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文書偽造の罪(私文書の偽造) - 解答モード
判断能力の欠如に乗じた文書偽造罪 大判明治44年9月14日
概要
判例
判旨:「人ノ文盲ナルニ乗シ証書ノ作成名義人ヲ欺罔シ之カ内容ヲ了知セシメスシテ其署名ノ下ニ捺印セシメ以テ証書ヲ作成シタルトキハ文書偽造罪ヲ構成シ証書騙取罪ヲ構成スルモノニ非ス」
過去問・解説
(H25 共通 第6問 3)
甲は、行使の目的で、高齢のため視力が衰え文字の判読が十分にできない乙に対し、公害反対の署名であると偽り、その旨誤信した乙に、甲を貸主、乙を借主とする100万円の借用証書の借主欄に署名押印させた。甲には私文書偽造罪が成立する。
受領書と私文書偽造罪 大判昭和2年3月26日
概要
判例
判旨:「金銭ノ授受完了ニ先チ作成シタル借用証書ヲ既ニ授受アリタルモノノ如ク詐リ之ヲ利用シテ不正ノ利得ヲ為サンカ為他人ヲシテ保証人トシテ其ノ証書ニ署名捺印シテ交付セシメタルトキハ証書騙取ニ依ル詐欺罪ヲ構成ス」
過去問・解説
(R4 共通 第13問 ア)
甲は、Aから金銭を借り入れるに際し、借入金を返済する意思も能力もないのに、知人Bに対し、「借入金は必ず自分で返済する。Bには迷惑をかけないので、保証人になってほしい。」とうそを言い、その旨Bを誤信させ、Aに差し入れる予定の甲を借主とする金銭消費貸借契約書を閲読させ、その保証人欄に署名押印させた。この場合、甲には、有印私文書偽造罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭2.3.26)は、「金銭ノ授受完了ニ先チ作成シタル借用証書ヲ既ニ授受アリタルモノノ如ク詐リ之ヲ利用シテ不正ノ利得ヲ為サンカ為他人ヲシテ保証人トシテ其ノ証書ニ署名捺印シテ交付セシメタルトキハ証書騙取ニ依ル詐欺罪ヲ構成ス」として、署名者を欺罔して当該証書の記載事項の内容を真実であるものと誤信させた場合、有印私文書偽造罪は成立せず、詐欺罪が成立することを示している。
甲は、知人Bに対し、借金を返済する意思があるかのようにBを誤信させ、甲を借主とする金銭消費貸借契約書を閲読させ、その内容を認識させた上で保証人欄に署名押印させているから、偽造には当たらない。
したがって、甲には有印私文書偽造罪は成立しない。
架空人名義の文書と私文書偽造罪 最二小判昭和28年11月13日
概要
判例
判旨:「被告人が右の如く架空人名義を用いて保険申込書を作成した場合と実在人名義を冒用して保険申込書を偽造した場合とを比較して考えてみると当局のみならず一般人をして真正に作成された文書と誤信せしめる危険のある点において何等区別はないのであるから、本件のような場合には架空人名義を用いたとしても被告人の行為は私文書偽造罪を構成するものと解すべきである。」
過去問・解説
(H27 共通 第20問 イ)
【事例】
借金の返済に苦しんでいた甲とその内縁の妻乙は、A市が発行した乙を被保険者とする国民健康保険被保険者証の氏名を乙から実在しない丙に改変し、丙になりすまして消費者金融会社から借入れをして現金を手に入れることを相談した。甲と相談したとおり、乙は、上記国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄に乙とあるのを丙と書き換えた。そして、乙は、消費者金融会社の無人借入手続コーナーにおいて、借入申込書に丙の氏名を記載し、丙と刻した印鑑を押捺するなどして丙名義の借入申込書1通を完成させた上、同申込書及び氏名を丙に改変した上記国民健康保険被保険者証の内容を、同コーナーに設置された機械を使用し、同機械に接続されている同社本店の端末機に送信し、同社の貸付手続担当者に対し、丙であるかのように装って100万円の借入れを申し込んだ。同担当者は、当該申込みをした者が真実丙であり、かつ、貸付金は約定のとおりに返済されるものと誤信し、同社の貸付システムに従って丙名義の借入カードを上記コーナーに設置された機械から発券した。乙は、その場で同カードを入手し、同カードを現金自動入出機に挿入して同機から現金100万円を引き出した。その後、乙は、上記行為に及んだことを後悔し、自宅で、甲に一緒に自首をしようと持ち掛けた。甲は、これを聞いて激高し、乙を窒息死させようと考え、その首を絞めたところ、乙は首を絞められたことによるショックで心不全になり死亡した。甲は、乙の死亡から約30分後、死亡して横たわっている乙の指に時価20万円相当の乙の指輪がはめてあることに気が付き、同指輪を奪って逃走した。
【記述】
乙が丙名義の借入申込書を作成した行為については、丙が実在しなくても、一般人をして真正に作成された文書であると誤信させる危険があるから、甲と乙には有印私文書偽造罪が成立する。
(R2 共通 第6問 2)
甲は、架空請求により金銭をだまし取るために使おうと考え、実在しない「法務局民事訴訟管理センター」名義で、契約不履行による民事訴訟が提起されているので連絡をされたい旨記載されたはがきを印刷し、一般人をして実在する公務所が権限内で作成した公文書であると誤信させるに足りる程度の形式・外観を備えた文書を作成した。この場合、甲に有印公文書偽造罪が成立する。
(R4 共通 第13問 オ)
甲は、Aから金銭を借り入れるに際し、数日前にBが死亡したことを知りながら、Aに差し入れる予定の金銭消費貸借契約書の借受人欄に、Bの氏名を冒用して署名押印し、一般人をしてBが生存中に作成したと誤信させるおそれが十分に認められる文書を作成した。この場合、甲には、有印私文書偽造罪が成立する。
代理・代表名義と文書偽造罪 最二小決昭和45年9月4日
概要
判例
判旨:「他人の代表者または代理人として文書を作成する権限のない者が、他人を代表もしくは代理すべき資格、または、普通人をして他人を代表者もしくは代理するものと誤信させるに足りるような資格を表示して作成した文書は、その文書によって表示された意識内容にもとづく効果が、代表もしくは代理された本人に帰属する形式のものであるから、その名義人は、代表もしくは代理された本人であると解するのが相当である…。」
過去問・解説
(H21 司法 第9問 5)
Aの代理人でない甲は、行使の目的で、「A代理人甲」と署名し、その横に「甲」と刻した印鑑を押してA所有の不動産の売買契約書を作成した。同契約書については、Aが作成名義人であるので、甲には有印私文書偽造罪が成立する。
(H28 共通 第4問 ウ)
Yの代理人でないXは、Yに無断で、行使の目的をもって、金銭消費貸借契約書用紙に「Y代理人X」と記載し、その横に「X」と刻した印鑑を押すなどして、Yを債務者とする金銭消費貸借契約書を作成した。有印私文書偽造罪が成立するか。
名義人の承諾と私文書偽造罪 最二小決昭和56年4月8日
概要
判例
判旨:「交通事件原票中の供述書は、その文書の性質上、作成名義人以外の者がこれを作成することは法令上許されないものであって、右供述書他人の名義で作成した場合は、あらかじめその他人の承諾を得ていたとしても、私文書偽造罪が成立する…。」
過去問・解説
(H19 司法 第16問 オ)
甲は、交通違反の取締りを受けた際に乙の氏名を名乗ることについての乙の承諾がないのに、これがあると誤信して、交通違反を警察官に現認された際、乙の氏名を名乗り、交通反則切符の供述書に乙の名義で署名押印した。有印私文書偽造罪が成立するか。
(H23 共通 第1問 3)
甲は、警察官から道路交通法違反(無免許運転)の疑いで取調べを受けた際、交通事件原票中の供述書欄に、あらかじめ承諾を得ていた実兄乙の名義で署名指印した。甲には有印私文書偽造罪が成立する。
(H25 司法 第3問 オ)
甲は、交通違反の取締りを受けた際、警察官に対し、乙の氏名を名乗り、交通事件原票の供述書欄に乙名義で署名押印した。乙が名義使用につきあらかじめ甲に対して承諾していた場合、甲に有印私文書偽造罪(刑法第159条第1項)は成立しない。
(H28 共通 第4問 イ)
Xは、自動車運転免許の効力停止中に自動車を運転し、速度違反の取締りを受けた際、警察官に対し、あらかじめYから名義使用の承諾を受けていたことから、Yの氏名を名乗り、交通事件原票の供述者欄にY名義で署名押印した。有印私文書偽造罪が成立する。
(R5 司法 第15問 2)
甲は、無免許で自動車を運転中に取締りを受けた際、かねてより知人Aから氏名等の使用の許諾を受けていたことから、Aの氏名等を称し、行使の目的で、交通事件原票中の供述書欄末尾に「A」と署名した。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
通称と文書偽造罪 最三小決昭和56年12月22日
概要
判例
判旨:「被告人は、窃盗罪で服役中逃走し、遁刑中であることが発覚するのを恐れ、かねてから義弟と同一の氏名を使用して生活していたものであるところ、道路交通法違反(無免許運転)の罪を犯して警察官の取調を受けた際、右氏名を名乗り、義弟の生年月日及び本籍を告げ、右警察官が前記違反についての交通事件原票を作成するにあたりその旨記載させた上、その下欄の供述書に右氏名を使用して署名した、というのである。右の事実関係のもとにおいては、仮りに右氏名がたまたまある限られた範囲において被告人を指称するものとして通用していたとしても、被告人が右供述書の作成名義を偽り、他人の名義でこれを作成したことにかわりはなく、被告人の右所為について私文書偽造罪が成立するとした原判断は相当である…。」
郵便送達報告書と私文書偽造罪 最二小決平成16年11月30日
概要
判例
判旨:「被告人は、金員に窮し、支払督促制度を悪用して叔父の財産を不正に差し押さえ、強制執行することなどにより金員を得ようと考え、被告人が叔父に対して6000万円を超える立替金債権を有する旨内容虚偽の支払督促を申し立てた上、裁判所から債務者とされた叔父あてに発送される支払督促正本及び仮執行宣言付支払督促正本について、共犯者が叔父を装って郵便配達員から受け取ることで適式に送達されたように外形を整え、叔父に督促異議申立ての機会を与えることなく支払督促の効力を確定させようと企てた。そこで、共犯者において、2回にわたり、あらかじめ被告人から連絡を受けた日時ころに叔父方付近で待ち受け、支払督促正本等の送達に赴いた郵便配達員に対して、自ら叔父の氏名を名乗り出て受送達者本人であるように装い、郵便配達員の求めに応じて郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に叔父の氏名を記載して郵便配達員に提出し、共犯者を受送達者本人であると誤信した郵便配達員から支払督促正本等を受け取った。なお、被告人は、当初から叔父あての支払督促正本等を何らかの用途に利用するつもりはなく速やかに廃棄する意図であり、現に共犯者から当日中に受け取った支払督促正本はすぐに廃棄している。
…郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は、同人名義の受領書を偽造したものとして、有印私文書偽造罪を構成すると解するのが相当であるから、被告人に対して有印私文書偽造、同行使罪の成立を認めた原判決は、正当として是認できる。
…郵便配達員から正規の受送達者を装って債務者あての支払督促正本等を受領することにより、送達が適式にされたものとして支払督促の効力を生じさせ、債務者から督促異議申立ての機会を奪ったまま支払督促の効力を確定させて、債務名義を取得して債務者の財産を差し押さえようとしたものであって、受領した支払督促正本等はそのまま廃棄する意図であった。このように、郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等について、廃棄するだけで外に何らかの用途に利用、処分する意思がなかった場合には、支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできないというべきであり、このことは、郵便配達員からの受領行為を財産的利得を得るための手段の一つとして行ったときであっても異ならないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R2 共通 第6問 4)
甲は、乙宛ての支払督促正本等を配達しようとした郵便配達員に対し、乙本人を装い、郵便送達報告書の「受領者の押印又は署名」欄に乙の氏名を記載して提出し、支払督促正本等を受領した。この場合、甲に有印私文書偽造罪が成立する。