び出し、別室の顧客に見せる必要があるとうそを言って丙から宝石を受領し、甲の退室後に、乙が同室に入って丙を殺害するという内容であった。
 甲は、計画に従って、ホテルの一室で丙から宝石を受領して退室し、それと入れ替わりに同室に立ち入った乙が丙の腹部を包丁で刺し、丙に重傷を負わせたが、殺害には至らなかった。
甲及び乙が、丙から宝石の代金相当額の支払を免れる意図を持っていたとしても、丙がこれを免除又は猶予する旨の財産的処分行為をしていないため、甲及び乙に、いわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.9.13)は、「犯人が債務の支払を免れる目的をもって債権者に対しその反抗を抑圧すべき暴行、脅迫を加え、債権者をして支払の請求をしない旨を表示せしめて支払を免れた場合であると、右の手段により債権者をして事実上支払の請求をすることができない状態に陥らしめて支払を免れた場合であるとを問わず、ひとしく右236条2項の不法利得罪を構成する…。」としている。
丙は、代金支払債務を免除又は猶予する旨の財産的処分行為をしていないものの、甲は、殺人の故意で丙の腹部を包丁で刺し、丙に重傷を負わせ、事実上支払の請求をすることができない状態に陥れている。
したがって、甲及び乙に、いわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪が成立する。

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強盗致傷罪の成否(ひったくり) 最三小決昭和45年12月22日

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概要
いわゆるひったくりにおいて、財物奪取に伴う暴行行為が、被害者の注意を引くにとどまらず、その反抗を抑圧するに足りる程度に達していた場合には強盗罪が認められる。
判例
事案:夜間人通りの少ない場所で、通行中の女性の所持しているハンドバッグを窃取する目的をもって、自動車を運転して同女に近づき、自動車の窓からハンドバッグのさげ紐をつかんで引っ張ったが、同女がこれを奪われまいと離さなかったため、さらに奪取の目的を達成しようとして、右さげ紐をつかんだまま自動車を進行させ、同女を引きずって路上に転倒させたり、車体に接触させたり、あるいは道路脇の電柱に衝突させたりして、傷害を負わせたという事案において、強盗罪の成否が問題となった。

判旨:「事実審の確定した事実関係の下において、被告人の第一審判決判示第4、第8および第15の各行為がいずれも強盗致傷罪にあたる旨の原判断は正当である。」
過去問・解説

(H19 司法 第15問 3)
甲は、夜間、普通乗用自動車を運転し、人通りが少ない一方通行の狭い道路を進行中、右前方を歩いている女性乙がショルダーバッグを左肩に掛けているのを認め、同バッグを奪い取ろうと考え、同車で乙を追い抜きざま、運転席窓から右手を出して同バッグをつかんで引っ張った。乙は、同バッグを引っ張られた勢いで路上に転倒したものの、同バッグを奪われまいとして、そのさげひもから手を離さなかったので、甲は、乙から同バッグを奪い取るため、乙の身体を同バッグごと引きずることを認識しながらそのまま加速して運転を続けた。甲は、約20メートルにわたって乙の身体を引きずったが、乙は、同バッグから手を離さなければ、同車の車輪に巻き込まれたり、道路脇の壁に衝突するなどして重傷を負いかねないという危険を感じ、やむなくそのさげひもから手を離し、甲は、同バッグをつかんだまま同車で逃走した。乙は、前記のとおり路上を引きずられたことにより、約2週間の加療を要する右足関節捻挫等の傷害を負った。
 甲に、強盗(刑法第236条第1項)が人を負傷させたものとして、強盗致傷罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭45.12.22)は、本肢と同種の事案において、「事実審の確定した事実関係の下において、被告人の…各行為がいずれも強盗致傷罪にあたる旨の原判断は正当である。」として、財物奪取に伴う暴行行為が、被害者の注意を引くにとどまらず、その反抗を抑圧するに足りる程度に達していた場合には強盗罪が認められることを示している。
甲は、乙から同バッグを奪い取るため、乙の身体を同バッグごと引きずることを認識しながら自動車の運転を続け約20メートルにわたって乙の身体を引きずっているから、注意を引くにとどまらず、その反抗を抑圧するに足りる程度に達していたといえる。
したがって、甲に強盗致傷罪が成立する。

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