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詐欺の罪 - 解答モード
未成年者に対する詐欺罪の成否 大判大正4年6月15日
概要
判例
判旨:「刑法第248条ノ罪ハ未成年者ノ知慮浅薄又ハ人ノ心神耗弱ナル状況ヲ利用シ詐欺又ハ恐喝ニ該当セサル誘惑其他ノ方法ヲ用ヰ財物ヲ交付セシムルニ因リテ成立スルモノトス
知慮浅薄ナル未成年者又ハ心神耗弱者ニ対シ詐欺又ハ恐喝ノ方法ヲ用ヰ之ニ因リテ財物ヲ交付セシメタル所為ハ刑法第248条ニ該当セスシテ同法第246条又ハ同法第249条ニ該当スルモノトス」
過去問・解説
(H23 共通 第3問 2)
甲は、15歳の乙がふだんから多額の現金を持ち歩いているのを知っていたことから、同人の知識や思慮が足りないことに乗じて現金を手に入れようと考え、乙に対し、借りた現金を返す意思もないのに返す意思があるように装って10万円の借金を申し込み、これを誤信した乙から現金10万円の交付を受けた。甲に詐欺罪が成立する。
(H25 予備 第8問 5)
知慮浅薄な未成年者を欺罔して錯誤に陥らせ、これにより未成年者から財物の交付を受けた場合、刑法第248条の準詐欺罪が成立する。
詐欺罪の成否(不実の登記) 大判大正12年11月12日
概要
判例
要旨:乙者甲者ノ為金員借用抵当権設定登記ヲ為スモノノ如ク装ヒテ之ヲ欺罔シ私ニ其ノ印顆ヲ不正ニ使用シテ甲者ヨリ乙者ニ対シ土地ヲ売渡シタル旨ノ証書ヲ偽造シ附属書類ト併セテ之ヲ登記所ニ提出行使シ登記官吏ヲシテ土地登記簿ノ原本ニ其ノ旨不実ノ記載ヲ為サシムル行為ハ公正証書原本ノ不実記載及其ノ行使ノ罪ヲ構成スルニ止リ土地ニ対スル詐欺罪ヲ構成スルモノニ非ス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説
詐欺罪の成否 大判昭和12年7月5日
概要
判例
判旨:「建物ニ付所有権保存登記ヲ為シ居ルコトハ夫レ自体財産上ノ利益ヲ有スルモノナルコト勿論ナリ而シテ建物保存登記抹消請求事件ノ民事訴訟ニ於テ原告ト被告トカ建物所有権ノ帰属ヲ争ヒ輙ク原告ノ勝訴ヲ予断シ難キ状勢ニ在ル場合ハ原告ノ請求権ハ訴訟ノ終了スル迄ハ未確定ノ状態ニ存スルモノナル
…保存登記ヲ為シタル場合ニ於テハ未確定ナル利益ヲ有スルニ過キサル原告ヲシテ既ニ早ク確定的ニ之カ利益ヲ取得セシメ民事訴訟ノ被告トシテハ訴訟ノ結果ニヨルニアラサレハ喪失スルコトナカルヘキ利益ヲ今ニシテ既ニ取リ去ラレタルニ外ナラサルヲ以テ前示建物所有権カ右原被両造ノ何レニ属スルカハ之ヲ決定スル迄モナク被告人ハ人ヲ欺罔シテ他人ヲシテ財産上不法ノ利益ヲ得セシメタルモノト云フヘク原審カ之ヲ以テ詐欺罪ニ問擬シタルハ固ヨリ正当」
過去問・解説
(H19 司法 第5問 ア)
甲は、乙がAを欺いて、乙の不動産に設定していたAの抵当権の設定登記を抹消させたことを知りながら、乙の不動産を譲り受けた。この場合、甲には盗品等有償譲受け罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭12.7.5)は、本肢と同種の事案において、「保存登記ヲ為シタル場合ニ於テハ未確定ナル利益ヲ有スルニ過キサル原告ヲシテ既ニ早ク確定的ニ之カ利益ヲ取得セシメ民事訴訟ノ被告トシテハ訴訟ノ結果ニヨルニアラサレハ喪失スルコトナカルヘキ利益ヲ今ニシテ既ニ取リ去ラレタルニ外ナラサルヲ以テ前示建物所有権カ右原被両造ノ何レニ属スルカハ之ヲ決定スル迄モナク被告人ハ人ヲ欺罔シテ他人ヲシテ財産上不法ノ利益ヲ得セシメタルモノト云フヘク原審カ之ヲ以テ詐欺罪ニ問擬シタルハ固ヨリ正当」として、欺罔を用いて建物保存登記を抹消させた場合、2項詐欺罪が成立することを示している。
したがって、乙には2項詐欺罪が成立する。
そして、2項詐欺罪によって取得した財産上の利益は、盗品等譲受け罪における「盗品等」には含まれない。
よって、甲には盗品等有償譲受け罪が成立しない。
詐欺罪の成否 最二小判昭和25年2月24日
概要
判例
判旨:「贓物を処分することは財産罪に伴う事後処分に過ぎないから別罪を構成しないことは勿論であるが窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し真実名義人において貯金の払戻を請求するものと誤信せしめて貯金の払戻名義の下に金員を騙取することは更に新法益を侵害する行為であるからここに亦犯罪の成立を認むべきであってこれをもって贓物の単なる事後処分と同視することはできないのである。然らば原審が所論郵便貯金通帳を利用して預金を引出した行為に対し詐欺罪をもって問擬したことは正当であるから論旨は理由がない。」
過去問・解説
(H18 司法 第17問 4)
他人から預金通帳と届出印鑑を一時的に預かったにすぎない者が、それを利用して勝手に銀行窓口で銀行員から預金払戻名下に金員の交付を受けた場合、預金の払戻権限がないのにそれがあるように偽っているので、銀行員を相手方とする詐欺罪が成立する。
(R6 司法 第7問 5)
甲は、他人から盗んだクレジットカードを使用して商品をだまし取ろうと考え、A名義のクレジットカードを窃取し、家電量販店において、店員に対し、Aに成り済まして同クレジットカードを提示して商品の購入を申し込んだが、同店員に盗難カードであることを見破られたため、商品を手に入れることができなかった。この場合、甲に窃盗罪及び詐欺未遂罪が成立し、両罪は牽連犯となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭25.2.24)は、被告人が窃取又は騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し、真実名義人において貯金の払戻請求するものと誤信させて、金員を交付させた事案において、「窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し真実名義人において貯金の払戻を請求するものと誤信せしめて貯金の払戻名義の下に金員を騙取することは更に新法益を侵害する行為であるからここに亦犯罪の成立を認むべきであってこれをもって賍物の単なる事後処分と同視することはできない…。」として、詐欺罪は窃盗罪によって評価されておらず、別個詐欺罪が成立することを示している。
したがって、甲には窃盗罪と詐欺未遂罪が成立し、両者は手段・結果の関係にはないため、併合罪となる。
詐欺罪の成否(旅券の不正申請) 最一小判昭和27年12月25日
概要
判例
判旨:「原判決は『被告人は同係員を欺罔して旅券の下付を受けようとしたけれども、その後占領軍官憲の調査により右証明書2通の記載内容が虚偽であることを発見されたため竟に旅券騙取の目的を遂げなかったものである』と認定し、刑法246条1項、250条に該当する詐欺未遂である旨判示している。そして、刑法157条2項には、公務員に対し虚偽の申立を為し免状、鑑札又は旅券に不実の記載を為さしめたる者とあるに過ぎないけれども、免状、鑑札、旅券のような資格証明書は、当該名義人においてこれが下付を受けて所持しなければ効用のないものであるから、同条に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時に、その性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するものと解するを正当とする。しかも、同条項の刑罰が1年以下の懲役又は300円以下の罰金に過ぎない点をも参酌すると免状、鑑札、旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、右刑法157条2項だけを適用すべきものと解するを相当とする。されば、原判決が右下付を受けようとした行為を目して詐欺未遂としたことは擬律錯誤の違法があるものといわなければならない。そして、判示の米国領事館員のごときは、刑法7条、従って同法157条2項にいわゆる公務員とはいえないから、右判示行為は、刑法157条2項の未遂罪にも該当しないものといわなければならない。」
過去問・解説
(H18 司法 第17問 3)
係員に偽りの申立てをして旅券の交付を受けた場合、旅券は財産的価値を欠き財物に当たらないので、詐欺罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭27.12.25)は、旅券を不正申請した事案において、「157条2項…に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時に、その性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するものと解するを正当とする。しかも、同条項の刑罰が1年以下の懲役又は300円以下の罰金に過ぎない点をも参酌すると免状、鑑札、旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、右刑法157条2項だけを適用すべきものと解するを相当とする。」として、詐欺罪の成立を否定している。
したがって、係員に偽りの申立てをして旅券の交付を受けた場合、旅券等不実記載罪には、不実記載された旅券を受け取ることまで含まれているから、詐欺罪は成立しない。
詐欺罪の成否(所有権が留保されている場合) 最三小決昭和45年6月30日
概要
判例
判旨:「自動車については、被告人阿部光男名義の月賦購入の約定で引渡しを受けたものであるため、その所有権が売主に留保され、被告人甲らが売却その他の処分をする権限を有しない等の民事法上の制限があったとしても、売主を欺罔し、よってその引渡しを受けて占有を取得した以上、詐欺罪を構成するものと解すべきであって、これと同趣旨の原判断は、是認することができる。」
過去問・解説
(H30 司法 第12問 2)
自動車販売会社の販売員に対し、その代金を支払う意思も能力もないのに、これらがあるように装って自動車の購入を申し込み、分割払いの約定で同販売員から自動車の引渡しを受けた場合、代金完済まで同自動車の所有権が同会社に留保されていても、詐欺罪が成立する。
詐欺罪における「財物」 最一小決昭和51年4月1日
概要
判例
判旨:「国がその所有する本件未墾地を農地法61条以下の規定により売渡処分をする旨を公示したところ、被告人両名は、原審相被告人乙と共謀し、右甲が国の定める増反者等選定の基準適格者であることを奇貨として、同人において、農地法所定の趣旨に従ってみずから右土地を保有し、これを開墾利用して自己の営農に役立てる意思がなく、売渡しを受けたうえは被告人丙にその所有権を取得させ、同人の隠居所敷地に供する意図であるのに、この事情を秘匿し、売渡事務をつかさどる県知事にあて、所定の買受予約申込書等の必要書類を順次提出してその売渡しを求め、同知事を欺罔して右甲が売渡処分名下に本件国有地の所有権を得した、というのであって、これによれば、被告人らの行為は刑法246条1項に該当し、詐欺罪が成立するものといわなければならない。被告人らの本件行為が、農業政策という国家的法益の侵害に向けられた側面を有するとしても(農地法にはかかる行為を処罰する規定はない。)、その故をもって当然に、刑法詐欺罪の成立が排除されるものではない。欺罔行為によって国家的法益を侵害する場合でも、それが同時に、詐欺罪の保護法益である財産権を侵害するものである以上、当該行政刑罰法規が特別法として詐欺罪の適用を排除する趣旨のものと認められない限り、詐欺罪の成立を認めることは、大審院時代から確立された判例であり、当裁判所もその見解をうけついで今日に至っているのである…」
預金通帳が詐欺罪の客体となるか 最二小決平成14年10月21日
概要
判例
判旨:「しかし、預金通帳は、それ自体として所有権の対象となり得るものであるにとどまらず、これを利用して預金の預入れ、払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから、他人名義で預金口座を開設し、それに伴って銀行から交付される場合であっても、刑法246条1項の財物に当たると解するのが相当である。そして、被告人は、上記のとおり、銀行窓口係員に対し、自己がA本人であるかのように装って預金口座の開設を申し込み、その旨誤信した同係員から貯蓄総合口座通帳1冊の交付を受けたのであるから、被告人に詐欺罪が成立することは明らかである。そうすると、詐欺罪の成立を否定した原判決には、刑法246条1項の解釈適用を誤った違法があるというべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第20問 3)
甲は、架空人である乙名義でX銀行Y支店に預金口座を開設しようと企て、乙に成り済まして預金口座を開設し、乙名義の預金通帳の交付を受けた。この場合、預金通帳は口座開設に伴って発行される証書にすぎないので、甲に詐欺罪は成立しない。
(H23 司法 第19問 ウ)
甲は、求人広告を見て乙と会い、乙から、銀行で架空人名義の預金口座を開設し、その預金通帳とキャッシュカードを手に入れて乙に渡すというアルバイトを依頼され、これを引き受けた。その際、甲は、乙から、預金口座を開設する際に身分証明書として呈示するため、甲の顔写真が印刷された架空人A名義の運転免許証を作成する必要があると聞かされたので、甲の顔写真を乙に交付するとともに、甲の知人Bの住所をキャッシュカードの送付先として乙に教えた。乙は、不正に入手したC名義の真正な運転免許証の顔写真の上から甲の顔写真を貼り付け、氏名をA名義に、住所をBの住所にそれぞれ書き換えるなどの加工を施し、甲の顔写真が貼付されたA名義の運転免許証を作成した。同免許証は、一見すると真正なものと見分けがつかないような精巧なものであった。数日後、甲は、乙から、前記運転免許証とAの姓を刻した印鑑を受け取った。その後、甲は、銀行に行き、口座開設申込書にAの氏名及びBの住所等を書いてAの印鑑を押した上、同銀行窓口係丙に対し、Aを装い、同申込書を前記運転免許証と一緒に提出して口座開設を申し込んだ。丙は、甲がAであることを疑うこともなく、かつ、前記運転免許証及び前記口座開設申込書の記載内容が虚偽であると知っていれば口座開設をしなかったのに、これらの内容が真実であるものと誤信し、A名義の口座を開設する手続を行い、即日窓口で預金通帳を甲に交付し、キャッシュカードについては、Bの住所地宛てに郵送した。甲は、数日後に郵送されたキャッシュカードをBから受け取った後、しばらくの間、自宅に通帳とキャッシュカードを保管し、その後、報酬と引換えに、預金通帳とキャッシュカードを乙に交付した。甲に詐欺罪が成立する。
詐欺罪の成否(国民健康保険証) 最一小決平成18年8月21日
概要
判例
判旨:「被告人が、町役場係員に対し、虚偽の生年月日を記入した自己名義の住民異動届に国民健康保険の被保険者の資格を転入により取得した旨を付記して提出するなどして、係員を欺いて国民健康保険被保険者証の交付を受けた行為について、刑法246条1項の詐欺罪の成立を認めた原判断は、正当である。」
過去問・解説
詐欺罪の成否(航空券) 最一小決平成22年7月29日
概要
判例
判旨:「被告人は、ア Bらと共謀の上、航空機によりカナダへの不法入国を企図している中国人のため、航空会社係員を欺いて、関西国際空港発バンクーバー行きの搭乗券を交付させようと企て、平成18年6月7日、関西国際空港旅客ターミナルビル内のA航空チェックインカウンターにおいて、Bが、A航空(以下『本件航空会社』という。)から業務委託を受けている会社の係員に対し、真実は、バンクーバー行きA航空36便の搭乗券をカナダに不法入国しようとして関西国際空港のトランジット・エリア内で待機している中国人に交付し、同人を搭乗者として登録されているBとして航空機に搭乗させてカナダに不法入国させる意図であるのにその情を秘し、あたかもBが搭乗するかのように装い、Bに対する航空券及び日本国旅券を呈示して、上記A航空36便の搭乗券の交付を請求し、上記係員をしてその旨誤信させて、同係員からBに対する同便の搭乗券1枚の交付を受け、イ Cらと共謀の上、同年7月16日、上記チェックインカウンターにおいて、Cが、アと同様の意図及び態様により、Cに対する航空券及び日本国旅券を呈示して、バンクーバー行きA航空36便の搭乗券の交付を請求し、Cに対する同便の搭乗券1枚の交付を受けた。
本件において、航空券及び搭乗券にはいずれも乗客の氏名が記載されているところ、本件係員らは、搭乗券の交付を請求する者に対して旅券と航空券の呈示を求め、旅券の氏名及び写真と航空券記載の乗客の氏名及び当該請求者の容ぼうとを対照して、当該請求者が当該乗客本人であることを確認した上で、搭乗券を交付することとされていた。このように厳重な本人確認が行われていたのは、航空券に氏名が記載されている乗客以外の者の航空機への搭乗が航空機の運航の安全上重大な弊害をもたらす危険性を含むものであったことや、本件航空会社がカナダ政府から同国への不法入国を防止するために搭乗券の発券を適切に行うことを義務付けられていたこと等の点において、当該乗客以外の者を航空機に搭乗させないことが本件航空会社の航空運送事業の経営上重要性を有していたからであって、本件係員らは、上記確認ができない場合には搭乗券を交付することはなかった。また、これと同様に、本件係員らは、搭乗券の交付を請求する者がこれを更に他の者に渡して当該乗客以外の者を搭乗させる意図を有していることが分かっていれば、その交付に応じることはなかった。
以上のような事実関係からすれば、搭乗券の交付を請求する者自身が航空機に搭乗するかどうかは、本件係員らにおいてその交付の判断の基礎となる重要な事項であるというべきであるから、自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘して本件係員らに対してその搭乗券の交付を請求する行為は、詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず、これによりその交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成することは明らかである。」
過去問・解説
(H28 司法 第12問 イ)
Aは、Bに成り済まし、銀行の窓口行員Cに対し、B名義の口座の預金をA名義の口座に振込入金するよう依頼した。Cは、AをBと思い込み、コンピュータの端末を操作して、同銀行が業務用に使用している電子計算機にアクセスし、前記依頼のとおり振込入金の処理をした。Bに成り済まし、Cに振込入金の処理を行わせたAの行為について、電子計算機使用詐欺罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平22.7.29)は、他人を乗せる目的で自己名義の航空会社の搭乗券の交付を請求した事案において、「搭乗券の交付を請求する者自身が航空機に搭乗するかどうかは、本件係員らにおいてその交付の判断の基礎となる重要な事項であるというべきであるから…詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず、これによりその交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成する…。」としている。
口座から振り込み依頼をするときに、名義人が本人であるかは交付の判断の基礎となる重要な事項であるというべきであるから、甲には詐欺罪が成立する。
そして、詐欺罪と電子計算機使用詐欺罪とは、法条競合の関係にある。
したがって、詐欺罪が成立しないときにのみ電子計算機使用詐欺罪が成立するから、Aの行為について、電子計算機使用詐欺罪は成立せず、詐欺罪のみが成立する。
(H30 司法 第12問 1)
航空会社の空港係員に対し、内心では、外国への不法入国を企てている知人を搭乗させるつもりであるのに、自らが搭乗するとうそを言って、あらかじめ航空券を購入していた航空便について搭乗券の交付を求め、同係員から搭乗券の交付を受けた場合、当該搭乗券についての詐欺罪が成立する。
不作為の欺罔行為の成否 大判大正6年11月29日
概要
判例
要旨:単純ナル事実ノ緘黙ニ因リテ他人ニ錯誤ヲ生セシメ若クハ之ヲ保持セシメタル場合ニ於テハ事実ヲ告知スヘキ法律上ノ義務存スルニ非サレハ之ヲ以テ詐欺罪ノ欺罔アリト謂フヲ得ス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
詐欺罪における欺罔行為 最二小決昭和43年6月6日
概要
判例
判旨:「原判決が、その判示にかかる事実関係のもとで、…欺岡行為を、作為によるものとし、不作為による欺罔行為に必要な告知義務の有無を論ずる必要がない旨判示したのは相当である。けだし、商品買受の注文をする場合においては、特に反対の事情がある場合のほかは、その注文に代金を支払う旨の意思表示を包含しているものと解するのが通例であるから、注文者が、代金を支払える見込もその意思もないのに、単純に商品買受の注文をしたときは、その注文の行為自体を欺罔行為と解するのが相当であるからである。」
詐欺罪の成否(被害者の過失あるとき) 大判大正14年4月7日
概要
判例
要旨:犯人ノ施用シタル欺罔手段ト被害者ノ自ラ為シタル判断ノ過誤ト相俟ツテ被害者ニ錯誤ノ結果ヲ生セシメタルトキト雖詐欺罪ノ成立ヲ妨ケス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
無銭飲食 最一小判昭和30年7月7日
概要
判例
判旨:「刑法246条2項にいわゆる『財産上不法の利益を得』とは、同法236条2項のそれとはその趣を異にし、すべて相手方の意思によって財産上不法の利益を得る場合をいうものである。従って、詐欺罪で得た財産上不法の利益が、債務の支払を免れたことであるとするには、相手方たる債権者を欺罔して債務免除の意思表示をなさしめることを要するものであって、単に逃走して事実上支払をしなかっただけで足りるものではないと解すべきである。…宿泊、飲食等をしたときに刑法246条の詐欺罪が既遂に達したと判示したものと認めることができる。」
過去問・解説
(H28 司法 第13問 ア)
判例の立場に従って検討し、詐欺罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、所持金がなかったことから代金を支払わずに食事をしようと考え、飲食店に行って料理を注文し、これを食べた後、代金を請求した店員に対し、財布を忘れたので自宅に取りに帰ると嘘を言ったが、店員にその嘘を見破られた。
誤振込みと詐欺罪 最二小決平成15年3月12日
概要
判例
判旨:「銀行実務では、振込先の口座を誤って振込依頼をした振込依頼人からの申出があれば、受取人の預金口座への入金処理が完了している場合であっても、受取人の承諾を得て振込依頼前の状態に戻す、組戻しという手続が執られている。また、受取人から誤った振込みがある旨の指摘があった場合にも、自行の入金処理に誤りがなかったかどうかを確認する一方、振込依頼先の銀行及び同銀行を通じて振込依頼人に対し、当該振込みの過誤の有無に関する照会を行うなどの措置が講じられている。
これらの措置は、普通預金規定、振込規定等の趣旨に沿った取扱いであり、安全な振込送金制度を維持するために有益なものである上、銀行が振込依頼人と受取人との紛争に巻き込まれないためにも必要なものということができる。また、振込依頼人、受取人等関係者間での無用な紛争の発生を防止するという観点から、社会的にも有意義なものである。したがって、銀行にとって、払戻請求を受けた預金が誤った振込みによるものか否かは、直ちにその支払に応ずるか否かを決する上で重要な事柄であるといわなければならない。これを受取人の立場から見れば、受取人においても、銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に上記の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があると解される。社会生活上の条理からしても、誤った振込みについては、受取人において、これを振込依頼人等に返還しなければならず、誤った振込金額相当分を最終的に自己のものとすべき実質的な権利はないのであるから、上記の告知義務があることは当然というべきである。そうすると、誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たり、また、誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから、錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には、詐欺罪が成立する。」
過去問・解説
(H27 司法 第1問 エ)
不真正不作為犯は、殺人罪や放火罪については成立するが、財産犯については成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平15.3.12)は、「受取人においても、銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に上記の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があると解される。」とした上で、「誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たり、また、誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから、錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には、詐欺罪が成立する。」として、不作為の欺罔による詐欺罪の成立を認めている。
したがって、財産犯である詐欺罪においても、不真正不作為犯は成立し得る。
(H30 司法 第12問 4)
自己名義の銀行預金口座に多額の誤った振込みがなされていることを知った上で、同銀行の窓口係員に対し、誤った振込みがあった旨を告知することなく同口座の残金全額の払戻しを請求し、同係員から即時にその払戻しを受けた場合、詐欺罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平15.3.12)は、本肢と同種の事案において、「受取人においても、銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に上記の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があると解される。」とした上で、「誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たり、また、誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから、錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には、詐欺罪が成立する。」としている。
他人名義のクレジットカードの利用と詐欺罪 最二小決平成16年2月9日
概要
判例
判旨:「Aは、友人のBから、同人名義の本件クレジットカードを預かって使用を許され、その利用代金については、Bに交付したり、所定の預金口座に振り込んだりしていた。
その後、本件クレジットカードを被告人が入手した。その入手の経緯はつまびらかではないが、当時、Aは、バカラ賭博の店に客として出入りしており、暴力団関係者である被告人も、同店を拠点に賭金の貸付けなどをしていたものであって、両者が接点を有していたことなどの状況から、本件クレジットカードは、Aが自発的に被告人を含む第三者に対し交付したものである可能性も排除できない。なお、被告人とBとの間に面識はなく、BはA以外の第三者が本件クレジットカードを使用することを許諾したことはなかった。
被告人は、本件クレジットカードを入手した直後、加盟店であるガソリンスタンドにおいて、本件クレジットカードを示し、名義人のBに成り済まして自動車への給油を申し込み、被告人がB本人であると従業員を誤信させてガソリンの給油を受けた。上記ガソリンスタンドでは、名義人以外の者によるクレジットカードの利用行為には応じないこととなっていた。
本件クレジットカードの会員規約上、クレジットカードは、会員である名義人のみが利用でき、他人に同カードを譲渡、貸与、質入れ等することが禁じられている。また、加盟店規約上、加盟店は、クレジットカードの利用者が会員本人であることを善良な管理者の注意義務をもって確認することなどが定められている。
以上の事実関係の下では、被告人は、本件クレジットカードの名義人本人に成り済まし、同カードの正当な利用権限がないのにこれがあるように装い、その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けたことが認められるから、被告人の行為は詐欺罪を構成する。仮に、被告人が、本件クレジットカードの名義人から同カードの使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金が会員規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたという事情があったとしても、本件詐欺罪の成立は左右されない。」
過去問・解説
(H28 共通 第20問 エ)
甲は、Aから盗んだクレジットカードを担保として丁から現金30万円を借りたが、その際、丁に対し、「これはA名義のクレジットカードだけど、Aから使用を許されており、お前がこのカードを利用して買物をしても、その利用代金はAにおいて決済される。」と伝えた。その後、甲が丁に対して金を返さなかったことから、丁は、甲の話を信じ、デパートにおいて、Aに成り済まして同カードを用いて腕時計1個を購入した。
丁がA名義のクレジットカードで腕時計を購入したことにつき、丁は、Aから同カードの使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金がAにおいて決済されるものと信じていたので、丁に詐欺罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平16.2.9)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、本件クレジットカードの名義人本人に成り済まし、同カードの正当な利用権限がないのにこれがあるように装い、その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けたことが認められるから、被告人の行為は詐欺罪を構成する。仮に、被告人が、本件クレジットカードの名義人から同カードの使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金が会員規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたという事情があったとしても、本件詐欺罪の成立は左右されない。」としている。
したがって、丁が、Aから同カードの使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金がAにおいて決済されるものと信じていたとしても、丁に詐欺罪が成立する。
詐欺罪における財産的処分行為 大判明治43年10月7日
概要
判例
要旨:依頼者ノ文盲ナルニ乗シ行使ノ目的ヲ以テ其意思ニ反スル文書ヲ作成シ依頼者ヲ欺キ之ニ署名捺印セシメタル所為ハ刑法第百五十九条第一項ニ該当シ詐欺罪ヲ以テ問擬スヘキモノニ非ス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
価格相当の商品の提供と詐欺罪の成否 最二小決昭和34年9月28日
概要
判例
判旨:「たとえ相当価格の商品を提供したとしても、事実を告知するときは相手方が金員を交付しないような場合において、ことさら商品の効能などにつき真実に反する誇大な事実を告知して相手方を誤信させ、金員の交付を受けた場合は、詐欺罪が成立する。そして本件の各ドル・バイブレーターが所論のようにD型で、その小売価格が2100円であったとしても、原判決の是認した第一審判決が確定した事実によると、被告人は判示a外16名に対し判示のごとき虚構の事実を申し向けて誤信させ、同人らから右各ドル・バイブレーターの売買、保証金などの名義のもとに判示各現金の交付を受けたというのであるから、被告人の本件各所為が詐欺罪を構成するとした原判示は正当に帰する。」
過去問・解説
(H18 司法 第17問 5)
減量に効果があると偽って健康食品を購入させ代金名下に金員の交付を受けた場合、減量効果が全くなくても、販売価格が適正妥当であれば相手方に経済的損失がないので、詐欺罪は成立しない。
(H28 共通 第16問 3)
甲は、視力回復の効果が全くない飲料について、その効果が絶大で入手困難なものと偽って、信じた客にこれを販売し、その代金として現金の交付を受けたが、その販売価格は適正、妥当なものであった。この場合、甲には詐欺罪は成立しない。
財産上不法の利益 最一小判昭和30年7月7日
概要
判例
判旨:「刑法246条2項にいわゆる『財産上不法の利益を得』とは、同法236条2項のそれとはその趣を異にし、すべて相手方の意思によって財産上不法の利益を得る場合をいうものである。従って、詐欺罪で得た財産上不法の利益が、債務の支払を免れたことであるとするには、相手方たる債権者を欺罔して債務免除の意思表示をなさしめることを要するものであって、単に逃走して事実上支払をしなかっただけで足りるものではないと解すべきである。…宿泊、飲食等をしたときに刑法246条の詐欺罪が既遂に達したと判示したものと認めることができる。」
過去問・解説
(H28 司法 第13問 ア)
判例の立場に従って検討し、詐欺罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、所持金がなかったことから代金を支払わずに食事をしようと考え、飲食店に行って料理を注文し、これを食べた後、代金を請求した店員に対し、財布を忘れたので自宅に取りに帰ると嘘を言ったが、店員にその嘘を見破られた。
詐欺罪の成否(詐欺賭博) 最一小決昭和43年10月24日
概要
判例
判旨:「刑法246条2項の罪が成立する旨の原判決判示は正当である。」
過去問・解説
(H23 共通 第3問 1)
甲は、乙とトランプ賭博を行った際、乙の手札の内容が分かるよう不正な細工を施したトランプカードを用いて乙を負けさせ、乙に100万円の支払債務を負担させた。この場合、甲に詐欺罪が成立する。
詐欺罪の成否(三角詐欺) 最二小決平成15年12月9日
概要
判例
判旨:「被告人は、他の1名と共謀の上、病気などの悩みを抱えている被害者らに対し、真実は、被害者らの病気などの原因がいわゆる霊障などではなく、『釜焚き』と称する儀式には直接かつ確実に病気などを治癒させる効果がないにもかかわらず、病気などの原因が霊障であり、釜焚きの儀式には上記の効果があるかのように装い、虚偽の事実を申し向けてその旨誤信させ、釜焚き料名下に金員を要求した。
そして、被告人らは、釜焚き料を直ちに支払うことができない被害者らに対し、被害者らが被告人らの経営する薬局から商品を購入したように仮装し、その購入代金につき信販業者とクレジット契約(立替払契約)を締結し、これに基づいて信販業者に立替払をさせる方法により、釜焚き料を支払うように勧めた。これに応じた被害者らが上記薬局からの商品売買を仮装の上クレジット契約を締結し、これに基づいて信販業者が被告人らの管理する普通預金口座へ代金相当額を振込送金した。
…被告人らは、被害者らを欺き、釜焚き料名下に金員をだまし取るため、被害者らに上記クレジット契約に基づき信販業者をして立替払をさせて金員を交付させたものと認めるのが相当である。この場合、被告人ら及び被害者らが商品売買を仮装して信販業者をして立替金を交付させた行為が信販業者に対する別個の詐欺罪を構成するか否かは、本件詐欺罪の成否を左右するものではない。
したがって、被告人に対し本件詐欺罪の成立を認めた原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H23 共通 第3問 5)
甲は、乙に対し、乙の居宅は耐震補強工事をしないと地震の際に危険である旨嘘を言い、その旨乙を誤信させて必要のない工事契約を締結させたが、乙には資金がなかったことから、乙が甲の妻丙が経営する家具店から家具を購入したように仮装して、その購入代金について乙と信販会社との間で立替払契約を締結させ、これに基づき、同信販会社から丙名義の預金口座に工事代金相当額の振込みを受けた。甲に詐欺罪が成立する。
不法原因給付と詐欺罪 大判明治42年6月21日
概要
判例
判旨:人ヲ欺罔シテ財物ヲ騙取シタル以上ハ縦令其給付カ不法ノ原因ニ出テタル為メ被害者ニ於テ民法上救済ヲ求ムルコト能ハサル場合ト雖モ詐欺取財罪ノ成立ヲ妨クルモノニ非ス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説
(H22 司法 第11問 エ)
甲は、偽札を作る意思がないのに、乙に対し、一緒に偽札を作ることを持ちかけた上、偽札を作る機材の購入資金にすると嘘を言って資金の提供を求め、その旨誤信した乙から同資金として現金の交付を受けた。甲に詐欺既遂罪が成立する。
(H24 共通 第6問 オ)
甲は、偽札を作る意思がないのに、乙に対し、一緒に偽札を作ることを持ちかけた上、偽札を作る機材の購入資金にすると嘘を言って資金の提供を求め、その旨誤信した乙から同資金として現金の交付を受けた。この場合、甲には、詐欺未遂罪も、詐欺既遂罪も成立しない。
不法原因給付と詐欺罪 最三小判昭和25年7月4日
概要
判例
判旨:「論旨は闇取引については取引当事者の財産的利益は刑法の対象にはならないものであるから、原判決は刑法の放任した範囲に法の効力を及ぼした違法があると主張する。しかし詐欺罪の如く他人の財産権の侵害を本質とする犯罪が、処罰されたのは単に被害者の財産権の保護のみにあるのではなく、かかる違法な手段による行為は社会の秩序をみだす危険があるからである、そして社会秩序をみだす点においては所謂闇取引の際に行われた欺罔手段でも通常の取引の場合と何等異るところはない。従って、闇取引として経済統制法規によって処罰される行為であるとしても相手方を欺罔する方法即ち社会秩序をみだすような手段を以て相手方の占有する財物を交付せしめて財産権を侵害した以上被告人の行為が刑法の適用をまぬかるべき理由はないから論旨は採用できない。」
過去問・解説
(H18 司法 第17問 1)
覚せい剤を購入すると偽って買付資金名下に金員の交付を受けた場合、相手方には交付した資金の返還請求権がないので、詐欺罪は成立しない。
詐欺罪と恐喝罪 最二小判昭和24年2月8日
概要
判例
判旨:「被告人は警察官を装うてVに対し『警察の者だがこの綿糸は何処から持ってきたか』と尋ね同人が『火薬廠から持ち出した』と答えると、その氏名年齢職業を問ひ之を紙に書留める風をした上『取調べの必要があるから差出せ』と言ひ,若しこれに応じなければ直ちに警察署へ連行するかも知れないような態度を示して同人を畏怖させ、因って同人をして即時その場で右綿糸二十梱を交付させたと云うのであって、右の如く被告人がVに対しその申入れに応じなければ直ちに警察署へ連行するかも知れないような態度を示し、Vがこれにより畏怖の念を生じ、為めに綿糸を交付するに至ったものである以上、恐喝罪をもって問擬すべきである。被告人の施用した手段の中に虚偽の部分即ち警察官と称した部分があっても、その部分も相手方に畏怖の念を生ぜしめる一材料となり、その畏怖の結果として相手方が財物を交付するに至った場合は、詐欺罪ではなく恐喝罪となるのである。
…被害者Vの持っていた綿糸は盗品であるから、Vがそれについて正当な権利を有しないことは明かである。しかし正当の権利を有しない者の所持であっても、その所持は所持として法律上の保護を受けるのであって、例へば窃取した物だからそれを強取しても処罰に値しないとはいえないのである。恐喝罪についても同様であって、贓物を所持する者に対し恐喝の手段を用いてその贓物を交付させた場合には矢張り恐喝罪となるのである。」
過去問・解説
(H24 共通 第6問 イ)
甲は、警察官でないのに警察官を装い、窃盗犯人である乙に対し、「警察の者だが、取り調べる必要があるから差し出せ。」などと虚偽の事実を申し向けて盗品の提出を求め、これに応じなければ直ちに警察署に連行するかもしれないような態度を示したところ、乙は、逮捕されるかもしれないと畏怖した結果、甲に盗品を交付した。この場合、甲には、恐喝既遂罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭24.2.8)は、本肢と同種の事案において、「被告人の施用した手段の中に虚偽の部分即ち警察官と称した部分があっても、その部分も相手方に畏怖の念を生ぜしめる一材料となり、その畏怖の結果として相手方が財物を交付するに至った場合は、詐欺罪ではなく恐喝罪となるのである。」としている。
また、盗品の交付を受けたことについて、同判例は、「正当の権利を有しない者の所持であっても、その所持は所持として法律上の保護を受けるのであって、…恐喝罪についても…贓物を所持する者に対し恐喝の手段を用いてその贓物を交付させた場合には矢張り恐喝罪となるのである。」としている。
乙は、逮捕されるかもしれないと畏怖した結果として甲に盗品を交付しているから、虚偽の事実の部分があることや、乙に返還請求権がないという事情があったとしても、甲に恐喝既遂罪が成立する。
(H24 共通 第15問 3)
甲と乙は、V経営の食料品店で買った弁当を食べたら食中毒になった旨の嘘を言って因縁を付けてVを脅迫するとともに、同人に軽度の暴行を加え、これらの暴行・脅迫により同人を畏怖させて、損害賠償金の名目で50万円を支払わせ、これを分配することを計画した。乙は、計画に従い、同店に行き、Vに対し、「この店の弁当を食べたら食中毒になった。店の営業を続けたければ50万円払え。払わないと、この店の弁当で食中毒になったと書いたビラをばらまくぞ。」と語気鋭く申し向けた上、Vの額を手の平成で軽くたたいた。Vは、これをよけようとした際、バランスを崩して転倒し、全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負った。
Vは、乙が食中毒になったことは嘘であると気付いたが、乙の要求に応じないと、更に暴力を振るわれたり、店を中傷するビラをまかれるかもしれないと畏怖し、手持ちの現金30万円を乙に渡し、残りの20万円は翌日支払うことで乙を納得させた。
Vに30万円を交付させたことについて、甲及び乙には、恐喝既遂罪が成立する。
(R1 司法 第16問 イ)
他人を恐喝するに際して、脅迫文言の中に虚偽の部分があり、それも同人に畏怖の念を生じさせる一材料となって、その畏怖の結果として、同人に財物を交付させた。この場合、詐欺罪が成立する。
詐欺罪と背任罪 最二小判昭和28年5月8日
概要
判例
判旨:「他人の委託によりその事務を処理する者が、その事務処理上任務に背き本人に対し欺岡行為を行い同人を錯誤に陥れ、よって財物を交付せしめた場合には詐欺罪を構成し、たとい背任罪の成立要件を具備する場合でも別に背任罪を構成するものではないと解すべきである…。」
電子計算機私用詐欺罪の成否 最一小決平成18年2月14日
概要
判例
判旨:「被告人は、本件クレジットカードの名義人による電子マネーの購入の申込みがないにもかかわらず、本件電子計算機に同カードに係る番号等を入力送信して名義人本人が電子マネーの購入を申し込んだとする虚偽の情報を与え、名義人本人がこれを購入したとする財産権の得喪に係る不実の電磁的記録を作り、電子マネーの利用権を取得して財産上不法の利益を得たものというべきであるから、被告人につき、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めた原判断は正当である。」
過去問・解説
(H26 司法 第8問 4)
甲は、盗んだクレジットカードの名義人乙を装い、インターネットを使用した取引の決済に用いることができる電子マネーの購入手続として、乙の氏名やカード番号等の情報をインターネットを介してクレジットカード会社が使用する電子計算機に送信し、同電子計算機に接続されたハードディスクに乙が電子マネーを購入した旨の電磁的記録を作ってその電子マネーの利用権を取得した。甲に、電子計算機使用詐欺罪が成立する。
(R4 共通 第13問 イ)
甲は、窃取したA名義のクレジットカードの番号等を冒用し、インターネット上の決済手段として使用できる電子マネーを不正入手しようと考え、Aの氏名、同番号等の情報をインターネットを介してクレジットカード決済代行業者のコンピュータに送信し、Aが上記電子マネー10万円分を購入した旨の電磁的記録を作出し、これによってインターネット上で同電子マネーを利用することを可能とした。この場合、甲には、支払用カード電磁的記録不正作出罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平18.2.14)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、本件クレジットカードの名義人による電子マネーの購入の申込みがないにもかかわらず、本件電子計算機に同カードに係る番号等を入力送信して名義人本人が電子マネーの購入を申し込んだとする虚偽の情報を与え、名義人本人がこれを購入したとする財産権の得喪に係る不実の電磁的記録を作り、電子マネーの利用権を取得して財産上不法の利益を得たものというべきであるから、被告人につき、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めた原判断は正当である。」としている。
したがって、甲には電子計算機使用詐欺罪が成立し、支払用カード電磁的記録不正作出罪は成立しない。
業務上横領罪と詐欺罪の区別 東京高判昭和28年6月12日
概要
判例
判旨:「然し乍ら被告人は右判示の様に昭和26年10月15日解雇されるに至る迄は前記会社の外務員として無尽契約の募集及び掛金の集金の業務に従事していたものであるから、無尽掛金集金の権限をもっていたものであり、従って被告人が原判示の様に仮令その集金を自己の用途に費消するつもりであって会社に入金するつもりがないのにも拘らず、之を秘して、Vから原判示第一1乃至27、V2から同第二1乃至16、V3から同第三1乃至24各記載の様に夫々無尽掛金を受領したとしても、右解雇迄の右集金は正当権限に基く無尺掛金の集金行為であり、又正当権限を有する被告人に無尽掛金として交付した右V外2名の支払行為は即時且当然に右会社に対して有効な掛金の支払となるものであって、被告人に右集金の際受領金の使途について不法の意図があったとしても、右は単に動機の不法に過ぎないもので右集金行為を違法ならしめるものではない。従って被告人が右集金行為後に右金員を擅に自己の用途に費消或はその目的の為に着服したときは業務上横領罪が成立する(此の点については訴因の釈明変更等の手続を必要とする)は格別、右集金行為が詐欺罪にあたるものということはできない。」
過去問・解説
(R1 司法 第16問 ウ)
新聞販売店から集金業務を委託されている集金員が、集金した購読料を同店に持ち帰らずに自己の用途に費消するつもりであるのに、これを秘して、正規の手続や方式に従って購読者から購読料を集金し、自己の遊興費に費消した。この者に業務上横領罪が成立するか。
私文書偽造行使罪と詐欺罪が競合する場合の罪責 大判大正4年4月26日
概要
判例
判旨:「1箇ノ欺罔行為ヲ以テ財産上不法ノ利益ヲ得且財物ヲ騙取シタルトキハ刑法第246条ニ該当スル単一ナル詐欺罪ヲ構成スルモノトス」
過去問・解説
(R6 司法 第7問 3)
甲は、当初より代金を支払う意思も能力もないのに、これらがあるように装って、民宿において朝食付きの宿泊利用を申し込み、同民宿に宿泊し、かつ、同民宿で朝食の提供を受けた。
この場合、甲に刑法第246条第1項の詐欺罪及び同条第2項の詐欺罪が成立し、両罪は併合罪となる。