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判決(既判力) - 解答モード
前訴口頭弁論終結前の債権の時効による消滅 大判昭和14年3月29日
概要
判例
判旨:「給付請求権存否ノ問題ニ付テハ裁判所ハ前記判定ニ覊束セラレ之レニ反スル判定ヲ為シ得サルモノナレハ当事者ニ於テ右判定ニ反スル主張ヲ有効ニ為シ得サルハ当然ノ筋合ナリト云ハサル可カラス而シテ債権ハ消滅時効ノ完成ト共ニ当然ニ消滅シ当事者カ時効ヲ援用スルヲ待テ始メテ消滅スルモノニアラス時効ノ援用ハ債権カ既ニ時効ノ完成ト共ニ消滅シタル事実ヲ主張スル訴訟上ノ防禦方法ニ過キサルコト当院判例ノ示ス所ノ如クナルヲ以テ(昭和九年(オ)第一〇〇九号同年十月三日言渡第三民事部判決)前記第二審ノ判決ニ接著セル口頭弁論終結以前ニ既ニ完成シタリトスル時効ノ援用ハ本件ノ訴ニ於テ最早有効ニ為シ得サルモノナリ蓋シ若シ斯クノ如キ時効ノ援用ヲ許ストキハ結局前記第2審ノ判決ニ接著スル口頭弁論終結当時ニ本件債権カ孰レモ存在セサルコトノ主張ヲ許容スルニ該当シ判決ノ既判力ヲ無視スルノ結果ヲ招致スルヲ以テナリ左レハ原審カ前記ノ如ク判定シタルハ時効援用ニ関スル法理ヲ誤解シタル失当アルカ又ハ既判力ノ本質ヲ誤解シタル違法アルモノニ該当シ原判決ハ全部破毀ヲ免レス」
過去問・解説
(H23 共通 第69問 3)
金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求訴訟で請求を認容する判決が確定した場合、借主は、その後に提起した請求異議の訴えにおいて.当該貸金返還請求訴訟の提起前に完成した当該貸金返還請求訴訟に係る貸金債権の消滅時効を援用して、その時効による消滅を異議の事由として主張することができない。
(H25 共通 第70問 1)
貸金返還請求訴訟において、被告がその債務につき消滅時効が完成していたのに援用の意思表示をしないまま口頭弁論が終結し、請求認容判決が確定した場合であっても、被告は、その後にした時効の援用の効果を請求異議の事由として主張することができる。
詐欺を理由とする取消権 最一小判昭和55年10月23日
概要
判例
判旨:「売買契約による所有権の移転を請求原因とする所有権確認訴訟が係属した場合に、当事者が右売買契約の詐欺による取消権を行使することができたのにこれを行使しないで事実審の口頭弁論が終結され、右売買契約による所有権の移転を認める請求認容の判決があり同判決が確定したときは、もはやその後の訴訟において右取消権を行使して右売買契約により移転した所有権の存否を争うことは許されなくなるものと解するのが相当である。これを本件についてみるに、原審が適法に確定したところによれば、本件被上告人を原告とし本件上告人を被告とする原判示津簡易裁判所昭和45年(ハ)第15号事件において被上告人が上告人から本件売買契約により本件土地の所有権を取得したことを認めて被上告人の所有権確認請求を認容する判決があり、右判決が確定したにもかかわらず、上告人は、右売買契約は詐欺によるものであるとして、右判決確定後である昭和49年8月24日これを取り消した旨主張するが、前訴において上告人は、右取消権を行使し、その効果を主張することができたのにこれをしなかったのであるから、本訴における上告人の上記主張は、前訴確定判決の既判力に抵触し許されないものといわざるをえない。」
過去問・解説
(H23 共通 第69問 4)
売買契約に基づく土地引渡請求訴訟で請求を認容する判決が確定した場合、売主は、その後に提起した請求異議の訴えにおいて、当該売買契約につき詐欺による取消権を行使し、その効果を異議の事由として主張することができる。
(H25 共通 第70問 3)
売買による所有権の取得を請求原因として買主が提起した所有権確認訴訟において、売主である被告が詐欺を理由として当該売買契約の取消しをすることができたのにこれをしないまま口頭弁論が終結し、請求認容判決が確定した場合であっても、被告は、自己の所有権の確認を求める後訴において当該売買契約の取消しを主張して買主の所有権の取得を争うことができる。
(H28 予備 第36問 1)
売買による所有権の取得を請求原因として買主が提起した所有権確認請求訴訟において、被告である売主が詐欺を理由として売買契約の取消しをすることができたのにこれをしないまま口頭弁論が終結し、請求を認容する判決が確定した場合には、売主は自己の所有権の確認を買主に対して求める後訴において当該取消しを主張して買主の所有権の取得を争うことができない。
(R6 予備 第42問 ア)
買主Xが売主Yに対し、売買契約により建物の所有権を取得したとして所有権の確認を求める訴えを提起し、請求を認容する判決が確定した後、YがXに対し、同一の建物について所有権の確認を求めて訴えを提起し、その訴状において上記売買契約を詐欺により取り消すとの意思表示をした場合には、後訴裁判所がYの主張を認めてYの請求を認容する判決をすることは、 前訴の確定判決の既判力に反し許されない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭55.10.23)は、本肢と同種の事案において、「当事者が右売買契約の詐欺による取消権を行使することができたのにこれを行使しないで事実審の口頭弁論が終結され、右売買契約による所有権の移転を認める請求認容の判決があり同判決が確定したときは、もはやその後の訴訟において右取消権を行使して右売買契約により移転した所有権の存否を争うことは許されなくなる…。」とした上で、所有権の存否を争う旨の主張について、「前訴確定判決の既判力に抵触し許されないものといわざるをえない。」としている。
したがって、後訴裁判所がYの主張を認めてYの請求を認容する判決をすることは、 前訴の確定判決の既判力に反し許されない。
契約の解除権 最三小判昭和36年12月12日
概要
判例
判旨:「書面によらない贈与(死因贈与を含む)を請求原因とする訴訟が係属した場合に当事者が民法550条によるその取消権を行使することなくして事実審の口頭弁論が終結した結果、右贈与による権利の移転を認める判決があり同判決が確定したときは、訴訟法上既判力の効果として最早取消権を行使して贈与による権利の存否を争うことは許されなくなるものと解する。」
過去問・解説
(R6 予備 第42問 ウ)
受贈者Xが贈与者Yに対し、贈与契約に基づく土地の引渡しを求める訴えを提起し、請求を認容する判決が確定した後、YがXに対し、請求異議の訴えを提起し、その訴状において上記贈与契約は書面によらないものであるとして解除するとの意思表示をした場合には、後訴裁判所が解除の効果を異議の事由として認めてYの請求を認容する判決をすることは、前訴の確定判決の既判力に反し許されない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭36.12.12)は、「書面によらない贈与…を請求原因とする訴訟が係属した場合に当事者が民法550条によるその取消権を行使することなくして事実審の口頭弁論が終結した結果、右贈与による権利の移転を認める判決があり同判決が確定したときは、訴訟法上既判力の効果として最早取消権を行使して贈与による権利の存否を争うことは許されなくなる…。」としている。
したがって、書面によらない贈与による権利の移転を認める判決が確定した場合、贈与契約を解除することはできず、かかる解除の効果を認めてYの請求を認容する判決することも、前訴確定判決の既判力に反し許されない。
前訴口頭弁論終結前に相殺適状にある場合における相殺の抗弁 最二小判昭和40年4月2日
概要
判例
判旨:「相殺は当事者双方の債務が相殺適状に達した時において当然その効力を生ずるものではなくて、その一方が相手方に対し相殺の意思表示をすることによってその効力を生ずるものであるから、当該債務名義たる判決の口頭弁論終結前には相殺適状にあるにすぎない場合、口頭弁論の終結後に至ってはじめて相殺の意思表示がなされたことにより債務消滅を原因として異議を主張するのは民訴法545条2項(現:民事執行法35条2項)の適用上許されるとする大審院民事連合部明治43年11月26日判決(民録16輯764頁)の判旨は、当裁判所もこれを改める必要を認めない。」
過去問・解説
(H23 共通 第69問 2)
金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求訴訟で請求を認容する判決が確定した場合、借主は、その後に提起した請求異議の訴えにおいて、当該貸金返還請求訴訟の事実審の口頭弁論終結前に相殺適状にあった貸主に対する債権を自働債権とし、当該貸金返還請求訴訟に係る貸金債権を受働債権とする相殺の意思表示をし、その効果を異議の事由として主張することができない。
(H25 共通 第70問 2)
貸金返還請求訴訟において、被告が原告に対する反対債権を有し相殺適状にあったのに相殺の意思表示をしないまま口頭弁論が終結し、請求認容判決が確定した場合であっても、被告は、その後にした相殺の意思表示の効果を請求異議の事由として主張することができる。
(H28 予備 第36問 2)
貸金返還請求訴訟において、被告である借主が相殺適状にある反対債権を有していたものの、相殺の意思表示をしないまま口頭弁論が終結し、請求を認容する判決が確定した場合には、借主は、その確定判決について提起した請求異議の訴えにおいて、その後にした相殺の意思表示による債務の消滅の効果を請求異議の事由として主張することができる。
(R2 予備 第40問 ア)
Xは、Yに対し、金銭債権である甲債権を、Yは、Xに対し、金銭債権である乙債権をそれぞれ有しており、甲債権と乙債権とは、相殺適状にあるところ、XがYに対して甲債権に基づく金銭の支払を求める訴え(以下「本件訴え」といい、本件訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。)を提起した。Yが本件訴訟の口頭弁論の終結時までに相殺の意思表示をせず、Xの請求を全部認容する判決が確定した場合において、Yが、その後に乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺の意思表示をし、Xに対して提起した請求異議の訴えに係る訴訟において、甲債権の消滅を主張することは、この判決の既判力に抵触し、許されない。
(R6 予備 第42問 オ)
貸主Xが借主Yに対し、消費貸借契約に基づく貸金の返還を求める訴えを提起し、請求を認容する判決が確定した後、YがXに対し、請求異議の訴えを提起し、その訴状において、前訴における事実審の口頭弁論終結前から存在し、かつ相殺適状にあったXに対する反対債権をもって相殺する旨の意思表示をした場合には、後訴裁判所が相殺の意思表示の効果を異議の事由として認めてYの請求を認容する判決をすることは、前訴の確定判決の既判力に反し許されない。
建物買取請求権 最二小判平成7年12月15日
概要
判例
判旨:「借地上に建物を所有する土地の賃借人が、賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟の事実審口頭弁論終結時までに借地法4条2頃(現:借地借家法13条1項)所定の建物買取請求権を行使しないまま、賃貸人の右請求を認容する判決がされ、同判決が確定した場合であっても、賃借人は、その後に建物買取請求権を行使した上、賃貸人に対して右確定判決による強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起し、建物買取請求権行使の効果を異議の事由として主張することができるものと解するのが相当である。けだし、(1)建物買買請求権は、前訴確定判決によって確定された賃貸人の建物収去土地明渡請求権の発生原因に内在する瑕疵に基づく権利とは異なり、これとは別個の制度目的及び原因に基づいて発生する権利であって、賃借人がこれを行使する ことにより建物の所有権が法律上当然に賃貸人に移転し、その結果として賃借人の建物収去義務が消滅するに至るのである、(2)したがって、賃借人が前訴の事実 審口頭弁論終結時までに建物買取請求権を行使しなかったとしても、実体法上、その事実は同権利の消滅事由に当たるものではなく(最高裁昭和52年(オ)第268号同52年6月20日第二小法廷判決・裁判集民事121号63頁)、訴訟法上も、前訴確定判決の既判力によって同権利の主張が遮断されることはないと解すべきものである、(3)そうすると、賃借人が前訴の事実訴口頭弁論終結時以後に建物買取請求権を行使したときは、それによって前訴確定判決により確定された賃借人の建物収去義務が消滅し、前訴確定判決はその限度で執行力を失うから、建物買取請求権行使の効果は、民事執行法35条2項所定の口頭弁論の終結後に生じた異議の事由に該当するものというべきであるからである。」
過去問・解説
(H23 共通 第69問 1)
土地賃貸人から提起された借地上に建物を所有する土地賃借人に対する建物収去土地明渡請求訴訟で請求を認容する判決が確定した場合、賃借人は、その後に提起した請求異議の訴えにおいて、建物買取請求権を行使し、その効果を異議の事由として主張することができる。
(H25 共通 第70問 4)
土地の賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟において、賃借人である被告が建物買取請求権を行使しないまま口頭弁論が終結し、請求認容判決が確定した場合であっても、被告は、その後にした建物買取請求権の行使の効果を請求異議の事由として主張することができる。
(H28 予備 第36問 4)
土地の賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟において、被告である借地人が建物買取請求権を行使しないまま口頭弁論が終結し、請求を認容する判決が確定した場合には、借地人は、その確定判決について提起した請求異議の訴えにおいて、その後にした建物買取請求権の行使の効果を請求異議の事由として主張することができない。
(R6 予備 第42問 イ)
土地の賃貸人Xが、その土地上に建物を所有する賃借人Yに対し、賃貸借契約の終了に基づき、建物を収去して土地を明け渡すことを求める訴えを提起し、請求を認容する判決が確定した後、YがXに対し、請求異議の訴えを提起し、その訴状において建物買取請求権を行使するとの意思表示をした場合には、後訴裁判所が建物買取請求権行使の効果を異議の事由として認めてYの請求を認容する判決をすることは、前訴の確定判決の既判力に反し許されない。
1個の債権の数量的な一部請求についての判決の既判力の客観的範囲 最二小判昭和37年8月10日
概要
判例
判旨:「1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合は、訴訟物となるのは右債権の一部の存否のみであって、全部の存否ではなく、従って右一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第62問 1)
明示的一部請求訴訟においては債権全部についての審判が必要とされるので、一部請求部分が棄却された場合には、残額請求は既判力に反し許されない。
(H26 共通 第71問 ア)
XはYと締結した自らを注文主とする建物建築請負契約をYの債務不履行を理由に工事完成前に解除し、Yを被告として、総額1000万円の損害賠償債権のうちの一部であることを明示して400万円の支払を求める訴えを提起した。
Yから何らの抗弁が提出されることなくXの請求を全部認容する判決が確定したときは、この確定判決の既判力は、残部の請求に及ばない。
(R4 予備 第33問 ウ)
XがYに対して総額1000万円のうち200万円の支払を求めることを明示した上で提起した貸金の返還を求める訴え(前訴)について弁済を理由として請求を棄却する判決が確定した後、XがYに対して前記貸金の残額800万円の支払を求める訴え(後訴)を提起した場合に、後訴裁判所が、Xの請求を認容することは、前訴の確定判決の既判力に抵触しない。
金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することの許否 最二小判平成10年6月12日
概要
判例
判旨:「1個の金銭債権の数量的一部請求は、当該債権が存在しその額は一定額を下回らないことを主張して右額の限度でこれを請求するものであり、債権の特定の一部を請求するものではないから、このような請求の当否を判断するためには、おのずから債権の全部について審理判断することが必要になる。すなわち、裁判所は、当該債権の全部について当事者の主張する発生、消滅の原因事実の存否を判断し、債権の一部の消滅が認められるときは債権の総額からこれを控除して口頭弁論終結時における債権の現存額を確定し(最高裁平成2年(オ)第1146号同6年11月22日第三小法廷判決・民集48巻7号1355頁参照)、現存額が一部請求の額以上であるときは右請求を認容し、現存額が請求額に満たないときは現存額の限度でこれを認容し、債権が全く現存しないときは右請求を棄却するのであって、当事者双方の主張立証の範囲、程度も、通常は債権の全部が請求されている場合と変わるところはない。数量的一部請求を全部又は一部棄却する旨の判決は、このように債権の全部について行われた審理の結果に基づいて、当該債権が全く現存しないか又は一部として請求された額に満たない額しか現存しないとの判断を示すものであって、言い換えれば、後に残部として請求し得る部分が存在しないとの判断を示すものにほかならない。したがって、右判決が確定した後に原告が残部請求の訴えを提起することは、実質的には前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり、前訴の確定判決によって当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。以上の点に照らすと、金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H26 共通 第71問 ウ)
XはYと締結した自らを注文主とする建物建築請負契約をYの債務不履行を理由に工事完成前に解除し、Yを被告として、総額1000万円の損害賠償債権のうちの一部であることを明示して400万円の支払を求める訴えを提起した。
Yの債務不履行が認められないとしてXの請求を棄却する判決が確定したときは、XがYに対し残部の支払を求める訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない。
(H30 予備 第41問 2)
XがYに対して1000万円の貸金債権の一部として100万円の支払を求める訴訟において、1000万円の貸付けはあったが940万円は弁済されたとして、60万円の限度で請求を認容する判決が確定した場合に、Xは、Yに対し、貸金1000万円のうち前訴で請求しなかった900万円の支払を求める訴えを提起することができる。
相続財産の限度での支払いを命ずる判決が確定した場合における判決の効力(既判力に準ずる効力) 最二小判昭和49年4月26日
概要
判例
判旨:「被相続人の債務につき債権者より相続人に対し給付の訴が提起され、右訴訟において該債務の存在とともに相続人の限定承認の事実も認められたときは、裁判所は、債務名義上相続人の限定責任を明らかにするため、判決主文において、相続人に対し相続財産の限度で右債務の支払を命ずべきである。ところで、右のように相続財産の限度で支払を命じた、いわゆる留保付判決が確定した後において、債権者が、右訴訟の第2審口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実(たとえば民法921条の法定単純承認の事実)を主張して、右債権につき無留保の判決を得るため新たに訴を提起することは許されないものと解すべきである。けだし、前訴の訴訟物は、直接には、給付請求権即ち債権(相続債務)の存在及びその範囲であるが、限定承認の存在及び効力も、これに準ずるものとして審理判断されるのみならず、限定承認が認められたときは前述のように主文においてそのことが明示されるのであるから、限定承認の存在及び効力についての前訴の判断に関しては、既判力に準ずる効力があると考えるべきであるし、また民訴法545条2項(現:民事執行法35条2項)によると、確定判決に対する請求異議の訴は、異議を主張することを要する口頭弁論の終結後に生じた原因に基づいてのみ提起することができるとされているが、その法意は、権利関係の安定、訴訟経済及び訴訟上の信義則等の観点から、判決の基礎となる口頭弁論において主張することのできた事由に基づいて判決の効力をその確定後に左右することは許されないとするにあると解すべきであり、右趣旨に照らすと、債権者が前訴において主張することのできた前述のごとき事実を主張して、前訴の確定判決が認めた限定承認の存在及び効力を争うことも同様に許されないものと考えられるからである。そして、右のことは、債権者の給付請求に対し相続人から限定承認の主張が提出され、これが認められて留保付判決がされた場合であると、債権者がみずから留保付で請求をし留保付判決がされた場合であるとによって異なるところはないと解すべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第58問 3)
XのYに対する1000万円の貸金返還請求訴訟において、Yが限定承認の抗弁を主張し、相続財産の限度で支払えとの判決が確定した後、XがYに相続財産の一部の隠匿があったとして、改めて責任限定のない判決を求めて、同一の訴えを提起した。この場合、Xの後訴請求には前訴判決の効力は及ばない。
(H28 予備 第36問 5)
被相続人の貸金債務につき相続人が貸主から提起された貸金返還請求訴訟において、被告である相続人の限定承認の事実が認められ、相続財産の限度での債務の支払を命じる留保付判決が確定した場合には、貸主は、口頭弁論の終結の前に法定単純承認の事実があったとして、限定承認の効力を争い、無留保の判決を得るため、改めて貸金返還請求訴訟を提起することは、許されない。
(R1 予備 第42問 5)
相続財産に属する債務の債権者が相続人に対してその債務の弁済を求める訴訟において、相続人が主張する限定承認の事実を認めることができる場合には、裁判所は、相続によって得た財産の限度で当該債務の弁済を命ずる判決をすることができる。
(R4 予備 第33問 イ)
XがYに対して提起した500万円の貸金の返還を求める訴え(前訴)について、Yによる限定承認の抗弁を容れ、Yに対して相続によって得た財産の限度で500万円の支払を命ずる判決が確定した後、XがYに対して相続財産の範囲にかかわらず前記貸金の返還を求める訴え(後訴)を提起した場合に、後訴裁判所が、前訴基準時前の法定単純承認事由に基づき、Yに対して相続財産の範囲にかかわらず500万円の支払を命ずることは、前訴の確定判決の既判力に抵触し、許されない。
債権者代位訴訟において被保全債権の不存在を看過して下された判決の効力は債務者に及ぶか 大阪地判昭和45年5月28日
概要
判例
判旨:「訴外会社は右解除とともに代位訴訟における当該代位債権を失うことによって民訴法201条2項(現:115条2項)にいう他人のための訴訟担当者たるの適格を喪失し、右判示後段による本件確定判決はこれを看過してされた判決というの外ないところ、右訴訟の当事者であった本件原告と訴外会社の間においてはさておき、代位債務者であった本件被告との関係においては、右当事者適格看過の判決はその効力をこれに及ぼす由なきものと解すべきであり、しかもこの点は、右代位債務者(本件被告)自身のみならず、本件の如き場合、第三債務者(本件原告)も亦これを主張し得るものというのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 5)
乙債権が第三者弁済によって消滅していたが、そのことが明らかにならないまま甲債権が存在しないとしてXの請求を棄却する判決が確定した。その後、上記の第三者弁済の事実が明らかになったときは、Aは、前訴判決の既判力に妨げられることなく、Yに対して訴えを提起して甲債権についての支払を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
115条1項2号は、判決効の拡張が認められる者の1つとして、「当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人」を掲げている。
債権者代位訴訟における代位債務者はこれに当たるから、判決の効力が拡張されるのが原則である。
しかし、これについて裁判例(大阪地判昭45.5.28)は、「訴外会社は右解除とともに代位訴訟における当該代位債権を失うことによって…他人のための訴訟担当者たるの適格を喪失し、右判示後段による本件確定判決はこれを看過してされた判決というの外ないところ、右訴訟の当事者であった本件原告と訴外会社の間においてはさておき、代位債務者であった本件被告との関係においては、右当事者適格看過の判決はその効力をこれに及ぼす由なきものと解すべきであ…る。」としている。
したがって、Aは、当事者適格を基礎付ける、被保全債権たる甲債権の支払請求をすることができる。
(H23 予備 第45問 5)
Aに対して売買代金債権を有すると主張するXが、Aに代位して、AのYに対する貸金債権に基づき、Yに対して当該貸金の返還を求める訴えを提起した。
訴えの提起前にXのAに対する売買代金債権が消滅していたにもかかわらず、AのYに対する貸金債権の不存在を理由に請求を棄却する判決がされ、その判決が確定した。この場合、Aは、Yに対する訴えを提起して当該貸金債権の存在を主張することを妨げられない。
(正答)〇
(解説)
115条1項2号は、判決効の拡張が認められる者の1つとして、「当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人」を掲げている。
債権者代位訴訟における代位債務者はこれに当たるから、判決の効力が拡張されるのが原則である。
これについて裁判例(大阪地判昭45.5.28)は、本肢と同種の事案において、「訴外会社は右解除とともに代位訴訟における当該代位債権を失うことによって民訴法201条2項(現:115条2項)にいう他人のための訴訟担当者たるの適格を喪失し、右判示後段による本件確定判決はこれを看過してされた判決というの外ないところ、右訴訟の当事者であった本件原告と訴外会社の間においてはさておき、代位債務者であった本件被告との関係においては、右当事者適格看過の判決はその効力をこれに及ぼす由なきものと解すべきであ…る。」として、判決効は債務者に及ばないことを示している。
本肢も同様に、被保全債権の消滅を看過したまま債権者代位訴訟の判決が確定している。
したがって、Aには係る訴訟の既判力は及ばず、Yに対して訴えを提起して、当該貸金債権の存在を主張することができる。
裁判上の和解により建物を収去してその敷地を明け渡すべき義務のある者から建物を借り受けその敷地を占有する者と民事訴訟法115条1項3号にいう口頭弁論終結後の「承継人」 最二小判昭和26年4月13日
概要
判例
判旨:「裁判上の和解により建物を収去しその敷地たる土地を明渡すべき義務のある者から建物を借受け建物の敷地たる土地を占有する者は民訴第201条第1項にいわゆる承繼人と解するを相当とする…。建物賃借人の敷地に對する占有は賃借人の敷地に對する占有と無関係に原始的に取得せられるものではなく、賃借人の敷地に對する占有に基き取得せられるものであるから占有の関係からみると一種の承繼があるとみることができるのであり賃借人が建物所有者としてその敷地に對する占有を失わない場合でもこの種の占有の承繼を認めることを妨げるものではないのである。」
過去問・解説
(H18 司法 第58問 5)
XのYに対する所有権に基づく建物収去土地明渡請求訴訟において、訴訟上の和解により、Yは建物を収去し、敷地である土地を明け渡すべき義務を負うとされた。その後、Yから当該建物を借り受け、その建物の敷地である土地を占有するZには、Zが和解調書の存在を知っていたか否かにかかわらず、当該調書の執行力が及ぶ。
(R1 予備 第43問 ア)
XがYに対して土地の賃貸借契約終了に基づき建物収去土地明渡しを求める訴えを提起し、Xの請求を認容する判決が確定した後、ZがYから当該建物を借り受けて当該土地を占有する場合に、この判決の効力は、Zにも及ぶ。
(R6 予備 第33問 オ)
建物明渡請求事件において、建物を明け渡すことを内容とする訴訟上の和解が調書に記載されたときは、その記載の効力は、和解をした当事者のみならず、和解成立後に当事者から当該建物の占有を承継した者にも及ぶ。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭26.4.13)は、「裁判上の和解により建物を収去しその敷地たる土地を明渡すべき義務のある者から建物を借受け建物の敷地たる土地を占有する者」が115条1項3号の「承継人」に当たることを認めている。そして、和解調書には「確定判決と同一の効力」が認められる(267条1項)から、その効力の主観的範囲については、115条及び民事執行法23条が適用される。
和解成立後に当事者から当該建物の占有を承継した者は、「口頭弁論終結後の承継人」(115条1項3号)及び「債務名義成立後の承継人」(民事執行法23条1項3号)に当たるから、和解調書の記載の効力は、和解をした当事者のみならず、和解成立後に当事者から当該建物の占有を承継した者にも及ぶ。
通謀による虚偽の登記名義を真正なものに回復するための所有権移転登記手続請求訴訟における被告敗訴の確定判決と口頭弁論終結後被告から善意で当該不動産を譲り受けた第三者 最一小判昭和48年6月21日
概要
判例
判旨:「以上の事実関係のもとにおいては、Xは、本件土地につきY名義でなされた前記所有権取得登記が、通謀虚偽表示によるもので無効であることを、善意の第三者であるZに対抗することはできないものであるから、Zは本件土地の所有権を取得するに至ったものであるというべきである。このことはXと訴外Yとの間の前記確定判決の存在によって左右されない。そして、Zは…訴外YのXに対する本件土地所有権移転登記義務を承継するものではないから、Xが、右確定判決につき、訴外Yの承継人としてZに対する承継執行文の付与を受けて執行することは許されないといわなければならない。」
過去問・解説
(H21 司法 第68問 5)
XがYを被告として、XY間の通謀虚偽表示によりYの所有名義に登記されていた土地について、真正な登記名義回復のため所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、Xの請求を認容する判決が確定した。その直後、同確定判決について善意無過失のZが、競売手続により当該土地を取得し、所有権移転登記を経たとしても、判例によれば、Zは前訴の口頭弁論終結後のYの承継人であるから、Xは前訴の確定判決に基づき、Zに対する承継執行文の付与を受けて当該土地の所有名義をX名義に回復することができる。
(R5 予備 第36問 ア)
XがYに対して、XY間の売買契約が通謀虚偽表示により無効であることを理由として、土地の所有権に基づき所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えを提起し、Xの請求を認容する判決が確定したが、Yが事実審の口頭弁論の終結後に、通謀虚偽表示について善意無過失のZに当該土地を売却し、Zへの所有権移転登記手続をしていた場合に、この判決の効力は、Zにも及び、ZはXに対して善意無過失の第三者であることを主張することはできない。
土地の所有権移転登記手続を命ずる判決の確定前に被告から同土地の所有権移転登記を受けた者に右確定判決の既判力が及ぶと認められた事例 大阪高判昭和46年4月8日
概要
判例
判旨:「わが民事訴訟法第201条第1項(現:115条1項)は、確定判決の効力が当事者以外に生ずる場合の1つとして、『請求ノ目的物ヲ所持スル者』を掲げている。ところで、『登記』を『所持』または『占有』に対比して考えることは、しばしば行なわれているところであり、現に同条項にいう『口頭弁論終結後ノ承継人』の範囲を画するにあたっては、『登記名義の移転』を『占有の承継』と同列に扱うことにつき異論を見ないのである。そうすると、本件の控訴人のように、たとい前訴の係属中に所有権移転登記が行なわれたにしても、単に前訴の当事者のために登記名義人になっているにすぎない者は、請求の目的物の所持者に準じ、これに既判力を及ぼす類推解釈が可能となる。」
過去問・解説
(R5 予備 第36問 イ)
XがYに対して、売買契約に基づき甲土地の所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、Xの請求を認容する判決が確定したが、Yが事実審の口頭弁論の終結前に、Zとの通謀虚偽表示による贈与契約に基づき、Zへの甲土地の所有権移転登記手続をしていた場合に、この判決の効力は、Zにも及ぶ。
法人格否認の法理 最一小判昭和53年9月14日
概要
判例
判旨:「上告会社の設立が訴外会社の債務の支払を免れる意図の下にされたものであり、法人格の濫用と認められる場合には、いわゆる法人格否認の法理により被上告人は自己と訴外会社間の前記確定判決の内容である損害賠償請求を上告会社に対しすることができるものと解するのが相当である。しかし、この場合においても、権利関係の公権的な確定及びその迅速確実な実現をはかるために手続の明確、安定を重んずる訴訟手続ないし強制執行手続においては、その手続の性格上訴外会社に対する判決の既判力及び執行力の範囲を上告会社にまで拡張することは許されないものというべきである(最高裁昭和43年(オ)第877号同44年2月27日第一小法廷判決・民集23巻2号511頁参照)。」
過去問・解説
(H18 司法 第58問 4)
XがY会社に対して有する金銭債権についてその支払を命ずる判決が確定した後、当該債務の支払を免れるためZ会社が設立された。これが法人格濫用に当たる場合、法人格否認の法理により、Y会社の有する債務をZ会社が履行する義務を負うとしても、Y会社の受けた判決の既判力がZ会社に及ぶことはない。
(H21 司法 第68問 4)
XがY会社を被告として、損害賠償を求める訴えを提起し、Xの請求を認容する判決が確定した後、Y会社が新たに設立したZ会社にY会社の資産を移転した場合であって、法人格の濫用であるとしてZ会社の法人格が否認されるときには、判例によれば、確定判決の既判力がZに及ぶ。
(R1 予備 第43問 イ)
XがY法人に対して損害賠償を求める訴えを提起し、Xの請求を認容する判決が確定した後、Y法人がZ法人を新たに設立して資産を移転したが、法人格の濫用であるとしてZ法人の法人格が否認される場合に、この判決の効力は、Z法人にも及ぶ。
保証人敗訴の判決確定後に主債務者勝訴の判決が確定した場合と保証人敗訴の確定判決に対する請求異議の訴え(反射効) 最一小判昭和51年10月21日
概要
判例
判旨:「所論は、要するに、上告人に対する前記判決は連帯保証債務の履行を命ずるものであるところ、その主債務は、右判決確定後、主債務関係の当事者である被上告人と右相続人ら間の確定判決により不存在と確定されたから、上告人は、連帯保証債務の附従性に基づき請求異議の訴により自己に対する前記判決の執行力の排除を求めることができる筋合であると主張する。そこで案ずるに、一般に保証人が、債権者からの保証債務履行請求訴訟において、主債務者勝訴の確定判決を援用することにより保証人勝訴の判決を導きうると解せられるにしても、保証人がすでに保証人敗訴の確定判決を受けているときは、保証人敗訴の判決確定後に主債務者勝訴の判決が確定しても、同判決が保証人敗訴の確定判決の基礎となった事実審口頭弁論終結の時までに生じた事実を理由としてされている以上、保証人は右主債務者勝訴の確定判決を保証人敗訴の確定判決に対する請求異議の事由にする余地はないものと解すべきである。けだし、保証人が主債務者勝訴の確定判決を援用することが許されるにしても、これは、右確定判決の既判力が保証人に拡張されることに基づくものではないと解すべきであり、また、保証人は、保証人敗訴の確定判決の効力として、その判決の基礎となった事実審口頭弁論終結の時までに提出できたにもかかわらず提出しなかった事実に基づいてはもはや債権者の権利を争うことは許されないと解すべきところ、保証人敗訴判決の確定後において主債務者勝訴の確定判決があっても、その勝訴の理由が保証人敗訴判決の基礎となった事実審口頭弁論の終結後に生じた事由に基づくものでない限り、この主債務者勝訴判決を援用して、保証人敗訴の確定判決に対する請求異議事由とするのを認めることは、実質的には前記保証人敗訴の確定判決の効力により保証人が主張することのできない事実に基づいて再び債権者の権利を争うことを容認するのとなんら異なるところがないといえるからである。」
過去問・解説
(H30 予備 第41問 5)
XがYに有する貸金債権の連帯保証人Zに対して提起した保証債務履行請求の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した後、XのYに対する貸金返還請求訴訟において、保証債務履行請求訴訟の事実審の口頭弁論終結時前にYが弁済したとして、請求を棄却する判決が確定した場合に、ZがXに対して保証債務履行請求訴訟の確定判決について提起した請求異議の訴えにおいて、貸金返還請求訴訟の確定判決を請求異議の事由として援用することは、許されない。
不真正連帯債務者中の一人と債権者との間の訴訟において相殺を認めた確定判決の他の債務者に対する効力(反射効) 最一小判昭和53年3月23日
概要
判例
判旨:「不真正連帯債務者中の1人と債権者との間の確定判決は、他の債務者にその効力を及ぼすものではなく、このことは、民訴法199条2項(現:114条2項)により確定判決の既判力が相殺のために主張された反対債権の存否について生ずる場合においても同様であると解すべきである。もとより、不真正連帯債務者の1人と債権者との間で実体法上有効な相殺がなされれば、これによって債権の消滅した限度で他の債務者の債務も消滅するが、他の債務者と債権者との間の訴訟においてこの債務消滅を認めて判決の基礎とするためには、右相殺が実体法上有効であることを認定判断することを要し、相殺の当事者たる債務者と債権者との間にその相殺の効力を肯定した確定判決が存在する場合であっても、この判決の効力は他の債務者と債権者との間の訴訟に及ぶものではないと解すべきであるから、右認定判断はこれを省略することはできない。」
過去問・解説
(R3 予備 第35問 イ)
Xが、Xに対して連帯債務を負うYとZのうちYに対してのみその債務の履行を求める訴訟において、相殺を理由として請求を一部棄却するとの判決が確定した場合に、この判決の効力は、Zに及ぶ。