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窃盗の罪 - 解答モード

窃盗罪における占有の成否 大判大正15年11月2日

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概要
他人の遺留品を鉄道列車内にて領得したときは、遺失物横領罪が成立する。
判例
事案:鉄道列車の連結手として勤務中だった被告人が、停車中の列車内にて乗客の遺留品である毛布を不正に領得したという事案において、電車内に忘れた財物の占有が列車内の管理者に移転しているかが問題となった。

判旨:「鉄道係員ノ乗務スル鉄道列車内ニ於テ乗客ノ遺留セル物品ヲ不正ニ領得シタル者ハ刑法第254条ニ依リ処断スヘキモノトス」
過去問・解説

(H25 司法 第4問 オ)
甲は、A駅行きの満員電車に乗っていた際、隣の席に座っていた乙がかばんを忘れたままB駅で下車したのを目撃し、乙のかばんとその中身を自分のものにしようと考え、次のC駅で乙のかばんを持って下車し、自宅に持ち帰った。この場合、甲に窃盗罪は成立するか。

(正答)

(解説)
判例(大判大15.11.2)は、本肢と同種の事案において、「鉄道係員ノ乗務スル鉄道列車内ニ於テ乗客ノ遺留セル物品ヲ不正ニ領得シタル者ハ刑法第254条ニ依リ処断スヘキモノトス」として、遺失物横領罪が成立するとしている。
甲は、乙のカバンとその中身を乙の下車後に電車内で置き引きしているため、甲に窃盗罪は成立せず、遺失物横領罪が成立する。


(H30 司法 第8問 オ)
甲が、満員電車に乗っていた際、隣の席に座っていた見ず知らずの乙が財布を座席に置き忘れたままX駅で下車したのを目撃し、乙の財布とその中身を自己のものにしようと考え、次のY駅に到着した時点で乙の財布を取得した上、同駅で下車し自宅に持ち帰った場合、窃盗罪が成立するか。

(正答)

(解説)
判例(大判大15.11.2)は、本肢と同種の事案において、「鉄道係員ノ乗務スル鉄道列車内ニ於テ乗客ノ遺留セル物品ヲ不正ニ領得シタル者ハ刑法第254条ニ依リ処断スヘキモノトス」として、遺失物横領罪が成立するとしている。
甲は、乙の財布とその中身を、乙の下車した次のY駅に到着した時点で電車内で置き引きし、自宅に持ち帰っている。
したがって、甲に窃盗罪は成立せず、遺失物横領罪が成立する。


(R5 司法 第4問 5)
甲は、満員電車内において、乗客Vが網棚にかばんを置き忘れたままA駅で下車したのを目撃し、B駅で下車する際、同かばんを自己のものにしようと考えて無断で持ち去った。甲に窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大15.11.2)は、本肢と同種の事案において、「鉄道係員ノ乗務スル鉄道列車内ニ於テ乗客ノ遺留セル物品ヲ不正ニ領得シタル者ハ刑法第254条ニ依リ処断スヘキモノトス」として、遺失物横領罪が成立するとしている。
甲は、Vのかばんを、Vの下車した後のB駅において無断で持ち去っているため、甲に窃盗罪は成立せず、遺失物横領罪が成立する。

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占有の有無 大判大正3年10月21日

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概要
看守者のいない仏堂に安置された仏像について、所有者が特にその存在を意識してその場所に置いたものであれば、所有者の占有が認められる。
判例
事案:看守者のいない仏堂に安置された仏像について、所有者の占有が認められるかが問題となった。

判旨:「人ノ所有物カ何人ノ占有ニモ屬セサル堂宇其他ノ場所ニ存在スル場合ト雖モ所有者カ之ヲ遺棄シ又ハ遺失シタルニアラスシテ其存在ヲ意識シ特ニ之ヲ其場所ニ置キタルモノナルトキハ其物ハ常ニ所有者ノ占有ニ屬スルモノト認メ得ヘキ」
過去問・解説

(R5 司法 第4問 3)
甲は、看守者のいない仏堂に所有者Vが据え置いてまつっていた仏像を、自己のものにしようと考えて無断で持ち去った。甲に窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大3.10.21)は、本肢と同種の事案において、「人ノ所有物カ何人ノ占有ニモ屬セサル堂宇其他ノ場所ニ存在スル場合ト雖モ所有者カ之ヲ遺棄シ又ハ遺失シタルニアラスシテ其存在ヲ意識シ特ニ之ヲ其場所ニ置キタルモノナルトキハ其物ハ常ニ所有者ノ占有ニ屬スルモノト認メ得ヘキ」として、看守者のいない仏堂に所有者Vが据え置いてまつっていた仏像に対する所有者の占有を認めている。
したがって、看守者のいない仏堂に所有者Vが据え置いてまつっていた仏像には所有者の占有が認められるから、甲が当該仏像を持ち去ったことには、窃盗罪が成立する。

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占有の有無 最三小判平成16年8月25日

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概要
被告人が本件ポシェットを領得したのは、被害者がこれを置き忘れてベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点であったことなどの事実関係の下では、その時点において、被害者が本件ポシェットのことを一時的に失念したまま現場から立ち去りつつあったことを考慮しても、被害者の本件ポシェットに対する占有はなお失われていない。
判例
事案:被害者がベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点で公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した事案において、窃盗罪又は占有離脱物横領罪のいずれが成立するかが問題となった。

判旨:「被告人が本件ポシェットを領得したのは、被害者がこれを置き忘れてベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点であったことなど本件の事実関係の下では、その時点において、被害者が本件ポシェットのことを一時的に失念したまま現場から立ち去りつつあったことを考慮しても、被害者の本件ポシェットに対する占有はなお失われておらず、被告人の本件領得行為は窃盗罪に当たるというべきであるから、原判断は結論において正当である。」
過去問・解説

(R5 司法 第4問 1)
甲は、V宅内において、Vが所在を見失っていたV所有の指輪を発見し、これを自己のものにしようと考えて無断で持ち去った。甲に窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.8.25)は、被害者がベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点で公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得された事案において、「被害者が本件ポシェットのことを一時的に失念したまま現場から立ち去りつつあったことを考慮しても、被害者の本件ポシェットに対する占有はなお失われておらず、被告人の本件領得行為は窃盗罪に当たる…。」として、占有を認めている。
したがって、V所有の指輪になおVの占有は及んでいるから、甲のV宅内でVが見失っていた指輪を持ち去った行為は、Vの占有を侵害する窃取に当たる。
よって、甲に窃盗罪が成立する。

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死者の生前の占有が保護されない場合 大判大正13年3月28日

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概要
被害者の死亡と無関係の第三者が死者から財物を領得するという事案について、犯人の致死行為と第三者の領得行為を全体として一体のものとして評価することはできないから窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまる。
判例
事案:関東大震災による火災で死亡した焼死体から現金を領得したという事案において、死者の占有が認められるかが問題となった。

要旨:犯人の致死行為と第三者の領得行為を全体として一体のものとして評価することはできないから窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまる
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説

(H24 司法 第1問 3)
甲は、深夜、路上を歩いていたところ、見知らぬ乙と丙が殴り合いのけんかをしていたので、これを見ていると、乙がナイフを取り出して丙を刺し殺した。甲は、乙が走り去った直後、死亡した丙の上着のポケット内に入っていた現金入りの財布を持ち去り、これを自分のものにした。この場合、甲に窃盗罪が成立するか。

(正答)

(解説)
判例(大判大13.3.28)は、被害者の死亡と無関係の第三者が死者から財物を領得したという事案において、犯人の致死行為と第三者の領得行為を全体として一体のものとして評価することはできないから窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまることを示している。
甲は、見知らぬ乙と丙のけんかを見ていただけであって、乙の丙殺害には関与しておらず、乙の致死行為と甲の領得行為は全体として一体のものとして評価することはできない。
したがって、甲には窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪が成立するにとどまる。


(H26 共通 第2問 3)
民家で火災が発生し、消火活動に参加した者が、一人暮らしだった住人の焼死体に付いていた金のネックレスを発見して自分のものにしようと考え、これを取り外して持ち去った行為には、窃盗罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判大13.3.28)は、被害者の死亡と無関係の第三者が死者から財物を領得したという事案において、犯人の致死行為と第三者の領得行為を全体として一体のものとして評価することはできないから窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまることを示している。
住人の生前の占有は、消火活動に参加した者との関係では保護されず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまる。


(R4 司法 第18問 ①)
死者が生前身に付けていた財物を領得した場合について、甲がAを殺害した直後、その殺害行為とは無関係の乙が、Aが身に付けていた財布を領得したときは、甲に遺失物横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大13.3.28)は、被害者の死亡と無関係の第三者が死者から財物を領得したという事案において、犯人の致死行為と第三者の領得行為を全体として一体のものとして評価することはできないから窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまることを示している。
乙は、甲のA殺害には関与しておらず、甲の致死行為と乙の領得行為は全体として一体のものとして評価することはできない。
したがって、甲には窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪が成立するにとどまる。

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情報の財物性 東京地判昭和59年6月28日

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概要
情報そのものは「財物」(235条)と認められない。
判例
事案:製薬の研究資料が編綴されたファイル1冊を窃取したという事案において、情報が「財物」に当たるかが問題となった。

判旨:「情報ないし思想、観念等(以下『情報』という。)の化体(記載・入力等。以下同様)された用紙などの媒体(以下『媒体』という。)が刑法235条にいう財物に該当するか否かを判断するに当たって、弁護人主張のように情報と媒体を分離して判定するのは相当でない。けだし、媒体を離れた情報は客観性、存続性に劣り、情報の内容が高度・複雑であればあるほど、その価値は減弱している。媒体に化体されていてこそ情報は、管理可能であり、本来の価値を有しているといって過言ではない。情報の化体された媒体の財物性は、情報の切り離された媒体の素材だけについてではなく、情報と媒体が合体したものの全体について判断すべきであり、ただその財物としての価値は、主として媒体に化体された情報の価値に負うものということができる。そして、この価値は情報が権利者(正当に管理・利用できる者を含む。以下同様)において独占的・排他的に利用されることによって維持されることが多い。また、権利者において複製を許諾することにより、一層の価値を生み出すことも可能である。情報の化体された媒体は、こうした価値も内蔵しているものといえる。以上のことは、判示窃盗にかかる本件ファイルについても同様であって、本件ファイルは、判示医薬品に関する情報が媒体に化体され、これが編綴されたものとして、財物としての評価を受けるものといわなければならない。
 …不法領得の意思の有無について検討する。まず、本件ファイルの財物としての価値は、前示のように情報が化体されているところにあるとともに、権利者以外の者の利用が排除されていることにより維持されているのであるから、複写という方法によりこの情報を他の媒体に転記・化体して、この媒体を手許に残すことは、原媒体ともいうべき本件ファイルそのものを窃かに権利者と共有し、ひいては自己の所有物とするのと同様の効果を挙げることができる。これは正に権利者でなければ許容されないことである。しかも、本件ファイルが権利者に返還されるとしても、同様のものが他に存在することにより、権利者の独占的・排他的利用は阻害され、本件ファイルの財物としての価値は大きく減耗するといわなければならない。
 …『窃盗罪の成立に必要な不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の財物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用又は処分する意思をいい、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としない』と解するのを相当とするところ、本件窃盗は、判示にもあるように、本件ファイルを複写して、これに化体された情報を自らのものとし、前示のような効果を狙う意図と目的のために持ち出したものであるから、これは正に被告人らにおいて、権利者を排除し、本件ファイルを自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用又は処分する意思であったと認められるのが相当である。
 そして、こうした意思で本件ファイルを持ち出すことは、たとえ複写後すみやかに返還し、その間の権利者の利用を妨げない意思であり、かつ物理的損耗を何ら伴わないものであっても、…不法領得の意思があったものと認めざるを得ない。」
過去問・解説

(H19 司法 第17問 オ)
自己が勤務する会社のパソコンのハードディスクに記録されていたデータを自分の趣味に利用しようとし、会社内で、自己の所有するフロッピーディスクに同データをコピーした行為に窃盗罪が成立するか。

(正答)

(解説)
裁判例(東京地判昭59.6.28)は、薬剤の情報の記載されたファイルが窃取された事案において、「媒体を離れた情報は客観性、存続性に劣り、情報の内容が高度・複雑であればあるほど、その価値は減弱している。媒体に化体されていてこそ情報は、管理可能であり、本来の価値を有しているといって過言ではない。情報の化体された媒体の財物性は、情報の切り離された媒体の素材だけについてではなく、情報と媒体が合体したものの全体について判断すべき…。」として、情報そのものを財物と認めていない。
したがって、会社内でデータをコピーしたに過ぎず、フロッピーディスクも自己所有である場合、コピー行為に窃盗罪は成立しない。

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死者の財物に対する窃盗罪 最二小判昭和41年4月8日

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概要
野外において人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後その現場で、被害者が身につけていた腕時計を奪取する行為は、窃盗罪を構成する。
判例
事案: 人を殺害した後被害者が身につけていた財物を奪取した事案において、窃盗罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかったが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのであって、このような場合には、被害者が生前有していた財物の所持はその死亡直後においてもなお継続して保護するのが法の目的にかなうものというべきである。そうすると、被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して右財物を奪取した一連の被告人の行為は,これを全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものというべきであるから、右奪取行為は、占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成するものと解するのが相当である…。」
過去問・解説

(H22 司法 第18問 エ)
甲が、乙を殺害した後に初めて財物奪取の意思を生じ、乙が身に付けていた腕時計をその場で奪った場合、強盗殺人既遂罪(刑法第240条後段)が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭41.4.8)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかったが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのであって、このような場合には、…占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成する…。」としている。
甲は、乙を殺害した自己の行為を利用して腕時計を奪取したといえ、全体的に考察して乙の占有を侵害したといえる。
したがって、甲に強盗殺人罪ではなく、殺人罪及び窃盗罪が成立する。


(H25 司法 第4問 ア)
甲は、夜道を歩いていた際、乙が路上で倒れて急死したのを目撃し、乙が死亡しているのを認識した上で、乙の上着ポケットに入っていた財布を自分のものにしようと考え、これを取り出して自分のかばんにしまった。甲に窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭41.4.8)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかったが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのであって、このような場合には、…占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成する…。」としている。
甲は、乙が路上で倒れて急死したのを目撃したのみで、乙を殺害しておらず、全体的に考察して、乙の財布に対する占有を侵害したとはいえない。
したがって、甲に占有離脱物横領が成立する。


(H27 共通 第20問 オ)
乙は、甲に一緒に自首をしようと持ち掛けた。甲は、これを聞いて激高し、乙を窒息死させようと考え、その首を絞めたところ、乙は首を絞められたことによるショックで心不全になり死亡した。甲は、乙の死亡から約30分後、死亡して横たわっている乙の指に時価20万円相当の乙の指輪がはめてあることに気が付き、同指輪を奪って逃走した。甲が乙の指輪を奪った行為については、その時点で乙は既に死んでいるから、甲には、窃盗罪ではなく、占有離脱物横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭41.4.8)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかったが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのであって、このような場合には、…占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成する…。」としている。
甲は、乙を絞殺した自己の行為を利用して、時価20万円相当の乙の指輪を奪取したといえ、全体的に考察して乙の占有を侵害したといえる。
したがって、甲に殺人罪及び窃盗罪が成立する。


(R4 司法 第18問 ③)
丁がCを殺害し、その直後に財物を領得する意図を生じてCが身に付けていた財布を領得したときは、丁に殺人及び窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭41.4.8)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかったが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのであって、このような場合には、…占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成する…。」としている。
丁は、Cを殺害した自己の行為を利用してCが身に付けていた財布を奪取したといえ、全体的に考察しCの占有を侵害したといえる。
したがって、丁に殺人罪及び窃盗罪が成立する。


(R6 司法 第20問 ア)
【事 例】
保険会社の従業員である甲は、顧客Aが独りで住んでいる一戸建て家屋に多額の現金が保管されていることを知り、Aを殺害した上で同現金を手に入れようと計画した。甲は、その計画に従い、某月1日午後4時頃、Aを戸外に連れ出し、麻酔薬を吸引させて気絶させた上、自動車の後部座席にAを押し込み、同車を運転してAを山奥まで運んだ。さらに、甲は、同日午後6時頃、気絶していたAを車外に引っ張り出した上、自殺に見せ掛けるため、大木の枝に縛り付けた縄でAの頸部をくくり、そのままAをつり下げて窒息死させた。甲は、Aが持っていたA方の鍵を入手した上で、その場にAの死体を放置して上記自動車を運転してA方に向かった。甲は、同日午後8時50分頃、上記鍵を使用してA方内に立ち入り、同所に保管されていた現金500万円を自己のかばんに入れて上記計画を完遂した。
甲は、A方を燃やして犯行を隠蔽しようと考え、同日午後9時頃、A方居室の畳に火を放ってA方を出た。その直後、付近住民が異変に気付いてA方内に立ち入り、上記畳を取り外して屋外に投げ捨てたため、同畳以外は焼損しなかった。
甲は、同月5日、逮捕され、その後の弁解録取手続において、自暴自棄になり、警察官Bが甲の弁解を記載した弁解録取書を手で破り捨てた。
Aには死亡事故を起こしたことによる前科があり、乙は、かつてAから同前科があることを聞いていた。乙は、Aが死亡したことを知り、同月7日、インターネットの掲示板に「Aは、事故を起こして人を死なせた前科がある。」と書き込み、インターネットを利用する不特定多数の者が閲覧可能な状態にした。

以下の記述は正しいか。

【記 述】
甲がAを殺害してA方で現金500万円を手に入れた行為について、甲の計画を踏まえて甲の行為を全体的に考察すれば、生前のAの財物に対する占有を侵害しているから、甲に殺人罪及び窃盗罪が成立し、強盗殺人罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭41.4.8)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかったが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのであって、このような場合には、…占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成する…。」としている。
甲は、Aを殺害した上で同現金を手に入れようと計画していたのであり、殺害行為を財物奪取の手段として利用する意思があったと評価できる。
したがって、甲に窃盗罪は成立せず、強盗殺人罪が成立する。

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共同占有者の占有奪取 最三小判昭和25年6月6日

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概要
他人と共同している物を、共同占有者の占有を奪つて自己の単独の占有に移したときは、横領罪ではなく窃盗罪が成立する。
判例
事案:他人と共同している物を、共同占有者の占有を奪って自己の単独の占有に移したという事案において、他人の占有が認められるかが問題となった。

判旨:「共同占有の場合、共同占有者の占有を奪って自己単独の占有に移す行為は窃盗を以て目すべきこと大審院以来判例の認める処で其解釈は正当である。」
過去問・解説

(R2 共通 第2問 2)
甲は、乙と共に一定の目的で積み立てていた現金を1個の金庫の中に入れて共同保管していたところ、乙に無断でその現金全てを抜き取り、自己の遊興費に費消した。この場合、甲には、横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.6.6)は、「共同占有の場合、共同占有者の占有を奪って自己単独の占有に移す行為は窃盗を以て目すべき…。」としている。
甲は、甲乙で共同保管していた現金を乙に無断で全て抜き取り自己の占有に移しているから、甲には、横領罪ではなく、窃盗罪が成立する。

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窃盗罪における所持 最一小決昭和32年1月24日

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概要
海中に取り落した物件については、これを引き揚げようとする者が、その落下場所の大体の位置を指示し、その引揚方を人に依頼した結果、その人が当該物件をその附近で発見したときは、依頼者が発見された事実を知らなくても、依頼者はその物件に対し、所持すなわち事実上の支配管理を有する。
判例
事案:海中から物品の引き上げを依頼された者が当該物品を窃取した事案において、海中に取り落した物件について、引き上げを依頼した者に、所持が認められるかが問題となった。

判旨:「海中に取り落した物件については、落主の意に基づきこれを引揚げようとする者が、その落下場所の大体の位置を指示し、その引揚方を人に依頼した結果、該物件がその附近で発見されたときは、依頼者は、その物件に対し管理支配意思と支配可能な状態とを有するものといえるから、依頼者は、その物件の現実の握持なく、現物を見ておらず且つその物件を監視していなくとも、所持すなわち事実上の支配管理を有するものと解すべき…。」
過去問・解説

(H30 共通 第8問 エ)
甲は、乙から、乙が海中に落とした腕時計の引き揚げを依頼され、その腕時計が落ちた場所の大体の位置を指示された。甲が、乙から指示された海中付近を探索した結果、同腕時計を発見したが、それを乙に知らせることなく、同腕時計を引き揚げて自己のものとした場合、窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭32.1.24)は、本肢と同種の事案において、「落主の意に基づきこれを引揚げようとする者が、その落下場所の大体の位置を指示し、その引揚方を人に依頼した結果、該物件がその附近で発見されたときは、依頼者は、その物件に対し管理支配意思と支配可能な状態とを有するものといえるから、依頼者は、その物件の現実の握持なく、現物を見ておらず且つその物件を監視していなくとも、所持すなわち事実上の支配管理を有する…。」としている。
したがって、落とし主乙が腕時計に対する事実上の支配管理を有するといえるから、それを自己のものとした甲には窃盗罪が成立する。


(R5 司法 第4問 2)
甲は、Vが海中に取り落としたV所有の金塊について、Vからおおよその落下場所を教えてもらった上で回収を依頼され、Vの眼前で同所に潜り、同金塊を同所付近で発見したものの、これを自己のものにしようと考えて無断で持ち去った。甲に窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭32.1.24)は、本肢と同種の事案において、「落主の意に基づきこれを引揚げようとする者が、その落下場所の大体の位置を指示し、その引揚方を人に依頼した結果、該物件がその附近で発見されたときは、依頼者は、その物件に対し管理支配意思と支配可能な状態とを有するものといえるから、依頼者は、その物件の現実の握持なく、現物を見ておらず且つその物件を監視していなくとも、所持すなわち事実上の支配管理を有する…。」としている。
したがって、落とし主Vが金塊に対する事実上の支配管理を有するといえるから、それを持ち去った甲には窃盗罪が成立する。

該当する過去問がありません

窃盗犯の占有 東京高判昭和29年5月24日

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概要
窃盗罪の法益たる所持(占有)は物に対する事実上の支配であって、その物に対する事実上の支配関係が認められる限りその支配が適法と否とに拘らず窃盗罪の保護法益となるものと解せられるのであるから、右のように窃盗犯人から更に賍物を窃取した場合においても窃盗罪が成立する。
判例
事案:第三者が窃取した自転車をその第三者から更に窃取したという事案において、窃盗罪の成否が問題となった。

判旨:「被害者が甲所有の自転車を窃取した犯人であったとしても、窃盗罪の法益たる所持(占有)は物に対する事実上の支配であって、その物に対する事実上の支配関係が認められる限りその支配が適法と否とに拘らず窃盗罪の保護法益となるものと解せられるのであるから、右のように窃盗犯人から更に賍物を窃取した場合においても窃盗罪が成立するものと解するのが相当である。」
過去問・解説

(R5 司法 第4問 4)
甲は、Ⅴが乙から窃取した乙所有の腕時計を、これが盗品であることを知りながら自己のものにしようと考えて、Ⅴ宅に忍び込んで無断で持ち去った。甲に窃盗罪が成立するか。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭29.5.24)は、賍物を窃盗犯人から窃取した事案において、「窃盗犯人から更に賍物を窃取した場合においても窃盗罪が成立する…。」としている。
したがって、Vが乙から窃取したものであったとしても、Vの占有それ自体が保護法益として認められるため、それを持ち去った甲には窃盗罪が成立する。

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封緘物の占有 大判大正2年3月17日

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概要
容器若しくは包装の占有者が開封してその内容物を自己の占有に移す行為に窃盗罪が成立する。
判例
事案:容器若しくは包装の占有者が開封してその内容物を自己の占有に移した事案において、窃盗罪の成否が問題になった。

判旨:「鎖鑰ヲ施セル容器内若クハ封緘ヲ為セル包裏内ニ存在セル他人ノ物ハ容器若クハ包裏ノ占有者カ自由ニ支配シ得ル状態ニ在ラサルヲ以テ其占有ハ依然所有者ニ存スルモノト謂ハサルヘカラス故ニ容器若クハ包裏ノ占有者カ鎖鑰又ハ封緘ヲ開披シ其内容物ヲ自己ノ占有ニ移スニ於テハ窃盗罪成立スルモノトス」
過去問・解説

(H24 共通 第1問 4)
甲に窃盗罪が成立するか。
甲は、乙から封かんされた現金10万円入りの封筒を渡されて丙に届けるように依頼され、丙方に向かって歩き始めたが、途中で封筒内の現金が欲しくなり、封を開いて封筒に入っていた現金のうち2万円を取り出してこれを自分のものにした後、残りの現金が入った封筒を丙に交付した。

(正答)

(解説)
判例(大判大2.3.17)は、「包裏ノ占有者カ鎖鑰又ハ封緘ヲ開披シ其内容物ヲ自己ノ占有ニ移スニ於テハ窃盗罪成立スルモノトス」として、封緘物の占有者が中身のみを自己の占有に移した場合、窃盗罪が成立することを示している。
そうすると、封かんされた現金10万円入りの封筒全体の占有は委託された甲にあるが、内容物の現金は委託者乙に占有があり、甲が封かんされた封筒内から現金2万円を抜き出して自分のものにする行為は窃盗罪の実行行為に当たる。
したがって、甲に窃盗罪が成立する。

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逃げ出した鯉 最三小決昭和56年2月20日

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概要
広大な水面に逃げ出した鯉は、飼養主においてこれを回収することは事実上極めて困難な場合が多いと考えられるが、そのことのゆえに右鯉が直ちに遺失物横領罪の客体となり得ないと解すべきものではなく、右鯉を他人が飼養していたものであることを知りながらほしいままに領得した場合、遺失物横領罪が成立する。
判例
事案:他人が飼養していたものであることを知りながら、養殖業者の網生けすから広大な湖沼に逃げ出した鯉を領得したという事案において、窃盗罪と横領罪のいずれが成立するかが問題となった。

判旨:「被告人甲は、秋田県a湖のb承水路において雑建網漁業に従事するものであるところ、同承水路に設置されていた鯉の養殖業者の網生けすから逃げ出し付近に設置されていた被告人甲の雑建網の中にその日のうちに入り込んだ錦鯉及び緋鯉約60キログラム(1尾の重さ約1キログラム程度)を、付近の養殖業者の網生けすから逃失した鯉であることを知りながら捕獲して被告人乙に売り渡した、というのである。ところで、a湖のような広大な水面に逃げ出した鯉は、飼養主においてこれを回収することは事実上極めて困難な場合が多いと考えられるが、そのことのゆえに右鯉が直ちに遺失物横領罪の客体となり得ないと解すべきものではなく、被告人甲において右鯉を他人が飼養していたものであることを知りながらほしいままに領得した以上、同被告人について遺失物横領罪が成立するのは当然であり、これと同旨の原判断は相当である。」
過去問・解説

(H25 司法 第4問 ウ)
甲は、自然湖であるA湖内で、同湖の一部を区切って錦鯉を養殖している乙のいけすから逃げ出した錦鯉20匹を発見し、乙が養殖していた錦鯉であると認識しながら、これを自分のものにするため捕獲し、第三者に売却した。甲に窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭56.2.20)は、本肢と同種の事案において、「広大な水面に逃げ出した鯉は、飼養主においてこれを回収することは事実上極めて困難な場合が多いと考えられるが、そのことのゆえに右鯉が直ちに遺失物横領罪の客体となり得ないと解すべきものではなく、被告人甲において右鯉を他人が飼養していたものであることを知りながらほしいままに領得した以上、同被告人について遺失物横領罪が成立する…。」としている。
甲は、乙が養殖していた錦鯉であると認識しながら捕獲し、第三者に売却しているから、甲に遺失物横領罪が成立する。


(H30 共通 第8問 ア)
甲が、自然湖の一部に設けられた乙のいけすから逃げ出した乙所有の錦鯉30匹を、同湖内の同いけすから離れた場所で発見し、乙が所有する錦鯉であると認識しながら、これらを自己のものにしようと考えて捕獲した場合、窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭56.2.20)は、本肢と同種の事案において、「広大な水面に逃げ出した鯉は、飼養主においてこれを回収することは事実上極めて困難な場合が多いと考えられるが、そのことのゆえに右鯉が直ちに遺失物横領罪の客体となり得ないと解すべきものではなく、被告人甲において右鯉を他人が飼養していたものであることを知りながらほしいままに領得した以上、同被告人について遺失物横領罪が成立する…。」としている。
甲は、乙が養殖していた錦鯉であると認識しながら自己のものにしようと考えて捕獲しているから、甲に遺失物横領罪が成立する。

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窃盗罪の成否(郵便物) 大判明治45年4月26日

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概要
郵便集配人は配達中に係る郵便物自体については事実上の支配があるものと認められるが、郵便物の中身は依然他人の占有に存するとして、その中身を奪取する行為は横領罪ではなく窃盗罪が成立する。
判例
事案:郵便集配人が、その配達中に係る郵便物の中身を窃取した事案において、横領罪又は窃盗罪のいずれが成立するかが問題となった。

判旨:「郵便集配人ハ其配達中ニ係ル郵便物自体ニ付テハ事実上ノ支配アルヘキモ封入ノ物件ハ依然他人ノ占有内ニ存スルモノナルヲ以テ其物件ヲ奪取シタル所為ハ横領罪ニ非スシテ窃盗罪ヲ構成スヘキモノトス」
過去問・解説

(H25 司法 第4問 エ)
甲は、乙から鍵の掛かった乙の手提げ金庫を預かって保管していたが、同金庫の在中物を自分のものにしようと考え、同金庫を破壊し、中に入っていた乙の宝石を取り出し、第三者に売却した。甲に窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判明45.4.26)は、郵便集配人が、その配達中に係る郵便物の中身を奪取した事案において、「郵便集配人ハ其配達中ニ係ル郵便物自体ニ付テハ事実上ノ支配アルヘキモ封入ノ物件ハ依然他人ノ占有内ニ存スルモノナルヲ以テ其物件ヲ奪取シタル所為ハ横領罪ニ非スシテ窃盗罪ヲ構成スヘキモノトス」として、郵便物の中身の奪取は横領罪ではなく窃盗罪を構成することを示している。
したがって、中に入っていた乙の宝石は乙の占有下にあったといえ、これを取り出し売却した甲の行為には、窃盗罪が成立する。


(H30 共通 第8問 ウ)
甲が、乙から封かんされた現金20万円入りの封筒を渡されてそれを丙に届けるように依頼されたが、丙方に向かう途中で封筒内の現金が欲しくなり、封を開いて封筒に入っていた現金のうち5万円を取り出してこれを自己のものとし、残りの現金が入った封筒を丙に交付した場合、取り出した5万円について窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判明45.4.26)は、郵便集配人が、その配達中に係る郵便物の中身を奪取した事案において、「郵便集配人ハ其配達中ニ係ル郵便物自体ニ付テハ事実上ノ支配アルヘキモ封入ノ物件ハ依然他人ノ占有内ニ存スルモノナルヲ以テ其物件ヲ奪取シタル所為ハ横領罪ニ非スシテ窃盗罪ヲ構成スヘキモノトス」として、郵便物の中身の奪取は横領罪ではなく窃盗罪を構成することを示している。
そうすると、封かんされた現金20万円入りの封筒全体の占有は委託された甲にあるが、内容物の現金は委託者乙に占有があり、甲が封かんされた封筒内から現金5万円を抜き出して自己のものとし、残りの現金が入った封筒を丙に交付する行為は窃盗罪の実行行為に当たる。
したがって、甲に窃盗罪が成立する。

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窃盗罪及び業務上横領罪の成否 大判大正7年2月6日

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概要
従業員が雇い主の居宅において雇い主の物品を販売する場合、その物品は雇い主の占有に属し、従業員の占有に属するものではないから、従業員が雇い主の占有を犯すときは横領罪ではなく、窃盗罪が成立する。
判例
事案:店員が商店主の指示に基づき、単に商品の管理を機械的に補助・監視していた場合において、店員が商品を領得したという事案において、商品の占有が誰に帰属しているかが問題となった。

判旨:「雇人カ雇主ノ居宅ニ於テ雇主ノ物品ヲ販売スル場合ニ於テハ其物品ハ雇主ノ占有ニ属シ雇人ノ占有ニ属スルモノニ非ス従テ雇人カ雇主ノ右占有ヲ侵ストキハ窃盗罪ヲ成立シ横領罪ヲ以テ論スヘキモノニ非ス」
過去問・解説

(H24 共通 第1問 1)
甲の罪責について判例の立場に従って検討した場合、甲に窃盗罪が成立するか。
甲は、コンビニエンスストアでレジ係のアルバイトをしていたが、店長の乙が短時間外出していた間に、商品棚からたばこ1カートンを取り出して自分のバッグに入れ、アルバイト終了後店外へ持ち出し、これを自分のものにした。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.2.6)は、「雇人カ雇主ノ居宅ニ於テ雇主ノ物品ヲ販売スル場合ニ於テハ其物品ハ雇主ノ占有ニ属シ雇人ノ占有ニ属スルモノニ非ス従テ雇人カ雇主ノ右占有ヲ侵ストキハ窃盗罪ヲ成立シ横領罪ヲ以テ論スヘキモノニ非ス」として、店で販売している商品の占有は雇い主の占有に属することを示している。
店長である乙は短時間の外出をしていたにとどまるから、たばこの占有は乙に認められ、甲に窃盗罪が成立する。


(R3 予備 第8問 2)
スーパーマーケットでレジ係のアルバイトをしていた者が、担当するレジ内の売上金を自己の遊興費として費消するため、店長に無断で、同レジ内から売上金を取り出し、自己のバッグに入れて店外に持ち出した場合、当該行為は、他人の占有ではなく、その所有権を侵害する行為であるから、業務上横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大7.2.6)は、「雇人カ雇主ノ居宅ニ於テ雇主ノ物品ヲ販売スル場合ニ於テハ其物品ハ雇主ノ占有ニ属シ雇人ノ占有ニ属スルモノニ非ス従テ雇人カ雇主ノ右占有ヲ侵ストキハ窃盗罪ヲ成立シ横領罪ヲ以テ論スヘキモノニ非ス」として、店で販売している商品の占有は雇い主の占有に属することを示している。
したがって、店長にレジ内の売上金の占有が認められることになるから、甲には業務上横領罪ではなく窃盗罪が成立する。

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窃盗罪の実行の着手時期 大判大正8年4月4日

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概要
被告が領得した物件は所有者甲の事実上の支配を離脱したが甲が宿泊する旅館主乙の事実上の支配が及ぶ当該旅館屋内の便所にあり、乙がこのことを知っているか問わず当然乙の支配内に属するものとして、窃盗罪の成立を認めた。
判例
事案:旅館内に置き忘れられた財物を窃取したという事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「被告ノ領得シタル物件ハ所有者甲ノ事実上ノ支配ヲ離脱シタルモ甲ノ宿泊セル旅館主乙ノ事実上ノ支配ノ及フ該旅館屋内ノ便所ニ現在セルモノナルトキハ乙カ右事実ヲ認知セルト否トヲ問ハス当然乙ノ支配内ニ属スルヲ以テ遺失物ヲ以テ論スルヲ得ス」
過去問・解説

(H24 共通 第1問 2)
甲に窃盗罪が成立するか。
甲は、旅館に宿泊した際、旅館内にある共同浴場の脱衣場で、他の宿泊客が置き忘れた時計を見付けたので、脱衣場から持ち出し、これを自分のものにした。

(正答)

(解説)
判例(大判大8.4.4)は、本肢と同種の事案において、「被告ノ領得シタル物件ハ所有者甲ノ事実上ノ支配ヲ離脱シタルモ甲ノ宿泊セル旅館主乙ノ事実上ノ支配ノ及フ該旅館屋内ノ便所ニ現在セルモノナルトキハ乙カ右事実ヲ認知セルト否トヲ問ハス当然乙ノ支配内ニ属スルヲ以テ遺失物ヲ以テ論スルヲ得ス」として、客が旅館に置き忘れた物品の占有は旅館主にあることを示している。
他の宿泊客が旅館内にある共同浴場の脱衣場で時計を置き忘れていたとしても、当該時計には旅館主の占有が認められ、遺失物には当たらず、これを脱衣場から持ち出すことは窃盗罪の実行行為に当たる。
したがって、甲には窃盗罪が成立する。

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窃盗罪の実行の着手時期 大判大正13年3月28日

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概要
被害者の死亡と無関係の第三者が死者から財物を領得するという事案について、犯人の致死行為と第三者の領得行為を全体として一体のものとして評価することはできないから窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまる。
判例
事案:関東大震災による火災で死亡した焼死体から現金を領得したという事案において、死者の占有が認められるかが問題となった。

要旨:犯人の致死行為と第三者の領得行為を全体として一体のものとして評価することはできないから窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまる
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説

(H24 共通 第1問 3)
甲は、深夜、路上を歩いていたところ、見知らぬ乙と丙が殴り合いのけんかをしていたので、これを見ていると、乙がナイフを取り出して丙を刺し殺した。甲は、乙が走り去った直後、死亡した丙の上着のポケット内に入っていた現金入りの財布を持ち去り、これを自分のものにした。この場合、甲に窃盗罪が成立するか。

(正答)

(解説)
判例(大判大13.3.28)は、被害者の死亡と無関係の第三者が死者から財物を領得したという事案において、犯人の致死行為と第三者の領得行為を全体として一体のものとして評価することはできないから窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまることを判断している。
甲は、見知らぬ乙と丙のけんかを見ていただけであって、乙の丙殺害には関与しておらず、乙の致死行為と甲の領得行為は全体として一体のものとして評価することはできない。
したがって、甲には窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪が成立するにとどまる。

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窃盗罪の成否(宿泊客と丹前) 最一小決昭和31年1月19日

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概要
旅館の宿泊客が、普通に旅舘が旅客に提供するその所有の丹前、浴衣を着、帯をしめ、下駄を履いたままの状態で外出しても、その丹前等の占有は所有者である旅舘に存する。
判例
事案:宿泊客が旅館の丹前等を着用したまま立ち去ったという事案において、窃盗罪の成否が問題となった。

判旨:「本件のように被告人が旅舘に宿泊し、普通に旅舘が旅客に提供するその所有の丹前、浴衣を着、帯をしめ、下駄をはいたままの状態で外出しても、その丹前等の所持は所有者である旅舘に存するものと解するを相当とする…。」
過去問・解説

(H26 共通 第2問 1)
宿泊客が、旅館の貸与した浴衣を自分のものにしようと考え、これを着用したまま、玄関にいた支配人に「ちょっと向かいのポストまで手紙を出してくる。」と告げ、支配人に「いってらっしゃいませ。」と言われて旅館を立ち去った行為には、窃盗罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭31.1.19)は、本肢と同種の事案において、「被告人が旅舘に宿泊し、普通に旅舘が旅客に提供するその所有の丹前、浴衣を着、帯をしめ、下駄をはいたままの状態で外出しても、その丹前等の所持は所有者である旅舘に存する…。」として、窃盗罪の成立を認めている。
したがって、宿泊客が、浴衣を自分のものにしようと考え、これを着用したまま旅館を立ち去った行為に窃盗罪が成立する。

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窃盗罪の成否(善意の第三者が売却搬出) 最三小判昭和31年7月3日

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概要
他人の所有管理にかかる物件につき、管理処分権なき者が、不法領得の意思をもってあたかも自己の所有物の如く装いこれを善意の第三者に売却搬出させた行為は、窃盗罪の間接正犯を構成する。
判例
事案:他人の管理する物を鉄くずとして善意の第三者である業者に買い取らせ、搬出させた事案において、窃盗罪の間接正犯の成否が問題となった。

判旨:「本件ドラグライン1基につき、何等管理処分権なき被告人が他人と売買契約を締結しても、ただそれだけの事実に止まるならば、所論の如く、被告人に窃盗罪の成立を認めることはできないけれども、…情を知らないAに、自己に処分権がある如く装い、屑鉄として、解体運搬費等を差引いた価額、即ち、買主において解体の上これを引き取る約定で売却し、その翌日頃右Aは情を知らない古鉄回収業Bに右物件を前同様古鉄として売却し、同人において、その翌日頃から数日を要して、ガス切断等の方法により、解体の上順次搬出したものであることが明らかであるから、右解体搬出された物件につき被告人は窃盗罪の刑事責任を免れることはできない…。」
過去問・解説

(H21 司法 第4問 2)
甲は、乙所有の材木を自己の所有物であると偽って情を知らない丙に売却し、丙は、乙の材木置場から当該材木を搬出した。この場合、情を知らないことにつき丙に過失があったとしても、甲は窃盗罪の正犯となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.7.3)は、本肢と同種の事案において、「解体搬出された物件につき被告人は窃盗罪の刑事責任を免れることはできない…。」として、窃盗罪の成立を認めている。
甲は、乙所有の材木を自己の所有物であると偽って、事情を知らない丙に売却し、丙を道具として利用し、丙をして、乙の材木置場から当該材木を搬出させている。
そして、丙に、情を知らないことにつき過失があったとしても間接正犯は成立しうる。
したがって、甲には、窃盗罪の間接正犯が成立する。


(H28 共通 第17問 5)
甲は、乙所有の建材を自己の所有物であると偽って、事情を知らない丙に売却し、丙をして、乙の建材置場から当該建材を搬出させた。窃盗罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.7.3)は、本肢と同種の事案において、「解体搬出された物件につき被告人は窃盗罪の刑事責任を免れることはできない…。」として、窃盗罪の成立を認めている。
甲は、乙所有の建材を自己の所有物であると偽って、事情を知らない丙に売却し、丙を道具として利用し、丙をして、乙の建材置場から当該建材を搬出させている。
したがって、甲には、窃盗罪の間接正犯が成立する。


(R2 共通 第1問 5)
甲は、Xが管理する工事現場に保管されている同人所有の機械を、同人に成り済まして、甲をXであると誤信した中古機械買取業者Yに売却し、同人に同機械を同所から搬出させた。この場合、甲に、Xに対する窃盗罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.7.3)は、本肢と同種の事案において、「解体搬出された物件につき被告人は窃盗罪の刑事責任を免れることはできない…。」として、窃盗罪の成立を認めている。
甲は、X所有の機械をXに成りすますことで、自己の所有物であると偽って、甲をXであると誤信したYに売却し、Yを道具として利用し、Yをして、Xの管理する工事現場から当該機械を搬出させている。
したがって、甲には、窃盗罪の間接正犯が成立する。

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窃盗罪の成否(キャリーバック内の荷物) 最一小決昭和32年4月25日

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概要
被告人が他人からその所有の衣類在中の縄掛け梱包した行李1個を預り保管していたような場合は、所有者たる他人は行李在中の衣類に対しその所持を失うものでないから、被告人が他から金借する質種に供する目的で擅に梱包を解き右行李から衣類を取り出したときは、衣類の窃盗罪を構成し横領罪を構成しない。
判例
事案:他人からその所有の衣類在中の縄掛け梱包した行李を預かり保管中質種に供する目的で梱包を解き行李から衣類を取り出したという事案において、窃盗罪と横領罪のいずれが成立するかが問題となった。

判旨:「本件のごとく被告人が他人からその所有の衣類在中の縄掛け梱包した行李1個を預り保管していたような場合は、所有者たる他人は行李在中の衣類に対しその所持を失うものでないから、被告人が他から金借する質種に供する目的で擅に梱包を解き右行李から衣類を取出したときは、衣類の窃盗罪を構成し横領罪を構成しない。」
過去問・解説

(H26 共通 第2問 4)
施錠された友人所有のキャリーバッグを同人から預かり保管していた者が、在中する衣類を自分のものにしようと考え、友人に無断でキャリーバッグの施錠を解き、同衣類を取り出した行為には、窃盗罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭32.4.25)は、本肢と同種の事案において、「所有者たる他人は行李在中の衣類に対しその所持を失うものでないから、被告人が他から金借する質種に供する目的で擅に梱包を解き右行李から衣類を取出したときは、衣類の窃盗罪を構成し横領罪を構成しない…。」として、内容物の奪取が窃盗罪を構成することを示している。
したがって、キャリーバッグについて、自分のものにしようと無断で施錠を解き、衣類を取り出した場合、友人の占有に属する内容物たる衣類を自己のもとへ占有を移転しているといえ、窃盗罪が成立する。


(R2 共通 第2問 1)
甲は、乙からの委託に基づき、同人所有の衣類が入った、施錠されていたスーツケース1個を預かり保管していたところ、衣類を古着屋に売却して自己の遊興費を得ようと考え、勝手に開錠し、中から衣類を取り出した。この場合、遅くとも衣類を取り出した時点で不法領得の意思の発現と認められる外部的行為があったといえるから、甲には、横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭32.4.25)は、本肢と同種の事案において、「所有者たる他人は行李在中の衣類に対しその所持を失うものでないから、被告人が他から金借する質種に供する目的で擅に梱包を解き右行李から衣類を取出したときは、衣類の窃盗罪を構成し横領罪を構成しない…。」として、内容物の奪取が窃盗罪を構成することを示している。
甲は、売却して自己の遊興費を得ようと無断でスーツケースの施錠を解き、衣類を取り出しているから、乙の占有に属する内容物たる衣類を自己のもとへ占有を移転しているといえ、甲に窃盗罪が成立する。

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窃盗罪の成否 最一小判昭和33年4月17日

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概要
市議会議員選挙に際し、特定の候補者に当選を得させるため、後日その候補者の氏名を記入して投票中に混入し投票数を増加する目的をもって、投票所管理者の保管する市選挙管理委員会所有の市議会議員選挙を投票用紙をひそかに持ち出したときは、不法領得の意思がないとはいえず、窃盗罪を構成する。
判例
事案:市議会議員選挙に際し、特定の候補者を当選させるため、後日その候補者の氏名を記入して投票中に混入し投票数を増加する目的をもって、投票所管理者の保管する市選挙管理委員会所有にかかる市議会議員選挙を投票用紙をひそかに持ち出したという事案において、不法領得の意思が認められるかが問題となった。

判旨:「投票用紙は所有権の客体となるものであるこというまでもないし、また、被告人甲、同乙の両名は、権利者を排除して徳島市選挙管理委員会所有の投票用紙を恰も自己の所有物のごとくこれを同用紙として利用する意思であったこと明らかであるから、同被告人等は、不法領得の意思なしというを得ない。」
過去問・解説

(H19 司法 第17問 ア)
市議会議員選挙に際し、特定の候補者を当選させるため、後日その候補者の氏名を記載して投票の中に混入し同候補者の得票数を増加させる目的をもって、投票所管理者の保管する市議会議員選挙の投票用紙を持ち出した行為に窃盗罪が成立するか。

(正答)

(解説)
判例(最判昭33.4.17)は、本肢と同種の事案において、「投票用紙は所有権の客体となるものであるこというまでもないし、また、被告人甲、同乙の両名は、権利者を排除して徳島市選挙管理委員会所有の投票用紙を恰も自己の所有物のごとくこれを同用紙として利用する意思であったこと明らかであるから、同被告人等は、不法領得の意思なしというを得ない。」として、不法領得の意思を認め、窃盗罪が成立するとしている。

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窃盗罪の成否(自動支払機) 東京高判昭和55年3月3日

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概要
他人のキャッシュカードを窃取することと、窃取したキャッシュカードを用いて銀行の現金自動預払機から預金を引き出す行為は別個の法益を侵害しそれぞれの行為に窃盗罪が成立し、両者は併合罪の関係になる。
判例
事案:他人のキャッシュカードを窃取した後、窃取したキャッシュカードを用いて銀行の現金自動預払機から預金を引き出した事案において、預金引き出し行為に新たに窃盗罪が成立するかが問題となった。

判旨:「被告人は、…各預金払戻用キャッシュカード(以下、『カード』という)を窃取した後、その被害者らが友人でカードの暗証番号を知っていたことから、ひそかに、…管理者の意に反して、原判示のとおりB銀行α支店設置の自動支払機カード入口に右窃取したカードをそれぞれ差し込み、同支払機の各暗証番号を押して現金を出させ、これを自己の支配下においたものであることが認められるから、被告人の欺罔により被害者の誤信による現金の交付があったものではなく、被告人が、カードを利用して、同支払機の管理者の意思に反し、同人不知の間に、その支配を排除して、同支払機の現金を自己の支配下に移したものであって、このように窃盗犯人が賍物たるカードを用いて第三者たる右管理者の管理する現金を窃取した場合には、賍物についての事実上の処分行為をしたにとどまる場合と異なり、…管理者に対する関係において、新たな法益侵害を伴うものであるから、カードの窃盗罪のほかに、カード利用による現金の窃盗罪が別個に成立するものというべきであり、右管理者の所属する銀行がカードの預金者に対し所論の免責を受けることがあるにしても、右認定を妨げるものではない。」
過去問・解説

(H27 共通 第20問 ウ)
借金の返済に苦しんでいた甲とその内縁の妻乙は、A市が発行した乙を被保険者とする国民健康保険被保険者証の氏名を乙から実在しない丙に改変し、丙になりすまして消費者金融会社から借入れをして現金を手に入れることを相談した。甲と相談したとおり、乙は、上記国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄に乙とあるのを丙と書き換えた。そして、乙は、消費者金融会社の無人借入手続コーナーにおいて、借入申込書に丙の氏名を記載し、丙と刻した印鑑を押捺するなどして丙名義の借入申込書1通を完成させた上、同申込書及び氏名を丙に改変した上記国民健康保険被保険者証の内容を、同コーナーに設置された機械を使用し、同機械に接続されている同社本店の端末機に送信し、同社の貸付手続担当者に対し、丙であるかのように装って100万円の借入れを申し込んだ。同担当者は、当該申込みをした者が真実丙であり、かつ、貸付金は約定のとおりに返済されるものと誤信し、同社の貸付システムに従って丙名義の借入カードを上記コーナーに設置された機械から発券した。乙は、その場で同カードを入手し、同カードを現金自動入出機に挿入して同機から現金100万円を引き出した。甲と乙には現金100万円について詐欺罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭55.3.3)は、窃盗犯人が賍物たるカードを用いて第三者たる右管理者の管理する現金を窃取した事案において、「賍物についての事実上の処分行為をしたにとどまる場合と異なり、第三者たる右管理者に対する関係において、新たな法益侵害を伴うものであるから、カードの窃盗罪のほかに、カード利用による現金の窃盗罪が別個に成立する…。」として、現金自動入出機のような機械を相手にする場合は欺罔行為といえず詐欺罪は成立しないことを示している。
したがって、乙が入手した丙名義のカードを用いて現金自動入出機から現金100万円を引き出している行為に、窃盗罪が成立する。

該当する過去問がありません

窃盗罪の成否(現金自動支払機) 東京高判平成6年9月12日

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概要
預金口座の名義人と銀行との関係は、前者に正当な払戻し権限がある場合であっても、債権債務関係が成立しているだけであって、銀行の現金自動支払機内の現金について預金口座の名義人が事実上これを管理するとか、所持するとか、占有するとかいう立場にはなく、右現金は、銀行(現実には、当該銀行の支店長)の管理ないしは占有に属する。
判例
事案:送金銀行の手違いで自己の普通預金口座に過剰入金された金員を自己のキャッシュカードを用いて現金自動支払機から引き出したという事案において、窃盗罪の成否が問題となった。

判旨:「もともと、預金口座の名義人と銀行との関係は、前者に正当な払戻し権限がある場合であっても、債権債務関係が成立しているだけであって、銀行の現金自動支払機内の現金について預金口座の名義人が事実上これを管理するとか、所持するとか、占有するとかいう立場にはなく、右現金は、銀行(現実には、当該銀行の支店長)の管理ないしは占有に属すると解するのが相当である。もっとも、横領罪との関係においては、預金口座の名義人に正当な払戻し権限がある場合に、預金債権に対する管理、占有ひいては銀行が事実上占有する金銭に対する預金額の限度での法律上の占有という観念を容れる余地がある。しかし、本件は、送金した銀行側の手違いにより、誤って被告人の預金口座に入金があったに過ぎず、被告人に右預金について正当な払戻し権限のない場合であるから(このことは、受入れ銀行の側に何らの過誤がない場合も同様である。)、自動支払機内の現金について、所論のいうように、被告人が管理者であるとか、被告人がこれを所持(支配)していたということのできないことはもとより、被告人が法律上の占有を取得することもないと解される。したがって、本件については、横領罪の成立する余地はなく、詐欺罪が問題とならないことも明らかであり、銀行の現金に対する占有を侵害したものとして、窃盗罪が成立するというべきである。そうすると、被告人がキャッシュカードで引き出した現金について、A銀行a支店長等の管理に属すると認めた上、窃盗罪の成立を認めた原判断は正当であり…。」
過去問・解説

(H26 共通 第2問 2)
送金銀行の手違いで、自己名義の預金口座に誤って入金されたことを知った者が、これを自分のものにしようと考え、同口座のキャッシュカードを用いて現金自動預払機から全額を引き出した行為には、窃盗罪は成立しない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判平6.9.12)は、本肢と同種の事案において、「預金口座の名義人と銀行との関係は、前者に正当な払戻し権限がある場合であっても、債権債務関係が成立しているだけであって、銀行の現金自動支払機内の現金について預金口座の名義人が事実上これを管理するとか、所持するとか、占有するとかいう立場にはなく、右現金は、銀行(現実には、当該銀行の支店長)の管理ないしは占有に属する…。」として、窃盗罪が成立することを示している。

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窃盗罪の成否(メダルの不正取得) 最二小判平成19年4月13日

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概要
専らメダルを不正取得する目的で体感器と称する電子機器を身体に装着し、パチスロ機で遊戯をして取得したメダルについては、同電子機器がパチスロ機に直接には不正の工作ないし影響を与えず、また、当該メダルが同電子機器の操作の結果取得されたものでなくとも、メダル管理者の意思に反してその占有を自己の占有に移したものとして窃盗罪が成立する。
判例
事案:専らメダルの不正取得を目的として体感器と称する電子機器を身体に装着してパチスロ機で遊戯したという事案において、窃盗罪の成否が問題となった。

判旨:「本件機器がパチスロ機に直接には不正の工作ないし影響を与えないものであるとしても、専らメダルの不正取得を目的として上記のような機能を有する本件機器を使用する意図のもと、これを身体に装着し不正取得の機会をうかがいながらパチスロ機で遊戯すること自体、通常の遊戯方法の範囲を逸脱するものであり、パチスロ機を設置している店舗がおよそそのような態様による遊戯を許容していないことは明らかである。そうすると、被告人が本件パチスロ機『甲』55番台で取得したメダルについては、それが本件機器の操作の結果取得されたものであるか否かを問わず、被害店舗のメダル管理者の意思に反してその占有を侵害し自己の占有に移したものというべきである。したがって、被告人の取得したメダル約1524枚につき窃盗罪の成立を認めた原判断は、正当である。」
過去問・解説

(H23 共通 第3問 4)
甲は、パチンコ店において、通常の方法によってパチンコ台で遊技しているように装って同店従業員乙の目を欺き、特殊な器具を使ってパチンコ台を誤作動させてパチンコ玉を排出させ、その占有を取得した。甲に、乙に対する詐欺罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平19.4.13)は、本肢と同種の事案において、「通常の遊戯方法の範囲を逸脱するものであり、パチスロ機を設置している店舗がおよそそのような態様による遊戯を許容していない…本件機器の操作の結果取得されたものであるか否かを問わず、被害店舗のメダル管理者の意思に反してその占有を侵害し自己の占有に移したものというべきである。」としている。
甲は、被害店舗が想定していない特殊な器具を使って誤作動させてパチンコ玉を排出させているから、被害店舗のメダル管理者の意思に反してその占有を侵害し自己の占有に移したといえる。
したがって、甲に窃盗罪が成立する。

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窃盗罪の成否(パチスロ機) 最一小決平成21年6月29日

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概要
Aがゴト行為により取得したメダルについて窃盗罪が成立し、被告人もその共同正犯であったということはできるものの、被告人が自ら取得したメダルについては、被害店舗が容認している通常の遊戯方法により取得したものであるから、窃盗罪が成立するとはいえない。
判例
事案:パチスロ店内で、パチスロ機から不正な方法によりメダルを窃取した者の共同正犯である者が、上記犯行を隠ぺいする目的をもって、その隣のパチスロ機において、自ら通常の方法により遊戯していたという事案において、この通常の遊戯方法により取得したメダルについて、窃盗罪の成否が問題となった。

判旨:「Aがゴト行為により取得したメダルについて窃盗罪が成立し、被告人もその共同正犯であったということはできるものの、被告人が自ら取得したメダルについては、被害店舗が容認している通常の遊戯方法により取得したものであるから、窃盗罪が成立するとはいえない。そうすると、被告人が通常の遊戯方法により取得したメダルとAがゴト行為により取得したメダルとが混在した前記ドル箱内のメダル414枚全体について窃盗罪が成立するとした原判決は、窃盗罪における占有侵害に関する法令の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したものであり、本件において窃盗罪が成立する範囲は、前記下皿内のメダル72枚のほか、前記ドル箱内のメダル414枚の一部にとどまるというべきである。」
過去問・解説

(H26 共通 第2問 5)
パチスロ機を誤作動させてメダルを窃取することを共謀した者が、実行者の犯行を隠ぺいするため、実行者の隣で通常の遊戯方法によりメダルを取得した場合、そのメダルを被害品とする窃盗罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平21.6.29)は、本肢と同種の事案において、「被告人が自ら取得したメダルについては、被害店舗が容認している通常の遊戯方法により取得したものであるから、窃盗罪が成立するとはいえない。」としている。


(H30 共通 第8問 イ)
甲は、パチスロ機に針金を差し込んで誤作動させてメダルを窃取することを乙と共謀し、乙による窃盗の犯行を周囲から見えにくくするため、乙の隣のパチスロ機で通常の遊戯を行い、それによりメダルを取得した。この場合、甲自身が遊戯したパチスロ機で取得したメダルについても窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平21.6.29)は、本肢と同種の事案において、「被告人が自ら取得したメダルについては、被害店舗が容認している通常の遊戯方法により取得したものであるから、窃盗罪が成立するとはいえない。」としている。
甲は、乙の隣のパチスロ機で通常の遊戯を行い、それによりメダルを取得したにとどまる。
したがって、甲自身が遊戯したパチスロ機で取得したメダルについて窃盗罪は成立しない。

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不法領得の意思 大判大正9年2月4日

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概要
他人の自転車を一時使用するに止まらず、終局的に被害者の所持を奪い事実上自己の完全なる支配に移し、これを使用処分して所有者を排除する意思があるときは不正領得の意思があるものとする。
判例
事案:とめられていた自転車を無断で使用し乗り捨てたという事案において、不法領得の意思が認められるかが問題となった。

判旨:「窃盗罪ノ成立ニハ他人ノ財物ニ付キ不正領得ノ意思ヲ以テ其所持ヲ侵シ之ヲ自己ノ所持ニ移スコトヲ必要トスルカ故ニ単ニ一時使用ノ為メニ之ヲ自己ノ所持ニ移スカ如キハ窃盗罪ヲ構成セサルモノトス
 他人ノ自転車ヲ一時使用スルニ止マラスシテ終局的ニ被害者ノ所持ヲ奪ヒ事実上自己ノ完全ナル支配ニ移シ之ヲ使用処分シテ自ラ所有者ノ実ヲ挙クル意思アルトキハ即チ不正領得ノ意思アルモノトス」
過去問・解説

(H22 司法 第7問 3)
「駅に行く必要があったので、約30分ほどこの自転車に乗り、駅に着いたら駅前に乗り捨てるつもりだった。」と供述する甲に、窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大9.2.4)は、本肢と同種の事案において、「他人ノ自転車ヲ一時使用スルニ止マラスシテ終局的ニ被害者ノ所持ヲ奪ヒ事実上自己ノ完全ナル支配ニ移シ之ヲ使用処分シテ自ラ所有者ノ実ヲ挙クル意思アルトキハ即チ不正領得ノ意思アルモノトス」として、被害者の占有を終局的に奪い、自らが所有者のように支配した場合に、窃盗罪の成立を認めている。
したがって、自転車に30分ほど乗って捨てるつもりであった甲には、窃盗罪が成立する。

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窃盗罪の成否(不正領得の意思) 最二小判昭和26年7月13日

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概要
窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであって、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としない。
判例
事案:強盗犯が犯行後追跡されて陸地から船で逃走しようと企て、海岸に繋留してあった他人所有の肥料船に乗り込み、該船が対岸に着けば当然その場にこれを乗り捨てる意思をもって岸から約半丁位の海上まで漕ぎ出したという事案において、不法領得の意思が認められるかが問題となった。

判旨:「原判決が本件窃盗の事実として確定したところは、本件強盗傷人の犯行後被告人等は追跡せられ一旦陸に上って逃走したが、更に陸地から船で逃走しようと企て、判示場所に繋留してあった判示V所有の肥料船一艘に乗り込み岸から約半丁位の海上まで漕ぎ出したというのであるから、右事実自体によって、たとえ短時間であっても、被告人等が右肥料船に対するVの所持を侵し該船を自己の所持に移したものであることは明白であるばかりでなく、更に挙示の証拠によれば被告人等は右肥料船が対岸に着けば当然その場にこれを乗り捨てる意思であったことが認められるのである。そもそも、刑法上窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであって、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としないのであるから、被告人等が対岸に該船を乗り捨てる意思で前記肥料船に対するVの所持を奪った以上、一時的にも該船の権利者を排除し終局的に自ら該船に対する完全な支配を取得して所有者と同様の実を挙げる意思即ち右にいわゆる不正領得の意思がなかったという訳にはゆかない。これを要するに、原判決の摘示事実及びこれが証拠によって、被告人に本件窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思のあったことが認め得るから、原判決には所論のような理由不備等の違法はなく、論旨は採用し得ない。」
過去問・解説

(H19 司法 第17問 エ)
銀行強盗の犯人が、犯行後逃走しようとし、銀行前の駐車場に止めてあった他人所有の自動車に乗り込み、適当な場所まで逃走した後は乗り捨てるか、あるいは崖下等に転落させる意思で、同自動車を運転してその場から走り去った行為に窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭26.7.13)は、「窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであって、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としない…。」としている。
したがって、適当な場所まで逃走した後は乗り捨てるか、あるいは崖下等に転落させる意思であったとしても、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思としての不法領得の意思は否定されず、窃盗罪が成立する。

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不法領得の意思 最二小決昭和55年10月30日

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概要
他人所有の普通乗用自動車を、数時間にわたって完全に自己の支配下に置く意図のもとに、駐車場から所有者に無断で乗り出し、その後約4時間余りの間乗り廻していたなどの事情があるときは、たとえ、使用後に元の場所に戻しておくつもりであったとしても、右自動車に対する不法領得の意思があったということができる。
判例
事案:使用後に元の場所に戻しておくつもりはあったが、他人所有の普通乗用自動車を、数時間にわたって完全に自己の支配下に置く意図のもと、駐車場から所有者に無断で乗り出し、その後約4時間余りの間乗り廻していたという事案において、不法領得の意思が認められるかが問題となった。

判旨:「被告人は、深夜、a市内の給油所の駐車場から、他人所有の普通乗用自動車(時価約250万円相当)を、数時間にわたって完全に自己の支配下に置く意図のもとに、所有者に無断で乗り出し、その後4時間余りの間、同市内を乗り廻していたというのであるから、たとえ、使用後に、これを元の場所に戻しておくつもりであったとしても、被告人には右自動車に対する不正領得の意思があったというべきである(最高裁昭和42年(あ)第2478号同43年9月17日第三小法廷決定・裁判集168号691頁参照)。」
過去問・解説

(H28 共通 第16問 1)
甲は、警察官から職務質問をされそうになったのでその場から急いで立ち去ろうと考え、たまたま路上に駐車されていた他人所有の自動車に乗り込み、適当な場所で乗り捨てるつもりで、同自動車を運転してその場から走り去った。この場合、甲には、不法領得の意思が認められ、窃盗罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大9.2.4)は、本肢と同種の事案において、「他人ノ自転車ヲ一時使用スルニ止マラスシテ終局的ニ被害者ノ所持ヲ奪ヒ事実上自己ノ完全ナル支配ニ移シ之ヲ使用処分シテ自ラ所有者ノ実ヲ挙クル意思アルトキハ即チ不正領得ノ意思アルモノトス」として、被害者の占有を終局的に奪い、自らが所有者のように支配した場合に、窃盗罪の成立を認めている。
したがって、他人所有の自動車に乗り込み、適当な場所で乗り捨てるつもりで、運転してその場から走り去った場合であっても、不法領得の意思は認められ、甲に窃盗罪が成立する。

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不法領得の意思 大判大正4年5月21日

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概要
窃盗罪の成立に必要な故意とは、法定の犯罪構成要件たる事実に対する認識の他、不法にものを自己に領得する意思があることを必要とする。そして、不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用若しくは処分する意思である。
判例
事案:窃盗の成立のために、不法領得の意思が必要であるかが問題となった。

判旨:「窃盗罪ノ成立ニ必要ナル故意アリトスルニハ法定ノ犯罪構成要件タル事実ニ対スル認識ノ外尚ホ不法ニ物ヲ自己ニ領得スルノ意思アルコトヲ要スルモノトス
 領得ノ意思トハ権利者ヲ排除シテ他人ノ物ヲ自己ノ所有物トシテソノ経済的用法ニ従イ之ヲ利用若シクハ処分スルノ意思ニ外ナラズ」
過去問・解説

(R2 共通 第20問 ア)
甲は、某所公園内において、ベンチ上に置いてあるバッグ1個を発見し、誰かが置き忘れたものと考え、警察に届け出るため、これを手に取り、同公園から路上に出た。甲の行為は、Vによる占有の回復を困難にする行為であるため、窃盗罪又は占有離脱物横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大4.5.21)は、窃盗の事案において、「窃盗罪ノ成立ニ必要ナル故意アリトスルニハ法定ノ犯罪構成要件タル事実ニ対スル認識ノ外尚ホ不法ニ物ヲ自己ニ領得スルノ意思アルコトヲ要スルモノトス」として、窃盗罪の成立には故意に加えて不法領得の意思が必要であるとした上で、「領得ノ意思トハ権利者ヲ排除シテ他人ノ物ヲ自己ノ所有物トシテソノ経済的用法ニ従イ之ヲ利用若シクハ処分スルノ意思ニ外ナラズ」として、窃盗罪の成立には不法領得の意思が必要であることを示している。
甲は、警察に届けるためにバッグを手にとったのであるから、不法領得の意思が認められない。
したがって、甲に窃盗罪又は占有離脱物横領罪は成立しない。

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親族相盗例と内縁の配偶者 最二小決平成18年8月30日

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概要
親族相盗例(244条1項)は、刑の必要的免除を定めるものであって、免除を受ける者の範囲は明確に定める必要があることなどからして、内縁の配偶者に適用又は類推適用されることはない。
判例
事案:内縁の妻である被害者Aが自宅金庫に保管する現金合計725万円を窃取したという事案において、親族相盗例の適用の可否が問題となった。

判旨:「刑法244条1項は、刑の必要的免除を定めるものであって、免除を受ける者の範囲は明確に定める必要があることなどからして、内縁の配偶者に適用又は類推適用されることはないと解するのが相当である。」
過去問・解説

(H28 共通 第20問 ア)
甲は、内縁の妻Aと同居していたところ、遊興費に窮し、指輪1個をAの部屋から盗み出した。甲がAの指輪を盗んだことにつき、甲の行為は窃盗罪に該当するが、Aは甲の内縁の妻であるから、刑法第244条第1項により刑が免除される。

(正答)

(解説)
判例(最決平18.8.30)は、本肢と同種の事案において、「刑法244条1項は、刑の必要的免除を定めるものであって、免除を受ける者の範囲は明確に定める必要があることなどからして、内縁の配偶者に適用又は類推適用されることはない…。」としている。
Aは、甲の内縁の妻であるから、親族相盗例の規定の類推適用はない。
したがって、甲は、244条1項により刑が免除されない。


(R2 司法 第10問 2)
甲が、実父乙の内縁の妻である丙が乙から預かり保管していた乙所有の時計を窃取した場合、甲の窃取行為について刑は免除されない。

(正答)

(解説)
判例(最決平18.8.30)は、本肢と同種の事案において、「刑法244条1項は、刑の必要的免除を定めるものであって、免除を受ける者の範囲は明確に定める必要があることなどからして、内縁の配偶者に適用又は類推適用されることはない…。」としている。
甲は、所有者の乙とは親族関係にあるが、占有者の丙とは親族関係にない。
したがって、甲の窃取行為について、刑は免除されない。

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親族相盗例 最二小決平成6年7月19日

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概要
窃盗犯人が所有者以外の者の占有する財物を窃取した場合において、244条1項が適用されるためには、同項所定の親族関係が、窃盗犯人と財物の所有者との間のみならず、占有者との間にも存することを要する。
判例
事案:A株式会社が所有し、被告人と六親等の血族の関係にあるBの保管する現金を窃取したという事案において、親族相盗例の適用の可否が問題となった。

判旨:「本件は、被告人が、A株式会社(代表取締役a)の所有し、被告人と6親等の血族の関係にあるBの保管する現金を窃取したという事案であるところ、窃盗犯人が所有者以外の者の占有する財物を窃取した場合において、刑法244条1項が適用されるためには、同条1項所定の親族関係は、窃盗犯人と財物の占有者との間のみならず、所有者との間にも存することを要するものと解するのが相当であるから、これと同旨の見解に立ち、被告人と財物の所有者との間に右の親族関係が認められない本件には、同条1項後段は適用されないとした原判断は、正当である。」
過去問・解説

(H23 司法 第13問 4)
甲は、A株式会社の代表取締役である実父乙が管理するA社所有の絵画を窃取した。この場合、甲には窃盗罪が成立し、その刑は免除されない。

(正答)

(解説)
判例(最判平6.7.19)は、「244条1項が適用されるためには、同条1項所定の親族関係は、窃盗犯人と財物の占有者との間のみならず、所有者との間にも存することを要するものと解する…。」としている。
甲と絵画の所有者A社の間に親族関係は認められないから、甲の窃取行為について、窃盗罪が成立し、刑は免除されない。


(R2 司法 第10問 1)
甲が、実母乙の使用するタンスから、乙がその友人丙から預かり同タンスに保管していた丙所有の宝石を窃取した場合、甲の窃取行為について刑は免除されない。

(正答)

(解説)
判例(最判平6.7.19)は、「244条1項が適用されるためには、同条1項所定の親族関係は、窃盗犯人と財物の占有者との間のみならず、所有者との間にも存することを要するものと解する」としている。したがって、甲の窃取行為について刑は免除されない。

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親族相盗例における親族関係の範囲 大判昭和6年11月17日

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概要
親族又は家族の委託に基づき占有する物を横領した場合であってもその物の所有者が親族又は家族でないときは、255条、244条を適用すべきでない。
判例
事案:親族の委託に基づき占有する物を横領したが、その物の所有者が親族でなかったという事案において、親族相盗例の適用の可否が問題となった。

判旨:「親族又ハ家族ノ委託ニ基キ占有スル物ヲ横領シタル場合ト雖其ノ物ノ所有者カ親族又ハ家族ニ非サル者ナルトキハ刑法第255条第244条ヲ適用スヘキモノニ非ス」
過去問・解説

(H21 司法 第15問 イ)
甲は、自己の実父である乙から、乙の友人である丙所有の刀剣を保管するように委託され、当該刀剣を保管していたが、乙及び丙に無断で、当該刀剣を丁に売却した。甲には横領罪が成立するが、甲は乙の「直系血族」であるので、刑が免除される。

(正答)

(解説)
判例(大判昭6.11.17)は、本肢と同種の事案において、「親族又ハ家族ノ委託ニ基キ占有スル物ヲ横領シタル場合ト雖其ノ物ノ所有者カ親族又ハ家族ニ非サル者ナルトキハ刑法第255条第244条ヲ適用スヘキモノニ非ス」として、横領罪における親族相盗例の適用には、窃盗犯人・所有者・委託者の間に親族関係が必要であることを示している。
したがって、保管の委託を受けた刀剣を丁に売却した甲には横領罪が成立するが、甲と刀剣の所有者丙は親族でないから、甲は刑の免除がなされない。


(R6 司法 第6問 2)
甲は、配偶者Aから、その友人であるB所有の刀剣の保管を委託され、同刀剣を保管していたが、A及びBに無断で、同刀剣をCに売却した。この場合、甲には委託者であるAに対する横領罪が成立するが、甲はAの配偶者であるから、刑が免除される。

(正答)

(解説)
判例(大判昭6.11.17)は、本肢と同種の事案において、「親族又ハ家族ノ委託ニ基キ占有スル物ヲ横領シタル場合ト雖其ノ物ノ所有者カ親族又ハ家族ニ非サル者ナルトキハ刑法第255条第244条ヲ適用スヘキモノニ非ス」として、横領罪における親族相盗例の適用には、窃盗犯人・所有者・委託者の間に親族関係が必要であることを示している。
したがって、保管の委託を受けた刀剣をCに売却した甲には横領罪が成立するが、甲と刀剣の所有者Bは親族でないから、甲は刑の免除がなされない。

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親族相盗例の適用範囲 最一小決平成20年2月18日

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概要
家庭裁判所から選任された未成年後見人が業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合、未成年後見人と未成年被後見人との間に244条1項所定の親族関係があっても、その後見事務は公的性格を有するものであり、同条項は準用されない。
判例
事案:未成年後見人と未成年被後見人との間に244条1項所定の親族関係がある場合に、家庭裁判所から選任された未成年後見人が業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領したという事案において、親族相盗例の適用の可否が問題となった。

判旨:「刑法255条が準用する同法244条1項は、親族間の一定の財産犯罪については、国家が刑罰権の行使を差し控え、親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき、その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず、その犯罪の成立を否定したものではない(最高裁昭和25年(れ)第1284号同年12月12日第三小法廷判決・刑集4巻12号2543頁参照)。
 一方、家庭裁判所から選任された未成年後見人は、未成年被後見人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について未成年被後見人を代表するが(民法859条1項)、その権限の行使に当たっては、未成年被後見人と親族関係にあるか否かを問わず、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(同法869条、644条)、家庭裁判所の監督を受ける(同法863条)。また、家庭裁判所は、未成年後見人に不正な行為等後見の任務に適しない事由があるときは、職権でもこれを解任することができる(同法846条)。このように、民法上、未成年後見人は、未成年被後見人と親族関係にあるか否かの区別なく、等しく未成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っていることは明らかである。
 そうすると、未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人が、業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。」
過去問・解説

(H21 司法 第15問 エ)
甲は、家庭裁判所から甲の孫乙の未成年後見人に選任され、後見の事務として乙の預金通帳及び印鑑を預かっていたが、これらを使用して、ほしいままに乙の預金口座から現金500万円を引き出し、自己の遊興のために費消した。甲には業務上横領罪が成立するが、甲は乙の「直系血族」であるので、刑が免除される。

(正答)

(解説)
判例(最決平20.2.18)は、成年後見人による業務上横領の事案において、「未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人が、業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はない…。」としている。
したがって、甲は、乙の「直系血族」であるが、乙の未成年後見人に選任されているから、刑は免除されない。


(H23 司法 第13問 3)
甲は、別居している乙(5歳)の祖母であり、家庭裁判所によって乙の未成年後見人に選任され、後見人の事務として乙の預金口座を管理していたが、その口座から現金を引き出して自らのために費消した。この場合、甲には業務上横領罪が成立するが、その刑は免除される。

(正答)

(解説)
判例(最決平20.2.18)は、成年後見人による業務上横領の事案において、「未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人が、業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はない…。」としている。
したがって、甲は乙の「直系血族」であるが、乙の未成年後見人に選任されているから、刑は免除されない。

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